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FRBの正常化は早くて6月なのか

 1月27日、28日のFOMCでは金融政策は現状維持となった。発表された声明文では、 正常化まで「can be patient」との表現が維持された。ただし前回のFOMC声明文で、このガイダンスはゼロ金利政策を「相当な期間(considerable time)維持することが適切になるだろうとした前回の声明と合致する」というかたちで残されていた「considerable time」の部分は削除された。

 中央銀行のこのような声明文の表記の変更は今後の金融政策の先行き予想を示しているとみられており、特に「can be patient」や「considerable time」との表記がキーワードとなっている。これを削除するなどの変更があれば、それにより次回の金融政策の変更に向けて歩みを進めているのか、反対に後退しているのか、市場参加者は判断する。

 今回、「considerable time」が削除されたことで連想されるのは、正常化(normalize)に向けて一歩前進しつつあることを示している。

 市場では発表される個々の経済指標データなどから利上げが遠のいたとか近づいたとか判断することがあるが、現在のFRBが目指しているのは「利上げ」や「金融引き締め」というよりも、あくまで正常化であることを意識すべきである。経済実態が異常な状況でなくなれば正常化、つまりは非伝統的な金融手段から伝統的な政策に戻すことは当然のことである。もちろんそれは慎重に行う必要はあるが、ノーマルに戻したいとするのは中央銀行当事者にとっては当然のことかと思われる。

 そして「can be patient」との表現が残されたことでの面白い解釈があった。前回のFOMC後の会見でイエレン議長は、我慢できるということは、FRBが今後2回の政策会合で利上げしない可能性が高いことを意味すると述べていた。今回1月のFOMCでは議長会見はなく、この解釈のままで良いのか確認はできないものの、もし今回も議長会見の解釈があてはまるのであれば、正常化、つまりゼロ金利解除は3月と4月の会合では見送り、6月以降ということになる。個人的には4月か6月かどちらかとみていたが、この解釈だと早くて6月ということになる。

 4月には議長会見はなく3月、6月にはある。このあたり3月の議長会見でさらにはっきりすると思われる。そしてゼロ金利解除を決定する際も議長がその理由を自ら説明する必要があるとなれば、4月より議長会見のある6月のほうが適切なのかもしれない。

 今回の声明文では、米景気は「堅調なペース」で拡大として緩やかなとの表現から置き換えられた。インフレ率は原油安などから「短期的にさらに下落しそうだ」との見通しを示したものの、今後の見通しについては「雇用回復や原油安の一時的要因などが消えるにつれて2%へ上昇していく」との見方を示した。このあたり日銀の説明に近いものがある。

 今回の現状維持は全員一致となった。ちなみに年が変わったことで一部連銀総裁のメンバーが替わっている。

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by nihonkokusai | 2015-01-30 09:34 | 中央銀行 | Comments(0)

異常なのはマイナス金利よりも金融政策か

 現在、日本でもマイナス金利が発生している、と言ってもピンと来る人はあまりいないのではなかろうか。預貯金金利はほとんど利息がつかないけれど、預金して金利が取られているわけではない。たしかにコンビニのATMで預金を下ろすと手数料が取られ結果としてマイナス金利となるかもしれないが、これはいまに始まったことではない。いまのところ日本の預貯金金利でのマイナスは発生していない。

 ただし、マイナス金利の先輩格のドイツでは、一部のオンライン銀行が2014年11月から大口預金に限り、預金額に応じて利息を付けるのではなく、顧客から利子を徴収するマイナス金利を同国で初めて導入した。すでに長期金利がマイナスとなっているスイスでは、クレディ・スイスは大手法人顧客から預金手数料を徴収することを明らかにしている。いずれ日本でも大口預金あたりがマイナスとなる可能性はありうるか。

 金利とは何であるのか。世界史の中での金利の起源は、古代文明発祥の地の1つとされているメソポタミアにあったと言われる。メソポタミア文明の時代、すでに寺院や土地所有者による利子付きの貸し出しが行われていた。利子の起源は、農業が始まった頃の種籾(たねもみ)の貸し借りによるものとされている。農民に対し神殿などが蓄えた種籾を貸し出し、それを借りた農民は借りた籾の量に3割程度上乗せして神殿に納めていた。これが利子の始まりとされている。

 資金を貸し借りする際にお金の価値を図るものとして金利が使われる。なぜ金利は存在するのか。お金を貸す際には金利を貰うことは当然のように考えているし、お金を借りる際には金利を払わなければならない。しかし、私たちが生活の中で、身近な人と小額のお金や物を貸し借りする際は、金利分を求めたり貰ったりしない場合もある。

