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日米欧の長期金利低下に見るバブルの兆候

 6月5日のECB政策理事会は金融市場にとり変化の起点となる可能性が出てきた。28日の欧州の債券市場ではECBの追加緩和の強まりにより、イタリアの長期金利は3%を割り込み2.93%と15日につけた過去最低の2.88%に接近し、スペインの長期金利は一時2.8%割れとなり過去最低水準に低下した。周辺国ばかりでなくベルギーの長期金利も1.86%と過去最低水準をつけ、ドイツの長期金利は1.34%に低下した。

 英国の長期金利も2.55%と大きく低下していたが、ユーロ圏の国債利回りの低下の影響を大きく受けているとみられ、米長期金利も2.44%と2.5%を大きく割り込んだ(29日に一時2.4%まで低下)。米国長期金利は2.5%が大きな節となっている。ここを大きく割り込むようだと2.2%台あたりまで節目らしい節目はない。

 今後はECBの追加緩和を睨み、日本を含めて日米欧の長期金利の低下圧力が強まることが予想される。これは債券型のバブルが発生しているとの見方もできる。裏を返せば、そのバブル崩壊リスクが高まりつつあると言える。かつての長期金利の「謎」の動きは、振り返ってみればバブルの兆候であった。

 ただし、バブルといっても何が弾けるのか。ここでひとつ注目すべきは、5月26日の日経新聞にあった記事かもしれない。日本の長期金利が低位安定しているなかで、名目成長率がそれを上回ったが、これは日本だけでなく、ドイツや米国も同様である。しかも過去に長期金利を名目成長率が上回ったあとに、バブル崩壊が起きていた。

 名目成長率が長期金利を上回る逆転現象が起こったのは、日本はバブル経済が最盛期だった1988~1990年。米国ではITバブルがあった1998~2000年、リーマン・ショック前の2003~2006年。ドイツでも2006~2007年に逆転現象が起こった。そして今回、ドイツや米国に加えて、日本でも名目成長率が長期金利を上回る逆転現象が起きている(日経新聞の記事より)。

 これが金融危機の最中であれば、リスクオフとかの動きで説明が可能かもしれないが、現在の日米欧の長期金利の低下の背景はリスク回避などではない。株も上がっている。金融危機に対処するための、日米欧の中央銀行の積極的な金融緩和が要因ではあるが、それがECBの追加緩和で最後の仕上げに掛かっているとの見方もできる。

 バブルの兆候はいくつか見えている。欧米の株式市場の上昇などもその一例ではなかろうか。ここにきてS&P500種が過去最高値を更新している。FRBは量的緩和の縮小、テーパリングを開始しているが、実質的なゼロ金利政策は維持されている。欧州の信用不安は後退し、有事から平時に戻りつつあるなかにあり、金融政策はほぼ有事のまま、もしくは日銀のようにさらなる大胆で異次元の緩和を行ったり、ECBのように追加緩和を継続している。

 バブルとはその最中にはやや異常との認識はあっても、崩壊するまではバブルとの認識はできず、バブルとも認定されない。現在の米国の株高や欧州の長期金利の異常なまでの低下はどのように説明が可能であるのか。過剰流動性が要因とするのであれば、バブルを生じさせているとも言える。それは0.6%を割り込んだ日本の長期金利も同様かと思われる。名目成長率が長期金利を上回る逆転現象はバブル発生の可能性を示唆している。

 この名目成長率と長期金利との逆転現象が解消されることにより、いずれ日本でもありのままの長期金利が見えてくる可能性がある。その前にいったん日本の長期金利も行き着くところまで下げてくることが予想される。問題はそのあとの動向となる。そのときに何が起きるのか予測はつかないが、ECBの追加緩和をきっかけとした日米欧の長期金利の動きが、今後の金融市場に波乱を起こす前触れとなる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2014-05-30 08:17 | 債券市場 | Comments(0)

ECBは日本型デフレではなくアベノミクスを意識か

 ポール・クルーグマンによるECBフォーラムでの発言が話題になっている。クルーグマンは米国の経済学者で、2008年にノーベル経済学賞を受賞している。新聞へのコラムも注目されており、コラムニストとしても有名である。

 過去の日本政府や日銀に対する批判でも知られ、デフレ脱却には、紙幣を大量に刷ることにより需要を喚起し、インフレ期待を作成することが唯一の方法としていた。それを実行に移したかにみえるアベノミクスに対しては、日本を復活させると賛意を示していた。

 アベノミクスの発想の原点にもいた人物ともいえるが、そのクルーグマンが欧州などに対して日本型のデフレに陥る懸念を言明している。ECBフォーラムでクルーグマンは、ユーロ圏が気がつかぬうちに日本型のデフレに陥る恐れがあると言明し、「ユーロ圏にも米国にも、極めて危険な下振れ圧力は存在していない」としつつも、「日本にもそのような下方ダイナミクスはなかったが、日本は持続的なデフレ問題に直面している」と指摘した(ロイターの記事より一部引用)。

