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黒田日銀総裁とイエレンFRB議長の道案内

 7月15日の日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持を全員一致で決定した。7月は展望レポートの中間評価を行うが、4月に比べて今年度の実質GDPが0.1%下方修正された。消費増税による落ち込みがやや想定より大きいとの見方とも取れるが、これによる市場への影響は限定的となった。

 黒田日銀総裁の記者会見では、夏場に向けた消費者物価指数(除く生鮮食料品)の行方に質問が集まった。6月23日の黒田総裁の講演の中で、「これから夏場に向けては、前年比プラス幅が一旦1%近傍まで縮小するとみられます」との発言があったためである。近傍との表現を使う場合には、その前後という意味合いが強い。つまり、1%近傍と言う表現には1%割れも想定しているとみられたことで、そこに質問が集まった。

 別に1%を割れたといっても、1%という数字に何かしら意味があるものではない。それで自動的に追加緩和を行う必要もない。しかし、何故か1%割れにこだわりがあったようで、それに対して黒田総裁は夏場に消費者物価指数のプラス幅が縮小しても1%を割ることはないと明言した。

 日銀の特に足元の消費者物価指数の予測は優れているとされる。ましてや、現在日銀は物価目標を掲げている以上、最も重視している経済指標であり、黒田総裁の今回の発言は日銀の調査結果を意識したものと思われる。円安やエネルギー価格による押し上げ要因が後退し、さらに携帯電話料金の改定の物価押し下げもあるが、ガソリン価格の上昇などが相殺するとの見解も示した。1%台前半での推移が続くとの日銀の読みに変化はないことになる。

 問題となるのは夏場以降の物価の行方となる。日銀は再び2%の目標に向けて上昇するとしており、そのシナリオ通りに進むのか。これまでの物価の動きの予想は民間よりも日銀の予想の方が近い結果となった。さらに日銀としては予想通りの緩やかな上昇が好都合である。物価が上がらなければ追加緩和を要求されやすくなるが、急速に2%に近づくと出口が意識されてしまうためである。

 FRBのイエレン議長は15日に上院銀行委員会で議会証言を行った。このなかで、労働市場には著しいスラックが依然見られ、インフレ率はなお当局の目標を下回っているとし、政策金利についてはテーパリング終了後も相当な期間、低水準で据え置かれる公算が大きいとした。ただし、労働市場の改善が予想より速いケースについては、早期利上げの可能性についても言及していた。

 日銀の黒田総裁には近傍の意味が問われたのと同様、イエレン議長の発言のなかでは「相当の期間」の意味が問われる。仮に現在のような環境が続くとして、相当な期間とはどの程度を考えているのか。まったくシナリオ用意されていないわけではなかろうが、それをぼかすことによって市場に対し不安や期待が発生することを防いでいる。相当な、との表現とともに、早期の利上げの可能性についても言及することで、バランスを取るというより、ある程度の裁量の余地があることを示し、市場に具体的な時期を想定させる材料を与えないようにしていた。

 地政学的リスクを含めてのリスク要因は多々あろう。しかし、過度な金融緩和政策が必要になくなりつつあることも確かである。15日発表された英国の6月の消費者物価指数は前年比1.9%上昇と予想を上回った。日欧米の中央銀行のなかで、真っ先に出口政策を実施してくるのがイングランド銀行となろう。年内の利上げの可能性も強い。10月にはFRBはテーパリングを終了させる。イングランド銀行の利下げが実施されれば、今度はFRBの利上げも市場では意識されよう。相当な期間との言葉は、金融危機時には1年以上との意識があったかもしれないが、現在の平時では半年程度だとしても相当な期間との表現になり得るのではなかろうか。正常化への道筋は待ったなしとなれば、それほど時を置くこともむしろ避けることも予想される。

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by nihonkokusai | 2014-07-17 09:41 | 日銀 | Comments(0)

上野東京ラインと異次元緩和の波及効果の違い

 昔、茨城から東京に通学や通勤で出て行くときに常磐線を使っていた。常磐線の終着駅は上野であるが、昔は東京直通の列車もあった。しかし、東北新幹線の工事により、秋葉原駅と神田駅付近で線路が分断され、東京駅に乗り入れることができなくなった。これは常磐線だけでなく、東北線や高崎線も同様であった。このため、東京方面に向かう場合には山手線や京浜東北線に乗り換えねばならず、それが上野・秋葉原間のラッシュ時の混雑に繋がった。たしかに異常な混雑であった。

