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進撃のドイツ国債、長期金利は過去最低

 今年3月、子どもの本のノーベル賞と称される国際アンデルセン賞・作家賞を受賞した上橋菜穂子さんの代表作「守り人シリーズ」が実写ドラマ化されるそうである。我が家には「守り人シリーズ」が全巻揃っており、一番目の付くところに置いてあるぐらいのファンであり、3年かけて放映されるNHKドラマにいまから期待している。

 実写化といえば、一時ブームを起こした「進撃の巨人」も実写化されるそうである。「守り人シリーズ」は日本を含めた東洋らしきところが舞台となっているが、「進撃の巨人」はドイツらしきところが舞台となっている。そのドイツの国債が進撃してきた。10年債利回りが過去最低を更新したのである。

 7月29日の欧州の債券市場では、ドイツの10年債利回りが一時1.109%まで低下し、2012年夏につけた1.126%を割り込み史上最低利回りを更新した。2012年の夏といえば、ユーロの信用不安が渦巻いていたころであり、リスク回避の強まりにより、比較的安全な資産とされるドイツの国債が買われていた。しかし、今回はリスク回避によるものではない。その証拠に、この日はスペインとイタリア、アイルランドの10年債利回りも過去最低を記録していたのである。スペインとイタリアの10年債利回りはそれぞれ2.46%と2.64%、アイルランドの10年債利回りは2.17%に低下した。ちなみにこの日の米10年債利回りは2.46%であった。

 単純に長期金利だけでその国の安全性とかを比較はできないが、一時あれほど懸念されていたスペインの国債の利回りが米国債に並ぶという事態を誰が想像できたろうか。ポルトガルの国債については、BESの問題が再燃するなどして売られたものの、ユーロ圏の国債は総じて買われ、年内の利上げ観測が出ている英国の国債も買われるという事態になっていた。

 ユーロ圏の国債が買われた背景としては、ECBによる金融緩和策の影響が大きい。その緩和策の要因となっている物価や景気の低迷も影響していよう。31日にはユーロ圏の7月の消費者物価指数の発表が予定されるが、この数値如何では追加緩和の可能性も市場では意識されていたようである。

 ただし、多少CPIが悪化したとしても、簡単にはECBは追加緩和には動かないと思われる。日銀の異次元緩和ほどではないが、6月のECBのパッケージ緩和策はとりあえず出せるものは出した格好であり、日銀と同様に当面の間はその効果を見極めたいと思われるからである。それでも市場からは追加緩和期待が出てくることも予想され、ECBもその可能性を否定してくるようなことはないと考えられる。

 欧州が日本と同様のデフレとなりつつあるのであろうか。これについて見方は分かれている。ECBは日本のようなデフレに陥ることはないとしているが、ユーロ圏の各国の長期金利の居所を見る限り、デフレがかなり意識されているようにも思われる。

 ユーロ圏の国債がバブル化していることは確かであろうが、日本の長期金利も0.5%近くの推移が続くなど、そのバブルがすぐに弾ける様子もない。ECBのマイナス金利を含めたパッケージ政策は長期金利の低下を促した。ユーロも下落基調となり、ECBの思惑通りの動きとなっているが、これが物価や実態経済にどれだけ影響を与えられるのか。

 ここからは日銀同様にECBは好環境が続くことを祈っていると思われる。それぞれ追加緩和はかなりの困難が待ち受けているためである。もちろん緩和手段はあるものの、それを使うと日銀は異次元の魔法が解けてしまう懸念があり、ECBはマイナス金利と量的緩和という相反する政策を打たざるを得なくなる。

 いずれにしても、日欧の国債は買われる環境が整っており、そう簡単には崩れることは考えづらい。中央銀行の金融緩和が効いて国債が買われる構図ではあり、ドイツを含めユーロ圏の国債はさらに進撃を続けてくる可能性がある。

 進撃の巨人に出てくる巨人は人類が生み出した魔物であった。現在の中央銀行の超緩和策もある意味、魔物を形成しているようにも思えてしまう。

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by nihonkokusai | 2014-07-31 09:45 | 債券市場 | Comments(0)

債券市場でのパニックへの備え

 ここにきて自宅で仕事に使っているパソコンの調子が悪くなってきた。26日には立ち上げた途端に異音を発した。それまでもなかなか立ち上がらなかったり、途中でフリーズして再起動を行うなどしてきたが、この異音発生でハードディスクがおかしくなりつつあると見て、買い換えを決心した。現在、使っているパソコンのOSはXPではないが、そのあとのVISTAであり、もうかなりの年数、使っていることも確かであった。

