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FRBがゼロ金利解除まで1年も待つのか

 10月28日、29日に開催されたFOMC後の声明において、米国債とMBSの新規の買入れを停止することを明らかにした。ただし、今後償還が来たものは再投資し、膨れ上がったバランスシートは当面維持することも明らかにした。

 FRBは予定通りにテーパリングを終了させた。10月初めから中旬にかけて米国株式市場が急落しドルも下落するなどやや市場は波乱含みとなったが、ここにきて市場も落ち着きを取り戻していた。

 声明文になかで、事実上のゼロ金利政策に関しての「相当な期間」維持する方針について、変更は加えられていなかった。とりあえずテーパリングを終了させることが今回は主目的であり、ゼロ金利解除に向けてのステップは徐々に行ってくることが予想される。市場に動揺をもたらす可能性もあるこの「相当な期間」の表現修正については、相当気を使ってきているように思われる。ただし、市場が次第に利上げを意識するようになった際に、この表記が変更されることが予想される。

 声明文の表記の上でもいくつかの修正が加えられており、このあたりからもFRBの次のステップに向けての動きがある程度読めてくる。

 特にイエレン議長の専門分野でもある労働市場について、「労働市場の状態はやや改善が進み、雇用数はしっかりと増え続け、失業率は下がってきている。全体的にみると、幅広い労働市場関連の指標は、労働資源の未活用が次第に改善していることを示している。」(日経新聞電子版より)として、労働市場の改善見通しが今回の資産購入プログラムの終了の大きな要因となったことを示していた。

 また、物価に関しては「エネルギー価格の低下やその他の要因から短期的には物価上昇は抑えられる可能性が高いが、FOMCは物価上昇率が目標である2%を下回る水準が続く可能性は今年はじめに比べるとやや薄らいできたとみている」(日経新聞電子版より)として、物価の低迷については今回のステップの阻害要因にはならなかったことを示した。

 今回の決定については、ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁が反対票を投じた。コチャラコタ総裁は、インフレ見通しが2%に戻るまで資産購入プログラムを現在の水準で続けるべきだと主張していた。

 FRBのテーパリングの終了を受けた米国市場での動揺は限定的となり、株式市場も一時下げ幅を拡大する場面もあったが、29日のダウ平均は31ドル安に止まった。米国債の下落も限定的となり、10年債利回りは2.32%と落ち着いている。外為市場ではドルが全面高の様相を呈し、ドル円は109円近辺に上昇したが、これはある程度、今後のゼロ金利解除に向けた動きを意識したものと思える。

 いまのところFRBの正常化にむけたロードマップ通りに進んでいるように思われる。声明文についても、これでいったん終了というよりも、今後の展開に期待を残すような内容になっている。これからみても、次のステップであるゼロ金利解除については、それほど長い相当な期間を置くことは考えづらい。

 今後のFRBは、何かしらのテールリスクでも出てこない限りは、来年の4~6月あたりを目途にゼロ金利を解除する準備を進めてくることが予想される。日銀も2006年の量的緩和解除後はすぐにゼロ金利解除に向けた準備を進めていた。資産購入プログラムの終了は決してひとつの区切りではなく、途中のステップに過ぎないことを市場はもう少し認識すべきではなかろうか。あと1年もFRBが待つことのほうがむしろ想像しがたいと思う。

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by nihonkokusai | 2014-10-31 09:49 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀に問われる異次元緩和の説明責任

 10月28日の参議院財政金融委員会で、日銀の岩田規久男副総裁は、日銀が目指す「2年程度で2%の物価上昇」の目標について「人間の行動に働きかけるのが金融政策なので、電車の時刻表のようにはできない。どうしても不確実性が大きい」と述べたそうである(日経QUICKニュース)。

 また、岩田副総裁は、昨春の就任前の国会における所信表明で、2年で2%の物価目標が達成できない場合は辞職する考えを表明したことに関し、「(達成できなければ)自動的に辞めると理解されてしまったことを、今は深く反省している」と語り、「まずは説明責任を果たすことが先決というのが真意だった」と説明した(ロイター)。

 この岩田副総裁の発言であるが、すでに言い訳にしか聞こえない。そもそも人間の行動に働きかけるのが金融政策というが、過去の日銀の金融政策にあれほど批判をしておいて、異次元とかバズーカとか呼ばれた大量の国債の買入れをすることで、人間の行動に変化を起こしていたのであろうか。

 リフレ派の主張に関してデフレ脱却との目的は良いとして、その手段については、財政政策の拡大、その財源確保と金融緩和の二つの効果を狙った高橋是清の行った日銀の国債引き受けに近い政策となる。いわばマネタイゼーションによる物価と景気の上昇である。量的・質的緩和は財政法で禁止されている日銀の国債引き受けとは違うとしているが、結果とすれば同じことである。新発債を市場を通さずに購入するか、市場を通して購入するかの違いである。

