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日米欧の長期金利の背景

 日米欧の長期金利が低下してきている。特に欧州での長期金利の低下が目立ち、ドイツの長期金利は1%を割り込み、一時0.96%まで低下した。イタリアの長期金利は2.579%、スペインの長期金利は2.272%と、ともに過去最低水準を更新した。

イタリアやスペインの国債が買われていることからみても、この動きは欧州の信用不安を背景としたリスクオフではない。むしろ、イタリアやスペインの国債も安全資産との認識が戻ってきており、欧州経済の低迷によるECBの追加緩和への期待などから、ドイツの国債に比べて割安と見えるこれらの国債にも買いが入っている。ウクライナ情勢や中東情勢など地政学的リスクも意識されて、安全資産としての買いも入っているとの見方も可能か。

 安全資産といえば米国債であるが、こちらも10年債利回りは2.30%近辺まで低下した。この水準は2013年6月19日以来となる。昨年6月19日にFRBのバーナンキ議長はFOMC後の記者会見において、失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせるのが適当と見ていると述べ、一定のペースで規模を縮小し、失業率が7.00%程度に下がっていくことを目安に、来年半ばにかけて緩和策を終了するという意向を示した。

 このときには米長期金利は上昇基調となっていたが、さらに弾みをつけて9月には3%近辺まで上昇した。その後いったん2.5%あたりまで低下後、12月のテーパリング開始もあり、3%台に乗せてきた。しかし、そこから再び米長期金利は低下基調を辿ることになる。

 英国の10年債利回りも18日に2.32%と大きく低下していた。英国の年初からの長期金利の低下はドイツなどに比べると緩やかであったが、イングランド銀行の利上げ観測があっても、ドイツの長期金利に引っ張られる格好で、英国の長期金利は年初の3%台から、2.3%台と昨年、7月あたりの水準に低下した。

 日本の長期金利も年初の0.7%台からやはり低下基調となり、8月15日には0.5%を割り込んできている。

 この日米欧の長期金利の低下の背景には何があるのか。2013年あたりまでの日米欧の長期金利の低下の背景には、欧州の信用不安という明らかな要因が存在した。しかし、その信用不安そのもののリスクは後退したのは、イタリアやスペインの長期金利が過去最低水準を更新したことからも明らかである。

 それでは年初のトルコなどの新興国の不安、ウクライナ問題、中東の地政学的リスクなどは起きたものの、それはかつてのリーマン・ショックやギリシャ・ショックなどのように世界経済を揺るがし、金融不安を起こすほどのものではない。FRBは淡々とテーパリングを行っており、イングランド銀行も利上げの準備に取り掛かった。日本も日銀の意図したような動きとなり、物価は1.5%あたりまでの上昇を見せており、デフレ脱却も視野に入ったような状況にある。

 しかし、日米欧のなかで、ECBだけは対応に変化があった。昨年11月に利下げを行い、さらに今年の6月には包括的でパッケージされた追加緩和策を決定していた。日銀にも追加緩和観測は出ていたが、こちらは物価目標との兼ね合いでの市場からの過剰な期待が背景にあった。しかし、ECBの追加緩和は物価や景気の低迷から動かざるを得ない状況にあったためといえる。特に物価の低迷が顕著であり、日本型のデフレも危惧されつつある。年初からの日米欧の長期金利の低下という現象の背景には、欧州の景気物価動向とそれよるドイツを中心とした長期金利の低下が存在した。

 欧州の危機は去ったが、大きな危機後はその後始末が必要となる。その最中に発生したウクライナ問題は、さらに欧州の景気回復に水を差しかねない。ユーロが火薬庫となり、日米英の長期金利もそれに引っ張られた格好で低下している。これには相場の読みを間違えたヘッジファンドなどによる影響もあったとされる。

 しかし、伸び切ったところでゴムが切れることもありうる。ここからの日米欧の長期金利低下は、何かしら大きなリスクが発生してのものではない以上、次第に説明も難しくなる。国債バブルという現象と捉えることも可能と思われ、弾けるリスクは常に意識しておく必要もあるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-08-19 09:38 | 債券市場 | Comments(0)

ドイツの長期金利の1%割れは日本化現象か

 8月13日の欧州市場で、ドイツの10年債利回りは1%の大台を割り込み、一時は0.998%をつけて過去最低利回りを更新した(15日には0.96%まで低下)。フランスやベルギー、アイルランドさらにはスペインの10年債利回りも過去最低を記録した。

 13日に発表された4~6月期のユーロ圏のGDPは前期比横ばいとなった。スペインやポルトガルなどがプラス成長となったものの、これまでユーロ圏の経済を支えてきたドイツのGDPが前期比マイナス0.2%となり、イタリアもマイナス0.2%、フランスもゼロ成長となった。ロシアによる制裁が発動される前ではあったものの、ウクライナ問題を巡るロシアとの対立による景況感の悪化などが影響していたようである。

