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マネタリーベースを増やせば物価は上がるのか

 2日に日銀は6月のマネタリーベースを発表した。マネタリーベースとは日本銀行が供給する通貨のことであり、市中に出回っているお金である流通現金(日銀券発行高と貨幣流通高)と日銀当座預金の合計値となる。

 現在の日銀の金融政策の目標値としているのが、このマネタリーベースである。たとえば金融政策決定会合の公表文を確認すると、昨年4月の量的・質的緩和以前は「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す」となっていた部分が、量的・質的緩和以降は「マネタリーベースが、年間約60~70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」に変更されている。

 そのマネタリーベースが6月末に243兆4305億円となり、5か月連続で過去最高を更新した。これはもちろん日銀が金融政策の目標に向けて、大量の国債買入などにより資金供給を行っていることが主因である。また6月は国債の償還月にあたることや、四半期に一度の貸出増加を支援するための資金供給があったことも増加要因となった(日経QUICKニュースより)。

 今更ではあるが、では日銀は何のためにマネタリーベースを増加させているのであろうか。それはむろん消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するためである。実際に物価目標のコアCPIは今年4月に1.5%まで上昇した(消費増税の影響を除く)。5月はやや下がったものの1.4%となった。ただし、今後は円安などによる物価の押し上げ要因が後退するため、夏にかけて1%近傍あたりに低下する予想となっている。

 マネタリーベースを増やせば物価は上がるのか。これについては日銀のサイトのデータベースから、マネタリーベースと企業物価の前年比を1986年あたりからグラフ化して比べてみたところ、特に関連性はみられなかった。確かに2011年以降は連動しているかに見えるが、それ以前の動きから見るとたまたま重なっているように見える。
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 マネタリーベースを増やせば期待インフレ率が上がるのか。2日に日銀が発表した短観の「企業の物価見通し」の概要をみると、消費者物価をイメージ(除く消費増税の影響等)が全体では、1年後がプラス1.5%、3年後が1.6%、5年後が1.7%となっていた。コアCPIはすでにプラス1.5%に上昇しているが、短観のデータからは目標値には届いていない。

 マネタリーベースの増加に関わる大量の国債買入が、長期金利の低下を促しているとの見方もある。これについては日銀保有国債の残高と長期金利を時系列で比較してみたが、これも実は関連性は見られない。日本の長期金利は2006年あたりからじわりじわりと低下しており、緩やかな右肩下がりのトレンドとなっている。昨年の異次元緩和以降、急低下していたわけではない。
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 そしてもうひとつ気になることがある。現在、日銀とともに壮大な実験を行っているかに見える欧州中央銀行であるが、こちらは6月の追加緩和で日銀のような量的緩和という手段は取らず、利下げとマイナス金利打ち出してきた。

 ECBも追加緩和の目的は物価を上げることなのであるが、超過準備の付利を含めてマイナス金利を適用した。これはつまり、日銀でいえばマネタリーベースの増加に大きく寄与しているところの日銀当座預金の超過準備を、ECBは増やすどころか削減させることを目的とした。同じ物価上昇を目的としながら、結果としては正反対のことをしているのが日銀とECBといえる。どちらが正しいのか、これぞまさに壮大な実験場と言える。問題は両者ともその実験による副作用となる。

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by nihonkokusai | 2014-07-03 09:24 | 日銀 | Comments(0)

短観に見る消費増税の影響は限定的

 7月1日に発表された日銀短観によると、大企業の製造業の景気判断(DI)はプラス12ポイントとなり、前回4月発表のものから5ポイント下回った。4月の先行き予測の8ポイントよりは上振れたものの、事前予想をやや下回った。9月に向けた先行き見通しはプラス15となり、3ポイントの改善を見込んでいる。

 大企業非製造業DIはプラス19ポイントとなり、こちらも前回からは5ポイント下落した。9月の先行き見通しは19ポイントとなり、今回と変わらず。

 大企業製造業DIをみると予想は下回ったものの、9月にはそれなりの回復を見込んでいるなど、4月の消費増税による影響は大きな落ち込みとならず、再び回復すると見込んでいる。