 昨年はXPのサポートが終了することで、パソコンの買い換え需要が発生した。XPの安定さにより、企業の多くが使っていたようだが、これをみてもパソコンそのものの寿命は意外に長いようである。我が家のパソコンももう少し持つかと思ったが、とりあえず新型を購入して、いままでのVISTAはパックアップ用にすることとした。

 毎日の仕事で何年も使っていると、いざパソコンが壊れたときには慌ててしまう。このときのために実はウインドウズ8.1のタブレットを購入してあったが、いつでも代替できるようなに体制にはしてなかったことに気づかされた。今回、いつでも置き換えられるように準備を整えた。

 パソコンやインターネットもすでに水道、ガス、電気のようにインフラと化しており、止まってからその普通に動いているありがたみに気が付く。これは金融市場そのものにも言える。

 扱っている金融商品の売買が円滑にでき、その決済に向けての社内のシステムが働き、さらにその決済を円滑にできる場が形成されている。しかもそれは国内ばかりでなく、海外とのやり取りも可能にさせるようなシステムができあがっている。

 これらのシステムの一部に何かしらの支障が発生してしまうと、取引が円滑にいかなくなり、金融市場に大きな影響を与えることになる。日本の金融のシステムには個々の金融機関のシステム、さらに取引所などのシステムに加え、その中心に日銀のシステムが存在している。日銀の業務における金融政策の決定などはほんの一部の業務にすぎず、この巨大な金融インフラを支えている部分が非常に大きなものとなっているのは当然と言えば、当然であろう。

 金融では決済システムが円滑に機能するかどうかが大きな問題となるが、市場そのものでは円滑な売買が可能かどうかが問題となる。ただし、これにはハード的な要素よりも、ソフトというか市場参加者のマインドそのものが大きな影響を与えることになる。もちろん株式市場や債券先物などは取引所の売買システムが円滑に機能することが重要であるが、それとともに取引している参加者の思惑が重要な要素となる。

 債券の現物債の取引は相対となっており、ここでは電話やネットでのやり取りが主体となっている。そのときの値付けは、相場の地合、先物やBBでの現物の動き、他市場の動向、そして投資家の需要等で判断される。つまり個人の判断が相場を決めている。ここに何かしらの事態が発生したらどうなるであろうか。

 この場合の事態とは、相場に関わる何かしらの思惑が発生することを意味する。ひとつの例でいえば、リーマン・ショック後の物価連動国債や15年変動利付国債の急落である。流動性が薄いところ、買い手の中心となっていた海外投資家からの投げ売りにその引き取り手がいなくなり、需給バランスが一気に崩れたのである。これはたまたま発生したと言えるのか。

 大量に発行された国債は円滑に消化されている。そこに日銀が大量に買い込むことで、流動性そのものは後退したが、需給面での不安は後退し、長期金利は低位安定している。この均衡は絶対に崩れないものと言えるのであろうか。何かしらの出来事をきっかけに、現物債を売買している担当者が不安を覚えたとき、マーケットは様変わりする可能性がある。金利が上がれば買い手は待っているというが、金利が上がった要因次第では、押し目買いのつもりが、それも損失を被り、損失が急激に膨らみ、パニックに陥ることも十分に想定される。それがいつ起きるかは予測も難しいが、そのための事前準備も必要であろう。むろん、それはヘッジをするとかではない。市場がパニックとなっても、少しでも冷静でいられるような心構えの部分が大きいのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-07-30 09:45 | 債券市場 | Comments(0)

日銀の準備預金(超過準備)に利子が付く理由

 7月24日の白井日銀審議委員の講演の邦訳が日銀のサイトにアップされた。現在の日米欧の中央銀行の金融政策について、頭を整理するには良い資料かと思われる。もちろん予想インフレ率に関することなどやや疑問が残る部分はあるものの、今回はこの講演で触れていた「準備預金へのマイナス金利適用」との部分をピックアップしてみたい。

 ECBは6月の理事会で預金ファシリティに適用する金利をマイナス0.1%へ引き下げ、「所要準備を超える部分」(超過準備)に対しても同じくマイナス0.1%の付利を適用した。

 これに対して、FRBと日銀は、各々0.25%と0.1%のプラスの付利を超過準備に適用している。イングランド銀行は、準備預金に0.5%のプラスの金利を適用している。

 白井委員は、中央銀行がこのようにプラスの金利を支払っている理由について説明している。たとえば、マイナスの金利であれば、銀行間市場が縮小して金融機関が必要なときに市場から即座に資金調達することが難しくなる点を指摘している。

 これについては、いざとなれば日銀による資金供給がそれをフォローするとみられる。ただし、銀行間市場そのものがマイナス金利により機能が低下する可能性はある。これは反対に日銀が大量に資金供給を行って資金がジャブジャブになった際にも起こりうる。むしろ、日銀の超過準備の付利は、2001年から2006年にかけての量的緩和時代に短期金融市場が機能不全に陥った。このため、その対策として日銀は現在の超過準備の付利を行ったとも言える。