 さらにグルーグマンはECBや他の中銀は、1990年代以来据え置いているインフレ率目標の水準を引き上げる必要があるとの考えを示した(ブルームバーグ)。このあたりのグルーグマンの主張は特に目新しいものではないものの、6月5日のECB政策理事会を控えているだけに注目されたようである。

 ユーロが日本型デフレに陥るかどうか。ノーベル賞を受賞した経済学者に楯突くわけではないが、そもそも日本型デフレとは何かという問題が存在する。それ以前にデフレという言葉が曖昧であり、結果としての物価の現象であるのか、(中央銀行の政策ミスなどで)物価が下げたために経済を悪化させたのか。物価はすべて中央銀行の金融政策で決められるものなのか。そのあたりへの疑問もあるのだが、とにかくECBも物価の低迷を強く意識しており、為替に働きかけて物価上昇を促そうとしていることは間違いなさそうである。

 その手段としては、引き下げ余地が限られるなかにあっての小幅利下げと、それに伴う下限金利のマイナス化などが想定される。LTROの再開などの可能性はあるが、量的緩和を含む非常時の対応を、すでに非常時から脱しつつあるユーロ圏で行う必要があるのかという問題も残る。利下げと量的緩和は相容れない部分もあり、利下げ後の量的緩和という手段も取りづらい。そうなると伝統的な手段の範囲内でとなるが市場に向けたアナウンスメント効果を意識しての手段はなかなか難しい。

 ECBの中途半端な追加策では、クルーグマンだけでなく市場からの失望が出る可能性もあり、決定後の市場の反動も恐い。日銀のように思い切った国債買入という量的緩和策も可能性としては残るが、日本国債や米国債のように膨大な発行量があるわけでもなく、欧州の債券市場の機能に影響を与える可能性がある。すでにイタリアやスペインの長期金利が過去最低を記録したように、欧州危機で極端に売られていた国債が極端なところまで買われており、欧州の国債市場が今後不安定化する恐れもある。

 世界的な危機を収めるために、日米欧の中央銀行の大胆な緩和策が一定の成果を挙げたことは確かである。あくまで時間を稼ぐものではあったとしても、市場の動揺を押さえ込むことに成功した。日本のアベノミクスはそのタイミングで出たものであり、急激な円高調整が結果として起こり、デフレ解消に向けて一役買った。しかし、これでグルーグマンの過去の主張は正しかったのかどうかの判断は時期尚早である。

 ECBは日本型のデフレを恐れているというより、アベノミクス型の為替調整を意識しているように思われる。しかし、日本のアベノミクスはあくまでタイミングが良かったことを認識すべきであり、ECBの追加緩和は内容はどうあれ、効果が発揮できるかどうかは極めて不透明と思われる。さらにその副作用も考慮する必要が出てきた。

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by nihonkokusai | 2014-05-29 08:11 | 中央銀行 | Comments(3)

ハイパーインフレの防止はインタゲで可能なのか

 日銀の岩田副総裁は26日の講演で、「いざ金融緩和を止めようと思っても、金融市場や政府からの圧力がかかるため、なかなか止められないのではないか。そうすると、結局ハイパーインフレになってしまうのではないか」との懸念の声に対して、インフレ目標政策を採用していることが有効に働きます、と述べている。

 さらに岩田副総裁はインフレ目標政策について、「将来のインフレ率についての具体的な数値目標を掲げて、それを上回るインフレにもデフレにもしないことを約束する仕組み」であるため、デフレに対してもインフレに対しても有効に働くと指摘している。

 ここで注意すべきことは、ハイパーインフレといっても、どのような状況を示すのかをはっきり指摘していないことにある。岩田副総裁は日銀がインフレ目標を採用している以上、2%近辺での物価は安定し続けるとの認識なのであろうか。

 インフレ目標とかインフレーション・ターゲティングと言われているものは、物価上昇(インフレ)率の目標値(または範囲)を設定・公表して、その達成に向けて中央銀行が金融政策運営を実施するという金融政策の「枠組み」である。

 1931年から1937年までスウェーデンで物価水準目標政策を採用したが、これを除くと過去にインフレーション目標を採用したのは、1988年4月のニュージーランドが最初と言われる。

 岩田副総裁は「日本ではデフレからの脱却の手段として議論されることの多いインフレ目標政策ですが、もともとは 1980年代のニュージーランドなど、高インフレに悩んでいた国々によって採用された政策」であるため、高インフレにも有効との認識である。