 歴史を見ても、キリスト教の聖書などでは利子を否定する教えが存在している。そしてイスラム教では利子を取ることそのものが禁じられている。このためイスラム金融では利子ではなく、商品取引などから生じる利益や投資を行った結果の配当といった形態が利子の変わりとして採られている。

 経済社会においては、どうしても金利というものの存在が必要不可欠となる。経済の成長には設備投資などのために巨額な資金が必要となる。日本のような間接金融が主体となる国では、そのために貯蓄が必要となり、貯蓄の存在は利子がなければ成り立たない。直接金融の場合も企業が発行する債券には利子が必要となる。もし金利がつかなければ銀行にお金を預けたり、債券を購入するというインセンティブはなくなってしまう。

 しかし、預貯金には決済機能がついている。現在は特に電子化が進んでおり、給与の振り込みや電気料金などの引き落としについても銀行などの口座が行われている。このためたとえ金利がゼロ近くになっても口座にある程度の現金を入れておく必要がある。また、銀行にとってはこの預貯金が原資となり、それを元手に運用するため、マイナス金利にして預金額を減少させてしまうと運用の元手がなくなることになる。

 スイスでは10年あたりまで、ドイツや日本では5年あたりまでの金利がマイナスになろうとも、預貯金金利がマイナスとはならないのはこのような当たり前の理由が存在する。

 しかし、ECBは金融政策の一環として、下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)をマイナスとし、預金ファシリティ金利だけでなく超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用した。中央銀行にとり当座預金の現金は何かしらに運用して利益を得ることを目的としてはいない。このため、むしろ短期の預金に資金を止めておかず、もう少しリスクをとって貸し出しやリスクのある資産に資金を回させるたるに、マイナス金利を導入した。

 ところが日銀は当座預金に現金を積み上げて、マネタリーベースを大きくさせれば、インフレ期待が出て物価が上がるとの理由から超過準備の金利を0.1%に保っている。日銀にとり負債側の超過準備が膨れあがる分、反対側の資産として国債の残高が膨れあがる。これに対しECBは超過準備の金利をマイナスのまま大胆な国債買入を行おうとしている。なかなか面白い対比となっている。

 短期金利は中央銀行が操作しており、このようなマイナス金利の発生も技術的には可能である。個人であればマイナス金利が発生すればタンス預金にすれば良いかもしれないが、金額の大きな法人同士の取引では現金をそのまま置いておくことは現実的に無理がある。つまり保管する金庫が必要になる上、盗難リスク、さらに毎日のように現金の出し入れをする手間を考慮すれば日銀の当座預金や銀行などの口座を利用せざるを得ない。ここの金利をマイナスにするのはあまり現実味がない。このあたりECBやスイスなどマイナス金利を政策金利にも適用している事例はなかなか興味深いといえる。

 それではどこで日本のマイナス金利が発生しているのかといえば、国債市場においてである。その背景には日銀の大胆な買入や、海外投資家などからの需要があり、国債の担保需要などもある。

 それでもマイナス金利が異常な状態であることにかわりはない。日本の物価や経済はマイナス金利を発生させるほどの異常事態であるのか。それよりも異常なのは中央銀行の金融政策の方にあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-01-29 09:35 | 日銀 | Comments(0)

2015年のリスク要因

 2015年の金融経済の動向を予測する上でのリスク要因となりそうなものをピックアップしてみたい。ただし、リスクとはブラックスワンのごとく予想しえなかったものがきっかけとなることの方が多い。その意味ではこれから列挙するものは、むしろリスク要因とはなりえないものと考えることもできるかもしれない。

 欧州の危機が再燃するかどうかについては、ギリシャの動向が最大の注目要因となろう。25日の総選挙では予想されたとおり、野党であった急進左派連合がサマラス首相率いる新民主主義党を破り勝利した。これによりギリシャのユーロ離脱の懸念も出ていたが、急進左派連合はギリシャのユーロ離脱には慎重な姿勢を見せていることに加え、ユーロ圏の財相会議ではギリシャがユーロ圏に止まる事を前提に話し合いを行う方針を確認している。ギリシャの新財務相はギリシャはデフォルトすべきだと主張していたように、支援策をまとめることについては難航も予想される。しかし、ギリシャにとってもユーロ離脱は容易なものではないことも十分理解しているはずであり、ギリシャのユーロ離脱はリスク要因ではあるが、その可能性はきわめて低いのではなかろうか。

  格付会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は26日にロシアのソブリン格付けを「BBBマイナス」から、投機的等級となる「BBプラス」に引き下げた。経済成長見通しが悪化したことが理由としている。原油価格の下落による産油国経済への影響も大きく、さらにウクライナ問題も影響していよう。ウクライナ東部で戦闘が激しくなっていることで、再びウクライナ情勢がリスク要因として浮上する懸念もあるが、市場への影響度を見る限り、あまり材料視していないことからも、よほどの事態とならない限りは、ウクライナ情勢もあくまでリスク要因のひとつに過ぎない。

