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日本の国債村は桃源郷なのか

 過去の金融危機と呼ばれるものは、金融商品の市場価格の暴落が引き金になっている。バブルというのはどの程度膨らめば、弾けるのかは残念ながら過去の事例で数値化することは難しい。何かしらのきっかけでショックが生まれることもあるが、ここにもある種のバブル的な要素が絡んでいた。大きなショックの前にはバブル的なものが発生しており、それが金融ショックの背景となっている。しかし、このような金融危機がいつ、どのようなタイミングで起きるのかは、残念ながら予測は難しい。

 日本国債の10年債利回り(長期金利)は低位安定しており、ここにきて0.6%あたりにいるが、この水準に違和感を覚えなくなるぐらいに麻痺した状態が続いている。その間、物価は前年比プラス1%以上となり、2014年の成長率予想も1%は超えている(IMFの予想はプラス1.4%)。

 このような状況下にあり、いくら日銀による大量の国債買入があろうが、0.6%という長期金利はあまりに低すぎる状態にあると言える。この矛盾がいずれのタイミングで現れてくることが予想される。

 金融市場は需給で決まると言われるが、買い手がいれば急落はしないと言えるのか。日銀が年間の国債発行額の7割も買っていれば、相場は高い水準のまま維持されるのか。そのような保証はどこにもない。

 たとえば、イングランド銀行はどうしてジョージ・ソロスに屈したのか。円高を食い止めるための政府の円安介入がどれだけ効果があったと言えるのか。テーパリング前の米国債は大量にFRBが国債を購入を続けていても、米長期金利が3%近辺まで上昇したのはどうしてなのか。

 日本の国債市場もいくら日銀が大量に買い付けていようが、下がる時には下がる。それは市場の地合、センチメントに変化が現れた時に起こりうる。現在はそのようなセンチメントの変化は生じておらず、日銀の国債買入を前提に異様に高い水準で妙な均衡を保っている。

 その前提のひとつに、いくら日銀の異次元緩和があろうと安定した2%の物価上昇はありえず、それによる長期金利の上昇は想定していないという暗黙の了解のようなものがあるのかもしれない。1998年に日本の長期金利は1%を割り込んでから、一時的に2%台に乗せることはあっても、ほぼ1%台主体での動きが15年以上に及んで続いている。

 2012年以降はほぼ1%割れの水準で推移し、これが当たり前の水準となってしまった。この背景にはデフレがあり、リーマン・ショックやギリシャ・ショックがあったことは確かだが、その百年に二度、いや百年に一度とされるリスクはすでに後退し、デフレスパイラルの懸念もアベノミクスのお陰かはさておき、後退しつつあるのは確かである。

 それに対しては日本の長期金利は全く無視している。それでなくても国債の需給はしっかりしている。つまり常に買い手が存在しているところに日銀が大量に買ってくれている。日銀の実質的なゼロ金利政策は続いているから、長期金利も0.6%あたりにいて当然、なのであろうか。

 買い手がいる以上、国債の急落はない。長期金利が上がれば投資家は当然買ってくる。いままでがそうだったから、これからもそうであるに違いない。だからいまも安心してこの水準でも国債は手放さない。しかし、日本の国債村は日銀の金融政策というベールに包まれた一種の桃源郷のような場所と化しており、外界とは閉ざされた場所となりつつあるのではなかろうか。それに気が付いたときに何が起きるのか。長期金利の超低位安定が続けば続くほど、その反動が大きくなるであろうことは想像に難くない。

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by nihonkokusai | 2014-04-30 09:32 | 債券市場 | Comments(0)

安全資産とは何か

 資金を運用する際に常に意識しなければいけないのがリスクである。少なくとも元本を毀損することなく運用しなければいけない資金は、リターンをある程度犠牲にして運用する必要があることは言うまでもない。いわゆる安全資産での運用となるわけだが、その代表的なものとして預金がある。金融機関の運用先として最も安全な資金の保管先は日銀の当座預金となる。その代わりその金利は準備預金制度に基づく所要準備の分はゼロ、それを超える超過準備の分は以前はゼロだったが、現在は0.1%の金利が付けられている。

 個人は日銀に口座を持つことができないため、日銀の当座預金に資金を置くことはできない。その代わりに我々は銀行などの預金口座を利用している。この口座において給与の振り込み、電気代や電話代等々の引き落とし、クレジットカードの決済等々も行っているが、この預金も利息よりも元金が保証されている面が重視されている。その銀行に何かあっても預金保険の対象預金(利息のつく普通預金・定期預金・定期積金等々)であれば、合算して元本1000万円までと破綻日までの利息等を保護される。また、決済用預金(当座預金・利息のつかない普通預金など)は全額保護される。

