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新発10年国債の売買がなかった日

 4月14日の債券市場で、めずらしい現象が起きた。それは新聞などでニュースとなり、15日の日経新聞では「10年物国債市場 市場取引ゼロ」とのタイトルで記事が掲載された。

 ここではいくつか注意点がある。このコラムは債券市場をあまりご存じない方も読んでいただいているかもしれないので、実際に何が起きたのかを知るための基礎知識から説明させていただきたい。

 債券や国債とは何か、から説明すると一冊の本が必要になるので、ぜひ拙著「債券と国債のしくみがわかる本」などを読んでいただきたい。債券市場の中心が国債であり、その国債のなかでも指標、ベンチマークと呼ばれているものが期間10年物の新発国債(カレント物とも呼ばれる)となっている。国債には期間に応じて固定利付き債としては2年債、5年債、10年債、20年債、30年債、40年債などがあり、発行額からみても10年債より多いものもある。しかし、日本だけではなく欧米各国などでも慣例で期間10年の国債が指標となっており、その利回りがその国の長期金利とされている。

 現物債の取引は店頭取引で行われている。店頭といっても店に行くわけでなく、業者と呼ばれる証券会社と銀行や生保など機関投資家が電話やネットを通じて売買を行っているのである。その個別の取引についてはすべてを掴みきれるものではない。それから言えば本当に「市場取引ゼロ」であったのかについては、現実に各証券会社等の個別の取引をチェックしないことには正確にはわからない。

 この場合の「市場取引ゼロ」というのは、現物国債の業者間での売買を集中して行っている日本相互証券での取引を指していると思われる。業者と呼ばれる証券会社などは自己のポジションを調整するために業者間での売買の場を設けた。それが日本相互証券である。BBとも呼ばれているがこれはブローカーズブローカーの略称である。同様の会社はほかにもあるが、業者間での取引は日本相互証券がかなりの割合を占めており、会員業者は専用のBB端末を持ち、日本相互証券での国債の売買でつけた利回りを参考にして、店頭での売買を行っている。もちろん大阪取引所に上場している長期国債先物も流通市場でのベンチマークではあるが、現物の取引といえばBBの端末のデータを参考にしている場合が多い。

 2014年4月14日に、その日本相互証券で直近で入札された新発の10年利付国債(現時点では4月1日に入札された333回債)の売買がゼロであったのである。通常であれば少なくとも数百億円程度の売買はあるものの、それがゼロというのは極めて珍しい。

 日本相互証券での新発10年債の売買がゼロであったのは、日経新聞によると2000年12月26日以来、約13年ぶりであるとか。今回の10年債の売買高ゼロの要因については、日銀による大規模な国債買入による影響で、国債市場の流動性が低下したためとの説明があるが、それもひとつの原因であるかもしれないが、そればかりではないと思われる。

 2014年4月14日の日本相互証券では、10年債カレントは取引ゼロではあったが、2年債、5年債、20年債、30年債のカレント、新発国債は売買ができており、10年債も別の銘柄のものは売買ができていた。たまたま14日は10年債のカレントが出合わなかったと言った方が良さそうで、これは2000年12月26日も同様であったと思われる

 2014年4月14日の債券先物の日中の値幅はわずかに9銭しかなく、前日11日も同様であったように、ここにきて債券の動きはかなり鈍っていた。10年債利回りは0.6%近辺にいるが、0.6%割れは高値警戒も強く買いにくい。これは2013年4月の日銀の異次元緩和前の10年債利回りの水準が意識されているとの見方もあるが、絶対水準としての0.6%という利回りは魅力に乏しい。さらに物価や成長率などを見ても0.6%はあまりに低いとの見方もあろう。それに比べてまだ利回りの高い超長期債には押し目買いの余地もあるとの見方もできる。

 ただ、ここから売るとしても売りにくい。ここにきて日本株も含めて調整局面となり、円高も進んだ。ウクライナ情勢の緊迫化によるリスク回避の動きが出る可能性もある。それでなくても日銀が大量に国債を購入しており、需給は非常にタイトとなっている。つまり、売りも買いもしづらいという状況で生まれたのが「新発10年国債の売買がなかった日」ということになる。

 前回、新発10年債がBBで出合わなかった2000年12月26日の翌々日の28日には先物は70銭を超す下げとなるなど動きを見せていた。今回もそれだけ膠着感が強いということは、そろそろ大きな動きを見せる前兆であった可能性もある。むしろこちらに注意を払っておいたほうが良いのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-04-16 09:51 | 債券市場 | Comments(0)

ギリシャの国債入札再開と欧州危機の収束

 4月10日にギリシャは5年債の起債で30億ユーロを調達した。中長期国債の発行は実に4年ぶりとなる。入札では約600の投資家から200億ユーロ超相当の応札があったそうで(WSJ)、発行利回りは4.95%となった。欧州の信用危機の発端となったギリシャが国債発行を再開したことで、2010年から始まった欧州の信用危機が収束してきたことを印象づけるものとなった。

