牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

<   2014年 12月 ( 25 )   > この月の画像一覧

2年債までマイナス金利となった理由

 11月28日に日本相互証券で2年国債の新発債が、マイナス0.005%で取引された。日本で2年債の利回りがマイナスとなるのは初めてである。ただし、海外ではドイツなどで2年債の利回りがマイナスとなっていたことで、世界の歴史上初めてというわけではない。

 参考までにマイナスの利回りといっても、2年債を購入した投資家が国に利子を支払うわけではない。利率つまり利子は変わらないが、購入価格が額面を上回り、償還額との差が損失となり、損失分がもらえる利子分を上回ることになる。

 欧州ではECBが政策金利の下限をマイナスにするなどしたことで、国債でもマイナス金利が発生したが、日本では日銀の準備預金の超過分には0.1%の利子がつく。このため、日銀の当座預金口座を持っているところは、準備預金に積めば0.1%の利子がもらえる。無理にマイナス金利の国債を買う必要はないはずである。

 ところが、外資系金融機関など日銀に当座預金を持たない金融機関もある。さらに日銀に当座預金を持っている金融機関も、ある一定量の国債を保有しておく必要がある。それは日銀から貸し付けを受けるための適格担保として、さらに短期金融市場やデリバティブ取引の担保として保有しておく必要があるためである。担保であれば、あまり期間の長い国債は適さない。流動性リスクからいえば短期市場のほうが厚みがあり、デュレーションリスクと呼ばれる期間が長いと価格が大きく動くリスクが高まるためである。

 もちろんマイナス金利の根本的な要因としては、日銀による国債の買い占めにあることはたしかである。

 もうひとつ、今回の2年債にも及んだマイナス金利の背景には、ベーシススワップの影響で円をマイナス金利で運用できる海外投資家の存在がある。つまりマイナス金利でも、さらなるマイナスで資金調達ができれば、利益が生じるためでうる。これは以前にも日本の短期市場で発生していた。

 2001年から2006年まで続いた量的緩和の時代にマイナス金利は発生していたのである。このときは日本の銀行が海外から資金調達する際にジャパンプレミアムが付いていた。つまり為替スワップ市場において、一部の外銀がマイナスの金利(円転コスト)で円資金の調達が可能となっていたため、為替スワップ市場で調達した円資金を、無担保コール市場をはじめとする短期金融市場にマイナス金利で放出したケースがあったためである。

 今回は当時のようなジャパンプレミアムが付いているわけではないが、今年の夏以降、為替スワップ市場において、ドルの超過需要が強まったことを背景に、円投ドル転コストが上昇し、その分がジャパンプレミアムのようなものとなった。ドルを保有する外国投資家が、為替スワップを通じて非常に安いコストでドルを円に転換できるため、外国投資家は、レートがマイナスの短期国債に対して、マイナスのコストで調達した円を投資したのである。為替スワップによる円の調達コストが大きなマイナスであれば、マイナス金利であっても利鞘は取れる。それが日銀の追加緩和の影響も手伝い、3か月物から1年物におよび、ついに2年債あたりにまで波及したのが、今回のマイナス金利の原因といえる(11月25日の中曽日銀副総裁のパリ・ユーロプラス・フィナンシャル・フォーラムにおける講演要旨を参考)。

 日本の投資家によるドル買い需要があり、それがベーシススワップと呼ばれるものに影響を与え、そこにゆがみが生じたことで、ドルを保有する海外の銀行などがマイナスのコストで円を調達できた。ただし、これによりマイナス金利で資金を調達できる海外の金融機関やヘッジファンドなどには限度もある。無制限に円投資ができるわけではなく、制限もある。国内銀行は経理上の処理の問題も含め、マイナスでの運用は当然避けたい。さらに先日、格付け会社による日本国債の格下げも影響してくることもある。