 埼玉県などが宇都宮・高崎線の中距離電車の東京駅乗り入れについて要望し、茨城県などでもそのような看板を掲げていた。これはJR東日本自身にとっても悲願であったそうである。わずかな距離ながら、工費は400億円程度かかるものに何故、JR東日本が着手したのか。これはどうやら混雑回避のみが目的ではなく、これによる波及効果を計算に入れていたようである。この新線は上野東京ラインと呼ばれ、まもなく完成する。

 上野東京ラインの波及効果のひとつが、田町と品川の間での新駅の開設となる。この新駅と広大な敷地を利用した街作りには、その敷地を理由している車両基地をどこかに移設する必要がある。上野東京ラインを使うことにより、田町の車両基地を使っている車両を上野東京ラインで別の場所へ移動させることが可能となる。どうやら宇都宮線沿線にある東京都北区の尾久車両センター、さいたま市の東大宮操車場へ移動するそうである。

 さらに15日の日経新聞にも記事が出ていたように、羽田と東京を結ぶ新線にも関わってくる。この新線は上野東京ラインと接続して直接乗り入れ可能にする方針とか。田町と品川の間での新駅の開設による経済効果は大きく、さらに東京オリンピック開催を見据えて、羽田空港と都心が短時間で結ばれることによる効果も大きい。上野東京ラインはこのようなことを見据えたプロジェクトであった。

 さてこのような波及効果を意識したプロジェクトとして、2014年4月に実施された日銀の量的・質的緩和政策がある。確かにその効果として物価は上昇し、長期金利は抑えられ、景気も回復しつつあるように見えた。ところがその波及効果について、JRの新線による波及効果に比べて、その経路が明確ではない。日銀のマネタリーベースが増加すれば物価が上がるとされるが、上がってきた物価もここでいったんピークアウトする。しかし、マネタリーベースは増加し続ける。ここにどのような因果関係があるのであろうか。過去の物価とマネタリーベースの関連性を見ても、相関関係があるようには思えない。

 円がそれほど買われず、株価もしっかり、景気もまずまずで物価も上がって、長期金利も低位安定している間は、それが何に起因しているのかはさておき、アベノミクスの効果が出ているような印象を受ける。しかし、この好環境に多少なり異変が生じた際には、アベノミクスや日銀の異次元緩和の波及効果への疑問だけでなく、それによる副作用が表面化してくることも予想される。ほとんどコストを掛けず行ってきたリフレ政策だが、そのコストは後払いとなる可能性がある。その点も十分に考慮しておかなければならない。

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by nihonkokusai | 2014-07-16 09:44 | 日銀 | Comments(0)

市場に影響を与えそうな地政学的リスク

 サッカー・ワールドカップの決勝はドイツがアルゼンチンを破り、24年ぶり4度目の優勝を果たした。熱心なサッカー・ファンで知られるドイツのメルケル首相も決勝戦を現地で観戦していた。ワールドカップという大きなイベントが終わると再びいろいろなリスクが表面化してくる可能性がある。

 今回決勝で戦ったドイツとアルゼンチンであるが、ドイツについては財政の健全化が進んでいるのに対し、アルゼンチンではテクニカル・デフォルトの可能性が指摘されている。現在は30日間の利払い猶予期間入りとなっているが、いまのところアルゼンチンのデフォルトによる市場への影響は軽微とみられている。国際的なリスク要因になる懸念は大きくはないが、その動向も注意したい。

 ワールドカップの次回大会はロシアである。ウクライナ問題がそのころまで続くようであれば、欧米勢のボイコットもないとは言えない。ロシアのプーチン大統領は13日にブラジルのリオデジャネイロでドイツのメルケル首相と会談した。メルケル首相はワールドカップの決勝を観戦、プーチン大統領は次回の開催国の代表としてブラジルを訪れていた。

 この会談ではウクライナ軍と親ロシア派武装組織の停戦を実現する方法や、和平協議の再開などについて意見を交わしたとみられる(日経電子版)。政府専用機で巨額の費用をかけてのサッカー観戦に批判も出ていたメルケル首相だが、今回は仕事もしっかり入れていたようである。ウクライナの和平協議が多少なり進展すれば、ここでのリスクも後退する。