 ギリシャの10年債利回りは2012年のピーク時には40%を超えていた。しかし、その後低下傾向となり、先日9日には6%を割り込んで来た。ギリシャは緊縮財政の効果もあり、2013年には基礎的財政収支は黒字化したとされる。

 2007年あたりからのサブプライム問題を発端とした金融危機は、2008年9月のリーマン破綻でピークを迎えた。それが経済に深刻な打撃を与えることになり、その影響は世界各国に同時にかつ急速に広がるという異常事態となり、日本経済も大きな打撃を受けた。

 このためイングランド銀行の国債買入に続き、日銀も国債買入を大幅に増加させ、FRBも国債買入を再開した。欧米の中銀が連携して危機対応を行なう姿勢を鮮明にしたといえる。米国についてはサブプライム問題からリーマン・ショックを経て、金融機関や住宅市場に多大な影響が出たことで、国債など債券の買入を行った。これにより長期金利には低下圧力が掛かった。

 その長期金利に今度は問題が発生した。ちなみに長期金利とは10年国債の利回りのことを指す。2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。ギリシャは2009年10月に政権交代が行われたが、パパンドレウ新政権に変わったことにより前政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになったのである。これを受けて格付け会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、ギリシャ国債が暴落したのである。4%台にあったギリシャの長期金利は10%台に跳ね上がり、さらに同様に債務状態が悪化しているポルトガルやスペインなどにも飛び火したのである。

 欧州の信用危機は財政や国債の問題が原因となり、それに対処したのは欧州連合やIMFなどではあったが、市場に対しての影響力としては日米欧の中央銀行による非伝統的手段による国債の買入などが大きかった。これらは時間稼ぎにすぎないものの、市場の動揺を抑える働きをした。2011年11月3日のEC政策B理事会において期間3年の長期リファイナンス・オペ(LTRO)の新設が決定し、2012年9月6日のECB理事会で、市場から国債を買い取る新たな対策を正式に決定した。

 すでにギリシャの長期金利はピークアウトしていたが、このあたりからさらにギリシャの長期金利は低下しており、2013年1月には10%近辺まで低下していた。ただし、リスクオフ、リスク回避の動き、質への逃避とか騒がれて買われていた円がピークアウトしたのはチャートをみると2012年10月あたりと、ギリシャの長期金利の動きなどからみてややズレが生じていた。いつ円高の動きが反転してもおかしくないタイミングであらわれたのがアベノミクスであった。

 なにはともあれ、欧州危機はひとまず去った。ウクライナ情勢など気になるものの、百年に一度とされるような金融危機が立て続けに起き、それが収束に向かっていることは確かである。ここにきての米国株式市場の乱高下などは、危機後の動向を見極めるべく動いているようにも思えなくもない。

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by nihonkokusai | 2014-04-12 11:39 | 国債 | Comments(0)

日銀の物価目標達成への自信

 4月8日の日銀金融政策決定会合後の会見で黒田総裁は、需給ギャップはおそらく縮小している。ほとんどゼロに近い。賃金・物価は目標に向けて着実に進行。雇用は想定以上に改善。賃金も上昇している。物価安定目標の達成については確信を持っていると発言した。

 10日の日経新聞朝刊は、日銀は4月30日に公表する「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で、2016年度も物価上昇率が前年度比2%程度を維持するとの見通しを示す方向だと伝えた。

 今年1月の決定会合で発表された展望レポートの中間評価では、2015年度の消費者物価指数(除く生鮮食料品、コアCPI)の前年同月比見通しの中間値は、プラス1.9%(消費税率引き上げの直接的な影響を除いた数字)となっていた。

 日銀は、4月および10月の金融政策決定会合において「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を公表しており、1月および7月の金融政策決定会合では、その直前に公表された展望レポート以降の情勢の変化を踏まえたうえで中間評価を公表している。

 日銀は今後のコアCPIに対して、今年の夏あたりまでは1%前半の横ばいで推移し(2月のコアCPIはプラス1.3%)、その後は円安効果というよりも需給ギャップの縮小による物価上昇をシナリオに描いているようで、それにより2%の物価目標が達成できると認識しているようである。

 日銀試算による需給ギャップが昨年10~12月期にマイナス0.1%となり、ゼロ近辺に縮小していたことが明らかになった。ただし、同時期の内閣府の試算ではマイナス1.6%となっており、日銀と政府の資産には開きが生じている。

 需給ギャップとは、経済全体の供給力と現実の需要との間の乖離のことであり、一般に「需要不足額」として認識されている。理論上、中央銀行は金融政策によってこの需給ギャップに影響を与えることで、インフレ率を望ましい水準に誘導していくことが可能であるとの考え方がある。

 そもそも潜在成長率がどの程度であるのかは、推計の仕方によりかなりの幅があるとみられ、日銀は低めに、内閣府はやや高めに見ていると思われる。ただ、現在の日本経済の状況を考えると、潜在成長率についてはやや低めに見積もってもおかしくはない。日銀の試算も無理矢理に2%の物価目標に向けての数字を作っていたわけではないとみられる。先日の黒田日銀総裁が会見における表情から見ても、2%の物価目標達成に向けて自信を持っていることは確かなのかもしれない。ただし、潜在成長率は期待と同様に正確に測れるものではないことも意識しておく必要がある。

