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4つの中央銀行の異なった政策とその影響と効果

 6月5日にECBは追加緩和パッケージを発表した。ECBのクーレ理事は7日に「非常に長い期間、数年にわたってユーロ圏の金融情勢が米国、英国と異なることは明らかだ」とし、「われわれは極めて長期間、金利をゼロ近くに維持する。米英は利上げ局面に入るだろう。それは市場参加者にとって決定的な要素だ」と述べた。

 イングランド銀行のカーニー総裁は12日のロンドンのマンションハウスでの講演で、今後のイングランド銀行の利上げに関して、「市場が現在予想している時期よりも早く起こる可能性がある」と指摘した。

 イングランド銀行は2009年3月5日の金融政策委員会(MPC)において政策金利を0.5%に引き下げるとともに、量的緩和策として英国債を買い入れる方針を発表した。この際の量的緩和の手段とは2009年の3月から11月の間に総枠2000億ポンドの資産(対象は主に英国債)を購入するというものであった。その後はこの買い入れる総額を引き上げる形で追加緩和を行ってきた。

 失業率の改善等を受けて、イングランド銀行の次の手は資産買入枠の増加という緩和策から、過去最低の0.5%に据え置いている政策金利であるレポ金利の引き上げ、つまり引き締め策に移ってきた。

 米国FRBの追加緩和は、米国債とMBSの買入という形で行ってきたが、これはイングランド銀行とは異なり、毎月の米国とMBSの購入額をターゲット手段としてきた。このため、FRBは緩和政策から反転するためには、この買入を停止しなければならず、そのためにテーパリングという徐々に減少させる手段を講じることになったのである。

 イングランド銀行もFRBもいずれ膨れ上がったポートフォリオをどう削減させるのかという問題が出てくるが、それはあとの問題であり、イングランド銀行はいつでも利上げが可能の状態にある。FRBもテーパリングが市場への波乱要因とはならない状況も鑑みて遅くとも10月あたりまでに終了させて、利上げの準備段階に入ると予想される。

 日銀は買入総額に加えて毎月の購入額や残存年数まで数値目標のように出してしまったために、毎月の国債買入額を修正せざるを得なくなるなどしていたが、仮に出口に向けた動きを取る際には、FRBのようにすぐに利上げというわけにいかない。

 ECBについてはFRBや日銀のような形式での国債買入等は選択せずに、ある意味伝統的手段のもとでの利下げという選択を行っており、もし出口を意識した際には、イングランド銀行のようにすぐに動ける状態にある。

 ここで一点注意すべきことがあり、イングランド銀行と日銀は国債などの買入について量的緩和との用語を使っているが、FRBはQEと称されているが厳密には量的緩和ではないとしている。あくまで長期金利の低下を促すことが目的であり、日銀のように物価を目標値に誘導させるためというものと目的そのものが異なる。FRBは過去に量的緩和の効果について効果が薄いことをコメントしてしまった手前(2008年12月のFOMCなど)、このような格好になったものと思われる。

 量的緩和とはいったい何であったのか。日銀は真っ最中であるが、FRBは止めようとしており、イングランド銀行は利上げ段階に入りつつある。ECBはドイツ連銀のバイトマン総裁の反対などもあり量的緩和とは異なる選択をした。これらの選択が市場などにどのような影響をもたらすのか。今週は17日、18日にFOMCが開催される。4つの中央銀行の異なった政策とその影響と効果、さらにはそこからの出口政策はかなり興味深い事例となりそうである。

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by nihonkokusai | 2014-06-17 09:35 | 中央銀行 | Comments(0)

中央銀行の預金口座とオレオレ詐欺

 12日付けの読売新聞によると、茨城県警水戸署は11日、水戸市の85歳の女性が4700万円をだまし取られる詐欺被害に遭ったと発表した。今年3月3日頃に女性方に「金融政策課」を名乗る男から「日本銀行に預貯金を預け替えた方が利率がいい。水戸地区の担当者に電話して」と電話があったそうである。これを真に受けてしまい。数回にわたり現金を宅配便で送ったり、市内のATMから送金してしまったそうである。