 日銀の実質的なゼロ金利政策により、短期の金利はほぼゼロ近くなっており、預金金利は低い状態にあるが、安全性と決済の利便性を考えればある程度の資金を預貯金に置いておくであろう。民間銀行はこの預金の資金を元にして、貸出や国債などでの運用を行っている。定期預金の金利と同じ年限の国債の利回りに差があるのは、国債の価格変動リスクを銀行が負っているためである。

 国債などの債券には価格変動リスクがある。つまり市場に入札などを通じて発行された国債は債券市場で売買されて価格が決まる。その価格は元本の100円を上回ったり、下回ったりする。ただし、デフォルトでもない限り、償還日には元本が返済される。これが株式や為替の価格変動リスクと異なる点となる。さらに国債は国が発行しているため、国内の金融資産では最も安全とされるものとなっており、だからこそ元本をなるべく毀損させてはいけない資金の運用の主体が国債になっている。当然、年金の運用も国債主体にならざるを得ない。国債と株と為替の価格変動リスクを同等にみるべきものではない。

 国債など債券には、株などと同様に信用リスクも意識しなければならない。国が出しているから国債は安全だというのはおかしいとの議論もあるかもしれない。日本国よりトヨタのほうが安全ではないかとの見方もあるが、国と民間企業ではそもそもの土俵が異なる。トヨタはなくても別の自動車会社があるが、もし国への信用がなくなれば、国内で生活している限り、安心して経済生活を送ることはできなくなる。円とビットコインの信用の違いなどもここにある。

 国債のリスクは他の金融商品に比べて低いことは確かであり、より安全性を求める必要のある資金はリターンよりもリスクの低いもので運用すべきというのは鉄則である。国債のリスクも残存期間に応じて異なる。期間の短い国債は期間の長い国債に比べて価格変動リスクは低くなる。リスクとリターンはこのあたりで調整すべきである。たとえば子供の将来の学資にあてるための資金を利子が少ないとかの理由で、リスクの高い金融商品にその資金を投じるであろうか。国債が絶対安全というわけではむろんないが、よりリスクを抑える運用のためには国債主体の資金運用は避けることはできないはずである。

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by nihonkokusai | 2014-04-27 11:02 | 金融 | Comments(0)

GPIFの運用と伊藤教授の相場勘

 4月24日の日経経済教室は伊藤隆敏政策研究大学院大学教授による「公的年金を考える」というタイトルで、副題に「債券減らし分散投資急げ」とある。伊藤氏は「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」の座長を務めていた。

 昨年末の時点で約128兆円もの資金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産構成のあり方については、6月の成長戦略の改定作業が本格化する中で議論されていくとされており、市場関係者見もこの行方には注目しているが、伊藤隆敏教授の持論については、いくつか疑問点がある。

 伊藤氏は、GPIFの運用資産の約55%を国内債で保有していることが問題としている。ちなみに昨年末時点での公的年金の国債保有残高は約69兆円(資金循環統計)となっている。

 伊藤氏の主張で疑問となるのは、日銀がインフレ目標を設定して、異次元緩和を行ったことで物価が2%に上がり、それにより長期金利が3%以上に上昇すると決めつけている点にある。

 投資委員会には市場動向を読むことができる専門家を置けとしているが、債券の専門家と呼ばれる人達に2%の物価上昇の可否と、今後の長期金利の動向予想を聞いてみると良い。3%まで長期金利が上昇すると読む専門家は少数のはずである。むろん相場である以上、何が起きるかわからない。伊藤氏の相場感が正しい可能性も当然あるが、それはあくまで結果論にすぎない。

 相場の先行きについて断定的な判断はしてはいけないことは市場に携わるものにとっての鉄則であり、まずそこがまったく意識されてない。これはつまり市場動向を読むことができる専門家らしき人物を置いても、相場の先行きを適格に判断できる人物などは存在し得ない。これは伊藤教授も同様である。

 ただし、今後の長期金利の上昇リスクに備えることは確かに必要と思われる。それで何故、分散投資なのかがわからない。金利上昇リスクに備えたければ、物価連動国債の比率を高めるという手段もあるが、保有する債券のデュレーション(平均残存年数)を短期化すれば良いはずである。