 果たして日銀の見方通りに物価が2%の目標に向かって上昇してくるのか。4月からの消費増税により、便乗値上げも相次ぎ東京大学が試算している日次物価指数も足下、大きく跳ね上がっていることも確かである。夏を待たずに消費増税分の影響を除いても、2%近くまでの上昇もあるのではとの見方も出てきている。

 これで少なくとも日銀が追加緩和を行うような環境ではないことが明らかとなった。それが8日の日銀総裁の会見後の円高株安の要因となったが、今後も7月あたりかとの見方も多かった日銀の追加緩和観測が大きく後退することが予想される。私自身は日銀の追加緩和は戦力の随時投入を避ける意味でも困難との見方をしていたが、そもそも追加緩和は必要ないぐらいに目標に向けて順調な道筋を辿っているとして日銀は市場の追加緩和観測を修正させたいのかもしれない。無理矢理の追加緩和をするぐらいであれば、日銀は黙って現状維持、の道を選ぶことも適切であるのもしれない。

 しかし、円安効果が薄れつつあるなかで本当に物価目標は達成できるのか。消費増税もあっての今後の景気の動向はどうなるのか。そのあたりの不透明要因もある。そして本当に物価が上がると認識されれば、いかに日銀が大量に国債を購入していようが、異常な低さに収まっている長期金利が動意を見せてくるはずである。

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by nihonkokusai | 2014-04-11 09:27 | 日銀 | Comments(0)

日銀総裁会見の影響とイエレン議長失言疑惑

 日銀金融政策決定会合後の総裁会見は、15時半からスタートするが、これまではそれが終了後にその内容が会見場にいた記者からQUICKなどを通じて配信されていた。ところが、4月8日の会見からはリアルタイムで会見内容が報じられることになり、会見そのものも日経新聞のサイトなどを通じて動画配信されることになった。

 日銀は3月24日に次のようなコメントを出していた。

 「日本銀行は、総裁定例記者会見の報道解禁のタイミングを、これまで「会見終了後」としてきましたが、情報発信を速やかに行う観点から、4月8日(火)の定例記者会見より、会見開始と同時に報道可とする扱いに変更することとしましたのでお知らせします。 なお、総裁定例記者会見以外の会見についても、原則として、会見開始と同時に報道可とする方針です。」

 8日の金融政策決定会合では、予想通りの現状維持が決定された。このため、それほど総裁会見内容に注目が集まっていたとは思われなかったが(現実はやや違っていたようである)、昨年4月の量的・質的緩和から1年を経過したこと、さらに今回からリアルタイムで報じられることになったこともあって、市場参加者の総裁会見への関心は高くなり、私も動画配信での生中継を見ていた。

 会見内容については、すでに新聞等でも報じられており、いずれ日銀のサイトにも会見要旨がアップされると思うので、そちらを確認いただきたいが、印象としては総裁はだいぶ自信を持っているなというものであった。

 今回から会見がリアルタイムで報じられ、動画配信もされることについての質問があり、総裁はネクタイの色を気にした程度と軽く受け流したが、それなりに意識はしていたと思われる。それでも特に緊張の色も見られず、記者の質問にも淡々と受け答えをしていた。前任者の白川総裁が理路整然とした受け答えをしていたのに対し、どちらかといえば、黒田総裁はわかりやすい説明を心がけていたとの印象である。

 結果から言えば、このリアルタイムの総裁会見に市場は大きく反応した。外為市場では円高が進行し、ドル円は101円台に入ることになる。黒田総裁が「追加緩和については現時点では考えていない」と自信を持って答えていたことがきっかけとなった。消費増税等の影響もあり、今回の追加緩和はさておき、7月あたりの追加緩和の可能性を意識していた市場参加者も多かったようであるが、その観測を吹き飛ばすような黒田総裁の自信を持っての発言であった。言葉の内容だけでなく、今回は総裁の表情等も確認でき、それも意識されて早期の追加緩和観測が後退したと考えられる。

 会見での総裁の発言そのものや表情まで確認できるとなると、市場も端末から流れる記者がまとめたフラッシュ記事ではなく、直接、総裁のコメントを確認して相場を動かすことができる。人によって印象の取り方は異なるかもしれないが、文字だけの情報ではないものも確認できるようになったことは、市場への影響も変わってくるかもしれない。

 ここで思ったことは、3月19日のFOMC後の会見でイエレン議長は質問に答える格好で、利上げまでの「相当の期間」についての記者からの質問に対し、その相当の期間とは「Around Six Months」と答えたとき、どのような表情をしていたのかということであった。この発言はポロっと出たものなのか、それとも質問を想定して答えていたものなのか、その表情はどのようなものであったのか。

 昨日発表された3月18~19日に開催されたFOMCの議事要旨によると、2016年末に向けての政策金利見通しが若干上振れしていたが、これに対して、数人の委員から市場が過度に反応しないかの懸念が出ていた。そんな懸念があったにも関わらず、FOMC後の会見でイエレン議長は、利上げまでの相当の期間について、Around Six Monthsと答えたことになる。どうやらこれはやや不注意な発言であった可能性も出てきた。やはりそのときの表情が気になる。