 現在のプレミアムからみて、2年より長い期間のマイナス金利もありうるが、それを買える買い手の余力の問題もあり、さらに期間の長い国債の利回りがマイナスになることも、いまのところは考えづらいことも確かである。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2014-12-04 09:25 | 債券市場 | Comments(0)

円安・金利安・原油安の理由

 12月1日にドル円は2007年8月以来の119円台まで上昇した。同日のアジア時間の取引で、米原油先物が2009年7月以来の安値となる64.10ドルまで下落した。さらにこの日、日本の5年国債の利回りが0.1%を割り込み、0.095%と過去最低利回りに並んだ。

 円安と金利安は日銀の異次元緩和によるところが大きい。10月31日の日銀による量的・質的緩和の拡大、つまり異次元緩和第二弾の目的は円安誘導にあったとみられる。その手段は国債の買い入れ額の拡大によるものが中心となっていたことで、国債の需給をさらに逼迫させた。そして、その日銀の異次元緩和第二弾を必要とさせた要因が原油安にあった。

 今年7月あたりからの原油安の大きな背景には、米国産のシェールオイルとOPECの戦いにある。きわめて政治的な要因となっているが、原油安はニューヨーク連銀のダドリー総裁に言われるまでもなく、家計の実質所得の大きな伸びにつながる。また航空会社などにとってもプラス要因となる。採算からみてエネルギー関連企業にはマイナスとなっても、国全体でみると特に輸入に頼る日本にとってはプラス要因のはずである。

 ところがこの原油安が思わぬ誤算となってしまったのが日銀である。2012年11月のアベノミクスの登場で急激な円安が発生し、アベノミクスの政策を日銀が具体化した。アベノミクスによる円安と原油価格の高止まりが、物価を予想以上に押し上げることになり、異次元緩和が効いたような格好となった。しかしその後、原油価格が下落したことで、物価は上昇幅を縮小してきてしまった。そこで日銀はFRBとの金融政策の方向性の違いも意識して、円安を狙った異次元緩和第二弾を決定した。原油価格の下落分を少しでも円安による物価上昇で補い、あわよくば原油価格がまた上がれば、目標達成に近づくとの皮算用ではなかったろうか。

 その煽りを食ったのが日本の債券市場である。11月の日銀による国債買い入れ額は同じ月の国債の発行額を上回っていた。1年以下の金利がマイナスとなり、それが11月28日には2年債にも波及し、2年債としては初めてマイナス金利が発生した。これにより財務省は3日から予定していた個人向け新型窓口販売の2年物国債(347回)の募集をとりやめると発表した。

 このマイナス金利の発生要因としては、日銀の中曽副総裁がフィナンシャル・フォーラムの講演で説明をしている。投資家が国債をマイナス金利で購入する例については、銀行が流動性リスクやデュレーション・リスク管理の観点から、一定量の短期の流動資産を持つインセンティブがあることや、国債が日銀から貸し付けを受けるための適格担保であるだけではなく、短期金融市場やデリバティブ取引の担保として最も適しているためであること、さらに次のような要因を指摘していた。

 「外国の投資家も、円の金利をマイナスに押し下げるうえで重要な役割を果たしています。2014年の夏以降、為替スワップ市場においては、ドル超過需要が強まったことを背景に、円投ドル転コストは上昇しました。これは、ドルを保有する外国投資家が、為替スワップを通じて非常に安いコストでドルを円に転換できることを意味します。短期金融市場の円金利は既にゼロ近傍にあるため、こうした外国投資家が円を調達する場合のコストはたいていマイナスとなります。外国投資家は、レートがマイナスの短国に対して、マイナスのコストで調達した円を投資しています。為替スワップによる円の調達コストが大きなマイナスであれば、こうした投資戦略でも十分な利鞘を稼ぐことができるのです。」(中曽日銀副総裁の講演より)