 伊藤氏はGPIFの保有国債のうち25兆円程度を売却しそれを日銀が買い入れれば市場には影響はないと主張するが、もし仮に伊藤氏の予想通りに長期金利が3%に向けて上昇し始めたときに、そのような行動が起こされると、日銀が買い入れる以前に、市場への売り圧力が意識され、さらに日銀による買入が財政ファイナンスと認識されて、国債の売り圧力がさらに強まる懸念が生じる。

 日銀が買うから相場は抑えられると、もし考えているのであれば、市場について大きな誤解をされている。買い手が日銀しかいなくなった債券市場を考えて見ると良い。1998年末の運用部ショック、リーマンショックの際の物価連動国債や15年変動利付き国債がどうなったか、ギリシャの国債がどのように売られたのか、市場はパニック的な動きを起こすとそれを止めることはできず、そのような状況での日銀の買入は火に油を注ぎかねない。ただし、これもあくまでそのような動きもありうるというひとつの予想・仮説であるが。

 労働人口が減ることで、積立金はある程度の運用成績、ハイリターンが必要だとするのであれば、当然ながらハイリスクを覚悟しなければならない。そして、そのような高い運用成績を残せるファンドマネージャーがどれだけいるというのか。しかも運用すべき資金は巨額である。専門家会議等を持つとしているが、そのような体制下では、いざというときのリスク回避など機敏にできるはずはない。図体が大きい分、動きが取りづらいだけでなく、運用指図にタイムラグが生じるとともに、指図する方が結果論で動く懸念があり、むしろリスクを増加させかねない。そのリスクを現場が必死になって食い止めようとする構図が見えてくる。

 結論としてリスク資産に傾けるとかなりの確率で損失を被る懸念が高まる。それが自社の資金とかでの運用であるのであれば、ひとつの企業の運用の失敗で済むかも知れないが、GPIFの原資は我々の年金の積立金である。元本そのものを大きく損失しかねない今回の伊藤教授の主張については市場の片隅で生きてきたものとして、まったく納得がいかないものである。

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by nihonkokusai | 2014-04-25 08:06 | アベノミクス | Comments(0)

JTによる減税分の社員還元の意味

 復興特別法人税は2013年度末に廃止されたが、予定よりも1年早く廃止されたことで、日本たばこ産業(JT)は、減税分の約20億円を社員に還元すると発表した。減税分を社員に還元するということは、あまり聞いたことがない。

 JTでは約9000人の社員を対象に、1人20万円(新入社員は4万円)を5月中旬に渡すそうである。JTは「社員の士気向上とともに、社員の支出増につなげ、消費財メーカーとしてデフレ脱却の一助になれば」と説明している(読売新聞)。

 社員の士気向上はさておき、JTの動きは政府の意向が強く反映されていると思われる。復興特別法人税は前倒しで廃止されたが、復興特別所得税の廃止は、復興事業の実施を困難にするとの理由で継続されている。

 復興特別法人税の前倒しの廃止理由として、政府のとりまとめ案では、「企業がデフレマインドを脱却し、継続的な賃金引き上げに向けて第一歩を踏み出すためには、そのきっかけが重要であることにかんがみ、検討することとした」と明記されている(ロイター)。今回のJTの動きは、賃上げそのものではないものの、減税分を株主等ではなく一時金として社員に渡す。

 これが悪いというわけではないが、政府の付焼刃的な政策に、政府に関わりのある企業が付焼刃的な手段で答えたようにしか見えなくもない。社員に支給される20万円がどのように使われるかは、受け取った社員の意向次第ではあるが、これでどれだけデフレ脱却に効果的なのかはっきりしない。そのまま将来のリスクに備えて預金に回す人も多いであろう。

 政府は企業の賃上げなどについても口を挟んできているが、企業側からすれば余計なお世話ということではなかろうか。日本の潜在成長率が上がり、将来に向けてのビジョンが開けるのであれば、企業は物だけでなく人にも投資する。政府は裏方としてその環境作りをしなければならないはずが、通貨や国債の信用を脅かしかねないリフレ政策により、円安株高を演出したものの、結局、ほとんどそれだけであった。この裏返しとして日本国債に対する潜在的なリスクを上昇させた。

 欧州の信用リスクの後退が円安株高の背景にあり、欧米の景気も回復しつつあるが、このような好環境下にあっても日本はそこに完全には乗り切れていない。貿易収支の赤字拡大がそれを物語っている。円安要因を除いて、どれだけ環境が好転したといえるのであろうか。