 付利金利があると銀行間市場の金利に下限が生まれ、プラスの金利を維持すれば市場金利の変動は小さくなると考えられる、との白井委員は指摘している。つまり銀行は日銀の当座預金に置けば、超過準備の部分は0.1%で運用できることになる。このため市場から国債等を買い入れるにあたり、運用利回りが0.1%以下のものであれば、それよりも日銀の当座預金の置いていた方が金利が高くなり、0.1%が運用における金利の下限となり、それ以下での取引はありえない、との理屈になる。

 ところが、現実には2年国債の利回りが0.065%と0.1%を下回るような状態が続いている。これにはいくつか理由が存在する。ひとつは内外を問わずすべての金融機関というか資金の運用主体が、日銀に当座預金を持っているわけではないことがあげられる。0.1%の超過準備を使えるのは一部の金融機関となる。さらに国債には担保需要などがあるため、そういった需要の強さにより0.1%以下で購入せざるを得ない面がある。

 中央銀行は市場金利を大きく変動させることなく銀行間市場に十分な流動性を円滑に供給し、バランスシートを拡大する量的緩和政策をし易くなるという利点があると、白井委員は指摘した。

 たしかに日銀の資金供給によって金利が大きく変動することはない。もちろん多少の振れはあるものの、そもそもが金利がミクロ状態にあり、変動したとしてもその幅は限られる。ここで注目すべきところは、あっさりと説明している「バランスシートを拡大する量的緩和政策」の部分であろう。日銀が超過準備の付利を残しているのは、日銀のバランスシート拡大のためと言える。日銀のバランスシートが拡大すれば物価は上がるという理由の元、行っているのがQQEであったはずである。

 これに対して、ECBは真逆のマイナス金利政策を何故、導入したのか。これについては、為替相場の減価や金融機関の貸出金利の低下等を期待する見方があると白井委員は指摘している。そもそもアベノミクスは円安・株高に誘い込むことが大きな目的であったはずであったが、ECBは為替政策のためマイナス金利を導入した。バランスシートの拡大とマイナス金利、果たしてそれは為替だけでなく物価にもどのような影響を与えるのか。

 このように準備預金への付利だけを見ても、日銀とECBは全く異なった政策を講じている。これはつまり極言すれば、中央銀行が刺激を与える政策を取れば良い方向に向かうという漠然とした期待が存在しているかのように思われる。白井委員はこの講演でレジームチェンジとの言葉を使っている。日銀のQQEで果たして本当にレジームチェンジが起きたのか。たまたまタイミングが良かったのか。このあたりの結果については、もう少し様子を見る必要があろう。

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by nihonkokusai | 2014-07-29 09:33 | 日銀 | Comments(0)

正常でないのか日本の長期金利

 7月24日の日経QUICKニュースによると、甘利明経済財政・再生相は24日夕、経団連主催の都内でのフォーラムで講演し、低水準が続いている長期金利について「これが正常と思わない方がいい」と述べたそうである。

 そのうえで「アベノミクスで景気を良くしていけば自然と長期金利は上がっていく」と指摘。「その際には国債の信認を失わせない、財政再建プランに対して政府がきちっとコミットしていくこと」が大事だと強調した。

 このように甘利経済財政相は、現在の異常な(?)長期金利に警鐘を鳴らした。これは、アベノミクスにより景気は回復しつつあり、物価も上昇しているなかにあり、経済実態に即した長期金利はもう少し高いところにあるはずだが、いまだに超低位にあることに対しての警告のように思われる。

 現在の日本の長期金利の超低位での安定には、いくつかの要因が考えられるが、その最たるものが日銀による国債買入となる。日銀の黒田総裁は6月7日の講演で「日本銀行の巨額の国債買い入れは、10年物長期金利を0.6%程度という低水準に抑制しています。」と明言している。その後、長期金利は0.5%近くまで低下している。

 黒田総裁は次のようにも述べている。

「実質金利はマイナス圏で低下を続け、実体経済を刺激してきました。すなわち、日本経済は内需を中心に成長を続けています。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、昨年3月は-0.5%でしたが、今年の4月には消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで+1.5%に達しています。」

 消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、4月がプラス1.5%、5月がプラス1.4%、6月がプラス1.3%となった。日銀は夏場にかけて1%前半までプラス幅が縮小するとみているが、その後再びプラス幅は増加し、日銀の目標とする2.0%に近づくと予想している。

