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世界のマイナス金利政策の変遷

 中央銀行で最も歴史の古いスウェーデンの中央銀行、リクスバンクは2月12日に政策金利であるレポレートをゼロからマイナス0.1%に引き下げた。そして同時に約100億クローナ(約1400億円)の国債を買い入れると表明した。年限は1年から5年の国債が対象になる。

 今回は政策金利のマイナス化について過去の経緯を追ってみたい。ひとつ注意すべきは、現在の日米欧の中央銀行の政策金利はコリドーと呼ばれる幅を設けている。中心にあるのが主要政策金利であり、それに対して上限と下限を別に設けている。

 政策金利がマイナスというのは、主要政策金利そのものがマイナスとなることを示すのか、それとも下限がマイナスとなればマイナス金利政策とするのか、はたまた別の手段でマイナス金利政策とするのか、このあたりの判断基準が必要となるが、過去のマイナス金利の経緯を追ってみた。

 1970年代にスイス中銀が為替管理の一環としてマイナス金利政策を導入したことがあるが、対象は国外から流入する外国人の金融資産のみとなっていた。

 2009年7月にスウェーデンの中央銀行のリクスバンクーはマイナス金利政策を実施した。この際は、下限金利であるところの預金ファシリティ金利をマイナス0.25%としていた。

 2012年7月にデンマーク中銀も主要政策金利である貸出金利を0.25%引き下げ0.20%にし、下限金利であるところの譲渡性預金金利を0.05%からマイナス0.20%に引き下げ、マイナス金利とした。

 2014年4月にデンマーク中銀は、譲渡性預金金利を従来のマイナス0.1%からプラス0.05%とプラス圏へ引き上げると発表した。

 2014年6月5日のECB政策理事会では、主要政策金利のリファイナンス金利が0.25%から0.15%に引き下げられ、下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)をマイナス0.1%とした。

 2014年12月18日にスイス中銀はマイナス金利を導入すると発表した。金融機関がスイス中銀に持つ支払い用の口座について、預入金が一定額を超える分に0.25%の手数料を求める。

 2015年1月19日にデンマーク中銀は主要政策金利である銀行の貸出レートを0.20%から0.05%に、譲渡性預金金利も0.15%引き下げマイナス0.20%とした。

 2015年1月22日のECB理事会で量的緩和策の実施を決定した。ECBの指揮によりユーロ圏の各国中銀が2015年3月から国債を含めて毎月600億ユーロの資産を買い入れ、それを2016年の9月まで続け、買い入れ総額は1兆ユーロを超す見通し。

 そして、今回リクスバンクが主要政策金利であるレポレートをゼロからマイナス0.1%に引き下げたのである。それと同時に国債の買入も決定した。

 ECBもリクスバンクも政策金利のマイナス化と国債買入を同時に行うこととなり、本来の意味での量的緩和とはやや発想が異なる。日銀が超過準備に付利を残しているのは、金融政策のターゲットをマネタリーベースに置いているためであり、マネタリーベースが増えると物価も上がるとの理屈による。しかし、ECBはマイナス金利と同時に国債買入を行うということはマネタリーベースの増加よりも、長期金利の低下を促すことなどでの通貨安が狙いとなっているとみられる。

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by nihonkokusai | 2015-02-15 08:23 | 中央銀行 | Comments(0)

政策金利(仮)に接近した長期金利

 日本の長期金利は何に一番連動しているのか。株価やドル円、物価指標など経済指標、そして米長期金利などを比較してみると、比較的動きが似ているのが米長期金利であるが、それ以上にトレンドがほぼ一致しているのが政策金利との関係である。
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 政策金利とは日銀が金融政策の目標としている金利のこと。金利があった遙か昔、日銀は公定歩合や無担保コール翌日物の金利を金融政策の誘導目標値としていた。すでに公定歩合については、その言葉は使われなくなり、それに取って代わられた無担保コール翌日物金利も実質ゼロ近辺となってからは、金融政策の目標値ともされなくなった。この「金利」を金融政策の目標値とすることは伝統的な金融政策と呼ばれる。

 政策金利がゼロ近辺となると、金融政策は新たな手を考えなければいけない。もちろん政策金利そのものをマイナスにするという手段もあり、デンマークの中央銀行などが行っている。ECBの主要政策金利はプラス0.05%とかろうじてプラスだが、政策金利の下限はマイナスとなっている。またECBも含め、日銀、イングランド銀行、そしてFRBはそれぞれ国債買入を主体とする量的緩和政策を行ってきた。これらは非伝統的な金融政策と呼ばれる。