 現在のデフレ脱却とのイメージは官により半ば強引にもたらされたものであり、民によるものとは言えない。今回のJTの社員にむけた20万円の支給もまさにそれを示しているのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2014-04-24 09:21 | Comments(0)

2003年の債券相場の暴落要因を振り返る

 債券市場はここにきて膠着感の強い相場が続いている。10年債利回りは0.6%近辺、債券先物は145円近辺での小動きが続いている。膠着相場が続いたあと相場が大きく動き出すことはある。債券市場ではその典型的な事例として、2003年のVARショックと呼ばれた膠着相場からの急落があった。

 2003年の債券先物の日足データを、手元の集計資料から引っ張り出して眺めてみたところ、この年の3月20日に先物は日中に86銭も動いたあとは、4月10日に65銭動き、その後は10銭程度からせいぜい30銭程度の値幅が続き、6月18日に74銭動いて、19日には1円82銭も動いていた。

 この年の相場を見る上でのひとつのポイントとなるのが、日中に86銭も動いた3月20日である。この日ふたつの重要な出来事が起きていた。米国のブッシュ大統領がイラクへの攻撃開始を発表した。さらに速水優総裁の任期満了に伴い福井俊彦氏が日本銀行総裁に就任したのである。

 就任した福井総裁は就任間もない3月25日に臨時の金融政策決定会合を開催した。この目的のひとつは行動を起こすことによって政府からの信認を得ようとしたものと思われた。福井総裁が就任した3月20日のイラク開戦で市場がやや動意を見せていたことも影響していたともみられる。ただし、臨時の会合を開催したにもかかわらず、その結果は現行の政策を維持することを全員一致で決定し、4月1日以後の郵政公社の発足に伴い当座預金残高目標を17~22兆円程度に引き上げることなどが決定された。

 4月20日の金融政策決定会合で日銀は金融調節の主たる操作目標である日銀当座預金残高の目標値を、これまでの17~22兆円程度から22~27兆円程度に引き上げることを決定した。

 2003年5月のりそな銀行に対する資本注入によって、大手銀行は潰さないといった意識が強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607.88円がバブル崩壊後の安値となり底打ちした。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めたのである。

 5月20日の金融政策決定会合で日銀は金融調節の主たる操作目標である日銀当座預金残高の目標値を、これまでの22~27兆円程度から27~30兆円程度に引き上げることを決定した。

 6月までは債券相場は1日あたりの値幅も限られながらも、じりじりと高値を更新し続け6月11日に30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録した。

 この相場上昇過程において、目立ったのがメガバンクの一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いであった。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、日銀の量的緩和策の拡大も背景に必要以上にポジションを積み上げ、異常なほどの超低金利を演出したとされる。

 しかし、これもいわゆる債券バブルに近いものとなり、6月17日に日経平均株価が9000円台を回復し、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなり、大手投資家が超長期国債の購入を手控えたことをきっかけにして、債券相場が急落したのである。

 この債券相場の急落の背景としては、株価の上昇とそれを裏付けるような好調な経済指標が出てきたことで、景況感の変化によるものも大きかった。しかし、下げを加速させたのもVARであった。債券急落に伴い変動幅が今度は異常に大きくなり、銀行のリスク許容度が急速に低下。必要以上に売りを出さざるを得なくなったことで、下げが加速されたのである。

 2003年6月の債券暴落は相場の行き過ぎと、その要因となったメガバンク主体の予想以上の買いがあった。2012年11月にそれまでの円高から急反転し円安となった際と同様にポジションの偏りがあり、それにより相場が一気に崩れた。そのきっかけとなったのが、6月17日の20年国債の入札であった。

 今回の債券相場の膠着要因をみてみると、それを演出しているのはメガバンクとかではなく日銀である(メガバンクはむしろ国債残高を落としている)。さらに2003年のVARショックの経験を踏まえて、超長期債は20年債が1.4%台、30年債は1.7%近辺となっており、イールドカーブのフラット化は2003年当時と比べればそれほど進んでいない。つまり反動が起きる要因となるような買い過ぎといったものが存在していない。この点をみると、債券相場が大きく崩れる要因が今のところは見当たらず、それを演出する需給要因も存在しないようにみえる。ただし、買い過ぎているのは日銀であることを考えれば、相場の大きな変動もきっかけは日銀となることが予想される。