 ウクライナより、イラクやパレスチナなどの中東の方がむしろ気掛かり材料となりうる。政府軍とイスラム過激派の戦闘が続くイラクではクルド自治政府が独立に向け動きを活発化させており、北部のクルド、中部のスンニ派アラブ、南部のシーア派アラブへと分割される懸念も出ている。また、クルド人勢力が油田をも支配下に置いたことで原油価格への影響も懸念されている。

 中東情勢においては、イスラエルによるガザ地区に対する空爆が続き、陸上部隊投入を含めた軍事侵攻の可能性も出てきている。13日にパレスチナ自治区ガザ地区北部の海岸線に、イスラエル軍特殊部隊が上陸し、イスラム原理主義組織ハマスの長距離ロケット弾発射施設を攻撃しハマス側と交戦した。ガザでの地上戦が開始されており、こちらの情勢についても注意が必要となる。

 ここにきてリスク要因とされたのが、ポルトガルの大手銀行、エスピリト・サント銀行に対する懸念である。これについては11日にポルトガル首相とポルトガル中銀が「金融システムの安定に悪影響を及ぼすものではない」と表明。さらにエスピリト・サント銀行は創業者一族のファミリー企業への融資に対し、生じる恐れがある損失を十分に吸収できるとの見方を示した。これを受けてポルトガルの国債や株式市場は反発した。どうやら、この問題に関しては国際的なリスク要因となるようなことはなさそうで、懸念は後退しつつある。

 ところがウクライナとともにイラクでは国が分裂する懸念も出ている。そこにイスラエルとパレスチナのあらたな火種も出ており、動向次第ではこれらが地政学的リスク要因としてあらためて浮上してくる可能性もある。しかし、直接金融市場でのリスクを高めるものではない。リスク回避の動きが生じたとしても、一時的なものとなり、金融ショックなどをもたらすようなことは考えづらいのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-07-15 09:20 | 国際情勢 | Comments(0)

日本でマイナス金利が発生した理由

 7月10日に3か月物の国庫短期証券(TDB)465回の入札が実施されたが、その入札前の取引(WI)において、マイナス0.002%の出合いがあった。日本でもマイナス金利が発生したのである。

 国庫短期証券とは、昔は短期国債(TB)や政府短期証券(FB)と呼ばれたもので、現在はこの2つが統合されて国庫短期証券として発行されている。期間は2か月程度、3か月程度、6か月程度、1年程度に分かれている。国庫短期証券は割引形式で発行され、法人のみ購入ができ個人は買うことはできない。

 WIとも呼ばれる入札前取引とは、まだ入札もされず発行もされていない債券を取引するものである。10日に入札される465回が入札前の日本相互証券での取引において100円00銭0厘5毛という値が出合ったのである。TDBは割引債なので通常は額面の100円を上回ることはない。しかし、今回その額面を上回り、日本でもマイナス金利が発生したことになる。

 ただし、日本でのマイナス金利の発生は今回が初めてではない。2001年から2006年まで続いた量的緩和の時代にマイナス金利は発生していた。このときは日本の銀行が海外から資金調達する際にジャパンプレミアムが付いていた。つまり為替スワップ市場において、一部の外銀がマイナスの金利(円転コスト)で円資金の調達が可能となっていたため、為替スワップ市場で調達した円資金を、無担保コール市場をはじめとする短期金融市場にマイナス金利で放出したケースがあった(日銀の「短期金融市場におけるマイナス金利取引」などに詳しい)。

 さらに国債市場では業者は保有している国債の償還手数料が得られることで、償還が迫った国債を償還手数料の範囲内で投資家から購入し、その結果、マイナス金利が発生することもあった。ちなみに今回のTDBのマイナス金利発生時の価格は100円00銭0厘5毛だが、この償還手数料は6毛あり、これを購入した業者は結果として1毛儲かるかたちにはなる。1億円購入して100円となるとコストに見合うかどうかはさておき、表面上は損失にはならない 。

 何故、日本でもこのようなマイナス金利が発生してしまったのか。ECBはすでに政策金利の下限部分をマイナスとしたことでマイナス金利が発生した。しかし、日銀は政策金利の下限ともなる超過準備の付利はプラス0.1%のままであり、マネタリーベースを増やすためには、ここをマイナスにするなどもっての外という状況にある。