 このようなニーズも背景に、2年国債の利回りまでマイナスが生じている。それでもマイナス金利の根本的な要因は日銀の大胆な国債買い入れにあることは確かである。

 この円安・金利安・原油安のトリプル安はどこまで、というかいつまで続くのか。円安は必ずしも日本経済にとってプラスとはいえない。安倍首相は最近、トリクルダウンという言葉をよく使う。富める者がさらに富めば、貧しい者にも自然におこぼれがくるとの発想であるが、残念ながら円安による恩恵は一部の大手輸出メーカーだけに与えられ、中小企業などではコスト増の影響のほうが大きくなりかねない。ドル円の120円というのが大きな抵抗線となりうる。

 金利についても5年債利回りが0.1%という日銀の超過準備につく利子の水準をも下回る異常事態となっている。日本国債の格下げによる直接的な影響はさておき、その格下げ理由となった財政再建への懸念そのものは日本国債のリスク要因であり、今回の超低金利となっている状況はその反動も恐いものとなりうる。

 原油価格に関しては、いずれ下落傾向にいったんブレーキが掛かると思われる。今回の原油価格下落により、シェールオイルという物の存在感の大きさを浮き彫りにし、原油価格はこれまでのように高値で安定という訳にはいかなくなろう。これは世界的なディスインフレの要因となり、日本も同様となろう。

 円安もドル円の120円あたりが天井となり、原油価格も以前の水準に戻ることがなければ、日銀の物価目標達成は困難になりかねない。来年4月以降は消費増税による影響、特に便乗値上げ分も前年比ではなくなることで、さらにCPIは前年比のプラス幅が縮小する懸念もある。それで日銀がさらなる国債を購入しても効果はなく、むしろ国債のリスクをさらに増加させることになりかねない。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2014-12-03 09:42 | 債券市場 | Comments(0)

異次元緩和で物価は上がったのか

コアCPIとマネタリーベース(データは総務省と日銀のサイトより)
e0013821_915530.jpg
 アベノミクスの本来の目的はデフレの脱却にあった。それを実行に移したのが日銀で、2%の物価目標を2年で達成するとした。二本目、三本目の矢については個別の数値目標も掲げられてはいたが、その大きな目的がデフレ脱却、つまり物価の上昇にあったことは間違いない。

 それではアベノミクスと日銀の異次元緩和により、実際に物価は上がったのであろうか。日銀が目標としていたのが消費者物価指数(コア指数ではなく総合指数)であったため、その消費者物価指数の動きをアベノミクス開始当時から振り返ってみたい。ここでは消費者物価指数は日銀の展望レポートでも見通しに使われ、ベンチマークともなっている生鮮食料品を除いた数値(コアCPI)で確認することにする。

 コアCPIは2008年7月に前年同月比で2.4%の上昇となり、2%台に乗せた。2%台乗せは消費税率引き上げにより一時的に上昇率がかさ上げされていた1997年4月から1998年3月を除くと、1992年6月の2.5%以来で約16年ぶりの高い水準となった。原油価格や穀物価格などの上昇による石油製品や食料品の値上がりが主要因となっていた。

 ところが2008年9月のリーマン・ショックによる世界的な金融経済ショックを背景に物価は急低下することになる。コアCPIは2009年8月にはマイナス2.4%にまで落ち込むことになる。その後のCPIはじりじりとマイナス幅を縮小してきた。

 アベノミクスが登場した2012年11月にコアCPIはマイナス0.1%となり、日銀の異次元緩和直前の2013年3月にはマイナス0.5%に低下していた。そして日銀が異次元緩和を決定した2013年4月はマイナス0.4%であったが、その後5月にはやくもゼロ%になり、そのままコアCPIの前年比はプラス幅を拡大させ、2014年4月にはプラス1.5%まで回復した。これを見る限り、このペースでいけば物価目標達成も可能なようなペースとなっていた。ところが、ここからコアCPIはプラス幅を縮小させ、2014年10月には前年比でプラス0.9%となった(2014年4月からの消費増税による影響は除く)。