 もちろんこれは「オレオレ詐欺」とか「母さん助けて詐欺」と称される詐欺事件である。このような詐欺事件は後を絶たず、被害金額は拡大しているようで、隙を与えないための施策を講じることも重要かと思われる。常日頃、家族内でお金に関わる電話があった際には、いったん別の家族なりに相談を持ちかける、知らない人から儲け話を持ちかけられたら、こちらも第三者に相談することなど、事前に打ち合わせておくことも重要と思われる。

 また、金融リテラシーと呼ばれる金融の初歩的知識を身につけておくだけでも、このような詐欺に引っかからないで済むかもしれない。日銀は公的機関ではないが、それに近い組織であり、個人に向けた営業などは行っていない。これはある程度の金融知識があればわかるはずである。何より日銀に個人は口座は開けない。こ黒田日銀総裁も給与は民間金融機関の口座に振り込まれているはずで、総裁であれ日銀に個人名義で口座は開けない。

 ただし、この犯人はひとつだけ正しいことを伝えている。「日本銀行に預貯金を預け替えた方が利率がいい」という点である。もちろん定期預金は民間金融機関の方が高いと思われるが、民間金融機関の普通預金や当座預金の金利より、日銀の当座預金で必要額以上に積む分、いわゆる超過準備に0.1%の金利が付いており、こちらの方が確かにお得である。もちろん犯人がそこまで知っていたのかどうかは定かではない。

 その超過準備について、日銀とECBは同じ金融緩和策において異なる政策を行っている。日銀は超過準備の0.1%という付利を残すことでマネタリーベースを増加させ、物価上昇への期待を強め、物価を目標値に引き上げる政策をとっている。

 これに対してECBは、その超過準備にマイナスの金利を付けてきた。ECBの狙いも物価の上昇や、それを援護するユーロ安であるが、何故、日銀とは真逆の政策を取ったのか。

 どちらか正しいとか、正しくないとかの問題では実はない。いずれの政策も結果として国債が買われることとなり、長期金利低下を促した。市場に働きかけることが最大の目的とみられる。資金が貸出等に向かうかどうかは、資金を使う側の問題であり、ここの需要を喚起する事が本来は重要であるが、それを金融政策で直接働きかけることは難しい。

 これについては日経電子版の「市場に「お告げ」 シャーマン化進む中央銀行」というタイトルの加藤出氏のコラムでも触れている。たとえば加藤氏は「FRBのエコノミスト、J・H・ロジャースらが今年3月に発表した論文は、主要中央銀行が近年行ってきた大規模な証券買い入れ策は、短期的には資産価格に影響を与えたものの、その効果は時間が経つにつれ消えてしまった、と結論付けている」としている。

 そういえば黒田日銀総裁は、「非伝統的金融政策の実践と理論」という興味深いタイトルの講演のなかで、「グローバル金融危機後に実施されたFRBとイングランド銀行による長期国債の大量買入れは、その後の研究で効果的であることが実証されており、中央銀行の実践が理論の発展に先行した例であると理解しています。」とコメントしていたが、J・H・ロジャース氏の論文とかは見落としていたのであろうか。

 加藤氏は現在の日銀の異次元緩和を「ニセ薬効果」と指摘していたが、実際に効くか効かないかはさておき、日銀もECBも市場の期待に働きかけるという、見えないものへの期待が強い政策であり、オレが何とかするから資金を中央銀行の口座に置け(日銀)、置くな(ECB)というものである。

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by nihonkokusai | 2014-06-14 10:56 | 日銀 | Comments(0)

日銀が追加緩和できないジレンマ

 6月12日、13日に開かれる日銀の金融政策決定会合では、現状の金融政策の維持を決定すると予想されている。ECBは6月5日の政策理事会で追加緩和パッケージを発表した。6月17日、18日のFOMCでは毎月の米国とMBSの購入額を450億ドルから350億ドルに減額することを決定すると予想される。しかし、日銀は動かないというか動けない。

 日銀の追加緩和については特に株式市場や為替市場にその期待はあり、7月の追加緩和観測も強かったが、どうやらその観測は10月あたりに後退した。しかし、10月の追加緩和観測も可能性としては極めて低いと見ている。そもそも日銀は追加緩和を行うことが出来ない状態にあるとも言える。

 むろん、追加緩和をやろうと思えばやれるであろうが、それによって日銀の金融政策に対するイメージが大きく変化することが予想され、2013年4月の異次元緩和の異次元が通常次元に戻される可能性がある。

 仮に10月に追加緩和を行うとすれば何が理由になろうか。一番に想定されるのは、2%の物価目標の道筋に変化をきたした場合となる。日銀の異次元緩和の異次元なところは、とにかく物価を上げることが最重要であり、極論すれば雇用を含めての景気回復などは二の次となる。物価さえ上がれば、すべてうまく行くとの考え方がリフレと呼ばれるものの発想の根幹にある。

 その物価については、いまのところ市場の予想に反し、日銀の期待通りの動きをしている。4月のコアCPIは消費増税の影響を除いて前年比プラス1.5%となっている。異次元緩和から1年経過し、目標まであと0.5%の位置にいる。

 福井総裁時代に量的緩和を解除した際には、コアCPIのゼロ近傍が解除条件となっていた。白川総裁時代の2012年2月に物価安定の目途としたのはコアCPIの1%であった。そこを何なくクリアーしている。異次元緩和は予想以上に物価を上昇させた、と結果から見れば見て取れる。ユーロ圏の物価などから見ても優等生的な位置にいる。

 今後は円安による影響も剥落し、物価の上昇は抑えられようが、1%台での推移が続く限りは、物価目標に届く届かないと言う議論はさておき、2%にさせるためとの理由で日銀が追加緩和に動くことは考えづらい。

 ほかの要因としては消費増税の影響による景気後退、急激な円高や株安などの要因も考えられる。消費増税による景気減速についてはハードデータも出てきているが、いまのところ思っていたほどの落ち込みではないと見て良いのではなかろうか。また、新たな金融ショックなどによる円高・株安の可能性もむろんゼロではないが、いまはその気配はない。

 仮に景気の減速や円高・株安で日銀が追加緩和に追い込まれたとして、何ができるのか。技術的にはさらなる国債の買入も可能性としてはある。国債買入を含めての時間軸の延長などもある。国債以外の資産買入の増額等も可能性としてはあるが、いずれにしてもインパクトのあるものは出せない。

 すでに現在の日銀は金融政策を小出しにして市場心理を中心に微調整を行うという政策をいったん放棄している。しかし、インパクトのある政策は何度も繰り出せない。そのジレンマはあるものの、これまで外部環境の好転がそのジレンマを覆い隠している。

 以上のような理由から、よほどのことが発生しない限り、日銀は金融政策を動かすことは考えづらい。物価が現状水準を維持している限り、政策変更は考えづらいのである。

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by nihonkokusai | 2014-06-13 09:45 | 日銀 | Comments(0)

ワールドカップと金融危機

 6月12日からブラジルでワールドカップが開催される。開幕戦となるブラジル対クロアチアの審判は、日本の西村主審と相樂亨副審、それに名木利幸副審の3人が務めることになったそうである。まさに快挙といえるが、もちろん日本代表選手にも活躍してもらい、まずは決勝トーナメントに進んでほしい。

 それはさておき、今回のワールドカップはブラジル大会。次回は2018年にロシアで開催されるが、前回は2010年の南アフリカ大会であった。BRICSと呼ばれた5か国のうちの3か国での連続開催というのは、新興国の発展の勢いを物語るものかと思われる。

 前回大会の南アフリカ大会が開催されたのは2010年6月から7月にかけてであった。日本では探査機「はやぶさ」が地球に帰還したタイミングでもあったが、このときすでに欧州の信用不安が吹き荒れていた。ワールドカップと世界経済には直接の影響はないと思われるものの、その年に起きた世界経済に関わる出来事を追いながら、過去のワールドカップの歴史を振り返ってみたい。

 戦後初めて開催されたのは1950年のブラジル大会、1954年スイス、1958年スウェーデン、1962年チリ、1966年イングランド大会と続く。1970年はメキシコ大会、1974年は西ドイツ大会。1978年はアルゼンチン大会。

 1982年はスペイン大会となったが、この年、メキシコ政府は1000億ドルの対外債務は支払い不能である旨公表し、これをきっかけに世界的な債務危機が引き起こされた。

 1986年はそのメキシコでの大会となったが、その前年の1985年にプラザ合意があり、ドルは急落した。日本ではバブルが発生しつつあった時期に重なる。

 1990年はイタリア大会。前年の1989年11月にベルリンの壁が崩壊し東西ドイツは統一に向かい、12月にはマルタ会談により冷戦が終結した。日本のバブルが崩壊した年でもあった。

 1994年の開催地は米国。

 1998年はフランス大会。5月にロシアの通貨危機が発生し、LTCMが9月に破綻に追い込まれた。日本のデフレがスタートしたのはこの頃とされている。

 2002年は日本と韓国での開催。

 2006年はドイツ大会。この年あたりからアメリカの住宅価格が下落に転じサブプライム・ローン問題が発生した。それが2008年のリーマン・ショックと呼ばれるような世界的な金融経済危機の引き金となった。

 2010年は南アフリカ大会。欧州の信用危機が発生した年であった。

 そして今回の2014年、ブラジル大会である。世界的な金融経済危機は去ったが、日米欧の中央銀行は危機に際して、過去に例のない手を打ってきた。日銀はデフレ対策という名のもとに、2013年に異次元緩和を決定した。ECBもいまだ追加緩和を行ってきている。果たしてこの年に何が起きるのか。過去には大きな危機等もない開催年もあったが、今年はどうであろう。

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by nihonkokusai | 2014-06-12 09:25 | 景気物価動向 | Comments(0)

欧州の国債バブルの芽

 欧州の信用不安というものを覚えているであろうか、というジョークが出そうな動きが欧州で起きている。2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。財政赤字の隠蔽が明らかになったギリシャ国債は暴落し、同様に債務状態が悪化していたポルトガルやスペイン、イタリアなどにも飛び火した。アイルランドやポルトガルが金融支援を余儀なくされ、その水準とされた長期金利7%という分岐点をスペインやイタリアも突破した。

 しかし、スペインやイタリアの長期金利は7%を突破したところでピークアウトした。ECBによる政策などにより、ユーロ圏の信用不安は徐々に沈静化していった。ところが沈静化どころか、スペインやイタリアの長期金利はさらに低下し続け、ついには過去最低を記録するところまできている。

 6月9日には、S&Pが格付けを引き上げたアイルランドの10年債利回りが過去最低水準を記録し、イタリアやスペインの10年債利回りも過去最低水準に低下した。その結果、スペインの10年債利回りは米国の10年債利回りを下回り、イタリアの5年債利回りは米国の5年債利回りを下回った。

 ECBのクーレ理事は7日、フランスのラジオ局の番組で「非常に長い期間、数年にわたってユーロ圏の金融情勢が米国、英国と異なることは明らかだ」とし、「われわれは極めて長期間、金利をゼロ近くに維持する。米英は利上げ局面に入るだろう。それは市場参加者にとって決定的な要素だ」と述べたそうである(ロイター)。

 たしかに米国のFRBは量的緩和の縮小、いわゆるテーパリングを開始しており、今年10月にも完了する見込みとなっている。その先にあるのは利上げであり、英国のイングランド銀行もすでに利上げを見据えて準備を整えているとみられている。

 FRBとBOEが金融引き締めに向きを変えるなか、ECBは追加緩和政策を実施し、さらなる追加緩和も視野に入れている。日銀については追加緩和観測は後退しているものの、向きを変えるような素振りは見せていない。方向性はECBと同様と見て良いと思われる。

 今回のECBのパッケージ政策については、利下げとそれに伴う超過準備におけるマイナス金利により、資金が国債に向かいやすくなったことは確かであり、それがドイツ国債などに比べて金利面では高く見えるイタリアやスペインの国債買いに繋がったようにみえる。

 しかし、この動きが当然であり、普通の出来事の如く認識して良いものであろうか。7%が行き過ぎであったのであれば、現在のイタリアやスペインの長期金利の低下も行き過ぎではなかろうか。そこにバブルのような芽はないのか。

 長期金利と言えば、0.6%の水準を続けている日本の長期金利についても、「日銀が国債を買うから」という理由以外にこの水準を説明できる要素がなくなりつつある。こちらも見えないところで債券バブルが起きていると言える。