 ここでクエスチョン。現在の日銀の金融政策の目標は何であるのか。これをクイズ番組で出されたとすれば、東大生でも多くの学生は答えられないのではないかと思われる。これを読んでいる方は金融市場関係者や金融に関心のある方が多いと思われ、当然ご存じの方は多いと思うが、世間一般では日銀の金融政策の目標は何かと問われると公定歩合という答えなどが返ってくる可能性がある。

 現在の日銀の金融政策の目標は「マネタリーベース」である。2013年4月の量的・質的金融緩和の導入の際に、「量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更」するとした。それまでは「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す」としていた。

 現在、日銀には政策金利というものが存在しているのかどうかはさておき、もし現在の政策金利を仮定するとなれば、この0~0.1%程度ということができるかと思われる。

 前置きが長くなってしまったが、この政策金利と長期金利はトレンドとして似た動きをするが、一時を除いてあまり逆転したことはない。直近では1990年あたりから1992年あたりにかけてのバブル崩壊時に逆転したことがあったが、それ以降は逆転したケースはないはずである。

 今年1月20日に長期金利は過去最低の0.195%まで低下した。そこをボトムに2月10日には0.4%台まで上昇している。ここで長期金利がもしボトムアウトしたとなれば、その理由のひとつに、長期金利がこの政策金利(仮)に接近したこともあげられるのではないかと思う。

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by nihonkokusai | 2015-02-13 09:15 | 債券市場 | Comments(0)

中央銀行が注視するのは自国の物価や経済

 コラムを書いていて、ご質問やご意見をいただくことがある。最近、興味深いご意見をいただいたので、それにお答えする形で現在の世界の中央銀行の動向を考えてみたい。いただいたご質問は以下のようであった。

 「世界の安定の為には日本国債の安定性を犠牲にしても、米国債とドル機軸体制を堅持するべきであり、日銀の追加緩和もECBの量的緩和突入も、キャリートレードの資金を作り出す事で、FRBの利上げで確実に低下する資金供給をバックアップする目的があるのではないでしょうか」

 FRBはすでにテーパリングを終了し、今年6月にも正常化、つまり利上げを決定する可能性が強いと思われる。すでに流動性供給という側面ではFRBの役割は後退しているが、FRBのテーパリング終了を前に、日銀は第二弾の異次元緩和でさらに流動性を供給し、ECBも今年1月の理事会で国債買入による量的緩和策の導入を決めた。

 この動きは確かに、米国やすでに量的緩和拡大を中止しているイングランド銀行に代わり、日銀やECB、スイス中銀、デンマーク中銀などが世界に流動性を供給し、その結果、株価を下支え、米債も支えているとの見方は可能かもしれないが、それはあくまで結果論に過ぎない。

 中央銀行の金融政策を見る上で注意すべきは、それぞれの国の中央銀行は国際機関でもなく、自国の中央銀行であり、自国通貨の信認や価値を守り、自国の金融取引が円滑に行われるようにすることが主な仕事である。他の国の金融経済、さらには株価や国債価格を支えることは仕事ではない。もちろん国際協調も重要ではあるが、その大前提は自国の経済や物価、金融システムの安定性にある。つまり、FRBにとって変わって日銀やECBが流動性供給を行うというような意識はないはずである。

 合成の誤謬という言葉があるが、それぞれの中央銀行が自国の金融経済のために行った政策がたまたま世界への流動性供給を継続させているに過ぎない。

 たとえば日本のことを例にとれば、2014年10月の第二弾異次元緩和は原油価格の下落により物価目標達成のための予想物価の低下を食い止めるというのが表面上の目的であった。現実にはFRBのテーパリング停止決定に合わせ、FRBと日銀の金融政策の方向性の違いを鮮明にさせて「円安」にすることが目的であったと推測される。すでに日銀とすれば円安に頼らざるを得ない状況に追い込まれていたとの見方もできる。ECBやデンマーク、スイスもやはり金融緩和の目的が自国通貨安となっている。

 ここにドルや米国債の買い支えなどは意識されず、自国の物価を上昇させ、景気を回復させるためには何か必要なのか。その結果が現在の日本やECBなどの追加緩和であった。

 ただし日銀については、大胆な金融政策で、レジームがチェンジし、物価予想が上昇すれば、簡単に物価は目標を達成し、そこで安定させることができるという政策を打ち出してしまった。

