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デフレを解消する意味とは何か

 今回のビットコインの問題からは、あらためて通貨とは何かということを考えさせられた。現在、通貨の発行権は主に中央銀行が持っている。昔は国王などがその権利を持っていたが、乱発される懸念があり、その機能を別の組織である中央銀行に委ねたのである。

 世界で最初に生まれた中央銀行はスウェーデンのリクスバンクとされる。スウェーデンにおける最初の銀行であるバルムストルック銀行は、1661年に欧州で最初の紙幣を発行したものの、十分な担保を確保しないまま過剰な紙幣を発行し、結局その活動を停止してしまった。バルムストルック銀行の破綻後に、国王ではなく議会の監督下に置かれ、政府などからの独立性を有した銀行が設立された。これがリクスバンクであった。現在もこのリスクバンクはスウェーデンの中央銀行として存在している。

 次に歴史が古い中央銀行がイングランド銀行である。1694年におけるイングランド銀行の設立目的は、フランスとの戦争の軍事費の調達に苦慮する政府への財政支援のためであった。当初は政府への貸付けがかなりの割合を占めたことで、国庫金の出納や国債業務など政府の銀行としての役割が強化された。1833年のイギリスの銀行条例によって額面5ポンド以上のBOE券が法貨として認められたが、1844年のイギリスのピール条令によって、事実上イングランド銀行が通貨の発行権を独占することになった。

 日本では1882年に日本銀行条例が制定され、日本の中央銀行として日銀が設立されたが、このモデルは当時としては設立して日の浅いベルギーの中央銀行であったとされている。その日銀が現在、銀行券を発行し、その安定供給を確保するとともに、銀行券の信認を維持するための業務を行っている。

 日銀法第一条には、「日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。」とある。さらに第二条 に「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」とある。

 この物価の安定を図るという意味は裏を返せば、通貨価値の安定を図ることである。この場合の通貨価値とはドルやユーロに対する円の相対的な価値というよりも、物価に対する価値ということになる。

 物価とともに通貨価値の安定というのは、インフレを主に想定したものといえる。デフレの状態というのは通貨価値が安定しているということになるが、物価の下落は経済にとってはマイナス要因となり、反対の意味において物価の安定を図るためにはデフレ脱却の政策が求められた。その結果、打ち出された政策が異次元緩和と呼ばれる大量の国債買入等であった。

 デフレそのものが日銀の金融政策が原因として良いのかどうかという根本的な問題があるが、結果としての責任が日銀に問われ、日銀としてできうる政策、この場合には金融政策ということになるが、でデフレを脱却させようとしている。しかし、それはつまり安定させるべき通貨価値を不安定にさせることにもなりかねない。日銀による国債の大量買入は財政ファイナンスも連想させ、日銀券と同様の信用度を持つ日本国債に対する信用も低下させる懸念がある。

 「別にデフレがいいわけではありません。インフレでもデフレでもなく、自国通貨を安定させ、健全な状態で現実的な成長を目指すべきなのです。」

 これはアベノミクスに警鐘を鳴らすジム・ロジャーズ氏の言葉であるが、私はこの意見に賛成である。日銀はどうも本来の役割から逸脱しつつあるようにも感じる。いまのところ市場の信認を損なうようなことはないものの、このままデフレ脱却と称して数値目標を掲げ、必要となればさらなる国債買入増額も辞さないとなれば、通貨そのものの信認が揺らぐ懸念がある。

 日本国債の暴落や円の急落をいくら叫んでも、狼少年にしか見えないかもしれない。しかし、現在の日銀が通貨価値の安定と物価の上昇というある意味矛盾した政策を行っていることは確かである。非常時の非伝統的手段は致し方ない面もあった。しかし、嵐が去れば正常化が必要であり、FRBはテーパリングを開始した。ところが日銀は、目的がデフレ脱却にすり替わり、いつまでも非常時の対応を続けることで結果として何が生じるか。リスクは次第に膨らんでくることも確かなのではなかろうか

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by nihonkokusai | 2014-02-28 09:44 | アベノミクス | Comments(2)

ビットコイン問題に見る通貨とは何か

 ビットコイン取引所のMt.Gox(マウント・ゴックス)のサイトがアクセス不能となり、当面全ての取引停止を決定したと発表した。ロイターによると、マウント・ゴックスは実質消滅した状態となっているそうである。ウェブサイトは停止し、創設者の所在は不明、東京の事務所は抗議する利用者を除いてはもぬけの殻となった。

 この問題が今後どのような結果を招くのかは、現時点ではわからない。ビットコインについては、国や制度にとらわれない新たな国際通貨への期待もあったが、その発明者などははっきりせず、かなりグレーな部分も多く、利便性と信認が秤に掛けられていたような状況にあった。

 今後もこのような仮想通貨が出てくることも考えられるが、そもそも通貨というものは突然生まれたものではない。ここで通貨の歴史を紐解いて、通貨というものは何であったのかを再確認してみたい(拙著「マネーの歴史(世界史編) Kindle版」より一部引用)。