 皆が買っていれば安心できるというのもバブルのひとつの兆候である。水準よりも流れに乗ることで儲けに繋がり、乗ってこれないものが損をしたかに感じさせるのもバブルである。ユーロ圏でのバブルは始まったばかりなのかもしれない。しかし、長期金利が名目成長率などから乖離すればするほど、それはのちのバブル崩壊の要因となる。今はこの指摘も狼少年かと言われるかもしれないが、長期金利が暴れ出すリスクは常に意識しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2014-06-11 09:12 | 国債 | Comments(0)

黒田日銀総裁の見方は正しいのか

 「非伝統的金融政策の実践と理論」という興味深いタイトルの講演要旨が日銀のサイトにアップされた。まるで教科書のようなタイトルであるが、これが黒田日銀総裁の国際経済学会の第17回世界大会の講演のタイトルであった。これは英語のスピーチであり、原題は「The Practice and Theory of Unconventional Monetary Policy」となっている。

 ここでは日本語に訳されたものから見てみるが、なかなかに興味深い。その内容はこれまでの日銀の非伝統的金融政策の歴史とその検証からスタートしている。日銀の非伝統的金融政策は1998年9月に政策金利が0.25%とゼロ近傍に低下したあたりが序章となった。

 1999年2月にゼロ金利政策が決定され、2000年8月のゼロ金利解除、2001年3月の量的緩和政策とフォワードガイダンスの導入、2006年3月の量的緩和政策の終了とその後の利上げ。2010年10月の包括緩和政策の開始、2012年2月の中長期的な物価安定の目途の導入と続いた。

 しかし、これらの政策は家計や企業に根付いたデフレ期待を転換するには至らないと黒田総裁は指摘し、その理由としてウッドフォード教授と当時IMFのエコノミストであったエガートソン氏の指摘を紹介している。

 その指摘とは「最も重要なことは「民間主体の期待形成に働きかけること(expectation management)」であり、そのためには将来の金融政策を十分緩和的にするというコミットメントが不可欠である点であった。この際に、「単に量的緩和の目標額を拡大したり、買い入れる資産を多様化したりするだけで効果をあげることはできない」と指摘していたそうである。これは早めにECBのドラギ総裁に言ってあげると良いかもしれない。

 黒田総裁は日銀の過去の政策を振り返り、2つの要素が足りなかったのではないかとしている。過去の政策に足りなかった第1の要素は、物価安定への強いコミットメントだそうである。2001年に開始した量的緩和政策で設定した閾値はゼロ%と低いものであり、結果的にみれば早めの解除になってしまったとしている。これで日銀が「デフレファイター」としての信認を十分に得られなかった原因となってしまったそうである。

 その後の「中長期的な物価安定の目途」についても、設定された数値は1%と低いものであり、このように物価安定へのコミットメントが弱かった結果、期待への働きかけが十分ではなく、民間主体に根付いたデフレマインドを払拭することはできないとしている。

 そして、過去の政策に足りなかった第2の要素は、イールドカーブ全体への押し下げ圧力としている。

 そもそも1999年2月のゼロ金利政策は長期金利上昇抑制が目的であったし、2001年の量的緩和政策は2003年6月に超長期債の利回りが1%を割り込むまで低下して、VARショックと呼ばれた国債相場の急落を迎えたような気がするのだが。

 「グローバル金融危機後に実施されたFRBとイングランド銀行による長期国債の大量買入れは、その後の研究で効果的であることが実証されており、中央銀行の実践が理論の発展に先行した例であると理解しています。」(黒田総裁)

 どこにそのような実証研究結果があるのか。確かに中銀関係者が個人名義で出したレポートはあったと思うが、それでも具体的に効果があったかどうかははっきり示されておらず(関連と見られるレポートには、単なる偶然かもしれない、とのコメントもあり)、景気の押し上げ効果などに寄与した可能性が推計された数字で示されていただけのような気がする。もしやどこか知らぬところに別の研究成果があるのか。

 そもそもFRBとイングランド銀行は、物価安定へのコミットメントを強めるような政策を採用したであろうか。「非伝統的金融政策の実践と理論」というタイトルにしては、実践結果と理論の裏付けに具体的な証拠が示されていない気がする。