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by nihonkokusai | 2014-04-10 09:34 | 日銀 | Comments(0)

フラッシュ・ボーイズとフロントランニング

 8日現在、アマゾン・キンドルのEconomics のベストセラーのトップが「Flash Boys: A Wall Street Revolt」となっている。私も昨日、ダウンロードし、これからじっくりと読んで見たいが、とにかく興味深い本である。

 昨日のこのコラムでもフラッシュ・ボーイズのことを取り上げたが、この本が取引所の取引そのものの変革を促すこともありうる。本の売れ行きが良いということはそれだけ関心が持たれていることは確かである。これにはもちろん、この本に発売により、HFTを手掛ける投資会社「バーチュ・ファイナンス」の上場延期というニュースも、販売増に影響したものと思われる。

 著者である米作家のマイケル・ルイス氏は、ブルームバーグ・テレビとのインタビュで、「フロントランニング(仲介業者が顧客の注文の前に自分の注文を先に出す行為)が行われていることは明らかだ」と語ったそうである。ただし、システムの抜け穴を利用して利益を得ているだけだとも指摘していた。

 しかし、ここで問題になりそうなのは、どのようにして顧客の注文を事前に把握したのかである。1238日のうち損失が出たのはたった1日の「バーチュ・ファイナンス」に対して、FBIはインサイダー取引の有無について調査に乗り出したと6日の日経新聞は伝えていたが、取引所とHFT業者の関係についても今後は調査の手が入る可能性がある。

 フロントランニングが違法であるのかどうかは微妙なところであるが、注文そのものをチェックできてしまうとすれば、インサイダーに関わる取引にもなりかねない。ちなみに、フロントランニングは別にコンピュータを使った取引だけに存在しているものではない。むかし、人同士が取引している際にも存在していた。

 株式市場での立会場での取引では、怒号やサインが飛び交っていたが、ここには顧客の注文を取り次ぐ証券会社の社員、その注文を付け合わせる取次業者(実栄証券)の社員がいて、東証の社員がそれを監視していた。顧客の注文を取り次ぐ証券会社の社員のなかには、会社の資金をもとに自己の裁量で売買を行っている社員もおり、これがディーラーと呼ばれていた。このディーラーは自社なり他社なりの大口注文を確認し、その注文より先に売買を執行して利益を得ることも可能であった。このあたり、注文を繋ぐのが新人とかであれば、ベテランのディーラーが横目で確認して先に売買を執行するようなことは容易であったはずである。

 しかし、取引がシステム化してしまうと、人が介在してのフロントランニングは難しくなる。そもそも自己売買を行うディーラーという人種そのものが、既にレッドブック入りしており、昔に比べて存在感はなくなっている。そんななかにあり、どうやらシステムの隙をついてのフロントランニングが、ハイ・フリークエンシー・トレーディングを通じて復活していたようである。注目すべきはフロントランニング行為そのものよりも、それが可能となった背景にある。その結果次第では、今後の世界的な金融取引手法に大きな変化が出るとともに、取引所取引にも変化が生じる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2014-04-09 08:05 | 金融 | Comments(0)

米株変調の一因か、フラッシュ・ボーイズとHFT

 ここにきて米国株式市場の動きに変化が生じているように思われる。大きな流れが出てくる可能性もあり注意が必要になりそうである。そのひとつの兆候にナスダック指数がある。債券市場の動向を見る上でも、米国株式市場の動きも確認しているのだが、ダウ平均と比べて値動きが荒くなってきている。

 4日の米国市場では発表された3月の米雇用統計がほぼ予想通りの数字となったことで、天候が悪化していた割に雇用は安定しているとの見方から、S&P総合500種やダウ平均は昨年末に付けた過去最高値を上回った。ところがその後、米国株式市場は大きく下落し、ダウ平均も前日比159ドル安、ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は、前日比110ポイントもの下落となった。昨日もハイテク株を主体に続落となり、ダウ平均は166ドル安、ナスダックは47ポイントの下落となった。

 S&P総合500種やダウ平均が一時最高値をつけるなど、まさに高値波乱の様相となっているわけだが、特にグーグルやヤフーなどIT関連やバイオテクノロジー関連の株がかなり乱高下しており、それがナスダック指数の大きな変動に繋がっている。これらの値動きの荒い銘柄は、モメンタム銘柄と呼ばれているようで、コンピュータを使った超高速取引(HFT)が影響している可能性がある。

 4月6日の日経新聞によるとHFTを手掛ける投資会社「バーチュ・ファイナンス」は4月初めに見込んでいた上場を延期した。同社が上場に向けて3月に開示した資料のなかに、「過去5年間で負けたのはたった1日」と掲載されていたそうで、これが問題視された。

 ブルームバーグによると、取引所が23兆ドル規模の米株式市場を操作していると主張するマイケル・ルイス氏の新著「フラッシュ・ボーイズ (原題)」が3月31日に発売され、高頻度取引にかつてない厳しい目が注がれる中で、バーチュはIPO計画の延期を決めたそうである。