 FRBのインフレ目標らしき政策に法的拘束力はなく、明確なコミットメントもないため、英国のインフレ目標とは異なるものである。ECBは物価安定の数量的定義を示しながらも、インフレ目標を採用していない。これは、ユーロ圏という新しく不均一かつ構造の変化の激しい経済圏において、インフレ率だけを見て金融政策を行うことにはそもそも無理があるためとされた。

 中央銀行は物価をコントロールできるのかという根本的な問題があるが、日銀は昨年の量的・質的緩和導入により、物価は順調に上昇してきたように見える。岩田副総裁の講演資料にもある物価の推移をみてみると、コアCPIは昨年3月の前年比マイナス0.5%を底に、ここにきて1.3%まで上昇している。昨年4月の異次元緩和の効果との見方もできよう。ところが、コアコアと呼ばれる食料とエネルギー価格を除いたものは、2月のマイナス0.9%が底となっている。物価は異次元緩和以前に上昇する地合は出来ていた。

 英国の消費者物価は昨年6月に前年比プラス2.9%まで上昇し、目標の2%から乖離していたが、ここにきて今年4月がプラス1.8%と目標近くに収まっている。インフレ目標が効いている格好に見えるが、イングランド銀行はこの間、物価を安定させるために何かしていたであろうか。

 2%という物価の目標数字は、グローバル・スタンダードに見えるが、その数字に何かしら意味があるものではない。2%以下がデフレで2%以上がインフレというようなことも特に定めがあるわけでもない。

 ハイパーインフレが第一次大戦後のドイツ、第二次大戦後の日本、さらに2008年あたりのジンバブエのインフレを示しているものとすれば、確かにそれが起きる可能性は高くはない。

 ただし、問題はインフレ目標で高インフレも抑えられるとの自信を示すことではなく、何故にハイパーインフレを懸念する声が出ているのかにあろう。簡単に言ってしまえば、ハイパーインフレのような事態が発生した際には、それは日銀券や日本国債に対する信認失墜への懸念が根幹にあるはずである。それによる通貨や国債の暴落が発生してしまった場合には、金融政策で抑えられるような次元の問題ではなくなっている。

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by nihonkokusai | 2014-05-28 08:03 | 日銀 | Comments(1)

日銀の物価目標達成の可能性

 4月30日に開かれた日銀の金融政策決定会合の議事要旨が公表された。このなかから、今回は物価に関係する政策委員の議論を中心に見てみたい。

 「物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%%台前半で推移するとの見方で一致した。」(4月30日日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 この見方は日銀の政策委員のみならず、エコノミストなども同様の見方をしていると思われる。日銀の物価目標は、全国消費者物価指数(除く前年同月比)であり、昨年11月分で前年同月比プラス1.2%と1%台に乗せ、12月から今年3月にかけてはプラス1.3%での足踏み状態となっている。

 「消費税率引き上げの物価への影響について、多くの委員は、東京の4月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が、消費税率引き上げの影響を除いたベースでみて+1.0%と3月から横ばいとなったことから、税率引き上げ分が概ね転嫁されたとの認識を示した。」(4月30日日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 消費増税が4月からスタートしたが、すでに東京都区部の4月の消費者物価指数は発表されており、前年同月比プラス2.7%となった。日銀は4月からの5%から8%への消費増税の影響で、プラス1.7%程度上乗せされるとみており、その分を除くと3月から横ばいとなっている。

 4月の全国消費者物価指数は5月30日に発表される。予想はプラス3.1%あたりとなっているようで、消費増税により1.7%程度上乗せされるとすれば、影響を除いた分は1.4%と小幅上昇を見込んでいる。

 「多くの委員は、消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高い、また、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられるとの見方を示した。」(4月30日日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 本年度後半から再び上昇傾向をたどるとする理由として、「マクロ的な需給バランスが、労働面を中心に改善を続け、最近は過去の長期平均並みであるゼロ近傍に達しており、今後も改善を続けていくと見込まれること、また、中長期的な予想物価上昇率が、実際の物価上昇率が1%を上回って上昇する中で、今後も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられることを挙げた」(4月30日日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 マクロ的な需給バランスの改善としては、政府も1月~3月までのGDPを基に内閣府が発表した需給ギャップは、マイナス2兆円程度となり、前の期に比べてマイナス幅がおよそ6兆円縮小したとしている。これは、消費税率引き上げ前の駆け込み需要を背景にした消費の伸びと、企業の設備投資の増加が影響しているとしている。

 議事要旨によると、「ある委員は、企業の価格設定行動の変化やベースアップの復活は、需給バランスに対する物価上昇率の感応度を高め、人々の中長期的な予想物価上昇率を高めるとの見方を示した」。ただし、それに対して「予想物価上昇率の上昇や企業の販売価格引き上げは緩やかに進むため、2%の実現は見通し期間の終盤になるとの認識を示した。」

