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二・二六事件と高橋是清

 これを書いている2月26日は79年前に二・二六事件が起きた日である。1936年2月26日未明に陸軍の青年将校らが1400名余の兵を率いて昭和維新を起こそうと決起し、未遂に終わったクーデターとされる。この犠牲者となった一人が高橋是清である。

 高橋是清による高橋財政は円安放置政策、日銀引受による国債発行と財政支出の拡大、大きな低金利政策が柱となっていた。景気対策という側面からみると、井上デフレと呼ばれた深刻な不況から脱するために、積極財政と低金利政策により有効需要の拡大を計った。高橋財政の柱のひとつである財政支出の拡大は、農村救済のための時局匡救事業はあったものの、軍事費の拡大が最大の要因となっていた。

 放漫財政とも呼ばれた拡大財政について高橋是清は、比較的短期間のうちに歳出規模は再び収縮し、景気回復に伴う税収増と相まって財政収支は均衡を回復するとの認識でいたが、これはやや楽観的すぎる見方であった。1934年度の予算編成のころとなると、さすがに高橋是清も財政膨張の抑制、国債増額の是正に取り組みはじめる。1934年4月に高橋蔵相は次のように発言している。

 「赤字公債が年々増えることは良くない。政府は決して之を安心して、何時までも続け得るものとは思って居らぬ。併し一昨年以来の我が国の一般経済界、産業界の有様を見たとき、先ず政府が刺激剤を与えるより外に手段はなかった」

 1932年以降の政府支出の拡大要因は軍事費の拡大が主要因となったことで、財政政策の転換は簡単にはいかなかった。1935年に高橋蔵相は軍備拡張を強引に要求する軍部と対立する。高橋は軍部予算を海軍と陸軍一律に削減する案を実行しようとしたが、海軍に対する予算規模の小ささに不満を持っていた陸軍の恨みを買うことになり、二・二六事件で高橋蔵相も標的とされたのである。

 高橋財政のリスクとしては、財政拡大の主因が軍事費であったことに加え、日銀による国債引受があった。これについて高橋是清は「一時の便法」と称していたが、それはある意味、パンドラの箱を開けてしまったと言える。デフレからの脱却期であれば、その弊害は見えてこないものの、経済が回復するとそのリスクが拡大する。つまり、日銀による国債の売りオペを行って過剰流動性を吸収しても、国債発行による財政拡大が続けば信用膨張が進む。これを抑制しようにも金融引き締め政策の実行が著しく困難となる。

 高橋是清の考案した日銀引受による国債発行は、市中公募と異なり発行額や発行条件が市場動向に左右されなくなる。そもそも日銀の国債引受方式による大量の資金供給は金利そのものの引き下げも目的としており、財政負担の軽減を目的に発行する国債の利率の引き下げを計ることも重要な目的となっていた。金融緩和策ととも、国債の発行条件の引き下げにより、金利の先安予想が強まり、国債価格の上昇予想を背景にして、国債の売りオペを通じての市中消化を円滑に行うことが可能となっていた。つまり、これは金利の引き上げを行うことはかなり困難になることを意味し、その好循環が途切れるとすべての歯車がうまく回らなくなることも意味する。結果的にこれが戦後のハイパーインフレの要因となり、政府債務はそのハイパーインフレと預金封鎖により国民の金融資産を吸い上げて返済されることになる(「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」より一部引用)。

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by nihonkokusai | 2015-02-27 09:47 | アベノミクス | Comments(0)

日本と中国の米国債保有高が接近

 ゆうちょ銀行とかんぽ生命は日本国債の保有高を減少させて米国債主体の外国債券の保有額を増加させている。GPIFも国内債を減らして株式や外国債券の比重を高めている。この結果、国別の米国債保有高において日本が再びトップの中国に接近しつつある、とのご指摘をいただいたので、あらためて確認してみた。

 久しぶりに米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES、http://www.ustreas.gov/tic/mfh.txt)を確認してみたところ、確かに日本と中国の米国債保有額が接近しつつある。

 2014年12月の上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)。中国(China, Mainland)1244.3 、日本(Japan)1230.9、ベルギー(Belgium)335.4、カリブ海の金融センター(Carib Bnkng Ctrs)333.2、石油輸出国(Oil Exporters)285.9、ブラジル(Brazil)255.8、スイス(Switzerland)190.1、英国(United Kingdom)189.2、台湾(Taiwan)174.4、香港(Hong Kong)172.6。