 通貨などのお金の役割として、交換ができること、その価値を保存できること、物の価値を測ることができるという3つがある。ビットコインは他通貨と交換ができなくなったことで通貨としての役割が失われたことになる。ちなみに日銀券には法律に定められた無制限の強制通用力がある(日銀法第46条第2項)。強制通用力を有する貨幣による支払いは最終的なものとなり、受取人は受け取りを拒否することができず、これにより決済は完了することになる。ただし、これも日本国の信認が低下し、仮にハイパー・インフレのようなことが起きれば、いくら法律で定められたといっても現実には受け取りを拒否されるような事態もありうる。

 古代にお金として使われていたものは、共同生活において利用価値が高いこと、貴重なもの、さらに保存がきくといったものが選ばれた。これらは「物品貨幣」と呼ばれている。文献などに残っている世界最古の貨幣は、古代中国の殷王朝(紀元前1600~1046年)で貨幣として使われた「子安貝」とされる。「子安貝(タカラガイ)」は、当時たいへん貴重な貝の種類であった。貝という漢字も、タカラガイのなかの「キイロダカラガイ」という種類の形から生まれた象形文字だそうである。貨幣とか経済に関しての漢字には、「買」「財」「貴」「賓」などのように貝のつくものが多いことも、古代中国で貨幣として使われていたことに由来する。ちなみに「売」という漢字も元々は「賣」(旧字)である。

 その後、お金の役割をしていた貝は、やがて自然のものから貝を真似て作られた銅製品に変化した。銅や銀は貝などに比べて耐久性が優れ、運搬性にも優れているため、金属が貨幣素材に利用されるようになった。その後、商工業などの発達に加え、銅や銀の産出や加工といった技術の向上により、金属貨幣が幅広く使われ始めた。金や銀、銅などの貴金属金属は腐ったりすることがなく耐久性があり、他の金属を加えることで硬くなり、また分割したり足し合わせたりすることが比較的簡単にできる。さらに少量でも交換価値が高いことで持ち運びにも便利となる。

 古代においては「ソリドス金貨」や「五銖銭」、「開元通宝」などの通貨が数百年にわたり使われていた。これはそれらの通貨への信認とともに、流通量も多く使い勝手の良い通貨であったためと思われる。

 中国の唐の時代の後期には、茶・塩・絹などの遠距離取引が盛んになるなど商業の発達に伴い銭貨の搬送を回避する手段として「飛銭」と呼ばれた送金手形制度が発生した。高額商品の売買には銭貨の「開元通宝」などでは量がかさんでしまう上、途中での盗賊などによる盗難の危険もあった。このため、長安や洛陽などの大都市と地方都市や特産品の産地などを結んで、当初は民間の富商と地方の商人との間によって「飛銭」という送金手形制度が開始された。

 これはたいへん便利なものであるとともに、手数料収入に目を付けた節度使(地方の軍司令官)や三司(財政のトップ)などもこれを模倣した。飛銭を利用する際に使われた証明書(預り証)が、宋代になると交子・会子・交鈔・交引などと呼ばれ、証明書それ自体が現金の代わりとして取引の支払に用いられるようになった。特に四川地方で発行された交子は世界史上初の紙幣とされている。

 中国で世界最初の紙幣が誕生したのは、貨幣の材料となり、貴金属などの産出が限られていたこともあるが、宋や元の時代の国家権力が強かったことも要因と指摘される。それとともに遠隔地との交易など商業の発達がそれを促したものといえよう。忘れてならないのは、紙そのものが中国で発明されたものであり、さらに印刷術も発達していたことが、紙幣の発行を可能にしたといえる。

 紙幣はたいへん便利なものであったことで、その需要が増え、それに目をつけた政府は軍事費に当てるための財源として交子を乱発しその価値を失ってしまった。その後、新たな紙幣を発行するものの、やはり信用を落としてしまい、最終的には銅銭が復活することになった。

 通貨として流通するものに対しては、法律による強制権がない場合には特に一定の価値が維持されていることや、人々の信認を高めることが重要となる。ビットコインは高度なソフトウエアのアルゴリズムに基づいて価値が保存されるとするが、この仕組みが広く一般に理解されることは難しい。さらに信認については、グレーな部分が大きくそれが拡がりを見せる前に問題視されて現在に至る。

 貝だろうが石であろうが、金であろうが電子上のものであろうが、希少価値のあるものを通貨にしようとの試みは人類の歴史上、ずっと続けられてきた。しかし、現在は紙に印刷された紙幣そのものに価値はないにも関わらず、法律で定められた強制権を持つ紙幣がその価値を保存させ信認を得ている。

 もちろんドルやユーロなどに比べて、小さな国の紙幣への信用度は異なるかもしれない。それでも国の発行する紙幣が現在は最も使い安いことも事実である。ただし、もしアマゾンやグーグルなどが取引に自らの通貨に当たるものを出してくると、真の意味でのグローバル通貨が出てくる可能性を否定はできない。ただ、ビットコインについてはどうやら「仮想」の通貨であった可能性が高いように思われる。

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by nihonkokusai | 2014-02-27 08:20 | 金融の歴史 | Comments(2)