 「バーチュ・ファイナンス」は2009年から2013年まで取引を行った1238日のうち損失が出たのはたった1日だけだったとしている。コンピュータを使ってのシステム売買と呼ばれるもので、利益をあげることはかなり困難であることをまず知って頂きたい。過去の値動きを元に、たとえば移動平均線の組み合わせなどを使って、売り買いの基準を作りそれを自動発注させて儲けを継続させる確率はかなり低い。過去のシミュレーションが未来の値動きを当てることはまずないためである。これは債券ディーラーとして先物主体に短期売買を14年間やってきた経験から断言できる。

 ところがバーチュ・ファイナンスは月間や年間ベースではなく、デイリーで1238日のうち1日しか損失が出なかったというのは、ありえないとされたシステム売買の錬金術を完成してしまったのかと思わせるようなものである。当然、ここにはカラクリが存在するはずである。

 債券先物取引が始まってまもなくのころ、債券取引で大きな利益を出していた外資系金融会社があった。のちに聞いた話からは、どうやら当時、国内金融機関は現物債の空売りが制度上できなかったことを利用し、現物の空売りを組み合わせた裁定取引で利益をあげていたとされる。制度上の隙間をうまくついて利益を出していたのである。

 HFTとは「ハイ・フリークエンシー・トレーディング」のことであり、コンピュータ・システムを使って価格や注文情報を「いち早く」取引に生かせる。マイクロ秒単位のようなわずかな時間差を利用して人間が行っている売買の隙を捉えて、細かく稼ぎ、それが積み上がって利益を得ていた可能性がある。取引所はHFTがかなりの売買高の割合を占めてきたことで、積極的に売買システムを更新し、HFTを引き込もうとしていた。東証の売買代金に占める割合は今年1~3月の1日平均で4割超に達している。

 HFTは相場を乱高下させ攪乱する要因ともなるが、流動性を高める役割も結果として担っている。しかし、コンマ秒の世界での取引には当然、人間の目はついていけない。何かしらのタイムラグをみつけて、そこにつけ込んで利益をあげることもひとつの手段であろうが、そのような取引が増加すると、2010年におきた米国株の急落といった事態も招きかねない。債券先物の初期にあった裁定取引のように見つけたもの勝ちというのもあろうが、これらはシステムや制度上の隙を突いたに過ぎない。

 4月2日のWSJの「高頻度取引描いたマイケル・ルイス氏の「フラッシュ・ボーイズ」」という記事によると、マイケル・ルイス氏は新著「フラッシュ・ボーイズ」で、高頻度取引業者は、高度なコンピュータ技術や光ファイバー、マイクロ波の電波塔を悪用して数千分の1秒単位で他の投資家に先がけて取引を執行し、大手の投資家も悩ませる今日的な市場の無法者だと語ったそうである。彼らは証券取引所を過去に例のない大きな変動を繰り返すコンピュータの化け物にしてしまったと。

 今回、「バーチュ・ファイナンス」の取引については米司法省やFBI、SEC、CFTCなども調査に乗り出しているようだが、大口売買より先に仕掛けるというのは、何らかの違法な手段が絡んでいた可能性もありうる。HFTにはそろそろ何かしらの規制も必要になってくるのではないか。相場を本来形成するのは市場参加者による思惑という原点に立てば、むしろ排除してほしいと考える。このあたりのHFTの動向も睨んで、最近の米国株の動きにやや異変が起きている可能性がある。

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by nihonkokusai | 2014-04-08 08:05 | Comments(0)

日銀の追加緩和はあるのか

 昨年4月4日に日銀の量的・質的金融緩和政策(QQE)、いわゆる異次元緩和政策が決定して1年目を迎えた。今年4月の日銀の金融政策決定会合は本日4月7日と8日に開催される。

 異次元緩和政策はバズーカ砲に例えられ、その後は戦力の随時投入はしないと日銀の黒田総裁は発言し有言実行となった。昨年4月の異次元緩和以降の金融政策決定会合では、昨年4月28日から今年3月11日まで都合13回の決定会合が開かれ、この13回すべてにおいて金融政策に関しては全員一致での現状維持が決定されている。

 4月1日から消費増税がスタートしたが、これによる景気の落ち込みへの懸念から日銀の追加緩和期待が強まっている。本田悦朗内閣官房参与は3月25日に、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、追加緩和検討のタイミングとしては、4月からの消費税率引き上げの影響に関して、予想インフレ率や短観のDI、株価、為替などを見て、「ある程度先行性のある指標が落ちてきた場合は、金融緩和が必要だと判断される可能性がある」と指摘した(ブルームバーグ)。

 債券市場はさておき、株式市場や為替市場での日銀による追加緩和への期待は根強い。欧米の中央銀行をみても、FRBはイエレン議長が利上げ時期を示すなど完全に出口戦略を取っているのに対し、ECBについては量的緩和を含めた追加緩和への期待がある。ユーロ高を食い止める上でもECBは追加緩和を実施するとの観測が、先日のECB理事会後のドラギ総裁の会見を受けて強まっている。