 3位のベルギーはルクセンブルグに本社を置く清算機関ユーロクリアにロシアなどが保有する米国債を預けているのではとの観測がある。カリブ海の金融センターや英国が上位にきているのは、ヘッジファンドなどが資金の逃避先として米国債を購入していることも影響しているのではないかと思われる。石油輸出国については、原油価格の下落による影響が今後出てるのかも注意したい。

 中国は2013年12月の1270.1ドルから2014年12月に1244.3に減少し、日本は同1182.5から1230.9に増加している。日中の米国債保有額の差は2014年12月が13.4だったが、11月は8.9まで縮まっていた(単位は10億ドル)。

 GPIFの運用方針の変更とそれによる共済年金なども同様に、国債から米国債などへの資金シフトが進むとみられ、ゆうちょ銀行やかんぽ生命ばかりでなく、他の生保なども利回りの低い国内債から米国債などへの資金シフトが継続することも予想される。

 FRBは年内にも利上げを実施し、その後保有する米国債やMBSの残高も減少させていくことが予想される。その大きな受け皿のひとつに日本の投資家がなり、その結果、米国債保有残高を減少させている中国に変わり、いずれ日本が米国債の保有額の最大手に返り咲くことが予想される。

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by nihonkokusai | 2015-02-26 10:15 | 国債 | Comments(0)

日銀は物価目標を変更すべきなのか

 日銀は2月23日に1月20日と21日に開催された金融政策決定会合の議事要旨を公表した。日銀が会合の約1か月後に発表するのが「議事要旨」で、ここには具体的な発言者の名前は記載されておらず、発言がすべて網羅されているわけではない。日銀は10年後に精細な内容が記された「議事録」を発表している。FRBも約3週間後に議事要旨、5年後に議事中のジョークまでも含めた議事録を公表している。ECBも2月19日に初めてこれまで非公開だった理事会の議事要旨を公表した。

 議事要旨のなかでも注目すべきは金融政策を決定する政策委員の発言内容となる。金融経済情勢に関する委員による検討のところをみてみると、

 「原油価格の大幅下落やギリシャ政局の不透明感の高まりに加え、スイス中銀による為替目標の廃止などもあって、神経質な動きがみられているとの認識を共有した。何人かの委員は、米国での利上げ時期が近づいてくる中で、それが国際的な資金フローに与える影響について注意する必要があると述べた」とある。

 原油価格の大幅下落については、世界経済全体でみれば先進国を中心にプラス面が大きいとの認識で一致したそうだが、そうなると昨年10月31日に慌てて追加緩和を実施した目的が問われるが、円安を見込んだ政策とみれば納得できなくもない。

 スイス中銀による為替目標の廃止については、そのあとに具体的な発言はなかったものの、それなりに気になっているであろうことも確かである。

 国内経済について、特に個人消費については雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいるとの認識で一致した。このあたりの認識を見る限り、追加緩和に動くような様子は見られない。当然ながら、政策目標の変更も伴うことになる超過準備の付利の変更などは一切、議論はされていないようであった。

 「物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、+0%台後半となっており、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小する可能性が高いとの見方で一致した」

 「委員は、このところ原油価格が大幅に変動しており、消費者物価の見通しは、先行きの原油価格の想定によって大きく影響を受けることを踏まえると、今回の中間評価では、前提となる原油価格を委員間で揃えることが適当であるとの認識で一致した」

 もしそうであるのなら、大胆に国債など買わず、原油価格に影響を与える何かで政策を行ったほうが物価目標達成を容易にするのではなかろうか。それ以前にリフレ政策の前提にマネタリーベースを思い切って増加させ、レジームチェンジが起きてインフレ期待が強まれば、簡単に物価は上がるものではなかったのか。

 「エネルギー価格の寄与度の試算を公表することが有用であるとしたうえで、消費者物価指数(除く生鮮食品)前年比におけるエネルギー価格の寄与度は、2015年度で-0.7~-0.8%ポイント程度、2016 年度で+0.1~+0.2%程度になるとの認識を共有した」

 大胆な国債買入とマネタリーベース増加による期待インフレと実際のCPIへ影響試算はどこにいったのであろうか。すべてを原油価格下落のせいにして、異次元緩和の効果がなかったことは完全に無視なのであろうか。

 「もっとも、多くの委員は、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調的な動きに変化は生じておらず、着実に高まっていくとの見方を示した」

 言葉で言うのはたやすいが、この根拠は何を持って示せるのか。岩田副総裁はBEIが使えないことはその数値の下振れもあり認めてしまっている。アンケート調査で人々のインフレ予想というのが見えるものなのか。もし自分が調査を受ける側として考えるとそこに何か意味が見いだせるとも思えない。