 多少の時期のズレはあっても目標には届くとの認識のようである。この委員は物価の先行きの記述として2%程度という幅のある表現でなく、2%の実現時期に焦点を当てた書き振りとすべきであると指摘したそうである。

 ただし、別の委員からは、2%に向かって予想物価上昇率が上昇することは不確実性が高いとの意見や、さらに別の委員からは、「今後円安の物価押し上げ効果が剥落する可能性が高い中で、労働需給タイト化などの要因が物価をどの程度押し上げるか不確実であり、予想物価上昇率についても、物価安定の目標である2%に向かって上昇し、収斂していくのは難しいとの見方を示した。」

 ここから2%に向けて順調に物価が上昇するのかどうか。いまのところ予断は許さない。円安効果が剥落するのは事実であるが、価格が上がりやすい状況になりつつあることも確か。今後も賃金や設備投資が伸びるのか。東京オリンピック特需といった面もあるが、需給ギャップの改善もあって物価が上昇しやすい環境ができつつあるとの見方もできる。2%の物価目標の達成も可能性はゼロではないが、それと日銀による大量の国債買入がどのように関わってきたのかははっきりしていない。実質金利の低下とかで説明できるものであろうか。マインドは変化しつつあると思うが、これは海外要因などを含めて金融政策以外の要因に負うところも大きいはず。

 今後の物価動向と日銀の大量の国債買入の関係をもう少し具体的に言及する必要があるとともに、もし物価目標に向けてコアCPIが上昇してきた際に、現在のような超低位の長期金利を維持することが可能なのかどうか。このあたりもいずれ焦点になってくると思われる。

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by nihonkokusai | 2014-05-27 09:35 | 日銀 | Comments(0)

出口政策にも雨宮理事の力が必要か

 日銀が異次元緩和を決定した際の軍師と言える雨宮正佳理事の再任が有力になったと伝えられている。雨宮理事は2010年に理事に就任した。日銀理事の任期は4年(日銀法第二十四条)となっており、任期は6月2日までとなっているが、理事は再任できる。日銀政策委員会の推薦に基づき、財務相が任命する。

 ただし、新日銀法となってからの理事の再任は、中曽現副総裁が2012年11月に国際担当理事に再任された例があるのみ。極めて異例とされるが、雨宮理事の異例と言える再任はある意味、当然の如く認識されている。

 昨年4月4日に日銀が量的・質的緩和政策を打ち出せたのは、雨宮日銀理事の功績が大きいとされている。黒田日銀総裁が就任したのが昨年3月20日である。そこから黒田総裁としての最初の4月の決定会合まではあまりに時間がない。黒田氏は財務省出身であり、日銀総裁の前はアジア開発銀行総裁であり、日銀のプロパーではない。生え抜きではない社長が提携している先からやってきたようなものであり、新会社のひとつの業務にしか過ぎない金融政策だけでなく、社長としての業務を含めて極めて多忙となる。これが日銀のプロパーであったとすれば、早期に動くことも可能であった。その例として総裁就任後、すぐに臨時の金融政策決定会合を開いた日銀プロパーの福井元総裁の例がある。

 アジア開発銀行総裁と言う要職にあり、引き継ぎ等でも多忙を極めていたと見られる黒田総裁が短期間では動けまいと私は見ていたが、これは結果として見誤った。黒田総裁就任と同時に大阪支店長から本店に呼び戻され、再び金融政策運営を担当する雨宮理事の軍師としての力量を計算に入れていなかった。

 秀吉の一夜城ではないが、短期間のうちに秀吉と官兵衛ならぬ、黒田総裁と雨宮理事は異次元緩和と呼ばれた政策を立案したとみられ、さらにそれを最初の決定会合で全員一致で決定させると言う離れ業をやってのけたと思われる(念のため、金融政策は合議制で決められるものではあるが)。この政策の原作立案は安倍首相であり、それに100%答えた格好になった。

 その後の日銀は円安・株高の流れに加え、円安を背景として市場予想を上回るペースでの物価の上昇があり、市場からの追加緩和の要求は何のその、戦力の随時投入はしないという方針を貫き通した。このあたり、日銀が、いや黒田総裁と雨宮理事にとっても想定以上の結果であったのではなかろうか。

 この日銀の働きについては当然、官邸も多いに評価しているとみられ、デフレ脱却の道筋をつけたとされる雨宮理事への評価も高いのではなかろうか。その意味では、雨宮理事の再任は異例どころか当然とみられてしかるべきである。