 原油価格の下落は世界経済にとり、果たしてリスク要因と言えるのかはさておき、日銀などにとっての注目材料であることは確かである。こちらはサウジアラビアのアブドラ国王が死去したことで、これまでの戦略が継続されるのかどうか注目されている。いまのところ、これまでの戦略が継続されるとの見方が強い。シェールガスに対して価格低下でシェア低下を防ぐ必要があるため、低価格戦略を変更することは難しい。問題はどの程度の原油価格の下落まで容認し、それをどの程度の期間続けるのかであるが、50ドル以下の状態をかなりの期間維持するのではとの見方も強い。

 各国中央銀行の動向はリスク要因となるのか。1月22日にECBはドラギ総裁念願の量的緩和策導入を決定し、市場はこれを好感した。米国の量的緩和が終了しても、その分を日銀やECBがカバーし、世界的な過剰流動性相場は続いている。FRBは今年6月あたりを目処にゼロ金利解除を実行してくると予想される。ダボスではサマーズ氏などがFRBの利上げについて懐疑的な発言をしていたようだが、米国経済については不安は少なく、物価の上昇圧力は低下しているものの、利上げに耐えられないような経済環境ではない。また、日銀やECBが過剰流動性の部分でカバーしていることで、市場への影響もそれほど大きくはないとみられ、すでにかなり織り込まれている。この環境下でFRBの利上げがリスク要因となることも考えづらい。

 日本のリスク要因としては、いろいろと矛盾が生じつつある日銀の金融政策がある。このまま物価が日銀の掲げた目標に遠ざかると、市場から追加緩和圧力が強まることも予想される。しかし、賃金がある程度上昇してくるとなれば、物価そのものは上がらずともデフレの状態からは抜けつつあるという説明がなされるかもしれない。日銀は軸足を2%という物価目標に固定せず、もう少し柔軟な姿勢に変わる必要がある。国債買入についても無理をしない程度に柔軟なものに変えれば、将来の価格変動リスクを押さえることができるかもしれない。もしそうでなければ、膠着し日銀に依存しすぎた日本の債券市場がリスク要因となる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2015-01-28 09:42 | 国際情勢 | Comments(0)

矛盾の多い日銀の追加緩和理由

 26日に12月18日、19日開催の日銀金融政策決定の議事要旨が公表された。このなかで原油価格の下落と金融政策運営の関係について委員の間での議論があったことが記されていた。

 「大方の委員は、「量的・質的金融緩和」の拡大は、原油価格の下落そのものに対応したものではなく、需要面の弱めの動きや原油価格の下落から物価上昇率が短期的に伸び悩む中で、デフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現化を未然に防ぐために実施したものであるとの認識を示した。」(日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 昨年10月31日の異次元緩和第二弾は、原油価格の下落そのものに対応したものではないとしている。当然であろう。日銀が量的緩和を拡大することで、原油価格の下落を止められるわけがない。原油価格の下落が止められなければ、原油価格の影響による物価下落も止められない。

 「需要面の弱めの動きや原油価格の下落から物価上昇率が短期的に伸び悩む中で」とは昨年4月の消費増税による需給面の影響と原油価格下落による「短期的」な影響を配慮して、「デフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現化を未然に防ぐため」に実施したそうである。

 いくつか疑問がある。2013年4月の量的・質的緩和により、レジームチェンジが起きて、デフレマインドの転換をすでに引き起こしていたのではなかったのか。原油安による「短期的」な遅延リスクを意識してまて追加緩和の必要はあったのか。

 「予想物価上昇率について、委員は、市場の指標やエコノミストなどの調査をみるだけではなく、企業や家計の物価観やそのもとでの行動の変化を捉えることが重要であるとの認識を示した」(日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 予想物価上昇率とはそもそも何か。物価変動債から導き出されるブレーク・イーブン・インフレ率はいかにも計算上の予想物価上昇率を示しているかに見える。しかし、これは債券市場のなかの一部参加者の、しかも短期的な国債需給の影響のもと、足元の経済指標などを考慮して出している数値にどれほどの意味があるというのであろうか。

 それよりも物価が上がると考えていれば、国債の利回りがもっと反応しているはずである。日銀が買い入れているから国債の利回りは押さえ込まれているというのもおかしい。日銀がいずれ実勢価格で買ってくれるから、とりあえず安心して低い利回りでも買えるだけであり、物価も上がりそうにない分、リスクも低いと市場参加者が感じているから現在の国債の利回りが形成されているのではなかろうか。