 債券先物は昨年12月30日に日中値幅が51銭となって以来、50銭を超える値幅は生じていない。結論からは2003年と現在では債券の需給を含めて状況が異なっているため、あまり参考とはならない。しかし、相場はいずれこのような急変が起こりうる。その備えとしてこのような事例を探っておくのも必要かと思われる。


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by nihonkokusai | 2014-04-23 09:03 | 債券市場 | Comments(0)

3月に都銀は債券を再び売り越し

 21日に日本証券業協会が発表した3月の公社債投資家別売買高(除く短期証券)によると、都銀は6024億円の売り越しとなった。都銀は昨年4月の日銀の量的・質的緩和導入以降、売り越しが続いていたが、2月は11か月ぶり買い越しとなっていた。しかし、3月は再び売り越しとなった。

2014年3月の公社債投資家別売買高(除く短期債)、プラスが投資家の買い越し
日本証券業協会のデータより、単位は億円

都市銀行 -6024、地方銀行 6291、信託銀行 2329、農林系金融機関 12133、第二地銀協加盟行 -1173、信用金庫 6729、その他金融機関 3246、生保・損保 8361、投資信託 6071、官公庁共済組合 200、事業法人 1556、その他法人 3452、外国人 4945、個人 -167、その他 -33,954、債券ディーラー -109

 国債投資家別売買高から年限別(中期・長期・超長期、ただし発行時のもの)で見てみると、都銀は超長期債を2585億円売り越し、長期債を2兆3987億円買い越し、中期債を2兆7946億円売り越している。中期債から長期債に乗り換えながら、全体の残高は落としている格好となった。

 都銀以外のいわゆる機関投資家は買い越しとなっており、特に買い越し額が大きかったのが、農林系金融機関の1兆2133億円。国債の年限別でみると超長期を6108億円、長期を5087億円、それぞれ買い越している。次ぎに買い越し額が大きかったのが生損保の8361億円の買い越しで、こちらは超長期を4017億円、中期を3070億円買い越していた。続いて、信金が6729億円、地銀が6291億円、投資信託が6071億円の買い越し。外国人も4945億円の買い越しとなった。

 3月の日本の債券相場は10年債の利回りで0.6%近辺、債券先物で145円を挟んでの動きとなり、方向感に乏しい展開が続いていた。ウクライナ情勢の緊迫化による地政学的リスクの増加や、イエレンFRB議長による利上げの時期に関する発言等はあったが、円債のトレンドが変わるようなことはなかった。

 日銀による国債買入は続き、都銀はポジションを落としながらデュレーションを調整している。他の機関投資家は淡々と残高を積み増している格好となっている。債券相場の上値が重いのは米債の下落などもあるが、10年の0.6%割れでは高値警戒感も強い。しかし、3月の投資家動向を見ても、投資家の買い需要は強いように思われ、押し目では着実に買いが入る。これが現在の債券相場の膠着状態を生み出している。

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by nihonkokusai | 2014-04-22 09:09 | 債券市場 | Comments(0)

10年新発債の売買のない日があった2000年と2014年の類似性

 4月14日の債券市場で、めずらしい現象が起きた。日本相互証券で直近で入札された新発の10年利付国債(現時点では4月1日に入札された333回債)の売買がゼロであったのである。通常であれば少なくとも数百億円程度の売買はあるものの、それがゼロというのは極めて珍しい。 日本相互証券での新発10年債の売買がゼロであったのは、日経新聞によると2000年12月26日以来、約13年ぶりであるとか。

 現在の10年債利回りは0.6%近辺にいるが、0.6%割れは高値警戒も強く買いにくい。これは2013年4月の日銀の異次元緩和前の10年債利回りの水準が意識されているとの見方もあるが、絶対水準としての0.6%という利回りは魅力に乏しい。さらに物価や成長率などを見ても0.6%はあまりに低いとの見方もあろう。それに比べてまだ利回りの高い超長期債には押し目買いの余地もあるとの見方もできる。

 ただ、ここから売るとしても売りにくい。ここにきて日本株も含めて調整局面となり、円高も進んでいた。日銀が大量に国債を購入しており、需給は非常にタイトとなっている。つまり、売りも買いもしづらいという状況で生まれたのが「新発10年国債の売買がなかった日」ということになる。

 それでは前回、新発10年債の取引がゼロとなった2000年12月26日の要因は何であったのか、当時の状況を調べてみると意外な類似点があった。2000年12月26日の私の市況メモによると、「現物債の売買はほとんどなく先物の板もまるでイブニングセッションの様な状況に。日経平均が14000円トライとなったこともあり債券先物は反落」とあった。つまり、日経平均株価の居所が現在の水準に近いところにいたのである。