 コアCPIの前年比と日銀のマネタリーベースの伸び率を比較すると、2013年あたりから綺麗に相関しているように見える。これを見る限り、アベノミクスのリフレ政策を実行に移したことで、本当に物価は上がってきたように見えてしまう。しかし、ここにはいくつか問題が存在する。

 リフレ派の間でも、金融政策の効果が出るには半年以上のラグがあるしている。ただし、アベノミクスそのものは2012年11月に登場していたことで、ちょうど半年のラグを持って物価が上昇してきたとの見方もできる。「期待」を重視するリフレ派にとり、アベノミクスの登場だけで期待が先行したとの見方もできようが、果たしてそううまくいっていたのであろうか。

 2013年4月の異次元緩和あたりからの物価の上昇要因については、そのかなりの部分は円安と原油価格の上昇により説明が可能となる。その意味では2012年11月のアベノミクスは円安を招き、物価高を演出したと結論づけられるかもしれない。輸入物価上昇と原油高がミックスした物価上昇は、いわゆるコストプッシュ型のインフレとなり、我々の生活にはマイナスとなる。景気の回復により雇用市場も回復し賃金も上昇した結果として、物価が上がるというのが、アベノミクスの本来の目的ではなかったのか。

 しかし、円安の効果が薄れ、原油価格の下落とともにコアCPIの前年比は縮小し、その結果、日銀は2014年10月31日に量的・質的緩和の拡大、つまりQQE2を実施せざるを得なくなった。原油価格の下落はコントロールできない以上、米国の金融政策との方向性の違いによる円安ドル高を招いて、物価を押し上げようとした。しかし、QQE2で物価が再び上昇するという保証はない。これもまたマーケット次第となるため、日銀が大量に国債を買い込むことのリスクに果たして見合う政策であったのかは疑問が残る。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2014-12-02 09:09 | 日銀 | Comments(0)

ムーディーズは日本国債を格下げ、市場は冷静

 12月1日の夕方に格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは、日本の政府債務格付け、つまりは日本国債の格付けを「Aa3」から「A1」へ1段階引き下げたと発表した。

 その理由として、財政赤字削減目標の達成可能性に関する不確実性の高まり、デフレ圧力の下での成長促進策のタイミングと有効性に関する不確実性、それに伴う中期的な日本国債の利回り上昇リスクの高まりと債務負担能力の低下をムーディーズは指摘している(ムーディーズのブレスリリースより引用)。

 つまりは消費増税の延期による財政健全化目標の達成が難しくなったことと、アベノミクスそのものの効果を疑問視し、日本国債の利回りの上昇リスクを格下げの理由としたようである

 衆院選の公示前に発表したことは、政治的な配慮であったのかもしれないが、このタイミングでの発表には意外感もあった、これを受けての日本国債への売りは、これまでの格付け会社の格下げ時と同様にいまのところ限定的である。債券先物で10銭程度売られただけであり、10年債利回りも0.005%程度上がったに過ぎない。

 日経平均先物も一時100円以上売られたが、こちらも下げ止まった。そして、外為市場では円が売られるのではなく、株安もあって円が買われるような状況になっている。これらの動きを見る限り、今回もまた日本国債に関しては、格付け会社はオオカミ少年のようなかたちとなっている。

 むろん、ムーディーズの格付けについてはある意味当然といえば当然である。消費増税の予定通りの実施を意識した上での日銀の異次元緩和第二弾と、その後の安倍政権による消費増税の延期のミックスは日本国債のリスクを増加させたことは確かである。しかし、それでもまだ日本国債が暴落するような兆しはみせておらず、市場参加者のポジションの都合で円が買われるぐらいである。もし、オオカミ少年がやってくると円も日本国債も日本株も同時に急落するはずである。

