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中央銀行の市場を巡る新たな戦い

 日米欧の中央銀行が為替動向などを睨みながら新たな戦いを始めている。欧州の信用リスクは後退し、ウクライナ情勢等の不安は残るものの、百年に一度とされるような金融危機は過ぎ去った。FRBは昨年12月にテーパリングを開始した。今年10月あたりにはテーパリングは終了し、それから少し時をおいた後、利上げを行い金融政策を正常化させようとしている。

 イングランド銀行もすでに新たな量的緩和を決定するのではなく、利上げを睨んでの動きとなってきている。カーニー総裁は14日、英経済が金融政策の引き締めを必要とするポイントに近づきつつあるとの認識を示した。ただし、政策金利の引き上げは来年まで待つ意向も示唆した(ブルームバーグ)。

 欧州の信用不安を象徴するかのようにイタリアやスペイン、アイルランドなどの国債の利回りは一時過去最低水準に低下した。さすがにこれは行き過ぎの感もあるものの、その背景にはECBの追加緩和期待がある。

 ECBのメルシュ理事は14日に6月の次回会合で行動を起こすことに「やぶさかではない」とドラギ総裁が8日に述べたのは、トリシェ前総裁の手法を踏襲したものだと語った。2003年から11年までの在任中にトリシェ前総裁は利上げ実施の1か月前になると強い警戒という表現を用いていた。ただし、利下げの前にこの表現は使っていない。ドラギ総裁の次回理事会での金融政策の変更示唆は、トリシェ前総裁の手法を意識しながらも、追加緩和という意味では新たな手法と言える。

 金融引き締めは事前に浸透させ、金融緩和はサプライズ感も意識させることが重要であり、トリシェ前総裁はその手法を意識したとみられる。それに対してドラギ総裁が追加緩和を事前に示唆するということは、ある程度手段が限られるなか、アナウンスメント効果を意識して特に為替に働きかけようとの意向であった可能性もある。

 市場への働きかけと言えば、日本に良い事例があった。2012年11月のアベノミクスの登場である。安倍自民党総裁がリフレ政策を提唱し、それで外為市場では急激な円安が発生し、株高を招くとともに物価上昇の要因となった。ECBの追加緩和観測の背景には、ECBの目標ではないが目安としている物価の低迷がある。日本の事例を参考に、ユーロ安を通じて物価に働きかけようとしている可能性がある。

 興味深いことに、このECBの追加緩和観測やイングランド銀行の早期利上げ観測の後退が、欧米の長期金利の低下圧力に繋がっていることである。英国やユーロ圏の国債の利回りが低下、つまり長期金利が低下するのはわかるものの、それにつられて米国の長期金利までもが低下し、一時節目の2.5%を割り込んだ。

 外為市場を動かす要因としては、中央銀行の金融政策などとともに金利差も意識される。FRBはテーパリングを開始したことで、米長期金利は上昇するとの観測も強かったが、上昇するどころかむしろ低下している。これは見方によれば円高ドル安要因ともなる。

 当然ながらECBの動きはユーロ売りの要因ともなる。追加緩和の期待でユーロを売って、実際の政策変更時に買い戻すようなトレードも入っている可能性がある。金融政策や金利差だけで為替は動くわけではないが、短期的に見ると円高圧力が強まることも予想される。

 米国のダウ平均は一時過去最高値を更新したが、ここにきての東京株式市場は上値が重くなっている。消費増税による影響等が意識されているかもしれないが、それよりも日本株を買うという材料に乏しいことが要因となっているように思われる。アベノミクスにより円安・株高がもたらされたが、その勢いは後退した。株式市場や外為市場を中心に日銀の追加緩和期待も出ていたが、戦力の随時投入をしないと黒田日銀総裁は言い続けているが、物価の上昇や雇用の回復等を背景に、動かずとも物価目標は達成可能との見方により、動く必要はないとの姿勢を示しているように思われる。

 中央銀行の金融政策はあくまで時間を稼ぐ政策とされているが、問題はその時間をどれだけ稼げるかにある。アベノミクスが登場し、昨年4月の異次元緩和でそれが実行に移された。物価は確かに上がった。しかし、すでに市場でのアベノミクスや日銀への期待は後退している。そんな最中にECBがユーロ安政策を打ち出そうとし、それに乗っかって欧米の長期金利が低下しており、日本の長期金利は下げ余地がほとんどない状態のなか、円高圧力が徐々に強まる可能性がある。

 ここで円高圧力が強まり、仮にドル円が100円を割り込むようなことになれば、その対応が日銀に求められることも考えられる。日銀としてはその前に何らかの仕掛を講じる必要もあるが、戦力の随時投入はしないと言っている以上、小手先の手段は使えないし、使ったとたんに日銀には大胆な手段はもう取れないとの認識が強まるような事態となる可能性もある。