 ウクライナ情勢に関しては、 ロシアのプーチン大統領が14日のクリミアでの演説で、ロシアはウクライナで起きている惨事を直ちに終結させるために全力を尽くすと表明し、ウクライナをめぐって他国との衝突を避ける意向を示した。しかし、15日にウクライナ軍はウクライナ領内に入ったロシア軍の装甲車両を攻撃し、一部を撃退と報じられ、リスクは再燃した。

 ユーロ圏のGDPはこれまで4期連続、つまり1年間プラス成長が続き、信用不安からようやく脱しつつあった。しかし、その間の物価は低迷しており、ウクライナ問題をきっかけとした今回の景気の低迷の背景には、日本のようなデフレの懸念もあった。

 これも意識してか、ECBはマイナス金利などを含めた包括的な金融緩和パッケージを6月に決定した。しかし、日本と同様に金融政策でのデフレ対策には限界がある。マイナス金利を設定しても、それだけで企業の設備投資が伸びるわけではない。先行きの経済成長への期待等が膨らまないない限り、資金は国債などに向かうだけとなる。だからこそ、ドイツの10年債の利回りは1%を割り込むことになった。

 ここでECBが追加緩和を行ったところで、さほど問題解決にはならない。そもそもマイナス金利の設定と量的緩和は狙いや目的は同じものであっても、手段としては相反するものとなる。仮にマイナス金利を設定したまま、量的緩和みたいなものを行うとすれば、長期金利のさらなる低下を狙った国債の買入れの実施なども想定される。しかし、それにどのような効果があるのであろうか。そこにはドイツなどの反対も想定され、ECBにとっては国債買入れによる追加緩和という手段は取りにくい。

 ほかに手段はないわけではなかろうが、金融政策には限界がある。財政政策についても、やっと財政健全化が進みつつあるなかでは積極的に打ちづらい。このあたりは確かに日本の失われた15年の呼ばれた状況に似ている。

 日本の長期金利の低迷は1998年に1%を割り込んだあたりから始まった。そして15日に0.5%を割り込んだ(過去最低は2013年4月5日の0.315%)。今回のドイツの長期金利の1%割れも、今後の長期金利の低迷、それはつまりデフレという状況に長らく陥ることを意味するのか。もしそのような事態となれば、日本経済にも少なからぬ影響が出てくることも確かである。

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by nihonkokusai | 2014-08-18 09:39 | 債券市場 | Comments(0)

格安スマホによるCPIへの影響

 格安スマホとはドコモやAU、ソフトバンクなどの携帯電話・スマートフォンとは異なる。スマホはその料金体系からみると、2つのものがセットになったものとなっている。SIMカードと端末本体である。端末だけでは通話はできず、回線を使ったネットの利用もできない。そこに固有のID番号が記録されたICカードを指すことによって自分の番号での通話が可能となる。つまり、端末が違ってもSIMカードさえ利用できれば通話や回線を利用したネットが可能になる。

 番号を変えずに機種を変更したり携帯会社を変えることができるのは、このSIMカードの情報があるため。携帯電話の料金設定もSIMカードにその情報が入っている。携帯料金はこのSIMカードの利用料金というべきものであり、だから別に端末の料金がかかってくる。

 このSIMカードと端末を組み合わせれば携帯電話やスマホが完成する。そのSIMカードを販売する業者が現れた。それが仮想移動体通信事業者、MVNOである。携帯電話Sなどの移動体回線網を自社では持たないものの、実際に保有する他の事業者から借りて自社ブランドで通信サービスを行う事業者のことである。ドコモなどから回線を借りて、それを割安で販売する業者が出てきた。もちろんそこにはデータ量の制限などがつくものの、ひと月1000円以下の料金が出てきた。MVNOによって料金も買われるが、私の利用しているものはひと月900円程度で、1ギガ分利用できる。メールやネットなどを中心とした利用であれば、この容量で十分ではないかと思われる。さらにIP電話ならばこれでも通話が可能(別途IP電話の契約は必要)。

 SIMカードとともにもうひとつ必要なのが端末である。SIMカードを使うことができる端末は、海外ではあったものの国内ではほとんどなく、あったとしてもかなり高価なものが主流であった、ところがSIMカードの登場とともに、それを使える割安な端末も出てくるようになった。安いものでは1万円台からあるが、格安スマホはこの端末の分割料金を込みで、料金の設定を3000円程度で横並びしている。これは端末の料金を2年間で分割し、毎月1500円程度の支払とし、そこにSIMカードを使った通話とネット接続の料金1500円程度がプラスされる格好となる。家電量販店ではこのSIMフリーの端末とSIMカードをセット販売にしており、単体では買えないような仕組みにしている。端末の2年間の分割払いがすめば、毎月の料金はSIMカードの利用分だけとなる。

 端末の料金とセットでも毎月3000円程度(2年後はさらに安くなる)に収まれば、通常の携帯電話などに比べてかなり割安となる。ただし、この格安スマホにはiPhoneはない。iPhoneもフリーSIMタイプのものがあるが、5Sで7万円近くから9万円近くする。これでは分割しようが、なかなか割安とはいえない。

 スマホはiPhoneのシェアが大きく、その牙城を崩すことは難しい。格安スマホも一時的なブームになっているかもしれないが、そのシェアはまだまだ大きくはない。このため、格安スマホの登場で消費者物価指数への影響が出るわけではない。そもそもCPIの携帯電話料金は契約数の多い3事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)別に事業者が消費者に提供しているプランの中から、原則として利用パターンごとに消費者にとって最も安いプランを選定している。ということは、ドコモなどの料金体系の変更などによる影響が大きく、現状は格安スマホの影響はまったくないことになる。しかし、格安スマホの登場で携帯料金が下がるようなことがあれば、CPIにも影響が出ることは考えられる。

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by nihonkokusai | 2014-08-17 12:58 | 景気物価動向 | Comments(0)

正常化への試金石、イングランド銀行

 8月13日にイングランド銀行は四半期インフレ・レポートを公表した。このなかで、賃金の上昇が加速するようであれば、引き続き来年初めに利上げに踏み切る構えであることを示唆した。ただし、賃金の伸びが弱ければ、最初の利上げを先送りする可能性があることも指摘していた。

 前回の報告にあった「利上げを実施する前にスラックを一段と解消する余地がある」との部分は削除され、スラックが想定より急速に解消されつつあるとの指摘もあった。MPCが政策金利を過去最低の0.5%から引き上げ始める際、その利上げペースは段階的になるとの方針もあらためて示された。

 カーニー総裁はレポート公表後の会見において「地政学的リスクが強まったほか、ユーロ圏では構造改革が継続中で域内成長は緩やかと予想される」とし、「失業率が急激に低下したのに、賃金の伸びは極めて弱い」と発言した。

 この四半期インフレ・レポートとカーニー総裁の発言を受け、市場では早ければ年内にも利上げかとの観測が後退し、その可能性は来年初めとの見方が増えたようである。これを受けて13日の外為市場ではポンドが売られ、ロンドン株式市場は上昇、英国債は買われた。

 英国債が買われたのは、米国債やユーロ圏の国債が買われたためとの見方もできそうだが、むしろ英国の利上げ時期予想の後退が影響し、7月の米小売売上高を受けてFRBの利上げが遠のくとの見方も相まってのものかもしれない。

 個人的にはイングランド銀行の年内の利上げの可能性はあるかとみていたが、今回のインフレ・レポートや総裁会見で示されていたように、来年はじめとなる可能性が高そうである。もちろん、そのための条件として賃金の行方が大きなポイントになる。インフレ・レポートでは、今年10~12月の伸び率が前年同期比で1.25%前後とし、5月時点に予想した2.5%から引き下げた。

 ただし、スラックが想定より急速に解消されているという状況は、利上げにむけた環境が整備されつつあるとの見方も可能か。賃金の上昇はついてこないが、スラックが解消しつつあるというのは日本も同様の状況にある。

 今後の日米欧の中央銀行の金融政策の行方を見る上では、このイングランド銀行の動向を注目する必要がある。まず先陣を切って出口に向かうのが、イングランド銀行であると思われるためである。世界的な危機の連鎖において、大きな時間稼ぎの役割を果たした日米欧の中央銀行が、正常化に向かえるのかどうか。イングランド銀行の動向がまず試金石となる。

 FRBはすでにテーパリングを行っているが、それは出口政策の仕上げとなる利上げに向けての準備段階といえる。2006年の日銀の量的緩政策解除から、さほど時を置かずにゼロ金利政策を解除したのも、出口の仕上げがゼロ金利政策であったためである。これで非伝統的手段から伝統的手段に戻ったということができる。

 イングランド銀行が利上げを決定し、そのあとFRBも利上げの決定が可能となるのか。ここにきて地政学的リスクも出ていたが、それよりもユーロ圏の景気減速なども気になるところ。ドイツの長期金利が過去最低水準を更新し、1%を割り込みそうな勢いとなっていることもそれを示している(8月13日に1%割れとなった)。このあたりの動向も今後は注意深くみておく必要がありそうである。

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by nihonkokusai | 2014-08-15 09:11 | 中央銀行 | Comments(0)

今後の物価上昇シナリオも準備

 8月13日に4~6月期の実質GDP一次速報が発表された。前期比年率でマイナス6.8%減となり、予想されたほどの落ち込みとはならなかった。ただし、消費増税前の駆け込み需要の反動で個人消費が大きく落ち込んだ。特に家計最終消費支出(実質)の落ち込みはマイナス5.2%と大きかった。

 名目のGDPは前期比年率でマイナス0.1%に止まっており、駆け込み需要の反動とともに、消費増税そのものによる物価への影響も加味する必要がある。消費増税の影響によりGDPデフレーターは季節調整したものでプラス1.7%、原系列でプラス2.0%となった。国内需要デフレーターはそれぞれ1.4%、2.4%となった。消費増税の影響は当然加味されているものの、数字上からは日銀の物価目標に近いものとなっている。

 1~3月期の反動もあったことで、消費増税による景気への影響を知るには7~9月期の数字をチェックする必要がある。来年10月の消費税率10%への引き上げの重要な判断材料としても7~9月期のGDPが挙げられている。その足元景気に関しては、やはり13日に公表された日銀の金融政策決定会合議事要旨(7月14日・15日分)も参考になろう。

「景気の先行きについて、委員は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方を共有した」(決定会合議事要旨より)

 注目される個人消費に関しては次のような記述もあった。

「駆け込み需要の反動減について、委員は、各種のデータや企業からの聞き取り調査には強弱様々なものがあるが、全体としてみれば概ね事前の想定の範囲内となっているとの見方で一致した」(決定会合議事要旨より)

 ただし、次のような発言も出ていた。

「複数の委員は、企業からの聞き取り調査では想定の範囲内との声が多く聞かれる一方、各種のデータには大きめの反動減を示すものもあるとの認識を示したうえで、これには聞き取り調査の対象が大企業中心であることが影響している可能性があると指摘した。」(決定会合議事要旨より)

 7月の消費者動向調査でも消費者心理は3か月連続で改善を示している。消費増税だけで景気そのものが大きく冷え込むことは考えづらい。日銀は楽観的な見方をしているようにも見えるが、いまのところは日銀の見方が正しいように思われる。

 決定会合議事要旨では物価に関して次のような記述があった。

「ある委員は、コスト転嫁が難しかったとみられる中小企業・非製造業でも販売価格判断DIが1991年調査以来の「上昇」超になるなど、企業の価格設定行動は付加価値を高めながら販売価格を引き上げる方向に変化し始めているとの見方を示した」(決定会合議事要旨より)

 消費増税の影響を受けてもなお景気回復の基調が維持されれば、このような動きは継続してくることも予想される。暫くの間、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみてプラス1%台前半で推移するというCPIは、先行きさらに高まっていくという日銀のシナリオ通りとなるのか。その日銀の想定通りになった際、長期金利はどう動くのか。このあたりのシナリオも準備しておく必要があるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-08-14 09:37 | 景気物価動向 | Comments(0)

出口戦略に失敗した高橋財政の教訓は生かせるのか

 アベノミクスに出口はあるのか。それを見極める上で高橋財政時の出口戦略がどうであったのかを確認しておくことも必要である。今回も拙著「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」の記述をもとに考察してみたい。

 高橋是清の考案した日銀引受による国債発行は、市中公募と異なり発行額や発行条件が市場動向に左右されなくなった。日銀の国債引受は国債の金利そのものの引き下げも目的としていた。金融緩和とともに、国債の発行条件の引き下げにより、金利の先安予想が強まり、国債価格の上昇予想を背景にして、国債の売りオペを通じての市中消化を円滑に行うことが可能となった。これは日銀の直接引き受けではないが、日銀の量的・質的緩和による大量の国債買い入れの効果も同様のことを意図していたとみられる。

 つまり、これは金利の引き上げを行うことはかなり困難になることを意味しており、その好循環が途切れるとすべての歯車がうまく回らなくなることも意味する。1935年に入るとそれまで順調となっていた売りオペによる円滑な市中消化が変調をきたしはじめた。

 高橋財政により景気は急速に回復し1932年から1935年にかけての実質経済成長率は年率7%程度と高い水準で推移した。景気の回復により銀行の貸し出しも伸び、1935年下期から銀行貸し出しが増加に転じた。銀行による国債の買い余力が減少してきたことで、日銀が引き受けた国債の民間への売却比率は1935年上期が9割程度あったのに対し、下期には5割前後に低下した。1933年から1935年半ばにかけてほぼ横ばいで推移していた卸売物価指数は、1935年の夏あたりから再び上昇してきた。

 1935年6月の閣議で高橋蔵相は、「毎年巨額の国債が発行せられて行く時は、現在すでに相当多額の公債を保有している金融業者等は内心不安を覚え、少しでも公債価格の下落が予想せらるるようなことがあれば、進んで公債保有額を増加せぬことは勿論、すでに保有している公債もこれを売却しようとする気になり、一度このような事態が起きれば加速度的に拡大してたちまち公債政策に破綻を来し、市場に公債の消化を求めることができなくなる」と説明している。つまり国債発行額を漸減すべき時期が来たことを示唆した。

 この高橋是清の説明はアベノミクスのひとつのリスクも示しているといえる。景気が回復し、物価も上昇するとなればいずれ金利の先高感も強まる。日銀による大量購入が続く間は問題が表面化しないとしても、日銀の物価目標に接近してくれば、テーパリングも意識される。しかし、テーパリングが困難となれば高橋是清時代のような財政ファイナンスが意識されることも考えられる。

 1935年7月に高橋蔵相は「公債が一般金融機関等に消化されず日本銀行背負い込みとなるようでなことがあれば、明らかに公債政策の行き詰まりであって悪性インフレーションの弊害が現れ」と警告を発している。

 量的・質的緩和による日銀の大量買入れは、国債への投資家需要があるなかで行われたものであり、このため国債が足りないとの発言が出るなど、需給面は非常にタイトとなった。ところがファンダメンタルズが変化し、貸出等が伸び、さらに国債の大口の買い手であったGPIFやかんぽ生命の国債保有額が減少するようなことになれば民間金融機関による国債需要が後退する。その結果、日銀の国債買い入れが国債市場を支えるような状況に陥ることも考えられる。高橋蔵相の言うところの日本銀行背負い込みという事態が発生する懸念が出てくることになる。

 高橋蔵相は経常収入の増加分だけ公債を減額すると言う方針で1936年度の予算編成に臨む。ところがこの1936年度予算を巡り軍部と大蔵省が衝突する。この予算案では歳出の5割弱が陸・海軍省の経費となっていたが、陸・海軍省はさらなる要求をしていたことで不満は大きくなっていた。その歳出の3割程度は国債発行で賄われることになる。

 高橋蔵相は「ただ国防のみに専念して悪性インフレを引き起こし、財政上の信用を破壊するごときがあっては、国防も決して安固とはなりえない」と主張する。自ら日銀による国債引受という手段を講じることでパンドラの箱を開いてしまったが、これは自らで制御できるという意識もあったと思われる。しかし、打ち出の小槌を使ってしまったことは確かであり、そのリスクが誰よりもわかっていたはずの高橋是清でもそれを取り上げることはできなかった。

 戦前の軍備拡張を行っている時期の日本の財政と現在の日本の財政を比べるのはおかしいとの意見もあろうが、この高橋財政時代よりも現在の日本のほうが財政状況は悪化している。アベノミクスは非常にタイムリーな登場の仕方をしたことで、リフレ政策がうまく行っているかのように見える。ところがそこには国債という大きな爆弾を抱えている状況であることは高橋財政と何ら変わりはない。そのリスクが顕在化してくるのはどのようなタイミングなのか。高橋財政は出口戦略に失敗したが、果たしてその教訓は生かされるのであろうか。

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by nihonkokusai | 2014-08-13 08:49 | アベノミクス | Comments(0)

高橋財政とアベノミクス、円安政策の効果に違い

 1931年12月の高橋是清による金輸出再禁止により、株価は急騰し、円安放置策もあり、円安も進む。しかし、これは思惑的な動きであった。このあたりは2012年11月に登場したアベノミクスによる円安・株高と似ていた部分となる。

 1932年3月と6月に日銀が公定歩合を引き下げた際にはあまりその効果は出なかった。8月の第三次公定歩合の引き下げで、本格的な低金利時代を迎えたことが意識された。加えて政府による積極的な財政政策が打ち出された(満州事件費や時局匡救費)。財政面からの大規模な需要拡大・景気刺激策と呼応し、金融面から金融緩和・金利低下を本格的に推進しようとする政府の意向も浸透してきたことで、景気回復への期待を強めることになる。アベノミクスによる2本目の矢はこのあたりも意識されてのものであろう。

 1932年8月以降は輸出の伸びも顕著になる。財政支出と輸出の増加により総需要は拡大し、日本経済は1932年後半から急速な景気回復過程に入る。物価も上昇し卸売物価は1932年7月から、小売物価は同年8月から上昇に転じる。1932年12月の卸売物価指数は前年同月比39.6%増となり、ほぼ金解禁当初の水準まで戻った。

 アベノミクスをきっかけに急速な円安を招くことになり、2012年11月以降、株価も上昇した。物価も円安の影響を受けて上昇し、2013年3月に前年比マイナス0.5となっていたコアCPIは2014年4月にプラス1.5%まで上昇した。これは2013年4月の量的・質的緩和がすぐに効果を発揮したというよりも、2012年11月以降の円安の影響が大きいといえる。

 高橋是清は世界最速でデフレからの脱却に成功させたと言われているが、高橋財政は世界経済が停滞する中での円安を梃子にした輸出の増加が大きく影響していた。諸外国はこれを「ソーシャル・ダンピング」と強く非難した。満州事変に続き上海事変などの軍事行動とともに円安による輸出急増は対外摩擦を大きくする誘因となり、国際的孤立を招く要因となったのである。

 アベノミクスによる円安に対しては、急激な円高の調整という側面もあり、直接非難されることはなかったものの、米国あたりからは懸念も出ており、日本政府も為替については慎重な発言が多くなっていた。

 この円安による効果がアベノミクスは高橋財政では異なってきている。物価の上昇などに影響は与えたものの、アベノミクスに関しては円安により輸出がそれほど大きく増加していない。むしろ燃料輸入額の増加が輸出の増加を上回っているような状態にある。

 円安により輸出が伸びていないのは、国内メーカーが円高の際に生産拠点を海外に移したことなども影響しているが、家電メーカーの競争力低下なども背景にあると思われる。

 アベノミクスにより、円安となり株もそれなりに上昇し、物価も上がったが、日本の頼みの綱である輸出が伸びないとなれば、賃金の伸びなども抑制される恐れがある。物価が上がりデフレが解消されれば、すべての問題が解決されるかのようなリフレ政策ではあったが、物価が上がればすべてが解決されるわけではない。その物価高のために、なぜか日銀は一生懸命、国債を大量に購入し続けている。

 高橋是清は財政政策を進める上での日銀の国債引き受けにブレーキを掛けようとして暗殺された。アベノミクスはデフレ解消のためとして日銀に大量に国債を買わせたが、もし物価目標が達成されるとしても、やはりそこにブレーキを掛けることが難しくなることも予想される。歴史は繰り返すのか。高橋財政で何が起きたのか、もう一度確認しておくことも重要ではなかろうかと思う。



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by nihonkokusai | 2014-08-12 08:07 | アベノミクス | Comments(2)

市場参加者の視線の先が変化、相場急変に注意

 日常、目にしているものについては特に何も考えずに過ごしてしまうことがある。しかし、実は自分でよくわかっていなかったものも多々ある。むしろ、そのほうが絶対的に多いのではなかろうか。

 台風11号が日本列島を縦断したが、この台風、自分で動いているように見えて、実は水面に浮かぶ葉のように漂っているだけなのをご存じであったろうか。このため、その進路は高気圧や低気圧、前線等の影響を受け、そこから予想をする必要がある。

 その意味では、株価なども同様であろうか。自分で勝手に株価は動いているわけではなく、市場参加者の思惑というか、欲と欲とのぶつかり合いによって揺れ動いている。これは債券相場も同様であり、市場参加者のそれぞれの事情等を背景に価格が成立している。

 現在の相場を見る上で、この市場参加者の視線がどこにあるのかを意識することは非常に重要である。相場の解説をする上でも、視線の変化を感じなければなかなか適切な説明は難しい。これについてケインズは美人投票とのたとえを出していたが、私自身はこのたとえは少し違うような気がしている。他人が美人と感じる人を選ぶのではなく、いまはこういった人がコンテストで優勝できるというその時々の流行を意識して投票する必要があるのではなかろうか。美人というのは絶対的なものが存在しているわけではなく、あくまで相対的なもののはずである。

 少し前置きが長くなってしまったが、現在の金融市場の参加者の視線の先がどうやら変化しつつあるように思われる。これについては先日も書いたが、特に欧州市場で顕著のように思える。視線の先には常に中央銀行の金融政策が意識されていたような状況が長らく続いていたが、そこから一歩引きつつあるような動きが始まっているように思われる。

 米国では10月にもテーパリングが終了し、来年の利上げが視野に入る。イングランド銀行は7日のMPCで金融政策については現状維持を決定したMPCでは利上げを巡っての討議も進められたものとみられ、年内の利上げの可能性もありうる。

 7日はECB政策理事会も開催され、こちらも現状維持となった。ドラギ総裁は会見で、「地政学的リスクが世界中で高まったことには疑いの余地がない」などの発言をしたが、市場ではやや期待外れの内容だとの声があったようだ。しかし、そもそも発言内容への期待そのものもそれほどなかったものと思われる。ECBの金融政策の期待というか関心も薄れてきているのではなかろうか。

 相場は今後の中央銀行の金融政策に何かを期待するよりも、今後の相場動向そのものに対する不安感を強めているように思われる。出口を模索している米国や英国はさておき、追加緩和の可能性を残しているとされるECBや日銀は、その追加緩和は容易ではないことも市場でも理解されはじめている。日本では株価対策のようにしか見えないGPIFの日本株への配分見直しや、かんぽ生命の株式投資拡大なども小手先の手段でしかなく、目先のアナウンスメント効果狙いというのも見透かされている。

 このような状況下、8月8日の日経平均株価は15000円の大台を割り込んできた。日経平均の日足チャートをみると、7月31日を目先のピークに調整入りしている。日足だけをみるとここからさらに下げ足を速め、あくまでチャート上からではあるが、14000円あたりまでの調整も十分ありうる格好となりつつある。もちろんこの背景には一時過去最高値を更新した米国株式市場の調整がある。トレンドが変化するほどの大きな調整はいまのところ考えづらいが、地政学的リスクを含めてあらたな不安要因がここにきて出てきていることも確かである。

 ドイツの10年債利回りは過去最低を記録し、2年債利回りは一時マイナスを記録した。これにはECBの追加緩和の効果も当然出ているものの、質への逃避による動きと思える。市場参加者の視線の先が変化し、相場の流れにも変化が出ている。今週からは夏休みモードとなり、市場参加者も減ってくることも予想される。閑散なときに相場が大きく動くことも多く、ヘッジファンドなどが仕掛けてくる可能性もある。相場の動きに目が離せなくなりつつある。

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by nihonkokusai | 2014-08-11 08:59 | 債券市場 | Comments(0)

空気が変わってきた欧州市場

 8月7日の欧米市場、特に欧州市場では少し不自然な動きが出ていた。あくまで不自然とみたのは個人的な感想であり、マーケットを動かす材料はいくつもあり、その比重も変化していくことは重々承知している。しかし、リスク回避という言葉だけで説明してよいものであったのか。  

 7日の欧州の市場動向とその材料とされたものを確認してみたい。ロシアがウクライナ東部との国境付近に部隊を集結されており、その集結場所はロシアがクリミアを併合した時点よりウクライナの領土に近いところとの情報もあった。さらにドイツを訪問中のヘーゲル米国防長官は会見で、「ロシアによるウクライナ侵攻の脅威は現実的。ロシア軍がウクライナ侵入する可能性はある」と述べたとも伝わった。このウクライナの問題が、リスク回避の動きを強めたと思われるが、それにしては欧州の株式市場は下げたものの、米国の株式市場はほとんど動揺を示していなかった。外為市場ではユーロが下落し、安全資産として円が買われる構図となったものの、それほど大きな動きが出ていたわけではない。

 ロシア政府は米国の全農産物とEUの全ての野菜と果物の輸入を禁止する措置を導入へとの報道もあった。ロシアに対する経済制裁はユーロ圏の経済にはマイナスの影響を与える可能性があり、これも懸念材料となっている。

 その欧州の景気に対しても昨日はあらためて懸念が強まっていた。昨日発表された6月のドイツ製造業受注は前月比3.2%減少と予想に反して大幅減少となった。加えてイタリアの4~6月期GDPは前期比0.2%減と2期連続のマイナス成長となり、イタリアのリセッション入りが確認された。これだけで欧州経済が悪化していると決めつけるわけにはいかないが、ポルトガルではBESを巡って、その救済に関しほかの国内銀行への負担もあるのではないかとの思惑も出ていた。このあたりの動きは日本の不良債権処理問題を彷彿とさせる。たしかに欧州については、いくつかの懸念材料が出ていることは確かである。

 昨日の欧州の債券市場ではドイツ国債は買われ、ドイツの10年債利回りは一時1.095%と過去最低を記録していた。英国債も買われ、10年債利回りは2.51%に低下した。これらの動きはリスク回避との説明となろう。しかし、米債は10年債利回りが一時2.43%まで低下したものの、2.47%近辺と居所は大きく変わっていなかった。

 そして、イタリアやスペイン、さらにギリシャの国債は売られていた。実はこの動きに違和感があったのである。

 イタリアのGDPがプラス予想であったのが、結果はマイナスとなり、リセッション入りが確定した。それにもかかわらずイタリアの国債が売られたのである。これはなかなか納得できる説明は難しい。景気の悪化は債券にとっては買い材料となるはずである。しかも、7日にはECB政策理事会の開催も控えている。ECBの追加緩和はよほどのことがない限り、難しいとみているが、それでも市場はユーロ圏の景気低迷、リスクの増加等を理由に通常であれば、追加緩和観測が多少なり出たとしてもおかしくない。もちろんドイツ国債の買いにはその思惑もあったかもしれないが、なぜイタリアの国債は売られたのか。スペインやギリシャと一緒に売られたところをみると、再びユーロ圏の信用不安のような危機が起きるようなことを想定していたのであろうか。

 ただし、イタリアなどの国債下落については、一時過去最低水準まで低下していたことでの反動との見方もできる。高値警戒による売りとの見方も可能かもしれない。しかし、過去利回りが最低水準まで低下したドイツの10年債には高値警戒はないということになるのであろうか。たしかに0.5%近辺まで10年債利回りが低下している国のことを考えると、イタリアはイタリア、ドイツはドイツ、日本は日本ということなのかもしれないが。