 「原油価格下落の物価に対する影響について、委員は、短期的には押し下げ要因になる、一方、やや長い目でみれば、経済活動に好影響を与え、基調的な押し上げ要因になる、前年比でみた短期的な物価押し下げ要因はいずれ剥落する、との認識を共有した。」(日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 このなかで特に三番目の「前年比でみた短期的な物価押し下げ要因はいずれ剥落する」との部分であるが、1年経ってから今度は原油価格が上昇してくれば、物価が上がるとの期待というか希望が含まれているように思われる。

 1年先の原油価格の動向など、いくら日銀でも予想はつかないのであろう。現在の原油価格は下がりすぎのように見えるが、下げた理由も当然存在しているはずであり、1年後に原油価格は上昇すると予想するのであれば、その下げた理由と戻る理由も明確に示す必要がある。むしろそうした方が人々の物価予想に影響を与えやすくなるのではなかろうか。ただし、原油価格が元に戻るとなれば、長い目でみれば、経済活動に好影響を与え、の部分の前提が崩れてしまう。

 当然ながらこの議論のなかには本音が隠されているであろうことは容易に想像しうる。CPIの前年比は1%を割らないとしていたはずの日銀総裁がトーンダウンし、物価の上昇幅は順調に低下していた。これには日銀が指摘していた需要面の弱めの動きや原油価格の下落も大きかったであろうが、そもそもそんな些細なことには関係なく、大胆なことをすれば人々の物価予想に働きかけて物価は上がるとしていた前提はどこに行ってしまったのか。その前提が崩れていたのであれば、それも説明する必要がある。

 昨年10月の異次元緩和第二弾が、FRBのテーパリング終了とタイミングを合わせての円安誘導が仮に本当の理由であったのであれば、今回のECBの量的緩和の理由説明と同様に日銀の量的・質的緩和も円安を目的とした物価への影響にあったと置き換える必要がある。期待などに期待するよりも、よほど現実味がある。ただし、為替も相場である以上、常に言うことを聞くわけではないことはスイスが教えてくれていた。

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by nihonkokusai | 2015-01-27 09:39 | 日銀 | Comments(0)

ECBが量的緩和を導入した意味

 1月22日のECB理事会では、FRBやイングランド銀行、日銀と同様の国債買い入れ型の量的緩和策の実施を決定した。ECBの指揮によりユーロ圏の各国中銀が2015年3月から国債を含めて毎月600億ユーロの資産を買い入れ、それを2016年の9月まで続け、買い入れ総額は1兆ユーロを超す見通し。

 毎月の買入額を決めて国債等を買い入れる形式はFRBと同様である。イングランド銀行は買い入れる全体の額をターゲットとしており、日銀はマネタリーベースの規模そのものをターゲットとして、国債については日銀の保有残高や買い入れる国債の平均残存年数も示していた。毎月の国債買入はそこから逆算し、償還分などを含めて決められる。

 ECBの買い取りの対象はユーロ圏の政府債のほか、欧州連合関連の国際機関が発行するユーロ建て債券となる。これまでに実施した資産担保証券(ABS)などの買い取りも続ける。対象となるユーロ圏の国債にはギリシャの国債は含まれていないが、財政再建の公約を守る点などを条件に、今後対象に加えることも示唆している。これは25日のギリシャの選挙も睨んだものと言えよう。

 ドラギ総裁は会見で「2%に近い中期的な物価上昇率の目標」に改めて触れており、達成が見通せるまで必要なら量的緩和を続ける考えを示唆した。つまり、「2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、量的・質的金融緩和を継続する」とした日銀のコピーともいえる。

 なぜこのタイミングでのECBの量的緩和の導入となったのか。元々、ドラギ総裁はFRBのような国債買入による量的緩和導入を熱望していた。しかし、ドイツなどの反対により実現がかなわず、そのため利下げという形式での追加緩和を実施せざるをえなかった(今回もドイツ、オランダ、オーストリア、エストニアなどの反対はあったが、原油安によるCPIの前年比マイナスなどを理由に政治的な根回しも完了し押し切った格好か)。そのECBの利下げにより政策金利の下限がマイナスとなっている。

 2014年6月のECB理事会で政策金利は0.1%引き下げられ、リファイナンス金利が0.25%から0.15%となった。コリドーとよばれる政策金利の上限と下限については、上限金利が0.4%%に引き下げられ、注目された下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)はマイナス0.1%となった。ECBの発表した声明文によると、マイナス金利は預金ファシリティ金利だけでなく「超過準備」や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用されるとある。

 この超過準備などの金利がマイナスとなっているということは、民間金融機関が保有する国債を中央銀行に売却し、その資金を置く場所の金利がマイナスとなっているということになる。そうなれば当然そこに残したくはない。他の運用先がさらなるマイナスでない限り、金利がプラスの運用先にある程度流れることが予想される。