 しかし、今回の日本でのマイナス金利の発生の予兆はすでにあった。7月4日に新発3か月物TDBがゼロ%で出合い、8日に新発6か月物TDBが入札結果発表後の流通市場でゼロ%で出合っていたのである。これを受けて10日の3か月物TDBの入札では、マイナス金利もありうるとの観測とも流れていた。そのあたりも意識して、マイナス金利を付けてしまったということであろうか。

 この3か月物TDBの入札の結果は100円とか100円を上回るようなことはなく、最低落札価格99円99銭2厘0毛、平均落札価格99円99銭5厘4毛となって、TDBとしてはテール(最低落札価格と平均落札価格の差)が流れ(広がることを流れると表現する)、このため入札後の取引ではプラス0.025%が出合った。マイナス金利は一時的な弾みで付いてしまった格好である。

 それでは何故、これほどまでに短期債への需要が強いのか。大きな背景としては日銀の量的・質的緩和による国債買入があるが、それとともにECBのマイナス金利を含めたパッケージの緩和策も加わり、溢れた資金が日本国債にも広がったためとの解釈も可能となる。

 10日に発表された6月29日~7月5日の対外及び対内証券売買契約等の状況によると、海外勢は対内短期債投資を1兆6688億円の買い越しとなっていた。国内の銀行による期末のバランスシート調整や担保要因等による可能性とともに、ECBのマイナス金利海外からの需要があり、そこにベーシススワップなどが絡んだ需要が入り込み、一時的にマイナス金利の発生となったとみられる。

 しかし、入札ではさすがに国内の投資家はマイナス金利では、保有目的としての説明が難しくなる。そのため海外需要はあっても国内需要は引いてしまったことで、昨日の3か月物TDB入札の結果となったものと思われる。ただし、日銀の巨額買入の存在により、状況次第ではゼロ金利やマイナス金利での出合いは今後も発生しうると思われる。

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by nihonkokusai | 2014-07-14 08:12 | Comments(0)

FRBのテーパリング終了と利上げのタイミング

 9日に6月開催のFOMC議事要旨が公表された。このなかでテーパリングに関し、今年10月の会合で終了させることが示唆された。

 FRBは昨年12月のFOMCにおいて毎月の米国とMBSの購入額を850億ドルから750億ドルに減少させ、量的緩和の縮小、いわゆるテーパリングを開始した。今年1月には650億ドルに縮小。3月に550億ドルに減少、4月に450億ドル、6月17~18日に350億ドルまで減少させてきた。7月29~30日の会合で250億ドル、9月16~17日に150億ドルとし、10月28~29日に150億ドルを一気に減らしてゼロとしてくるものと予想される。

 テーパリング開始以降の米国債はむしろ買われるなど、大口買い手となっていたFRBの存在感が薄れてきても、足元の需給が崩れる様子はない。国債入札も順調にこなすなど、少なくとも米国債の動向がテーパリングの障害となってはいない。ただし、これをみて日銀のテーパリングもさほど問題ないだろうとみるのは早計である。

 テーパリングの終了時期を10月に想定するとなればあと3か月しかない。その間のFOMCは今月分を含めてあと3回。テーパリング、つまり日本で言えば量的緩和政策の解除を行ったあとには、ゼロ金利政策の解除が控えている。これにより非常時の金融政策から正常化に向かうこととなる。

 正常化に向けての政策金利の引き上げについて、可能性は示されたものの、具体的な時期への言及はなかった。ただし、その準備段階としてリバースレポの活用や超過準備に付利される金利の操作などが検討されているようである。

 正常化に向けては、膨れあがったFRBのバランスシートの縮小も課題となる。日銀は2006年の量的緩和とゼロ金利解除の際に国債買入額は減少させていなかったが、日銀保有の国債残存額はその後減少している。買い入れる年限等を調整して自然なかたちで減少させていたものと思われる。

 4.2兆ドルにも及ぶ保有証券をどのようなかたちで減少させるのかもFOMCでは議論されていた。金融市場、特に米国債券市場に影響を与えないようにするためには、国債の売りオペという手段は技術的には可能でも選択肢には入れたくないであろう。それよりも自然体で減少させるには、再投資の打ち切りが選択肢となる。

 これについても利上げ開始の前か後かにするか意見が割れていた。テーパリング終了後、いきなり再投資の打ち切りもアナウンスされてしまうと、利上げ観測が急速に強まり、金融市場を混乱させる要因ともなる。むしろ利上げ時期を少しずつ明確にさせて市場に織り込ませた上で、利上げと同じタイミングで再投資の打ち切りも行う方が自然に見える。

