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嘘を言っても良い金融政策と衆院解散がダブルで来た

 その昔、「解散と公定歩合は嘘をついても良い」と言われたことがある。いまでも国会議員などが口にすることがあるようだが、これは法律とかで明文化されて認められたものではない。国会議員を中心にそのような認識を持っているといったものである。

 子供には嘘をついてはいけないと教えながら、何故、公定歩合と解散は嘘をついても良いと言うのか。それは公定歩合も解散も国にとり非常に重要なものであるが、その決定権は一部の人間が握っていることと、サプライズが重要であるためと思われる。

 公定歩合というのは昔の日銀の政策金利のことである。これは日銀の「金融政策」のことを意味する。これを決定するのは日銀であり、しかも限られたメンバーにより決定される。現在は9名の政策委員の合議制によりきめられる格好ではあるが、ある程度、総裁が主導権を握って政策を決定していると見てよい。もちろん総裁の独断で決められるものではない。

 これに対して衆院の解散権については首相が持っているとされる。これは憲法の解釈によるものとなるが、とにかく首相が衆院を解散すると言えば解散される。この決定権は首相だけが持っているため、解散を宣言するまではこのことについては言質を避けることになり、それが嘘をついても良い、との表現に変わったものと思われる。むろんサプライズというか野党の隙を突くため、解散は考えてないと事前に発言することも多々あろう。

 それほど国にとって重要なものであり、さらにサプライズが必要とされる金融政策の変更と衆院解散があまり時を置かずにやってきそうなのが今回である(もちろん解散は正式に発表されているものではないが)。

 ただし今回の、国にとっても最重要事項のふたつのタイミングが重なったことは何を意味するのであろうか。これは相乗効果を生むのかと言えば、そうとは限らない。むしろ不協和音を生み出す懸念が出ている。

 10月31日の日銀の量的・質的緩和第二弾(QQE2)は、市場にとってはまさにサプライズとなり、円安株高を促進させた。この決定に際しては政府の意向を反映してのものであったかどうかは推測するしかないが、可能性はある。

 ところが政府というか安倍首相は日銀の異次元緩和パート2により生み出された円安株高の流れも意識した上で、このタイミングとばかり解散権を行使しようとしている。しかも、日銀には結果として嘘をついた格好となり、消費増税の延期もセットにしようとしている。

 日銀の黒田総裁はQQE2の決定について「2015年10月に予定される消費税率の10%への引き上げを前提に実施した」と述べている。これが本当であれば、まさに政府にしてやられた格好となる。

 こうなると日銀がQQEやQQE2の前提条件となる財政再建への取り組みが崩れることにもなりかねない。今後は政府と日銀の間に隙間風どころか亀裂が走る懸念が出てきた。

 現在のECBとドイツの関係も同様である、量的緩和を推し進めようとしているドラギ総裁に対し、ドイツを中心として反対派との対立が、かなり深刻な事態になっている。中央銀行の独立性を重視してメルケル首相は沈黙を保っているが、仮にドラギ総裁が強硬手段に打って出て量的緩和を推し進めると政治問題に発展する懸念もある。

 日本も同様に今回の件で政府と日銀の間に軋轢が生じ、それが市場に影響を及ぼすことも予想される。すでにアベノミクスからバイザイノミクス(日銀のマネタイゼーションと政府の財政規律放棄で国債バンザイとの意味だとか)へと言っている人も出ている。安倍政権にとり円安の心配をするのも選挙には重要かもしれないが、国債の心配もしておいたほうが良いのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-14 09:36 | 国債 | Comments(0)

賛成票を投じた宮尾審議委員の理由説明

 10月31日の日銀金融政策決定会合での追加の緩和策(QQE2)は、5対4という僅差で決定された。追加緩和に賛成したのは黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁、宮尾審議委員、白井審議委員であった。反対したのは森本審議委員、石田審議委員、佐藤審議委員、木内審議委員である。反対した委員は、これまでの金融市場調節方針を維持することが適当であるとしたと公表文には記されていた。

 今回のQQE2は、市場参加者にとってもサプライズとなった。一部に国債の買入れを技術的に引き上げる必要があり、そのために追加緩和を行うかもしれないとの観測はあった。しかし、マスコミが事前にリークすることもなく、ここまで大胆な追加緩和が決定されるのはまさに寝耳に水といった状況であった。

 このため10月31日の決定に際しても反対者の意見は納得できる。さらに執行部である総裁と副総裁がいろいろ画策しての追加緩和であったであろうこともわからなくはない。タイミングが重視されたであろうことも想像に難くない。ただ、問題は執行部に取り込まれたとみられる二人の審議議員である。

 10月はじめの会合では現状維持に賛成していたのに、わずかな期間で何が変わって追加緩和の必要性を意識したのか。特に二人が学者出身ということもあり、その説明を知りたいところである。ちょうど本日(11月12日)、QQE2に賛成したひとり宮尾審議委員が長崎で講演をし、その要旨が日銀のサイトにて公表された。

 宮尾審議委員の講演要旨を見る限り、景気や物価に対する見方にはあまり変化はない。むしろ経済の見通しについては前向きの循環メカニズムは持続し、供給サイドの改善を背景に、消費の基調的な底堅さも持続するとみている。

 さらに「本年夏場以降の原油価格下落については、実体経済には、企業収益、家計の実質所得の両面から、プラスの影響を及ぼすものと考えられます」と指摘している。ここは注意すべきポイントになる。

 なぜならば10月31日のQQE2を決定した最大の要因が「原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている」ためであった。実態経済にプラスに働いているにも関わらず、思ったように物価が上がらないため追加緩和をするというのは本末転倒ではなかろうか。

 宮尾委員は、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として作用しており、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある、と指摘した。

 「デフレマインドの転換の遅延」とはいったいどういうことなのであろうか。そもそも2013年4月の量的・質的緩和、いわゆる異次元緩和により、デフレマインドを「転換させた」のではなかったのか。1年も経過してデフレマインドは一向に転換せず、まだ途中にあるというのは、そもそもの異次元緩和の意味があったのかということにもなりかねない。

 「わが国は長年にわたってデフレが続いてきており、米国のように予想物価上昇率がすでに 2%程度にアンカーされている国とは異なり、国民の物価感そのものを 2%程度に引き上げる途上にあります」(11月12日の宮尾審議委員の講演要旨より)

 その物価観を押し上げるには2倍の国債買入れで引き起こすというのが異次元緩和の日銀の説明ではなかったのか。「途上」とはどういう意味なのであろうか。

 「そのプロセスにおいて、仮に短期的であっても、実際の物価上昇率の伸び悩みが続けば、これまでの予想物価上昇率の好転のモメンタムを弱めるリスクがあると考えました。」(11月12日の宮尾審議委員の講演要旨より)

 これはつまり異次元緩和第一弾では、人々の予想物価を引き上げることはできず、簡単にそれが弱まってしまうという、異次元緩和以前の状態が続いているということなのであろうか。それでは、同じような緩和を行っても、円安や株高は起きても、人々の物価観には何ら影響を与えないということになるのではなかろうか。

 「日本では、過去のインフレ率の実績が人々のインフレ予想の形成に影響を与えるという「適応的な」予想形成メカニズムが相応に強いとみられる点も留意が必要です。」(11月12日の宮尾審議委員の講演要旨より)

 これも以前から指摘されていたことではあるが、そうだとすれば人為的にコストブッシュインフレを引き起こせばよいというものであろうか。そのために必要なのが円安というのであれば、追加緩和により物価だけ上がればよいということになりかねない。

 やや辛口の批評となってしまったが、10月31日のQQE2の理由説明にはかなり無理がある。宮尾委員の経済や物価の説明については違和感はない。特に景気や物価の見方に変化が生じたわけではなさそうである。しかし、金融政策の説明は上記のように矛盾する点が多くみられる。もし矛盾を感じていたのであれば、反対票を投じるべきではなかったろうか。

 政治的な配慮も金融政策には必要であることはわからなくもない(今回は裏目に出たが)。白川総裁から黒田総裁に変わってコロッと金融政策も全員一致で変化したのも致し方ないかもしれない。しかし、政策委員の一票は重い。自らの意思を通すことも政策委員としては必要なことではなかったろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-13 09:55 | 日銀 | Comments(0)

オオカミを誘き寄せる政府と日銀

 11日の読売新聞は、安倍首相が10日、消費税率の10%への引き上げを先送りする場合の衆院解散・総選挙の日程について、早ければ、一連の外交日程を終えて帰国する17日から数日以内に解散する方向で検討を始めたと伝えた。18日前後に解散を表明し、19日ごろに解散する案が浮上しているそうで、衆院選は「12月2日公示・14日投開票」を軸に調整しているそうである。

 ロイターによると、自民党の谷垣禎一幹事長は10日、国会内で会見し、来年10月に予定されている消費税再増税について、11月17日発表の7~9月期GDP一次速報の数字次第では、二次速報を待たずに安倍晋三首相が是非を判断する可能性があるとの考えを示唆した。谷垣幹事長は野田政権で消費増税を決めた三党合意の際の自民党総裁であった。

 11日のNHKニュースも、安倍総理大臣は新たな経済対策に加え、消費税率の10%への引き上げを先送りしたうえで、衆議院を解散して国民に信を問うことも排除せず、今後の政権運営の在り方を総合的に検討する、と伝えている。

 11月17日の7~9月期GDP一次速報を確認し、それが予想されている年率換算で2.0%程度のプラスに止まるのであれば、消費増税の先送りを決定した上で、衆院解散・総選挙に踏み切る可能性が強まったといえる。政府が増税の是非について有識者の意見を聞く点検会合は18日に終わることもあり、19日あたりの解散となれば国会会期中となり、12月2日公示・14日投開票となりうる。

 以前に指摘したように市場関係者の多くは、消費増税先送りで少なくとも国債が急落することはないとの見方が多いのではなかろうか。その背景には日銀の超緩和政策が続き、足元金利がゼロもしくはマイナスとなっており、日銀は大量の国債を買い続け需給面での不安がないためであろう。長期金利の低迷は長らく続いており、その環境に慣らされていることで、簡単には国債価格が急落することが想定できないこともある。

 債券市場関係者の間でも今年4月の消費増税は実施されても、来年の増税は先送りされると予想していたむきが意外に多かったことも確かである。仮に来年の消費増税が先送りされても想定の範囲内として受け止める可能性がある。実際に消費増税の先送りの可能性が報じられても、いまのところ国債相場は微動だにしない(少し売られているが)。

 むろん市場が過剰反応しないようなので、消費増税を先送りしてもかまわないと主張するつもりは毛頭ない。これだけ財政が悪化しているなか(国の借金の残高が9月末時点で1038兆9150億円)、国債が安定的に消化され、売買も滞りなく実施されている状況に、国債への信認に対する不安要素は入れてほしくない。消費増税そのものが財政健全化に向けてのひとつの柱として認識されていることは確かである。しかもそれだけでプライマリーバランスが均衡化するわけでもない。財政健全化があってこそ、国債への信認が維持されている。

 今回、表向きは財政再建を急ぐより、景気の回復を優先し景気回復による税収増から財政も健全化できるとの見方を安倍首相は示すのではなかろうか。しかし、それは財政再建の道筋を示すものではなく、これもまた期待に頼る危険性が高くなる。

 ここで最も注意すべきは、先走った感というか暴走してしまった感のある日銀である。財政健全化があってこそ中央銀行による大量の国債買入れは可能であったはず。2013年4月の量的・質的緩和による大規模な国債買入れは、安倍政権の消費増税の決定とセットとなっていたはずである。

 ところが、日銀は来年10月に向けた消費増税の有無を確認する前に、物価の下落を恐れるあまりに量的・質的緩和の第二弾を決定してしまった。そして今回もまたさらなる国債の買入れが柱となっていた。これにより円安と株高がもたらされ、これは消費増税に向けた地均しどころか、結果としては安倍政権の解散総選挙に向けた地均しとなってしまった。

 消費増税は延期される可能性が強まったことにより、政府に梯子を外された可能性もあり、これはさすがの日銀も想定外ではなかったのか。それとも消費増税延期の決定後では、追加緩和は困難になりかねず、その前に実施したほうがまだリスクは少ないと判断したのであろうか。

 いずれにせよ安倍政権は財政再建よりも、景気回復というか株高を意識した動きを今後強めかねない。元々、2012年11月の輪転機発言もあるなど安倍首相はかなりリフレ的な考え方をしているだけに、そのリスクがいずれ国債に降りかかることは避けられない。

 国債市場は簡単に崩れるものではないが、市場である以上、いったん崩れだすと雪崩を引き起こす可能性がある。市場参加者に不安心理が強まれば、需給どころの話ではなくなる。買い手がいるから暴落はしないなどという説明は過去の市場暴落のケースを見る限りありえない。政府債務は国民が背負っているから国債急落はありえないとの見方もあるが、デフォルトで調整されなくても、極度のインフレによって調整されてきた過去の歴史のケースも多く存在する。今回もオオカミ少年となるかもしれないが、オオカミは確実に迫りつつある。そのオオカミを誘き寄せようと政府や日銀はしているようにしか思えないのである。

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by nihonkokusai | 2014-11-12 09:36 | 国債 | Comments(0)

消費増税延期と解散総選挙の可能性

 9日の読売新聞朝刊は一面で、安倍首相が来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げを先送りする場合、今国会で衆院解散・総選挙に踏み切る方向で検討していることが8日、分かったと伝えた。首相はこうした考えを公明党幹部に伝えたとみられるとしている。年内に解散する場合、衆院選の日程は「12月2日公示、14日投開票」か「9日公示、21日投開票」とする案が有力だという。

 ただし、APEC首脳会議(北京、11日まで)に出席するため羽田空港で記者団の質問に答えた安倍首相は、衆院解散について「全く考えていない」と述べたとも伝わった。

 魑魅魍魎の政治の世界であり、あまり憶測しても意味はないかもしれないが、少なくとも、このような記事が出ること自体、消費増税の延期の可能性が高まりつつあることを示しているように思われる。

 11月2日には安倍首相の右腕と言われる飯島勲氏がテレビ番組で「12月2日に衆議院が解散、14日に投開票が行われる」と発言したことが話題となった。飯島氏はテレビ番組で、「補欠選挙をやった後に7月~9月の経済状況が明らかになる。11月17日くらいにはわかりますから、20日くらいに総理は消費税を10%に上げるかどうか決断する」と一気に読み上げ、 さらに「その後の12月2日に、思い切って衆議院解散して、12月の14日に投開票。24日に内閣改造、予算は越年」と告げたそうである。ただし、今国会の会期は11月30日までとなる。もし12月2日に解散となれば会期を延長する必要がある。

 小泉政権時に秘書官として活躍した飯島勲氏は、第2次安倍内閣において内閣官房参与に就任している。その飯島氏がテレビで堂々と解散総選挙について述べたということはどういうことなのか。そして、その期日とまったく一致する内容の記事が「読売新聞」の記事にも掲載された。

 解散総選挙を年内に行うのであれば何が目的となるのか。すでに衆院は前回解散して2年が経過しており、いつ解散してもおかしくない。解散権は首相にあり、最適と思われるタイミングで解散に打って出ることが予想される。それではなぜこのタイミングが最適と思われるのか、そこには消費増税の行方がひとつの鍵となっていると思われる。

 消費増税については現財務相の麻生副総理、元財務相の谷垣自民党幹事長らが予定通り実行するように求めていたのに対し、内閣官房参与の本田氏、浜田氏が延期を求めている。米国の経済学者でノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏が11月6日に安倍晋三首相と会談した際にも、この2人は同席している。というよりこの場を設けたのも両参与であった可能性がある。クルーグマン氏は予定通りに増税した場合にアベノミクスが失敗する可能性を指摘したそうである。

 10月22日には消費税率の再引き上げに慎重な自民党の山本幸三氏が党本部において、再増税が日本経済に与える影響などを議論する勉強会の初会合を開いていた。会合には、保岡興治元法相ら約40人が出席した。この勉強会には以前、首相就任以前の安倍氏も出席していた。この日は消費増税賛成派の会合も開かれていたようではあるが、次第に増税反対派の波が押し寄せつつあるように思われる動きであった。

 消費増税の引き上げに慎重なもうひとりの重要人物がいるとされている。菅官房長官である。菅義偉官房長官は11月5日午後の会見で、安倍首相が消費税率引き上げの判断を行う時期について、12月8日の二次速報値のあとになるとの認識を示していた。11月17日の7~9月期のGDP一次速報値を確認しての解散となれば「12月2日公示、14日投開票」の可能性はあるが、8日の二次速報まで待ては「9日公示、21日投開票」となるか。

 消費増税引上げの判断は7~9月期のGDP次第となる。経済情勢が悪い場合、増税を見送ることはできる。ただしその際には法改正が必要である。ただし、増税凍結法案はすぐに成立させなければならないものではないようで、後回しにもできるとか。

 11月17日に発表される2014年7~9月期GDP速報値は、日経QUICKニュース社が31日時点でまとめた民間調査機関7社の予測中央値は前期比0.5%増、年率換算で2.0%増であった。もしこのあたりの数字となれば、予想以上に回復の度合いが鈍いとして消費増税は見送る可能性がある。

 そうなれば前政権(民主党の野田政権)が決めた(ただし当時の谷垣自民党総裁も同意していた)消費増税を凍結させて、日本経済再生を旗印にアベノミクスの成果(特に円安株高あたり)を問う選挙に打って出る可能性はありうる。もしそうなれば10月31日の日銀の異次元緩和第二弾は、解散総選挙に向けてうまく利用された格好ともなりかねない。

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by nihonkokusai | 2014-11-11 08:13 | 財政 | Comments(0)

中央銀行の金融政策とは何か

 中央銀行の金融政策とは何を目的に何をするものなのか。本来の金融政策は短期の金利を政策金利として、その金利の誘導目標値を上げ下げするものである。現在の日銀の政策金利は「無担保コール翌日物」と呼ばれる短期間の金利である。念のため、昔使われた「公定歩合」ではないし、その単語すらすでに使われていない。

 景気が良くなり物価が上がれば、日銀は政策金利の誘導目標値を引き上げ(金融政策)、政策金利に誘導するために市場から資金を吸収する(公開市場操作)。短期金利を引き上げることで、企業などからの借り入れを抑制させることになり、景気を冷やし物価を下げる。

 反対に景気が悪く物価が下がれば、日銀は政策金利の誘導目標値を引き下げ、政策金利に誘導するために市場に資金を供給する。短期金利を引き下げることで、企業などの借り入れをしやすくさせ。景気をサポートし景気回復により物価も上がる、というのが伝統的な金融政策である。

 ところが日銀が上げ下げする金利、いわゆる政策金利がほぼゼロとなってしまったらどうするのか。それが2000年代に入ってからの日米欧の中央銀行の大きな課題となった。日銀は1999年2月に政策金利をゼロとするゼロ金利政策を行った。

 政策金利はゼロ以下、つまりマイナスとすることは技術的には可能である。ユーロ圏の中央銀行であるECBも政策金利の下限となるものをマイナスとした。ただし、下限とかでなく政策金利そのものをマイナスにすることはあり得ない。

 ここで少し専門的となってしまうが、過去にあった政策金利のマイナス化について確認してみたい。

 2009年7月にスウェーデンの中央銀行であるリクスバンク(世界最古の中央銀行)は世界で初めてマイナス金利政策を実施した。預金ファシリティの金利をマイナス0.25%に決定したのである。預金ファシリティとは超過準備に利息を支払う制度である。ただし、この際は0.25%の政策金利に対し、0.5%上乗せしてロンバート貸出金利、0.5%差し引いて預金ファシリティ金利(その結果マイナス0.25%)を単純に決めただけのことであったようである。政策金利そのものはプラス0.25%であった。

 2012年7月5日にデンマーク国立銀行(中央銀行)はECBの利下げに合わせて、主要政策金利である貸出金利を0.25%引き下げ0.20%とし、譲渡性預金金利を0.05%からマイナス0.20%に引き下げた。 こちらも政策金利そのものはマイナスではない。

 ECBは2014年6月5日のECB政策理事会で追加緩和策が決定された。政策金利であるリファイナンス金利は0.1%引き下げられ、0.25%から0.15%となった。上限金利である限界貸出金利は0.4%に引き下げられ、下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)はマイナス0.1%し、マイナス金利となった。このマイナス金利は預金ファシリティ金利だけでなく、超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用されるとされた。

 これがいわゆるECBのマイナス金利である。さらに9月4日の政策理事会では、ECBは政策金利を全て0.1%ずつ引き下げ、リファイナンス金利を0.05%に、上限の限界貸出金利を0.3%とし、中銀預金金利をマイナス0.2%とした。

 これまでにあった中央銀行による政策金利のマイナス化と呼ばれる現象については、政策金利がマイナスになったのではない。現在の日米欧の中央銀行では、コリドー(corridor:回廊とか通路)と呼ばれる政策金利の上限と下限を設けている。つまり政策金利には、上限と本来の政策金利と下限の3つが存在し、その下限の部分が技術的にゼロを下回ってしまったのである。

 日銀も同様にコリドーを設けている。政策金利は「無担保コール翌日物」の金利である。上限となるのは補完貸付制度(ロンバート型貸出制度)における金利、ロンバート金利である(基準割引率および基準貸付利率)。補完貸付制度とは、あらかじめ定められた条件を満たす限り、金融機関が希望するときに、担保の範囲内で希望する金額を日本銀行から借り入れることができるという制度である。この金利は昔、公定歩合と呼ばれていた。

 下限金利となっているのが補完当座預金制度による金利である。これは日銀の当座預金と準備預り金のうち超過準備に付けられた金利である。2014年11月現在、上限となる基準割引率および基準貸付利率は0.3%、政策金利は0.1%(ゼロではない)、下限となる超過準備の利子も0.1%となっている。

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by nihonkokusai | 2014-11-10 09:43 | 中央銀行 | Comments(1)

安倍政権にとって絶妙のタイミングでの追加緩和

 今回の量的・質的緩和(QQE)の第二弾は、日銀としてここは逃したくはないタイミングであったろう。原油価格り下落などから、消費者物価指数が日銀が目標としている2%どころか、1%割れの懸念が出てきた。このためその懸念を市場から催促される前に追加緩和で払しょくさせる必要性があった。加えてこのタイミングでの日銀の異次元緩和第二弾はアベノミクスと同様に、急速な円安株高を演出できると予想され、これは安倍政権に対する大きなフォローとなる。

 2012年11月の衆院解散を受けてのアベノミクス登場による円安株高もあって、日本の景気は回復し物価も予想以上に上昇した。2020年の東京オリンピックの誘致の成功などもあり、経済再生を表看板に掲げた安倍政権への期待は強く、それが内閣支持率にも表れていた。

 ところが2014年4月の消費増税後に景気は予想以上に落ち込み、物価の上昇もいったん止まった。そのアベノミクスの効果が薄れてきたところに、内閣改造後の閣僚辞任などもあり、得意の外交面でもこれといった成果がなかなか上げられず、安倍政権はレームダック状態に陥る懸念が出てきた。その安倍政権にとって最も重要視していた指標が株価であった。2012年11月のアベノミクスは株高円安によって引き起こされたものであり、起死回生を計るためには株価の上昇が必要とされた。

 その株価対策ともなりうる公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用比率の変更の発表は、たまたま(?)日銀の金融政策決定会合の日である10月31日に予定されていた。GPIFが10月31日に明らかにした改革案では、国内株は12%から25%へと大幅に増やし、外国株もそれまでの12%から。株式同様に割合を増やす方向が発表されたのである。

 このタイミングに黒田日銀総裁や日銀幹部が目を付けた可能性がある。10月29日には米国の中央銀行であるFRBが量的緩和策として毎月買い入れていた米国債やMBSの買入れ額をゼロとすることを決定していた。つまり量的緩和策を停止したのである。声明文での「相当な期間」との表現は残ったが、それは利上げ時期を先送りさせるものとは思えず、市場もFRBのゼロ金利解除を視野に入れつつある。そのタイミングで日銀が追加緩和を実施すれば、FRBと日銀の金融政策の方向性の違いがより顕著となる。金融引き締めに走る米国に対して、日銀が追加緩和を行うことになれば、強力な円安ドル高要因になりうる。そこにGPIFが運用で外国株のシェアを高めるとなれば、さらなる円安要因となりうるのである。

 10月31日の日銀の追加緩和は国債買入れの増額が中心となったが、これについてはいずれ増額し、買い入れる国債の年限も長期化する必要に日銀は迫られていた。1年物の国庫短期証券(TDB)あたりまですでにマイナス金利が発生しており、短期金融市場の需給が逼迫していた。日銀としてはいずれ国債の買い入れ枠を増やすとともに、買入れ年限の長期化が必要とされた。そこでちょうど良い機会とばかり、このタイミングでその技術的な変更を異次元緩和第二弾として打ち出そうとしたのが10月31日の日銀の追加緩和であったと考えてもおかしくはない。

 2012年11月の安倍自民党総裁によるリフレ発言をきっかけとしたアベノミクスはほぼ円安株高による効果であった。そのアベノミクスを復活させるには、やはり円安株高が必要となる。GPIFの運用比率の見直しやFRBのテーパリングとの相乗効果を狙うには、まさに絶妙なタイミングであったことがうかがえる。GPIFの運用比率の変更による国債売却の懸念もあるが、その分は日銀が国債買入れを増やすことで、債券市場対策にもなる。

 消えつつあったアベノミクスよもう一度、のような効果、つまり円安株高が意識されての今回の追加緩和となった。これについて消費増税に向けての下地作りとの見方もあったが、そうとは思われない。消費増税を意識するのであれば、今回のタイミングはあまりに早すぎる。むしろ追加の経済政策などとセットにした方が良いはずである。

 現実に安倍政権は消費増税を延期して解散総選挙に打って出るとの観測も出てきた。むしろこの環境を政府にうまく使われた可能性もある。日銀は少し先走り過ぎたのかもしれない。もし消費増税が先送りされるようなことになると政府と日銀の間に亀裂が走る可能性も出てきた。

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by nihonkokusai | 2014-11-09 13:19 | 日銀 | Comments(0)

ECBにおける深刻な内部紛争

 11月6日のECB政策理事会では、政策金利等の変更はなく金融政策は現状維持となった。市場参加者が注目したのは、辞任説まで流れたドラギ総裁の会見であった。

 ロイターは4日に一部の政策委員会メンバーが5日の夕食会でドラギ総裁の運営スタイルについて抗議する計画だと報じていたが、どうやらその場で抗議をしたメンバーはいなかったようである。

 ロイターはこの記事で、ECB理事会内では現在、ユーロ圏の低インフレ状況への対応策を巡って意見が対立し、関係筋によると24人の理事会メンバー(6人の理事と18の中央銀行総裁)のうち、7~10人がFRB型のQE実施に反対しているとした。

 この記事の影響もあってか、ドラギ総裁は追加の非伝統的政策手段の利用については、政策委員会は「全会一致」で賛成している旨の発言があり、理事会メンバーから成る政策委員会内には複数の同盟が生まれていることはないと総裁は説明した。

 さらにドラギ総裁は、追加緩和策の準備を事務方に指示したと述べ、表明済みでない政策について理事会で議論したとも発言した。日銀の場合、事務方に指示した、となれば新たな金融政策がほぼ決まったことを示すことになる。しかし今回ドラギ総裁が、表明済みでない政策、つまり議論段階の量的緩和を事務方に指示したとは考えづらい。量的緩和については引き続き反対意見も多く、まだ踏み切れない段階にあると思われる。

 ロイターが記事で示した反対者としては、メルシュ専務理事、ラウテンシュレーガー専務理事のほか、ドイツ、オランダ、ルクセンブルク、エストニア、ラトビアの中銀総裁としている。また、スロバキア、スロベニア、オーストリアの中銀総裁も反対の可能性があるとした。

 ECBの政策委員のメンバーには専務理事が6名いる。イタリア出身のドラギ総裁、ポルトガル出身のコンスタンシオ副総裁、ベルギー出身のプラート理事、ドイツ出身のラウテンシュレーガー理事、フランス出身のクーレ理事、ルクセンブルク出身のメルシュ理事である。

 18のユーロ加盟国は、オーストリア、ベルギー、フィンランド、フランス、ドイツ、ルクセンブルク、アイルランド、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン、ギリシャ、スロヴェニア、キプロス、マルタ、スロヴァキア、エストニア、ラトビアとなり、この各中央銀行の総裁がメンバーとなる。

 インフレファイターと異名を取るとともに、過去の中央銀行の国債引き受けによるハイパーインフレを経験したドイツは中央銀行の国債買入れには当然反対してくる。そのドイツの連銀総裁とともに、ドラギ総裁以前にも国債買入れに反対していたのが、ルクセンブルグやオランダの中銀総裁とされていた。

 今回もドラギ総裁個人に対してというよりも、中央銀行による国債買入れそのものに対しての反対意見がドイツ出身のメンバーを中心に出されていると思われる。この反対があったために、ドラギ総裁は国債の買入れを主体とする量的緩和を推し進められず、今年の6月と9月の追加緩和は利下げという手段を取らざるを得なかった。9月には資産買入れも決めたが国債は含まれていない。

 今回のドラギ総裁の発言は果たして真に受けて良いものなのだろうか。ドラギ総裁の発言からは、来月12月か1月あたりでのECBによる国債買入れによる量的緩和策を導入する可能性はある。もちろんユーロ圏の景気や物価動向次第という側面はある。ドラギ総裁としては日銀による10月の追加緩和とそれによる円安の動きをみて、早期の導入の必要性を意識したのではなかろうか。しかし、ECBの内部紛争は意外に根深く深刻なものとの見方があることも確かなのである。

 日銀は5対4という僅差で押し切ったが、国を跨いだECBでは反対意見が多いものを押し切ると、政治問題ともなりかねない。日銀などよりECBの方がよほど、和を以て貴しとなす、政策が必要となる。それが良いかどうかはさておき、今回の日銀の無理やりな追加緩和に対して批判的な声も出ている。ドラギ総裁も反対意見には慎重に耳を傾ける必要があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-08 10:43 | 中央銀行 | Comments(0)

ドイツでは一部の個人の預金口座でもマイナス金利に

 11月6日付けの読売新聞電子版によると、ドイツのオンライン銀行が11月から大口預金に限り、預金額に応じて利息を付けるのではなく、顧客から利子を徴収する「マイナス金利」を同国で初めて導入したそうである。

 マイナス金利を導入したのはドイツ中部のチューリンゲン州の小規模行「ドイツ・スカート銀行」だそうで、同行での預金総額が300万ユーロ超の顧客で、貯蓄口座に50万ユーロ以上を預けていた場合などに金利として0.25%が徴収されるとか。

 中央銀行が政策金利の一部としてマイナス金利が発生したケースはあったが。民間の銀行が個人向けの預金にマイナス金利を適用するのは極めて稀ではなかろうか。もちろん日本の銀行でも金利が極めて低いため、時間帯によってはATMで預金をおろした際に手数料が発生し、結果としてマイナス金利となってしまうことはある。しかし、今回の場合は銀行がマイナス金利を課することになり、状況は異なる。

 ドイツはユーロ圏の国であり、中央銀行はECBとなる。そのECBは今年6月5日のECB政策理事会で追加緩和策が決定された。政策金利は0.1%引き下げられ、リファイナンス金利が0.25%から0.15%となった。コリドーとよばれる政策金利の上限と下限については、上限金利である限界貸出金利は0.4%に引き下げられ、下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)はマイナス0.1%となったのである。

 このマイナス金利は預金ファシリティ金利だけでなく、超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用されるとされた。

 これがいわゆるECBのマイナス金利である。さらに9月4日の政策理事会では、ECBは政策金利を全て0.1%ずつ引き下げ、リファイナンス金利を0.05%に、上限の限界貸出金利を0.3%とし、中銀預金金利をマイナス0.2%とした。

 6月の利下げでドラギ総裁は政策金利は「事実上」下限に達したと述べていたにもかかわらず、9月にまた引き下げ、今度こそ利下げはこれで終わりと強調していた。これはドラギ総裁としては量的緩和政策の導入をしたかったものの、ドイツ出身のメンバーなどの反対もあり、政策金利の引き下げなどで対応せざるを得なかったためとみられる。かなり無理をしていたことも確かであり、その結果、民間にもシワ寄せが来た結果となった。

 民間金融機関としては貸出や国債などでの運用とともに、預金の引き出しに備えてある程度の資金は中央銀行の当座預金に置くなり、短期で運用する必要がある。しかし、その金利がゼロ近くかマイナスとなっていれば。今回のように大口顧客の預金の利子をマイナスにせざるを得ないことも理解はできる。しかし、銀行の運用の源である預金はいらないとの政策は通常は取れないことで、この銀行はレアケースではないかと思われる。

 それではすでに1年物の国庫短期証券が一時マイナス金利となっていた日本でも、個人の預金でのマイナス金利はありえるのか。これについては絶対ないわけではないが、やはり銀行が預金の流出を招くようなことはしないのではないろうか。

 ECBと日銀は緩和目的は同じであっても、そのやり方が違うため、その可能性は極めて薄いといえる面もある。ECBはマイナス金利を課すことで、中銀の当座預金に置かれた資金を多少リスクをとっても他の商品で運用、例えば株式市場などでの運用を促そうとした。

 これに対して日銀は、当座預金の超過準備にはプラス0.1%の利子をつけている。これは日銀が市場から国債を買って、民間銀行は受け取った資金を日銀の当座預金口座に積み上げることを目的としているためである。現在の日銀の政策目標が、日銀の当座預金を含むマネタリーベースとなっている。これが膨らむとインフレ期待が強まる、と日銀は考えている。ECBは中央銀行から資金を逃がす策、日銀は中央銀行に資金を積み上げさせる策をとっている。これでも目的は同じで、ともに物価の上昇や景気の回復である。

 日銀の超過準備には0.1%という利子が課せられることで、日銀に口座がある一般的な国内銀行などでは、預金者にマイナス金利を課せる必要はない。ただし、今後、1年より長い期間の国債でマイナス金利が発生するような事態となれば、今回のドイツのように運用難を理由に大口預金者にマイナス金利を課す可能性がないわけではない。

 それでも民間銀行にとっては各種の決済などを含めて、預金を置いておくことで手数料収入が得られる面もある。企業にとっても預金にマイナスが課せられれば、他のマイナス金利でない銀行に資金を移し替えることが予想される。銀行にとって収益の源が預金である以上、日本での預金へのマイナス金利は考えづらいのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-07 09:49 | 金融 | Comments(0)

ドラギ総裁と黒田総裁は独裁なのか

 ECB理事会メンバーのユーロ圏各国中銀総裁の間でドラギ総裁の運営スタイルに対する不満が高まっているそうである。ECB関係者によると、各国中銀総裁の間では、ECBのバランスシートの規模について理事会が具体的な数値は公表しないことをで合意した直後に、ドラギ総裁が規模の目標を事実上設定したことに特に不満が募っているとか(11月4日ロイター記事より)。

 9月4日のECB政策理事会では、主要政策金利のリファイナンス金利を過去最低の0.05%に引き下げ、上限金利の限界貸出金利を0.30%に、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.20%に引き下げた。ドラギ総裁は利下げに関して、これで打ち止めとの姿勢を示した。さらに10月から資産担保証券(ABS)とカバードボンドを買い入れることも決めた。これは域内の信用状況を緩和するための措置としている。その買入れ額について「関係筋」から、3年間で5000億ユーロ規模に達する可能性があるとの発言があった。

 ロイタの記事によると、あるECB関係者は「トリシェ前総裁はよく助言を求め、意見の一致に向け努力していた」と指摘していたが、別の関係者は、「ドラギ氏は秘密主義的で、合議的でない」としていたそうである。

 ECB理事会内では現在、ユーロ圏の低インフレ状況への対応策をめぐり意見が対立し、24人の理事会メンバーのうち7~10人がFRB型の量的緩和実施に反対しているとされる。反対しているのはメルシュ専務理事、ラウテンシュレーガー専務理事のほか、ドイツ、オランダ、ルクセンブルク、エストニア、ラトビアの中銀総裁。スロバキア、スロベニア、オーストリアの中銀総裁も反対の可能性があるという(11月4日ロイター記事より)。

 ドイツからの反対があったであろうことは想像できたが、量的緩和に対しては予想以上に反対意見が多かったようである。ECBの追加緩和が金利の引き下げが主体にならざるを得なかったのはこれが要因とみられる。ドラギ総裁は本音では量的緩和に踏み込みたかったと想像される。しかし、ECBは国を跨いだ中央銀行であることで、日銀のように5対4での僅差での決定といったことは政治的にも難しかったものと予想される。ドラギマジックはその意味ではタイミングとしては効果はあっても、内容としては中途半端となってしまったのはこれが要因か。

 ある程度、金融政策でサプライズを起こすためには、そのタイミングと内容が必要となる。特に緩和策には市場参加者が事前に予想していまうと、その効果は限定的となる。もちろんマスコミにリークされても同様である。それを避けるためには、少人数で戦略を決定し、それをなるべく外部に漏れないようにする工夫が必要となる。それによってドラギマジックのようなマジック効果が生まれる。その意味ではドラギ総裁は前任のトリシェ総裁と違いやや秘密主義であったのかもしれない。

 今回の予想外の日銀の追加緩和についても、短期間で総裁、副総裁など執行部と日銀幹部の一部など少数の人数で戦術を練っていたと想像される。ただし、金融政策は当然ながら総裁、副総裁、審議委員の9人の多数決で決定される。このためその票読みが必要となる。決定会合では議長の議案が否決される事態は避けなければならない。