 「多くの委員は、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくとの前提に立てば、2015年度を中心とする期間に達する可能性が高いとの見方を示した」

 これがいわゆる希望的観測と呼ばれるものであろう。これについて3人の委員が反対の意見を述べている。一人の委員は、円安にもかかわらず消費者物価の前年比プラス幅が足もとゼロ%台前半にとどまっていることを踏まえると物価目標は難しいとの認識を示した。別の一人の委員も消費者物価は見通し期間中に2%に近づくにとどまるとの見方を示した。さらに別の一人の委員も先行きの物価は委員の中央値よりも低いとみており、2015年度を中心とする期間に2%に達するのは難しいとの見方を示した。  この3人とは昨年10月の追加緩和に反対票を投じた木内委員、佐藤委員と、森本委員か石田委員と予想される。この見方がむしろ素直だと思われる。さらに、現在の日銀のリフレ政策を先導したとされる浜田宏一内閣官房参与は日銀は2%の物価安定目標の早期達成にこだわる必要はないとの見解を示した。浜田参与は「原油安は外生要因であり、かつ日本経済に恩恵をもたらすと指摘。目標水準を1%近くに引き下げたり、達成期限を現行の2年程度から3年程度に延長しても日銀への信認が損なわれることはないとし、目標を再検討すべき」と語ったそうである(ロイター)。黒田総裁以前の日銀の金融政策に戻せとどうやらおっしゃっているようにも思われる。

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by nihonkokusai | 2015-02-25 10:04 | 日銀 | Comments(0)

ゆうちょ銀行とかんぽ生命の国債運用

 ゆうちょ銀行は、今年の秋を目指す株式の上場に向け、これまでの国債を中心とした資産運用から、外国の証券などの比率を高めていくそうである。日本郵政グループが発表した2015年第3四半期決算の概要によると、ゆうちょ銀行とかんぽ生命のポートフォリオは以下の通り。
2015年第3四半期決算の概要
http://www.japanpost.jp/financial/pdf/03_2015_q3_01.pdf

ゆうちょ銀行
2014年12月末、2013年12月末
貸出金、2兆8932億円、3兆763億円
国債、109兆8856億円 126兆3910億円
地方債 5兆7594億円、5兆5503億円
短期社債 2569億円、3339億円
社債 11兆337億円、11兆501億円
株式 9億円、9億円
外国証券、30兆2184億円、22兆7313億円
金銭の信託、3兆2507億円、2兆9190億円
預け金・短期運用資産等 41兆9664億円、28兆2923億円
運用資産合計 205兆2655億円、200兆3455億円

かんぽ生命
2014年12月末、2013年12月末
貸出金、10兆4820億円、11兆205億円
国債、49兆723億円 52兆5229億円
地方債 9兆5352億円 9兆1737億円
社債 6兆6931億円、6兆4418億円
株式 9億円、9億円
外国証券、2兆65億円、1兆2394億円
金銭の信託、1兆3317億円、5816億円
その他 5兆8905億円、6兆1074億円
運用資産合計 85兆126億円、87兆886億円

 ゆうちょ銀行の預金残高そのものの減少傾向は2011年あたりでボトムを打ち回復傾向にあり、180兆円近くまで回復してきたが、国債残高は引き続き減少傾向にある。2013年末に比べて16兆5054億円の減少となった。それに対して預け金・短期運用資産等は13兆6741億円増加し、外国債券は7兆4871億円増加している。中短期債の利回りがマイナスになるなどしていたこともあり、国債を売却しそれを日銀の当座預金に置いたままにするなり、一部を外国債券で運用していたとみられる。

 かんぽ生命も全体の運用資産が減少し、主に国債の運用額を減少させていたが、地方債や社債はほぼ維持、外国証券の残高を増加させていた。

 ゆうちょ銀行は高度な資産運用を行うファンドマネージャーや、高度な運用に伴うリスク管理を行う専門の人材を数十人規模で外部から採用し、本格的な運用チームを作るとしている。報道によると9億円しかない株式運用については触れられておらず、GPIFのような大きなポートフォリオの入れ替えにはならないと思うが、少なくとも国債の保有残高をさらに減少させようとしていることは確かである。

 GPIFは株式運用などの比率を上げるため、国債をかなり売却してきたが、ゆうちょ銀行やかんぽ生命についても、これまで国債保有残高は減少させてきており、ここからの国債残高減少による国債市場への直接的な影響は限定的とみられる。しかし、それは別なリスクを増加させる。

