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次回のECB理事会の結果次第で市場は動揺も

 ECBのドラギ総裁は、カンザスシティー連銀が主催したジャクソンホールでのシンポジウムにおいて、ユーロ圏のインフレ期待が「大幅な低下を示した」と発言したが、この発言は講演原稿にはなく、同総裁のアドリブとされている。

 さらに政策姿勢を一段と調整する用意がある、とした講演原稿の中でも、今までの定番の「必要になった場合は」の文言が省かれていた(25日のブルームバーグのニュースより)。

 8月29日に発表される8月のユーロ圏インフレ率は前年比0.3%増と7月の0.4%増からさらに低下した。

 ここにきてユーロ圏の国債は軒並み買われ、ドイツやフランス、ベルギー、オランダ、さらにはアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアの10年債利回りは過去最低を更新している。この背景には日本型デフレを回避すべく、ECBの追加緩和への期待がある。

 そのECBの金融政策を決定する政策理事会が9月4日に開かれる。市場ではQEと呼ばれる量的緩和政策への期待も出ているようだが、量的緩和への移行は簡単にはできない。ユーロ圏の中央銀行の超過準備にマイナス金利を課していているのに、中央銀行のリザーブを増加させようという相反することになりかねない。そうではなく量的緩和というよりも、ユーロ圏の国債を買うことに意味があるとして、財政ファイナンスに絡んだ法律上の問題とともに、国を跨いだ中央銀行としての財政に関わる部分に多くの問題が出てくる。日本や米国、英国のように単純に国債を買えるというわけにはいかない。さらにインフレファイターとされるブンデスバンクを抱えるドイツ関係者の意向も気になる。

 このようにECBとしては日銀のように量的緩和策として、大胆に国債を買い入れるとの手段は取りづらい。だからこそ、今年6月5日のECB政策理事会では、包括的でパッケージされた追加緩和策が決定されたのである。

 6月5日に政策金利は0.1%引き下げられ、リファイナンス金利が0.25%から0.15%となった。コリドーとよばれる政策金利の上限と下限については、上限金利が0.4%%に引き下げられ、注目された下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)はマイナス0.1%となった。新型のLTROとなる金融機関に対しての期間4年・4000億ユーロの資金供給オペ(TLTRO)の導入や、過去の証券市場プログラム(SMP)で供給された流動性を吸収するため毎週実施していた不胎化オペの中止、資産担保証券(ABS)買い入れに向けた準備をすることなども決定した。

 2013年4月の日銀の異次元緩和と同様に、出せるものは全部出してきた格好であったことで、次の手段が難しくなる。日銀は幸運なことに物価は上昇しつつあり、景気も回復基調となっていたことで、追加緩和は封印することができたが、ECBはそのようなフォローの風は吹かなかった。

 果たしてECBは次の手段として何を準備するのか。大胆な国債買入れという手段が講じられないとなれば、さらなる利下げという可能性もある。またトリシェ前総裁は、ECBは新たな政策を発動するよりも、6月に発表した追加緩和措置の実行を優先すべきとの認識を示した。本来であれば、今回はこのあたりが落ち着きどころになると思われるが、ドラギ総裁の先日の発言からみて、ここに何かしら新たな手段も講じてくるのか。

 ユーロ圏の国債バブルはさらに膨らみ、市場ではECBに対して期待を強めている。その期待に沿った行動がとれるのか。はたまた期待は裏切られるのか。9月4日のECB理事会の結果次第では、世界の金融市場が動揺する懸念もあり、注意が必要となる。個人的には国債買入れを含めて大胆な手段には踏み切れないとみているのだが。

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by nihonkokusai | 2014-08-31 12:16 | 中央銀行 | Comments(0)

日本の債券先物も引け値で過去最高値を更新中

 8月27日にドイツの10年債利回りは一時0.9%を割り込み過去最低を更新した。フランス、オーストリア、ベルギー、オランダ、フィンランド、アイルランド、イタリア、スペイン、ポルトガルの10年債利回りも過去最低を更新した。

 米国株式市場でも26日にダウ平均はザラ場で一時最高値を更新し、S&P500は引けで初めて2000の大台に乗せた。

 そして、日本の債券市場も静かに記録を更新しつつある。8月28日の債券先物の引け値は146円29銭と「引け値」としての過去最高値を更新したのである。

 過去最高値にはザラ場、つまり取引時間中につけた高値とともに、引け値(終値)での過去最高値がある。ザラ場の語源は「雑乱場」とされ、寄り付きと引けの間の取引時間を示している。昔は人と人が売買しており、その時間はまさに伝票や罵声が飛び交う場であったのである(覚えている方は昔の株式の立会場を連想してほしい)。