 日銀の量的・質的緩和により、人々のインフレ予想は全体として上昇し、日銀の巨額の国債買い入れは10年物長期金利を0.6%程度という低水準に抑制していている点を持って、クルーグマン教授およびウッドフォード教授やエガートソン氏による理論に共通するメカニズムが実践されたとしている。

 果たしてそうなのか。ここにきての欧州の長期金利低下も著しいが、ECBは特に国債買入などは決定していない。日銀もECBも手段は異なれど、債券市場参加者の期待に働きかけている、ということなのか。非伝統的金融政策に関する実践と理論の本当の答えが出るのは、それほど時は必要とされないかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-06-10 09:34 | 日銀 | Comments(0)

長期金利と名目成長率の逆転現象は危機の前触れか

 かなり前の記事ではあるが、5月26日の日経新聞に「ちらつくバブルの芽? 日米独の成長率、長期金利上回る」と興味深い記事が掲載された。日本の長期金利が低位安定しているなかで、名目成長率がそれを上回ったが、これは日本だけでなくドイツや米国も同様であった。しかも過去に長期金利を名目成長率が上回ったあとにバブル崩壊が起きていた。  

 経済協力開発機構(OECD)によると、米国とドイツは2010年、日本は2013年から名目のGDP成長率が長期金利を上回った。1980年以降ほとんどの年で名目成長率が長期金利を下回っており、二つの水準が逆転するのは異例とされる。

 歴史を振り返ると、名目成長率が長期金利を上回る逆転現象が起こったのは、日本はバブル経済が最盛期だった1988~1990年。米国ではITバブルがあった1998~2000年、リーマン・ショック前の2003~2006年。ドイツでも2006~2007年に逆転現象が起こった。長期金利が名目成長率を下回った時期はいずれもバブルとぴたりと重なり、その後、さほど時を置かずにバブルが崩壊し、金融経済ショックが発生している。

 今回の日米独の長期金利と名目成長率の逆転現象は、リーマン・ショック、さらにはギリシャ・ショックと度重なる金融危機に対処するための日米欧の中央銀行による大規模な金融緩和が影響していることは確かであろう。日銀はリスク後退時にさらなる大規模な追加緩和を行ったことで、日本の長期金利と名目成長率の逆転現象が生じた。欧州の信用危機により大きく上昇していたイタリアやスペインの長期金利は、今度は過去最低を記録するなど極端な動きを見せている。

 現在の日米欧を取り巻く状況がバブルかと言えば、そのようには感じられない。大きなリスクが後退し景気も回復しつつあり、日本の物価も上昇してきたところである。しかし、長期金利は0.6%という低水準に止まっている。

 米国ではダウやS&P500種が過去最高値を更新するなどしており、これもある意味バブルという現象を示唆している可能性がある。バブルは崩壊するまではバブルとはわからない。長期金利と名目成長率の逆転現象は今後、大きな地殻変動が起きる可能性を示してはいまいか。

 あまりに動かない日本の債券市場であるが、それは今後の大きな変動が起きることを示唆している可能性もある。どのような動きが今後、出るのかはわからないが、その兆候を見逃さないようにし地殻変動に備えておく必要もありそうである。

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by nihonkokusai | 2014-06-09 08:11 | 国債 | Comments(0)

ECBも壮大な実験を開始

 6月5日のECB政策理事会では、包括的でパッケージされた追加緩和策が決定された。政策金利は0.1%引き下げられ、リファイナンス金利が0.25%から0.15%となった。コリドーとよばれる政策金利の上限と下限については、上限金利が0.4%%に引き下げられ、注目された下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)はマイナス0.1%となった。

 ECBの発表した声明文によると、「The negative rate will also apply to reserve holdings in excess of the minimum reserve requirements and certain other deposits held with the Eurosystem.」とある。つまりマイナス金利は預金ファシリティ金利だけでなく、超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用される。

 今回のECBの追加緩和については、利下げ幅に限界があったため小幅利下げとならざるを得ず、このため緩和効果をより発揮せるため、主要中銀としては初めてのマイナス金利の導入を決定したとみられる。しかし、個人的にはあくまでアナウンスメント効果狙いで、今後の量的緩和政策の導入を見据えれば、超過準備の付利は行わず、資金の逃げ道を作るとみていたが、その逃げ道も完璧に塞いだ格好となる。