 GPIFの運用方針の変更により、共済年金や厚生年金基金にも影響を与え、さらに国債を大量に保有するゆうちょ銀行やかんぽ生命も国債の保有残高を減少させてきている。都銀も国債保有額をかなり減少させており、日銀への国債消化の依存度が異常に高まりつつある。日本国債は国内資金で十分に消化できる状況があり、需給面では問題はなかったところに、アベノミクスなどにより公的機関の国債偏重の投資スタンスを変更せざるを得なくなり、その分は日銀の買入によって補われるような構図となっている。

 仮に日本の国債消化が日銀の巨額買入なしに難しくなったとみなされたときに、日銀はテーパリングどころか、その巨額買入を永久に続けざるを得ない状況にも追い込まれかねない。まさに財政ファイナンスが意識される状況がリスク要因として認識されたとき、債券市場はかなり揺れ動く懸念が生じる。果たして現政権はこのリスクある政策をいつまで続けていくつもりなのであろうか。

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by nihonkokusai | 2015-02-24 09:29 | 国債 | Comments(9)

1月に都銀は中期債主体に大量の売り越し

 日本証券業協会は2月20日に1月の公社債投資家別売買高を公表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先(条件付売買)を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使う。

 1月の最大の売り越しは噂されていたように都銀であった。トータルで1兆3173億円の売り越しとなっていた。同時に公表された国債の投資家別売買高によると、都銀は中期債を9855億円、長期債を1056億円、超長期債を1779億円の売り越しとなっていた。ほかの投資家はこれほど大きな売り越しをしていたところはなく、1月20日を起点としての債券相場の調整局面には、この都銀というかメガバンクの動向が大きく影響していたと思われる。

 今年に入り、ECBの量的緩和観測による欧米の長期金利の低下なども手伝って、日本の債券の利回りも低下してきた。昨年末にかけて2年債利回りあたりまでマイナスとなっていたが、1月20日には5年債カレント物の利回りもマイナスとなった。さらにこの日に10年債は一時0.195%と過去最低を更新し、ここが現在までの過去最低利回りとなっている。

 この2015年1月20日に5年国債入札があったが最低落札、平均落札利回りともに0.000%となった。そして1月22日にはECBが念願の量的緩和を決定する。この22日の日本での20年国債入札は入札結果はそれほど悪くなかったものの、この結果発表後に相場は急落し、地合が急変したのである。

 1月末にかけて20年債利回りは1.0%台を回復したが、それとともに中期債利回りのマイナスが解消され、5年債利回りは1月末に0.060%に上昇していた。

 業者のリスク許容度の低下は2月3日の10年国債入札で明らかになるのだが、それまでの間に相場の調整は進む。日銀の買入に向けて相場を仕掛けて上昇させ、利ざやを稼ぐという手法が取れなくなった。相場下落により短期間とはいえ保有国債の価格変動リスクが意識され、それが2月3日の10年国債入札の結果に現れた。

 あらためて1月の投資家動向を確認しておくと、売り越しは信託銀行の2141億円の売り越しとその他金融機関の1741億円の売り越しが目立つ程度。信託銀行は年金絡みの売りとともに、長期債から超長期債への乗り換えもあったようである。

 買い越しとしては地銀が9563億円の買い越し、主に長期債主体の買い越しとなっていた。農林系金融機関が5679億円の買い越し、こちらは超長期債主体の買い越し。生損保が3602億円の買い越し、こちらも超長期債主体の買い越し。外国人が3152億円の買い越し、こちらは長期債主体。信金が2881億円の買い越し、こちは超長期債主体。さらに投資信託は2217億円とこちらは中期債主体の買い越し。投資信託は日銀に当座預金を持っておらず、短期資金の置き場としては中短期債の購入にある程度頼らざるを得ない面もある。

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by nihonkokusai | 2015-02-23 09:40 | 債券市場 | Comments(0)

今年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算

 財務省は2月18日に「平成27年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」を公表した。この試算は一定の経済前提を仮置きした上で、後年度(平成30年度まで)の歳出・歳入がどのような姿になるかについて機械的に試算したものである。

 試算は2つに別れ、来年度以降の名目経済成長率を2.0%とし消費者物価上昇率も2.0%に置いたものと(試算1)、来年度以降の名目経済成長率を1.5%とし消費者物価上昇率は1.0%に置いたものに分かれる(試算2)。いずれも消費税率引上げの影響は考慮しない。

