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円安に賭ける政府と日銀

 ドル円のチャートをみると2012年11月のアベノミクスの登場をきっかけとした円安の流れが再び加速してきている。この勢いが続けば、チャート上は110円どころか、120円あたりまでの上昇もありうる。

 ドル円は2012年11月のアベノミクス登場により、80円割れから上昇し、2013年5月に102円台をつけていったんピークアウトした。その後、三角持合いのような格好となったが、2013年の年末にかけて上にブレークし、2014年の年初に105円台をつけ、ここでピークアウトする。その後、101円台から102円台あたりでの膠着相場が続くが、9月に入り再び膠着相場を離れて上に抜けてきた。月足チャートでみると、1998年8月の147円台をピークとした下降トレンドが終了し、あらためて上昇トレンドを形成するかといった動きとなっている。

 為替もいろいろな材料で動くが、チャートを意識したテクニカル的な要因で動くことも多い。チャートがトレンドの変化を示すとき、地合いそのものが変化してきていることがある。まさに今がそのようなときのように思えるが、そこを政府・日銀はうまく突いてきた格好となった。

 今回の円安のひとつのきっかけが、黒田日銀総裁の円安容認ともとれる発言であった。9月4日の記者会見において、黒田総裁は、円相場への質問に対して、為替レートの先行きなどについて特別なことを申し上げるつもりはありませんがと前置きしながら、「ファンダメンタルズの反映として、ドルが強くなっていくことは、何ら不思議でないと思いますし・・・為替レートがドル高・円安になっていくとしても、日本経済にとって特にマイナスということはないと思っています」と答えていた。

 日銀の追加緩和観測が強まったわけではないが、FRBのテーパリングの終了を10月に控え、日銀とFRBの方向性の違いも意識された円売りドル買いも入りやすい。そのようなタイミングで元財務官であり、為替に関してのスペシャリストであった黒田総裁が円売りを後押しさせるような発言を行った。

 さらに今回、日銀参与に任命された河合正弘東大特任教授が、「円安は日銀の物価目標達成に対してポジティブ。FRBの利上げでドル円が110円になることは自然」と具体的水準まで踏み込んだ発言をしていた。河合氏の経歴としては、東京大学名誉教授、元アジア開発銀行研究所(ADBI)所長等々あるが、2001年7月からは財務省の副財務官であった。当時の財務官は黒田東彦、現日銀総裁である。

 河合日銀参与の発言内容からも、円安が日銀の物価目標の達成にも効果的であるとみていることは確かである。これに対して岩田日銀副総裁は9月10日の講演で「円安が物価上昇をもたらすという関係は、必ずしも成立していない」と発言していた。これは黒田総裁の円安容認ともとれる発言に対してバランスを取ったとの見方もできなくはないが、意志の疎通をしていたというよりも、こちらは岩田副総裁の個人的な主張に過ぎない可能性がある。岩田氏の発言はひとまず置いておいたほうが良いかと思われる。

 9月11日には安倍首相と黒田日銀総裁が約5か月ぶりの会談を行った。ここで実際にどのようなやり取りが行われたのかは定かではないが、安倍政権としても消費増税後の景気の落ち込みもあり、再びアベノミクス、つまりは円安と株高の演出は望んでいることは確かといえる。ここで政府と日銀の為替に対する認識で共通したものができていたとしても何らおかしくはない。外為市場では密約説が出たそうだが、仮に密約がなくても、阿吽の呼吸でその方向性が示された可能性はある。

 日本が仮に円安策を再び取ったとして、これまで日本の円安策に釘を刺してきた米国サイドも今回は動きづらい。FRBが出口政策に向けて動いているためであり、そのための円安ドル高はある程度は容認せざるを得ない。昔、日本の円安政策に釘を指した張本人のひとりとされるブレイナード元財務官がFRBの理事になっているが、日本に対する非難はしにくいであろう。さらに今回の政府と日銀は、為替介入ではなくあくまで口先介入に止まっている。

 ドル円が今後、どのような動きとなるか。チャートが示すようにドル円は110円を超えて、さらに加速してくるのか。今回は確かに黒田総裁などからの口先介入がひとつの起爆剤となった。安倍首相との会談当日には黒田総裁はテレビにも生出演している。ここにきて講演等の回数も多い。

 もしかすると相場を動かせると黒田総裁は自負しているのかもしれない。しかし、もし相場を自ら動かせると考えてしまうと、いずれ壮大なしっぺ返しを食らうこともありうる。それは過去の債券市場でも何度か起きたことである。このあたりも注意すべきことではある。

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by nihonkokusai | 2014-09-17 09:28 | 日銀 | Comments(0)

動き出した国債相場、円安は売り要因なのか

 長期国債先物、通称「債券先物」の中心限月が代わると、相場が変化するということが、以前にはあった。以前にはというのは、ここにきては小動きながらもジリ高傾向が続いていたことで、中心限月が代わっても相場にはあまり変化がみられなかったためである。