 ECBのドラギ総裁のマジックが有効なのかと言えば、こちらも不安は隠せない。いわゆる見せ玉といった手段に終わる可能性もある。歴史的な金融リスクが過ぎ去ったあとでの非伝統的手段にどのような意味、効果があるというのか。このあたりすでにそこから抜けだそうとしているイングランド銀行やFRBのほうが適切な対応をしているように思われる。英国債や米国債の国債利回りが跳ね上がっては困るはずが、それを結果としてECBが押さえ込む格好となっているのは何とも皮肉である。

 最後のババを抜くのは誰なのか。今後の日米欧の長期金利の行方、ドル、ユーロ、ポンドそして円の行方を左右してきそうなのが、中央銀行の動向となりそうであり、ここでの神経戦にうまく対応できなくなると、その中央銀行はかなり苦しい立場に追い込まれる懸念がある。

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by nihonkokusai | 2014-05-19 08:08 | 中央銀行 | Comments(0)

リスクオフのような市場の動きの背景

 14日の欧米の債券市場では、ECBの追加緩和観測の強まりに加え、イングランド銀行の利上げ時期が予想より後ずれかとの見方から軒並み国債に買いが入り、イタリアやスペインの長期金利は過去最低を更新した。ドイツや英国、そして米国債も買われた。

 15日に発表された1~3月期のユーロ圏の域内GDP速報値が市場予想を下回り、ECBが15日に公表したユーロ圏経済に関する第2四半期の専門家予測調査(SPF)では2016年のインフレ率予測が下方修正された。

 ところがECBの追加緩和観測よりも、GDPの数字が嫌気され、米国株式市場が大幅安となっていたこともあり、15日の欧州の株式市場は大きく下落した。米国の株式市場の下落は特に材料が出たわけではなく、四半期決算で利益が市場予想に届かなかったウォルマートが下げ、小型株の下落なども影響したとされる。ダウが過去最高値を更新するなど高値圏にいたことでの利食い売りが入り、大きな下げに繋がった。

 この株の下落もあり、15日の欧米市場ではECBの追加緩和期待よりも、リスクオフのムードが強まることとなった。米国やドイツ、英国の国債が大きく買われたのもその動きを示したものと思われる。ドイツの10年債利回りは一時1.3%割れとなり、英国の10年債利回りも2.52%近辺に低下した。さらに米10年債利回りは2.5%を割り込んでいた。外為市場では円高が進み、これもリスクオフの動きと言えるのではなかろうか。

 どうやら相場は動きを見せ始め、ちょっとした材料に反応しやすい地合になりつつある。何かしらのシナリオが見えてきているわけではなく、これからシナリオを形成しようかとの動きのようにも映る。

 15日のリスクオフムードの強まりの背景にはギリシャがあった。ギリシャは世論調査で連立政権が支持を失いつつあることが示され、政権崩壊かとの観測も出ていた。ギリシャ国債を保有する外国投資家にキャピタルゲイン税が過去に遡って課税されるとの警戒感も出ていたそうだが、これについてギリシャ財務省は遡及的に課税することはないと説明した。

 ギリシャが再び危機的状況に陥る可能性はそれほど高いとは思えない。ただし、欧州の信用不安の後退に加え、ECBの追加緩和観測でイタリアやスペインの10年債利回りが過去最低を更新し、ギリシャの国債も同様に買い進まれるなど、やや行き過ぎの面もあった。このため欧州の周辺国の国債も米国株式市場同様に高値波乱の様相を示し始めたと思われる。

 米国株もユーロ圏の周辺国の国債も、特に好材料が出ての高値更新というわけでなく、悪い材料がないなかでの過去最高水準(利回りは過去最低水準)をつけており、ある意味バブル的な動きとなっていた。その反動が起き、リスクオフのような動きとなっていた。

 そして今度は何かしらのリスクが高まっているとも思えないなかで、米国やドイツ、英国の国債が買い進まれている。その流れに多少乗って日本国債も買われ、10年債利回りは0.6%を割り込み、債券先物も直近の戻りを試している。

 米10年債利回りの2.5%は大きな節目と思われる。昨年6月21日にバーナンキFRB議長による緩和策縮小への発言で2.5%台に乗せてからは、ここを大きく割り込むことはなかった。米10年債利回りの低下はこの水準あたりまでと思うが、もしさらに一段と低下するようなことがあると状況が変わる。

 目に見えるリスクが存在しないなかでのリスクオフのムードは単なる相場の調整なのか。それとも現実に何らかのリスクが背景に存在するのか。ECBの追加緩和そのものが相場の攪乱要因となるのか。そのあたりを見極めないことには、手が出しにくい相場となっている。為替市場を含めて不安定な動きが続くとなれば、追加緩和の有無はさておき、来週の日銀の金融政策決定会合も要注意となる。

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by nihonkokusai | 2014-05-17 08:22 | 債券市場 | Comments(0)