 国債費を算出するための長期金利については下記の予想となっている、これも平成27年度は予算における積算金利、平成28年度以降は市場に織り込まれた金利の将来予想を加味した金利により積算している。

 2015積算 2016 2017 2018 2019 2020
試算1 1.8% 1.9%2.1% 2.3% 2.4% 2.6%
試算2 1.8% 1.8%1.8% 1.8% 1.8% 1.8%

 この試算によると国債費は、下記のようになっている(単位、兆円)


  2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
試算1 23.3 23.5 24.9 26.8 28.6 30.7 32.7
試算2 23.3 23.5 24.9 26.7 28.2 29.8 31.2
 長期金利の予想については、現在の0.4%程度に比べてやや高めに設定されている。これはあくまで試算であり、成長率や物価上昇率が反映されれば、この程度の長期金利の上昇もありうるとの前提となっている。このため利払い費についてはかなり高めに設定されているといえる。

 これは機械的に算出したものであり、現実に長期金利が想定された2%近辺に上昇すると、その要因次第では経済成長や税収そのものにも影響を与えることも想定される。現在の長期金利がファンダメンタルズに対して適正なものかどうかの判断も難しいが、日銀の大規模な国債買入によりかなりの程度押さえられていることも確かである。それとともに簡単には物価上昇は難しいとの前提も働いているとみられる。

 さらにここには国債に対しての信認度合いによる長期金利の変化は当然加味されていない。いわゆる財政リスクプレミアムの部分であるが、それが意識された動きが出る可能性も皆無ではない。

 いずれにしても巨額の国債残高を抱えている以上、国債費も膨大なものとなる。それをある程度抑えるためにも国債の信認を維持させ、それとともに税収を増やしていかなければならないことも確かである。

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by nihonkokusai | 2015-02-20 09:28 | 国債 | Comments(2)

預金封鎖の真の目的

 昨日のコラムで戦後の預金封鎖の目的について、NHKの番組をもとに書いたが、この番組のなかで、日本総合研究所調査部の河村小百合上席主任研究員がコメントをしていた。なぜだろうと思っていたが、預金封鎖について調べていたところ興味深いレポートが見つかった。日本総研の河村小百合研究員が「財政再建にどう取り組むか」というタイトルのレポートで詳しく触れていたのである。今回はこのレポートの内容をもとに、もう少し預金封鎖の目的について探ってみたい。

「財政再建にどう取り組むか」
─国内外の重債務国の歴史的経験を踏まえたわが国財政の立ち位置と今後の課題─
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/7020.pdf

 預金封鎖の本来の目的は特に秘密にされていたわけではない。我々世代では現代史についてはさらっとしか授業は受けておらず、預金封鎖についても銭から円単位に切り替えられた程度の知識しかなく、本来の目的に触れる機会がなかっただけかと思う。

 河村氏のレポートでは「重債務国が財政運営に行き詰まり、非連続的な国内債務調整が行われる場合の典型例として、わが国の第二次大戦後の経験を、財政当局監修のもとに公表されている資料等を基に検証した」とある。

 終戦の前年の時点で日本が抱える国債・借入金の対国民所得比は約260%と、現在の政府債務規模に匹敵する水準であったが、英国の1946年の債務残高もGDP比269%となっていた。第一次世界大戦後のドイツの天文学的インフレを除くと、これが先進国史上最悪の水準になるが、日本も同水準の債務を抱えていたことになる。

 「終戦とともに、財政運営の継続は困難となり、わが国の政権・財政当局は、「取るものは取る、返すものは返す」という政策運営方針のもと、大規模な国内債務調整に踏み切った。」(JRI河村氏のレポートより)

 NHKの特集でも、大蔵官僚の発言として、以下の言葉が紹介されていた。

 「天下に公約し国民に訴えて発行した国債である以上は、これを踏みつぶすということはとんでもない話だ。取るものは取る。うんと国民から税金その他でしぼり取る。そうして返すものは返す」(NHKのサイトより)

 それでは何をとって、どう返していたのか。河村氏は下記のように説明している。

 「具体的には、終戦の翌年の昭和21年2月、預金封鎖と新円切り替えを電撃的に実施し、後に続く異例の課税に先立って国民の資産を差し押さえた。そのうえで、同年秋以降、1度限りの空前絶後の大規模課税として、ほぼ全国民を貧富の差なく対象とする「財産税」課税を断行し(=「取るものは取る」)、それを原資に内国債を可能な限り償還した。外国債に関しては、わが国は戦時中の昭和17年からすでに債務不履行状態に陥っていた一方で、内国債の元利償還は、このような異例の財源手当てによって、形式的には維持された(=「返すものは返す」)。」(JRI河村氏のレポートより)