 ところが9月9日に実質的に債券先物の中心限月が9月限から12月限に代わったあと、相場が明らかに変化してきた。実質的な、と断ったのは長期国債先物の中心限月の移行とは、同一約定日の前後場とイブニング・セッションの出来高全体が期近より期先、今回で言えば9月より12月が多くなった日の翌日に交代したことになる。ただし、市場慣行でその時の出来高が逆転したタイミングで、先物の中心限月は交代したと認識されている。過去、いったん出来高が逆転したあと再逆転したことは、なかった。

 今回の債券先物の中心限月の移行でどのように相場が変わったのか。債券相場は久しぶりに調整局面を迎え、値動き、この場合、前日比や当日日中値幅などを指すが、それが大きくなってきたのである。これまでがあまりに動かなかったのが、やっと普通に動くようになってきたといえる。

 そのきっかけになったのが、円安と株高の動きである。8月半ばあたりからドル円は上昇基調となっていたが、ここにきて106円台、107円台と進み、約6年ぶりの水準をつけてきた。円安とともに日本株買いも仕掛けられ、日経平均は16000円近辺に上昇してきた。

 今回の円安株高の背景にはいくつかの要因が重なっている。ひとつが4日の会見で日銀の黒田総裁が円安容認ともとれる発言をしたこと。さらにFRBの利上げが予想より早まりそうとの観測も出てきたこと。FRBと日銀の金融政策の方向性の違いもあらためて意識されてきた。また、GPIFのポートフォリオの変更による海外金融資産への投資増による円安なども意識された何よりもチャートが上にフレークした格好となり、とりあえずテクニカル上、ドル円は110円あたりまでの上昇の可能性が強まったためである。

 円安はすでに必ずしも日本経済にはプラス要因ではなくなりつつある。日本の産業構造が変化し、空洞化現象などから円安による成長への寄与度は後退している。輸入コスト上昇による悪影響もある。エネルギー価格の動向にもよるが、原発問題も尾を引いている。

 とはいえ、いまだ海外のヘッジファンドなどは、円安とともに日本株買いをセットとしているようで、そこに債券売りもミックスされている。その動きが債券先物中心限月が12月限に代わったあたりで顕著とあった。債券は海外投資家のシェアの大きい先物主体の動きとなっており、現物債ではベンチマークの10年債とともにスワップを絡めて20年債も売り圧力を強めており、海外投資家の仕掛け的な動きの可能性がある。

 それではこの円安・株高・債券安はどの程度続き、債券はどのあたりまで売られるのか。ドル円はチャート上からの110円程度までの円安があるとすれば、日経平均も1月の高値を抜いて17000円が視野に入る。GPIFや共済のポートフォリオの変更が正式にアナウンスされると、地合いが良いときには好材料と受け止め、株買いを加速させてくる可能性がある。反対にGPIFのシェア低下が意識されて国債にはあらためて売り要因とされる可能性もある。

 ただし、日銀の大量買入れが続く限りは国債需給はびくともしないとの見方から、これまであまりGPIFについて材料視してこなかった債券市場ではあるが、ここに円安も関わってくるとなれば、やや見方が変化する可能性もある。日銀の岩田副総裁は円安により中長期の物価への影響はないとしているが、少なくとも短期的には影響するとしている。アベノミクスはほぼ円安と株高と少しの財政政策だけで説明が出来てしまうが、とにかくこのまま円安が進むと、2.0%の物価目標達成の可能性も次第に意識される。

 来年にかけて、何事もなければイングランド銀行とFRBはゼロ金利政策を解除してくると予想されるが、もし日銀の物価目標が達成圏内に入ってきた際に円債はどう動くか。日本のテーパリングはまだまだ先との見方は強いが、それでも市場は先を読む。株の地合いが良いのに対し、債券の地合いが悪化しているとき、たとえば米債が下落基調となれば、円債の下落懸念が高まることもありうる。それでも10年債はせいぜい0.6%台か悪くて0.7%台。そこまで行く前に投資家の押し目買いも待っているとの期待も当然あろう。日本の債券が売りづらい環境にあるのは確かである。しかし、ここにきての欧米を含めて債券相場の調整が意識されると地合いそのものも変わる可能性がある。このあたりの懸念を含めて、今回の円債の動きを注意深く見ておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2014-09-16 09:30 | 債券市場 | Comments(0)

ECBの量的緩和は実現可能か

 ECBのメルシュ専務理事は9月10日に、ECBが4日に決定した主要政策金利の引き下げと資産担保証券(ABS)およびカバードボンドの購入策に関し、「これは広範な量的緩和策に相当するものではなく、それにつながるものでもない」 と語ったそうである(WSJ)。ちなみにメルシュ氏は元ルクセンブルク中銀総裁である。

 メルシュ専務理事は6月の講演において、ECBは「シンプルで透明性の高い」資産担保証券(ABS)を買い入れる可能性があるとの見方を示していた。ただし、国債の買入れについては、昨年12月の講演で「ユーロ圏加盟国のどの国債を買うかを決め、実際に買い入れることは、ECBにとって、経済・法律・政治上、極めて大きな難題になる」と述べたようにかなりハードルが高いとの認識のようである。

 これに対して、ECBのコンスタンシオ副総裁は、ECBは巨額の国債を買い入れる量的緩和(QE)の実施を余儀なくされる状況を望んでいないが、その可能性は排除できないとの考えを示した(独紙が報じたとロイター)。コンスタンシオ氏は元ポルトガル中銀総裁である。