 日銀はこの超過準備の金利をプラス0.1%にしているため、民間金融機関が国債売却で得た資金は日銀の当座預金に残り、それによりマネタリーベースが増加していく仕組みとなっている。ECBはここをマイナスのまま量的緩和に踏み切った。これはマネタリーベースの規模を大きくさせにくくするのではなかろうか。ただし、今回のECBの量的緩和であげたターゲットは買い入れる国債などの資産の規模であり、日銀のようなマネタリーベースとはなっていない。

 日銀はマネタリーベースを思い切って大きくすれば、インフレ期待が強まり、それで2%の物価目標が達成できるとした。その意味では超過準備の0.1%の付利を残した意味はある。しかし、ECBはマイナスのままとしたのは、ECBの量的緩和の目的が、国債買入による通貨ユーロの下落を誘い、それによって物価の下落を食い止めるというものであったのかもしれない。

 通貨高を止めようとしたスイス中央銀行がこのECBの量的緩和を睨んで、スイスフランの上限を撤廃し、スイスフランは急騰した。無制限介入ですら通貨安を招くことは難しい。

 日銀とECBは結果として、国債利回りの低下を促すような格好となったが、国債の利回りも市場で決定されるものである。しかも、その金利はマイナスという異常な状況に入り込んでおり、金利低下による影響については限定的とみられる。

 日銀がどれだけ国債を買い入れようと物価は上がらず、原油価格の動向に左右されてしまうことを日銀は認めてしまった。イングランド銀行とFRBは大規模な国債買入からは手を引いたが、日銀は大胆な国債買入を継続させ、そこにECBも加わった。これが何を招くのか。中央銀行の買入による国債バブルという、かつてない状況は結果として何を引き起こすのか。相場である以上、いずれ想像できない格好でその反動がくるであろうことも予想される。そのリスクをECBはさらに高めさせたともいえるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-01-26 09:46 | 中央銀行 | Comments(0)

原油価格の反発予測に頼らざるを得ない日銀

 1月21日の日銀金融政策決定会合では、金融政策は現状維持となった。「マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」が維持された。市場では超過準備の付利の引き下げもしくは撤廃観測もあったが、そうなるとマネタリーベースの維持が難しくなる点は注意する必要がある。このあたりについては超過準備の付利がマイナスとしているECBがどのようなかたちで量的緩和策を導入するのかも興味深いところ。

 今回の決定も8対1の賛成多数での決定となった。反対したのは今回も木内委員で、『量的・質的金融緩和』の拡大」前の金融市場調節方針が適当であるとした。今回の会合では、スイス中銀の対ユーロでのフラン相場上限撤廃が影響し、反対派が増える可能性もあるかと思っていたが(つまりは現在の日銀ロジックへの疑問票)、それはなかった。また市場では物価目標達成がより困難になりつつあるため追加緩和期待もあったが、それを主張する委員もいなかった。

 近く期限の到来する「貸出増加支援」、「成長基盤強化支援」等についての修正が入った。ここで「貸出増加支援」および「成長基盤強化支援」について、日本銀行の非取引先金融機関が各々の系統中央機関を通じて制度を利用し得る枠組みを導入するとある。これはどのようなものになるのかはわからないが、生保や投信などが日銀の当座預金口座を持つような格好となるのであろうか。このあたりも興味深い。

 そして発表された展望レポートの中間レビューでは、2015年度の物価上昇率見通しを従来の1.7%から1.0%へと引き下げ、2016年度の物価上昇率は2.2%と従来より0.1ポイント引き上げた。GDP見通しは2015年度がプラス1.5%から2.1%に、2016年度がプラス1.2%から1.6%にそれぞれ引き上げられた。

 ここで注目すべきは下記の注である。

 「今回の中間評価では、原油価格が大幅に変動していることを踏まえ、政策委員は、見通し作成に当たって、原油価格の前提を次の通りとした。すなわち、原油価格(ドバイ)は、1バレル55ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて70ドル程度に緩やかに上昇していくと想定している。その場合の消費者物価指数(除く生鮮食品)におけるエネルギー価格の寄与度は、2015年度で-0.7~-0.8%ポイント程度、2016 年度で+0.1~+0.2%ポイント程度と試算される」

 このような試算が組み込まれるのは極めて異例である。むろん、ここにきての物価上昇率の低下は原油価格の下落による影響が大きい。それで昨年10月に追加緩和を決定したわけであるが、物価の前年比のプラス幅の縮小は止まらず、それで2015年度の物価見込みを下方修正せざるを得なくなった。このため原油価格が戻れば物価目標の達成も可能になるとのロジックをこの脚注で示そうとしたと思われる。