 それに無理矢理なことをやってしまった後片付けも雨宮理事の仕事であるはず。出口政策は表面上は封じている日銀ではあるが、目標通りに物価が上昇しているかに見える以上、1年後にコアCPIが2%に到達した場合のシナリオも想定する必要がある。

 FRBのテーパリングのように、市場の動揺を抑えながらの出口に向かう政策ができるか。米国債の利回りの多少の跳ね上がりは市場では許容範囲となったが、日本国債については日銀の出口政策に向かう際に利回り上昇が果たして抑えられるのか。

 これはかなり困難な仕事ともなる。日銀の公表文から「15年近く続いたデフレ」との表現が削除されたが、その15年間は、デフレもおおいに影響し、長期金利が超低位で安定していた時代でもあった。その15年間の間に日本の国債残高は3倍近くに跳ね上がっている。このような状況下で長期金利がもし2%を超えるだけで、債券市場参加者には見たことのない世界が広がることになる。

 そこでの日銀の舵取りは、本能寺の変の連絡を受けた時の秀吉軍の状況のようなものとなるかもしれない。正常化に向けての大返しが可能なのか。日銀にとって出口政策を取る際の国債市場動向が大きなキーポイントとなり、それに立ち向かうためにも雨宮理事が必要とされるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-05-26 09:29 | 日銀 | Comments(0)

日米の長期金利の謎

 サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は22日、米株式市場が上昇しているのは、企業業績が良好なことなどが背景にあるが、米債利回りが低いのは「謎」との認識を示した(ロイター)。

 2005年2月、当時のグリーンスパンFRB議長は、利上げが何度も行われ、政策金利であるFFレートが上昇したにもかかわらず、米国の長期金利が一向に上昇せず、むしろ低下傾向を示したことに対し、議会証言でこの現象を謎(conundrum)と表現した。ウィリアムズ総裁の謎発言はこれを意識したものではなかろうか。

 日銀の黒田総裁は21日の記者会見で、この謎について「米国の長期金利が一時3%台に乗りましたが、今は2%台半ばくらいに落ち着いている背景については、色々なことがあると思います。FRBの金融政策の進め方について市場が十分消化して、金利が急速に上がっていくことがないということがよく理解されたこともあるのかな、と思います。」

 FRBのテーパリングの開始については予行練習があった。昨年5月22日にバーナンキFRB議長による上下両院合同経済委員会で証言を行い、証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘。この日は4月30日~5月1日に開催されたFOMC議事要旨も発表されたが、複数の議員が早ければ6月にも資産購入を減額したいとの意向を示していたことが明らかになったのである。これによりテーパリングの開始が市場で強く意識された。23日の東京株式市場は1000円以上の下落となっていた。

 しかし、テーパリングを次第に市場は織り込んでいった。テーパリングをやるかどうかではなく、いつやるか、という見方となり、実際に昨年12月にテーパリングを決定しても、やっと始めたか、との認識の方が強かったように思われる。これにより米国債の需給が崩れ、米長期金利は大きく上昇するとの見方もあったが、米長期金利は3%近辺が天井となり、その後2.5%あたりまでむしろ低下している。

 バーナンキ議長の後を継いだイエレン議長は就任後初のFOMC後の記者会見において、思わず利上げ時期について思っているところを述べてしまったが、これによる米国債への影響も限定的となった。市場はすでに米国の金融政策の出口を意識しているが、こちらもやるかどうかではなく、どのタイミングかとの問題となっている。

 この見方からすれば、黒田総裁のFRBの金融政策の進め方について、市場が十分消化しているとの見方はある意味正しいかもしれない。しかし、長期金利の動向については、都合良く解釈しているようにも思われる。黒田総裁はまた会見で次のような発言もしている。

「金融政策は、金融資本市場、特に金利――短期金利、長期金利を含めた――に影響を与えるものです。金融政策を何も実施しないで市場で決まるだけのものが金利であれば、金融政策はいらないわけです。」

 この発言と謎の回答については矛盾がありはしまいか。短期金利は確かに日銀の金融政策の影響を受けやすい。しかし、グリーンスパン元FRB議長やウィリアムズ総裁が謎という表現を用いたように、長期金利は金融政策のみで動いているわけではない。むろん影響は受けることは確かではあるが、長期金利は市場で決定されているものであり、日銀の金融政策で素直に動くものでもない。また、日銀がその相場を制御できるものではない。

 実は米国の長期金利が低いことよりも、日本の長期金利が低すぎる状態が続いていることこそが、まさに「謎」であり、それを日銀による大量国債買入だけで説明して良いものではないはずである。テーパリングを開始しても米長期金利が低下している謎の事実は、中央銀行による金融政策だけで長期金利が決定されているわけではないことを示す証拠ではあるまいか。

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by nihonkokusai | 2014-05-24 11:42 | 債券市場 | Comments(0)