 ただし、日銀がマネタイゼーションに近いことを行うことは非常にリスクが伴う。むろん財政法で禁じられた要因ともなった国債への信認失墜への懸念がある。ハイパーインフレを起こしたという過去の歴史の教訓も生きている。いまはデフレで長期金利も超定位安定しているのにハイパーインフレなど起きるはずはないとの主張もあるが、市場のことを少しでも理解していれば、突如、地合いが急変するテールリスクと呼ばれるものは常に存在していることもわかるはずである。

 そのマネタイゼーションのような日銀の行動に対する歯止めとして、政府の財政政策があった。フリーランチを求めるリフレ派が反対する消費増税を決断したのも、政府が財政規律を守る姿勢を示すことで、国債の信認を維持させようとしたものであろう。消費増税で国債の信認を守れるのかはさておき、政府としては国債市場に動揺を与えるようなことはしたくなかったはずである。

 このようにアベノミクスと呼ばれたリフレ政策を中心とした政策は大きなリスクを伴っている。しかし、その効果については、岩田副総裁の今回の発言にあったように、「人間の行動に働きかける」という非常に曖昧なものであった。

 日銀が大量に国債を買えば、人間の行動に変化を与えられると言えるのか。たしかにアベノミクスの登場は円安と株高を引き起こした。しかし、これはヘッジファンドに儲けるチャンスを与えただけである。円安もリフレ政策の一貫となりうるが、アベノミクスが成功したかに見えたのは、その多くがこの円安や株高の影響で説明できる。為替市場や株式市場はかなり不安定でもあり、操作することもできない以上、岩田副総裁の言うところの不確実性が大きいのはある意味当然か。

 円安とかに頼らずとも日銀が大胆に国債を買えば、インフレ期待でデフレが解消されるというのが、リフレ派の考え方であった。自分たちが思い切った政策を実行すれば、2年もあれば物価目標などクリアできると信じての異次元緩和政策であったかに思われる。

 しかし、日銀が国債を2倍買ったところで人々が何に期待し、どう行動を変えるというのか。しかし、やってみなければわからないという壮大な実験を本当に行ってしまったことも事実であり、その効果についてここにきて疑問符が付き始めた。

 人々は別に物価が上がることを求めてはいない。景気が回復し賃金が上がり、それに応じて物価が上がるのは致し方ない程度の思いのはずである。しかし、物価の上昇を引き起こせば、景気回復と賃金上昇もついてくるというのはおかしな考え方と言わざるを得ない。それでもその実験を行ってしまい、その結果、毎月大量の国債を中央銀行が買い上げるという状況だけが続くという結果になりかねない。

 いまのところ国債市場はほとんど動揺は見せていない。しかし、短期市場あたりから徐々に機能不全となりつつある。マイナス金利はそのひとつの現れともいえる。過度に中央銀行の金融政策に頼るのは日本ばかりではないが、日本ほどこれほど大量に国債を発行している国もない。世界最大規模の日本の国債市場を侮ってはいけない。

 金融政策は電車の時刻表のようにはできないそうであるが、異次元緩和をすれば物価が上がるというレールそのものが存在しているかすら怪しい。異次元緩和が本当に異次元世界のものであると明らかになってしまうとそこで何か起きるのか。これからの日銀には岩田副総裁の言うところの説明責任が問われるところでもある。

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by nihonkokusai | 2014-10-30 09:37 | 日銀 | Comments(0)

日銀の物価予測が展望から願望になる懸念

 10月31日の日銀の金融政策決定会合では、経済・物価情勢の展望(展望レポート)が公表される。この展望レポートの発表があるためか、4月と10月の日銀の金融政策決定会合は月に2回も開催される。果たして2回も開催する必要があるのか。1回にしてその際に展望レポートも発表すれば良いように思う。

 それはさておき、この展望レポートは願望レポートと比喩されることがあるが、今回の展望レポートはまさにそのようなものとなる可能性がある。10月28日の日経新聞朝刊では、この展望レポートにおいて2014年度、つまり今年度の成長率見通しを4月時点での見通しである1.0%から0.6%に下方修正する見通しと伝えていた。

 これは4月の消費増税後の景気回復がもたついているためとされた。ただし、増税の影響は徐々に和らぎ、2015年度の見通しの1.5%、2016年度の見通しの1.3%は維持する見込みだそうである。

 また、物価の見通しについては「おおむね」現状維持となる見込みで、2014年度のコアCPIは前年比プラス1.3%、2015年度はプラス1.9%、2016年度は2.1%に据え置かれるようである(いずれも消費増税の影響を除いたもの)。ただし、2014年度の物価見通しについては下方修正を議論するとの見方も出ている(ロイター)。

 今年度の成長率見通しを下方修正したことで、景気回復が物価に与える影響はその分緩和されよう。さらに物価の上昇要因となる円安についてもドル円は10月はじめに110円台をつけてはいたがそれ以降はピークアウトし、ドル以外の通貨に対しては9月あたりでいったん円安はピークアウトしている。

 さらに物価の大きな上昇要因となっていた原油価格が、6月あたりから大きく下落してきている。

 日銀の黒田総裁は消費者物価指数のプラス幅が縮小しても1%を割ることはないと明言していたが、これも怪しくなってきた。8月のコアCPIは前年比プラス1.1%と1.0%に接近している。31日に発表される9月分についてはぎりぎり1%台は維持されるとみられるものの、10月以降は1%割れの可能性もありうるのではなかろうか。

 日銀の関係者からの話としても「年度後半の物価上昇撤回を検討」とか「関係者の1人は、インフレ率が1%を割り込むことはあり得ると」の発言も伝わってきている。むろん、日銀関係者が誰なのかはっきりしていないが、そのような見方をする日銀関係者がいたとしてもおかしくはない。しかし、政策委員を含めて本音ではどのように考えているのか。現状の外部環境を見る限り、物価の上昇に関して、決して楽観視できる状況とは思えない。

 原油価格の下落によるガソリン価格の引き下げなどは消費者にとっては良いことであり、これは景気にとってもプラスとなるため歓迎すべきことである。それでも物価は何としても2%にしなければ日本経済は良くならないものなのであろうか。

 そもそも国債を大量に買い続け、1年以下の金利は一部マイナスとなり、日本の長期金利も低位安定が続いているが、消費者物価は今年4月に1.5%をつけてから低迷が続いているのはどうしてだろう。

 これがもしアベノミクス以前であれば、日銀の緩和が足りないとされていた可能性がある。それで黒田日銀は思い切った異次元緩和をしたのだが、それでも結局、物価を金融政策でコントロールすることに無理があることが次第に明らかになりつつある。

 いやいや2012年4月の異次元緩和あたりからのCPIの上昇は顕著であり、前年比マイナスからプラスに転じ、1.5%まで上昇したではないかとの意見もあろう。

 このCPIの上昇こそ、その要因をはっきりさせるべきかと思われる。急激な円安と株高、世界的リスクによる景気の回復あたりの効果が、いくつかの物価下落要因の剥落で自然に回復するところにプラスαが加えられただけではなかったのか。

 それとも期待がこの物価上昇に大きく影響していたというのであれば、今年4月以降はその期待がはげ落ちてしまったというのであろうか。そうであるとするならば、さらなる異次元緩和が必要になりそうだが、さすがにそれをしてしまうと国債市場はどうなるかはわからない。

 いずれにしても今後の物価の動向について、日銀としては楽観的には展望できない状況にあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-10-29 09:29 | 日銀 | Comments(0)

米国の金融政策と米国債の関係

 10月28日、29日のFOMCにおいて、毎月の米国債とMBSの買入れ額を150億ドルからゼロとし、テーパリングを終了させる予定である。つまり量的緩和が解除される。

 FRBは米国債とMBSを大量に市場から買入れ、不動産市場の活性化や雇用環境の改善などを目的としていた。住宅ローン担保証券(MBS)と米国債を買い入れることで、米長期金利の低下を促し、住宅投資を促して、金利低下による景気への効果も意識され、結果としてFRBの目的のひとつである雇用の改善に結び付けようとしたものである。

 FRBの資産買入れは中央銀行のバランスシート拡大によるデフレ脱却を意図したものではない。しかし、結果とすれば日銀の異次元緩和と同じようなことをしている。治療目的は違うが、使用薬は同じであり、中央銀行の国債買入れはまさに万能薬と言えそうである(本当に効くかはさておき)。ユーロ経済とデフレ懸念払拭のため、ECBも日銀やFRBと同じようなことをしようと画策している。

 中央銀行による国債買入れがどのような効果を生んだのか。これは大きな課題であり、その検証はもう少し時を置いてからする必要があると思う。経済は中央銀行の金融政策だけで動くものではないため、その検証はかなり困難を極めることも確かである。

 ただし、今回のFRBの量的緩和第三弾と市場で呼ばれたものと、そのテーパリングの過程における米国債、つまり米長期金利の動向を比較することはできる。そもそもFRBの量的緩和の目的が長期金利の低下を促すものであったのであれば、その効果は果たしてあったのかどうか。それを確認してみたい。

 2012年12月12日のFOMCでは、年末に終了するツイストオペの代わりに毎月450億ドル規模の米国債購入を決定した。これまでのツイストオペでは、450億ドルの短期債を売って長期債を購入していたが、短期債を売却しない分、FRBのバランスシートは拡大する。MBS含めると月額850億ドルを買い入れることになる。また、国債の償還分の買入も行う。これが量的緩和第三弾のスタートとなる。

 2012年12月のFOMCで量的緩和が決定された日あたりでの米長期金利は1.7%近辺にあった。しかし、ここから長期金利は低下してはいない。むしろ上昇基調となり、2013年1月から2月にかけて2%近辺に上昇した。これは欧州の信用危機の後退が背景にあったと言える。

 2013年3月あたりから5月にかけての米長期金利は2%近辺から1.6%近辺に低下した。これはFRBの量的緩和がタイムラグを置いて効果を発してきたわけではない。2013年3月にはキプロスの財政不安による欧州の信用不安の再燃によるものであった。

 2013年5月あたりから今度は米長期金利が急速に上昇する。5月の1.6%近辺から9月には3%近くまで上昇した。これは5月のECBの追加緩和をきっかけに、欧州の信用不安が急速に後退したことや、5月22日にバーナンキFRB議長が証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘したことが要因とされる。

 ところが9月のFOMCでテーパリングの決定がなかったことから、米長期金利はいったん2.5%あたりまで低下する。その後、再びテーパリング開始との観測が強まり、FRBは2013年12月のFOMCで毎月の米国とMBSの購入額を850億ドルから750億ドルに減少させ、テーパリングを開始した。これを受けて米長期金利は再び2014年1月1日に3%近辺に上昇したが、ここがピークとなった。

 2014年1月には650億ドルに縮小。3月に550億ドルに、4月に450億ドル、6月17~18日に350億ドル、7月29~30日に250億ドル、9月16~17日に150億ドルとした。この間の米長期金利は総じて低下傾向となり、2.1%台にまで下げている。

 米国債もむろんFRBの金融政策だけで動くわけではないが、FRBは金融政策で米長期金利を低下させようとした。たしかに米長期金利は3%を超えて大きく上昇したわけではない。長期金利を抑え込むことには成功したかに見えるが、果たしてそうであろうか。

 テーパリングを開始しても長期金利は低下していた理由は何なのか。このあたりの関係を市場マインドなども併せて検証する必要があろう。これを把握してから、FRBのゼロ金利政策の解除に向けての市場の動向を読む必要も出てくるのではなかろうかと思う。

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by nihonkokusai | 2014-10-28 09:51 | 中央銀行 | Comments(0)

10月半ばからの日米欧の株高等の理由

 9月19日あたりを起点とした日米欧の金融市場でのリスクオフのような動きは、10月15日あたりをボトムとして再び回復基調となってきた。9月19日以降の日米欧の株式市場の下落、米国やドイツの長期金利の低下、外為市場での円売りの動きは、10月15日あたりから揃ってトレンドが変化していた。

 今回のこの動きの背景に何があったのか。取りたてて大きな材料が出ていたわけではない。たしかにエボラ出血熱の問題やイスラム国の問題等、懸念すべき材料はあった。また、欧州経済の悪化なども危惧されており、それが9月19日以降のリスクオフの動きの要因のひとつにはなっていたと思われる。しかし、これらの状況が改善されたわけではないにも関わらず、各市場が揃ってトレンドが変化したこと自体、背景には何かしらの材料があったというよりも、ポジション調整的な動きがあったと見た方が良さそうである。

 9月19日にかけてダウ平均などは過去最高値を更新するなど、米景気の好調さを背景に株は上昇し、米長期金利も上昇した。同様にドイツの兆金利も上昇基調となっていた。ただし、ドル円についてはもう少し長く続き、10月始めにかけて110円台に上昇しており、その影響もあり、東京株式市場は9月末にかけ上昇トレンドは継続していた。

 9月19日以降の欧米市場では、何らかのポジション調整の動きをきっかけに米国株式市場を中心に調整局面となった。10月半ばにかけて米株は大きく下落し、米国やドイツの国債は買われ、さらには英国債も同じタイミングで買われていた。イングランド銀行の利上げ観測が後退して英国債が買われたとの指摘もあったが、むしろ英国債は米国やドイツの国債の動きに連動していた側面が大きいと思われる。

 東京株式市場もやや遅れてこの流れに巻き込まれ、日経平均は9月末あたりから10月17日あたりまで下落基調となる。日本国債先物は10月15日のイブニングセッションで146円60銭まで買われ、過去最高値を更新した。

 そして、今度は10月15日あたりから日米欧の株式市場はV字回復となり、外為市場では再び円が下落し、米国、ドイツ、英国の長期金利は上昇してきた。日本国債も高値圏に止まるが、10月15日のイブニングの過去最高値はいまのところ更新していない。

 この欧米の株式市場や債券市場の動きからみると10月15日あたりで、株式市場での調整売りの動きはいったん終息したものとみられる。

 9月19日以降の大きな調整で、FRBのテーパリング終了は延期かとの観測も一時出ていた。しかし相場の回復もあり、予定通りに10月28日、29日のFOMCでテーパリングは終了すると思われる。

 欧州の景気動向なども懸念材料ではあるが、米国企業の決算もそれほど悪くはない。米景気の回復度合いがあらためて意識されると、再びリスクオンのような動きを強めてくることも予想される。ただし、ニューヨークの医師がエボラ熱検査で陽性反応といった気になる記事も出ているが、感染の広がり等がない限りこれで基調が変わることも考えづらい。

 ここにきて日本の債券先物は小さな三角持合いを形成している。三角持合いから大きく離れる前にはダマシも入ることが多い。このためいったん上に抜けたあとに、あらためて戻り売りに押されるような展開もありうるか。

 来週はFOMCだけでなく、31日には日銀の金融政策決定会合も開催される。日本のCPIや鉱工業の発表もあるが、欧米でも米GDP含めて注目の経済指標の発表もある。これらを確認しつつ、欧米の株式市場は戻りを試し、米独英の長期金利は上昇基調になるのではないかと予想される。

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by nihonkokusai | 2014-10-27 09:46 | 債券市場 | Comments(0)

デフレ脱却が怪しくなっての消費増税反対なのか

 麻生財務相はアベノミクスは「デフレ」脱却ではなく「デフレ不況」からの脱却を目指していると指摘している。「デフレ」と「デフレ不況」では大きく意味合いが異なる。そもそもアベノミクスとは何からの脱却を目指した政策であったのか。

 2012年11月の衆院解散後に安倍自民党総裁は、政権奪還後、政府と日銀はアコードを結び、インフレターゲットを設定する。目標達成までは無制限な対応を行い、もし政策目標達成できなければ、日銀には説明責任を求めるとした。基本的には2%、3%のインフレ目標を設定して、それに向かっては無制限に緩和していく(ことが必要)」と述べていた。

 この発言からみれば、当初のアベノミクスはデフレ脱却を目指していたことになる。日銀が2%以上の物価目標を設定し、それまで無制限な対応を行い、その目標を達成することが主眼であったはずである。ここにはGDPや失業率などに関する目標は置かれていない。その意味では「デフレ不況」からの脱却が目的であったとは言いがたい。しかしその後、第二の矢(財政政策)、第三の矢(成長戦略)を持ってきたが、効果の度合いなどみてもこれらは付け足しに過ぎないものといえる。

 安倍政権は公約通りに日銀に大胆な金融緩和を実施させた。厳密には日銀が政府の意向を意識して自ら決定した格好だが、2013年4月の異次元緩和はアベノミクスを具体化させたことになる。それで何が起きたのか。

 タイミング良く、物価や景気は確かに安倍政権発足後に回復してきた。まるで第一の矢が効いたように見えるが、金融緩和にそれほどの即効性があるわけでもなく、期待だけで物価どころか景気も浮揚できるのであれば、財政政策など必要なくなる。

 ただ、金融政策は98%がトークと語ったFRB前議長がいた。2012年11月以降の日本の景気の回復と物価の上昇には、このトークの力が働いたことも確かである。安倍自民党総裁のリフレ発言を受けて、ヘッジファンドが円売り日本株買いを大量に仕掛けた。その結果の円安と株高が市場のムードを一新させ、欧州危機の後退による金融危機への不安が解消され、世界経済が回復基調となっていたことで、日本経済も回復した。物価も回復基調が見込まれていたところに円安とエネルギー価格の上昇分が上乗せされた。こうして順調にアベノミクスが効いているように表面上は見えていたのである。

 ところが今年の4月の消費増税後あたりから様子がおかしくなってきた。欧州の景気の低迷や物価の下落、さらには中国の景気もブレーキが掛かってきた。FRBの利上げ観測もあり、ドル円は110円台に乗せるなど円安も進む。しかし、今度は円安による日本経済のマイナス効果も意識され始めた。そこにエネルギー価格の下落も加わり、物価の上昇圧力が弱まってきた。これにより日銀の物価目標達成も怪しくなってきた。

 さらには消費増税の影響で個人消費が伸び悩み、景気が予想以上に落ち込んだことで、日銀にリフレ政策を押し付けた人たちを中心に、今度は来年の消費増税反対との声が自民党内部からも出てきた。

 そもそも日銀が無制限な緩和を行っていれば物価目標が達成できて、それでデフレから脱却できるというのがアベノミクスを提言していた人たちの認識あったはずで、むしろ物価の上昇要因ともなる消費増税に反対するというのは理屈として理解できない。

 デフレ脱却とデフレ不況脱却は似て非なるものである。リフレ派の主張通りであるならば、デフレ脱却には消費増税の有無などは関係なく、日銀が大規模な緩和を続ければ済むはずである。

 ただし、デフレ不況脱却を目指すとなれば、意味合いが全く異なり、日銀だけではなく政府の財政政策等が大きく影響する。どうやらこのあたりがかなり曖昧となってしまっている。このため「デフレ脱却」ができなくなるのが消費増税による影響のように捉えられているが、それは関係のない話であろう。もし消費増税によって物価の上昇も抑えられてしまう、つまりデフレ脱却もできないというのであれば、物価のコントロールは日銀の金融政策だけではできないことを露見させてしまうことになるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-10-24 09:16 | アベノミクス | Comments(0)

国債の入札でマイナス金利が発生した理由

 10月23日の国庫短期証券(3か月物)の入札において、最低落札価格が100円00銭0厘0毛、平均落札価格は100円00銭1厘0毛となった。国庫短期証券は割引形式で発行されるため、額面価格の100円を上回るとマイナス金利となる。平均落札利回りはマイナス0.0037%となり、国債の入札として初めてのマイナス金利が発生した。

 国庫短期証券とは、昔は短期国債(TB)や政府短期証券(FB)と呼ばれたもので、現在はこの2つが統合されて国庫短期証券として発行されている。期間は2か月程度、3か月程度、6か月程度、1年程度に分かれている。国庫短期証券は割引形式で発行され、法人のみ購入ができ、個人は買うことはできない。

 すでに既発債の売買で国庫短期証券はマイナス金利で取引されていた。このため、国債の入札におけるマイナス金利も時間の問題とみられていた。たとえば7月10日の3か月物の国庫短期証券の入札前の取引において、すでにマイナス0.002%の出合いがあったのである。

 なぜマイナス金利が発生したのかといえば、日銀が量的・質的緩和、いわゆる異次元緩和によって国債を市場から大量に買い付けているためである。供給よりも需要が大きく、このため金利を払ってまで買う投資家が出てきたのである。

 それはおかしいだろう、金利を払うくらいなら、国債など買わずに現金で持っていれば良いではないかと思う人もいるかもしれない。確かに個人であれば、そうするかもしれない。しかし、個人でも大金を家の金庫に置くには、そもそも金庫が必要であるとともに、盗難の恐れもある。

 これは大きなお金を動かす銀行や生命保険会社、公的年金なども同じであり、しかも金額が数千億円とか数兆円となると現金を保管する場所もない。このため、機関投資家と呼ばれる銀行などはより現金に近い、売り買いのしやすい短期の国債に資金を置いておくのである。

 それでも金利を払ってまでして国債を買わなくても、日銀の当座預金に預ければ超過準備の部分には0.1%の金利を日銀は払ってくれる。日銀の口座に預ければ済むことではないかとの指摘もあろう。しかし、銀行などは担保としてある程度の量の国債を買っておかねばならないし、機関投資家も海外投資家などのように日銀の当座預金口座を持っていないところもあり、このようなニーズがあるため、マイナス金利でも国債を購入する投資家が存在するのである。

 ただし、マイナス金利といっても割引形式の債券なので満期日に100円で償還されるものを100円以上で買い付ける格好となる。投資家が利子を別に払うわけではない。

 この短い期間の国債のマイナス金利は個人の生活には直接影響を与えることもない。日銀の政策金利がマイナスとかにならない限りは、預貯金金利がマイナスとなることは考えられない。参考までに、ユーロ圏の中央銀行であるECBのマイナス金利は、政策金利というよりその下限となる部分がマイナスに掛かったものであり、こちらも政策金利そのものはマイナスではない。

 このため、我々の日常生活に直接影響は出ないものの、短い期間の金利が超がつくくらい低い状態となっており、これは預貯金金利も超がつくくらい低い状態にあることを示す。さらにこれは長めの金利にも少しずつ影響を与えることも考えられる。すでに10年債利回りは0.5%割れとなっており、国債で資金を運用しようにも利子が低い状態が当面続き、その分、住宅ローンなどの金利については低い状態にあるといえる。

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by nihonkokusai | 2014-10-23 16:34 | 国債 | Comments(0)

ECBが国債買入れに踏み切れない理由 --ドイツのハイパーインフレの亡霊--

 第一次世界大戦の敗戦により、ドイツは天文学的な賠償金を背負わされ、財政支出の切り札になったのが、国債を大量発行しドイツの中央銀行であるライヒスバンクに買い取らせるという手法であった。その結果、ドイツは1923年にかけてハイパーインフレに見舞われた。

 そのハイパーインフレはヒャルマル・シャハトが設立したドイツ・レンテン銀行によるレンテンマルクの発行などにより終息することになる。レンテンマルクとそれまでの通貨であるパピエルマルクの交換レートは「1対1兆」と決定された。大規模なデノミとともに政府が財政健全化を発表したことにより、いったんインフレは終息する。このインフレの収束はレンテンマルクの奇跡と呼ばれた。さらにシャハトの指導によるアウトバーンを初めとする大規模な公共事業などによって失業率は改善し、ドイツは1937年にほぼ完全雇用を達成したのである。

 レンテンマルクは法定通貨ではなく不換紙幣であり金との交換はできなかった。しかし1924年8月30日には、レンテンマルクに、新法定通貨であるライヒスマルクが追加された。レンテンマルクとライヒスマルクの交換比率は1:1となった。

 シャハトなどの支援もあり、1933年1月30日にはヒトラー内閣が成立。しかし、ヒトラーがシャハトを解任したあたりから再び状況が変わる。シャハトが帝国銀行の総裁を兼務していた際は国債の発行にも歯止めがかけられていたが、その歯止めがなくなった。ヒトラーは帝国銀行を国有化して大量の国債を引き受けさせ、戦争に向けて軍需産業への莫大な投資を行った。ただし、日本と同様に価格統制によりハイパーインフレそのものは発生しなかったが、戦後にハイパーインフレが発生することになる。敗戦によりヒトラー政権の発行したライヒスマルクは紙切れ同然となった。

 戦後設立されたブンデスバンクは、インフレに対して極度に神経質となり、その要因となった中央銀行による国債引受に対して警戒感というか嫌悪感を強めたのは、この歴史が背景にある。ブンデスバンクは政府からの独立も保障され、ECB発足以前は世界でも最も高い独立性を有する中央銀行の一つであると評価されていた。

 1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなった。つまり、ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。当然ながら欧州中央銀行(ECB)も国債の直接引受は禁じられている。

 2010年5月、ECBによる国債買入れが実施されたが、これはあくまでユーロの信用危機による国債市場の安定化そのものが目的となっており、例外的なものとなっていた。しかし、もしECBが今後追加緩和策、量的緩和として国債を買入れるとなれば、財政規律の重要性等が明記された「成長安定協定」に違反することになりかねない。

 特にドイツ出身の委員がECBの国債買入れに反対しているのはこの歴史のためである。ただし、ドイツ国内にあっても景気の低迷や物価下落もあり、ECBの国債買入れに関しては意見が分かれつつある。

 10月21日にはECBによる社債の買入れ観測が出たことで、これが欧米の株式市場の反発要因のひとつとされた。国債の買入れについてはハードルが高いことで、まずはカバードボンドと呼ばれる銀行などの金融機関が保有する債権を担保として発行する債券の買入れなどから始め、次のステップとして国債ではなく社債が出てきたのも上記の理由によるものと推測される。

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by nihonkokusai | 2014-10-23 08:17 | 国債 | Comments(2)

女性閣僚の辞任は「スケープゴート」なのか

 10日20日、小渕優子経済産業相は政治資金の不透明な記載問題浮上を受けて辞任を表明した。第二次安倍内閣で初の閣僚途中交代となる。松島みどり法相も資料配布問題を受けて辞任した。こちらは自身のイラストや名前が入ったうちわを選挙区内で配ったことが寄付行為にあたると国会で追及されたことを受け、安倍首相に辞表を提出した。

 小渕優子経済産業相は第二次安倍改造内閣の看板閣僚であり、首相が改造の目玉とした女性閣僚5人のうち2人が「政治とカネ」の問題で失脚する格好となった。高い支持率を維持し安定政権となっていた安倍政権には大きな痛手であろう。

 女性が閣僚になるということはどういうことなのか。幸田真音さんの新著「スケープゴート」では女性が閣僚となり、国会議員にもなって、官房長官から首相に登りつめる様子が描かれている。もちろん小説の上での話ではあるが、今回大臣を辞任した小渕優子氏は女性総理にもっとも近い人物とも言われていたことから、決してこの小説は絵空事ではない。

 大臣になるということはどういうことなのか。小説「スケープゴート」では皇居での就任式の様子などを含めて細かく描かれている。官僚との関係等を含めて、我々の知らない大臣の仕事の様子も垣間見れる。

 そして、この本のタイトルともなっている「スケープゴート」について、主人公は次のような発言をしていた。

 「現実的に言って、いまの日本で女性にそれなりの地位や権力を与えるとしたら、それはもしかしたら誰かのスケープゴート役ぐらいしかないのかもしれない」

 今回の2人の女性閣僚の辞任が誰かのスケープゴートになったのかはわからない。しかし、女性の進出を主張する安倍政権にとり、女性閣僚は当然必要であったろうが、それはある意味、政権としてのスケープゴートとなっていたのかもしれない。