 日銀はこのように物価への影響は原油価格の変動などに大きな影響を受けることを数字で示した。ところがその物価目標を達成するためには、国債を思い切って買い入れれば可能として、2度に渡る異次元緩和策を決定してきたはずであった。しかし、前年比プラス1.5%あたりまでの回復は、物価が戻り基調となっていたところに円安の影響が大きかった。その円安にブレーキがかかり、原油安で物価の上昇幅は剥落していった。ここに期待や予想とかでの説明を入れることは難しい。物価は予想や期待で動いているのではないことをむしろ日銀は丁寧に原油価格を用いて示していたと言える。

 その原油価格の動向であるが、果たして日銀の予想通りとなるであろうか。これは1年後の日経平均やドル円などの相場を当てるようなもので、いくら日銀の調査能力が優れていても未来の相場の位置を的確に当てることなど困難である。ましてや、いまの原油価格は需給というより、サウジアラビアなどがシュールに対抗して政治的に価格下落を引き起こしている面もある(サウジアラビアのアブドラ国王の死去が今後影響為てくる可能性もあり)。もちろん世界経済の動向にも原油の需給は左右される。不確定要素も多く、その動向を予測することはきわめて難しい。日銀のあげた前提は、あくまでそうあってほしい数値であり、それがないと物価目標達成を示すことがより困難になるためとみられる。

 だから追加緩和が必要というのもおかしな理屈となる。日銀がいくらバランスシートを膨らませてもいっこうに物価は上がってこない。もしそれでも物価を上げるために何かしら対策を取るとするならば、円安のために無制限介入をするなり(財務省の管轄ではあるが)、原油を無制限に買いあげるなり(こちらは経済産業省か)せざるを得なくなる。それもまたおかしな話である。

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by nihonkokusai | 2015-01-23 09:30 | 日銀 | Comments(0)

12月は信託銀行や都銀、地銀が債券を売り越し

 1月20日に日本証券業協会は2014年12月の公社債投資家別売買状況を発表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先(条件付売買)を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に、集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使う。

 売り越しで目立っていたのは信託銀行の1兆3574億円の売り越しで、国債の投資家別売買状況を確認すると超長期債を8314億円、長期債を4996億円、中期債を2449億円と万遍なく売り越している。これはGPIFの運用比率の変更を睨んでの動きとみられ、ほかの年金なども同様の動きをしていたためと推測される。

 都銀も8656億円の売り越し。長期債は5040億円の買い越しながら中期債を1兆1972億円売り越している。地銀も6013億円の売り越しとなっており、長期債を5640億円、中期債を2383億円の売り越しに。12月には2年債の利回りがマイナスとなり、5年債の利回りが0.1%を割り込み、利益確定売りも入ったものとみられる。

 買い越しで目立っていたのが海外投資家で、1兆5509億円の買い越し。中期債を1兆1546億円、超長期債を2919億円買い越していた。利回り低下で積極的に海外投資家は動いており、マイナスや低い利回りのなかでも利ざやを稼いでいたとみられる。

 農林系金融機関は4048億円の買い越し、超長期債を2685億円買い越しているが、中期国債については売買高がゼロとなっていた。投資信託は5908億円の買い越し、中期債を3815億円買い越していた。

 生損保は1898億円の買い越し。超長期債を2085億円買い越しに。こちらは中期債の売買高はあったが、1月に入ると5年債の利回りまでマイナスとなり、生保などによる中期債の新規の買い付けは今後は困難となりそうである。

 12月の債券相場も上昇を続け、10年債利回りは4月5日につけた0.315%を下回り過去最低を更新した。しかし、前述のように2年債利回りがマイナスとなり、マイナス金利の年限がじりじりと伸びてきているなか、金融機関の投資行動も次第に変わってくる可能性がある。債券市場のキープレーヤーが日銀となってしまっていること、さらに積極的に海外投資家が売買を行っているが、債券市場全体を見回すと機能不全に陥りつつあることも確かである。

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by nihonkokusai | 2015-01-22 09:49 | 債券市場 | Comments(0)

ECBやスイス中銀の根回し

 フランスのオランド大統領は19日、ECBが22日に予定する理事会で「国債を購入する決定をするだろう」と述べ、量的金融緩和策に踏み切るとの見通しを明らかにしたそうである(日経新聞電子版)。

独立した組織であるECBの政策の決定前に、欧州域内の一国の大統領が結果に触れるのは異例だと日経新聞も指摘していたが、オランド大統領はあまり中央銀行の独立性等は配慮せず、自分は事前に話を聞いていたことを強調したかったのかもしれない。

 ECBの特殊性は国を跨いだ中央銀行であり、ECBのドラギ総裁はユーロ圏の首脳と頻繁に連絡を取っているとされる。ユーロ圏の国債を買い入れるという量的緩和の導入にあたっては当然ながら事前にユーロ圏の首脳に確認を取っていたことは想定できる。