 その利上げの時期であるが、イエレン議長の失言とされる半年後がひとつのサインとなっている。あのタイミングで具体的な時期に言及してしまったことはまさに失言であったかもしれないが、半年程度を想定していたことは確かであろう。その際には日銀の2006年の量的緩和解除からゼロ金利解除までが約4か月程度であったことも参考にされたと思われる。

 ここは慎重に事を運ぶ必要はあるが、正常化に向けた道筋を付けるためには、あまり先送りもしたくはない。まして1年も掛けるようなことは考えづらい。今年10月にテーパリングを終了できれば、来年前半での利上げを想定している可能性は高いのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-07-11 09:15 | 中央銀行 | Comments(0)

日本版テーパリングは可能なのか

 7月8日の中曽日銀副総裁の講演「Japan's Economy and Monetary Policy」の邦訳が日銀のサイトにアップされた。内容は昨年4月の日銀による量的・質的緩和政策による成果を中心としたものである。

 白川前総裁から黒田現総裁に代わり、これまでの日銀の考え方が大きく転換したが、その転換の意味を知るには日銀出身の中曽副総裁の見方は興味深いものとなる。しかし、副総裁という立場上、これまでの黒田総裁の発言等に沿ったものになっていることは致し方ないところではあろうか。

 この1年の成果として、量的・質的金融緩和は所期の効果を発揮し、日本経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっているとしている。量的・質的金融緩和導入時にマイナス0.5%だった消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、5月にはプラス1.4%まで改善した。これには需給ギャップの改善と、中長期的な予想インフレ率の上昇が背景にあったとしている。ただし、次のようなコメントも加えられている。

 「夏場にかけては、これまでの円安やエネルギー価格の上昇の影響が減衰していくため、プラス幅が一旦縮小し、その後再び上昇基調に復する可能性が高いことは付言しておきたいと思います」

 上記の発言は黒田総裁もしていたが、ここにひとつ矛盾が存在する。物価の上昇には、需給ギャップの改善と、中長期的な予想インフレ率の上昇というメカニズムが働いたとしておきながら、「これまでの円安やエネルギー価格の上昇の影響が減衰していくため」というのは何であろうか。

 物価上昇の要因として円安やエネルギー価格の上昇が少なくとも0.5%程度はあったということではなかろうか。さらに昨年秋にかけての物価は何もせずともプラス0.5%あたりまで上昇するとの予想もあった。つまり仮に異次元緩和による2つのメカニズムが働いたとしても、それは0.5%程度の引き上げであったとの見方もできる。この0.5%にしても、直接的ではないにしろ円安等による原材料価格の上昇などが影響していた可能性もありうる。このあたりの分析は日銀が最も得意としているところかと思うが、「円安やエネルギー価格の上昇」による影響を触れないあたり、オブラートに包んでいるようにしか見えない。

 そして、もうひとつこの講演で気になったのが、出口戦略である。国債買入は財政ファイナンスではないことを強調するのは立場上は当然として、我々は量的緩和からの出口を経験した唯一の中央銀行であり、私は当時、金融市場局長として実際に出口を完了させていると中曽副総裁は発言していた。

 たしかに2006年3月に日銀は量的緩和の解除を行っている。しかし、日銀はすぐに削減可能な当座預金残高を目標としていたため、解除は極めて容易であった。ただし、この際に国債の買入は減らしていない。減らせば国債市場に多大なる影響を与えると危惧されたためである。

 参考までに1998年末の運用部ショックと呼ばれた国債の急落は、資金運用部の国債買入の打ち切りがひとつの原因となった。日銀の国債買入の減額は困難を極めるという見方は昔から強い。このあたりも意識してか、福井総裁当時は当座預金の残高目標を何度か引き上げても、国債買入はそれとなく現状維持にさせていたのも、出口を意識していたためと思われる。

 米国はテーパリングを着々と進めているが、果たして日本版テーパリングは可能なのか。これは非常に大きなテーマとなりうる。物価はその要因が何であれ、確かに上がってきている。もし2%近くまで日銀の想定通りにいった場合に、長期金利はどう動くのか。ここ15年間低位安定していた長期金利は日銀の金融政策により抑えられていた。いわば日銀の金融政策という鎖に縛られていたとも言える。それが解き放たれたとき、日本の財政問題が大きくクローズアップされる懸念が出てくることになる。出口政策、特に国債買入の取り扱いはかなりの難題となりうるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-07-10 09:35 | 日銀 | Comments(0)