ECBの追加緩和観測の背景

 3月6日のECB政策理事会での追加緩和観測が出ている。ECBのドラギ総裁は、ECBは行動する準備が整っているとの発言を繰り返しており、さらに23日にはシドニーでのG20終了後、3月6日にフランクフルトで開く次回会合までに「行動の是非を判断する上で必要な十分な情報」を得るだろうと述べた。

 24日発表された1月のユーロ圏消費者物価指数(改定値)は前年同月比0.8%の上昇となり、1月31日に発表された速報値の0.7%から上方修正された。ただし、インフレ率は引き続き1%未満にとどまった状態が続いている。

 24日には2月のドイツ企業景況感指数も発表されたが、こちらは予想に反して改善されていた。少し遡って、2月14日に発表された2013年第4四半期のユーロ圏域内総生産速報値は、前期比プラス0.3%、前年比プラス0.5%と予想を若干上回っていた。

 ここにきてユーロ危機時に7%台をつけていたイタリアの長期金利は3.5%台に低下しており、危機対応となる政策からは脱却をはかる必要がある。ただし、すぐに引き締めに転じることはなく時間を掛ける必要がある。そのためにECBは昨年7月にフォワードガイダンスを導入し、主要政策金利を「長期間にわたり現行水準もしくはそれを下回る水準」に維持する方針を表明した。

 危機からは脱却しつつあり、ユーロ圏の景気も底打ちしつつある。しかし、その回復のテンポはゆっくりであり、ここでその回復に水を差すような利上げ等は当面は行えない。特に市場で利上げ観測等が出てしまうと、株価の下落などを招きかねず、金融引き締めのサインは極力出さずに、緩和基調が続くことを示す必要がある。

 その緩和政策を続ける理由として、物価が落ち着いていることも指摘される。ただ、ECBが目標に置いている(インフレターゲットではない)2%と言う物価目標からは、かなり低い水準にある。

 ユーロ圏でのデフレ懸念等も市場では指摘されているが、ドラギ総裁は、デフレの兆候は見られないとも発言しており、日銀のようにデフレ脱却のためとしての追加緩和の可能性はむしろ低いと思われる。

 その日銀の黒田総裁がG20での会見で次のような発言をしていた。デフレに関しては人一倍気になっている中央銀行がこのような発言をしたということは、ECBがデフレ懸念で動くということは考えづらい。

 「ユーロ圏のデフレ懸念云々の話につきましては、ユーロ圏の物価上昇率自体が下がっていることは事実ですけれども、ご承知のように、ユーロ圏の経済も底を打って持ち直しています。また、インフレ期待は、目標の周りに比較的アンカーされていることから、一般的に、ユーロ圏がデフレに陥る可能性が高いと見られている訳ではないと思います。」(日銀サイトのG20終了後の黒田日銀総裁の発言要旨より引用)

 それでも市場ではECBの追加緩和観測が出ている。特に新たなリスクが出ているわけでもないところに、貴重なカードを使う意味がどこにあるのか。G20後にECB理事会メンバーのビスコ・イタリア中銀総裁は、必要ならマイナス預金金利を検討する用意があるとも表明した。

 これは市場への見せ玉ではないかと思われる。ドラギ総裁の準備発言も同様で、行動するのであれば引き締めではなく緩和となることを印象づけ、利上げ等を意識して先回りして動くようなことはなきよう市場に牽制球を送っているのではないかと思われる。それでももし3月6日に追加緩和が決定されるとするのであれば、何かしら別の要因がある可能性がある。

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by nihonkokusai | 2014-02-26 09:10 | 中央銀行 | Comments(0)

1月は都銀の債券売越額が減少

 2月20日に日本証券業協会が発表した1月の公社債投資家別売買高(除く短期証券)によると、4月から12月まで売り越しとなっていた都市銀行は、1月も1072億円の売り越しとなっていた。都銀の売り越しは異次元緩和決定の4月以来、10か月連続となるが、売り越し額は12月の1兆9906億円に比べると大きく減少した。そろそろ都銀のポジション減少もある程度一巡しつつあるのであろうか、。

 この公社債投資家別売買高を見る際にはいくつか注意すべき点がある。そのひとつに、この都銀分には都銀が直接、国債入札で落とした分は含まれていないことがある。国債入札に関して、具体的にどこが落札したのかは公表されていない。都銀については、直接国債を入札で落とした分を含めると10か月連続の売り超しとなっていたのかどうかは不明ながら、ポジションを落としてきていたことは確かだと思われる。

 1月分については都銀以外の機関投資家は買い越しが多かったものの、第二地銀や信金などが売り越しとなっていた。

 買い越しは信託銀行が8365億円、生損保が7235億円、農林系金融機関が5285億円、投資信託が3983億円、事業法人が3753億円、外国人は3495億円などとなっていた。地方銀行も476億円の買い越しとなっていたが、12月の4202億円の買い越しに比べると買越額は減少していた。

 国債の投資家別売買高から内訳をみると、都市銀行は中期債を6699億円売り越していたものの長期債を5164億円、超長期債を1854億円買い越していた。都銀の中期債の売り越しは2013年2月以来続いているが、2013年1月に日銀は2%の物価目標の導入を決定、期限を定めない資産買入方式も導入している。