 大企業製造業の内容を見てみると「木材・木製品」の落ち込みが大きく、9月に向けてもさらに低下するとしている(3月調査74→6月調査18→9月見通し4)。これは消費増税前の住宅への駆け込み需要が影響しているとみられる。木材・木製品ほどの落ち込みではないが、やはり増税前の駆け込み需要が影響してか「自動車」も大きく落ち込んでいる(36→13→14)。

 大企業非製造業については、これも消費増税の影響から「小売り」が落ち込んでいるが、先行きは多少の改善を見込んでいる(24→1→10)。宿泊や飲食サービスはそれほどの落ち込みとはなっていない(19→14→12)。

 今回の短観から見る限り、消費増税による影響を受けやすいところの落ち込みは厳しいもののそこを他の業種がカバーし、全体としてはさほど大きな落ち込みとはなっていない。

 また設備投資をみると、大企業・全産業の2014年度の設備投資計画(含む土地投資額)は前年度実績に比べ7.4%増となった。特に大企業製造業の設備投資計画は12.7%増となり、6月調査時点では2006年の16.4%増以来、8年ぶりの伸び率になった(日経QUICKニュースより)。

 日銀としては短観の数字を見て追加緩和を検討するようなことはないと思われる。むしろ日銀の描いたシナリオの想定内との認識を強めてくるのではなかろうか。足元の落ち込みよりも今後の回復具合、さらには企業の設備投資意欲といったものの方を重視してくると思われる。

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by nihonkokusai | 2014-07-02 10:54 | 日銀 | Comments(0)

地政学的リスクとは何か

 地政学的リスク(Geopolitical risk)は、地政学リスクとも呼ばれる。ある特定地域の政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりが、世界経済の先行き、というよりも足元の金融市場を揺るがすような時に使われる。

 地政学的リスクとの用語は、FRBが2002年9月に米国のイラク攻撃に対して使用して以来、市場で認知されたようである。地政学リスクとしては地域紛争の勃発とテロの脅威が代表として挙げられる。過去に地政学的リスクとして認識されたのは、イラクやイラン、イスラエルとパレスチナ問題、アフガニスタン、さらに北朝鮮の核問題などである。

 最近になって地政学的リスクとして取り上げられるようになったものに、ウクライナ情勢とイラク情勢などがある。ウクライナ情勢とは、ウクライナ国内でのロシア派と欧米に近い反ロシア派の対立によりクリミアが独立し、さらにウクライナ東部でも分離独立を目指す動きが出ており、そこにロシアも介入し国際問題化したものである。

 イラクに関してはスンニー派とシーア派の宗教対立である。アメリカが3年前に軍を完全撤退したことで、政府軍は火器、戦闘能力で上回る過激派組織に太刀打ちできなくなったことで軍事力の均衡が崩れ、内戦のような状況となっている。

 ウクライナ問題はロシアと欧米諸国の対立とともに、経済的にはウクライナを経由したロシアからの天然ガスの供給問題などが絡んでくる。ロシア国営ガス会社ガスプロムが6月に16日、ウクライナへの天然ガスの供給を停止した。これによる欧州へのガス供給に支障は出ていないが市場では地政学的リスクが意識された。

 イラク問題では6月18日に激しい戦闘が起り、イラク最大の製油施設、バイジ精油所が閉鎖された。これによる原油価格への影響が懸念された。ただし、実際には世界的に原油の備蓄は十分にあるため、原油の供給に直接的な影響が出ているわけではない。それでもその懸念だけで相場は動いた。

 地政学的リスクとは、現実に世界経済に直接影響を与えるケースもあるが、影響は出ていなくても懸念だけで相場が動くこともあり、現在のウクライナやイラクの情勢は後者の状態にある。ただし、相場の振れ方によっては、思惑的な動きも相場の動きを加速させることもありうる。相場が動いたことによって、地政学的リスクが高まったとの認識がもたれることもある。