 世界の金融政策はあのバーナンキ元議長すらもかなり柔軟性のある金融政策としていたのに、現在のリフレ派主流の日銀はその柔軟性が過去の日銀の金融政策の効果を妨げていたとばかり、頑なな政策をとっている。

 しかし、さすがに原油安による物価上昇の抑制については、ある程度享受せざるを得ないとの見方に変わりつつあるが、それでも物価目標を掲げ、その達成が仕事になってしまった日銀は多くの矛盾も抱えつつあり、米国債の買い支えなどは全く意識してはいないと思われる。ただし、円安政策のひとつ手段としての意識はあるのかもしれないが。

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by nihonkokusai | 2015-02-12 09:28 | 中央銀行 | Comments(1)

債券相場はピークアウトした可能性

 ここにきて日本の債券市場の動きが不安定になってきている。債券先物の日足チャートを確認すると、2013年5月23日のバーナンキ・ショック以来、債券先物は上昇トレンドを形成していた。
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 2013年5月22日にバーナンキFRB議長は上下両院合同経済委員会の証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘し、FRBが正常化に向けた動きをはじめる可能性が出てきた、このため22日に米債が急落し、長期金利が2%台に乗せ、これがバーナンキ・ショックと呼ばれた。23日の日本の債券は下落し、長期金利一時1%つけるが、その後株急落等で債券は急反発し、ここからむしろ上昇トレンドを形成していったのである。

 2013年9月のFOMCでテーパリング開始が決定されるのではないかとの思惑で、米長期金利が3%台に乗せるなどしたことで、円債も一時的な調整が入った。しかし、9月のFOMCではテーパリングの開始は決定されず、再び円債も上昇トレンドを復活させていた。債券先物は8月30日の高値144円48銭から9月9日の142円80銭まで1円68銭の調整があった(以下、債券先物の高値と安値はすべてイブニングを除く日中のものを参照)。

 2013年12月のFOMCでテーパリングの開始が決定され、この際も11月29日の145円18銭から12月30日の143円20銭まで1円98銭の調整が入った。

 2014年3月13日に債券先物は一時1円安となった。これは売りのロットを間違えるなど特殊要因が入ったとみられ、すぐに値を戻したことでこれは調整ではないと思われる。

 その後それほど大きな調整はなく、2014年8月29日の146円33銭から9月19日の145円25銭の1円08銭。この際はウクライナ情勢の緊迫化やスコットランドの住民投票などが材料視されていた。

 2014年11月4日の146円78銭から11月13日の145円71銭まで1円07銭の調整もあった。消費再増税を1年半延期とし、月内の衆院解散、来月の総選挙実施の可能性が強まり、それを材料にしての動きとみられた。

 そして今回の調整は2015年1月20日の148円67銭をピークに、2月6日の安値147円14銭とすでに1円50銭以上の調整とここにきての相場のなかでは、久々に大きな調整となっている。

 この要因としては2014年11月13日の145円71銭から2015年1月20日の148円67銭まで、3円近くも上昇した反動という側面もあろう。しかし、注意すべきはこの間に残存5年を超える国債の利回りがマイナスとなるなど、かなりのオーバーシュートも見られたことである。1月20日には5年債のカレント物の利回りはマイナスに、10年債は一時0.195%と0.2%を割り込み、20年債利回りは0.845%、30年債利回りは1.040%と1%に接近していた。

 これがややオーバーシュート気味であったことは、1月22日の20年国債入札後の先物の大幅下落、28日に2年債利回りがマイナスを解消するなどの動きもあったことからも明らかである。そしてこのオーバーシュートを誘ったのが、ECBの量的緩和導入の動きであり、1月22日のECB理事会で量的緩和が決定された。

 2月3日の10年国債の入札では最低落札価格が予想を大きく下回り、テールが記録的な長さになるなど市場参加者の動揺を示すものとなった。

 今回の調整も一時的なものであるのか。現状ではここからさらに利回りが低下する要因は考えづらい。需給面では日銀の巨額買入が継続し、それが下支えとなろうが、マイナス金利はオーバーシュートであることは明らかである。ここにきて利付国債の利回りはマイナスから脱している。日銀の当座預金の付利が0.1%となっている以上は、それ以上の大きな利回り低下は現実としては難しい。付利の引き下げや撤廃、マイナス化の予想もあるが、日銀が金融政策の目標値をマネタリーベースから変更しない限りそれも困難となる。