 ただし、10年債については現在の新発債の利率が0.6%なのに対し、このときの新発債の利率は1.8%もあった。債券先物は現在は145円近辺であったのに対して、当時は135円台となっており、このあたりには大きな違いがある。

 日銀の金融政策についてみてみると、日銀は2000年8月にゼロ金利政策を解除していたが、今回は前年4月に日銀は異次元緩和と呼ばれる大規模な金融緩和を行って1年が経過していた。方向性は異なっているものの、日銀の次の一手としては、市場では金融緩和・追加緩和が求められていた。2000年8月の日銀によるゼロ金利解除後に待ち受けていたのが、米国のITバブル崩壊だったのである。2000年3月にハイテク株を主体とするナスダック指数は高値を付けるが、その後急落し株価の崩壊のなかで、多くのIT関連ベンチャーは倒産に追い込まれることになる。

 ここにきての米国株式市場もナスダック指数を中心にやや異変が起きていた。いわゆるモメンタム銘柄とされるハイテク株などを中心に大きく下落していたのである。現在、米国がITバブルと同様の状態にあるわけではないが、ダウ平均やS&P500などが高値を更新し、ナスダック指数も2000年4月以来の高値をつけていたのである。なんと現在のナスダック指数は2000年当時と同じ水準にまで上昇していたことも、共通点としてあった。

 日経平均の水準やナスダック指数の水準が近いものとなっていたことが、債券の流動性低下に直接の関わりがあるわけではない。しかし、何ら関係性のないものでも、このあたりの類似性には注意しておく必要があるのかもしれない。

 日銀が量的緩和策を導入することになるのが2001年3月であった。2000年8月のゼロ金利解除は政府の反対を押し切って行ったが、結局、失敗ではないかとの見方が強かった。今回は反対に異次元緩和と呼ばれるような政策を行った。それはいずれどのように見なされるのか。現在の10年債の膠着状態は、2000年のときと同様に日銀が動けなくなってしまったことも、大きな要因のように思われる。2000年の際にはゼロ金利を解除したものの、次の手が打てなくなり、今回も異次元緩和を行ったが次の手が出せない状況にある(これについて、異論はあると思うが私はそう考えている)。

 歴史は繰り返さないが、偶然似たようなこと起きることがある。そのときに何があったのかを確認することも相場の先行きを予測するためには必要なことである。相場に必要なものは経験と勘である。その経験を養う上においても、2000年あたりから何が起きていたのかを再確認してみるのも面白いかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-04-20 10:42 | 債券市場 | Comments(0)

消費税変更の年は何かが起きる?

 4月1日から消費増税がスタートした。17日に日銀の大阪支店長は支店長会議の終了後の会見で、4月の消費税率引き上げ後の近畿経済について、企業からのヒアリングを基に、駆け込み需要の反動減の影響は短期で収束する見通しと語ったそうである(ロイター)。

 黒田日銀総裁は講演などで、4月の消費税率引き上げについて「日本経済は一時的に落ち込むものの、生産・所得・支出という前向きのメカニズムが維持され、潜在成長率を上回る成長を続けていく」との見通しを示していた。大阪支店長の発言はこの総裁の見方を裏付けるようなものとなったが、日銀としては消費増税による経済への影響は限定的であり、反動減を意識して追加緩和を決定するつもりはないことを示したと思われる。

 消費増税による景気への影響等については、過去の消費増税後の動向も参考になる。以前にもこのコラムで紹介したことがあるが、ここで再度、日本の消費税の歴史を振り返ってみたい。

 1988年の竹下政権時に消費税法が成立し、1989年4月からは、所得税や法人税などの大規模な減税と引き換えに消費税が導入された。消費税導入後の1989年5月に日銀は公定歩合を3.25%に、さらに10月には3.75%に、12月には4.25%と引き上げ、完全に金融引締策へと転向した。これは消費税の導入の影響ではなく、景気の過熱感というかバブルへの対処であった。日経平均株価は1989年の大納会の大引けで3万8915円を付け、これが最高値となってバブルは崩壊する。1989年4月の消費増税導入の金利への影響については、バブル期という特殊事情もあり、その影響だけを見ることは難しいが、消費税導入後の短期金利は上昇し、債券相場も1989年には下落基調となっており、金利は上昇局面にあった。