 地政学的リスクと一括りにされている用語は、現実の影響についても吟味する必要がある。先行きの不透明感が強い分、思惑的な動きも入り安く相場の変動要因ともなりうる。ただし、思惑先行となる分、経済に影響が具体的に波及するようなことがないと、そのポジションは相殺され何事もなかったかのような結果となることも多い。

 現在のウクライナとイラク情勢についてもリスクは抱えており、ロシアや欧州、そして米国政府も巻き込んでいる。しかし、石油危機のようなショックをもたらすほどのものではないとも思われ、あくまで地政学的なリスク要因のひとつとして捉えておく必要があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-07-01 18:49 | 国際情勢 | Comments(0)

長期金利とCPIとマネタリーベース

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 ネットにはいろいろな情報がアップされているが、数値のデータとなると入手するのが難しいことが多い。もちろん金融に関わるものであればQUICKなどの端末から入手できるものも多いが、債券関係で言えば長期金利の日々のデータや債券先物の四本値などをネットから直接入手しようとしても容易ではない。

 そもそも日本の長期金利とは、どこが発表しているのかご存じであろうか。債券市場の関係者であれば今更何を言っているのかと言われそうだが、債券市場に関してそれほど詳しくない人にとって、長期金利がどこでどのような形で発表されているのかを知っている人は限られるのではなかろうか。正解は財務省、ではなく日銀、でもない。東証や大取でもない。正確に言えば日本の長期金利として「正式」に公表されている数字は存在しない。これは日本だけではなく海外も同様である。

 長期金利とは通常、10年国債の利回りを指す場合が多い。市場参加者が参考にしている10年国債の利回りは10年新発債の日本相互証券で出合ったものとなる。このため日本相互証券や日本証券業協会が業者のデータを元に集計し発表している15時現在の10年新発債の利回り(BB引け値・店頭気配)が日本の長期金利とされるものとなる。ただしもそれが集計され発表されるまでにタイムラグも存在し、だいたいのところは15時にBBで付いていた10年新発債の利回りということになろう。

 この長期金利の直近分はBBなどでもアップされているが、たとえば過去10年分をネットで集めようとしても、なかなか探し出すことは難しい。債券先物の価格データも同様である。注意すべきはその先物の価格データにはイブニング・セッションも含まれてしまうことである。当日の夕方以降のイブニング・セッションは翌営業日の約定分となるため、形式上は翌日の値動きに加算されてしまう。当日の日中の動きを正確に知りたいとなれば、イブニングの動きを別にして前後場だけのものを抜き出しておく必要がある。

 長期金利と債券先物のデータは自分で入力していることもあり、特に10年債利回りは多少、BBや日本証券業協会の引け値と違うところもあるかもしれないが、おおよそのところは自分で掴めた。

 今度はCPIの数字を掴もうとしたところ、これも総務省のデータベースなどからはなかなか見いだせなかった。いろいろと手を変え品を変えてなんとか見つけ出した。このCPIについては基準年の変更の影響とともに、今年4月からは消費増税の影響も加わる点にも注意する必要がある。

 長期金利とCPIのデータをExcelに入力し、そこに日銀のサイトにデータベースとしてアップされているものからマネタリーベースの前年比を出して比較してみた。つまり名目長期金利とコアCPIから実質長期金利のようなものを出して、それとマネタリーベースの変化と重ねてみたのである。

 その結果、何が見出せたか。結論から言えば何も関連性は見出せなかった。昨年の異次元緩和以降、マネタリーベースの前年比は大きく増加しているが、実質長期金利の低下は2009年8月あたりからすでに始まって低下基調にあった。マネタリーベースの増減が特に実質長期金利に影響を与えているようには見えない。

 さらにコアCPIとマネタリーベースだけを比べてみると、昨年の異次元緩和以降はたしかに似たような上昇となっている。しかし、それ以前は特に相関は見出せない。異次元緩和により、期待が発生し、それにより物価を素直に押し上げた、との説明も見方によっては可能かもしれないが、そう結論づけるにはデータが不足しているように思われるのである。

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by nihonkokusai | 2014-07-01 09:15 | 日銀 | Comments(0)
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