 日銀については、もし追加緩和が検討されることになれば、ここが黒田日銀にとって大きな正念場となりうる。異次元緩和から1年間はとりあえず様子を見るとの審議委員も一部にいるといわれ、今後はリフレ政策の効果とそのリスクの評価について、日銀の政策委員の間で意見が分かれる可能性がある。

 例えば3月20日の記者会見で、木内審議委員は追加緩和に関して、「私は量的・質的金融緩和」に賛成していますが、それと2%の物価安定の目標とを結び付けてはいないため、2年程度で 2%の目標を達成するのが難しくなったら追加緩和します、という考え方を私自身はしていません。」とはっきりコメントしている。

 さらに追加措置には副作用が伴うことが考えられるとして、次のようにコメントしている。

 「例えば、長期国債の買増しであれば、色々な副作用があり得ます。金融市場の機能を損なう、それを通じて金融機関の財務体質を脆弱にさせるということが考えられます。また、財政ファイナンスのリスクを高めてしまうとか、将来、金融政策を正常化する時に大きな問題が起こるかもしれないとか、金融市場を安定化させながら円滑な正常化を図ることがより難しくなってくるといった副作用を考えると、追加緩和に見合った副作用を正当化するようなイベントというのは、余程大きなショックということになると思います。私自身は、追加緩和を正当化するような条件というのは、非常にハードルが高いと感じています。」

 この見方は木内委員だけの見方ではないと思われる。佐藤委員も講演で次のような発言をしている。

「自由な資本移動の下で中央銀行は万能ではない。たとえば、先ほどの名目長期金利の決定メカニズムに即して言えば、仮に、中央銀行が政府の調達コスト抑制のために国債市場への介入を増やしても、中央銀行による国債購入の増加が財政規律を弱めると市場に判断されれば、かえってプレミアム部分が上昇する可能性がある。」

 中央銀行が国債価格をコントロール可能かどうかは、中央銀行の意図よりも市場の判断によるところが大きいと佐藤委員は指摘しており、仮に追加緩和でさらなる国債の大量買入が議案に上がった際には、その効果とリスクを天秤に掛けた上で、反対票を投じる可能性がある。

 そもそも追加緩和で何を日銀は行うというのであろうか。さらなる国債の大量買入はその効果と副作用を秤に掛けるとむしろ打ち出しづらい。だから、本田参与は手段としては指数連動型上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(J-REIT)などリスク性資産のさらなる購入を挙げていた。これでは物価を上げるというより、株価などの資産価格の上昇を意識した政策と見なされる可能性がある。しかも市場規模から言えば、いくら大胆に買うといっても国債の購入規模とは比較にならないであろうし、市場機能に多大な影響を与える可能性がある。

 日銀にとって追加緩和は非常に難しい判断を伴うことになり、消費増税による景気への影響が黒田総裁の言うように限定的であってほしいと願っているのではなかろうか。日銀のバズーカ砲とは実際の破壊力よりも、市場はその音に驚かされた。一度、聞いてしまったもので二度目のバズーカ砲の音による効き目は限定的なものになる可能性がある。そして、残ったのが日銀による大量の国債買入であったとすれば、いずれ佐藤委員の指摘したような、副作用が顕在化する恐れがある。これらを配慮すると日銀にとり、いつでも動けるとの姿勢を見せるだけで実は何もせず、物価が2%に上がってくるのを待つほかはないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-04-07 09:47 | 日銀 | Comments(0)

日銀の異次元緩和の効果をYES・NOで検証

 日銀の量的・質的緩和政策、いわゆる異次元緩和政策が導入されて1年が経過した。ここで日銀の異次元緩和政策による効果についてあらためて検証してみたい。その前に、これを読んでいただいている方々にいくつか質問をしたい。

問1、2013年4月4日の決定した異次元緩和が、急激な円安をもたらしたのか(YES NO)
問2、2013年4月4日の決定した異次元緩和が、急激な株高をもたらしたのか(YES NO)
問3、2013年4月4日の決定した異次元緩和が、国内物価の上昇をもたらしたのか(YES NO)
問4、2013年4月4日の決定した異次元緩和が、国内景気の回復をもたらしたのか(YES NO)
問5、2013年4月4日の決定した異次元緩和が、長期金利の低下をもたらしたのか(YES NO)

 まず問1であるが、正解は「No」である。これはドル円のチャートを確認してもらうとわかる。2012年11月に80円近辺から日銀の異次元緩和決定時には100円近くまでドルは上昇していた。そこから昨年末の105円近辺までドルは上昇したが、異次元緩和前の「20円規模」の上昇に比べて、異次元緩和後の円安はわずか「5円程度」に過ぎない。

 問題は何故、異次元緩和決定前に20円もドル円は上昇したのかにある。12月の衆院選に向けて政権交代が意識され、さらに安倍自民党総裁がリフレ政策を全面に打ち出したことが円安のきっかけとなっている。何故、これほどまでに急激な円安が生じたのか。それは円が買われすぎていたことの反動が大きい。欧州の信用不安の後退のタイミングも重なり、ヘッジファンドが仕掛けやすい状況にもあった。タイミングを見る限り、この円安は日銀が大量に国債を購入したからもたらされたものではない。