 ドイツのメルケル首相は「ECBは独立した決定を下し、我々はそれを見守る」とコメントしたようだが、これが本来あるべきコメントかと思う。しかし、そのドイツでもメルケル首相とドラギ総裁がベルリンで会談し、ドラギ総裁が会談で量的緩和計画の詳細についてメルケル首相に説明したと報じられていた。

 22日の会合での量的緩和の導入については、ドイツの反対を振り切って実施されるであろうと予想されているが、ドイツ連銀は量的緩和に制限を設ける方向で最後の抵抗を続けているようである。買い入れ規模の制限や量的緩和の延期も議論されているとされている。

 そもそもすでにドイツの5年債利回りはマイナスとなり、イタリアやスペインの10年債利回りが過去最低に低下するなか、国債を買い入れる意味というか効果がどの程度あるのかという疑問も残る。日銀同様に通貨安が狙いともみられるが、市場を操作することの難しさは今回、スイスが示した通りである。

 その15日のスイス・ショックについても、スイス中銀のジョーダン総裁が、ECBの動きを事前に察知して、それで動いたであろうことは容易に想像できる。スイス中銀が2011年に対ユーロでのフラン相場上限を設定するに際にも、ECBと数週間もかけて事前協議を実施していたとされている。

 今回のスイス中銀の行動については思わぬところから横やりが入っていた。IMFのラガルド専務理事がテレビで、スイス中銀の対ユーロでのフラン相場上限撤廃について「事前連絡がなかったのは驚き」と語っていたのである。しかし、その後、「私の理解ではごくごく少数の人間しか知らされていなかった」と指摘し、その一方で「なぜこのような決定に至ったのか完全に理解できるし、十分な根拠がある」と述べていた(ロイター)。

 このあたりの動きも非常に興味深い。スイス中銀がいちいち金融政策変更前にラガルド専務理事に連絡することは考えづらい。しかし、今回のような影響の大きそうな変更の場合には、IMFあたりまである程度事前連絡があるケースがあったであろうことを示している。さらに「私の理解ではごくごく少数の人間しか知らされていなかった」との指摘は、スイスの動きを事前にECBの関係者あたりに知らされていた可能性がある。一部関係者も今回のスイスの政策変更がここまで市場に影響を与えることは想像できず、専務理事には報告の必要なしと考えたのかもしれない。その後、慌ててスイス中銀の関係者がラガルド専務理事に詳しくご説明に伺ったであろうことも想像できる。

 中央銀行に独立性はあるといえど、このような政府や国際機関などへの根回しも必要な場合もあるであろう。日本でも政策委員の多数決で決定されるはずの金融政策の変更がなぜか事前にリークされていたことも以前にはあった。

 ここでひとつ気になるのが、昨年10月の異次元緩和第二弾決定の際に、政府からの出席者が会合の一時中断を申し入れていたことである。日銀はサプライズを意識するため、政府への事前協議はなかったか非常に限られていたということなのであろうか。追加の緩和であれば現政権は当然受け入れるとの読みであったのかはわからないが、このあたりからどうも政府と日銀の歩調がずれてきているようにも感じられた。

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by nihonkokusai | 2015-01-21 09:44 | 中央銀行 | Comments(0)

スイスの長期金利が初のマイナスに

 1月15日のスイスショックの余波により、16日にスイスの10年債利回りは初めてゼロを下回りマイナスとなった。金利低下という意味ではスイスは先駆者とも言えるが、10年債利回り、いわゆる長期金利がマイナスとなったのは過去の世界の歴史上初めてのケースかと思われる。

 スイスではマイナス金利がじりじりと長い年限にまで浸透していた。15日のスイス国立銀行がスイスフランの上昇を食い止めるために設定した対ユーロの為替レートの上限を撤廃したことに加え、スイス中銀は対ユーロの為替レートの上限を撤廃の代わりとして、超過準備に適用する金利をマイナス0.25%からマイナス0.75%とし、政策金利のLIBOR誘導目標レンジもマイナス1.25%~マイナス0.25%に引き下げた。つまり利下げを実施したことも影響し、10年債の利回りまでマイナスとなった。さらにスイスフランが急騰してしまったことで、早くも追加緩和期待が出ていたことも影響したとみられる。

 このスイスの長期金利のマイナス化はどこまで波及するのか。ドイツでは5年債利回りがマイナスとなっているが、10年債利回りは0.45%近辺(16日現在)にいる。日本では残存4年あたりまでの国債はマイナスとなっているが5年債はかろうじてプラス、そして10年債利回りは16日に0.225%まで低下した。

 スイスの10年債利回りがマイナスとなったことで、いずれドイツや日本の10年債利回りまでマイナス化する可能性も出てきた。さすがに長期金利のマイナス化はないだろうと漠然と考えられてきたことが、スイスにより打ち破られた格好である。