 ECBは今回、新型のLTROとなる金融機関に対しての期間4年・4000億ユーロの資金供給オペ(TLTRO)の導入や、過去の証券市場プログラム(SMP)で供給された流動性を吸収するため毎週実施していた不胎化オペの中止、資産担保証券(ABS)買い入れに向けた準備をすることなども決定した。

 今回のECBの政策は量的緩和とは一線を置いて、信用緩和を意識した格好となっている。新型のLTROに加え、ABS買い入れについても量的緩和を意識したものではなく、中小企業への支援などが目的と思われる。

 さらに預金ファシリティ金利だけでなく、超過準備を含めてのマイナス金利の導入がひとつのポイントとなる。日銀の量的・質的緩和の目的はベースマネーそのものを引き上げて、それにより物価上昇を期待するものであるのに対し、ECBの今回の政策はむしろ超過準備などの部分にペナルティーを与えることで、ポートフォリオリバランスを狙っているように思われる。

 6日の欧州の債券市場ではベルギーやフランス、アイルランド、イタリア、スペインの国債利回りは過去最低を記録した。ECBの追加緩和は欧州の国債バブルをさらに加速させた。

 アベノミクスが成功し日銀の異次元緩和は一見、うまくいっているように見える。しかし、ECBは最終的に物価を上げるために、量的緩和政策とは相反することになるマイナス金利も導入した。これがうまく行くのか。壮大な実験がもうひとつ始まった。

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by nihonkokusai | 2014-06-07 12:07 | 中央銀行 | Comments(0)

もはやデフレではない、の意味

 政府が月内に策定する経済財政運営の基本方針「骨太の方針」の原案が判明し、このなかで日本経済の現状を「もはやデフレ状況ではない」と強調し、戦後復興を象徴する流行語となった「もはや戦後ではない」(1956年の経済白書)を彷彿とさせる表現で経済政策「アベノミクス」の成果を評価した(毎日新聞)。

 国際通貨基金や国際復興開発銀行などの組織を中心したブレトン・ウッズ体制のもと、1955年あたりから日本経済は高度経済成長の波に乗り、好景気が1964年まで続いた。その期間の中でも、1955年から1957年にかけて日本は「神武景気」と呼ばれた大型景気を迎えたのである。主要な経済指標は戦前水準を回復し、1956年度の「経済白書」では「もはや戦後ではない」と宣言した。それだけ戦後の日本経済が立ち直ってきたという証でもあった。

 「骨太の方針」の原案によるとアベノミクスの成果として、1~3月期まで6四半期連続のプラス成長となった実質GDPや、3%台半ばまで低下した失業率などの経済指標を取り上げ、「もはやデフレ状況ではなく、デフレ脱却に向けて着実に前進している」と明記しているそうである。

 念のため、日本のGDPの推移を確認してみるとアベノミクスが登場した2012年第4四半期にプラスに転じ、そこから2014年第1四半期まで6四半期連続でプラスとなっている。米国はこの間、2014年第1四半期がマイナス1.0%となるまでプラスが維持されている。ユーロ圏は日本よりは遅れたが、2013年第2四半期にプラスとなり4期連続のプラスとなっている。英国は日本と同じく2012年第4四半期にプラスに転じ、そこから2014年第1四半期まで6期連続でプラスとなっている。日本の6四半期連続のプラス成長の要因とは何であったのか。アベノミクスによる急激な円高修正が影響したことは確かであるが、それ以外の要因も考慮する必要がある。

 失業率についても、アベノミクスが開始される前にすでに改善傾向にあった。景気回復がさらなる改善に寄与した可能性はあるが、世界的な危機の後退による経済の回復や円高修正による影響を除いて、どの程度アベノミクスと呼ばれた政策が寄与したのか。特に第三の矢と呼ばれた成長戦略に具体性がなかったこともあり疑問が残る。

 物価そのものについては、市場よりも日銀の見方が正しかったという結果となっており、その意味で予想以上の物価上昇となっている。4月は消費増税の影響を除くと日銀が目標としているコアCPIは前年比プラス1.5%となっている。これには円安の影響もあり、消費増税を機にこれまで売上げの伸び悩みを恐れて行ってこなかった価格転嫁も起きていた可能性も否定はできない。