 7日にはイングランド銀行のMPCも開催される。イングランド銀行は年内の利上げを見据えて、その示唆も可能性もあるなか、6日に英国債は大きく買われる事態となっている。昨日の英国債の動きだけみると、年内の利上げ観測が大きく後退したかのようであった。

 このように6日の特に欧州市場の動きからは、少し空気が変わってきたかに思われる。特に不安がなければ、中央銀行の金融政策に焦点があてられるはずのところ、そこに焦点があたらなくなるほど、ほかの不安要因が強まってきたともいえるのかもしれない。これが一時的なものであるのか、ここから相場に変化が出るのか。少し注意してみておく必要がありそうである。

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by nihonkokusai | 2014-08-08 09:37 | 国際情勢 | Comments(2)

日銀の異次元緩和が長期化する可能性

 日銀の木内審議委員は8月1日の会見で、「私自身は現在の量的・質的金融緩和が長期化すると、相応に副作用が積み上がっていく一方で、追加的な効果がどんどん高まっていく訳ではないと思っている」と発言していた

 講演要旨によると木内委員は副作用に関して次のように指摘をしている。

 「量的・質的金融緩和は、正常化のプロセスが容易でない、財政ファイナンス観測を高めかねないなどの相応に大きな潜在的リスクを抱えていると考えています。私自身は、2%の「物価安定の目標」は中長期でみた場合にのみ、日本経済の実力と整合的になりうると考えていることから、仮に現在の大規模な金融緩和策が長期化あるいは追加的措置によって強化されれば、逆にこれらの副作用がプラス効果を上回り、長い目でみた経済の安定をむしろ損ねてしまうリスクを強く意識しています」

 日銀の異次元緩和と呼ばれる量的・質的緩和が実施されて1年4か月が経過した。この間、日銀は金融政策に関しては政策変更は行っていない。一部の市場からは追加緩和を期待する声も出ていた。これについて日銀の黒田総裁は「戦力の随時投入はしない」として、過去の日銀のようなスタイルとは違う姿勢を示した。これは裏返せば、木内委員の指摘しているように、追加的措置によって副作用が生じる懸念もあったためとの見方もできる。もちろん、追加緩和を否定して市場に失望を生むようなことは避けるため。その可能性は常にあるように見せていたことも確かである。

 それでは日銀は今後、どのような動きをしてくるのか。いくつかのシナリオが想定されるが、可能性としてありうるのは、現在の金融政策をこのまま続けていくことである。過去の日銀の金融政策の変遷を見てみると、政策変更を長らく行わなかったことが幾度かあった。

 バブル発生の原因とされた公定歩合の2.5%という、当時は低金利とされた水準は1987年2月から1989年4月まで続いた。約2年2か月である。その後、公定歩合の1.75%という水準が1993年9月から1995年3月まで続いた。こちらは約1年半である。1995年3月からは政策金利が公定歩合から無担保コール翌日物に代わる。その水準が0.5%をやや下回るとすると決定したのが1995年9月で、それから1998年8月まで現状維持が続いた。こちらは約3年近くとなる。

 前回の量的緩和の時代も長く、2001年3月から2006年3月と5年間に及ぶ。この間、政策金利が実質ゼロとなったために、日銀の当座預金残高が政策目標となり、幾度かその目標値の引上げが実施された。しかし、政策金利そのものは5年間変更されていなかった。

 前回の量的緩和と今回の量的・質的緩和の大きな違いは、前回が戦力の随時投入を行っていたのに対し、今回はバズーカ砲に例えられたようにまとめて大きく量を打ち出したことにある。それによる心理的な効果を狙ったとされるが、これが以前のような戦力の随時投入のようなスタイルに戻すとなれば効果は薄れる。ましてやバズーカを何度も打ち込むことになると、その副作用が大きくなり取り返しのつかない事態が起こりうる。もちろんそれは財政ファンナンスが意識されての長期金利の急騰という事態を想定している。

 現在の金融政策を取り巻く環境は、日銀にとって非常に良い。この環境を日銀のバズーカが生み出したかどうか見方は分かれよう。私はこの点については懐疑的であるが、少なくとも物価が上がりやすい環境になりつつあることは確かではなかろうか。そうであれば、たとえ2%の物価目標がなかなか達成できなくとも、追加緩和を行う必要性はなくなる。むしろ物価目標をぎりぎりで達成できないほうが、日銀にとって出口を意識されずに済む。この環境がどこまで続くかはわからないが、日銀の政策変更なしの状態は過去にあったように意外に長期化する可能性もある。ただし、木内委員も指摘していたように長期化すればするほど、その副作用の懸念も強まることも確かである。

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by nihonkokusai | 2014-08-07 09:50 | 日銀 | Comments(0)
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