日本の長期金利の低位安定はいつ始まったのか

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 いまさらながらではあるが、過去の長期金利の推移と長期金利に影響を与えそうなものの推移をいくつか比較してみた。

 たとえば国債の発行残高と長期金利を比較してみたところ、かなり相関があるように見えた。国債の残高が増えるほど長期金利は低下しているのである。これだけをみると国債の残存額を増加させれば長期金利は低下するという奇妙な定義が見出せる。むろんそのような定義は成り立つはずはない。むしろこれだけの発行残高があっても長期金利は低位安定しているという事実を示している。その背景に何があるのか。

 日銀はデフレ脱却のためとして物価目標を設定した。長期金利の低下にはデフレが大きく作用したとの見方もある。それでは消費者物価指数や企業物価指数と長期金利を比較してみると、関係性は見出せないのである。これはここにきて物価が上昇しても長期金利が上がらない事実からも明らかである。

 名目成長率と長期金利の比較では、さすがに関連性がうかがえる。しかし、こちらも最近では名目成長率が上昇しても長期金利は上がってこない。これは日銀の異次元緩和による大量の国債買入が影響しているとの見方もあるかもしれない。つまり日銀の金融政策が長期金利に与える影響が大きいということになる。

 そこで長期金利と日銀の政策金利を比べてみたところ、その傾向にはかなり関連性がうかがえた。日銀の政策金利は1999年2月のゼロ金利政策あたりから一時的に多少上がることはあっても、ほぼゼロ近傍(0.1%から0.15%)で推移していた。ゼロ金利政策の間には、量的緩和や包括緩和、量的・質的緩和なる政策はあったが、その間の政策金利はゼロ近くに張り付いていたことになる。その間の長期金利も2%以下で張り付いていたのである。

 この政策金利の動向、さらに発行額が増加してもそれを買い入れる投資家ニーズの存在が超低位の長期金利を形成していると思われる。そして、市場参加者の間では長期金利には財政リスクプレミアムはまったく意識されていない点にも注意する必要がある。

 長期金利の推移をみてみると、ひとつの変化点が伺える。それは低下前のピークとなった1990年とそれからの低下トレンドがいったん収まった1998年である。

 長期金利が急低下したのは物価の下落などが原因ではなく、バブル崩壊による日本経済の構造変化に要因が求められよう。

 国債に資金が集中しやすい環境のなかで、バブル崩壊後の景気の悪化もあり国債発行は急増した。さらに1998年には日本国債の格下げもあった。この格下げそのものも長期金利のデータと比較したところ、まったく関連性は認められない。ただし、1998年には格下げとともに日銀の金融緩和もあって長期金利の1%割れがあり、そこに国債の大きな買い手であった資金運用部の国債購入額の減少というニュースが飛び込み、国債が急落するという資金運用部ショックが起きた。

 この運用部ショックが国債管理政策の強化に繋がり、それがさらに長期金利の低位安定に繋がったといえる。

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by nihonkokusai | 2014-07-09 09:47 | 債券市場 | Comments(2)

ECBの新政策で膨らむ国債バブル

 7月4日に3か月物国庫短期証券(TDB)が買い進まれ、ゼロ%で取引が成立した。新発3か月物がゼロ%で取引が成立するのは、2005年11月29日以来だとか。ただし、これは前日の入札なども影響したショートカバー的な動きとみられ、何か材料が出たわけではない。たまたまそうなってしまったといったところか。

 これに対して4日にドイツの1年物の利回りがマイナスになったことには材料というか理由があった。この日はドイツだけでなく、ユーロ圏の国債の多くは買い進まれており、スペインの2年債利回りや、アイルランドの10年債利回りは過去最低を記録していた。

 7月3日のECB政策理事会で金融政策は現状維持となったが、新たな長期資金供給オペ(TLTRO)の詳細などが公表された。融資促進に目的を絞ったTLTROではあるが、その総額は計1兆ユーロに達する可能性があるとドラギ総裁は述べていることに加え、一部資金を国債購入に使うことができる。どうやらこのあたりが欧州の債券市場で材料視されたものとみられる。