 それはさておき、それでは債券先物のザラ場でつけた過去最高値はいつのことで、いくらであったのか。債券先物、正確には長期国債先物中心限月における過去最高値は、2013年4月4日の夕方、イブニング・セッションでつけた146円44銭である(約定日は4月5日となる)。2013年4月4日に何があったかといえば、日銀が量的・質的緩和を決定した日である。この4月4日の先物の高値は146円05銭、引け値は146円04銭。その後のイブニングで146円44銭まで上昇した。

 翌日の4月5日の債券先物は146円38銭で寄り付いて146円41銭まで上昇した。この間、10年債利回りは0.315%まで急低下したが、先物はイブニングでつけた高値の146円44銭は抜いてこなかった。その後、5年債が0.135%から0.2%台に利回りが急上昇したことをきっかけに、過去最低利回りを更新していた10年債にも売りが入り、0.315%から0.620%に利回りが急騰。これにより債券先物は急反落となり、高値警戒も手伝って下げ足を速め、サーキットブレーカーが2度も発動し、債券先物は143円10銭まで下落したのである。5日の債券先物の大引けは144円02銭。

 ということで債券先物のザラ場の過去最高値は、昨年4月4日のイブニングでつけた146円44銭となったのだが、引け値では4日の146円04銭だったのである。今年8月5日に債券先物は146円05銭で引けたことで、引け値としての過去最高値を更新した。その後もじりじりと記録は更新されており、28日に146円29銭で引けたことで、引け値としての過去最高値を更新した。

 ドイツなど欧州の国債は買い進まれており、日本の債券先物もザラ場の過去最高値146円44銭も視野に入る水準となった。しかし、10年債利回りは0.5%を割り込んだばかりであり、過去最低利回りの0.315%にはまだ距離がある。昨年4月5日に20年債利回りは0.845%に低下、30年債利回りは0.925%に低下していたが、こちらはまだ20年債は1.3%台、30年債は1.6%台にいる。

 現物債の上値の重さは投資家の慎重姿勢を物語っているようにも見える。今回の債券相場の上昇の背景には欧州の国債利回りの低下がある。つまり国内要因で買い進まれているわけではない。海外投資家の売買シェアの高い先物主体にやや投機的な動きも入っているとの見方も可能か。

 ここから債券先物はザラ場での過去最高値を更新し、いずれ現物債もそれを追ってくるのか。たしかに債券先物のザラ場での過去最高値更新の可能性はありうる水準にまできている。しかし、現物債についてはそこまで利回りが低下する理由が見当たらない。日銀の追加緩和観測がここにきて特に強まっているわけでもなく、時間軸に何かしら影響を与えそうな材料が出ているわけでもない。欧州の国債についていくのは良いが、深入りは禁物と言えそうである。

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by nihonkokusai | 2014-08-29 09:40 | 債券市場 | Comments(0)

国債急落の要因はリスクプレミアム

 長期金利は主に中央銀行の政策金利によってある程度決定づけられるとみられるが、政策金利の動向から、かい離して動くケースもある。この場合の長期金利の決定要因には何が影響しているのか。これにはリスクプレミアムと呼ばれるものが関係している。

 そのひとつの典型的な事例として、2010年あたりから始まった欧州の信用危機によるギリシャ、ポルトガル、スペインなどの長期金利の急騰がある。特にギリシャの長期金利の急騰、つまり国債価格の急落要因はギリシャの財政そのものへのリスクであった。だからこそ格付け会社の格下げに敏感に反応したのである。

 リスクプレミアムという言葉が少し誤解を生みそうだが、これは何らかのリスクが国債に生じ、そのリスク相当分が長期金利に上乗せされることで、その余計な上乗せ分をプレミアムという言葉で表現している。プレミアムモルツのプレミアムとは意味合いが異なる。さらにそのリスクプレミアムのなかで、財政悪化等が意識されたものが財政リスクプレミアムと呼ばれるものとなる。

 いまのところ戦後の日本の債券市場では、財政リスクプレミアムが長期金利にオンされたケースはほとんどない。ただし、それ以前には存在していた。

 たとえば、満州事変以降、外貨建ての日本国債は価格が急落し利回りは大きく上昇していた。「国債の歴史」によると、1969年償還の四分利付英貨公債の金利は、禁輸出が再禁止された1931年12月に8.25%に、資本逃避防止法が施行された1932年7月には9.26%、日銀の国債引受が始まった1932年11月には9.69%、さらに1933年2月には10%を越えた。第二次大戦が勃発した1939年9月に20%を超え、日独伊三国同盟が締結された1940年9月は21%となった。同月の東京市場では同クーポンの国債はオーバーパー、つまり額面を上回っていたものの、ロンドン市場での価格は額面のわずか25%であった。