 それでもこれは日本に対してというか、安倍政権と日銀に対する警告ともいえる。その意味はしっかり理解ししておく必要がある。日本国債が暴落しないのは、市場参加者にとり危機意識がそこまで高まっていないためとみられる。しかし、暴落しないから何をやっても大丈夫であるはずはない。マーケットは怖いことも覚えておく必要があろう。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2014-12-01 18:57 | 国債 | Comments(0)

それでも追加緩和を期待するのか

 11月28日に発表された10月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除いた総合指数(コアCPI)が前年同月比プラス2.9%となった。日銀の試算による消費増税による影響分を除くと0.9%となり、2013年10月分以来の前年比1.0%割れとなった。日銀が物価目標としている総合指数も前年同月比プラス2.9%となっていた。

 以前に黒田日銀総裁は消費者物価指数の先行きについて、「1%台を割る可能性はない」と言い切っていた(たとえば7月15日の決定会合後の会見など)。ところが、今年7月あたりからの原油価格の急落により、その状況が変わってきた。その結果が、10月31日の量的・質的緩和の拡大、つまり異次元緩和第二弾となった。10月31日の決定会合議事要旨には以下のような指摘がある。

 「多くの委員は、原油価格の下落は長い目でみて日本経済にとってプラスであるものの、このところの大幅な下落は、消費税率引き上げの後の需要面での弱めの動きと合わせて、短期的には物価の下押し要因として働いていると指摘した。」(決定会合議事要旨より)

 米国でのシェールオイル生産拡大で対米輸出が減っていることなどもあり、原油は世界的に供給過剰となっている。欧州や中国などを中心とした世界経済の低迷もこの原油価格下落の背景にあるとされるが、産油国の歩調が合わないこともひとつの要因となっている。

 石油輸出国機構(OPEC)は11月27日の総会で、今の原油の供給量は適切だとして、焦点となっていた減産を見送った。加盟国の一部から値下がりに歯止めをかけるため減産するべきだという意見が出されたものの、最大の産油国サウジアラビアが価格の変動は短期的なもので減産の必要はないと主張するなどしたことで減産は合意に至らなかった。サウジアラビアなどがシェールオイル潰しを狙って仕掛けたとの見方もある。

 これを受けて原油価格はさらに下落し、11月27日にWTIは69.05ドルと70ドルを割り込んで、2010年5月以来の安値をつけた。北海ブレント原油先物は72.58ドルと、2010年以来の安値を付けている。

 この原油価格の下落もあり、日本の物価は上がりにくい状況が続くと予想される。日銀がいくら国債を発行額以上に買いあげようが、それで物価上昇に結びつくことは考えづらい。10月31日の日銀の異次元緩和第二弾はこの物価を意識したものといえるが、それで国債を買いあげてもほとんど意味がない。円安に誘導して物価高を狙った面もあるかもしれないが、それは為替市場次第になってしまう。

 CPIが日銀の物価予想に届くことは難しいからといって追加緩和を期待するのも無理がある。そろそろ日銀もリフレ政策で物価を動かすことは難しいことを認め、マネタイゼーションとも認識されかねない巨額の国債買い入れについては再検討することも必要ではなかろうか。

 物価が上がりにくい状況は日本だけではない。27日に発表されたドイツの11月のCPIはプラス0.5%と2010年2月以来の低い伸びとなり、前月のプラス0.7%から低下した。これを受けてドイツの10年債利回りは0.7%を割り込み過去最低に。フランスの10年債利回りも初の1%割れとなった。その背景にはECBの量的緩和による国債買い入れの期待があろうが、ドラギ総裁には日本の状況を説明した方が良いのではなかろうか。

 物価を上げるには量的緩和などより、実態経済そのものを回復させる手立てが必要である。金融政策を経由した一時的な通貨安政策などより、もう少し効果的な手段もあるのではなかろうか。中央銀行は国債への信認低下というリスクを増加させる一方、その効果はあまり期待できない政策を推し進めることについて、再検討すべきではなかろうか。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2014-12-01 10:56 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー