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国債より日銀の信認が大事なのか

 10月31日の日銀の異次元緩和第二弾で賛成に回った審議委員の一人、白井さゆり審議委員は11月26日の講演後の記者会見において、「デフレマインドが転換しないことの方がマネタイゼーションより重要な問題だ」と指摘したそうである。現在の日銀の金融政策によるデフレ脱却のためならば、財政法で禁じられているマネタイゼーションを行っても問題ないと言っているようにも受け取れる。

 財政ファイナンスとは、中央銀行が政府に対してマネー(資金)をファイナンス(調達)という意味であり、財政赤字の拡大に中央銀行が直接協力をするという意味となる。これは国債のマネタリゼーション(貨幣化)とも呼ばれる。政府が発行する国債を日銀が直接引き受けるこということは、政府の財政赤字に対して、日銀が資金を融通することになる。

 日本では財政法で、公債の発行については日本銀行にこれを引き受けさせてはならないと定めている。つまり財政ファイナンスを禁じている。中央銀行が、いったん国債の引受などにより政府への直接の資金供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まるためである。

 むろん財政規律を守るべき対象は政府となり、日銀ではない。従って日銀の審議委員から、マネタイゼーションよりもデフレ脱却を優先すべきとの発言があったとしても、ひとつの意見として片付けられるかもしれないし、現実にこのコメントを大きく取り上げていたマスコミもなかった。

 しかし、この発言が日銀総裁からなされていたならば、現在の日銀による大規模な国債買い入れはデフレ脱却のためならば、財政ファイナンスと認識していただいてもかまわない、といったような解釈になりかねない。格付け会社による日本の格下げを招くとともに日本売りが拡大する懸念から出てくる。

 たしかに現在の日銀による大胆な国債買い入れは形式的には財政ファイナンスのように見える。11月の日銀による国債買い入れ額はこの月の国債発行額を超えていた。しかし、それに対して政府は財政規律を重んじることで、財政法を無視しているわけではないとの姿勢を示している。これによりかろうじて国債の信認は維持されている面がある。それをひっくり返しかねない今回の白井審議委員の発言である。

 白井委員は26日の講演において、「追加緩和」が検討され得る場合として、経済・物価の下振れリスクが顕在化して、それが中心的見通しを大きく下振れさせるケースと、金融政策に対する信認が低下したと国民・市場に見做されるリスクがあるケースを指摘している。今回はこのふたつのケースが該当したため、追加緩和に賛成したとしている。

 前者は消費増税や原油価格の下落の影響による下振れのケースに該当すると認識したとみられる。後者についてはみると、この場合の日銀の金融政策に対する信認というのは、昨年4月と今回の量的・質的緩和のことを示したものなのか。つまりインフレターゲットを含めての「リフレ政策」に対しての国民の信認のことを指しているのではなかろうか。

 リフレ政策はそもそも壮大な実験といわれたように、それに対する絶対的な信認など存在せず、むしろその政策効果に懐疑的な人は私ばかりではあるまい。今回のQQE2もリフレ政策の実験が失敗しそうなので、その失敗を認めたくないがために、さらに大きな実験を重ねているようにしか見えない。

 そもそもリフレ政策に絶対的な信認などは存在しないにもかかわらず、それを手段として講じてしまったのは現日銀の責任でもあり、それを指示した政府の責任でもある。そのリフレ政策の信認を低下させるぐらいであれば、マネタイゼーションなどは問題とはしないとも取れる発言は、日銀や政府が守るべき国債や円の信認を毀損するものであることを白井委員は理解していないと言うことなのであろうか。今回の白井委員の発言が、もし日銀や政府の本音を代弁していたとするのであれば、非常に危険極まりないということになる。

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by nihonkokusai | 2014-11-28 10:00 | 日銀 | Comments(1)

異次元緩和第二弾決定の背景

 10月31日の金融政策決定会合の議事要旨をあらたて確認してみたい。まず、このときの追加緩和の要因となったものの記述を点検してみる。

 「物価面について、大方の委員は、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、このところ物価の下押し要因として働いていると指摘した。」(10月31日の日銀金融政策決定会合より、以下「」の部分は同じところから引用)

 消費増税引き上げにより、予想以上に需要が低迷し、今年6月あたりからの急激な原油価格の下落の影響で、予想以上に物価に下押し要因が働いているとしている。

 「何人かの委員は、こうした物価面での下押し圧力が、予想物価上昇率に与えるマイナスの影響について懸念を表明した。」

 この何人かの委員は、QQE2を主導したメンバーと思われ、総裁や副総裁である可能性が高い。

 「(多くの委員は)短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクが大きいと述べた。」

 多くの委員と言うが議長を除けば4人となる。ところで、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換、とは何をもって言えるものなのであろうか。これまではゼロ%近傍にあったコアCPIが1.5%に上昇したことが確たる証拠との見方があるかもしれない。しかし、コアCPIは2008年に一時2.0%を超えたことがある。この際の物価上昇要因は原油高にあった。今回もCPIの上昇は円安の影響もあり、原油価格の上昇などにそのかなりの部分が説明可能ではなかったか。だからこそ原油価格の下落で、簡単にCPIも下落してしまったと言える。

 「これらの委員は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、このタイミングで追加的な金融緩和を行うべきであると述べた。」

 ここで追加緩和が示された。コアCPIの低下要因が原油価格の下落としているのに、期待でCPIを持ち上げようとしている根拠はどこにあるのか。スターウォーズのフォースは日銀内部では存在しているようである。このタイミング、という表現には、何かしら良いチャンスであったような言い方であり、その裏にはFRBとGPIFがあったということであろうか。ただし、理由づけとしては下記の発言が続いていた。

 「(一人の委員は)年末から来年にかけて、企業が事業計画を策定したり、賃金交渉を行う重要な時期であることを踏まえると、特に重要であると付け加えた。」

 ここれはもちろん公式な説明としてもっともらしいが、サプライズで円安と株高を狙ったことは明白ではなかろうか。

 「何人かの委員は、わが国では、長年にわたってデフレが続いたため、予想物価上昇率の形成は、実際の物価上昇率の動きに大きな影響を受ける傾向があり、ここで物価上昇の足踏みが長引けば、影響が懸念されると述べた。」

 そうであるのなら、何も大量に国債などを買わず、原油でも大量に買い込んで、値を釣り上げた方がより効果的ではなかろうか。

 「一人の委員は、日本銀行は、これまで、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、2%の「物価安定の目標」を実現するために必要であれば、躊躇なく調整を行うとの方針を繰り返し述べており、ここで政策対応を行わなければ、そうしたコミットメントを反故にするものであると理解され、日本銀行に対する信認が大きく損なわれる可能性もあると述べた。」

 「この間、別の一人の委員は、今回、追加的な金融緩和を実施することによって、2015年度下期には、2%の「物価安定の目標」の安定的な達成が十分視野に入ると考えられ、そうであれば、その時期には、出口戦略の議論が開始できる状況になる可能性もあると述べた。」

 さて、この発言、どちらかは黒田総裁と思われる。前者が中曽副総裁で後者が黒田総裁か。追加緩和の理由づけであるが、特にこのタイミングで日銀がサプライズ緩和をしなくても信認は損なわれることはなかったと思う。むしろ、再度異次元緩和をしたのに、やはり物価は上がらなかったというほうが、リフレ政策そのものが間違いであったという証拠になるのではなかろうか。

 「具体的な追加緩和の内容について、何人かの委員は、今回の措置が人々のマインドに働きかけるものであることを踏まえると、戦力の逐次投入と受け取られないよう、リスク量や副作用も勘案のうえ、可能な限り大きな規模を目指すべきであると述べた。」

 QQE2実現化チームは、戦力の逐次投入ではないことを明確にするため、国債買入れの技術的な拡大のようには見せず、まさにバズーカの第二弾であることを強調するため、大きな規模を目指した。この背景にはサプライズを狙い、円安株高に拍車をかけることも期待してのものであったといえる。

 そのあとに追加的な金融緩和を行うことに慎重な見方を示した委員の発言があったが、これについては後日あらためて確認してみたい。

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by nihonkokusai | 2014-11-27 09:45 | 日銀 | Comments(0)

不可解な決定会合の中断時間

 25日の朝、10月31日に開かれた日銀の金融政策決定会合議事要旨が公表された。10月31日に日銀は「量的・質的緩和の拡大」、つまり異次元緩和の第二弾を決定した。事前に追加緩和観測はほとんど市場では流れておらず、サプライズな緩和となっていた。追加緩和決定は5対4というぎりぎりの多数決で決定していたこともあり、その決定に至る政策委員の議論も当然注目されたが、今回はその部分ではなく違う部分から興味深い事実がわかったのでそちらに注目してみたい。

 10月31日の決定会合では、妙なことが起きていたことが議事要旨からわかったのである。それは以下の部分である。

 「金融市場調節方針の変更等に関する議論を踏まえ、政府からの出席者から、財務大臣および経済財政政策担当大臣と連絡を取るため、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(12時31分中断、12時42分再開)」

 金融政策の変更を決定しようとしているので、担当大臣に確認を取るのはあたりまえではないかと思われるかもしれないが、これは極めて異例の出来事なのである。過去の事例を見ても金融引き締めの際には、このような中断があったが、その後の金融緩和の際には、異次元緩和第一弾を決定した2013年4月の決定会合を含めて、中断の事例はなかった。政府にとっても10月31日の日銀による量的・質的緩和第二弾がサプライズであったことは確かである。

 2000年8月のゼロ金利解除の際に議決延期請求権を行使したときだけでなく、2006年3月の量的緩和解除の際や(午後1時17分中断、午後1時46分再開)。同年7月のゼロ金利解除時(午後0時39分中断、午後1時00分再開)、2007年2月の利上げの際にもあった(午後1時01分中断、午後1時26分再開)。これらはすべて議長から議案が提示されたあとに中断が要請されていた。

 ところが今回は金融引き締め方向ではなく、政府には都合の良い金融緩和であり、議決延期請求権など行使することは考えづらい。それではなぜ、採決の前に担当大臣に確認を取る必要があったのか。

 10月31日の政府からの出席者は、財務省からは宮下一郎財務副大臣、内閣府からは前川守政策統括官であった。財務副大臣は麻生大臣から日銀が動く可能性がありそうだとは、聞いていなかったのであろうか。それともそれまでの日銀の政策委員の議論から、かなりきわどい票決になりそうだとの連絡をしたのであろうか。もちろん全くのサプライズであり、自分のコメントを含めて大臣に確認を取った可能性もある。

 このあたり憶測となってしまうが、麻生大臣も今回の日銀の追加緩和は知らされていなかった可能性もある。事前に政府が日銀の金融政策の変更を知ること自体、おかしいとのご指摘もあろうが、繰り返すが2013年4月の異次元緩和第一弾では、今回のような中断はなかったのである。

 日銀が緩和のタイミングを計るために政府側との阿吽の呼吸を信じて異次元緩和第二弾を独自に決定したとなれば、その後の解散総選挙と消費増税の延期に至ることを考えると勝手に突っ走ってしまった可能性もありうる。公定歩合と解散は嘘をついても良いとされていたが、まさか日銀と政府もお互いに嘘というか本音を隠していたというのであろうか。

 不可解な決定会合の中断時間は、真実が明るみに出ると何だそんなことかというものかもしれないが、もしかするとかなり奥の深いものであった可能性もある。ただし、中断時間はわずか10分程度であったことを考えると、担当大臣はある程度の動きを察していたのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-11-26 17:14 | 日銀 | Comments(0)

市場が日銀や安倍政権に牙をむく可能性

 11月21日の衆院解散により、選挙戦に突入する。今度の選挙については策士策に溺れてしまったような気配が出てきた。そもそも安倍政権にとって時間とともに支持率低下が避けられないとの見立てもあっての今回の解散総選挙ともみられ、2年前の選挙と打って変わり、攻めの選挙から守りの選挙となる。前回の選挙は与党であった民主党を攻撃し撃破した。今回は何から守るかといえば、野党というより国民の支持の低下から身を守ることになろう。

 朝日新聞は19、20日に全国緊急世論調査(電話)を実施し、この結果、安倍内閣の支持率は39%で、不支持率は40%となり、第二次安倍内閣発足以来、初めて支持と不支持が逆転した。この時期に解散・総選挙をすることについては反対が62%で、賛成の18%を大きく上回った。消費増税延期に関する首相の判断を評価するは33%で、評価しないの49%の方が多かったそうである。

 さらに安倍首相の経済政策、つまりアベノミクスは成功か失敗か尋ねたところ、成功だは30%で、失敗だの39%方が多かったそうである。その他・答えないも31%に上り、判断がつかない人も多かった。

 この朝日新聞の世論調査を見る限り、今回の選挙は与党自民党にとって、かなりの逆風になる可能性がある。ただし、相手となる野党の魅力も薄く、上記の世論調査の結果でも、比例区投票先を政党名を挙げて聞いたところ、自民37%、民主13%となっているように、自民党が優勢であることは確かである。

 民主党に対する風当たりも引き続き強いものがあり、選挙の行方については自民党が若干の議席を失うだけとの見方も強く、そうなれば安倍首相の思惑通りとなる。果たしてそううまく行くであろうか。

 11月20日の夕方、ドル円は一時119円近くまで進んだ。ドル円だけでみれば、日銀とFRBの金融政策の方向性の違いによる動きとみることもできる。しかし、円はユーロに対しても下落し、ユーロ円は一時149円台に乗せていた。ECBの追加緩和観測も出ているにも関わらずである。また、同じ安全通貨とされているスイスフランに対しても円は下落するなど、単純に金融政策だけでの動きとも思えなくなってきている。

 もちろん日本国債はいまのところ微動だにせず、日本売りが始まっている気配はない。しかし、ヘッジファンドなどが日本国債よりも先に円を切り崩しに掛かる可能性もありうる。格付け会社も日本の格付けを再確認しようとするなど、消費増税の延期は次の再延期は認めないとしても、財政規律の緩みを感じさせる。しかも、その前に日銀は30兆円もの国債残高の積み増しを決定している。

 このあたりからもヘッジファンドなどが付け入る隙をみせてしまっているように思われる。場合によると1992年のイングランド銀行とヘッジファンドの攻防戦のように事態が起きる可能性もないとはいえない。この際にはジョージ・ソロスなどのヘッジファンドがイングランド銀行を打ち負かしていた。安倍政権は市場をうまく味方につけた結果、円安株高を背景に高い支持を受けた。その市場が日銀や安倍政権に牙をむく可能性がないとは言えない。

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by nihonkokusai | 2014-11-25 09:48 | アベノミクス | Comments(0)

梯子を外された日銀

 10月31日に日銀が決定した量的・質的緩和の拡大(QQE2)は2012年11月のアベノミクスの再来を狙ったものとも言える。その意味では安倍政権へのフォローとも言えるものである。さらに日銀は安倍政権が2015年10月の8%から10%への消費税の引上げを決定できる環境を整えようと考えていた可能性がある。黒田総裁は消費税率が予定通り引き上げられることを前提に政策運営を進めていると主張していた。

 ところが政府はQQE2による円安株高の流れも利用し、解散総選挙の好機と捉え、そのために2015年の消費増税の延期を決定してしまった。むろん金融政策は日銀が決めることであるのと同様に、消費増税の決定は首相の判断となる。

 しかし、日銀と政府との間には、2013年1月の共同声明が存在している。これは日銀と政府は、お互いの役割を明確に認識した上で、それぞれが取り組むべきことをはっきりと示し、そのもとで、日銀は2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指し、政府は日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進するとしている。

 日銀は2013年4月に量的・質的緩和を決定し、国債を市場から大胆に買い入れることになった。これは日銀が国債を直接引き受けての財政ファイナンスと認識されかねない。財政ファイナンスでもマネタイゼーションでもないとするのであれば、政府が財政規律を守る姿勢を示すことが必要になる。

 消費増税は国の財政悪化を食い止めるひとつの手段ではあるが、財政健全化に向けた切り札的な役割ともなっている。それにもかかわらずQQE2を日銀が決定したあとで、政府は2015年10月からの消費増税の延期を決定してしまった。これは日銀にとっては梯子を外された格好となった、

 これに関して黒田日銀総裁は11月19日の記者会見で、何よりも重要な点は財政規律を守るという政府のしっかりした対応であるとし、政府も財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための努力、そのための取り組みを着実に推進していくとした上で、「中期財政計画」を策定し、そこに健全化に向けた数値目標も掲げられ、その達成に向けた取り組みを明確に示しているとしている。

 安倍首相は2015年10月からの消費増税の8%から10%への引き上げを18か月先送りし、2017年4月に実施するとしている。その際には再延期は考えておらず、消費税率10%への再増税先送りに伴う法改正で、経済情勢次第によって増税を停止できる「景気条項」を撤廃する方針を示している。これも財政規律を堅持する姿勢を示したものであろうが、消費増税を先送りすること自体、財政規律よりも経済政策を優先した格好となり、日銀が財政ファイナンスに近いことをしてしまっての歯止めを取ってしまった格好となる。

 これは非常に危険な状況を生み出すことになりかねない。これを受けて海外投資家からはバンザイノミクスとの造語も飛び出してきた。財政ファイナンスに突き進む日本を揶揄した言葉である。今回の消費増税延期とQQE2の組み合わせが、いずれ日本売りのきっかけとなる可能性は否定できない。

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by nihonkokusai | 2014-11-24 10:33 | 日銀 | Comments(0)

10月に都銀は長期債主体に大幅売り越し

 11月20日に日本証券業協会は10月の公社債投資家別売買状況を発表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先(条件付売買)を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に、集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使うことになる。

 10月に都銀は3兆8712億円の売り越しとなった。4か月連続での売り越しである。同時に発表された国債の投資家別売買状況を確認すると、長期債を3兆9983億円売り越しており、長期債主体の売り越しであった。都銀は7月、8月と中期ゾーンから長期・超長期ゾーンに乗り換えた格好となっていたが、今回は長期債の残高を落としてきた。9月の都銀による中期国債の売り越しの4兆2258億円は2004年4月からの集計データのなかでは過去最大規模となっていたが、10月はその中期債を3451億円買い越していた。

 売り越しで目立っていたのは都銀に加え、信託銀行で1兆341億円の売り越し。超長期債を5404億円、長期債を4741億円売り越していた。GPIFの運用比率の変更を睨んでの動きと思われる。

 買い越しで最も大きかったのは引き続き外国人となり、1兆8742億円の買い越し。超長期債を3924億円、長期債を5441億円、中期債を9171億円と今回も万遍なく買い越している。

 次に買い越しが大きいのは、生損保の7540億円。こちらは超長期国債を4855億円買い越し、中期債を1377億円買い越しとなっており、長いところの主体に買い越していた。続いて投資信託の5008億円の買い越し。こちらは中期債を2803億円の買い越しとなっていた。

 10月の債券相場はほぼ右肩上がりの上昇相場(利回りは低下)となった。しかし、値幅はさほど大きくなく、債券先物は146円近辺から146円半ばあたりまで上昇した程度。10年債利回りは0.5%台から0.4%台の前半に低下した。問題はこのあとになる。

 10月31日に日銀量的・質的緩和の第二弾を決定し、ドル円はそこからほぼ一本調子で上昇(円安ドル高)となり、110円台から118円台に。安倍首相は11月18日に消費増税の18か月の延期と21日の衆院解散を表明した。ここにきて債券は超長期債主体にかなり値動きの荒い展開となり、国債需給のひっ迫により2年債利回りは19日に初めてゼロ%をつけた。QQE2により国債の買入れはさらに追加された上に、財政健全化に向けた大きな柱である消費増税が延期されたことで、財政ファイナンスへの懸念も強まることも予想される。11月以降の債券市場で投資家はどのような動きを見せるのであろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-21 09:52 | 債券市場 | Comments(0)

日銀は消費増税の延期を黙認する格好

 11月19日の日銀金融政策決定会合では、前回の10月31日に「量的・質的金融緩和の拡大」(QQE2)を決定してから日も浅く、その効果を見守りたいとして金融政策の現状維持を8対1(木内委員が反対)で決定した。

 安倍首相は消費増税を延期し、21日に衆院を解散すると表明した。衆院選の日程は12月2日公示、14日投開票となる。安倍首相はアベノミクスの是非が最大の争点になるとの見通しを示した。

 10月31日の日銀のQQE2の決定の要因については、原油安による物価下落への懸念によるところが最も大きかったと思われる。31日にはCPIの発表もあった。さらに数日前にFEDがテーパリングを終了させていたタイミングであり、円安ドル高を誘う要因ともなる。また、GPIFの運用比率変更の発表にぶつけることで、株高円安の相乗効果を生む狙いがあったとみられる。

 そして、これまで報じられていたものを確認する限り、このQQE2は予定通りの消費増税を見越してのものであり、むしろ来年の消費増税決定を後押しする狙いもあった。10月31日時点では安倍政権は消費増税延期と解散までの結論には至っておらず、日銀のQQE2による円安株高をみてむしろ好機と捉えたことも伺える。

 10月31日に日銀は展望レポートも公表しており、ここで2014年度の実質GDPを7月の見通しの1.0%から0.5%に大きく下方修正した。これはある程度7~9月期のGDPの悪化を意識していたものとみられる。また、物価見通しも小幅ながら下方修正し、これはつまり10月以降のCPIが予想通りの上昇は難しいことを意味する。そのためにQQE2を実施したともいえる。

 11月17日に発表された今年7~9月期実質GDP一次速報値は前期比マイナス0.4%、年率換算ではマイナス1.6%となった。日銀にとりマイナスまで想定していたかはさておき、ある程度想定の範囲内であり、そのために先に手は打った、という格好となった。

 問題は消費増税延期の決定をどうみるか、となる。QQE2の決定は5対4ということで、4票の反対票が入っていた。17日のGDPを見る限り適切な金融政策であったとみることもできなくはない。しかし、本当の狙いが円安株高と物価下落観測を後退させることであったのであれば、反対票を投じた委員の理由もわかる。むしろ、賛成票を投じた委員のほうがその理由説明は難しい。これは先日の宮尾審議委員の会見でも示されていた。さらに今度はQQE2の前提条件となっていた来年の消費増税も反故にされてしまった。

 決定会合後の黒田総裁の会見では消費増税の延期に関する質問が集中した。金融政策は日銀が決めることであるのと同様に、消費増税に決定権は政府にある以上、政府の決定を尊重するという格好となった。しかし、海外からはすでにバンザイノミクスとの造語も生まれているように、財政ファイナンスとの懸念が今後強まりかねず、格付け会社も日本の格付けを再点検する構えも見せている。

 債券市場はいまのところ動じる様子はない。しかし、市場参加者はかなり神経質となっていることに加え、日銀の大量の国債買入れで市場の厚みも失われている。何かしらのきっかけで国債が急落するリスクは以前に比べて大きく高まっていると見ざるを得ない。

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by nihonkokusai | 2014-11-20 09:37 | 日銀 | Comments(0)

アベノミクスの原点は危険なリスク的思考にあり

 安倍首相は18日の夜、消費増税の先送りと衆院の解散総選挙を表明した。2015年10月の8%から10%の消費増税は、1年半延期され2017年4月からとなる。消費増税の延期には法改正が必要となるが、この際に現行法にある「景気弾力条項」は撤廃される方向であり、そうなれば2015年10月からの消費増税の再延期もしくは撤廃は考えづらくなる。

 消費増税を1年半程度先延ばしして何かしらの意味があるのか。これはアベノミクスによる景気回復が消費増税の影響で腰折れしそうなため、さらなる増税は抑え、アベノミクスの効果を如何なく発揮できる環境を整えたいとの意向もあろう。しかし、それ以上に2016年の参院選など今後の選挙日程等などが意識されての1年半の先送りかと思われる。いわば財政再建も含めた「先送り選挙」となる。

 衆院の解散総選挙に関しては21日に解散し、衆院選は12月2日に公示され、14日に投開票が実施される予定となっている。参考までに前回の2012年の衆院選は11月16日に解散し、12月4日に公示、12月16日に投開票となっていた。

 前回の衆院解散の翌日17日、自民党の安倍総裁は熊本市内で講演し、衆院選後に政権を獲得した場合、金融緩和を強化するための日銀法改正を検討する考えを重ねて表明し、「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と述べ、日銀が建設国債を全額引き受けるのが望ましいとの考えを表明した。 また、同日、山口市では「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」との安倍総裁の発言も伝えられた。これがアベノミクスの始まりである。

 日銀法の改正はなかったが、この安倍政権のリフレ政策は安倍政権が任命した黒田総裁によって2013年4月に実行に移された。日銀は建設国債の発行額どころではない額の国債を市場から買い入れることになる。ただし、ここで輪転機は残念なことにぐるぐるは回っていない。お札の発行量はほぼ変化なく、日銀の当座預金に資金は積みあがった。それにより新しいマネーが市場に出ていくこと、つまり貸出等の伸びは限定的であった。株は上がったが、GPIFのポートフォリオリバランスなどは除いて、その大きな買い手が海外投資家であり、ニューマネーがどうしたこうしたみたいな動きもなかった。つまり、結果として安倍政権のリフレ政策を見越して、ヘッジファンドなどが円売りと株高を仕掛けたに過ぎないのがアベノミクスと言える。

 株高は日本だけでなく欧米市場でも同様であり、アベノミクスだけが要因ではない。円安についてはそれまでの欧州危機などによる円高のポジションの巻き戻しという側面も大きい。そこで組まれた円売り日本株買いはなかなか良いパフォーマンスが上がり、それがいまに続いている。17日のマイナスGDPの影響もなんのそのという状況となっているのもそれが要因か。

 果たして今度は安倍首相はいったいどのような発言をして、市場を仰天させるのであろうか。また野党は2012年のアベノミクスを見習って、度胆を抜く仕掛けをしてくるのか。今回の選挙はアベノミクスの成果を問う選挙となるそうだが、そもそもアベノミクスの原点が2012年11月17日の日銀の直接国債引き受けとプリンティング・マネー発言にあったことをしっかりと認識すべきであり、三本の矢というのはあとから付け足されたものである。このようなリフレ政策が極めて危険なものであることは言うまでもないが、国債が警報機として作用していない現状ではその危機が覆い隠されていることも知っておくべきことである。私はだれに投票するかどうかというより、この隠されたリスクが非常に気になっているだけである。

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by nihonkokusai | 2014-11-19 09:47 | アベノミクス | Comments(0)

GDPマイナスも想定内であったのか

 来年の消費増税の延期と解散総選挙の前提ともなりうる今年7~9月期実質GDP一次速報値に注目が集まっていた。11月17日の8時50分に発表されたものは、前期比年率プラス2%台あたりかとの予想も大きく下回り、実質で前期比マイナス0.4%、年率換算ではマイナス1.6%となった。年率でマイナス7.3%と大幅に落ち込んだ4~6月期から2四半期連続でマイナスとなった。

 民間在庫投資が前期の反動により大きく落ち込んだことに加え、設備投資も二期連続のマイナスとなり、民間住宅の大幅な落ち込みが継続し、民間消費支出の伸びも限定的となった。公的資本形成によって支えられている面はあるものの、これにより事前予想に反してマイナス成長となった。

 12月8日のGDP二次速報値を待たずに、11月18日にも安倍首相は消費増税の先送りと解散総選挙を表明すると報じられているが、ある程度この7~9月期GDPの悪さは首相に伝わっていた可能性もあるのではなかろうか(具体的な数字はさておき)。日銀も10月31日にQQE2を決定していたことも、今回のGDPの数字を見る限り、適切なものであったと認識されよう(その効果はさておき)。

 日銀のQQE2と消費増税先送りのミックスは円安・株高要因となった。日銀がQQE2を10月31日に決めたのは、そのタイミングから円安株高を意識したものであったと考えられる。10月29日のFRBによるテーパリングの終了を睨んでの円安ドル高要因、GPIFの運用比率発表とコラボすることで株高(株の運用比率上昇)と円安(海外資産の比率向上)、さらにQQE2の国債買入れ増額がGPIFの国債売りをカバーする。

 そして、日銀にとっての最大の懸念材料であった原油価格の下落による物価下落に対して、効かないながらも特効薬をさらに服用させることで、とにかく追加緩和をすれば物価も上がる(はず)との姿勢も示せる。QQE1の効果が(気合含めて)なかったことを覆い隠すことも可能となる。

 安倍政権にとって、日銀のQQE2による円安株高は、アベノミクス再来にも映る。日銀のQQE2は内閣改造後あたりからレームダック状態になりつつある安倍政権へのフォローともなる。この機に乗じて、解散総選挙というのは(票をなるべく減らさないとの)タイミングからは理にかなう。そこにもし7~9月期のGDPのかなりの悪化が意識されていたのであれば、当然ながら二次速報の発表される12月まで解散表明は待てないことになる。

 安倍首相にとっては、そのリフレ的な考え方から見ても、来年の消費増税の10%への引き上げは実施したくないというのが本音ではなかったろうか。2014年4月の消費増税は民主党が最終的に決めたこと(三党合意はさておき)であり、それを強行してしまったことで景気は予想以上に悪化し、せっかくのアベノミクス効果も消費増税によって打ち消されてしまったとし、物価も予想通りには上がってこない。そうとなれば安倍首相にとり、来年の消費増税などできる状況ではない。そこで消費増税の延期を表明した上で、安倍政権の生命線となっている株価が上昇している隙に(閣僚人事への批判もカバーするために)、解散総選挙に打って出ようと考えたのではなかろうか。

 しかも、消費増税と解散総選挙についてはマスコミ等を通じて、GDP一時速報が出る前に流すことにも意味があったと思われる。GDPを確認してから慌てて消費増税の延期と解散を決めると、アベノミクスに対しての批判がむしろ強まる恐れがあった(それでなくても批判は高まりつつあるが)。そうではなく、悪いのは消費増税であるから、来年の増税は延期すると言っておけば、確かにGDPを見てもそうであったと認識されよう。安倍首相の決断は正しい、みたいな見方になる。このあたり、もしや安倍首相には黒田勘兵衛並みの切れ者参謀がいたのかもしれない。

 問題はこれからである。もし2期連続でGDPがマイナスと確定されるとリセッションとなる。これに対して政府は選挙も意識して、経済対策を準備してこよう。日銀は10月31日に事前に手を打ってあるとして、11月19日の決定会合含めて当面はその効果の確認すると考える。しかし、株価動向など次第では追加緩和圧力が今後強まる可能性もある。果たして日銀の弾薬庫にはまだ弾は残っているのであろうか。「希望」と書かれた紙しか残っていない懸念もあるが、いずれ何かしらの対策を講じることも想定される。

 債券相場に与える影響としては、マイナス成長は当然ながら債券には買い要因となる。しかし、政府・日銀がパンドラの箱を開けてしまっており、歯止めの消費増税も見送りとなる見込み。国債需給では日銀の大規模買入れで問題はなく、補正予算を組むにしても新規の国債発行は考えていないとしている。しかし、来年度の予算編成も気になるところではある。国債需給はさておき国債信用に対して市場も次第に神経質になってくることは避けられないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-18 09:42 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクスからバンザイノミクスへの懸念

 日銀のサイトにアップされた11月13日の宮尾審議委員記者会見要旨も興味深いものとなっている。記者の質問のなかに「英米の市場関係者の間では、追加緩和による事実上の国債全額買い取りという明確なマネタイゼーションと、増税延期という組合せをバンザイノミクスという国債暴落政策として懸念する見方も出ている」との発言があった。このバンザイは解散も意味しているとともに、国債そのものをバンザイするとの意味合いのようで、なかなか面白い造語である。

 さて、記者の質問は当然ながら10月31日の追加緩和に、なぜ宮尾委員は賛成したのかに焦点があてられていた。これについて宮尾委員は、これまでの「量的・質的金融緩和」の効果はしっかりあり、中長期の予想インフレ率も全体としては、この間上昇してきており、デフレマインドの転換も着実に進んできたとしながら、

 「そうした中で、このひと月、ふた月ですが、原油価格の下落がより顕著になってきた影響、あるいは増税後の需要面の弱めの動き──いずれも一時的な要因とみられるわけですけれども──、それらは物価の下押し要因として作用してきており、これまで順調に進んできたデフレマインドの転換が後戻りするリスクがあると考えました」

 これは講演の要旨にもあったものではあるが、原油価格の上げ下げで、異次元緩和の効果は薄れるものであったのであろうか(そもそも異次元緩和に円安以外に物価を上げる効果があったのかはさておき)。しかも、一時的な要因によるものに対して。新たな異次元緩和をぶつけることに問題はなかったのか。今後は同様な物価下落要因が出てくると追加の異次元緩和を何度も仕掛けてくるというのであろうか。

 「デフレマインドの転換が後戻りするリスクを未然に防ぐ、好転している期待形成のモメンタムを維持するということは極めて重要であると考えました」

 講演では「デフレマインドの転換が遅延する」としていまだ転換していないような表現となっていたが、いったいどちらなのか。たぶんこれは誰も答えられないはずである。そもそもそれは計りようがない。そのようなもののために金融政策を大胆に実施することに対してのリスクは感じないのであろうか。

 宮尾委員は「国債金利の見通しについては、経済・物価情勢の改善を伴う形で今後推移していく可能性が高いと考えております」と会見で述べていたが、一見当たり前にみえるこの発言も大きな矛盾を抱えている。宮尾委員は 中長期の予想インフレ率も全体としては、この間上昇してきたと指摘していたはず。それがまったく国債金利に影響を与えていないことをどう説明するのか。むろん答えは、日銀が国債買い入れを行ってそれが金利に低下圧力を加えているためとなろうが、異次元緩和後もまったく動かなかった長期金利の意味するものはデフレマインドがまったくもって転換していかったことを示していると捉えることもできるのではなかろうか。

 記者からの出口に対する質問も出ていたが、いまは出口どころではない。消費増税の延期と結果としてセットになってしまった異次元緩和第二弾は、繰り返し記者の質問にもあったように「国債が暴落するという財政の信認を失う事態」になりかねない。国債がバンザイボンドになってしまうリスクはないのか。それについては「消費税率引き上げが先延ばしされる可能性についての全て仮定に基づく議論ですので、そういった仮定に基づくご質問に対して、答えることは適切でもありませんし、私からコメントするのは差し控えたいと思います。」と宮尾委員は答えている。

 QQE2に加えて、消費増税延期の可能性が強まっても国債市場は比較的落ち着いている。しかし、本当に市場参加者は落ち着いているのであろうか。

 異次元緩和での物価目標達成が無理なことを、さらなる異次元緩和で蓋をした日銀。その日銀の動きもうまくとらえ、円安株高という環境を生かしての解散総選挙。それは安倍政権のレームダック化を覆い隠すための選挙とも言える。そのためには日銀の意向を無視してまでも消費増税も先送りさせることで、争点をうまく移し換えた安倍政権。これはいったい何を招くのか。

 株は確かにリフレ政策に単純に反応している外国人投資家主体の買いにより株先主体に上がってきていた。円も売られやすい地合いになっている。この円安株高が根本的な問題も覆い隠してしまっている。バンザイノミクスは果たして杞憂に終わるのであろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-16 11:08 | アベノミクス | Comments(1)
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