 甘利大臣の「アベノミクスで景気を良くしていけば自然と長期金利は上がっていく」との発言は、景気ばかりでなく物価も意識しての発言かと思われるが、いまのところ自然に長期金利が上がっていくような状況には見えない。今年の4月以降はじりじりと低下しつつある。物価や景況感からみれば、確かにこの長期金利の超低位は奇異に映るかもしれない。足元のゼロ金利が長い金利にまで波及しつつあるように見えるが、同じゼロ金利政策を行っている米国の長期金利に比べても明らかに低すぎるようにも見える。

 いったい何をきっかけに、日本の長期金利は自然に上がってくるのか。イングランド銀行やFRBが出口に向けた準備を進めるなか、世界的なリスクの後退により、国内景気も底堅く推移し、日本の物価が目標圏内に入ると、異常な事態は解消されるのか。それが解消されたとすれば何が起きるのか。

 日本国債は売られないというのが、神話のようになりつつある。それを日銀がフォローしている。市場参加者は金利の失われた15年の状況にどっぶりと浸ってしまっているように見える。国債相場が動かないのは、経験則も大きな要因のひとつとなっているのではなかろうか。そこにリスクはないのか。甘利大臣はこのあたりについても、警告を発したようにも思える。

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by nihonkokusai | 2014-07-28 09:56 | 債券市場 | Comments(2)

日銀の出口、ハードランディング編

 以前に日銀の出口に向けて、ソフトランディングのケースを考えてみたが、今回はハードランディングのケースを予想してみたい。日銀の追加緩和のケースも可能性としては残るが、日銀の想定通りの物価上昇における出口政策を今回も想定している。

 日銀が目標としている消費者物価指数は、今年の夏場に向けて前年比1%前半まで低下したが、秋以降はエネルギー価格の上昇などから、日銀の想定通りの上昇となり、来年早々1%台後半に上昇したとしよう。4月には2.0%の達成の可能性が見えたきた。英国はすでに利上げを行っていることが予想され、米国ではテーパリングが終了して利上げの準備が進み、日銀の出口に向けた動きが市場では意識されるようになった。

 日銀のテーパリングについての憶測も流れてきた。過去に日銀は国債買入の額を減らしたことはないものの、市場ではどのような事態が発生するのかを予測することができないため、とりあえず債券先物でのヘッジ、もしくは現物債のポジションを減らすような動きが出てくる可能性がある。利上げとなれば、本来イールドカーブはフラット化するが、今回は利上げよりも日銀の国債買入の動向そのものが焦点となり、新発債を7割も買い入れていた存在がなくなることに対する恐怖心がマーケットに蔓延し始める。

 日銀の巨額買入がなくても国債は安定消化されていたが、すでにマーケットは日銀の大量の国債買入ありきの状態に陥っており、その買入が少しでも減少するとなれば、減少される年限の国債への売り圧力に繋がりかねない。日銀は市場への影響を少なくするため、テーパリングを行うとしても、そのペースはFRBなどに比べても緩やかなものとする可能性が高いが、減るという事実が市場参加者の不安を助長させることになる。  長期金利が0.5%台から1.0%台あたりまで上昇したところで、それほど市場への影響はないかもしれない。しかし、今後の長期金利は物価が2.0%という水準が意識され、日銀も正常化の道に進むのであれば、長期金利も2.0%を超えてきても何ら不思議ではないとの認識も強まろう。

 しかし、動かないマーケットを長らく経験してきた市場参加者たちは、長期金利の動きの大きさについていけなくなる可能性がある。債券先物ではサーキットブレーカーが何度も発動し、ややパニック的な動きとなるかもしれない。投資家も長期金利の上昇で運用利回りの向上が見込めるが、それ以前に保有国債の損失が頭を過ぎる。上司からは長期金利上昇の備えはしていなかったのか、このような事態は予測していたはず、だとの結果論的な声も飛び、ここで売るべきではないと考える現場でも何かしらの手段、つまり価格変動リスクを落とす動きを強めることが予想される。そのような動きを察知したヘッジファンドが我先にと先物やオプションで債券相場を売り崩す。こうなると負の連鎖が起こりうる。

 2010年のギリシャなども国債暴落の際のひとつの例となる。売り込まれたところに格付け会社の格下げがさらに火に油を注ぐ。国債急落や格下げで日本の財政悪化がさらにクローズアップされ、何故、これまで積極的な財政健全化策を講じなかったのかと政府への批判も集まろう。

 さらに債券市場では、過去15年程度経験してこなかった長期金利の2%超えという事態に対処しなければならない。15年前とは国債残存額が大きく違うため、過去の相場経験すら生かせない事態が発生する可能性がある。このような事態が発生した場合は落ち着きを取り戻すまで、様子を見ざるを得なくなろう。

 ただし、国債に大きな価格変動が起きたとしても、それほど長く続く事も考えづらい。これを機会に財政再建への道が開ける可能性もある。しかし、対処法を誤れば、本格的な日本国債の暴落も招きかねない。そのひとつの要因として、日銀による国債価格急落の歯止めとしての国債のさらなる買入でがある。これは財政法で禁じられている国債引受とあらためて認識されてしまいかねず、国債への信認低下に繋がり兼ねない。需給バランスの崩れなどでの国債利回りの上昇ではなく、国債への信認失墜による国債暴落は、今度こそ手が付けられなくなく懸念が出てくる。

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by nihonkokusai | 2014-07-27 11:21 | 債券市場 | Comments(0)

物価低迷の原因は予想物価上昇率だったのか

 7月23日の講演で、中曽日銀副総裁は物価に関して次のような発言をしていた。

「予想物価上昇率」というのは耳慣れない言葉かもしれませんが、人々が先行き、どの程度物価が上昇すると見込んでいるかという予想を意味するものです。」

 ここで気になったのは、わざわざ「耳慣れない」という表現を使ったことである。予想物価上昇率という用語は一部の経済の専門家が利用するものであり、一般には馴染みがないもの、との認識の上での表現であったのであろうか。

 予想物価上昇率や期待インフレと呼ばれているものはいったい何なのか。これについては私もこれまでも何度かコメントしてが、いまだに良くわからない。人々が次回のオリンピックで何個、金メダルが期待できるのか。それを数値化すれば、期待(予想)金メダル獲得数がわかり、金メダルの数はそこに収斂していく、といったものなのであろうか。

 「わが国では、15年近くデフレが継続したことにより、「物価は上がらない」との予想が定着してしまいました。この状態から脱して、2%の物価安定目標を持続的に実現していくということは、企業や個人が2%程度の物価上昇が続くことを予想しながら経済活動を行うようになるということを意味します。」(中曽副総裁の講演より)

 果たして失われた15年の間、人々は「物価」は上がらないと「予想」したのであろうか。こちらはむしろそのように「期待」していた可能性はあるまいか。

 物価が上がらないから雇用は悪化し、景気も悪く、輸出は伸びず、株価も低迷していたのか。バブル崩壊後、人々の日本経済に対する見方は大きく変化した。右肩上がりの成長が止まったあと、こんどは右肩上がりの地価や株価が暴落した。銀行は不良債権の圧縮につとめ、それが企業活動にもマイナスの影響を与えた。その最たるものが雇用の変化であり、業績給といった名のもと、終身雇用・年功序列といった日本経済を支えていた雇用の仕組みが根幹から崩れ、結果として雇用は悪化し、景気も低迷、それが人々の先行き不安を強めることになり、物価低迷の要因となった。

 ここに日銀が物価を上げようとすれば、それこそ大きな反対が起きた可能性すらある。物価を上げるのではなく、物価が上がる環境作りこそ重要であり、景気低迷で賃金も低下しているなか、物価の低迷は人々の暮らしにとってマイナス要因ではなく、むしろ助けられていたのではなかったか。物価は上がらないとの予想ではなく、上がってほしくないとの期待もあったのではなかろうか。

 「今春はベアを実施した企業が増加したほか、これまで低価格を基本戦略にしてきた企業でも、従来以上に品質を重視しコストを反映した価格設定に切り替えるなど、企業行動には変化の兆しがみられます。」(中曽副総裁の講演より)

 ベアについては政府の意向も反映されていたと思われるが、値上げができなかった環境から、やっと値上げが出来る環境に変わってきていることは確かである。しかし、それは日銀の異次元緩和で人々の物価上昇予想が強まったためなのか。アベノミクスのリフレ政策の掛け声での円安、株高、さらには世界的なリスク後退による世界経済の回復により、値上げができる環境ができつつあったということではなかったのか。

 「個人や企業、エコノミストなどを対象としたアンケート調査や、金融市場関連のデータからも、予想物価上昇率は全体として上昇しているとみられます(図表6)。」

 図表6をみてみると、いつものように債券市場参加者でも一部の参加者しか、それも金額はわずかな取引しかされていない物価連動国債のBEIのデータが使われている。これが期待インフレ率を適格に示すものなのか。仮にそうであってもグラフからはすでに2009年から期待インフレ率が上昇しており、異次元緩和による影響との判断はできかねる。

 もうひとつエコノミストのインフレ予想も出ているが、こちらは足元のCPIが予想以上に上振れたことが影響しているはずである。足元の数値が何故、エコノミストの予想を上回ったのか、その分が異次元緩和による影響との指摘もあるかもしれない。仮にそうであったとすれば、中央銀行が市場の予想以上に国債を買うと物価が自動的に上がるという、なかなか興味深い研究成果が出たことになる。しかもその成果はタイムラグも必要としなかった。果たしてエコノミストはどう判断しているのであろうか。

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by nihonkokusai | 2014-07-25 09:18 | 日銀 | Comments(0)

6月に都銀は債券を買い越し、地銀は利食い売りか

 7月22日に日本証券業協会が発表した6月の公社債投資家別売買高(除く短期債)によると、都銀は3995億円の買い越しとなった。5月の4100億円の買い越しに続き、2か月連続での買い越しとなっていた。国債投資家別売買高をみると5月は主に中期債主体の買い越しとなっていたが、6月は長期債が2011億円、中期債が1440億円の買い越しとなっており、やや期間の長い国債を買い越した格好となった。

 これに対して地銀は1531億円の売り越しとなっていた。国債投資家別売買高によると長期債を5585億円売り越していた。地銀は4月に長期債を8125億円買い越していたが、相場は4月以降、ジリ高傾向となっており、この利食い売りを入れた格好か。

 信託銀行は1兆871億円の買い越しとなり、業態別では最大の買い越しとなった。中期債を9626億円買い越した。信金は6919億円の買い越し。こちらは長期債主体の買い越し。生損保は7680億円の買い越し。超長期債主体に買い越していた。投資信託は6385億円の買い越し。こちらは中期債主体の買い越しとなっていた。

 外国人は715億円の売り越し。超長期債を買い越していたが、それ以上に長期債を売り越していた。

 債券相場は6月も上昇相場が続いていた。6月5日のECB政策理事会で、利下げなどを含むパッケージの追加緩和策を決定し、この影響もあった。10年債利回りは0.6%近辺からさらに水準を切り下げてきた。日中値幅は限られ値動きそのものは小さかったが、水準は少しずつ切り上げ(利回りは切り下げ)られてきた。

 今回の投資家別売買状況をみても、現物債は売り手もいるが、それ以上に各年限で買い手が存在している。さらに日銀による国債買入もあるため、好需給が継続していると言える。

 7月に入り債券相場はさらに上昇し、18日には10年債利回りは一時0.510%まで低下した。すぐに利食い売りに押され0.540%あたりに後退したものの、いまのところ戻り売りも限定的なものとなっている。さすがに10年債の0.5%近くでは高値警戒感も強く、ここがいったん天井となる可能性もある。いまのところ需給バランスが大きく崩れることも考えづらいが、何かしらのきっかけで相場が動くこともありうるため注意したい。

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by nihonkokusai | 2014-07-24 09:30 | 債券市場 | Comments(0)

債券相場がターニングポイントを迎えた可能性

 ウクライナ東部で乗員乗客295人を乗せたマレーシア航空機のボーイング777型機が墜落した。原因はまだはっきりしていないが、地対空ミサイルシステムによって撃墜されたのではないかとの見方も出ている。これによりウクライナを巡る緊張はあらたな展開を迎えることとなった。

 13日にブラジルのリオデジャネイロでロシアのプーチン大統領はドイツのメルケル首相と会談し、ウクライナ軍と親ロシア派武装組織の停戦を実現する方法や、和平協議の再開などについて意見を交わしたとみられるが、これは白紙に戻されそうである。墜落した航空機の乗客280人のうち少なくとも154人がオランダ人だったとみられ、今後はさらにロシアと欧州の緊張が高まる可能性がある。

 さらにイスラエルのネタニヤフ首相がパレスチナ自治区ガザに対する地上作戦を命令し、イスラエル軍は17日夜、パレスチナ自治区ガザへの地上侵攻を開始した。中東情勢もさらに緊張の度を増してきつつある。

 これらを受けての金融市場の動向を確認してみると、17日の米国市場ではダウ平均が161ドル安となり、米10年債利回りは2.46%まで低下していた。18日にダウ平均は123ドル高と買い戻されたが、21日には一時125ドル安となったが引けは48ドル安と荒れた展開となっている。米債は18日は2.48%とやや戻り売りに押され、21日は2.47%となっており、結果としてあまり居所は変わっていない。

 外為市場の動きを見ても一時、リスクオフの動きにより円高となったが、その後の円は戻り売りに押されており、質への逃避的な動きも一時的なものとなっている。

 ここで注意すべきは円債の動きかと思われる。4月以降、小動きながらもじりじりと上昇してきた日本の債券相場であるが、17日のマレーシア航空機の墜落を受けてのリスク回避による債券買いにより、相場そのものに変化が生じてきた可能性が出てきた。