 さらにここにきて最大の買い要因であったECBの量的緩和導入も現実化した。そして今後はFRBの利上げが控えている。債券相場はすでにピークアウトしつつあるとの見方も可能なのではなかろうか。その意味では今回の調整は過去のような一時的なものとの見方は考えづらい気もするのだが

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by nihonkokusai | 2015-02-10 09:35 | 債券市場 | Comments(0)

原田教授と若田部教授の主張が意味不明

 2月5日に政府は3月25日に任期を迎える日銀の宮尾審議委員の後任に原田泰氏を起用する人事案を提示した。就任には、国会の同意が必要となるが、衆参両院で与党が多数を占めるため、政府案が可決されるとみられる。すでに現在の日銀は黒田総裁の意向が強く反映され、リフレ派が増えようが特に金融政策の行方には影響はないとの見方があるかもしれない。しかし、それでも一票の重みは大きい。

 現実に昨年10月の異次元緩和第二弾では政策委員の票が割れ、かろうじて5対4で追加緩和を決定した経緯がある。今回任期を迎える宮尾氏は賛成、森本氏は反対に回った。反対した4人は実業界出身者で、執行部(総裁と2人の副総裁)以外で賛成に回ったのは2人の「学者」出身者であった。

 日銀の審議委員は日銀総裁と同じ考え方を持つ人ばかり選出すれば、合議制を取っている意味がないが、今回の人事はリフレ派による多数派工作の一環ともいえる。これが何を意味するのか。いずれ日銀の信認低下に繋がる恐れがある。

 すでにリフレ派の提唱する金融政策が意味をなしていないことは2年で2%の物価目標を達成できないことからも明らかであるが、そもそもの波及経路とされる予想物価そのものがかなり曖昧なものであったことは、2月4日の岩田副総裁の講演や会見からも明らかになっている。

 そのリフレ派と呼ばれる学者が審議委員となる。その原田早大教授は朝日新聞のインタビューで次のような発言をしている。

 「国債には毎年発行される分だけでなく、1千兆円の残高があるからまだ買える。国債は日本人全体の借金だ。それを買っているわけだから、日本人に恩恵を与えている」

 1000兆円あるので確かに計算上は買えるが、GPIF含め機関投資家もある程度は国債で運用せざるを得ないし担保の需要もある。現金に次ぐ安定資産とされる国債を日銀がこれ以上吸い上げれば、機関投資家の運用に支障を来すばかりか、日本の債券市場の流動性を枯渇させかねない。中央銀行が国債を大量に買い入れれば、自国民に恩恵を与えるのかといえば、そんな歴史は存在しない。第一次大戦後のドイツ、太平洋戦争後の日本をみれば明らかであり、財政法において何故、日銀の国債引き受けを禁じたのかをご理解されていないようである。

 「日銀は国債をコストをかけずにただで買っている。10兆円分の国債を購入して、仮に2割損してももうけは8兆円ある。日銀の利益は国庫に渡ってきた。国債の価格が下がっても、財務省が埋めればそれでいいだけだ」

 おっしゃっていることが良くわからない。日銀の審議委員候補のひとりともされる、やはりリフレ派の若田部昌澄早大教授も、朝日新聞とのインタビューで次のように語っていた。

 「政府と一体と考えられる日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせる。」

 日銀はどうやらお金を生み出す打ち出の小槌のようである。日銀が購入する国債はタダで買えて、すべてが日銀、つまりこのお二人の考え方からは国の利益、それはすなわち我々の利益となるそうである。そうであればあと1000兆円とかの国債を国が発行しそれを日銀が購入してくれれば、それはそのまま政府が使える。我々は税金や健康保険、年金など払わずともぜんぶ政府がカバーしてくれるのではなかろうか。そんなことできるわけはないと皆、思っているはずであるが、どうもこのお二人はそうではないようである。

 国債はあくまで政府の債務であり、それを日銀が購入すればチャラになるわけではない。それが膨らみ続けるといずれ日本や日銀の信認を低下させる。原田氏は「円の信認は日本の経済力に対する信認であって、日銀の信認とは関係ない」ともおっしゃっている。そんなわけがないであろうことは、もしこのままリフレ的な政策を日銀が続けた結果、痛い思いをすることで理解することになるのか。気をつける必要があるのは、その痛い思いをするのは我々国民である。

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by nihonkokusai | 2015-02-09 09:33 | 日銀 | Comments(0)

これで良いのか日銀審議委員人事

 日銀法第23三条には、「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する」とあり、その二項に「審議委員は、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する」とある。