 コンスタンシオ副総裁は、9月4日のECBの追加緩和に関して、長期インフレ期待が固定できなくなるリスクは大幅に高まっており、ECBとして何の手も打たないわけにはいかなかったと指摘した。ECB理事会ではQEが議論されたものの、決定には至らなかったとしている。

 ECBの定例理事会の議決権を持つメンバーは、ECBの役員6名(総裁、副総裁、理事4名)と域内の中央銀行総裁で構成されている。このうちECBの役員は、イタリア出身のドラギ総裁(前職はイタリア銀行総裁)、ポルトガル出身のコンスタンシオ副総裁(同ポルトガル銀行総裁)、専務理事としてベルギー出身のプラート氏(元IMFのエコノミスト)、ドイツ出身のラウテンシュレーガー氏(元ドイツ連銀副総裁)、フランス出身のクーレ氏(同財務省のチーフエコノミスト)、ルクセンブルク出身のメルシュ(元ルクセンブルク中銀総裁)。

 9月4日のECBの追加緩和については、全員一致での決定ではなかったことが明らかにされた、反対者はドイツ連銀のバイトマン総裁であった。バイトマン総裁は、既に準備態勢が整った緩和策の効果を見極めるため、今しばらく待ちたいとの理由から反対したとされる(WSJ)。

 これに対して、ドイツ出身のラウテンシュレーガー専務理事は、超低インフレのリスクを回避するためには必要だったとの見解を示していた。どうやら今回は賛成票を入れたとみられ、ドイツ出身者の票が割れた格好となった。

 9月4日のECBの追加緩和は、市場では現状維持との予想が多かったことで、サプライズとされた。しかし、ABSの買入れの可能性を含めて、ECB関係者のこれまでのコメントからも予兆はあった。利下げだげてはインパクトは低いとの見方もできることで、ABSの買入れとの組み合わせとのパターンも、読もうと思えば読めたかもしれない。しかし、このタイミングで決定してくるのか、というのが市場参加者の正直な見方であったと思う。特に新LTROが9月に実施されることで、この効果を見極めたのち、追加緩和に踏み切るとの見方も多かった。それでも9月4日にQEではないが、追加緩和を実施したのは、予想以上に物価の上昇圧力が弱まっていることと、外為市場でのユーロの下落ピッチが弱いとの判断からであったろう。

 個人的にはECBのQEの実現の可能性はかなり薄いとみているが、この一連の動きを整理すると、いずれ量的緩和に踏み切らざるを得なくなる可能性は否定できない。もちろん国債買入れとなれば、経済・法律・政治上の問題もクリアーさせる必要がある。ドイツは来年の新規国債の発行はゼロとなるそうだが、どこの国の国債をどういう比率で買い入れるかも問題となる。ちなみにドイツは財政赤字をカバーするための新規国債の発行額はゼロでも、残存額がゼロになるわけではないため、借換債などの発行は続けられる。

 さらにマイナス金利と量的緩和は、中央銀行に資金を寝かせないようにするマイナス金利と、資金を寝かせようとさせるという量的緩和という相反する政策であり、このあたりの問題をどう解決するのかという技術上の問題もある。

 ただし、ECBにとって、FRBのQEとともに、日銀というかアベノミクスの成功例をかなり参考にしている可能性がある。特にユーロ安に言及しているあたり、アベノミクスのリフレ政策宣言をきっかけとした急激な円高調整と、この円安の影響を受けての物価上昇は良い事例とみているのではなかろうか。円安による物価への影響について、岩田日銀副総裁は関連性を否定しているようではあるが。

 いずれにしても、このままユーロ圏の物価や景気が低迷するとなれば、あらたな追加手段がECBに求められ、その行動も起こすときは素早いものとなろう。ドラギマジックと称される所以である。あらたなマジックはいつどのタイミングで出てくるか。そのマジックの選択肢に国債買入れ、量的緩和が含まれてきる可能性がある。今後のECBの理事などの発言は一つ一つチェックしておいたほうが良さそうである。

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by nihonkokusai | 2014-09-15 09:51 | 中央銀行 | Comments(0)

スコットランド独立問題とBOEの正常化

 今月18日に英北部スコットランドで独立の是非を問う住民投票が実施される。9日に発表された世論調査では、独立反対派が39%、賛成派が38%と拮抗していた。このため、可能性はさすがに低いとみられていたスコットランドの独立が現実味を帯び、英国の通貨であるポンドが急落した。ところが、10日の世論調査では、今度は反対派のリードが示されたことでポンドの急落はいったん止まったものの、状況はかなり緊迫している。キャメロン首相含め、各党の党首も急きょスコットランド入りし、独立回避に向けて懸命の努力を続けているようである。

 スコットランドの独立問題は、やはり独立の気運が高まっているスペインのカタルーニャ州にも影響を与えた。カタルーニャ州は11月にも独立の是非を問う住民投票を実施する予定だが、中央政府はこれを認めていない。この動きに反応し、ここにきてスペインの国債は下落が続いている。また、11日にはカタルーニャ州の首都バルセロナで大規模なデモが行われ、180万の市民が参加した。スペインからの独立を目指す大規模なデモで独立の是非を問う住民投票の実施を求めていた。

 スコットランドが本当に独立となってしまうと、英国は国内総生産の8%、国土の3割強を失うこととなり、英国経済には大打撃になりうる。さらに国連安保理の常任理事国の地位も危うくなるとの見方もある(11日付け日経新聞朝刊)。

 スコットランド独立となれば、当然ながらイングランド銀行の金融政策についても利上げどころではなくなる可能性がある。金融政策ところか英国の通貨制度そのものに対しても先行きが非常に不透明になりかねない。

 ちなみに独立賛成派のスコットランド国民党(SNP)のサモンド党首の青写真によると、独立スコットランドはイングランド銀行を残りの英国と共通の中央銀行に、そしてポンドを共通通貨にするというものだそうである(ロイター)。

 さすがに独立という選択肢は取りづらいと思われるが、こればかりは投票結果次第であり、絶対に独立などありえないとは断定はできない。それでも可能性としては高いと思われる独立を回避した場合のイングランド銀行の動向も考えておく必要がある。

 イングランド銀行のカーニー総裁は9日、先月公表されたインフレ報告において、利上げを市場の予想通り2015年の春に開始した場合は、インフレ率が3年以内に中銀の目標とする2%近くに落ち着くとの見通しが示されたことに言及した。「経済が正常化する条件の多くは既に満たされており、金利が正常化を始める時期は近づいている」とも語った(9日付け朝日新聞)。

 スコットランドの独立を含めて、予想外の事態が発生するようなことがなければ、イングランド銀行は出口政策に向けて舵を取りつつある。さすがに年内利上げの可能性は後退しつつあるが、来年にはFRBとともに利上げの時期を探る動きが予想される。

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by nihonkokusai | 2014-09-12 09:38 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀の疑似緩和とFRBの出口への地均しで円安加速

 ここにきて円安の動きが強まり、特にドル円は106円台の後半をつけてきた。チャート上からは110円を目指して上昇するとの見方も出てきている。この背景のひとつに、日銀とFRBの金融政策の方向性の違いがあり、それをさらに意識させるようなことが起きていた。

 日銀は2013年4月に量的・質的緩和を決定した。バズーカ砲とも例えられたように大規模な国債買入れを打ち出し、デフレ脱却を図った。ただし、バズーカ砲は何度も使えず、日銀も戦力の随時投入はしないと言っている。現実に異次元緩和以降、日銀は金融政策の変更は行っていない。行わずに済んだという説明も可能かもしれない。白川日銀から黒田日銀に代わってのスタンスの違いもあり、金融政策の微調整は行いづらいことも確かである。ところがここにきて日銀は、金融政策の変更は伴わないものの、結果としてそれと同様の効果が出るような動きを見せている。

 そのひとつが、黒田総裁による円安容認発言であった。9月4日の記者会見において、黒田総裁は、円相場への質問に対して、為替レートの先行きなどについて特別なことを申し上げるつもりはありませんがと前置きしながら、「ファンダメンタルズの反映として、ドルが強くなっていくことは、何ら不思議でないと思いますし・・・為替レートがドル高・円安になっていくとしても、日本経済にとって特にマイナスということはないと思っています」と答えていた。

 湾曲的な表現ではあるが、円安ドル高となっても問題はないという説明でもあり、これは円安容認発言ともとらえられた。そもそも日銀の異次元緩和のシナリオライターは安倍政権であり、それは2012年11月のアベノミクス誕生が発端である。そのアベノミクスで動かしたのが、為替市場であり、急激な円高調整とこの円安も背景とした株高が演出された。円安により物価がさらに押し上げられる格好となった。

 これについては異なる見方もある。9月10日の講演で岩田副総裁は、「円安が物価上昇をもたらすという関係は、必ずしも成立していない」、「現在の物価の上昇が、単に円安化によってもたらされたものではなく、「量的・質的金融緩和」に、それ以前の金融緩和政策にはなかった物価を押し上げる力があるためであるということを示唆しています」と指摘していた。どうやら何か見えない力、ジュダイのフォースのようなものが働いていたらしいが、黒田総裁と岩田副総裁の円安による影響についての見方は微妙に違っているようにも思える。

 それはさておき、いまのところは日銀のシナリオ通りということになろうか。しかし、ここにきて日銀の描くシナリオに少し狂いが生じてきた。4~6月期の景気の落ち込みが予想以上に大きくなり、7~9月期の回復が思ったほどではないとの見方である。そうなると秋以降の物価の上昇シナリオも修正を迫られる可能性が出てくる。

 ここでの追加緩和はしたくない。まだ戦力は温存し、打つならばバズーカ砲でなければならない。そこで金融緩和をせずとも同様の効果が出る手に打って出てきたとの見方もできる。そのひとつが黒田総裁の円安容認発言であり、さらに9日の国庫短期証券の日銀の買入れ時のマイナス金利の発生であったのかもしれない。ただし、マイナス金利に関しては意図的に発生させたというより、市場の需給の状況を見て、やむを得ずマイナス金利も受け入れた格好であったと思われる。しかし、結果としてはマイナス金利を容認とも市場参加者の目には映る。

 ECBのマイナス金利と今回の日銀の買入れでのマイナス金利の発生は別物ではあるが、マイナス金利そのものによる市場へのインパクトは追加緩和によるものと似たものとなる。追加緩和で円安にせずとも、タイミング次第では口先介入でも円安にさせることは確かに可能である。このあたり、黒田総裁は元財務官であったことを考えれば、そのタイミングと効果を意識した可能性もある。今日11日の首相と黒田日銀総裁の会談の内容、夜には黒田総裁がWBSに生出演するそうで、その際の発言内容も注意する必要がある。

 円安ドル高にはもう一方のFRBの動向も当然ながら材料視される。こちらも憶測ではあるが、イエレン議長がそれとなく手を打ってきた可能性がある。サンフランシスコ連銀がまとめた調査リポートによると、投資家が金利上昇を過小評価している可能性があるとの指摘があった。連銀には多くの調査員もおり、いろいろな見方もあろう。なぜこのレポートが注目されたかといえば、イエレン議長がもともとサンフランシスコ連銀の総裁であったためである。つまり議長のお膝元から利上げに備えろとの論文が発表されていた。むろん、この論文に議長はノータッチだったかもしれない。しかし、利上げ時期については言質を与えず、ハト派とタカ派のバランスを取るような議長のスタンスではあるが、この論文が意外にFRBのスタンスを表している可能性を市場では意識した可能性がある。つまり出口に向けて地均しを始めていると。

 日銀の結果としての疑似緩和とFRBの地均しについては、あくまで市場の思惑に過ぎないかもしれない。しかし、そこには日銀とFRBの姿勢が示されているとの見方を完全に否定できるものでもない。日銀のスタンスはまだ緩和政策を続けることであり、FRBは出口を意識した政策に転じている。このあたりの動向をあらためて感じた結果、円安ドル高の流れが強まったとも言えるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-09-11 09:43 | 日銀 | Comments(0)

日銀の物価目標はCPIの総合指数と再確認しました

 8月7日、8日の日銀金融政策決定会合の議事要旨が9月9日に公表された。このなかで次のような表記があった。

 「委員は、金融政策運営に関して月々の消費者物価(除く生鮮食品)の数字に注目が集まる傾向があるが、物価の基調を的確に把握することが重要であるとの認識を示した。この点に関連して委員は、「物価安定の目標」は、消費者物価の総合指数で定義している、物価の予測に当たっては、一時的な変動要因の影響を除いた基調的な動きを捉える必要があるため、展望レポートにおける物価見通しは、基調的な物価の動きを比較的よく表している「除く生鮮食品」指数を用いている、ということを確認した」

 日銀の物価目標を決定したのは2013年1月22日、白川総裁の時であった。この時の公表文には「日本銀行は、物価安定の目標を中心的な物価指標である消費者物価の前年比上昇率で2%とすることとした」とある。このときは2012年2月に導入した「中長期的な物価安定の目途」を点検し、その結果、「物価安定の目標」を新たに導入するとした。となれば、「物価安定の目途」の物価とは何かということになる。

 2012年2月の物価安定の目途の物価指数としては、「国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを対象とした指標が基本となり、中でも、統計の速報性の点などからみて、消費者物価指数が重要である」としている。確かに消費者物価とあるが、消費者物価(除く生鮮食品)とはしていない。

 これに対して経済・物価情勢の展望(展望レポート)での日銀の政策委員による物価の予想は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比となっている。黒田日銀総裁の会見などでも「物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半で推移しています。」(9月5日の記者会見)といったように、物価のベースは消費者物価(除く生鮮食品)を念頭に置いてコメントしている。このため、日銀の物価目標は消費者物価(除く生鮮食品)ではないかと勘違いされている可能性があり、日銀は改めてここで念を押してきたものと思われる。

 私も物価安定の目途の物価が総合指数であったとの認識は持っていたものの、2013年4月の量的・質的緩和における物価目標は消費者物価(除く生鮮食品)、いわゆるコア指数との認識を持ってしまっていた。このときの物価目標が総合からコアに変化したわけではない。そのあたりを今回の議事要旨で再確認したものと思われる。ちなみに今年7月の消費者物価指数の総合は前年比プラス3.4%、コアは同プラス3.3%である。ここには消費増税による影響が2.0%程度あると日銀は試算しているが、総合とコアの違いはわずかであることも確かである。

 今後も物価の話をする際はコア指数、目標のことを話す際には総合としっかり区分けする必要がある。その消費者物価指数の秋以降の動きが注目されているが、ここにきて円安ドル高の動きが気になる。異次元緩和というより、アベノミクス後の市場参加者の予想を超える物価上昇の要因の多くは、円安によるものとみられている。今回、106円台に乗せてきた円安の動きは、さらに加速するとの見方がある。どの程度まで円安が進むかは予想は難しいが、円安次第では日銀のシナリオ通りに、消費者物価指数の総合ベースで前年比2.0%(消費増税の影響除く)の可能性もありうるか。だからこそ、日銀の黒田総裁は円安容認のような発言をしたのであろうか。

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安倍政権に死角はないのか

 第二次安倍改造内閣が3日に発足した。谷垣氏を幹事長に就任させ、幹事長職から外した石破氏を入閣させた。党内に影響力のある谷垣氏と石破氏を取り込むことで、来年の自民党総裁選でも安倍総裁の続投の可能性が高まった。野党の弱体化もあるが、自民党の強さが際立ち、アベノミクスや外交、さらにはオリンピック招致なども加わり、勢いに乗っている安倍政権の基盤はさらに強まったかのように見える。ここに死角はないのであろうか。

 外交や集団的自衛権の問題等もあるが、ここではアベノミクスとも呼ばれるものに焦点を当ててみたい。今後のアベノミクスの行方を占う上で注目すべきポイントが2つある。消費増税の行方と日銀の金融政策である。

 来年10月に予定されている消費税率10%引き上げをどうするのか。安倍首相は11月に公表される7~9月期の実質GDPの速報値を判断の材料にすることを示している。1~3月期の反動よる。4~6月期の落ち込みは予想以上に大きく、その余波が7~9月期にも影響を与えるとの見方がある。回復はするものの、回復度合いは鈍いとの見方である。むろんマイナス成長とかになれば、増税見送りの可能性は強まるが、どの程度の鈍さならば、消費増税を見送るのか、そのあたりははっきりしていない。

 麻生財務相は財政再建にはあと2%増税というものをやらなければならないと述べてはいるが、来年の統一地方選挙も控え、増税そのものを先送りさせる可能性は意外に高いのかもしれない。興味深いことに、財政の動向に気を配っているはずの債券市場の関係者も、10%の消費増税は難しいのではと見ている向きも意外と多いようである。つまりこれはもし10%への増税が見送られても、債券市場ではある程度織り込み済みという認識となる可能性を示している。

 安倍政権としても選挙を見据えれば、消費増税は先送りさせ、むしろ減税策を含めて経済対策に打って出たいところであろう。足元の景気回復が鈍いとなれば、麻生財務相も景気回復を優先させてくる可能性がある。ここで少し困るのが日銀となる。

 日銀の黒田総裁は黒田東彦総裁は今年4月の消費増税と同様、来年の10%への消費増税についても予定通り実施することを政府に求める意向とされている。増税で景気が落ち込んだ場合は日銀には対応の余地があるものの、 増税先送りで財政再建に対する信認が揺らいだ場合はやれることはほとんどない、という姿勢を取っている。

 増税見送りで果たして長期金利は急騰するのか。この点については債券市場関係者の間でも、すでに見送りの可能性も意識されている。実際に増税延期で長期金利が急上昇するのであれば、その兆候はすでに見えていてもおかしくはない。その兆候が見られないということは、消費増税見送りによる債券市場への影響は限られるとみて、おかしくないのかもしれない。黒田総裁が気にしすぎということになろうか。

 ただし、国債や円の信用が何かしらのきっかけで失墜するというリスクは常にある。そのきっかけに消費増税見送りがならないとは言い切れない。あくまで可能性は薄いということになる。日銀がさらなる追加緩和を実施してきたときも、そのきっかけになる可能性はある。

 日銀のシナリオ通り、物価は目標に向かって上昇し、賃金の上昇もあり、さらに消費増税も予定通りに実施されるとなれば、問題は起きないかもしれない。しかし、そのシナリオが崩れた際に何が起き、政府や日銀は何をしてくるのか。現在の国債市場はかなり強固となっている。しかし、いったんマインドが変わりだすと相場が急変することも十分ありあることも、認識しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2014-09-09 13:12 | アベノミクス | Comments(0)

見えない見せ玉で国債先物を相場操縦

 9月6日付けの日経新聞によると、証券取引等監視委員会は5日に、コンピューターを通じた自動売買システムを使って長期国債先物を相場操縦したとして、海外の個人投資家に課徴金納付命令を出すよう金融庁に正式に勧告したそうである。

 この売買は2013年6月26日の午前9時33分に実施された。この日の債券先物は前日の米債安から前日比17銭安の142円07銭と売りが先行して寄り付いた。その後は小動きとなり、方向感に乏しい動きとなっていた。

 いわゆる「見せ玉」とか「仕掛け」が入ったような相場ではなかった。しかも、9時33分ということは日銀の国債買入れのオファーも関係ない時間帯であり、むしろ閑散で動きもなさそうな時間帯に0.3秒間だけの見せ玉が入ったようである。

 当然、人の目では確認できず、大きな値動きがあったわけでもないため、市場参加者の多くはこの見せ玉に気が付かなかったと思われる。ただし、この相場操縦の目的は人の目を晦ますのではなく、騙したのはアルゴと呼ばれる別の投資家の自動売買システムであった。その騙されたアルゴがどのようなものなのかは推測するほかないが、成り行きに近い注文ではなく、指値に反応するシステムであったようで、実際にシステム売買が稼働した。これで見せ玉を入れた投資家は1銭抜いて約3万円の利益を得ていたようである。これを1日に13回繰り返して約33万円を稼いだとされた。この相場操縦をした投資家はシンガポール在住の中国人の個人投資家だそうである。業者ではないので委託注文となり、このため手数料も発生しているはずで、実際の儲け額はその分少なくなる。

 この相場操縦をした投資家は20代で投資運用会社の役員だとか。自ら自動売買のプログラムを相場操縦に使えるよう書き換えたとされるが、そもそも取引所のシステムに繋がる業者のシステムに、どのような格好でこの個人投資家のシステムが繋がっているのかも気になるところ。投資運用会社の役員というあたり、会社のシステムを個人でも使っていた可能性もある。

 今回の相場操縦を最初に見つけたのは日本取引所自主規制法人だったそうであるが、日本取引所と監視委が協力して相場操縦を認定したのは今回1日のみだったとか。商いが薄かった日本国債先物であったからこそ、これが発覚したとも言えるのかもしれない。ただし、本当にこの日1日だけであったのであろうか。

 債券先物と呼ばれる大阪取引所に上場している長期国債先物は、株の先物などに比べて、アルゴと呼ばれるシステム売買は比較的少ないとされている。しかし、それでもこのようなことが起きていた。

 今回のシステム売買はHFTと呼ばれるフラッシュ・ボーイズで指摘されたものであろう。コンピュータ・システムを使って価格や注文情報を「いち早く」取引に生かし、マイクロ秒単位のようなわずかな時間差を利用して人間が行っている売買の隙を捉えて、細かく稼ぎ、それが積み上がって利益を得るというものである。

 過去の相場操縦とか見せ玉と呼ばれるものは、一時的に相場を大きく動かして値ざや稼ぎをしようとするものであった。しかしHFTは0.3秒間の見せ玉で、最低単位の1銭だけ動かして細かな利益稼ぎをしようとしている。これは相場が膠着状態のほうがむしろ仕掛けやすいのかもしれない。さらに通常の投資家はこのような見せ玉と相場操縦があったことすらわからない。

 金融市場がシステム化し、そのコンピュータの売買システムの隙をついたような手法で稼いでいる投資家がいるとすれば、その分、割りを食っている投資家もいるはずである。システム売買同士であれば、問題はそれほど大きなものではないかもしれないが、このようなシステム売買が入れば入るほど、相場のかく乱要因にもなりかねない。動かない相場であればよいが、予想外に大きな動きをするとそれが加速される可能性もある。

 そもそも人の目に入らず、機械同士での売買が頻繁に行われる相場が、相場と言えるのであろうか。場の相手は機械ではなく人間でなければ相場とは言えない。たとえそのプログラムを書いたのが人間であろうと、そこに勘や経験や恐れや喜びはない。そろそろ相場を機械中心から、もっと人の手に戻させることも考えたほうが良いのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-09-09 09:47 | 債券市場 | Comments(0)

ECBの利下げと資産買入れとその伏線

 9月4日のECB政策理事会では現状維持との大方の市場参加者の予想に反して、利下げとともに、10月からの資産買入れを決定した。サプライズとされているものの、今回のECBの追加緩和には兆候があったことも確かである。

 市場が9月4日のECBの動向に注目し始めたのは、ドラギ総裁の発言がきっかけであった。8月22日、ECBのドラギ総裁はカンザスシティー連銀が主催したジャクソンホールでのシンポジウムにおいて、ユーロ圏のインフレ期待が「大幅な低下を示した」と発言した。この発言は講演原稿にはなく同総裁の「アドリブ」であった。さらに政策姿勢を一段と調整する用意がある、とした講演原稿の中でも、今までの定番の「必要になった場合は」の文言が省かれていた。

 これにより9月4日に何かしらの行動を起こすことが意識されたが、それを決定づけるようなことがそのあとに起きていた。ドイツのシュピーゲル誌は31日に、メルケル首相とショイブレ独財務相がドラギ総裁に電話をかけ講演内容について質したと報じていた。

 さらにフランスのバルス首相は、ECBにユーロ押し下げで手段を講ずるよう求め、ドイツのショイブレ財務相は金融政策の措置は尽きたとの見方を示していた。

 ECBは国を跨いだ中央銀行であり、独立した組織ではある。しかし、ECBが動くであろうことは、各国政府としても事前にある程度は予測していたのではなかろうか。特にメルケル首相がドラギ総裁に電話で直接問いただしたのが真実であれば、ジャクソンホールでの発言の意図を聞き出すというよりも、行動を起こすことに対して警告を発したのではないかとも推測される。

 クーレECB専務理事は必要なら金融政策を一段と調整する用意があると述べていたが、その準備は短期間ながら、着々と進められていたと思われる。ただし、その選択肢は極めて限られたものとなっていた。

 市場では量的緩和への期待が強かったが、超過準備の金利をすでにマイナスとしている状況下で、中央銀行のポートフォリオを増加することはかなり無理がある。このため、可能性としては小幅な利下げが考えられた。しかし、これでは目的とするユーロ安に働きかけるにしては、あまりにインパクトは低い。量的緩和ではなく資産の買入れとして国債買入れの可能性もあるかと個人的には思っていたが、それでも国を跨いだ中央銀行として、法律上の問題も含めて障壁が立ちはだかっており早期の実現性は薄かった。

 ここで思い出すべきであったのが、ECBが先日、金融システムの流動性拡大と融資てこ入れに向けたABS購入プログラムの設計で米資産運用会社ブラックロックを助言役に起用したことである。このため、一部の金融機関では資産担保証券(ABS)の購入方針が示される可能性もあるとの指摘もあった。ただし、それが今回打ち出されると予想していた向きは少なかったことも確かであった。