 しかし、今回の追加緩和に対しては、当初の異次元緩和の効果がなかったことを示すことにもなりかねない。異次元緩和の効果が限定的であったにも関わらず、さらに量を増やすというのはリスクを増やすだけとなりかねないとの認識もあったはず。実務派の4人の審議委員を動かすのは難しいと判断し、学者出身の審議委員2人の賛意を取り付け、31日の決定会合に臨んだのではないか想像される。つまり日銀もドラギ総裁に劣らず、それ以上に秘密主義でかつ少数で動いていたことが想像されるのである。

 会社の経営でも役員会などでの総意を得るより、トップの独断で走ったほうがうまく行くこともある。ドラギ総裁や現在の日銀のやり方も、市場に対する効果を生むにはその方が良いのかもしれない。ただし、トップのやり方が非常にリスクがあるものであると、これは諸刃の剣ともなりかねない。ECB内部での反対意見、今回の日銀の異次元緩和パート2で反対した4人の委員の意見も重要であり、私個人としてはむしろこれら反対者の意見に組するものである。

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by nihonkokusai | 2014-11-06 09:38 | 日銀 | Comments(0)

金融緩和は奇襲が大事だが目的がおかしくないか

 10月31日の日銀の異次元緩和第二弾は、5対4という僅差で決定された。日銀の金融政策は毎月1回(4月と10月は2回)開かれる金融政策決定会合で決められる。日銀の金融政策を決めるのは総裁ではないし、担当理事でもないし、首相でもない。金融政策決定会合は国会などと同様に委員会制なので多数決によるが、最終的に議長(通常は総裁)が多数の意見をくみ取る格好で議長提案を行って決定する。ある程度賛成多数で可決されるであろうとみてから議案が出されるため、それが否決されることは考えづらい。

 2008年のやはり10月31日の金融政策決定会合において、当日の白川日銀総裁は議長案として政策金利を0.2%引き下げ0.3%前後とすることを提出した。この表決は賛成4人、反対4人の賛否同数となった(民主党政権下の総裁人事のゴタゴタの影響で審議委員がひとつ空席となっていたので8人しかいなかった)。賛否同数となったため日銀法18条2項の規定に基づき議長を務める白川方明総裁が決定した。この際の賛成は白川総裁、山口副総裁、西村副総裁、野田審議委員。反対は須田審議委員、水野審議委員、亀崎審議委員、中村審議委員であった。

 さて今回の多数決の状況を確認してみると、追加緩和に賛成したのは黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁、宮尾審議委員、白井審議委員であった。反対したのは森本審議委員、石田審議委員、佐藤審議委員、木内審議委員である。反対した委員は、これまでの金融市場調節方針を維持することが適当であるとしたと公表文には記されていた。

 今回の異次元緩和パート2というかバズーカツーは、市場参加者にとってもサプライズとなった。一部に国債の買入れを技術的に引き上げる必要があり、そのために追加緩和を行うかもしれないとの観測はあった。しかし、マスコミが事前にリークすることもなく、ここまで大胆な追加緩和が決定されるのはまさに寝耳に水といった状況であった。だからこそ11月4日にドル円は114円台に、日経平均は17000円と急騰することになった。

 中央銀行の金融政策において、利上げなどの引き締め策は事前に市場に織り込ませ、市場の急落等は避けることが必要となる。その良い事例が今回の米FRBによるテーパリングにおける市場との対話にあった。やや試行錯誤した面はあったが、テーパリングを行っても債券、株式市場ともにそれによる市場への影響は極力抑えられた。

 それに対して金融緩和はサプライズのほうが効果的。特に市場への効果があることは今回の事例でもお分かりの通り。昨年4月の異次元緩和についても、すでに首相が日銀がリフレ策をやるぞ、総裁も俺が任命したぞ、という状況下、その実施の可能性はあった。ただし、黒田総裁は就任から日が浅く短期間で審議委員などの同意が得られるか疑問もあり、4月4日のタイミングは難しいとの見方もあった。それを日銀の理事などを中心に動いて行ったとされているが、これもサプライズとも言えた。もちろんその内容も市場は脅威した。

 今回も確かに振り返れば、ここを逃したくはないタイミングであったことは確かである。私ももう少し安倍首相や黒田総裁、日銀理事などの立場でものを考えていれば、追加緩和の可能性を考慮できたかもしれない。

 レイムダック化した安倍政権からの株価対策要請、原油価格下落などで思ったように期待が、ではなく物価が上がらない日銀、米国FRBはテーパリングを終了したばかりのタイミングであり円安ドル高に働きかけるまたとないチャンス。さらに消費増税への援護射撃にもなりうる。そして。GPIFの運用比率の変更とタイミング合わせての株価対策、国債対策ともなる。

 しかし、異次元緩和で物価が上がらないのにさらに異次元の緩和を大きくする意味があるのかという当然の疑問もあり、私自身、追加緩和という考えが及ばなかった。当然ながらこれは審議委員も同様であったのではなかろうか。だからこそ実務派とされる森本審議委員、石田審議委員、佐藤審議委員、木内審議委員が反対したと思われる。それに対して理論派というか学者出身の宮尾審議委員、白井審議委員は見事に執行部に取り込まれたのか、数の上では追加緩和を可能にできる状況が生まれた。

 サプライズとなり特に市場には大きな効果をもたらせた今回の日銀の追加緩和であったが、その目的が「円安株高と国債安定」という市場操作が目的であったように思われる。さらなる円安で物価には上昇圧力が掛かろうが、ここにきて原油価格はまだ下げている。果たして日銀の言うところの期待とは、株高や円安、さらに国債価格は安定してくれよとの期待が本音なのであろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-05 09:55 | 日銀 | Comments(0)
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