 つまり預金封鎖と新円切り替えの目的は、国民の財産を把握するだけでなく、それを差し押さえことが目的であった。財産税により、差し押さえたものから強制的に徴収することで、それを原資に内国債の償還に当て、債務を減少させていたのである。

 ちなみにここに日銀の存在はない。日銀が国債を買えば国民にとっては恩恵で、政府のバランスシートは落とせる、みたいな論理が通用しないことは、このような歴史が証明している。政府債務は債務不履行という手段を取らない限り、国民がそれを返済する義務があり、適切に債務を削減させていかない限り、その手段はこのような強制的なものともなりうるのである。

 「他方、戦時中に国民や国内企業に対して約束した補償債務については、「戦時補償特別税」の課税によって、実質的な国内債務不履行を強行した。封鎖預金は、これらの「財産税」や「戦時補償特別税」の納税に充当されたほか、民間金融機関等の経営再建・再編に向けての債務切捨ての原資にも充当された。これが、わが国で終戦直後に実施された、非連続的な国内債務調整、すなわち国内債務デフォルトの概要である」(JRI河村氏のレポートより)

 対外債務は実質的なデフォルトとし、対内債務についてはハイパーインフレでかなり目減りしてたが、最終的には預金封鎖と新円切り替えで国民の財産を差し押さえ、財産税により徴収した資金でそれを返済した。そして、戦時中に国民や国内企業に対して約束した補償債務については、戦時補償特別税の課税というかたちでチャラとしたのである。

 「あくまで、敗戦後という特殊な局面での事例ではあるものの、政府債務の大半を国内資金で賄う重債務国が、非連続的な形で清算を迫られる場合の一類型であるといえよう」と河村小百合研究員は解説している。現在の日本も同じ課題を抱えていることは確かである。

 NHKの番組では渋沢敬三元蔵相の「申し訳ないと思う。国民に対してこんな申し訳ないことはない。私は焼き打ち受けると思った。それくらい覚悟した。」との発言も紹介している。

 日本国債については、膨大な国民の金融資産があるからいくらでも発行しても問題ないとの指摘がある。その指摘はあながち間違いではない。もしもの時にはこのような形で、我々の資産がなかば強制的に政府の債務返済に充てられることがありうることを歴史が示している。それをさせないためにはどうすべきか、我々はあらためて考えるべき時に来ているのではなかろうか。繰り返すが日銀が国債を買えば済む問題ではないし、それはむしろ問題を悪化させかねないのである。

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by nihonkokusai | 2015-02-19 09:37 | 国債 | Comments(4)

預金封鎖と政府債務の削減

 2月16日のNHK総合テレビ夜9時からのnews Watch9では、「預金封鎖、もうひとつのねらい」と題して、戦後実施された預金封鎖がピックアップ記事として報じられた。なぜこのタイミングでこれが報じられたのか。あらためて日本の財政悪化に対して警鐘を鳴らそうとしていたとも考えられる。

 戦後の預金封鎖とは何か。1946年2月に政府はインフレの進行に歯止めをかけることを目的として、金融緊急措置令及び日本銀行券預入令を公布した。5円以上の日本銀行券を預金、あるいは貯金、金銭信託として強制的に金融機関に預入させ、既存の預金とともに封鎖のうえ、生活費や事業費などに限って新銀行券による払い出しを認める、新円切り替えが実施された。

 番組では預金封鎖によるインフレ対策は限定的であり、政府の目的は別の面にあったと指摘している。つまり国民の預金を封鎖し、その際に銀行預金などの国民の資産を把握して、資産に対して税金を掛けて政府収入にあて、政府債務を削減することが大きな目的となっていた。実際に預金封鎖と同時に最高90%も課税される財産税が課せられていた。

 公債残高は敗戦時に1408億円、政府保証等の残高は960億円に上がっていたが、猛烈なインフレーションの結果、1944年から45年までに実質政府債務残高はすでに3分の1以下に減ったとされる。しかし、それだけでなくハイパーインフレーションの最中に実施された1946年7月の財産税と戦時債務保証打切りによる企業・家計部門の負担での清算も大きかったとされている。ここに預金封鎖も絡んでくる。戦後の混乱に紛れ、政府債務を一気に解消するという荒技を行っていたのである。

 日銀の審議委員の候補とされる方が、政府債務である国債は日銀が買い入れれば、日本人に恩恵を与え、日銀は大きな儲けを生み、日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせると語っていた。