 日銀の役員でもあるところの日銀総裁と副総裁(執行部)と審議委員は、両議院の同意を得て、内閣が任命するが、その前に候補者を政府が提示する。政府はある程度絞り込まれた候補者のなかから選出するが、その絞り込みは誰がやっているのか。

 これまでの日銀の審議委員の候補は、2月6日の日経新聞朝刊の記事にもあったように、日銀が財務省と擦り合わせしながら官邸に人選をあげていくパターンとなっていた。ところが、今回の宮尾審議委員の後任人事については、そういった過去のプロセスを経ていなかったようである。日経新聞では「今回は一貫して官邸主導だった」とある。

 昨年10月の異次元緩和第二弾では政策委員の票が割れ、かろうじて5対4で追加緩和を決定した経緯がある。今回任期を迎える宮尾氏は賛成、森本氏は反対に回った。反対した4人は実業界出身者で、執行部(総裁と2人の副総裁)以外で賛成に回ったのは2人の「学者」出身者であった。

 内閣官房参与の浜田宏一氏は、3月と6月に相次いで任期を迎える2人の日本銀行審議委員の後任人事について、産業界や金融界などから選ぶべきではないとの見方を示していた。つまりこれは現在の日銀の政策を理解するリフレ派の学者から選出すべきということになる。現実にリフレ派の原田氏が今回、政府は起用した。

 日銀の審議委員は日銀総裁と同じ考え方を持つ人ばかり選出すれば、合議制を取っている意味がないが、今回の人事はリフレ派による多数派工作の一環ともいえる。

 レジームチェンジが道半ばで現在のリフレ政策をより強力に押し進める必要がある、との建前であるのかもしれないが、リフレ政策でレジームチェンジは起きず、原油価格の下落などで物価の上昇率は目標達成どころか、目標から遠くなりつつある。間違った政策をとってしまったが、あとには引けず後遺症のリスクがあるにも関わらず劇薬投与を続けるための工作と見えなくもない。

 3月25日に任期を迎える日銀の宮尾審議委員の後任に原田泰氏を起用したあと、6月30日に任期を迎える森本審議委員の後任は、やはりリフレ派の若田部昌澄早大教授あたりの声も上がっている。

 お友達の多数派が牛耳って間違った政策を推し進める。これが民間企業であればどのような結末を迎えるのかは明らかである。それが日本の金融経済に大きな影響を与える日銀の役員でもある審議委員人事で同様の事態が発生するとなれば、何が将来待っているのか、あまり想像したくはない。

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by nihonkokusai | 2015-02-07 10:29 | 日銀 | Comments(1)

根底から崩れつつある岩田理論

 日銀の岩田副総裁は、2月4日の講演で、量的・質的金融緩和の核心は何かと問われた場合、私は政策レジームの転換によるデフレマインドの払拭とコメントした。インフレもデフレも最終的には貨幣的現象であるから、積極的な金融緩和によってデフレからの脱却は実現できるという考え方に基づいたものだそうである。

 「15年以上の長きにわたってデフレからの脱却が果たせなかったのは、「金融政策によってデフレは克服できる」という政策レジームが採用されていなかった(なくとも民間経済主体からそうした信認を得られていなかった)ことに原因の一端があると思います。」(岩田副総裁講演より)

 異次元緩和から2年近く経過し、消費者物価指数が前年比プラス0.5%あたりとなっている現状は、現在の日銀の金融政策に対しても、信認を得られていなかったということではなかろうか。

 「政策レジームの転換による予想インフレ率の上昇を起点に、複数のチャネルを通じて総需要を拡大させていくというのが、現在の金融政策が想定している効果波及のメカニズム」(岩田副総裁講演より)

 この予想インフレ率にこれまで岩田副総裁が使っていたのが、物価連動国債の利回りから算出する予想インフレ率「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」であった。ところが今回の講演では、このBEIのグラフは説明に全く使われていない。

 日経新聞電子版によると、副総裁就任直前の2013年3月の講演では、「日銀当座預金が10%増えると、(BEIで見た)予想インフレ率が0.44%上がる」と岩田氏はしていた。ところが、日銀のマネタリーベースは無理矢理な国債買入等により膨れあがる一方ながら、このところBEIは原油安などによる足元物価を反映し大きく下がり、これを見せることは都合が悪くなったようである。

 4日の岩田副総裁の会見では、日本の物価連動国債の市場規模が小さいことや、予想インフレ率が安定しているはずの欧米でもBEIが低下していることを理由に、岩田副総裁自らBEI指標としての信頼性に疑問を呈したそうである。