日米欧の中央銀行の神経戦開始

 15日に発表された2014(平成26)年1~3月期四半期別GDP速報によると、成長率は年率プラス5.9%と予想の4.4%程度を大きく上回り、名目もプラス5.1%となった。予想された消費増税引き上げ前の駆け込み需要の影響で個人消費(民間最終消費)がプラス2.1%となった。さらに民間設備投資が前期比プラス4.9%もの伸びとなった。こちらは企業業績の回復も背景にあるとみられる。この結果、2013年度の成長率は実質でプラス2.3%、名目でプラス1.9%となり、2014年度へのいわゆるゲタは実質で1.2%を確保したことになる。

 GDPデフレーターは前年同期比プラス0.0%となった。プラス転換は2009年7~9月期以来18四半期ぶりとなる。甘利経済財政・再生相はGDPデフレーターがプラス転換したことを受けて「デフレ脱却に向けて着実に前進している」との認識を示した(日経電子版)。

 1~3月期のGDPはある程度高めに出ることが予想されていたが、事前予測でもここまでの高さは予想されておらず、ややサプライズ感があった。また、GDPデフレーターがプラス転換したことも日銀の金融政策に少なからず影響を与える可能性がある。

 イングランド銀行は15日に四半期物価報告を公表した。カーニー総裁は記者団に対し、利上げに関して「最終的にはこの先の経済の展開次第で決まる。とりわけスラックの度合いとそれが解消される見通し、そして広範なインフレ見通しに左右される」と語った。つまり利上げを急がない姿勢を示し、年内の利上げの可能性は後退した格好となった。

 ECBのメルシュ理事は14日、6月の次回会合で行動を起こすことに「やぶさかではない」とドラギ総裁が8日に述べたのは、トリシェ前総裁の手法を踏襲したものだと語ったそうである。2003年から11年までの在任中にトリシェ前総裁は利上げ実施の1か月前になると強い警戒という表現を用いていた。ただし、利下げの前にこの表現は使っていないそうである(ロイター)。

 金融引き締めは事前に浸透させ、金融緩和はサプライズ感も意識させることが重要であり、トリシェ前総裁はその手法を意識したとみられる。それに対してドラギ総裁が追加緩和を事前に示唆するということは、ある程度手段が限られるなか、アナウンスメント効果を意識して特に為替に働きかけようとの意向であったのかもしれない。このあたり、2012年11月にアベノミクスが登場して日銀総裁、ではなく自民党総裁が大規模な追加緩和を示唆し、円安を導いたことも意識された可能性がある。

 ECBのプラート理事はドイツ紙ツァイトとのインタビューで、「条件付きになるだろうが、銀行に一段の長期資金を提供することは可能。再利下げも可能。複数の措置の組み合わせも考えられる」と述べたそうである。そしてECB内では最も注目されるドイツ連銀のバイトマン総裁もECBが政策行動を起こす必要があれば、ドイツ連銀も行動の用意があると表明した。ただし、量的緩和について、ユーロ圏の低インフレ解消に「おそらく」適していないとの考えを示したそうである(ロイター)。

 このあたりの発言からは選択肢としては、どうやら利下げの可能性が高そうで、下限金利のマイナスも視野に入れている可能性もある。いずれにせよ6月にECBが何らかの行動を起こす可能性は高まってきている。

 FRBのイエレン議長は、就任後初の会見で具体的な利上げの時期について、量的緩和終了後半年後と述べてしまったが、これはどうやら口が滑ってしまったもののようで、その後は火消しに走っている。実際にはイングランド銀行と同様に利上げについて検討はしていてもその素振りは見せず、過度に市場が織り込まないよう配慮しているものと思われる。

 ECBの追加緩和観測の強まりとイングランド銀行の年内の利上げ観測の後退などから、欧米各国の長期金利は大きく低下し、15日に英国の10年債利回りは2.58%近辺に低下し、イタリアやスペインの長期金利は過去最低を更新した。ドイツの長期金利は1.38%に低下し、米長期金利も2.54%に低下した(16日には2.5%割れに)。

 来週20日、21日には日銀の金融政策決定会合が開催される。ECBは為替動向を見据えての動きを強め、イングランド銀行とともにFRBも利上げ観測を少しでも和らげようとしており、欧米の長期金利の低下も含め、外為市場では円高圧力が高まることも予想される。

 日銀としては1~3月期のGDPやデフレーターをみても、異次元緩和が効いているとの認識を示すことも予想される。1~3月期よりも消費増税後の4~6月期の方が気になるものの、日銀の見解としては4~6月期もそれほどの落ち込みはないとしており、民間の予想も小幅に上方修正(ESPフォーキャスト調査)するなどしている。

 しかし、ここで日銀にとって異次元緩和の効果を強調してしまうと追加緩和観測がさらに後退し、これによる円高圧力が強まることも予想される。このあたり、外為市場を巡っての日米欧の中央銀行の神経戦が始まっている。日銀がどのような姿勢を見せるのか。21日の決定会合結果とともに、黒田総裁の会見内容、しいてはネクタイの色を含めて注目する必要がありそうである。

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by nihonkokusai | 2014-05-16 08:10 | 中央銀行 | Comments(0)

物価連動国債の個人保有が来年1月に解禁

 財務省は物価連動国債について、これまで認めていなかった個人の保有を2015年から解禁すると発表した。財務省の報道発表によると、「平成28年1月以降に満期を迎える物価連動国債について、平成27年1月より、国債に関する法律(明治39年法律第34号)第2条の2に基づく譲渡制限を解除し、個人等による保有を可能とする」とある。

 物価連動国債とは、米国ではTIPS(Treasury Inflation Protection Securities)と呼ばれ親しまれている国債でインフレ連動債とも呼ばれている。英国で1981年に発行が開始されて以降、欧米を中心に発行が増加し、特に1997年に発行が開始された米国が市場規模として最大となっている。

 通常の固定利付国債は発行時の元金額が償還時まで不変で、利率も全ての利払いにおいて同一となる。つまり発行後にもし物価が上昇すると、名目ではなく実質ベースでみた通常の固定利付国債の債券価値は低下してしまうが、物価連動債の場合、クーポン利率は固定であるものの、物価上昇に連動して元本が増加するため、インフレの際にも実質的な価値が低下しない債券となる。

 これまで日本では物価連動国債は個人への譲渡は認められていなかった。つまり個人が物価連動国債を購入することはできなかった。その障害となっていたとされる課税の取り扱いについて「譲渡所得」を2016年から申告するよう制度を整備した結果、2016年1月以降に満期を迎える物価連動国債について、来年1月より個人の保有が可能となったようである。

 ただし、個人向け専用の物価連動国債が発行されるわけではなく、2016年1月以降に満期を迎える既発債を含めて、これまで法人向けに発行されてきた物価連動国債に関して、個人が来年1月から購入可能となる。

 14日の日経新聞によると、物価連動国債を組み込んだ投資信託の売れ行きが1年前の4.3倍になったものがあるようで、物価上昇を意識した購入も増えてきているそうである。ただし、物価連動が反映される仕組みを個人がどの程度、理解して購入するかという問題もあろう。個人向け国債も10年変動タイプの仕組みはなかなか理解されにくいとの声もあった。それでも10年債の利回りに連動するものより、物価に連動したほうが個人としてはわかりやすい面もあるかもしれない。

 個人向け販売が解禁されていきなり個人の需要が見えるかどうかは未知数であるが、デフレ脱却を掲げたアベノミクスの登場と、それを実行に移した日銀の異次元緩和、そして円安の効果も大きいとはいえ現実に物価も上昇していることから、個人の関心は高いのではないかと思われる。

 個人向け専用でないとなれば、販売する証券会社などは途中売却による端債のポジションのことも意識しなければならず、二の足を踏む可能性もある。できれば個人向け専用としての物価連動国債が望ましいように思う。いずれにせよ、個人の将来の物価感も販売額に影響することも考えられることで、日銀を含めて、来年1月以降の個人による物価連動国債の販売実績を注目してくることも考えられる。

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by nihonkokusai | 2014-05-15 09:39 | 国債 | Comments(0)

債券市場を揺るがすパラダイムシフトが起きる可能性

 今年の1月10日に日本の10年国債の利回りは0.7%を割り込み、2月5日に0.6%を割り込んだ。その後、0.6%割れは何度かあったものの、3月3日につけた0.570%あたりまでとなり、現在に至るまで10年債利回りは0.6%近辺の膠着相場が続いている。このような債券の膠着相場が続くのは今回ばかりではない。2011年8月あたりから2012年4月あたりにかけて10年債利回りは1%近辺での推移が続いた例もあった。

 今回の債券市場の膠着感については、日銀の異次元緩和により金利が抑えられるとともに、流動性が後退した結果との見方もできなくはない。しかし、2011年から2012年あたり動きを見る限り、異次元緩和がなくても長期金利は低位で安定し続けた例があり、その原因をすべて日銀の金融緩和にしてしまうことには無理がある。

 日銀が再び実質的なゼロ金利政策を決定したのが、2010年10月の決定会合であり、包括緩和政策と呼ばれたものである。この際に「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとした。そして、2012年2月に日銀は物価安定の目途(コアCPIの1%)を示すことにより、実質的なインフレ目標策を導入した。2014年4月には量的・質的金融緩和を導入し、2%の物価目標を設定した。

 その物価であるが、コアCPIは前年比プラス1.3%あたりまで上昇しており、黒田総裁以前の日銀であれば、物価の安定が展望できる情勢になりつつあるとの判断を下すタイミングを計ってもおかしくはないところまで来ている。ここに消費増税の影響を加味すれば、前年比プラス3%近くまでの上昇が予想される。もちろん日銀が目標として掲げる2%は消費増税による物価上昇分は加味しないが、消費者の実感としては3%近くの物価上昇ということになる。

 それでも債券市場ではデフレ払拭感はほとんど見られない。日銀のゼロ金利政策は半永久的に続くかのような状況にある。短期金利がゼロに近いのであれば、長期金利が0.6%でもおかしくはないとの指摘もあるかもしれない。しかし、米国ではテーパリングを初めてはいるが、いまでも実質的なゼロ金利政策は継続中であるにもかかわらず、長期金利は2.7%近辺にいる。

 日銀は物価目標の2%の意味についてグローバル・スタンダードであるためと説明するが、それでは長期金利も欧米の水準がグローバル・スタンダードということなのであろうか。そうであれば現在の米CPIは日本のCPIとそれほど乖離しておらず、日本の長期金利も2%台にあってもおかしくはない。それではこの長期金利の日米の乖離は何が原因であるのか。

 相場はデジタルのような形成されるわけではなく、アナログのように連続して形成される。このため絶対水準そのものの意味よりも、少し前の段階から比べて現在の水準が形成されている面がある。その意味では長きにわたり低位安定し続けた結果が、現在の0.6%の長期金利を形成したものとも言える。つまり0.6%に何らかの意味を見いだすことはむずかしい。ファンダメンタルからの乖離は、日銀の金融政策によるマイナスプレミアムとは単純には説明できない。

 今回の長期金利の0.6%近辺での膠着相場がどこまで続くのかはわからない。そして、よほどの事態が発生しない限り、この相場はまだ続くことが予想される。もうそろそろ動いてほしいとの期待は私を含めて市場参加者には多いと思うが、現状は「もうはまだなり」と言えそうである。ただし、日本の債券市場を揺るがすようなパラダイムシフトが起きる可能性がないわけではない。そのためのエネルギーはかなり長期にわたり蓄積されていることも事実ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-05-14 09:05 | 債券市場 | Comments(0)

日本の潜在成長率と長期金利

 日銀の黒田総裁は会見で次のようなコメントをしている。

「わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想しています。」

 4月30日に発表された展望レポートの注釈によると、「わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。」とある。つまり、黒田総裁が指摘している日銀推計の日本の潜在成長率は「0%台半ば」ということになる。ただし、展望レポートの注釈でも「潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。」ことも指摘している。

 日銀の推計した潜在成長率が正しいものであるのかどうかはわからない。そもそも測定そのものが難しいことで日銀よりやや高めの数字を出しているとされる政府の推定値を含め、これを元に議論することは少し無理があるかもしれない。

 たとえば2007年の福井総裁の当時も、総裁のコメントのなかに日本経済は潜在成長率を若干上回る成長を持続しているとのコメントがあった。消費者物価指数(除く生鮮)の推移を確認すると、2008年7月には前年比で2%を一時超えていた。グラフだけで見ると潜在成長率を上回る成長により物価が上昇したと見えなくもないが、当時の状況を振り返ると、原油価格や穀物価格などの上昇による石油製品や食料品の値上がりが主要因となっていた。翌年7月のコアCPIはマイナス2.2%となっていたように、潜在成長率との兼ね合いで説明することは難しい。

 日銀の早川英男前理事は先日、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、経済の実力である潜在成長率が低下する中で日銀が掲げる2%の物価目標実現が近づいており、国債価格暴落の可能性が高まっていると警告していた。

 早川氏は日銀が先月30日公表した展望リポートで、GDP成長率見通しを2013年度、14年度とも下方修正した一方で、コアCPIの見通しを据え置いたことについて、「成長見通しを大幅に下げて、物価は上がるとすると、それは普通に考えれば潜在成長率が下がったと考えるべきだ」と指摘した。

 このあたり2%の物価目標ありきの展望レポートであり、潜在成長率の低下を意識しての数字であったのかどうか疑問である。そもそも展望レポートは日銀の調査統計局とかが算出しているものではなく、あくまで一応、日銀の政策委員の見方の集計である。

 もし日銀は潜在成長率の低下により、デフレ脱却が可能としているのであれば、アベノミクスとはそもそも何が目的であったのかということになりかねない。むしろ政府の政策であれば、潜在成長率を高め日本の成長に向けた土台作りが求められるはずが、物価の上昇や雇用の改善をもって良しとして良いものなのであろうか。黒田総裁の発言には矛盾があるように思われる。

 日本の長期金利は名目成長率と比較されることが多いが、ここにきても長期金利は0.6%という超低位で推移し続けているところをみると実質成長率と物価上昇率などよりも、日本の潜在成長率そのものだけを意識しているのではないかと思ってしまう。もちろんここには財政リスクプレミアムをほぼゼロと置いているというのも前提にあるのだが。

 早川氏の指摘するような国債暴落が物価目標の達成と潜在成長率の低下で引き起こされるかどうかはわからない。長期金利を形成しているのは債券市場参加者の思惑であり、それに変化が生じるきっかけとなるかどうかは未知数である。ここにきての経常黒字の減少(2013年度は7899億円と比較可能な1985年以降過去最低)などを見ても、日本の基礎体力がなくなりつつあるように思われることも確かである。

 今後の長期金利のシナリオを描く上で、日本の潜在成長力が低下しているとすれば、その影響をどのように捉えていくべきか、物価との兼ね合いを含めて考えておく必要がある。その意味で早川シナリオも念のため考慮しておくべきものなのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-05-13 09:17 | 日銀 | Comments(0)

ドラギ総裁のマジックショーが6月に開演か

 5月8日のECB政策理事会において金融政策は現状維持、つまり主要政策金利であるリファイナンス金利は0.25%、下限金利の中銀預金金利は0.00%、上限金利の限界貸出金利は0.75%にそれぞれ据え置かれた。

 理事会後の会見でドラギ総裁は、低いインフレ率が長期間続くことへの懸念を示し、ユーロ高に関して理事会で議論され、ユーロ高が低インフレの原因であるとの懸念が示された。為替レートは政策目標ではないが、物価安定のためにはユーロ高に対処する必要性を主張した。その上でドラギ総裁は来月行動する用意があることを明言した。

 4月のユーロ圏消費者物価指数は0.7%と3月の0.5%は上回ったものの、ECBが物価安定の目安としている2%弱の水準からは乖離している。日銀は2%の物価目標を掲げているが、ECBはインフレターゲット政策を採用してはいない。あくまで参考数値としての扱いではあるが、低インフレが続くことへの懸念を示し、その要因のひとつ思われるユーロ高に対処するため、追加の金融緩和策を次回6月5日のECB政策理事会で検討することを示唆した。ただし、具体的な緩和手段については言及しなかった。

 ECBの金融政策の変更については、前回の会見等で示唆があったケースが多かったが、2013年11月7日のECB政策理事会での電撃利下げの決定の際には、そのような示唆はなかった。このあたり総裁がドラギ氏に替わってパターンが変わったのかと思われたが、今回は昔のパターンに戻すような格好である。ただし、実際に6月に金融政策が変更されるのであればの話ではあるが。

 仮に何かしらの政策変更が6月に決定されるとして何を行ってくるのか。ディスインフレから脱するために、自国通貨の下落を意識しての金融政策の変更といえば、良い事例が存在する。むろんそれは日本の事例であるが、2012年11月からのアベノミクスによる円安・株高をドラギ総裁は意識している可能性がある。とするのであれば、小幅利下げなど中途半端な政策では効果が限定的であることも承知しているのではなかろうか。

 とはいえ主要政策金利であるリファイナンス金利をたとえば0.1%引き下げる可能性はある。そうなれば下限の中銀預金金利はマイナスとなる可能性がある。ここをマイナスとして、このマイナス面を強調するという手段もある。

 ただし、アベノミクスを意識するのであれば、ECBも大規模な国債買い入れによる量的緩和政策の導入も選択肢に入る。すでにそれを意識してか、イタリアやスペインの10年国債の利回りは過去最低水準にまで低下している。イタリアの長期金利は3%すら下回っており、あれほど欧州の信用リスクが騒がれていたのが嘘のような状況にある。

 果たしてECBもバズーカ砲を撃ってくるのか。物価への直接的な効果のほどはさておき、大きな音で市場に影響を与え、ユーロ売りを促進させてその結果、物価を少しでも上昇させることは一時的には可能かもしれないが、アベノミクスとは環境が大きく異なる点にも注意が必要となる。

 アベノミクスによる円安は円高圧力の強まりの反動、いわば円高調整とも言うべきものであり、円が売られやすい状況にあった。ところがユーロが買われているのは、欧州の信用リスク後退によるユーロ安の反動によるものが大きい。偏ったポジションとなっていない場面では、中央銀行が大きな音を鳴らしても相場は動いても一時的なものとなる可能性が強い。

 中央銀行の金融政策で為替の位置を動かし、それで物価も動かすことができるのか。まさにドラギ総裁のマジックショーが6月に開演するかもしれない。しかし、マジックが効く保証はない。また、量的緩和については当然ながら反対意見も出てくることが予想される。まさか口先だけでマジックを起こそうとしているわけではないと思うが、ECBに対する信認という意味においても6月の理事会は要注目というか、要注意となりそうである。

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by nihonkokusai | 2014-05-11 10:26 | 中央銀行 | Comments(0)

債券価格は需給だけで決まるのか

 FRBのテーパリングはいまのところ市場への動揺を与えることなく順調に実施されている。中央銀行による大規模な国債買い入れが減少しても、米国債の下落は限定的となり、米10年債利回り(長期金利)は2.5%近くで安定している。

 米10年債の利回りの推移をみるとFRBの国債買い入れによる需給への影響よりも、世界的なリスクや、FRBの金融政策などを先読みして動いている。つまり大規模な国債買い入れという需給面による影響よりも、世界的なリスクとその対策としての金融政策の行方などを見ながら米国債は売買されていた。まったく関係はないとは言えないが、FRBが国債を買い支えて低金利が演出されていたとは考えづらい。

 これに対して日本の長期金利が0.6%程度に押さえ込まれている要因としては、日銀が国債発行額の7割も買い入れているためとの説明がなされるが、米国債の動きを見る限り、中央銀行の金融政策の行方は影響していても、需給への影響で相場が左右されているということは結論づけられない。

 もちろん海外投資家の比率が高い米国債と国内資金で96%がカバーされてしまっている日本国債では、中銀の需給への影響度が異なるとの見方もあるかもれない。しかし、日銀が操作可能な短期金融市場と異なり、長期金利は市場で決定される以上、日銀が操作可能なものではない。現在の長期金利0.6%というのは、たまたまここで均衡しているだけと言っても良い。

 債券市場の動きが止まっている理由として、日銀の大規模な国債買い入れが指摘されているが、それについても疑問である。たしかに昨年4月の異次元緩和以降、国債の流動性が低下したことは確かであるが、月々の公社債売買高などを見ると異次元緩和前に比べて、それほど落ち込んでいない。

 ただし、まとまった金額の売買ができづらいことや、オファーとビッドが乖離していることなども指摘されている。これは相場そのものの動きが止まり、あまり売買を行っても妙味がなくなりつつある面もある。無理に債券で利益を揚げる必要がなくなれば業者もポジションそのものを減少させよう。

 債券市場に大きな影響を与えていた都銀が国債のポジションを減少させ、その分、売ってこない投資家である日銀のシェアが高くなったことも流動性に多少なり影響しているかもしれない。カレント物(新発債)を含めて、日銀がかなり買い入れてしまっていることは確かであり、それが流動性を低下されている側面はある。

 日銀の大規模な国債買い入れにより、10年債カレントの出合いのない日が出てきたり、0.6%という超低位の長期金利が演出されているとの見方は、裏を返せば日銀の大規模な国債買い入れがある限り、この水準は維持されるとの安心感に繋がりかねない。

 市場参加者は個人ではたとえそう思ってはいなくても、他の人はそう見ていると思うだけで0.6%という低い利回りでも国債を買うことができる。しかし、日銀を含めてこの利回り水準(もしくはさらなる低金利)が永遠に続くことを保証しているわけではない。

 いきなり国債が暴落するといったことはないと思うが、現在のような相場が永遠に続くこともあり得ない。市場の目線がいずれ国債の需給からほかのものに移ってくる可能性は十分考えられる。いまはそれが何かは見えていないが、何かしらのきっかけで表面化してくることも予想される。債券も含めて市場は本来、気まぐれで予想がつかないものなのである。

本日アップされた日経ビジネスオンラインの私のコラム、「国債を売り買いしている投資家とは “超大型空母”は日銀」も参考にしていただければ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140502/263928/

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by nihonkokusai | 2014-05-09 09:44 | 債券市場 | Comments(1)

FRBとテーパリングと米国債の関係

 FRBは昨年12月のFOMCにおいて毎月の米国とMBSの購入額を850億ドルから750億ドルに減少させ、量的緩和の縮小、いわゆるテーパリングを開始した。今年1月には650億ドルに縮小。3月に550億ドルに減少させ、今回4月に450億ドルとした。今後は6月17~18日に350億ドル、7月29~30日に250億ドル、9月16~17日に150億ドル、10月28~29日に150億ドルを一気に減らしてゼロとすれば、秋のうちに終了することが予想される。特に何かしらのリスク要因でも出ない限りはテーパリングは着々と進められよう。

 昨年9月にテーパリング開始の思惑から米国の10年債利回りは3%台に一時乗せたものの、9月17日から18日にかけて開催されたFOMCでは予想された量的緩和策の縮小開始を見送った。このため、米10年債利回りは低下し、10月には2.5%近辺に低下した。しかし、再びテーパリングの観測が強まり、12月17日、18日に開催されたFOMCにおいて、量的緩和政策の縮小の開始を9対1の賛成多数で決定した。その後、12月末にかけて再び10年債利回りは3%台に乗せたが、そこで頭打ちとなり、2.6%台近辺に低下し、淡々とテーパリングが開始されるなか2.6%あたりから2.8%あたりでのボックス相場を形成している。

 日本の10年債利回りはここにきて0.6%あたりで落ち着いているが、その要因として市場関係者からも日銀の大規模な国債買い入れが長期金利の上昇を押さえ込んでいるとの見方が多い。たしかに需給面からみるとタイトであり、好需給が相場の下落を押さえ込んでいるとの見方はできなくもないが、それだけで押さえ込めるものであろうか。