 現在の日本の政府債務のGDP比はこの戦後の状態に匹敵する。戦後のハイパーインフレの主要因が財政赤字にあったことは確かであり、日銀の国債引き受けがそれを容易にさせた。だからこそ1947年に制定された財政法では、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」(第四条)として国債の発行を制限するとともに、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。」(第五条)として日銀による国債の直接引き受けを禁じたのである。

 ハイパーインフレになりそうになっても、日銀はインフレターゲット政策をとっているため、物価を目標値に誘導させれば問題ないとの声も聞かれる。その物価目標を達成することがすでに困難になりつつある。さらには、その前提となっている予想物価に使うBEIには不備があったと、今更弁解している日銀が、物価を簡単に動かせることなどできないことを今回の壮大な実験で明らかにしている。

 インフレターゲットはあくまでそれは目標であり、絶対的なものではなく、金融政策でそれを達成することはできない。それを前提に金融政策を考えなければ、もしもの時には日銀が事態をさらに悪化させかねないことになる。

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by nihonkokusai | 2015-02-18 09:25 | 国債 | Comments(1)

債券市場のプチバブル崩壊の原因

 ここでも何度か2003年のVARショックのことを書いてきたが、今年の1月20日を起点とする日本の債券相場の変調はプチバブル崩壊といった動きとなっている。そしてそれは2003年のVARショックのときと類似点が多いことも確かであった。

 あらためて2003年のVARショックとは何であったのかを確認してみたい。2003年5月のりそな銀行に対する資本注入によって、大手銀行は潰さないといった意識が強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607.88円がバブル崩壊後の安値となり底打ちした。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、日銀の積極的な追加緩和も加わり、その後上昇基調を強めた。

 2003年3月20日、速水優総裁の任期満了に伴い福井俊彦氏が日銀総裁に就任した。就任直後の25日に臨時の金融政策決定会合が開催され、金融政策は全員一致で現状維持としたが、なお書きで、当面、国際政治情勢など不確実性の高い状況が続くとみられることを踏まえ、金融市場の安定確保に万全を期すため、必要に応じ、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行うとした。決定会合のあと通常の政策委員会を開催し、銀行保有株買取枠を2兆円から3兆円に拡大した。

 4月30日の決定会合では当座預金残高の目標値を、17~22兆円程度から22~27兆円程度に引き上げ、5月20日の決定会合では27~30兆円程度に引き上げた。このように福井総裁に代わってから、日銀の当座預金残高目標の引き上げは数度にわたって行われ、福井総裁のこの積極的な緩和姿勢を市場は好感した。

 6月までは債券相場は1日あたりの値幅も限られながら、じりじりと高値を更新し続けた。6月11日に30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録したのである。 この相場上昇過程において、目立ったのが都市銀行の一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いとされる。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、必要以上にポジションを積み上げ、一部の銀行を中心に異常なほどの超低金利を演出した。

 これはいわゆる債券バブルに近いものとなり、6月17日に日経平均株価が9000円台を回復し、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなり、大手生保などが超長期国債の購入を手控えたことが明らかになったことをきっかけに、債券相場は急落した。これがのちにVARショックと呼ばれた債券相場の急落である。

 今回の債券相場の調整も背景には日銀の異次元緩和がある。VARショックの際は日銀の量的緩和を背景にどこまで長期金利が低下するか試すような相場となっていた。そこには大手銀行による仕掛け的な動きがあり、10年債利回りの0.430%という過去最低を記録するまでに至った。ただし、このバブルは20年債の利回りが1%を割り込んだあたりをきっかけに崩壊した。

 今回は2003年6月11日と同様のことが2015年1月20日に起きていた。5年債利回りはマイナスとなり、10年債は一時0.195%と過去最低を更新した。すでに20年債の利回りは1.0%を割り込んでいた。この2015年1月20日に5年国債入札があったが最低落札、平均落札利回りともに0.000%となった。そして1月22日にはECBが念願の量的緩和を決定するが、この22日の20年国債入札は入札結果はそれほど悪くなかったものの、この結果発表後に相場は急落し、地合が急変した。2003年6月17日の20年国債入札も結果そのものは悪くはなかった。しかし、ふたを開けると最大手の買い手の存在がなかった。ここをきっかけに相場が急落したのである。

 10年債利回り、つまり長期金利が過去最低を更新し、20年債が1%割れで投資家がついてこなくなった。このあたりに今回とVARショックとの共通点がある。さらに今回は5年債カレントまでマイナス利回りになったが、これはまさに欧州の長期金利の低下に合わせて弾みでつけてしまった感が強い。