 問2であるが、こちらも正解は「No」である。日経平均株価は2012年11月の8600円台あたりから、異次元緩和決定の4月4日には12600円あたりとすでに4000円程度上昇している。そこからさらに5月に15600円近辺と3000円ほど上昇したが、異次元緩和前のほうが上昇幅は大きい。

 問1と問2の答えについては当然異論もあると思う。市場は思惑で買って事実で売るものであり、日銀の異次元緩和への期待で買って、予想以上に日銀は答えてくれたので、そこでの売りはなく、さらに買われたのだ、との見方も当然あろう。これはすなわち思惑的(これぞ期待?)な動きであり、日銀のマネタリーベースの大きさなどとは別の次元で動いている。

 問3については、円安・株高が物価を予想以上に上振れさせたとするのであれば、こちらの回答も「No」となる。アベノミクス以前から、2013年の消費者物価指数はいずれ0.5%あたりまで上昇するとの見方は出ていた。そこに円安による影響に加え、原発事故の影響もあってのエネルギー価格の上昇などが影響し、前年比1%を超える上昇となった。日銀の異次元緩和によって物価へのマインドが変化したのではなく、円安そのものが物価に対する意識を変化させていた面もある。

 問4については円安が輸出企業に恩恵をもたらしたことは確かであるが、輸出そのものの伸びよりも輸入の増加により、貿易収支を悪化させることになった。景気の回復は円安の影響とともに、欧州の信用リスクの後退による欧米経済の回復、さらには中国の景気が底堅く推移していたことが日本の景気回復に貢献している。日銀が国債を大量に買うことで、景気に直接刺激を与えていたわけではない。金利は長期金利含めて低水準を維持しているが、特にゼロ金利政策は昨年4月に始まったわけでもない。

 問5については一見、「Yes」に見えなくもない。しかし、現在の日本の金利は政府や日銀の統制下にあるわけではない。中央銀行が大胆に国債を買えば長期金利は低く抑えられるわけでもない。その事例としてテーパリング開始前の米国の長期金利の動きをみればわかる。FRBによる大量の米国債やMBSの購入が続いていても、長期金利は上がるときには上がるのである。ただし、日銀の買入が安心感を与えていることは確かであり、日本国債を売るインセンティブが乏しいなかにあり、日銀の国債買入が金利を結果として押さえ込んでいる。しかし、物価は上がり、景気も回復しているなかにあり、このまま押さえつけていられるかどうか。このあたりは今後の大きな課題となりうる。

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by nihonkokusai | 2014-04-06 08:22 | 日銀 | Comments(0)

ECBはバズーカ砲(量的緩和)を準備

 ECBは3日の政策理事会において政策金利の据え置きを決定した。主要政策金利であるリファイナンス金利は0.25%、下限金利の中銀預金金利は0.00%、上限金利の限界貸出金利は0.75%にそれぞれ据え置かれた。

 先日、私の書いた昼の牛熊コラム「異次元緩和一周年記念でECBもバズーカ砲を撃つのか」で、量的緩和政策導入の可能性が若干でもあることを指摘したが、利下げを含めて今回の理事会では政策変更はなかった。

 しかし、ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、ECBは低インフレが長期間続くと見込んでいるとし、あまりに長期化するようなら行動する考えを示した上で、「理事会は、低インフレが過度に長期化するリスクに効果的に対処するため、責務の範囲内で、非伝統的手段も活用する決意で一致している」と発言した。下記がECBサイトにある原文である。

「The Governing Council is unanimous in its commitment to using also unconventional instruments within its mandate in order to cope effectively with risks of a too prolonged period of low inflation.」

 「unconventional instruments」は非伝統的金融政策とも言うべきもので、政策金利がゼロ近辺となり、金融政策としての金利操作に限界が生じた際に中央銀行が、主に量を意識して打ち出す政策といえる。日銀が2001年から2006年に行った量的緩和政策に代表されるもので、米国ではQuantitative easing、QEと呼ばれている政策である。

 ドラギ総裁は質疑応答において、非伝統的手段としてQEを視野にいれていることもはっきりとコメントしている。つまり日銀でいえばバズーカ砲を準備しつあるようである。

「So this statement says that all instruments that fall within the mandate, including QE, are intended to be part of this statement. During the discussion we had today, there was indeed a discussion of QE.」

 このあたりの予兆は、3月25日にタカ派で知られるドイツ・ブンデスバンクのバイトマン総裁の発言から伺えた。既にゼロ近辺となっている政策金利を一段と引き下げることでの効果は限られており、非伝統的な措置に関する協議が必要だとの認識を示していた。法的な障害が多く考えられるものの、量的緩和は「論外」ではないとも語ったのである(ロイター)。

 あのバイトマン総裁が量的緩和に言及するというのは、かなりの意外感があった。それだけここにきての物価下落のリスクが意識されていたと思われる。31日に発表されたユーロ圏の3月の消費者物価指数は前年同月比0.5%の上昇となり、2月の0.7%の上昇から上昇幅を縮めている。