 日本の物価連動国債から算出されるBEIの欠陥については、これまでその指摘はあったはずが、いっこうに耳を貸さず、都合が悪くなると、これは間違った指標であったと今頃になって説明するというのはどういうことなのか。「BEIで見た予想インフレ率が0.44%上がる」との根拠を自らひっくり返し、それでもまだ異次元緩和でレジームチェンジができて予想物価が上がって物価目標を達成できると言うのであろうか。

 日銀の二度にわたる異次元緩和により、国債市場は麻痺しつつある。残存額が1000兆円もある市場なので、いくら市場機能が後退してもそれなりの出来高はある。相場が乱高下しなければ通常の売買は可能ではある。しかし、問題は2003年のVARショックと同様に、日銀の巨額買入により、大きなショックには耐えられない市場となってしまっていることである。

 日銀は2年で2%の物価目標達成がレジームチェンジでできなかったことを素直に認め、債券市場に大きなショックが走る前に債券の市場機能を回復させる責任がある。中央銀行にとっての正常化という出口ではまだ先だとしても、債券市場の正常化を図るための出口政策をショックを与えないようにして速やかに進める必要があるのではなかろうか(そんな方法が果たしてあるのかという大きな問題も残るが)。

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10年国債入札でショックが走った理由

 2月3日の10年国債の入札は、最低落札価格99円42銭、平均落札価格99円87銭となった。最低落札価格は事前予想の100円近辺を大きく下回り、テール(平均落札価格と最低落札価格の差)は45銭となった。応札倍率も2.68倍と前回の3.42倍を下回った。

 この入札結果を受けて国債の価格は急落した。急落といっても債券先物は1円以上下げたわけでもなく(100億円の先物で1円下げると1億円損失)、サーキットブレーカーが発動したわけではない。債券先物は当日の高値148円08銭から安値147円23銭まで85銭の下落であった。下げ幅は決して小さくはないが、ショックと呼べるほどの下げではない。しかし、債券市場関係者はこの10年国債の入札結果に大きなショックを受けたことは確かであった。

 そもそも国債の入札はかなりマニアック?なものであり、ある程度の国債発行の流れや、これまでの入札動向をみていないと何が実際に起きたのかを理解するのか難しい。しかし、なんとかその説明を試みたい。

 国債は入札形式で発行されるが、その入札に応じるのが金融機関である。そのなかでも一定額以上の応札・落札実績があると国債市場特別参加者、つまり日本版プライマリー・ディーラーとなる。入札はこのプライマリー・ディーラーを中心に行われる。

 今回の10年国債の入札は利率が0.3%、337回債のリオープンとなった。10年国債などは三か月ごとに償還日が変わる。償還日が同じ物は前回に比べて利回りが0.2%以上変動しないと同じ回号の国債が再発行される(リオープン)。

 国債の入札結果で注目すべきは最低落札価格である。プライマリー・ディーラーなどはこの居所を探り合う。昔は投資家の需要を見ながらであったが、現在は投資家動向とともに、日銀の買入でいずれ大きく持っていかれるため、自分の懐状態、つまりどの程度、日銀オペまで保有可能かあたりを中心に考慮されているのではないかと思われる。

 最低でも落としたい金額があり、それを落とすためには最低落札価格以上で応札しなければならない。この最低落札価格は事前の相場動向をみておおよその居所が予想値として出てくる。今回は既発の10年国債の利回りが0.3%近辺であったため、100円ちょうどあたりの予想となっていた。

 ところが落札結果を確認すると、この最低落札価格が99円42銭と予想値から58銭も下となっていたのである。利回りは0.360%であり予想の0.300%から大きく離れていた。そして、最低落札価格と平均落札価格との差、いわゆるテールが45銭とこちらも10年国債としては、まれにみる大きさとなっていたのである。

 この結果が意味するものは何か。これはプライマリー・ディーラーを主体に業者がかなり慎重になっていたためと思われる。投資家のニーズうんぬんより、業者の体力が落ちてきたことがうかがえる。いわゆるリスク許容度の低下である。業者は念のため、下のほうの価格でも応札している。その入ると思っていなかったところまで入ってしまい、何が起きたのかとびっくりしたのである。

 手元のデータによるとテールの45銭というのは2003年7月入札時、つまりVARショックと呼ばれた債券相場急落の際の90銭以来となる。テールが40銭以上流れたのは2004年3月の42銭以来となる。