 その背景にあったのが、国内の銀行や証券のディーラーが、マイナス金利となるような高い価格でも国債を購入し、それをそれほど時を置かずにより高い価格でオペを使って日銀に売却し、鞘を稼ぐという動きであったとされる。相場が上がり続ける限り、この好循環は続く。業者としてしこのような行動に走るというのはある意味いたしかたない。これはVARショックの銀行の仕掛けも同様であった。しかし、相場が反転すると、この仕組みは崩れ去り、むしろ悪循環となり、ディーラーのリスク許容度が一気に低下してしまったものと思われる。

 今回の債券相場のプチバブルの崩壊は、ある程度利回りが上昇すれば落ち着くことも予想される。警戒された17日の20年国債入札もなんとか無難に切り抜けると地合が好転するかもしれない。しかし、今回も業者の痛手はかなり大きかったともみられ、日銀がいくら異次元緩和を続けようと、再び10年債の0.2%割れや5年債のマイナス金利化は難しくなる。短期債はさておき、5年債までのマイナス金利は日本においてはかなり説明が難しいこ。むしろ日銀の対応次第ではこのプチバブルの崩壊がプチでなくなる懸念もありうる。

 日銀は長期金利をコントロールできるとしているようだが、実はその日銀の金融政策を後ろ盾に市場参加者がコントロールしようとしていた。しかし、その市場参加者も痛い目にあった。これが市場の怖さでもある。日銀は物価や長期金利、さらには為替まで簡単にコントロールできるとの発想はかなり危険なものであることも認識すべきと思う。

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by nihonkokusai | 2015-02-17 09:08 | 債券市場 | Comments(0)

ギリシャのバルファキス新財務相が人気

 型破りなファッションの財務相といえば、麻生財務相とのイメージであったが、強力なライバルが出現した。日本時間の12日未明からベルギーのブリュッセルでユーロ圏の財務相会議が開かれ、先月誕生したギリシャの新政権のバルファキス財務相が初めて参加した。その欧州各国との交渉に挑むギリシャのバルファキス財務相が、強気な発言だけでなく、型破りなファッションで注目を浴びているそうである。

 「男性的な魅力が漂う」として、ドイツで大人気となっているとか。ドイツのシュテルン誌は「古典的な男性らしさ」と称える記事を掲載し、バルファキス氏は「黒の大型バイクを乗り回し、シャツの裾をズボンに入れず、ギリシャ彫刻でしか見られない古典的な男らしさを振りまいている」と書いてあるそうである(毎日新聞)。

 新たなカリスマ性を持った政治家が登場したようである。もちろんルックスやファッションにより、ECとギリシャの合意がスムーズに行くというものではないが、ドイツの反響などをみると、ギリシャの新政権はユーロ圏にとって、ビジュアル的には好意的にみられている可能性がある。

 もちろん今回のギリシャとECの交渉はかなり困難を極めることが予想される。先月誕生したギリシャの新政権にとって、国民の期待を裏切るわけにはいかず、その代わり国民もユーロ離脱との選択肢は当然とりづらい。ギリシャにとりユーロに加盟していることで、かなりの恩恵も被っていたはずであり、だからこそ何が何でもユーロ圏に残るために、財政悪化まで隠してしまい、それが裏目に出てユーロの信用不安を招いてしまった。

 ギリシャ新政権にとり、安易な妥協は許されないものの、落としどころを探り、なるべく有利な格好で支援策を取りまとめたいところであろう。そのあたりは緊縮策が必要だとするユーロ圏各国も当然、理解しているはずである。ただし、緊縮策そのものについては譲れないところでもある。現在のユーロの安定は加盟各国の財政の健全化が大前提となっており、ユーロにとどまる限りはこの前提を崩すことき許されないはずである。双方がある程度譲り合い、時間をかけての緊縮策といったような条件の緩和も必要となってくるのではないかと思われる。

 今後はいろいろな意味でギリシャのバルファキス財務相が脚光を浴びることになるのかもしれない。すでにバルファキス財務相による、ギリシャがユーロ圏を離脱すれば他の国が追随し、ユーロ圏は崩壊するとのかなり過激とも言える発言も注目されている。ケンブリッジ大学で経済学の教授をしていた経歴があり、ゲーム理論の専門家でもあるバルファキス財務相にとり、このような政策ゲームも得意分野なのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2015-02-16 09:39 | 国際情勢 | Comments(0)
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