 デフレ懸念については、ドラギ総裁やプラート専務理事は否定していたものの、今回のドラギ総裁の低インフレへの警戒を強めるような発言は、日本のデフレと同様の事態も意識し始めている現れではなかろうかと思う。

 バイトマン総裁は3月25日のインタビューの中で、ユーロ高がインフレ見通しに及ぼす影響に対応するためには、「中銀預金金利のマイナスへの引き下げが他の措置よりも適切」とも述べていたことで、さらに一段の政策金利の引き下げを行って、量的緩和を導入する可能性がある。

 2010年10月に日銀が決定した包括緩和政策では、実質的なゼロ金利政策と国債を含めた資産買入等の基金創立、さらに時間軸の明確化を組み合わせていた。このあたりを参考にしてくる可能性がある。

 ECBは量的緩和(QE)で何を購入するのか。FRBは米国債とMBS、イングランド銀行や日銀は国債が主体であった。ECBは国を跨いでの中央銀行という特殊性を持っているが、量を変えるのは国債以外に考えづらく、国債主体の買入が予想される。そのタイミングは意外に近いのかもしれない。

ECBのサイト 
http://www.ecb.europa.eu/home/html/index.en.html

ドラギ総裁の会見要旨
http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2014/html/is140403.en.html

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by nihonkokusai | 2014-04-05 07:51 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀の追加緩和の可能性(異次元緩和一周年記念)

 本日4月4日で昨年、日銀が量的・質的緩和政策、いわゆる異次元緩和政策を決定して一年が経過する。4月からは消費増税が始まり、リフレ派を中心にこれによる景気の落ち込みを懸念する声も強く、日銀の追加緩和を求める声も出ている。

 日銀の追加緩和というが、実は容易なものではない。白川総裁までの日銀であれば、特に追加緩和のハードルは高くなかった。しかし、黒田総裁の日銀の追加緩和のハードルは、白川時代の「2倍」以上高くなっていると考えられる。

 白川時代と黒田時代で何が変わったかといえば、気合い、ではなく期待に働きかけることを主眼に置いて、大胆な金融緩和政策手段を取ったことにある。ただし、この筋書きを書いたのは日銀ではなく、政権交代前の安倍自民党総裁であり、その原作は岩田現副総裁らリフレ派の方々。それを日銀の担当理事あたりが脚色し、演出したのが黒田総裁で、出演者は審議委員など政策委員の皆さんということになったのではなかろうか。

 昨年4月4日の異次元緩和のキーワードは2倍であった。コアCPIの2%という物価目標に対しては、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上とするとした。この2倍という数字は、今年2月の会合で決定した「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」の変更でも使われた。規模を2倍としたうえで、1年間延長することを決定したのである。

 昨年4月に決定した異次元緩和は「バズーカ砲」にも例えられた。これは別に音だけデカくて効果は薄いという意味では、たぶんない。とにかく市場心理に影響を与えようと、量を出してしまったので、そう何度も打ち出せるものではないとの意味合いを兼ねたものとなった。そうであればバズーカ砲というより戦艦大和の46センチ砲のような気もするが、それはさておき、黒田総裁は異次元緩和後は戦力の随時投入はしないとも語り、現実に異次元緩和以降、1年にわたり金融政策の変更はなかった。

 一度、サプライズを起こしてしまうと、二度目のサプライズは難しくなる。異次元緩和と同様に、さらに倍の金額の国債を買い入れるとなれば、それでなくても一時機能不全に陥り、現在でも流動性が完全に回復したとは言いがたい債券市場に影響を与えるだけでなく、財政ファイナンスではないかとの懸念を強めさせることにもなりかねない。それは出口政策をより一層、困難にさせることになる。

 日銀の異次元緩和はどのような効果があったのかの検証はさておき、外為市場や株価の動きを見る限り、日銀の異次元緩和はサプライズというより、政府の言うとおりにやってしまったのか、というショックも大きかった。つまり、アベノミクスへの援護射撃的な意味合いが大きかった。すでに2012年11月の政権交代期待と安倍氏の輪転機発言で急激な円安は始まっていた。それで株価も上昇していた。この円安が予想以上の物価上昇を招いたことは確かである。

 つまり円安による物価上昇の効果を意識すれば、今後の追加緩和政策は米国の動向を横目で見ながらも、円安に働きかける政策が必要となる。追加緩和への市場の「期待」は裏切るわけにもいかない。それではどのような手段が講じられるのか。欧米の中央銀行はこれに対してフォワードガイダンスを持ってきた。日銀は異次元緩和では2年という縛りを自ら設けたが、そうであれば2%の目標は達成できるとの自信を見せた上で、超緩和策は2%達成後も相当の期間続けることを示すような政策を取ってくるのではなかろうか。さらに市場に見透かされないためには、それ相応の見栄えのするものも必要になる。何も総裁が割烹着を着る必要はないが、デフレファイターであることを意識させるべきものも必要となろう。それが何であるのか、私にはいまのところ想像できない。

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by nihonkokusai | 2014-04-04 09:28 | 日銀 | Comments(0)
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