 この「スケープゴート」には次のような興味深い記述もあった。選挙事務所のなかの様子の記述のなかで
「なかには円形の厚紙に親指用の穴をあけ、団扇として使える仕様のものもある」

 もちろん幸田さんが「スケープゴート」を書いていたのは、松島みどり法相の団扇問題が発生するかなり前のことではあるが、この団扇の記述はのちの問題化を示唆しているようにも思える。

 そして、小渕優子氏の父親である小渕恵三氏は、総理大臣のときに脳梗塞で倒れ亡くなった。幸田真音さんの代表作であり、久保井という人物も登場している小説「日本国債」のなかでもやはり首相が突然亡くなるシーンがあった。「日本国債」の出版は小渕首相の亡くなったあとではあるが、小説そのものは亡くなる前に書かれていた。幸田さんの小説は近い未来に起こることを示唆していることが良くあることでも知られている。

 今回の女性閣僚の辞任を受け、女性が大臣になるということはどういうことなのか、そのあたりに興味を持った方はぜひ「スケープゴート」を読んでいただきたいと思う。

アマゾン 「スケープゴート」

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by nihonkokusai | 2014-10-22 13:40 | 本の紹介 | Comments(0)

原油安で日銀の物価目標達成が困難に

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 ここにきて原油価格の下落が顕著になってきている。WTI原油先物は6月末あたりが目先のピークとなり、そこからじりじりと下落傾向となった。10月2日に1年5か月ぶりに1バレル90ドルを割り込んだあたりから下げ足を速め、17日には一時、1バレル80ドルを割り込んでいる。

 10月9日あたりからの欧米市場でのややパニック的なリスク回避の動きの背景には、ヘッジファンドなどによる大きなポジション調整との見方もあったが、そこにはこの原油先物価格の予想以上の下落も影響していた可能性がある。

 中東情勢はイスラム国の問題等もあり決して楽観視できる状況にはない。しかし、原油の供給については、特に問題視はされていない。米国でのシェールオイル生産拡大で対米輸出が減っていることなどもあり、原油は世界的に供給過剰となっている。一部では米国がサウジアラビアを抜いて世界最大の石油・ガス生産国に浮上したとの見方もあるそうである。サウジアラビアの8月の原油輸出が3年ぶりの低水準となったとも報じられている。欧州や中国などを中心とした世界経済の低迷もこの原油価格下落の背景にある。

 原油価格の下落は我々の生活にとっては好ましいことであり、ガソリン価格も少しずつ下落しつつある。円安とエネルギー価格の上昇が物価の上昇を促した。しかし、この円安とエネルギー価格の上昇は、消費増税も加わっての我々の生活にマイナスの影響を与えただけでなく、中小企業などにも負担増になったことは確かであろう。

 しかし、2013年4月あたりからのコアCPIの予想以上の上昇ペースの背景には、この円安効果と福島原発問題の影響が残るなかでのエネルギー価格の上昇による影響も大きかった。これにより消費増税の影響を除いたコアCPIは前年比%半ばあたりまで上昇し、2%の目標に向けて順調に上昇しているように見えた。

 人々の期待により物価がどのように押し上げられたのかは、期待を図る道具に確かなものがないためはっきりとはしない。しかし、欧州危機の後退により米国を中心に景気も回復し、日本経済も回復基調となった。その過程で企業がこれまで渋っていた価格転嫁を行いやすくなったことは確かである。しかし、これを日銀が国債を大量に買い込むことで発生させたとするにはその波及経路ははっきりしていない。

 原油価格は今年の7月あたりから急速に下落基調となっており、これは物価には抑制要因となる。さらに円安についても10月始めにかけてドル円は110円台をつけるなどしていたが、円安による中小企業などへのマイナスの影響も危惧されるようになり、欧米市場のリスク回避の動きも加わり、ドル円は一時105円台まで反落した。

 エネルギー価格の下落と円安調整により、日銀が予想していた秋以降の物価の再上昇傾向は困難となる可能性が出てきた。すでにコアCPIは消費増税の影響を除くと前年比プラス1.1%と1%近くまで低下している。

 10月4日の講演で黒田日銀総裁はコアCPIについて、しばらく1%台で推移した後、2%に向けて上昇するとの見通しを示し、1%を割り込むのではないかとの市場の見方を一蹴した。しかし、日銀の予想通りに再上昇をするのかどうかは、原油価格の動きをみると難しくなるのではなかろうか。日本の景気そのものも予想以上に低迷しているだけに、物価を押し上げる要因も見出しにくい。日銀は物価目標の達成時期は明確にしていないが、世界的な物価下落もあり、その目標達成はかなり難しい状況になってきているように思われる。

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by nihonkokusai | 2014-10-22 08:03 | 日銀 | Comments(0)
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