ありのままの長期金利は姿を見せるのか

 長期金利を決定する要因にはいくつかあり、買い手と売り手のそれぞれの理由が存在するが、需給のバランスが取れている限り大きな変動は抑えられる。つまり大量に物が出ても、それを安心して買う人がいれば価格は保たれる。日本国債で言えば年間180兆円もの国債が発行されているが、それを安心して買っている投資家が存在する。

 国債暴落説が出てきたのは1998年あたりであった。小渕政権下での何でもありの政策で国債の発行額が急増し、格付け会社のムーディーズは1998年11月に日本国債の格付けを最上位から引き下げた。そして12月には国債市場が急落するという運用部ショックが起きている。

 この運用部ショックについては国債の需給面への警戒が主因ではあったが、この年の9月に10年国債の利回り(長期金利)が1%を大きく割り込んでいた反動という側面もあった。大蔵省資金運用部の国債購入額が減少してもそれをカバーできるだけの資金が国内に存在していたことで、あとからみると需給面ではそれほどバランスが崩れることは考えづらかったが、市場の動揺が収まったのは1999年の日銀のゼロ金利政策による。このときのゼロ金利政策の目的はデフレ対策などではなく長期金利対策であった。

 その長期金利は1999年あたりから2%以下の水準で推移することになる。そこから約15年もの間、長期金利の低位安定は続いている。その間の国債の需給バランスが崩れなかったのは、途中までは年金資金などの増加、生保などの購入増などがあった。年金・生保の買いが鈍り、ゆうちょの購入額が減っても、貸出の低下と預金増により銀行が大口購入者となり、それから今度は企業の余剰資金がカバーするなどしたことで、買い手の存在という意味においての国債の需給バランスが崩れることはなかった。むろん相場でもあるので、2003年6月のVARショックのような相場の調整は入るが、それは一時的なものとなった。

 その後、サププライムローン問題からリーマン・ショックが発生し、それが収まったと思うまもなく、ギリシャを中心に欧州の信用不安が生じ、百年に一度と言われるような危機が立ち続けに発生した。これによるリスク回避の動きもあり、米国や英国、ドイツの国債などとともに日本国債は買われ、円高となった。

 その動きも2012年あたりで落ち着きを取り戻した。2012年11月のアベノミクスをきっかけに円高調整が起きたが、そもそも国内資金で多くをカバーされていた日本国債の需給は崩れるどころか、日銀の大量買入により非常にタイトとなり、ここにきて長期金利は0.6%近辺の膠着状態が続いている。

 日銀は5月21日の金融政策決定会合後に発表した公表文で、15年近く続いたデフレ、との表現を削除した。これはデフレ脱却宣言ではないというが、日銀が目標とする物価上昇、つまりデフレ脱却が順調に行っていることを示すものではなかったろうか。同じく15年もの間、日本の長期金利も超低位安定が続いている。日銀が「15年近く続いたデフレ」という文字を削除したということは、見方によっては「15年近く続いた超低位の長期金利」も変化の時が近づいたということを意味している。

 日銀の国債買入により買い手の存在という意味での国債の需給バランスが崩れることはなさそうであるが、国債市場を形成しているのは日銀だけでは当然ない。物価はすでに1.3%近辺に上昇してきている。2013年度の成長率は実質でプラス2.3%、名目でプラス1.9%となっている。本来は名目成長率が上がると長期金利も上昇する傾向とされる。潜在成長率も低い上、市場参加者による期待インフレ率が低いことなども影響しているのかもしれないが、現在の0.6%という位置は「ありのままの」長期金利なのか。

 これまで投資家はデフレ脱却が見えないなかで安心して国債を買っていた面があり、それが国債の相場そのものを支えていた。しかし、今後については次第に警戒心を抱くようになってきたように思われる。いくら日銀という大口買い手が存在しても、市場に価格下落に対する不安が募り、それが何かのきっかけで広がることも予想される。それにより債券市場で需給バランスが崩れる可能性はありうる。

 いずれ長期金利は、ありのままの姿を見せる時がくるのか。凍り付いた債券市場が動きだすことがあるのか。日銀の異次元緩和の効果かどうかはさておき、デフレ脱却がもしあるとするのであれば、15年もの間、閉じ込められていた長期金利が動き出す可能性は十分にある。

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by nihonkokusai | 2014-05-23 09:16 | 債券市場 | Comments(0)

4月に都銀は長期国債を大量売り越し

 5月20日に日本証券業協会が発表した4月の公社債投資家別売買高(除く短期債)によると、都銀は3兆7058億円の売り越しとなった。都銀の売り越しは2か月連続となり、売越額は2012年4月以来の水準となった。