 しかし、そもそもデフレとは何か。今回のデフレ脱却宣言に見えるものも、物価そのものを全面に押し出すのではなくGDPや失業率を持ってきている。物価さえ上がればうまくゆくとしたのがリフレ政策であったとすれば、物価上昇を基調において、その結果としてGDPや雇用も回復したものであったのか。景気が回復してその結果物価も上がるというのは本来あるべきものと思うが、少なくとも一本目の矢は物価そのものをターゲットにおいていたはずである。この最初の矢の効果はどれだけあったのか。アベノミクスの成果を評価するのであれば、ここをまず重視しなければいけないのではあるまいか。

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by nihonkokusai | 2014-06-06 09:11 | インフレ・デフレ | Comments(0)

米長期金利の乱高下の謎

 5月29日に米国の10年債利回り、いわゆる長期金利は一時2.40%まで低下した。米国の長期金利ばかりではなく、28日にベルギーの長期金利も1.86%と過去最低水準をつけ、ドイツの長期金利は1.34%に低下した。英国の長期金利も2.55%に低下するなど、欧米の長期金利は軒並み低下した。

 この欧米の長期金利低下の要因は、ECBの追加緩和期待によるものと思われる。特に世界的なリスクが高まっているわけではなく、欧州ではスペインの長期金利も過去最低を記録するなど周辺国の長期金利も低下していた。米国債だけの動きであれば、米国内の要因による動きの可能性はあるが、買われる時も売られるときも、米国、ドイツ、英国の国債の動きがほぼ一緒であることをみると、同じ材料をもとにして動いている可能性が高い。「噂で買って事実で売る」との相場格言があるが、ECBの追加緩和観測を元に欧米の国債買いを仕掛けていたヘッジファンドなどがいた可能性がある。

 米長期金利は2.5%という節目を割り込んできたことで、テクニカル上のショートカバーの動きが入り、さらに低下してくる可能性もあるかと見ていたが、「まだはもうなり」という格言のような動きとなった。米長期金利は29日の2.40%が底となり、それ以降は反発している。どうやら事実がはっきりする前に、ヘッジファンドは米債などのロングポジションを早めに外してきたのではなかろうか。

 欧米の債券は仕掛的な動きに翻弄されているが、これはアベノミクスの登場の際のヘッジファンドの仕掛とも相通じるものがある。ただし、ECBの追加緩和については、アベノミクスほどのリフレ感が漂うものではなさそうである。

 ECBは小幅利下げでマイナス金利を強調した上で民間企業への貸出促進策など何かしら加えるパッケージに止める可能性がある。預金ファシリティ金利をマイナスとしても、当座預金の超過準備に付利がなされないという状態が継続すれば、量的緩和も技術的には可能となる。ただし、量的緩和手段としては域内国債の買入が主体となりそうだが、これについてはドイツ連銀のバイトマン総裁が反対している。

 継続的な追加緩和も意識するのであれば、黒田日銀方式のバズーカではなく、音は大きくなくても連射が可能な砲弾を撃ってくる可能性が高い。ディスインフレへの懸念、多少修正されたものの高止まりしているユーロ等を考慮し、今後の追加緩和への期待感で市場を誘導しようとする可能性がある。ただし、これもあくまで推測に過ぎず、現実に何をしてくるのかは5日の理事会を待たなくてはならない。

 ドラギ・マジックは今回も通用するのか。市場では今回はマジックと呼ばれるほどの効果はないとの見方も出ており、その結果として欧米の長期金利の乱高下を招いた可能性もある。5日に向けた予行練習は行ってしまった格好だが、昨年4月の日銀の異次元緩和後に日本の長期金利が乱高下した如く、欧米の長期金利も理事会後に大きく動く可能性もある。欧米の長期金利の動きは、日本の長期金利にも多少の影響はあったが、円債はほとんど動じておらず、それによる影響は限定的であった。しかし、為替などへの影響も考慮すると今後の欧米の長期金利の動向も要注意となる。

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by nihonkokusai | 2014-06-05 09:19 | 債券市場 | Comments(0)
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