 17日の債券市場では、朝方に債券先物が146円09銭まで上昇し、10年債利回りは0.510%、5年債利回りは0.140%まで低下した。20年債利回りは1.350%、30年債利回りも1.610%に低下した。ところがその後、大きく下落した。この大きな下落そのものが注目ポイントとなる。地政学的リスクの行方はまだ不透明ながら、さらに株安や米債高にも関わらずの円債の下落は注意する必要がある。債券先物は出来高が5兆円を超えるなど出来高も伴っての久しぶりに大きな動き、結果として下げ相場となったのである。

 債券先物は145円78銭まで下げて大引けは10銭安の145円83銭となり、10年債利回りは0.510%から0.540%に後退し、20年債利回りは1.350%から1.395%に、30年債利回りも1.610%から1.665%に後退した。

 この動きから見て債券先物の146円台というよりも、10年債の0.5%がいったん意識され、この水準では戻り売りが入ったとの見方もできる。国債のコスト等を考慮すると0.5%~0.6%あたりがひとつの目安とされ、さらに昨年4月の量的・質的緩和以前につけていた水準も0.5%台となっており、このあたりが節目とされていた。さらに20年債の1.4%割れ、30年債の1.7%割れではいったん利食い売りも入り安い水準と言える。しかし、ここまで相場下落をもたらすものであったであろうか。

 18日の債券先物のローソク足(日足)は包み線と呼ばれるものとなった。特に長期上昇後の陰線の包み線は「最後の抱き線」とされる。酒田五法と呼ばれるものの中でも相場の転換点を示す重要なシグナルが出たように見える。

 これにより債券相場が天井を付けたと断言はできないが、22日以降の相場動向次第ではその可能性が出てくる。昔の米相場の時代から培われてきたチャートのひとつのパターンが発生した以上、それに着目する必要もある。今年の4月以降の円債の上昇相場が終焉するのか。地政学的リスクの強まりが、円債の新たなターニングポイントを形成し、相場が再び動き出す可能性も出てきた。

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by nihonkokusai | 2014-07-23 09:29 | 債券市場 | Comments(0)

債券相場の急変に備えるには

 日米欧の中央銀行の国債を中心とした非伝統的な手段による金融緩和は、ここにきて大きな転機を迎えつつある。

 イングランド銀行はすでに国債の新たな買入は行わず、今度は利上げが視野に入りつつある。それも年内に実施される可能性が出てきている。

 FRBは現在、テーパリングを続けており、10月にもそれを終了させる見込みである。10月以降は新規での国債やMBSの買入は停止され、膨れあがったポートフォリオの処理よりも前に、正常化にむけての利上げが検討される。FRBの利上げの時期予測はまちまちだが個人的には来年4月から6月あたりがターゲットになるとみている。

 ECBは6月に追加緩和を決定したが、国債には手を触れなかった。利下げとそれによるマイナス金利、TLTROなどを中心としたパーケージ政策となった。量的緩和への期待も強いようだが、ECBによる量的緩和についてはドイツなどの反対も根強く、特別な理由がない限り可能性はかなり低いとみている。

 このような状況下にあり、日銀だけがせっせと巨額の国債買入を継続している。ただし、日銀の掲げた物価目標も日銀のシナリオ通りに行けば来年には達成圏内に入るとしている。そのシナリオ通りに行けば追加緩和の可能性は後退し、目標に近づけば出口が意識されてくると予想される。

 出口が見えてきたときに、長期金利はさすがに反応を示すことが予想されるが、その際にどのような準備が必要になるのであろうか。

 金利が上がることよりも、まず金利が動くという事実に注目したい。今年の債券相場は非常に値動きが乏しくなっているが、4月あたりからは、値動きは小さいなかじりじりと上昇してきている。これは2003年6月あたりの相場を彷彿させる。いわゆるVARショックと呼ばれた国債急落前の姿に似ている。このときの相場の上昇はボラティリティの低下がひとつの要因であり、その後の相場急落はボラティリティの上昇が大きな要因となった。

 現在の債券市場は、ボラティリティの低下で見えにくくなっているが、流動性がかなり落ち込んでいることは確かであり、2003年6月のようにいったん相場が動き出すと、急激な動きとなる懸念が存在する。VARショックの際は20年国債の入札がひとつの原因となったが、今回も何かしらのきっかけで相場が急変動する可能性がある。

 それに備えるにはポジションを減らすなり、ディレーションを短期化する。さらに先物などデリバティブでヘッジするという手段がある。しかし、保険としてそれを行うと収益チャンスを逃すだけでなく、先物などの損失で利益を失う懸念もある。このため、流動性がそれなりに大きいものの保有を意識し、利益を追求するより、いざという時の換金性を重視すべきかと思われる。長期金利は0.5%であり、たとえばここから0.2%程度の利回り低下による機会損失などを考慮するより、さらなる利回り低下があっても無理をせず、長い期間の国債の新規の買い付けはなるべく控えておくことも必要になるかもしれない。