 信託銀行は中期・長期・超長期ともに買い越しとなっていたが、特に長期ゾーンが6316億円もの買い越しとなっていた。生損保も全般に買い越しながら特に超長期が5603億円の買い越しとなっていた。農林系金融機関は超長期主体の買い越し、信金は超長期と長期が売り越しで中期が買い越し。

 投資信託や事業法人は中期債主体の買い越し。外国人投資家は超長期が1404億円、長期が4135億円の売り越し、中期を8848億円の買い越しとなっていた。

 超長期、長期、中期の区分はあくまで入札時のものであり、10年の長期債も発行して7年経過して残存3年債となっても、中期債ではなく長期債としてカウントされる。ただし売買の中心は直近に入札されたカレントものと呼ばれるものの割合が大きいことで、おおよその動きはこの集計から掴める。

 1月の公社債投資家別売買高を確認する限り、都銀の売り越しは弱まりつつあるが、地銀などの買い越しも減少するなど、売り買いともに圧力が弱まりつつあるように思われる。信託や生保などは淡々と買い越しており、ここに日銀の国債買入も加わり国債需給については引き続き良好であることは確かである。相場も年初からの円高株安などから、債券相場はしっかりしているが、昨年末にかけて売られた分を取り戻しているに過ぎず、いまのところ方向感は出てはいないと思われる。

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by nihonkokusai | 2014-02-25 09:15 | 債券市場 | Comments(0)

アベノミクスこれくしょん

 「艦隊これくしょん」というゲームをご存じであろうか。一部のゲーム好きの間で評判になり、すでにユーザー数が150万人を突破した。このゲームは2400万のダウンロードを記録したバズドラのようなスマホのゲームではない。Windowsなどのパソコン上で遊ぶゲームである。ただし、現在ではユーザー希望者が殺到しているため、ゲームの登録に制限が掛けられている状況にある。また、関連書籍やグッズなどの売れ行きも好調であり、密かなブームになりつつある。

 私もあまりの評判の良さに、登録をしてゲームをしてみたのだが、非常に良くできている。「艦これ」は、第二次世界大戦期の旧日本海軍の艦艇を題材にしたゲームで、プレーヤーは提督となり、艦艇を美少女に擬人化した艦娘を集め(コレクション)、それを強化しながら謎の敵と戦う。船は母船という言葉もあるように女性に例えられる。それを旧日本海軍の各艦艇毎に擬人化したのである。イラストやボイスは現在のアニメの要素が強く含まれ、我々の年代とはほど遠いものと思われるかもしれないが、実はこのゲーム、年配者のほうがハマる要素が存在する。

 我々の年代、40代から60代あたりの男性の多くは子供の頃に戦艦大和などのプラモデルを作ったと思う。私もそのひとりであった。戦艦武蔵や戦艦長門、空母赤城などは当然のように知っているはずである。それらが戦史に基づいて、ある程度忠実に表現されているのがゲーム「艦これ」なのである。戦艦や空母だけでなく、むしろ駆逐艦や巡洋艦などもそれぞれ一隻ごとに歴史を持っている。「艦これ」で有名なのは大和や武蔵などよりも雪風や島風、五十鈴や大井、北上といった艦船なのだが、ある程度、太平洋戦争の戦史に詳しい人であればピンとくると思う。昔の昭和の男の子だった人も興味をそそられるゲームと言える。

 このようなゲームが流行っていることは、日本の右翼化の現れといった見方も出てくるかもしれない。安倍政権も日中との領土問題から首相の靖国参拝が国際問題化しつつあり、どうも危ない方向に向かっているのではないか。艦これブームもその影響なのではないかと思われてしまうかもしれない。このようなゲームが流行る世相となっているといえば、実はそうなのかもしれない。

 それを象徴するような出来事が発生した。米紙ウォールストリート・ジャーナルは2月19日付の電子版で、安倍晋三首相の経済ブレーン・本田悦朗内閣官房参与のインタビューを掲載した。そのなかで本田氏は「日本の首相が靖国参拝を避けている限り、国際社会での日本の立場は非常に弱い」として、「われわれは重荷を背負った日本を見たくはない。自立した国としての日本を見たい」と語ったという。

 また同紙は「本田氏はアベノミクスの背後にナショナリスト的な目標があることを隠そうとしない。日本が力強い経済を必要としているのは、賃金上昇と生活向上のほかに、より強力な軍隊を持って中国に対峙できるようにするためだと語った」とも伝えた(以上、朝日新聞の報道より)。

 これに対して本田悦朗内閣官房参与は菅義偉官房長官に「記事を読んで驚いている。発言の趣旨を違えて報じている」と連絡したそうである。ただし、「私の見解ではなく、靖国神社とはそういうものだということをオフレコでざっくばらんに説明しようと思った」とも述べたそうで、個人的な意見として報じられた内容に近い発言をしていた可能性がある。

 本田参与はリフレ政策を掲げてアベノミクスを主導した張本人の一人であるが、そこからこのような発言がもし出ていたとなれば、非常に危険なことのように思われる。アベノミクスのリフレ政策のモデルとなっていたのは高橋是清による高橋財政である。そこで用いた日銀による国債引受は、財政出動を可能とするための政策であったが、軍事拡張のための財政拡大のための打ち出の小槌として使われることになってしまう。現在、日銀がデフレ脱却のためとして国債を大量に購入しているのは、軍備拡張のためであったということになってしまうのか。

 もちろんそういう意図はなかったのかもしれない。しかし、本田参与を筆頭にいわゆるリフレ派と呼ばれる人達は日銀による国債買入(引受も含む)を財政拡大とセットとして主張している。何故、巨額の国債を日銀が買い入れる必要があったり、財政を拡大する必要があるのか。本田参与からの発言とされるものからは非常に危険な臭いがする。アベノミクスはいずれコレクション(訂正)され、それが軍備拡張に使われることになってしまうのか。そんなことはあり得ないと思うが、そのリスクはゼロではない。

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by nihonkokusai | 2014-02-24 09:47 | Comments(0)

アベノミクスは軍備拡張が目的なのか

 『聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓』(すばる舎)という昨年出版された本の原稿を書いていたとき、実は気になっていたことがあった。それを原稿に書いておくべきか悩んだが、やや危険な発想ではないかと思い、それを直接指摘することは避けた。ところが、そのとき感じたものは現実だったのかもしれないことを示すような事実が発覚した。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は19日、安倍政権の経済ブレーンでアベノミクスの提唱者の一人である本田悦朗内閣官房参与が首相の靖国神社参拝について「誰かがしなければならなかった。首相の勇気を高く評価する」などと発言したと報じた。そして、首相の経済政策のアベノミクスを巡っては「強い経済を必要としているのは、より強力な軍隊を持って中国に対峙できるようにするためだと(本田氏が)語った」とも伝えられたのである(日経新聞電子版の記事より一部引用)。

 本田氏は20日、靖国発言について「(直接、発言を報道しない)オフレコのつもりだった」として同紙に抗議し、アベノミクスへの言及には「そういうことは言っていない」と記者団に語ったそうである。

 日経新聞電子版によると、菅義偉官房長官は記者会見で、本田氏の抗議に同紙から「修正する用意がある」と回答があったと述べたが、発行元のダウ・ジョーンズは「記事は正確だと確信している。修正は不要と考えており、修正する用意があると申し出た事実もない」との談話を出したそうである。

 実際にオフレコ前提でどのようなコメントを本田氏がしたのかはわからない。しかし、アベノミクスが結果として日本の軍備拡張まで意識したものであったことについては、その模範としたのが昭和初期、太平洋戦争前の高橋財政であったことを考えても可能性は否定できない。本の原稿を書きながら、高橋財政とアベノミクスを比較しているうちに、気になっていたのはまさにその点にあった。安倍首相の靖国参拝は本の原稿ができあがったあとではあったが、安倍首相の行動や発言をみても日本の経済というよりも、対中国などを意識して軍備の拡大を含めた国力の増加を計っているのではないかとの懸念があったのである。

 高橋財政は少なくとも高橋蔵相の意図としては、日本の軍備拡大のために行われたものではない。金解禁による緊縮財政、政策金利の上昇、円高等のための政策により、大きく落ち込んだ日本経済を立て直すことが主目的であった。これらは井上準之助蔵相の主導での政策のため、井上デフレと呼ばれたが問題は物価の下落よりも、景気そのものの低迷にあった。このため、政権が変わって蔵相となった高橋是清が行ったのが、金輸出禁止と財政拡大と政策金利の引き下げであり、為替は円安になるのを放置した結果、日本経済は急速に立ち直り、その結果として物価も上昇した。

 高橋財政の効果があったのは、当時の産業構造が軽工業から重化学工業への移行期にあたり、円安や財政・金融政策がダイレクトに効果を与える環境にあったことも大きかった。何故、重化学工業が急速に発展したのかといえば、その理由は軍事拡張にあった。国家予算についても軍事費の割合が高くなり、これが重化学工業の発展を促すことになる。

 高橋財政でリフレ派が最も注目していたのが日銀による国債引受であった。これによりデフレからの脱却が計られたとしているが、実際には日銀による国債引受は財政拡大を助けた面が大きい。自らこの政策を立案した高橋是清は、いずれ景気が回復しインフレの兆候が出てくれば、日銀の国債引受には自らブレーキを掛けるつもりでいたが、打ち出の小槌を得た軍部はそれを放棄するのは拒んだ。その結果として二・二六事件で高橋是清は軍部により暗殺されてしまう。

 黒田日銀は安倍政権の意向どおりに、国債の大量購入を2013年4月に決定した。消費増税も結局、予定通りに実施することになったが、これは財政再建というより国の歳入増加と考えれば、財政そのものを楽にさせるものとなりうる。安倍政権がアベノミクスによる経済対策をどのように捉えているのかはわからないが、今回の本田参与によるコメントらしきものは無視はできない。デフレ対策と言っておきながら、軍事費、いや防衛費の拡大まで意識した政策であったとすれば危険極まりない発想とも言える。高橋財政によって行われた日銀による国債引受というスキームは、高橋是清にはその意思はなかったろうが、その後の太平洋戦争に向かう財政上の問題をかなり楽にさせるものとなった。