 1997年4月に、減税の財源として消費税の5%への引き上げが実施された。財政構造改革と、この消費税の導入がその後の景気後退の要因とも指摘されたが、実際にはバブルの後遺症ともいえる不良債権処理の遅れがその大きな要因となった。1997年7月には企業の破綻が相次ぎ、11月に入ると金融システム不安が一気に表面化し、三洋証券が会社更正法適用を申請、北海道拓殖銀行が経営破綻し北洋銀行への営業譲渡を発表。さらに証券大手の山一證券が自主廃業を届け出、徳陽シティ銀行が分割譲渡と金融機関が相次いで破綻したのである。

 このように1997年4月の消費税の引き上げの影響についても、バブル崩壊後の金融システム不安などによる影響もあり、その影響だけを判別することは難しい。長期金利の動向だけみれば、1988年の消費税導入以降は上昇基調となり、5%への消費税の引き上げ以降は反対に歴史的な水準にまで長期金利は低下した。たしかに消費増税のタイミングは金利にとっては大きな変革期であったことは確かであるが、長期金利の動きだけみても消費増税の影響ははっきりせず、ほかの要因による影響が大きかったといえる。

 ある意味、金利は景気や物価の動向を示すひとつの目安となる。いわば体温計の役割も果たすものと思うが、4月の消費増税があっても、その体温の数値は0.6という非常に低い水準で止まったままとなっている。これは、日銀が熱の上昇を抑える薬を大量に投与しているためだけによるものであろうか。

 消費増税が導入された1989年はバブルの年であり翌年にバブルが崩壊しデフレに至る原因となった。消費税が引き上げられた1997年はバブルの後遺症による不良債権処理の遅れが金融システム不安を引き起こした。2014年は何が起きるのか。

 消費増税の影響そのものより、過去2回の消費税の変更の年は、振り返れば日本経済に大きな影響を与えるような出来事が起きた。債券市場でも1989年で債券のディーリング相場が終焉を迎え、1997年の消費増税翌年の1998年に日本国債の格下げや運用部ショックも起きている。この債券市場を含めて、消費増税変更以降、何かしら大きな動きが出てきてもおかしくはないのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-04-19 07:51 | 債券市場 | Comments(0)

異次元緩和やGPIF運用のリスクを背負うのは誰なのか

 4月16日の東京株式市場は、麻生財務相の発言をひとつのきっかけに上昇した。昨日のこのコラムでは首相の発言などで相場を誘導することの困難さを指摘したが、それを首相に代わり、副総理がやってのけたようにみえなくもない。

 麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣(長いので以下、麻生財務相と呼びます)は、16日午前の衆議院財務金融委員会で、「GPIFの動きが6月以降出てくる」、「GPIFの動きが出てくるとはっきりすれば、外国投資家が動く可能性高くなる」と述べた。

 GPIFとは年金積立金管理運用独立行政法人のことだが、我々の年金積立金を管理運用しているところである。その運用の仕方について現在、議論がなされている。今回の麻生財務相の発言からは、これまで早ければ年内にGPIFの資産構成割合を見直すとしていたが、その可能性を指摘するとともに、6月にもその見直しによる日本株の買い増し等の可能性を示唆したものと思われる。

 これは16日の株式市場の参加者にはサプライズとして受け取られ、市場を取り巻く地合も好転しているところに買い材料として認識された。さらにこの麻生財務相の発言は、「最近の株価下落は海外投資家の動向の影響が大きいとの見方を示し、GPIFによる買い支えに期待をにじませた」(日経新聞)とされる。

 15日の安倍首相と黒田日銀総裁の会見も株価対策が背景にあったとすれば、今回の麻生財務相の発言も同様であったようである。現実に16日の日経平均は400円以上の上昇となったことで、政府要人は市場を動かせるのではないかとのご指摘を受けそうだが、2012年11月のアベノミクス同様にタイミング次第ではこのようなことも起こりうる。ここにきての米国株式市場の反発とともに中国GDPが予想を上回るなど株式市場を取り巻く地合が好転していたことで、思わぬ反応を見せた格好となった。

 しかし、今回の麻生財務相の発言にも問題が残る。GPIFの動向は海外投資家の注目が高いことも意識しての今回の発言であったとすれば、そもそもGPIFの資産構成割合を見直しとはいったい何か目的なのか。これは株価対策も意識したものということになりかねない。かつてはPKOと呼ばれたような動きも市場にあったことも事実である。PKOとはPeacekeeping Operationsの略称ではなく、株式市場関係者が創作したと思われるPricekeeping Operationsのことである。株価が下落したときに、どこからともなく現れた大口の買いがそう呼ばれた。この買い手は、郵貯や公的年金の買いであったと噂されていた。