 TLTROの期間は4年であるが、2年後に銀行の融資状況が調査されるため、実質2年となる。TLTROで想定される金利は0.25%であり、この資金で国債を購入できたとしても、期間2年程度まで、しかも利回りが0.25%を上回るとなれば、一部周辺国の国債に限られる。銀行は現在、通常のオペにおいてリファイナンス金利の0.15%で資金を借り入れることも可能であり、それほど今回のTLTROにより、国債を買うインセンティブが強まるようには思えない。それでも大量の資金が新たに供給されることは確かであり、それにより欧州の国債がさらに買い進まれたという図式か。

 国債利回りの低下も加わり企業の資金調達が容易になることは確か。もちろんTLTROを通じて銀行からの融資を受ける事も可能となるが、低金利での資金調達の環境が整備されても、借り入れ需要が伸びない限り意味はない。金利だけが低下するという、これは過去の日本で経験していたことの繰り返しとなってしまいかねない。

 いやいや、日銀の異次元緩和のように思い切った緩和策を採れば、企業の設備投資などが伸びる。現実に7月1日発表の日銀短観では設備投資計画が予想以上に伸びており、これぞ異次元緩和の効果、と短絡的に判断できるものではない。異次元緩和により期待に働きかける効果については疑問が残り、アベノミクスの登場はいろいろな意味でタイミングが良かった。政権交代に円安・株高、欧州リスク後退に東京五輪効果等が相まってのものと考えられる。

 ECBの新たな資金供給策の発表で、ユーロ圏の国債は再び買い進まれているが、この風景は2003年6月の日本の債券市場も連想させる。日銀の量的緩和政策で安心して国債が買えるとばかり、超長期債の利回りまで1%を割り込んだ結果、VARショックと呼ばれた国債価格の急落を招いた。欧州の国債市場のバブルは膨らみ続けている。もしここで欧州の国債バブルが崩壊した場合に、気が付けば長期金利が0.6%を割り込んでいる日本国債も無傷ではいられないかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-07-08 09:19 | 債券市場 | Comments(0)

ECB理事会の議事要旨の公表は画期的

 7月3日に開かれたECB政策理事会では、主要な政策金利は据え置かれ、予想通りの現状維持となった。長期リファイナンスオペ(TLTRO)について、今年は9月18日と12月11日に実施し、2015年3月から2016年6月には6回実施すると表明した。

 さらにこれまで毎月開催している理事会を、2015年からは6週間ごとの開催に変更するとし、理事会の「議事要旨」を公表するとした。

 これまでECB政策理事会の議事要旨および議事録は公表されていなかった。政策決定に関する各メンバーの投票結果についても公表されていない。これは、各国を跨いだ中央銀行という特殊性が意識されてのものとされた。しかし、透明性の強化という意味で、議事要旨の公表に踏み切るようである。これはECBにとって大きな決断であったと思われる。

 ちなみに日銀では金融政策決定会合の約1か月後に議事要旨が発表され、さらに10年後には議事録が公表される。議事要旨とは会合での発言内容をまとめたものであり、具体的な発言者の名前などは記されていない。それに対して議事録では、会議中の発言内容がそのまま発言者の氏名とともに記されている。

 FOMCでは議事要旨(Minutes)は会合の約3週間後に、議事録(Transcript)は5年後に公表される 。

 イングランド銀行のMPCの場合は、会合の2週間後に議事要旨が公表される。政策決定に関する投票結果は、この議事要旨において公表される。イングランド銀行ではMPCの議事を録音、それを活用して議事要旨を作成しているそうだが、数週間後の議事要旨公表とともに録音テープは破棄されていた。つまり議事の様子を一語一句記した記録は保存されていなかった。このためイングランド銀行はMPCの議事録を作成・公表することの是非を検討する作業部会で検討するようである。

 中央銀行の議事要旨や議事録は、金融政策の決定の過程をみるための重要な資料となる。先日、その金融政策の決定を巡る動きで興味深い事例があった。

 スウェーデンの中央銀行、リクスバンクは3日に政策金利を引き下げたが、この際に利下げ幅を巡って意見が異なる総裁が反対票を投じた。0.5%の利下げが決定されたのだが、イングベス総裁は0.25%の引き下げを求めた。つまり総裁はこの案に反対し、自らの提案は否決されたことになる。リクスバンクが独立した1999年以降、総裁が少数派となったのは初めてのケースとなるそうである。

 世界の主要の中央銀行の金融政策はほとんどが合議制を採用している。つまの多数決である。ただし、FOMCでは議案を提示できるのは議長一人だけといったように政策決定へのプロセスは微妙に異なる。