公社債投資家別売買高(除く短期債)、単位は億円(マイナスは売り越し) 都市銀行-37058、地方銀行13727、信託銀行6881、農林系金融機関-2869、第二地銀協加盟行3093、信用金庫3063、その他金融機関-727、生保・損保4929、投資信託1754、官公庁共済組合198、事業法人2393、その他法人1605、外国人9610、個人-295、その他-14590、債券ディーラー1652

 国債投資家別売買高をみると、都銀は超長期国債を3362億円売り越し、長期国債を5兆7096億円売り越し、中期国債を2兆4594億円買い越しとなっていた。金額からみて都銀の売買は国債主体であり、保有する長期国債を約5.7兆円も売却していた。

 参考までにこのデータは発行時点での期間によって分けられているものではあるが、最近発行された10年債主体にポジションを落としてきた可能性がある。また、国債入札で直接都銀が落とした分は含まれていない。

 国債投資家別売買高を基に集計すると、2013年度に都銀は超長期債を8011億円売り越し、長期債を3兆7322億円買い越し、中期債を16兆2627億円売り越していた。長期債の買い越しが多かったこともあり、4月は期初の益出しの目的もあってか売却額が膨らんだものと思われる。

 ただし、4月の債券相場は長期債主体に相場が崩れた様子はない。長期債についての買い越しは地銀の8125億円の買い越しが目立った程度で、ほかに買いが目立ったところはなかった。しかし、日銀による国債買入がその分を含めてカバーしていたものとみられ、相場は落ち着いていた。

 都銀が持つ国債のポジションについては、担保としても必要な分もあるため、一定額保有する必要があり、このままさらに大きくポジションを減らすことも考えづらい。ただし、他の業態と異なり昨年4月の日銀の異次元緩和以降、中期債主体に大きくポジションを減少させてきたことも確かである。

 これは見方によれば日銀の大規模な買入に対応しているとも言える。都銀が売却することで日銀は大量の国債買入を容易にさせる。国債のポジションが都銀から日銀に移行し、さらに都銀は売却した資金を日銀の当座預金残高に置くことで、日銀のマネタリーベースを目標通りに増加させられる。日銀のための都銀による国債ポジションの調整と見えなくもないが、その分、都銀の保有する国債のリスクを多少なり減少させてきている。今後もし長期金利が大きく跳ね上がるようなことが起きると、都銀はそれによる損失を軽減できる。そこまで見越した動きであるのかは定かではないが、今後の都銀の動向にも注意する必要がある。

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by nihonkokusai | 2014-05-22 08:47 | 債券市場 | Comments(0)

ユーロクリアと国債に絡む日本の決済機関

 ロシアや中国が保有する米国債の一部を移したのではないかとされるユーロクリアであるが、これについては金融市場の一部関係者を除いて馴染みがないかもしれない。むろん名前を聞いたことがある方は多いと思うが、具体的にどのような組織であるのかはあまり詳しく知っている方の方か少ないかもしれない。かくいう私もユーロクリアがベルギーにあったことは調べてみるまで知らなかった。

 そもそもユーロクリアとは、各国の国債などの証券の預託や取引、決済等を行う目的で設立された決済機関のことである。1968年にモルガン・ギャランティ・トラストによりベルギーのブリュッセルに設立された。2001年にフランスの決済機関と合併し、EU最大の国際証券決済機関となっているが、民間の機関である。

 ユーロクリアの参加者は世界の主要な銀行、証券会社、ブローカーなどに限られ、り、参加者から債券の寄託を受け混蔵保管している。参加者の指図による口座間振替によって決済を行っている。

 日本では決済機能を担う決済機関は、証券決済を行う証券集中保管機関(CSD:central securities depository)と、資金決済を行う銀行(日銀を含む)に分けられている。証券集中保管機関(CSD)は、参加者から預託を受けた有価証券を保管し、参加者間における有価証券の受渡しを券面の授受を行わずに口座振替(帳簿上の記帳の変更)によって処理している。株券等については株式会社証券保管振替機構(ほふり)が、国債については日銀がCSDとなっており、証券会社、銀行、清算機関等は参加者としてCSDに参加者口座を開設している(日本証券クリアリング機構のサイトより引用)。

 国債の決済は1988年に稼働した日銀ネットを通じて行われている。金融機関同士が行う資金取引の決済や国債など証券取引の代金の決済や、民間決済システムの最終的な決済に、日銀の当座預金での振替が利用されている。

 1994年に証券と資金の振替が同時に行われる決済方式であるDVP決済が導入された。これは資金の受払いと国債の受渡を相互に条件付け、一方が行われない限り他方も行われないといった仕組みである。