 今回、あのVARショックが連想されたとしてもおかしくはない。そもそもVARショックとは日銀の当時の量的緩和を背景にじりじりと買い進まれ、10年債利回りが過去最低をつけ、その反動による国債の急落であった。このきっかけは10年ではなくて、20年国債の入札においてであった。20年国債の利率が0.8%とはじめて1.0%を割り込み、1%割れの国債は買わないとした生保などの声が報じられたのが相場反落のきっかけとなった。今回も1月に20年債の利回りが1%割れとなっていたばかりか、5年債利回りもマイナスとなり、10年債は一時0.2%を割っていた。

 ある意味、高値警戒がここにきて出てきていたことも確かであるが、今回、気をつけるべきは国債市場で大きな役割を占めるプライマリー・ディーラーのリスク許容度の低下となる。つまり、国債入札で落とした国債を日銀に売却するまでの期間での相場変動に耐えられなくなりつつあるということになる。

 わずかな期間でもその間に相場が大きく下落すれば、損失額は大きくなる。当然ながらその損失を日銀に補填してもらうわけにはいかない。国内の投資家もマイナスの利回りの国債など常識的には買えない。担保需要など限られた要因でなければ、買える投資家は一部の海外投資家などを除き存在しない。しかし、相場がそれほど変動しなければ日銀が時価で買ってくれる。だから業者も安心して国債を落札できた。しかし、相場の変動幅が大きくなると、その構図が大きく崩れつつある。それを示したのが、今回の10年国債入札ショックと言えよう。

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by nihonkokusai | 2015-02-05 10:00 | 債券市場 | Comments(0)

デンマークが国債発行を停止した理由

 デンマークはEU加盟国だが、2000年9月の国民投票においてユーロ参加を否決し、現在ユーロには参加していない。中央銀行はデンマーク国立銀行で、欧州中央銀行制度 (ESCB) に参加しているが、ユーロではなく独自の通貨クローネが発行されている。

 デンマークの中央銀行であるデンマーク国立銀行は1月30日、国債発行を無期限に停止すると発表した。デンマーク政府は今年の資金需要をまかなうために総額750億デンマーククローネの国債を発行する予定だった。しかし、昨年から繰り越された黒字のほか、外貨準備などがあり、2015年の資金需要は既に満たされているということで、財務省と協議の上での決定した。

 国債には三つの顔がある。政府の資金調達手段としての顔、資金の運用先としての顔、そして金利の指標となる長期金利としての顔である。デンマークは金融危機以前は大幅な財政黒字を記録しており、危機後に財政は悪化したものの、ここにきて改善しつつある。国債発行に頼らずとも何とか財政はカバーできるとしたのであろうが、今回の国債発行の停止はそれをアピールするためのものではなさそうである。

 国債には資金の運用先という顔もあり、特に国内外の機関投資家にとり一定のニーズが存在する。このため昔、財政収支が改善したオーストラリアが国債発行を停止しようとしたことがあったが、国債市場を維持するために国債発行を続けたというケースがあった。

 今回、このようなニーズもあったはずで、多少の無理をしても国債の発行を中央銀行が停止を決めた理由は何なのか。これは国債という、クローネ資産への資金流入経路の一つを断つ作戦だとしている。つまり資金運用先としてのデンマーク国債の発行を取りやめることで、海外投資家によるデーンマーク資産の買入を結果として制限することになり、通貨クローネの需要を後退させることが目的だとか。

 デンマークもスイスのように安全に資金を運用できる先と見なされており、通貨クローネにも上昇圧力が加わっている。スイスは通貨高圧力に対し無期限介入で一定水準に押さえようとしたが、ECBの量的緩和の導入により、それを放棄せざるを得なかった。それでもまだスイスは介入を続けているようである。これに対してデンマークは国債を発行しないという手段により、クローネの需要を後退させて通貨への買い圧力を後退させようとしている。

 さらに国債を発行しないことで、デンマークの国債市場の需給がタイトになり、既発債は買い進まれることになる。デンマーク国債の指標となる8年債の利回りは2月2日に初めてマイナスとなったそうである。長期金利を低下させることでクローネの需要を後退させるということも目的となる。

 デンマーク中銀はすでにマイナス金利政策をとっており、22日のECB理事会を前にして1月19日に主要政策金利である譲渡性預金(CD)金利を0.15%引き下げ、マイナス0.20%にしていた。短期債と5年債あたりまでの利回りは、先月の利下げ以来、既にマイナスとなっていたが、指標、つまり長期金利がマイナスとなったのは初めてのようである。