 これを確認するために、テーパリングの動向と米国債の動きを確認してみたい。2010年11月3日のFOMCでFRBは2011年6月末まで米国債を6000億ドル追加購入するという追加緩和策(QE2)を決定した。米10年債利回りはすでに2010年4月上旬の4%近辺から低下基調にあり7月には3%割れとなっていた。

 これはたとえば7月21日のバーナンキ議長による上院銀行委員会での証言なども要因とされた。バーナンキ議長は追加緩和の可能性に触れたことに加え、時間軸を意識した発言があったことも要因とされた。しかし、QE2への期待というより、主要因としてはその背景となったギリシャを中心とした欧州の信用不安によるリスク回避の動きといえた。

 2011年8月には米債務上限引き上げの協議難航などが材料視され、それが決着したこともあるが、欧州ではイタリアやスペインの債務問題が今度は浮上するなどしたことで、リスクオフの局面が続き、米10年債利回りは9月あたりから2%割れとなった。

 2012年1月のFOMCでFRBは物価に対して特定の長期的な目標を置いた。このあたりから米10年債利回りは一段と低下し、7月には1.4%を割り込んでいる。9月13日のFOMCでFRBは追加の緩和策を決定し、住宅ローンを担保にした証券であるMBSを毎月400億ドル追加購入することを表明した(QE3)。 さらに超低金利政策を据え置く時期を、2015年半ばまでとして時間軸を延長させた。

 7月以降、米10年債利回りは上昇し、2013年2月には2%台を回復した。これは欧州の信用不安が徐々にではあるが後退してきたことによる。

 テーパリングが開始される前にその思惑で米10年債利回りは2013年4月の1.6%近辺から9月に3%台にまで上昇した。実際に2013年12月にテーパリング開始が決定され、米国債の需給は緩んできたはずだが、むしろ10年債利回りは2014年に入り、2.7%近辺での落ち着いた動きとなっている。このあたりの動きをどう見るか。米国債の動きは需給だけで動くのではなく、外部要因と金融政策の行方の思惑等が交差しながら動いてきたように思われる。

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by nihonkokusai | 2014-05-08 09:38 | 国債 | Comments(0)

イングランド銀行がMPCの議事録発表を準備

 英国の中央銀行であるイングランド銀行は、金融政策委員会(MPC)の議事詳報を作成・公表することの是非を検討する作業部会の責任者として、ウォーシュ元米連邦準備理事会(FRB)理事を指名したそうである(ロイター)。

 イングランド銀行では現在、MPCの議事を録音、それを活用して議事要旨を作成しているものの、数週間後の議事要旨公表とともに録音テープを破棄する。つまり議事の様子を一語一句記した記録は保存されていないそうである(ロイターの5月1日の記事「中銀、政策委の議事詳報公表の是非検討へ 元FRB理事招へい」より引用)。

 日銀は、金融政策決定会合の議事要旨を、次回の決定会合で承認のうえ、その3営業日後に公表している。また金融政策決定会合の議事録は、各金融政策決定会合から10年を経過した後に、半年分(1月から6月分、7月から12月分)ごとにとりまとめて、年2回公表している。

 米国のFOMCでは議事要旨(Minutes)は会合の約3週間後に、議事録(Transcript)は5年後に公表されることになっている。

 ECB政策理事会の場合には、議事要旨は公表されていない。しかし、議事録は作成・保存されており、その議事録は30年後に発表されるようである。

 イングランド銀行は、会合の2週間後に議事要旨が公表されるが、議事録の基となる録音データは破棄されていることは知らなかった。ここれでは議事録を発表することは物理的に困難となる。

 中央銀行の金融政策の透明性をはかる上では議事要旨だけでなく、実際にどのようなやり取りがされていたのかを発言者も明らかにした議事録の発表は必要であると思われる。日銀はすでに10年前の会合の議事録を発表しているが、生々しいやり取りが行われていたことがわかる。このあたりは議事要旨では伝え切れていないし、要旨にまとめる際に発言そのものをオブラートに包むなりすることも可能である。

 金融政策を分析するには議事要旨だけでは不十分であり、議事録を確認する必要がある。できればもう少し早く発表してほしいが、発言者がまだ現場に残っていると何かと影響が出る恐れもあってか、日銀は10年後の発表としている。

 しかし、世界の中央銀行の基になったとされるイングランド銀行が、その議事の内容を残していなかったことに驚いた。ECBも議事録の早期の発表や、議事要旨の発表を検討しているとされており、イングランド銀行も議事録の必要性を意識したのであろうか。それだけ中央銀行の金融政策の重要度が増してきているということなのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-05-07 08:31 | 中央銀行 | Comments(0)
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