 さらに2001年からは国債決済にRTGS(即時グロス決済)が導入された。システミック・リスク(個別の金融機関の支払不能等や、特定の市場または決済システム等の機能不全が、他の金融機関や市場にもその影響が及び連鎖的に決済不能を引き起こし金融システム全体の機能が失われてしまうリスク)に対応するため、日銀ネットを使った決済については、1日の決まった時間に多くの受払いをまとめて受払差額のみを決済する方式(時点ネット決済)から、個別に随時決済を行うRTGS(即時グロス決済)という方式に一本化したのである。RTGSによる決済では、1件ずつ即時に決済を行うため、ある金融機関で決済不能が生じても、その影響を受けるのは取引相手の金融機関だけとなり、そこから連鎖的な決済不能といった事態は回避できる。

 2005年5月からは日本国債清算機関(JGBCC)の業務が開始された。日本国債清算機関は、国債市場の主要プレーヤである証券会社・銀行・短資会社等の共同出資により2003年10月に設立されたものである。現物国債のほとんどが店頭で取引されており、約定から決済に過程は約定から照合、そして清算、決済といった流れとなっているが、清算機関が創設される以前は、清算がないまま各当事者が相互に日銀ネット上で決済を行なっていた。しかし、清算機関が創設されたことにより、参加者同士の取引に関わる決済は、原則に日本国債清算機関に集約され、清算(ネッティング)を経て決済を行うことが可能となった。つまり参加者は決済上の相手方リスクを負うことなく、ネッティングにより決済量を大幅に減少させた上で、安全かつ効率的に決済することが可能となっている(日本国債清算機関のサイトを参考)。

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by nihonkokusai | 2014-05-21 08:11 | 国債 | Comments(0)

ベルギー保有の米国債が急増した理由

 ここにきて米国債の海外での保有状況にやや変化が出ている。米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、トップの中国、2位の日本のツートップには大きな変化はなかったが、昨年9月あたりからベルギーの米国債保有残高が増加し、昨年は6位から9位グループにいたのが、今年に入り3位に浮上している。

米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)

 今年3月の上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)。中国1272.1 、日本1200.2、ベルギー381.4、カリブ海の金融センター312.5、石油輸出国247.4、ブラジル245.3、台湾176.4、英国176.4、スイス175.7、香港155.7、ルクセンブルグ145.1

 比較するために昨年3月の数字をチェックしてみると、中国1270.3 、日本1114.3、カリブ海の金融センター286.9、石油輸出国265.1、ブラジル257.9、台湾188.9、ベルギー188.4、スイス183.6、英国159.1、ルクセンブルグ154.5、ロシア153.0

 昨年3月と今年3月を比べて、ベルギーによる米国債の保有残高が約倍(188.4→381.4)に増加しており、それに対して減少幅が目立ったのがロシア(153.0→100.4)となっていた。

 ロシアは特に今年2月から3月にかけて削減幅が大きいが、これはウクライナ問題が絡んでいたと推測される。3月にFRBが保管している外国中銀の米国債保有高が過去最大の減少を記録していた。これはロシア中銀が引き出したとの観測が出ていた。ロシアがウクライナ危機関連の制裁発動を見越して、米国外に同国債を移したとの見方があったのである(ロイター)。この見方が米国債国別保有残高で裏付けられた格好となった。

 もしロシアがFRBから引き出した米国債を市場で売却していたとすれば、米国債は大きく下落していたはずである。しかし、大口売りが入ったような気配はなかった。このためロシアは別のところに米国債を移した可能性が高かったのである。

 ベルギーは昨年8月あたりから米国債の保有額を伸ばし始めており、今年2月から3月にかけてもロシアの引き出し額以上にベルギーの米国債保有額を増加させている。これについてベルギーに本社を置く清算機関ユーロクリアは16日、同社の取引が関係している可能性があるとの見方を示した(ロイター)。

 ユーロクリアとは1968年にモルガン・ギャランティ・トラストが設立したユーロ市場における集中決済機構で、ベルギーのブリュッセルにある。各国の国債などの証券を決済する機関であり、証券会社・銀行などが利用している。現在はマーケットを構成する参加者が出資する会社が運営している。

 つまりロシアがFRBから引き出した米国債は、このユーロクリアに預けられた可能性が高い。ところがベルギーの米国債保有額はウクライナ問題が発生する以前から増加している。これについては現在も米国債のトップの保有額となっている中国の残高が昨年11月からは減少気味となっており、中国もユーロクリアでの保有を増加させている可能性がある。

 果たしてベルギーというかユーロクリアにおける米国債の残高の増加は、今後の米国債市場に何かしらの影響を与えるのか。単純に政治的な配慮ということで、市場へのインパクトは今後もないのか。金額も大きく不透明感も強いだけに、このあたりの動向も注意すべきものとなる。

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by nihonkokusai | 2014-05-20 09:40 | 債券市場 | Comments(0)
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