 すでに政策金利をマイナスにしており、さらなる追加緩和手段としては金利操作以外では量的緩和策となるが、デンマークは国債を買い入れるのではなく、国債を発行しないという手段で量的緩和と同様の効果を発揮させようとした。

 欧州の中央銀行もあの手この手の政策手段を講じて、特に通貨高を阻止しようと必死のようである。

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by nihonkokusai | 2015-02-04 10:12 | 国債 | Comments(0)

原油先物と消費者物価指数(日本と欧州編)

 欧州連合統計局(Eurostat)が発表した1月のユーロ圏CPI速報値は、前年同月比でマイナス0.6%となった。昨年12月はマイナス0.2%となっており、マイナス幅が大きくなった。このマイナス0.6%は、2009年7月に並ぶ過去最大の物価下落率となった。この今年1月の物価下落は原油先物の下落による燃料価格の急落が背景にあった。

 ユーロ圏は2009年6月から10月にもインフレ率がマイナスとなっているが、これは日本のCPIでも同様の動きがあった。このとき、何が起きていたのか。

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 2008年1月18日に証券化商品を保証していたモノラインと呼ばれた金融保証会社が資本調達難から格下げされ、証券化商品全体の価格下落に拍車をかけた。世界的な株安連鎖により市場は混乱に陥った。3月14日に証券化商品を大量保有していた投資銀行のベア・スターンズが資本調達の失敗から資金繰りに行き詰まり、FRBの資金支援のもとJPモルガン・チェースに買収された。

 このタイミングでなぜか商品市況が急騰していたのである。中国やインドなど新興諸国を中心とした世界的な需要増加によるものとの見方もあった。しかし、原油価格は2008年7月11日につけた147.27ドルをピークに急落していた。

 サブプライム問題を起因としての米大手金融機関の巨額損失に加え、米政府系住宅金融機関の経営不安まで出てきて、金融不安が再び広がりを見せ、金融株が大きく売られていた際に、原油先物が上昇基調を続けていた。米金融株と原油先物のチャートを見ると綺麗に逆相関となっていた。ヘッジファンドなどが米金融株売り、原油先物買いといったポジションを大きく組んでいたのではないかとの見方があった。そのポジションのアンワインドが7月以降起きたとされる。

 原油先物は2008年末には40ドル近辺にまで下落しており、ピーク時から三分の一以上に下落した。日本のコアCPIは2008年7月に前年比プラス2.4%と軽く現在の日銀の物価目標を超えていた。それが1年後の2009年7月には前年比マイナス2.2%となり、8月にマイナス2.3%となっていた。原油価格の急落により、前年比で大きく落ち込むことになった。日本と同様のことが2009年6月から10月にかけてユーロ圏でも発生し、そのときに過去最大の物価下落率をユーロのCPIでも記録していたのである。

 ちなみに原油先物は2008年2月に40ドル近辺となり、2009年2月には80ドル近くと倍になっているが、2009年2月の日本のコアCPIはマイナス1.2%に止まっている。確かにマイナスのピーク時からはマイナス幅は縮小しているが、原油価格は倍になってもそれほど大きくマイナス幅は減少していない。

 現在の日銀は原油価格が下げ止まり、再び上昇すればCPIは物価目標達成も可能としているが、2008年から2009年のあたりの動きからは見てそれはあくまで期待に過ぎない。

 今回の原油先物の下落は、ヘッジファンドなどの仕掛け的な動きも入っていた可能性はあるが、2008年のときのような仕掛け的な動きとはまた異なる。サウジアラビアなどがシェールに対抗して値を上げないような政策をとっているためとされる。ヘッジファンドが仕掛けていれば、そのアンワインドも起きるという期待もあろうが、現在の原油価格はそうではなく、どの程度の価格低下に耐えられるかを試しているような状況にある。その急激な反動はそれほど期待しにくいのではなかろうか。

 そうなると一時の相場の反動による影響を受けていた2008年から2009年にかけての状況と現在は異なる。そしてCPIそのものも2008年当時は日本のCPIのほうがより影響を受けていたが、前年比で見る限り今回はユーロ圏のほうが影響力が大きいように思われる。日本についてはアベノミクスによる円安により、物価がある程度支えられていた面もあったのかもしれない。このあたり、ユーロ圏と比較した分析も必要かもしれない。

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by nihonkokusai | 2015-02-03 09:45 | 景気物価動向 | Comments(0)
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