 日本のマイナス金利の背景には、海外投資家がドル円のベーシス・スワップに絡んで、結果としてマイナス金利で調達できるため、マイナス金利での運用も可能というかペイできるために発生している側面がある。しかし、それ以上にマイナス金利で国債を購入しても、タイミング次第ながらもほとんど損失を出さずに日銀に買い取ってもらえることでの安心感も大きい。年金や生保などの投資家は損失が発生するようなマイナス金利の国債は購入しないとみられるが、銀行などは担保としてある一定量の国債を保有する必要もあり、そのような需要もマイナス金利の背景にある。

 日本では日銀の大規模な国債買入が継続される限り、需給面での心配はないというか、むしろ玉不足、つまり国債そのものが足りなくなるような懸念も出ている。より長い期間の利回りは今後さらに低下圧力が加わる可能性もありうる。

 スイスで10年債利回りがマイナス化となっていても、いまのところ預貯金金利はマイナスとはなっていないようであるが、クレディ・スイスは大手法人顧客から預金手数料を徴収することを明らかにしている。日本でも残存4年あたりまでの金利がマイナスとなっていても預貯金金利はマイナスとはなっていない。日銀の当座預金の超過準備に付く利子も現在のところはプラス0.1%となっている。

 スイスはある意味、金融市場で大胆な政策を行う先駆者ともいえる。それがいずれ日本の金融市場の方向性を示していることも考えられる。今回の為替政策を通じた異次元緩和策の放棄、さらには長期金利のマイナス化あたりは、日本でも近いうちに起こる可能性がありうる。

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by nihonkokusai | 2015-01-20 09:26 | 債券市場 | Comments(0)

国債バブルの崩壊事例

 2015年1月13日に5年債利回りはゼロ%に低下し、10年債利回りは0.255%に低下し、それぞれ過去最低利回りを更新した。10年債利回りの0.255%という数字を見て、ふと懐かしさを感じた。むろんそのような利回りが過去に存在したわけではないが、0.255%ではなく255という数字に見覚えがあったのである。それは1987年5月につけた10年債利回りの過去最低が2.550%であった。当時は最初の債券バブルの時代であり、10年債利回りが2.550%を記録したあと債券バブルが崩壊したのである。

 1986年11月に国債の指標銘柄になったのが、10年第89回債(以下89回債)であった。89回債の市中向け発行量は2兆7075億円と当時としてはかなり大型の指標銘柄であった。現在の10年債の指標銘柄は直近入札されたものとなるが、当時の指標銘柄は10年債のなかで発行量が比較的多く売買高の最も多い国債のことを指していた。

 1987年4月2日、89回債の利回りが指標銘柄として初めて4%を割り込んだ。これは130円台まで円高が進行したことにともない日銀が短期金利を低めに誘導したためであった。同月30日には3%も割り込み、債券市場はいわゆるディーリング相場を迎えた。証券会社や都銀などが積極的に自己売買(ディーリング)を繰り返した結果、4月の公社債の店頭売買高は1000兆円を超えたのである。当時、私も債券ディーラーの一人であった。

 5月14日に89回債は10年債でありながら、当時の政策金利であった公定歩合の2.5%に接近する。日本相互証券の端末には89回債の売りが、2.555%に約3000億円、2.550%には約2000億円もまとまって並んでいた。それが一気に買い上げられたのである。これを全部買ったのが「公定歩合が高すぎる」とコメントを出した大手証券会社のチーフディーラーを中心とした野村軍団といわれている。ここまでの債券バブルを作ったのは、野村軍団と呼ばれた銀行や証券会社などを巻き込んだ勢力であった。結局、ここで債券バブルは終焉する。この2.550%が当時の10年債の最低利回りとして記録されることになった。

 債券バブルの崩壊で、金融機関のみならず、事業法人でも大きな損失が発生した。1987年9月2日、タテホ化学工業が債券先物で286億円もの損失を出したことが明らかになった。このニュースで債券相場は暴落(長期金利は急上昇)した。いわゆるタテホショックである。9月3日から5日までの3日間で、89回債は1%あまりも上昇した。債券先物は、9月2日に引け値が104円10銭だったが、5日の引け値は100円30銭となっていた。

 今回、10年債利回りはさらに低下し、0.250%も割り込んできた。スイスのように10年債利回りがマイナスもありうるとの声も出てきたが、今回の債券バブルもいずれ終演するはずである。それがどのようなきっかけで、どの程度の下落となるのか予測は難しいが、結構大きな調整が起きてもおかしくはない。そのときのため、このような過去のバブル崩壊の事例を参考にしておく必要もあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-01-19 09:29 | 債券市場 | Comments(1)
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