 日銀では政策委員はそれぞれ議案を提出することができるが、金融政策の変更の際には通常、議長提案によって行われる。議長は会合における政策委員の意見をまとめるかたちで議長案を作成し、政策委員のコンセンサスをとりまとめて、少なくとも賛成多数によって議長案が可決されることを見極めた上で行われる。もし議長以外の政策委員の意見が仮に真二つに割れた場合などは、まさに4対4ということになり、2008年10月31日の決定会合で現実に4対4となるが、その際は議長案で決定される。このように日銀では議長が少数派になることは余程のことがない限り考えづらい。

。それに対してイングランド銀行のMPCでは、採決にあたって頻繁に反対票が見られた。しかも、総裁自身が少数派となってしまったこともあった。今回、リクスバンクで総裁が少数派に回ったと言う結果をみると、中央銀行の最古参であるリクスバンクとイングランド銀行は各委員が自己の信念に基づいて正直に投票するという信念を貫いているかに思える。ただし、イングランド銀行は総裁がキング氏からカーニー氏になってからは微妙に変わってきたように思われる。

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by nihonkokusai | 2014-07-07 08:17 | 中央銀行 | Comments(0)

ドイツにできて日本はできない財政再建

 7月3日付けの日経新聞によると、ドイツが2015年に財政均衡を実現し、赤字国債の発行を46年ぶりに停止する見通しとなったそうである。このため赤字国債は今年に65億ユーロを発行するのを最後に姿を消すとされる。さらに債務そのものの削減も進め、直近まで80%だったGDP比の債務残高は2017年に70%を割り込む予想となっている。

 2014年のドイツの実質成長率は2%に達し、10%を超えていた失業率は5%台と域内の最低水準に下がった。2018年までの4年間で税収が16%も伸びる見込みとなっているが、これはあくまで小さく見積もっても、だそうである。

 まさにアベノミクス的な景気や雇用の回復であるが、もちろんこれは日銀の異次元緩和による影響では当然ない。ドイツは積極的に財政健全化を進めることで、ドイツそのものやユーロの信認を強めることになる。

 ユーロが成立する過程においては、参加国に財政規律が求められた。しかし、ユーロ参加国であったギリシャが財政状態を不正に隠蔽していたことが発覚し、2010年にギリシャ発のユーロ危機が発生した。このためユーロ圏ではより厳格な財政規律を確保することが求められた。さらにECBの積極的な金融緩和策も手伝い、ユーロの信用危機は去りつつある。しかし、ユーロ圏全体としては景気回復の足取りは鈍く、そのなかでいち早く景気が回復していたドイツにとっては、非常に好環境となり景気の回復とともに、財政再建もいち早く進む格好となった。

 これに比べて、やはりユーロ圏の信用危機の後退による恩恵を受けて、タイミング良く出てきた日本のアベノミクスであるが、ここには財政再建という矢は存在していなかった。日本もドイツのように、上昇気流に乗りやすい環境にあったが、その上昇気流をリフレ策というある意味禁じ手を使うことで、一気に生み出した。その結果が2012年11月あたりからの急激な円安と株高であり、世界経済の回復がさらに後押し、東京オリンピック開催決定というさらなるフォロー要因も加わって日本の景気も回復をみせ、円安要因などもあり物価も上昇した。

 それにより、2013年度の税収も予想以上の増加が見込まれ、甘利明経済再生担当相は「かなりの上振れが見込まれる」との見方を示した。さらに「その要因が構造的なものであれば、その一部をさらなる経済成長に投入するというのは理屈が立つ」と指摘したそうである。つまりは税収上振れ分を法人減税の財源にあてることに前向きな考えを示した(6月27日のロイター記事より)。

 法人減税を打ち出したものの、その財源は明記されなかったが、このあたりをあてにしていた可能性がある。このように日本では特に財政規律を守るべき指針はない。基礎的財政収支の目標もあくまで目標であり、このように税収が回復しても財政再建に充てるようなことがなければ、日本の財政再建が進むはずはない。それでも長期金利は0.6%以下にいるように、日本国債の信認が維持されているとかに見えるところが本来のリスクを覆い隠している。借金はいずれ返す必要があるものであり、膨らみ続ける債務バブルはいつか破裂するリスクを秘めている。

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by nihonkokusai | 2014-07-04 09:52 | 財政 | Comments(0)
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