 結果として、9月4日の政策理事会では、主要政策金利のリファイナンス金利を過去最低の0.05%に引き下げ、上限金利の限界貸出金利を0.30%に、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.20%に引き下げた。マイナス幅を広げたことにより、さらに量的緩和の導入を難しくさせることとなる。

 ドラギ総裁は「テクニカルな調整がこれ以上は不可能な下限に到達した」とし、利下げは打ち止めとの考えを示した。利下げに関して、これで打ち止めとの姿勢を示した(ロイター)。つまり政策金利そのものはほぼゼロとなり(ゼロ金利政策)、これをマイナスにすることは想定しておらず、ここからは日銀やBOE、FRBが実施してきたような非伝統的手段に頼ることになることを示した。

 その結果のひとつが、10月からの資産担保証券(ABS)とカバードボンドを買い入れの決定である。これは域内の信用状況を緩和するための措置としていたように、量的緩和というよりも信用緩和ということになる。今回のサプライズは利下げと、この資産買入れをセットに持ってきたことにある。現実にこの決定を受けて外為市場でユーロは大きく下落した。

 資産買入れについてもある程度予想はできたことであったが、市場はECBが早期に動くことは想定していなかった。このためある意味、これもドラギマジックということになるかもしれないが、今回も伏線は多々あったことも確かであった。

 今回のECBの利下げについては、全会一致でなかったことも明らかにされており、ドイツ出身者を中心に反対票が出たようである。さらに国債の買入れなどによる量的緩和についても議論をしたことも明らかになっている。ただし、国債買入れについては繰り返すようだがハードルが高い。それについては議論をしている程度の説明に抑えざるを得なかったことも確かであろう。

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by nihonkokusai | 2014-09-06 11:24 | 中央銀行 | Comments(0)

安倍改造内閣で相場は動くのか

 第二次安倍改造内閣が3日に発足した。ここにきての円安・株高の要因との見方もあるが、果たしてそうであろうか。新内閣の優先事項についても、経済なのか地方なのか女性なのかがやや曖昧で、安定政権を狙ったことは確かなのかもしれない。

 サプライズがあったとすれば、谷垣氏の幹事長就任か。しかし、結果として幹事長職から外した石破氏を入閣させたことを含めて、党内に影響力のある谷垣氏と石破氏を取り込むことが最優先であったとみられ、来年の自民党総裁選を見据えてのものと見て良いのかと思う。

 財政再建派の谷垣氏が自民党幹事長に就任することにより、10%への消費増税にも影響が出るのではとの見方もある。実際に谷垣氏は就任後の会見で、10%への消費増税について、法律に沿って来年10月から実施することが基本との認識を示していた。しかし、首相の消費増税判断に谷垣氏の存在が何かしら影響を与えることは考えづらい。それよりも財務相含め主要閣僚の顔ぶれはほとんど変わっていないこともあり、消費増税判断についてもこれまでの意向が反映されたものとなろう。つまり7~9月期の状況などを見て判断することになる。

 塩崎氏の厚生労働大臣の就任についても、市場では期待がやや先走った感があった。すでにGPIFが国債偏重の投資から株式などのリスク資産に資金を振り向けることは、首相の意向もあり、ほぼ既成事実化している。誰が厚生労働大臣に就任しようがその流れを変えることはできなかったように思われる。

 地方重視、女性の活用と言うものの、来年の統一地方選挙をにらんだものであろう。効率からいえば地方よりも都心重視のほうが理に適っていると思うが、それでは票は取れなくなる。国会議員の女性の比率に比べて、内閣の女性比率を大幅に高めたが、それもあくまで数をアピールしているようにしか見えない。これまで女性が登用されなかった見えない障壁のようなものが存在し、そのひとつが議員の女性シェアの低さもあるのであれば、このあたりを意識する必要もあるのではなかろうか。

 今回の内閣改造による市場への影響としては、あまり大きなものはない。そもそも主要閣僚は留任しており、これまでの内閣のスタンスが変わりそうな要因はない。ただし、すでにアベノミクスという魔法が切れかかっており、市場はこのあたりにも懸念というか、期待を持っている可能性はある。

 安倍政権の登場をきっかけに円安・株高の動きを強め、物価も上昇してきた。ところが円安・株高の動きは鈍りつつある。さらに円安による日本経済に対する影響も過去とは異なってきていることも明らかになってきた。海外勢の仕掛けでは円売りと日本株買いがセットになっていたが、現実には円安になっても昔ほど日本経済が潤うわけではない。このため株価対策にGPIFなどをもってきたと思われるが、これもすでに材料としては消化されつつある。この状況下で海外要因による影響はさておき、国内要因で株価を持ち上げられるほどの材料が果たして改造内閣にあるのかは極めて疑問である。

 債券市場に対しても影響が出ることは考えづらい。日銀の金融政策が改造内閣により影響を受けることもないと思われる。当面は国内要因よりも、ECBの動向などを含めた海外要因に目を向けてくると思われる。

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by nihonkokusai | 2014-09-05 09:41 | アベノミクス | Comments(0)
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