 現在の日銀による国債の大量購入は日本の財政上の問題から生まれたわけではない。国債は日銀の異次元緩和がなくても安定消化されていた。しかし、このようなスキームを作った本人が、「強力な軍隊を持って」と発言したとすれば、アベノミクスとは何を目的としていたのかをあらためて問う必要がある、その結果次第では日銀の異次元緩和による国債の大量購入は早期に停止すべきものと考える。

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米失業率が目標に接近しFRBもガイダンスを変更か

 米国のFOMCでは会合終了後に声明文が公表される。この声明文には、基本的な見解、政策決定内容、それに関する各FOMCメンバーの政策決定にかかる賛否といったものが記されている。会合の約3週間後にFOMCの議事要旨(Minutes)が発表され、議事録(Transcript)は5年後に公表される。

 日銀の金融政策決定会合も終了後に公表文が発表される。会合の約1か月後に議事要旨が発表され、さらに10年後には議事録が公表される。

 2月19日に2013年1月28~29日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が発表された。Minutesという用語の訳として「議事録」との言葉が使われることがあるが、日銀の「議事要旨」と「議事録」は、FOMCのMinutesとTranscriptに該当するとすれば、このFOMCのMinutesは議事要旨と訳しておいたほうが理解がしやすいと思われる。

 そのような細かい指摘はさておき、1月28~29日のFOMCはバーナンキ議長としては最後のFOMCとなる。すでにテーパリングは12月の会合で2014年1月から開始することが決定されたが、1月の会合でもさらなる量的緩和の縮小が決定された。

 気候の影響を受けたにせよ12月の雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比7.4万人増と市場予想を大きく下回り、1月の雇用統計でも非農業部門雇用者数が前月比11.3万人増に止まった。このあたりをどのように捉えていたのかも注目されたが、FOMCの議事要旨によると、大半のFOMCメンバーが米国の経済成長と雇用の先行きに「より強い確信」を表明し、量的緩和の緩やかな縮小を支持した(日経新聞電子版より)。

 どうやら足下の非農業部門雇用者数の減少は置いといて、昨年10、11月の非農業部門雇用者数が月20万人増の規模に達したことや、失業率が下がったことなどを理由に、量的緩和策のさらなる削減を決定したようである。

 たしかに米国景気そのものは回復基調にある。ただし、気候の変動の影響を受けて、それがここにきての米経済指標にも現れてきている。それでも失業率は低下傾向にあり、物価も落ち着いていることを理由に、今後も淡々とテーパリングを継続させていくものと思われる。

 さらに議事要旨によると「比較的早期にFF金利の引き上げが適切であるとの可能性を挙げた」当局者が数人いたことも明らかとなった。2月7日に発表された1月の米失業率は6.6%と、目安としていた6.5%に迫っている。

 2012年12月12日のFOMCで少なくとも2015年半ばまで低金利を維持するとの文面が声明文から削除され、その代わりに米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、という数値のガイダンスに変更された。いわゆるフォワード・ガイダンスと呼ばれるものである。その目安に接近し、フォワード・ガイダンスを変更することが近く必要となるとの見方も出ていた。

 米失業率が6.5%になれば、利上げが意識されることになる。もちろん自動的に利上げするわけではないが、市場でも当然、そのような思惑も出やすくなる。やっとテーパリング開始に漕ぎ着けたところであり、市場があまり先んじて動いてしまうと、株式市場の下落等も招かねず、このあたりに配慮する必要もあるのであろう。

 そういえばイングランド銀行も、2013年7月に総裁がキング氏からカーニー氏に変わり、8月のインフレレポートの発表時に、失業率が7%に低下するまで政策金利を過去最低の0.5%から引き上げる検討はしないとして、フォワード・ガイダンスを導入することを発表したが、半年あまりではやくもフォワード・ガイダンスの修正を行うそうである。すでに目標としてきた失業率が7%近くまで下がってきたことで、新たな枠組みで金融政策を判断するそうである。

 このあたり金融政策の本来の目的と形式上の目的の違い、さらに市場への影響とともに、物価などにも配慮することも必要となり、なかなか難しい手綱裁きが求められている。ここでも金融政策はそもそも何のために、何をしようとしているのかを考えさせるものとなる。本来市場対策で行ってきたはずの非常時の緩和策ではあったが、その収束を金融政策の目的のひとつである雇用(FRBやBOE)に無理矢理結びつけると無理も生じる。これらの動きを見ても、ただ物価を目標値まで上げるためとして大胆な金融緩和(主に巨額の国債買入)を行っている某中央銀行の矛盾は今後、さらに広がるばかりとなろう。

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by nihonkokusai | 2014-02-21 09:45 | 中央銀行 | Comments(0)

クロダ・プットの誕生か

 2月18日の東京市場の動きは、今後のマーケットと日銀の金融政策の関係を見る上でも非常に重要になると思われる。日銀は目先の株価の回復を目指したものではないとしても、何かしらの対策を講じて株価の下落を防ごうとしたことは確かではなかろうか。

 バーナンキ・プットやドラギ・プットという言葉がある。プットというのはオプションの売る権利であり、これを購入しておけば保有株の損失を一定額で抑えることができる。たとえば、FRBが株価の下落等を限定的としてくれるという意味で使われた。米国の株価が下落しそうになると、FRBが金融緩和をするか、それを示唆するような発言をすることで下げを限定的にさせてきたとされる。