 GPIFの資産構成割合の見直しは、金利上昇による国債の下落リスクを意識してという良くわからない理由によるものではなく、PKOを正式なものとして復活させようとしているためなのであろうか。念のため確認しておくが、公的年金の積立金は政治家が勝手に使って良いようなものではない。我々がこつこつと積み立てた年金の資金である。

 「国民の年金資産でリスクをとるのはいかがなものか」といった意見がGPIFを所管する厚生労働省など政府・与党内にはあるそうだが(日経新聞)、それだけでなく、積み立てている我々もその運用については、もっと注意すべきものではなかろうか。もちろんある程度のリスクをとり、それなりの専門家に運用を託すことも必要かもしれないが、資金の性質から考えて、あまりリスクに晒してしまって良いものではないはず。

 ちなみに日銀の異次元緩和による国債の大量買入も他人事ではない。そもそもフリーランチなどというものは存在しない。何事も等価交換が必要になる。GPIFが株を大量に買い、日銀が国債を大量に買えば、誰の懐も痛まずに、景気も良くなり物価が上がり万々歳というわけにはいかない。それに対するリスクを負っているところが当然存在する。いったい誰がそのリスクを背負っているのかを良く考える必要がある。言うまでもないが、そのリスクを背負っているのは、これを読んでいるあなた自身である。

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by nihonkokusai | 2014-04-18 09:29 | 日銀 | Comments(0)

首相が市場を動かせるのか

 4月15日に安倍首相と日銀の黒田総裁は、官邸内の会議室において2人で幕の内弁当を食べながら50分程度の会談をしたそうである。首相と日銀総裁が定期的に意見交換をすることは良いことではあると思う。しかし、これを市場の期待に働きかけるという理由で、市場を動かそうとしていたのであれば問題がある。

 2012年11月の安倍自民党総裁からのリフレ政策を思わせる発言が、いわゆるアベノミクスと呼ばれた現象を引き起こした。その背景については何度も説明を重ねてきたが、タイミングが非常に良かった。ヘッジファンドも円売りを仕掛けやすい地合にあり、現実に急激な円高調整が起き、株高を演出した。

 4月16日の日経新聞の記事「黒田効果 首相が演出」によると、今回の会談に際しては首相周辺から「このタイミングで2人が会談することが投資家に伝わることが大事だった」との解説があり、会談後には首相が株価ボードを見て「もうちょっとだったなあ」と漏らしたそうである(4月16日日経新聞朝刊)

 何がもうちょっとだったのであろうか。首相はこの会談を前に、今月2日に積極的な金融緩和を唱えるリフレ派の論客と会談をしていたそうである。ここにきての円高株安の流れを少しでも食い止めて、アベノミクスは健在なりを示そうとしたのであろうか。

 市場に自分の思い描く影響を与えようとすることは、かなり無理がある。2012年のアベノミクスは、あとは火をつけるだけの場所で、政権交代とリフレ政策を掲げたことで、一気に火が燃え広がった。黒田総裁らが主導した異次元緩和は、そのリフレ政策を忠実に実行したに過ぎない。その後の物価上昇は、何もしなくてもコアCPIはプラス浮上が予想されていたところに、円安による影響が重なり予想以上の上昇となった。

 株価の上昇は円安による影響というよりも、円高株安の調整が一気に入り、そこに世界的なリスク後退を背景とした欧米の景気回復や、株式市場の上昇がフォローになっている。S&P500が過去最高値を記録し、イタリアの長期金利が過去最低を記録したのは、アベノミクスのおかげではない。

 もし首相が2012年の政権交代前の自らの発言で自在に市場を動かせたと思っているとしたら、それはそれで問題である。市場の流れ、マインドを読むことも必要だが、市場はよほどのサプライズがなければ大きくは動かない。また、一度出た材料に対するサプライズを再度演出することも難しい。少なくとも2012年のアベノミクス相場の再現は現在の需給バランス等みてもまず無理である。できることは、なんとか期待を繋ぎ止めることである。それは日銀に頼るべき物ではなくなっている。これから日銀の金融緩和に過度に依存すれば、市場はそれをむしろリスクと感じる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2014-04-17 09:38 | アベノミクス | Comments(0)
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