 タイミングよく債券先物などでのヘッジも可能かもしれないが、先物はいったんボラティリティが高まると乱高下しやすくなる。中途半端な相場勘での先物などのヘッジのための利用は控えた方が良いと思う。ただし、短期売買を得意とするディーラーがいれば、収益チャンスとなり、ヘッジというよりディーリング益狙いでそのような人員を配置するという手段もあるかもしれない。優秀なディーラーであれば、リスクを肌で感じ、彼らの相場勘で相場変動をいち早く見抜くことも可能となるかもしれない。ただし、そのような優れた相場勘を持つディーラーなどは限られていることも確かであるが。

 大きな相場変動が起きたとしても、ある程度の調整後はいったん収まるタイミングがある。そこで買うのでなく、そのタイミングで少しポジションを落として、これが本格的な金利上昇局面に向かうのか、それとも今回も一時的なものに止まるのか。このあたりの見極めも、相場を見ながら必要になると考える。

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by nihonkokusai | 2014-07-22 08:05 | 債券市場 | Comments(0)

日銀の出口政策と日本国債

 日銀の異次元緩和からの出口政策は可能なのか。日銀はコアCPIの2%という物価目標達成までは、出口政策を封印しているかに見えるが、すでにCPIが4月の時点で1.5%まで上昇してきている以上、出口を見据えた戦略も立てておくことはリスク管理上も必要であろう。

 日銀の出口に向けた影響については、物価や景気への影響よりも先に国債市場に対する影響が焦点となる。2001年から2006年にかけて実施された日銀の量的緩和政策における出口政策は国債の買入には手を付けず、積み上げた当座預金残高を減らすことによって行われた。それでも多少なり長期金利は動揺を見せたが、これで長期金利が大きく上昇することはなかった。

 現在、FRBが行っているテーパリングでも、その可能性が指摘された際に米長期金利が3%台に上昇するなど一時的な動揺はあったが、実際にテーパリングが開始されるとむしろ米長期金利は2.5%近辺で安定している。英国ではイングランド銀行による年内の利上げの可能性が高まっているが、英国の長期金利も比較的落ち着いている。

 日銀が想定するように、今後夏場に向けていったん1%台前半まで落ち込んだ消費者物価が、秋以降に再び上昇し1%台後半を付けてくれば目標達成が見えてくる。日銀の想定通りに2%台に乗せても、日銀は当分の間、現状の緩和策を続けるとしている。それでも相場は先を読む。このときに長期金利はどのような動きを見せてくるのであろうか。

 各種要因と長期金利を比べてみてはっきりしてくるのは、長期金利形成に最も影響を与えているのは日銀による金融政策である。ただし、これは日銀が大量に国債を購入しているためというよりも、実質ゼロ金利政策が続いているためといえる。長期金利は日銀の国債保有額などより、政策金利との相関度が高いことからもそれは伺える。

 そうなれば日銀が利上げに向かわない限り、現在の長期金利の低位安定は崩れないとの見方も可能となる。利上げがあって、その分長期金利も上方にシフトする、ということは極端に長期金利の上昇はありえないとの見方も可能となる。

 長期金利の失われた15年の間に、ゼロ金利解除は2度経験し、利上げもあったが、それによる長期金利の上昇は限定的であった。だから今回も問題なし、として良いのであろうか。

 これまでのゼロ金利解除や利上げ局面でも、日銀の国債買入の減額というケースはなかった。ましてや、昨年の量的・質的緩和の中心的な存在が大胆な国債の買入であった。では日銀も米国のようなテーパリングは可能なのか。

 昨年の日銀の異次元緩和以前でも国債消化には問題がなかった。国債買入を異次元緩和以前に戻しても、一時的な動揺はあっても、買い手不足といった足元の需給要因で国債相場が崩れることは考えづらい、との見方も可能となる。

 それでは日銀が出口政策を行って、テーパリングや利上げを行うことになっても、政策金利が低い状態であれば、日本国債はほとんど動揺を示さないのであろうか。たしかにその可能性は否定できない。債券の流動性も回復するかもしれない。

 しかし、この長期金利の形成には財政リスクプレミアムがゼロという前提がある。デフレ脱却が見えてきたのならば、現在のドイツのように財政の健全化を急ぐ必要がある。その姿が見えてこないとなれば、いつまでも財政リスクプレミアムをゼロと置くことはできなくなる可能性もある。

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by nihonkokusai | 2014-07-18 09:11 | 日銀 | Comments(0)
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