 ドラギ・プットとは欧州の信用不安が吹き荒れた際に、ECBによるLTROと呼ばれた資金供給を行ったことや、2012年7月にECBのドラギ総裁はユーロ存続のために必要ないかなる措置を取る用意があると表明し、欧州の信用不安を後退させようとした動きによるものである。

 2014年2月18日に日銀が発表した3月末に期限が来る貸出増加を支援するための資金供給と成長基盤強化を支援するための資金供給についての変更についても、追加緩和ではないものの、2倍という言葉を用意したり、拙速なれどもサブライズ効果を意識したような動きも、まさらクロダ・プットを意識させるような行動と言えた。

 今回の資金供給はあくまで貸出等が伸びてからこそ威力が発揮されるものであり、この枠を倍にしたから貸出等が伸びて景気が良くなるとかの問題ではない。それにも関わらず、市場は2倍というキーワードを意識し、期間延長でECBによるLTROのような錯覚を招いたようである。18日の日経平均は一時500円を超す上昇となったが、その背景には円買い日本株売りのポジションが膨らんでいたところに、この日銀の発表を追加緩和、もしくはその先触れかと認識した海外投資家によるアンワインドがあったかと推測される。

 日銀の黒田総裁は会見の様子から察するに、これほどまでの効果は計算していたわけではなさそうだが、市場の動きを睨んだ今回の日銀の発表であった可能性は高い。とすればそれは奏功したが、市場はこれで日銀に過剰な期待を抱く可能性がある。それとともに、実際には効果がさほどないものをアピールしていることが見透かされることになると反対に日銀の政策、さらにはアベノミクスの効果に対しても疑問符を抱かせることにもなりかねず、まさに諸刃の剣ともなりうる。

 それ以上に問題なのは、日銀だけでなくFRBもECBも金融政策の目的は物価の安定であったり、雇用の安定であったりするはずである。ところが世界的なリスク拡大の際は、そのような目的ではなく市場の回復を目的としていたかに思われることである。だからバーナンキ・プットやドラギ・プットという言葉が生まれた。

 ここに金融政策そのもの在り方を問うべき重要な問題が存在する。金融政策とは、そもそも市場の安定化のために存在しているのか。理屈の上ではそうではないとしても、実は金融政策には資金を供給したり、国債を買い入れることで市場の安定化が結果として最も効果があり、中央銀行の政策は国民全体というよりも市場参加者の思惑に向けられているようにすら映る。それで果たしてデフレからの脱却とかは可能なのか。市場と中央銀行の在り方とともに中央銀行の金融政策の目的とその目的達成のための経路についても、あらためて考えて見ることが必要ではないかと18日の市場の動きを見て感じた次第である。

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by nihonkokusai | 2014-02-20 09:58 | 日銀 | Comments(0)

伊長期金利が映し出す危機後の姿

 2月17日にイタリアの10年国債の利回りは、一時3.61%となり、2006年1月以来の水準に低下した。2011年11月にイタリアの10年国債の利回りは7%を超えて危険水域に入ったとされたが、そこから見るとイタリアの長期金利は半分程度に下がったといえる。しかも、ギリシャの債務危機が生じた2010年初頭の水準からも切り下がってきている。

 ここにきてのイタリアの長期金利の下落傾向の背景としては、欧州の信用危機が後退しリスクオフの流れが、リスクオンに変わったことがまずひとつ挙げられる。2012年1月初めに7%近辺にあったイタリアの長期金利は同年3月に5%を割り込んでいる。その後いったん6%台に戻されたが、8月あたりから再び低下し、日本ではアベノミクス相場が始まった2012年11月には再び5%を割り込んで低下傾向となった。当然ながらこのイタリアの長期金利の低下にアベノミクスは関係はない。むしろイタリアの長期金利の低下の背景にある欧州危機の後退そのものがアベノミクス相場を引き起こしていたといえるが、それはさておき、2013年5月にイタリアの長期金利は節目とされた4%を割り込むことになる。

 4%あたりまでの低下により、欧州の債務危機によるイタリア国債の売りは止んだとみることができると自分では判断していた。ところがそこからさらにイタリアの長期金利は低下してきている。これにはイタリアのナポリターノ大統領が17日に、レッタ首相の辞任を受けて39歳のレンツィ氏に組閣を要請したことも影響していたと思われる。アベノミクスは民主党政権からの脱却への期待も大きかったが、イタリアではレンツィノミクス的な期待も出ていたのであろうか。

 14日には格付け会社のムーディーズが、経済見通しの改善や借り入れコストの低下に加え公的資金による国内銀行の資本増強を行うリスクが低減していることを評価したとして、イタリアの格付け見通しを引き上げた(ロイター)。格付けそのものはBaa2で据え置いているが、ギリシャ・ショック時に格付け会社の格下げが売りを加速させたように、地合の良いところにこのような格付けのニュースに相場が敏感に反応したことも考えられる。