 また戦後においては、1998年末に資金運用部ショックという国債の急落があったが、これは厳密にいえば財政リスクプレミアムがオンされていたとの見方ができるかどうか難しい。きっかけは日本国債を大量に保有し買い入れていた資金運用部の国債買入れが減額するという、国債需給に関わるものであった。その年にムーディーズが日本の格下げをしていたように、小渕政権による財政拡大政策による財政悪化の懸念も確かにあった。ただし、格下げのタイミングでの国債売りは限定的であった。さらにこの年に長期金利がはじめて1%を割り込み、その反動が出たとの見方もできる。

 資金運用部ショックは1999年2月の日銀のゼロ金利政策により収まった。国債需給面では銀行などの余裕資金等をみれば十分にカバーできるものであり、政策金利が超低位に抑えられていたことも意識され、長期金利の反動は2%台で抑えられた。

 財政リスクプレミアムというものが数値化できるものかどうかは、市場参加者の思惑次第なので難しいが、仮にこの際に発生していたとしても一時的なものであったと思う。このころ私も債券ディーラーとして国債を売買していたが、財政悪化というよりも、目先の需給面への懸念とともに、揺れ動く当局者の発言等を材料視していた記憶があった。

 物価が上がり、景気の回復があっても政策金利が上がるとの見通しが立たない限り、そしてリスクプレミアムがオンされない限り、日本でも現在の長期金利の低位安定は維持されるとの見方も可能か。また日銀の金融政策で出口が見えたとしても、ゼロ金利の解除にはかなり時間がかかるとなれば、長期金利の急激な跳ね上がりも考えづらいことになる。

 問題はリスクプレミアムの部分となる。ここに関わるのはもちろん市場参加者による国債への信認度ということになる。そこに懸念が生じた際には、政策金利の水準とは関係なく長期金利が暴れだす可能性はありうる。

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by nihonkokusai | 2014-08-28 09:07 | 債券市場 | Comments(0)

長期金利を押さえつけているのは政策金利

 過去の日本国債の動きを追ってみると、国債の価格変動、それはつまり利回りの変動ともなるが、長期金利の動きは日銀の掌のなかにあると言って良い(リスクプレミアム発生時を除く)。これは日銀が長期金利を動かしているというわけではない。長期金利は債券市場という市場で形成されるため、本来は自由に動く。しかし、その自由に動ける範囲が日銀の金融政策によりある程度、決定づけられているためである。

 長期金利も金利であるため、日銀が操作可能な短期金利に影響を受ける。短期金利から長期の金利を結んだラインがイールドカーブと呼ばれるが、短期と長期が非連続的であると考えることのほうが難しい。

 長期金利は予想されるインフレ率と成長率、リスクプレミアムによって形成されるとの考え方がある。たしかに名目成長率と長期金利はある程度の連動性はあるとされるが、完全に一致しているものではない。特に昨年の日銀による異次元緩和後の物価と成長率に比較して、長期金利とのかい離が目立っている。これをどう説明できるのか。市場の物価予想が低いとかでの説明もやや無理があろう。

 むしろ長期金利の形成には予想される政策金利の見通しとリスクプレミアムが関わっているとみたほうが自然ではなかろうか。何らかのリスクプレミアムがオンされなければ、予想される今後の政策金利である程度、長期金利の説明はつくのではなかろうか。

 現在の日銀は政策金利が実質ゼロの状態にいるため、非伝統的手段のひとつとして質的・量的緩和政策を行っている。過去にも量的緩和政策も実施していた。日銀の国債買入れで長期金利はさらに低下しており、国債需給も長期金利の形成に大きく影響を与えているのではないか見方もあるかもしれないが、そうであろうか。

 その反例として、テーパリング開始前の米長期金利の上昇と、テーパリングが始まってからの米長期金利の低下がある。これは中央銀行による国債の買入れという需給による直接的な影響ではなく、FRBの金融政策の思惑で長期金利が揺れ動くという実例に他ならない。さらに政策金利そのものの水準がたとえ利上げがあろうと、大きく引き上げられることが考えづらいことで長期金利の上昇が抑制されている面もある。

 これは日本でも同様の事例が存在していた。2006年の量的緩和の解除とゼロ金利政策、さらに2007年の追加利上げの際の長期金利の動きである。この際も長期金利はほとんど動揺を示していなかった。このときには日銀の国債買入れは減額していなかったこともあるが、この買入れそのものは現在ほど国債需給に影響を与えていたわけでもなかった。それよりも政策金利の0.25%、0.50%程度への引き上げは長期金利を大きく上昇させる要因とはならず、その後の政策金利の引き上げは困難となりうるとの観測が長期金利の抑制要因となったと思われる。

 ゼロ金利下での日銀による国債買入れそのものがどのように長期金利に影響を与えるのか。このひとつの事例が2003年6月のVARショックと呼ばれる長期金利の振れがあった。政策金利がゼロで抑えられているなか、国債市場での需給に日銀が絡んでくるとなれば、相場がそれで多少変動することはありうる。しかし、それもあくまで一時的な振れでしかないとの見方も可能ではなかろうか。

 ここにきてドイツやフランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、アイルランドなどの長期金利が過去最低を更新している。これはなぜか。言うまでもないが、こちらもECBの掌のなかでの動きと言える。欧州の信用リスクの後退で、今度はリスクプレミアムも減少しつつあり、その取り合いも含めての長期金利の低下といえる。ECBでは量的緩和の可能性が意識され国債需給に対する期待もあろうが、それよりも政策金利の引き下げを含め、先行きかなりの期間、政策金利が超低位で抑えられるとの見通しが背景にあると思われる。

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by nihonkokusai | 2014-08-27 09:39 | 債券市場 | Comments(0)

間違っているのは市場か中銀か

 先日、日銀の動向に詳しい方とお話する機会があり、その際に市場が間違ってるのか、それとも中央銀行が間違っているのか、ということが話題となった。

 22日のジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演内容は、予想されたように利上げの時期に言質を与えないものとなった。しかし、もともとイエレン議長はハト派(金融引き締めには慎重派)とされていた上に、ジャクソンホールの前に公表されていたFOMC議事要旨が利上げを意識させる内容となっていたことで、ハト的なバランスを取るとの見方もあった。しかし、その内容は中立ではあるが、利上げの可能性を意識させるものとなっていた。

 FRBの内部でも利上げに向けた下地をつくろうとする機運が高まっているとの報道も出ており、アトランタ連銀のロックハート総裁はロイターとのインタビューで、来年前半から半ばの利上げ開始をFRB内で本格的に議論していると述べていた。

 市場では今年10月のテーパリング終了と、来年のFRBの利上げを織り込みにきていると思われるが、それにあまり反応していない市場が存在している。金利に直接関わるはずの米国債券市場である。テーパリング開始で米長期金利は一時3%をつけたものの、その後、テーパリングは着々と進み、利上げが視野に入っているにも関わらず、米長期金利は2.4%あたりでうろうろしている。

 テーパリングが開始されたということは、月々のFRBによる米国債やMBSの買いが減少していることになる。それでも米国債が下落しないのは、その分の買い手が存在しているためともいえる。それは誰なのか。リーマン・ショック、欧州の信用不安に代表されるふたつの大きな危機により、金融機関などはより安全な資産を購入せざるを得なくなったにも関わらず、格付け等からの安全資産の割合が減少しており、その分、米国債への需要が存在しているのでは、との声も聞こえた。

 確かに個別の需給関係が相場に影響を与えるにしても、そもそも米国債には安全資産としての需要が存在している。さらにFRBによる買いだけでなく、そのQEをせざるを得なかった状況によるリスク回避の動きも影響していたはずである。それに伴い、米長期金利は2%を大きく割り込んだ。その際、FRBに国債は買われてしまった上に、金利の低さもあり、別の資産に資金を投じた投資家もいたと思われる。

 テーパリングの開始で米長期金利は多少なり上昇したこともあり、FRBに代わり米国債を購入する投資家が再び現れていたとしてもおかしくはない。このためテーパリングが着々と進んでも米国債の需給は揺るぎもしないということになるのかもしれない。

 それでも利上げが意識されているにも関わらず、米国債はそれを材料視して売られないのか。米国債が売られないということは、利上げなどできるわけはない、との見方が反映されたものとの見方もできる。先行きのファンダメンタルズの予想は市場が正しく、FRBが正常化を急ぎたいあまり期待ばかり先行させているとの見方もできなくはない。しかし、ファンダメンタルズの予想については、民間予想よりも中央銀行に分があることは確かであろう。特にFRBは人も手間もかけている上、自らも経済指標を発表する立場にもいる。

 長らく利上げを経験しておらず、それにどう反応すべきかわからないという面もないとはいえないが、米長期金利が落ち着いている理由としては、利上げを織り込みに行くことは時期尚早と考えているためではなかろうか。

 利上げについて本格的な議論が始まり、具体的な時期について、はっきりとした予想が出てくれば、長期金利にも影響を与えうる。ただし、その利上げ幅は0.25%程度に抑えられるとならば、自ずと米長期金利の上昇幅もそれほど大きくなることは考えづらい。

 そもそも論として、長期金利にもっとも影響を与えているのは中央銀行の政策金利であるとの見方もできる。それを如術に表しているのが日本の長期金利ではあるが、それについては後日確認するとして、FRBの政策金利が変更されると確信されるまでは、米長期金利の低位安定は続く可能性はある。むろん、そこに何らかのリスクプレミアムがオンされるとなれば話は違ってくる。

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by nihonkokusai | 2014-08-26 09:27 | 中央銀行 | Comments(0)

7月は外国人が円債を大幅買い越し

 日本証券業協会が20日に発表した7月の公社債投資家別売買高(除く短期証券)によると都銀は4527億円の売り越しとなった。5月、6月は2か月連続での買い越しとなっていたが再び売り越しに転じた。国債投資家別売買高をみると7月は中期債主体の売り越しとなっており、長期や超長期のポジションはあまり変化せず。

 地銀は5955億円の買い越し。6月は1531億円の売り越しとなっていた。6月は長期債を大きく売り越していたが、再びその長期債主体に残高を積み上げた格好に。

 信託銀行は5184億円の買い越し。6月は1兆871億円の買い越しとなり、業態別では最大の買い越しとなっていたが、7月は買い越し額は6月よりは減少していた。7月は中長期債主体の買い越しに。

 信金は3928億円の買い越し。6月の6919億円の買い越しからは減少。こちらは長期・超長期債主体の買い越し。

 生損保は5444億円の買い越し。6月は7680億円の買い越し。引き続き超長期債主体に買い越していた。

 投資信託は4945億円の買い越し。6月は6385億円の買い越し。こちらは引き続き中期債主体の買い越しとなっていた。

 今回目立っていたのは外国人の買い越し額であった。7月は1兆2821億円もの買い越しとなっていた。ちなみに6月は715億円の売り越し。7月の買い越しは長期債主体ながら万遍なく買い越しとなっていた。超長期債が2304億円、長期債が6465億円、超長期債が3948億円のそれぞれ買い越しに。

 債券相場は7月も上昇相場が続いていた。7月17日にウクライナ東部でマレーシア航空機が撃墜された。さらにイスラエルがパレスチナ自治区ガザに対する地上作戦を開始するなどしたことで地政学的リスクが強まり、安全資産として日本国債を含めて国債に買いが入ったとみられる。

 今回の投資家別売買状況をみても、都銀は売り越しとなったものの、ほかの業態は総じて買い越しとなり、外国人もリスク回避の動きから大きく買い越していた。さらに日銀による国債買入もあるため、好需給が継続していた。

 8月に入ってからも債券相場は膠着感を強めながらじりじりと上昇し、10年債利回りは0.5%を割り込んだ。しかし、8月18日に先物の日中値幅が4銭と1988年以来の狭いレンジとなったあたりから、やや地合いが変化し調整局面入りした。

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by nihonkokusai | 2014-08-25 08:12 | 債券市場 | Comments(0)

欧米の中央銀行の利上げは歴史的な出来事に

 日米欧の中央銀行のなかで、イングランド銀行とFRBが先に出口に向かい、金融政策を正常化させてくると予想される。イングランド銀行は早ければ年内にも利上げを実施すると予想され、FRBも10月にテーパリングを終了させて、こちらも来年には利上げを実施してくると思われる。それでは日米欧の中央銀行が利上げを行うとすれば、いつ以来となるのであろうか。

 最も近い時期に、利上げを行っていたのがECBであった。ECBが政策金利を最後に引き上げたのは2011年7月。政策金利を1.25%から1.50%に引き上げている。ユーロの信用危機の真っ最中であったが、インフレ警戒のために利上げを実施したのである。

 イングランド銀行が最後に政策金利を引き上げたのは2007年7月。政策金利を5.50%から5.75%に引き上げている。インフレ圧力の強まりで、2007年3月の英消費者物価指数は政府が設定するインフレ目標の上限を突破していた。興味深いことにその前の月の6月のMPCでは当時のキング総裁は0.25%の利上げに一票入れたものの、結局5対4で利上げは見送りとなっていた。

 米国が政策金利であるFF金利を引き上げたのは2006年6月が最後であった。この際に5%から5.25%に引き上げている。当時のバーナンキ議長は同年2月1日に就任し、6月のFOMCまで3回連続で利上げを決定していた。グリーンスパン議長のときから17会合連続で利上げを実施してきたが、このまま利上げを継続すれば、「住宅市場が減速する中で引き締めを続けることになる」と警告し、8月に利上げ停止を主導したとされている。

 それでは日銀が最後に利上げをしたのはいつであろうか。それは福井総裁の時代で2007年2月であり、政策金利を0.25%から0.50%に引き上げていた。その前の利上げが2006年6月のいわゆるゼロ金利政策の解除であり、政策金利を0.25%に引き上げている。そのタイミングでFRBは最後の利上げを決定していたのである。

 イングランド銀行のカーニー総裁、FRBのイエレン議長はともに利上げというか金融引き締めの経験はない(ただし、カーニー総裁はカナダ中銀総裁時には利上げ経験あり、最後は2010年9月)。ECBのドラギ総裁も就任が2011年11月であったため、利上げの経験はなし。日銀に至っては黒田総裁はもちろん、前任の白川総裁も利上げの経験はなかった。

 イングランド銀行が利上げを決定すれば2007年7月以来となり、FRBが利上げを決定すれば2006年6月以来となる。これはこれで歴史的な出来事になると言ってよいのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-08-23 09:04 | 中央銀行 | Comments(0)

イングランド銀行とFRBの利上げ時期

 20日に発表された7月6~7日開催のイングランド銀行MPC議事要旨によると、ウィール委員とマカファーティー委員が0.25%の利上げを主張していたことが分かった。

 イングランド銀行は13日のインフレ報告で、賃金の伸び見通しを大幅に引き下げ、賃金の動向が利上げの時期やペースを決定する上で重要な要素になるとの方針を示した。これを受けて、市場では年内にも利上げかとの観測がやや後退していた。さらに英国の7月の消費者物価指数は前年同月比で1.6%上昇。前月比で0.3%の低下。イングランド銀行の物価目標を下回っており、これでも早期利上げ観測がやや後退していた。

 ところが7月6~7日のMPCでは、9人の委員中2人が利上げを主張していたのである。もちろん他の7名は利上げにには反対し結果として現状維持となった。ここで注意すべきは、これまでの全員一致が崩れてきたことにある。MPCにおいて政策金利の決定で票が割れるのはここ3年で初めてとなる。つまりカーニー総裁となって初めてのケースということにもなる。金融緩和はさておき、金融引き締めについては市場に負のインパクトをなるべく与えないようにするため、徐々に市場に浸透させることも必要となる。ここにきての利上げの票が出てきたということは、利上げに向けての下準備とみることも可能となる。

 景気・物価動向によるとは言え、今回のイングランド銀行のMPCの票割れは利上げ時期がそう遠くないことを意味しており、年内を含めてその可能性がある。ただし、利上げ幅は0.25%程度と控え、追加利上げに関してはかなり慎重になることも予想される。ここで必要とされるのは正常化に向けた一歩である。

 20日には7月29~30日開催のFOMC議事要旨も発表された。ここでは、労働市場が予想以上に急速な回復を遂げているとし、改善がさらに加速すれば利上げを前倒しするのが妥当だという見方を示していた。利上げ開始時期の見通しについては今後の動向次第ともしていたが、正常化の戦略もすでに議論されていた。

 イエレン議長は市場で極端な早期利上げ観測が強まることを避けるため、利上げ観測に対してはバランスを取るような発言をしていた。利上げは景気や物価動向次第であり、特に時期などを前もって決めているわけではないことを主張していた。しかし、テーパリングが10月にも終了することで、次のステップに向けての準備も進めていることも今回のFOMC議事要旨からはうかがえる。

 政策の正常化の戦略についての議論では、フェデラルファンド金利を引き続き主要な政策金利とすることが望ましいとの認識を示した上で、FF金利を目標レンジに誘導するための主要な手段として超過準備の付利を利用する可能性を指摘し、翌日物リバースレポファシリティーの一時的な利用も寄与するだろうとの考えを示した。

 NHKではこのFOMCの議論を受けて、「ゼロ金利解除前倒し議論」とのタイトルで記事を掲載していた。テーパリング終了がいわば2006年の日銀で言えば量的緩和解除となり、次のステップの利上げは当時の日銀でいうところのゼロ金利解除となる。確かにゼロ金利解除のほうが日本人にはピンとくるかもしれない。FRBのゼロ金利解除も正常化に向けての第一歩となる。量的緩和解除はあくまでそのためのひとつの準備段階に過ぎない。

 イングランド銀行は早ければ年内、もしくは来年1~3月あたりを利上げのタイミングの目安にしているのではないかと思われる。FRBについては10月の量的緩和解除からそれほどの時を置かず、イエレン議長の失言とされるものにもあった半年後がひとつの目安になると考えている。そうであれば来年4~6月あたりがFRBのゼロ金利解除の予想時期になるのではなかろうか。1年以上も時期を空けることのほうがむしろ考えづらい。このあたり、2006年の日銀の動向も参考になると思われる。

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by nihonkokusai | 2014-08-22 09:42 | 中央銀行 | Comments(0)

過去の債券バブルの崩壊例

 日本の債券市場では、これまで大きな価格の変動、特に相場下落の事例はいくつか存在している。古くは1979年のロクイチ国債の下落があったが、1998年末の運用部ショック、2003年のVARショックと呼ばれた債券相場の急落が、業界関係者には有名である。しかし、債券バブルの崩壊例としては1987年の事例がある。

 債券市場や為替市場での大きな節目となっている年がいくつか存在している。そのひとつが1985年である。この年、銀行による国債のフルディーリングも開始された。国債を大量に保有している都銀などの銀行が国債市場に本格的に登場することで、公社債の売買高は急増する。この年の10月には東京証券取引所に日本ではじめての金融先物市場が誕生した。長期国債先物取引(債券先物取引)が開始された。債券先物取引においては、東京証券取引所会員の証券会社だけではなく、国債を大量に保有している銀行の参入が、特別会員という資格で認められた。金融機関による国債のフルディーリングの開始と債券先物取引の開始により、国債の流動性が向上し債券市場は急速に拡大したのであった。

 1985年のプラザ合意後の急激な円高に対処するための、度重なる利下げによる未曾有の金融緩和に加え、公共事業拡大による財政出動が要因となり、株式市場などでもバブルが発生する。金融緩和や円売り介入などからの余剰資金が、設備投資などには向かわず、株や土地に向い典型的な資産インフレを引き起こした。円高対策のための日銀の金融緩和により、バブルを加速させる結果となり、これを受けて国債の価格も大きく上昇した。

 1986年11月に国債の指標銘柄になったのが10年国債の89回債であった。89回債はいわゆる野村軍団を中心として積極的な売買が仕掛けられ、債券のディーリング全盛期を迎えた。1987年4月には証券会社や都銀などが積極的に自己売買を繰り返した結果、公社債の店頭売買高はひと月で1000兆円を超えた。

 1987年2月に日銀は公定歩合を引下げて2.5%とした。5月14日に89回債は10年債でありながら、短期金利の代表的な金利でもあるこの公定歩合の2.5%に接近し、2.550%をつけた。ここで債券相場はピークアウトし、債券バブルは崩壊した。野村證券のチーフディーラーが、公定歩合が高すぎるとコメントしたことが、ひとつのきっかけとされた。

 債券バブルの崩壊で金融機関のみならず、事業法人でも大きな損失が発生した。1987年9月2日、タテホ化学工業が債券先物で286億円もの損失を出したことが明らかになり、このニュースで債券相場は暴落した。いわゆるタテホショックである。債券先物は1987年5月13日に118円59銭という高値をつけていたが、10月5日には94円59銭まで下落した。5か月あまりで実に24円もの下落となったのである。

 この債券バブルの崩壊の原因は、国債の流動性が強化され、債券市場関係者が総ディーラーになったのかといわれるほどのディーリング相場が形成されたのが大きな要因であった。しかし、結果としてそのディーリング相場を主導したところが、崩壊のきっかけを作ったことも確かであった。

 現在の債券市場がバブルであるかどうかは弾けてみないことにはわからない。しかも市場参加者主導ではなく、日銀主導の相場形成となっている。それならば、もし債券バブルの崩壊が生じるとすれば、日銀の動向がきっかけになるであろうことも確かである。どのようなきっかけとなるのかはわからない。追加緩和かもしれないし、出口政策かもしれない。しかし、いずれ大きな相場変動が起きるであろうことは確かかと思われる。

 ちなみに1987年の債券バブルの崩壊は意外な出来事でいったん収まることになる。この年の10月19日のブラックマンデーである。

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by nihonkokusai | 2014-08-21 09:20 | 債券市場 | Comments(0)

債券先物の日中値幅が1988年以来の記録的な小ささに

 8月18日の債券先物の日中値幅は4銭しかなかった。これほど小さい値幅はあまり記憶がなかったため、少し過去の値幅を調べてみた。確認しておくと、債券先物とは大阪取引所に上場している長期国債先物であり、その値幅とは中心限月の前場と後場の、高値と安値の差のことである。イブニング・セッションの値動きは前営業日の夕方から夜間にかけてのものとなるため、これは含まない。

 長期国債先物のデータは、債券のディーラー時代に後輩と共同して、1985年の上場来の前後場の四本値、出来高のデータをすべてエクセルに打ち込む作業を行った。それを現在まで継続させているため、手元にデータが存在する。ただし、すべて手作業ということで誤入力している可能性もあった。このため、今回知り合いの市場参加者の方にも確認していただき、過去のデータから日中値幅の小さいものを出してみた。

 長期国債先物については流動性は極めて高く、取引時間中はほぼ値動きがある。出来高も1億円単位で少なくとも1兆円程度はある。日経平均先物やドル円と同様の流動性が存在していると考えてよい。ちなみに昨年1月から12月までの債券先物の日中値幅の平均は32銭となっていた。

 1985年10月の上場以来の債券先物の最小日中値幅はゼロ銭である。これは東証上場直後に起きていた。1985年10月25日と26日、つまり先物上場後6・7営業日目に取引高ゼロ、値幅ゼロ銭を記録していた(26日は土曜日で当時は半日立会)。翌営業日となる28日も取引高はわずか475億円で値幅はゼロ銭となっていた。

 1985年9月22日にプラザ合意があり、日銀は10月25日に短期金融市場を操作して第二の公定歩合といわれた短期金利の高め誘導を実施した。短期金利を高くすることで、ドル売り・円買いの動きを誘ったのである。債券先物にとってこれは最悪のタイミングであった。短期金利を無理やり上げたことで、長期金利にも上昇圧力が加わり、債券が売られる展開となったのである。債券先物に大量の売り注文が殺到。債券先物はスタートしたばかりであり、ご祝儀による大量の買いポジションを抱える証券会社が多かった。1985年10月24日の債券先物は101円63銭で引けていたが、25日、26日は値が付かず、ストップ安で張り付いたままとなった。28日にようやく96円63銭で寄り付いたが、値幅はゼロであったのである。

 このようにストップ安やストップ高を背景に、値幅ゼロ銭というのは、ほかにも1986年1月25日にもあった。土曜日で半日立会で取引高520単位あったが、99円74銭の1本値。前日比で1円高となっており、このころのストップ高安は1円値幅であったと思われる。日銀の公定歩合の引き下げに絡んでのストップ高ではなかったかと推測される(残念ながら当時の記録が手元にない)。

 1987年8月4日にもゼロ銭があった。先物の出会いは午後のみ、101円72円の1本値、取引高は16858億円。この日は前日比2円安となっており、やはりストップ安が原因と思われる。1987年5月に10年89回債が2.55%をつけて債券バブルが弾け、9月にはタテホショックが発生している。この日の記録も手元にないが、タテホ絡みでの動きであった可能性がある。

 以上が債券先物の日中値幅の最低記録ゼロ銭となったケースである。都合5日、ゼロ銭との記録が残っている。

 次に小さい値幅は1988年8月10日の3銭であった。四本値は寄り付きが101円00銭、高値101円03銭、安値101円00銭、引けは101円00銭、取引高は25158億円。前日比でみると2円安となっていた。これもストップ安が絡んでいた。なぜこの日がストップ安となったのか、残念ながら記録がない。もしご存じの方がいらしたら教えていただきたい。

 その次の記録が、今回の2014年8月18日の4銭となる。今回はストップ安・ストップ高は絡んでおらず、お盆休み明けの月曜日であったとはいえ、まさに記録的な出来事であったということができる。

 なぜこれほどまでに債券先物の日中値幅が小さくなってしまったのか。一番の要因は言うまでもなく日銀の量的・質的緩和による大胆な国債買い入れがある。さらに欧米での長期金利がフォローとなり、日本の長期金利もじりじりと低下し、コストなどを考慮すれば下限と意識されていた0.5%~0.6%近辺で張り付いてしまったことによる。日銀の国債買い入れにより流動性が後退したというひとつの表れでもある。

 この債券先物の記録的な値幅の意味するものとは何か。日銀の異次元緩和の副作用ともいえるものだが、中央銀行の金融政策は結果として国債買いにつながり、異常な相場を形成しているともいえる。このまま債券の値動きはなくなってしまうのか。債券市場の機能低下が続き、市場参加者も減っていくようであれば、もしもの際のショックアブソーバーがなくなることを意味する。国庫短期証券を加えると約1000兆円近い国債が存在する以上、流動性の高い債券市場を存続させておく必要があるが、どうもそれが怪しくなりつつある。これはつまり、いずれ何かしらの大きな反動が起きうることも意味していると思われる。

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by nihonkokusai | 2014-08-20 08:02 | 債券市場 | Comments(0)
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