 イタリアばかりでなく、ポルトガルやスペイン、そして欧州危機震源地のギリシャの国債利回り、つまり長期金利も低下傾向が続いている。欧州の信用危機のひとつの目安がイタリアの長期金利の7%超えにあった。実際に7%は超えたが、そこがピークとなった。そしてそのイタリアの長期金利が4%を割り込んだことで、この長期金利から見る限り欧州危機は去ったといえる。そして、危機後の欧州がどう動くのか。そこに若い首相の登場で期待が高まっている。そんな様子をイタリアの長期金利が映し出しているようにも見える。

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by nihonkokusai | 2014-02-19 10:00 | 国債 | Comments(0)

ポストアベノミクス相場が始まったのか

 17日の朝に発表された2013年10~12月期の国内総生産速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.0%増となった。事前の予想は年率でプラス2~3%近辺となっていたことで予想を大きく下回った。これを受けて17日の東京株式市場は戻り売りに押され、外為市場では円高が進んだ。

 債券市場は膠着感を強めながらも、ここにきてしっかりとなり14日に長期国債先物は145円台を回復し、10年債利回りは0.6%割れとなった。この水準では高値警戒もあり、上値も抑えられた格好にある。しかし、下値も限られている。これには日銀の国債買入による需給への影響も大きいが、超長期債に売りを仕掛けても円高株安を見て買い戻されていることも影響していると思われる。

 東京株式市場は今年に入り下げ基調となるが、2月上旬にいったん底打ちし、戻りを試した。これは米国株式市場がやはり年初から下落したものの、2月上旬から切り返したことによる。米国株式市場はそのまま回復基調になりつつあるが、日本の株式市場は戻りが鈍くなっている。米国株式市場と比べ、明らかに地合が異なりつつある。このため、14日に米国株式市場でダウ平均は126ドルもの上昇となっても、日本のGDPを受けて下落するなど、どちらかといえば売り材料に敏感になりつつある。

 相場というのは気まぐれであり、方程式のようなものはない、このため地合の読みというのは大事になる。14日の米国株式市場を見ると、1月の米鉱工業生産指数が市場予想を下回り売られる場面もあったが、2月の米消費者態度指数が市場予想を上回ったことのほうが好感された。これは買い材料に影響されやすい地合が形成されていたといえよう。その米国株の大幅上昇にも関わらず、GDPの数字で下落するというのは、東京市場は売り材料に反応しやすい地合になっているといえる。GDPが悪いのだから当然だろうとの意見もあるかもしれないが、過去の相場をみるとGDPはあくまで過去の数字(今回は昨年10-12月)なのだから、参考にはなっても重要なのは足下景気の動向なので無視、というケースも多かったはずである。

 この株式市場の地合の悪さの要因は何なのか。株が売られると円が買われる。円が買われたから株が売られる。どちらでも良いが、この動きの背景には日本株売りと円買いを同時に仕掛けている向きが存在しているように思われる。実際に海外投資家は今年に入り日本株を売り越している。債券市場では超長期債が動きが荒くなっていることからも、日本株の地合悪化の背景にいるのは海外勢ということが予想される。

 先日、このコラムで2月10日の日経新聞電子版の記事に、『「ソロス氏日本売り」の噂、アベノミクスに飽きた投機筋』との記事が出ていたことを紹介した。安倍首相は今年のダボス会議に出席したが、その際に個別の会議にも顔を出し、ダボス会議の常連とも言えるヘッジファンドのジョージ・ソロス氏と会って話をしたようである。日経新聞の記事によると、安倍首相がジョージ・ソロス氏にかなり突っ込まれていたとの観測もあったとか。また、経済について聞いても首相からは気の利いた返答がなかったとの見方も流れていた。アベノミクスの効果、つまりは異次元緩和でどのようにデフレ脱却が可能なのかを適切に説明が出来たとは思えない。期待に働きかけるといっても、働きかけられる側の投資家が疑心暗鬼では効果が出るはずもない。

 今年に入ってからの東京株式市場の下落は昨年までの上昇の反動とともに、米株の下落による影響を受けていた。ところがここにきて米株との動きに連動性がなくなりつつある。

 今回の10-12月期GDPの数字は、予想を下回るがそれほど悪い数字ではない。プラスは4四半期連続であり、個人消費が堅調で住宅投資も伸びた。ただし、外需が押し下げ要因となった。輸入が伸びた理由は、原発事故の影響で燃料輸入が膨らんだ面もあろうが国内需要が回復しつつあることも示している。それでも市場は予想を下回ったことに反応していた。

 債券市場は現状、膠着相場を抜け出しそうにない。しかし、現在の株式市場や為替市場の動きというか地合を見ると、何かのきっかけで株売り円買いを仕掛けてくることも予想される。その際には債券はどのような動きを見せるのか。どうやらヘッジファンドの仕掛がきっかけとなったアベノミクス相場は昨年末でいったん終了し、ポストアベノミクス相場が始まりつつあるように思う。ここにはこれからの日銀の動向もキーとなってくるかもしれない。それは一概に株式市場にプラス要因とは限らない。18日の黒田日銀総裁の会見内容も要注目となろう。

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by nihonkokusai | 2014-02-18 09:41 | 債券市場 | Comments(0)
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