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翻弄されやすい相場に

 1月29日の東京株式市場で日経平均は400円を超す上昇となったが、30日の東京株式市場は今度は500円を超す下げとなった。いったい何が起きているのであろうか。

 現地時間の28日にトルコ中央銀行が利上げを決定したことをきっかけに、リスクオフの動きが反転し、売られていた新興国通貨が買い戻され、買われていた円も下落し、東京株式市場も急反発した。

 ところが、トルコ中銀の利上げだけでは新興国の通貨売りの流れは収まらなかった。29日には南アフリカの中央銀行が自国からの資金流出を防ぐ目的で、政策金利を5%から5.5%への引き上げを決定した。利上げは2008年6月以来、5年7か月ぶりとなったが、それでも通貨安に歯止めが掛かったのは一時的であり、再びトルコ・リラや南アフリカのランドは下落した。中央銀行による利上げだけでは通貨の下支えとはならず、むしろ金融引き締めで景気が減速するのではないかという懸念も強まった。

 28日~29日のFOMCでは予想通りに量的緩和策による証券購入額を100億ドル減らし、月650億ドルにすることを全員一致で決定した。一時的に雇用が悪化しようが、新興国の通貨が下落してリスクオフの動きが強まろうが、あまり目先のことにはとらわれず、淡々と異例の量的緩和を縮小させていく姿勢を見せた。ただし、FOMC後の声明で、特に最近の新興国通貨の動揺に言及しなかったこともあり、これはむしろリスクオフの動きを強めさせる要因となったようである。

 ここにきて大きな動きを見せている米国のダウ平均や日経平均、ドル円などの動きをみると今年初めから新たな動きが出ていることは確かである。この要因として新興国の通貨下落なども当然あるかもしれないが、むしろ昨年末までの円安株高といった動きの反動が出ている可能性がある。

 新興国の通貨下落による影響はまったく無視できるものではないが、経済規模などを考えると、トルコや南アフリカ、アルゼンチンなどの経済が大きく悪化したとしても、ユーロというシステムの崩壊も意識されたギリシャ・ショックに比べるとさほど大きくはない。

 1997年~1998年のアジアやロシアの通貨危機のような危機が発生する可能性もないとはいえないが、現状はそれほどリスクが高いようには見えない。ただし、1997年~1998年の通貨危機の際には、ジョージ・ソロスのクオンタム・ファンドなどのヘッジファンドによりタイ・バーツなどの通貨が狙い撃ちにされており、今回の新興国通貨の下落も、同様の仕掛が入っていた可能性もある。

 ダウ平均や日経平均の現在の日足チャートを見ても、買いよりも売り崩すほうが、スピードが乗りやすいように見える。新興国の通貨の動向も注意すべきではあるが、それに日経平均なども翻弄されやすい状況にあることにも注意が必要となる。

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by nihonkokusai | 2014-01-31 12:02 | 投資 | Comments(0)

トルコが利上げして日本株が買われた理由

 2014年1月29日、日本時間の朝7時にトルコ中央銀行は臨時会合の結果を発表した。主要政策金利となる1週間物レポ金利を4.5%から10%に引き上げ、翌日物貸出金利は7.75%から12%に、翌日物借入金利は3.5%から8%に引き上げられた。これを受けて29日の東京株式市場は寄り付きから大きく上昇し、東京株式市場はほぼ全面高となった。

 このコメントを見て違和感を覚えることがない人は、金融市場に関わっている人がそれに関心を持っている人であろうか。ここにきての金融市場を取り巻く情勢に関する情報が入っていなければ、何故、トルコの中央銀行が利上げして、日本株が買われるのか、その理由について皆目見当が付かないのではなかろうか。

 かなり昔の話ではあるが、米国のミシシッピー川の水位が低下しているというだけで、日本国債が売られたことがあった。この理由について想像が付くであろうか。当時の日本の債券市場は米国債の動向と非常に連動性が高かった。その米国債はインフレに敏感になっており、インフレを示す代表的な指標としてCRBという指標が注目されていた。そのCRBインデックスは穀物相場に比重が大きくかけられていた。穀物相場は天候等に左右されやすい。アメリカの穀倉地帯はミシシッピー沿岸であり、そのミシシッピー川の水位が低下しているということは、雨が降らずに水不足ということを意味している。そのために穀物の収穫量が落ちる、そしてCRBインデックスが上昇し、米国債が売られ、日本の債券も売られるといった、まさに風が吹けば桶屋が儲かる的な発想だったのである。

 このような背景を理解できないと、今回のトルコの利上げによる日本株上昇の理由がわからなくなる。先週23日に発表された1月の中国製造業PMI速報値が前月から低下したことをきっかけに、東京市場で円高株安が進んだ。昨年末あたりまで欧州の信用不安の後退をひとつのきっかけとしての欧米の景気回復やFRBのテーパリング開始の決定などに市場参加者の目が向いていた。しかし、今年に入り市場はあらたな材料を模索するようになり、そこで目をつけられたのが新興国の動向となった。テーパリング開始で新興国からの資金が引き揚げられるとの連想も働き、財政に問題を抱えるアルゼンチン、政情不安などの問題を抱えるトルコが狙われ、さらに中国のシャドーバンキングの問題も浮上した。これらを受けてリスクオフの動きが仕掛けられた。外為市場では円やスイスフランが買われ、日米欧の株式市場は大幅に下落、米債やドイツの国債などは買われたが、ギリシャやスペインなどの国債は売られた。

 このリスクオフの動きを加速させたものとして、トルコ中央銀行の動向が材料視された。トルコは政府の汚職スキャンダルなどもあり、政情不安が市場に不安を与えるなか、トルコ・リアが急落。トルコ中央銀行は23日に為替市場で2年ぶりの直接介入を実施したものの下げ止まらず、むしろトルコ中央銀行の先週の会合での金利据え置き決定がひとつの要因となり、27日の外為市場でトルコ・リラは最安値を更新した。その後、トルコ中央銀行が緊急の金融政策決定会合を28日に開催すると発表し、この発表を受けて利上げ観測が強まり、リラは急反発した。

 そのトルコ中銀の利上げが発表されたのが、29日の朝7時となり、利上げ幅は市場の予想を大きく超えており、大胆な異次元利上げとなった。これを受けて、すでに買い戻されていたトルコ・リラがさらに上昇し、リスクオフのムードが一変し、円やスイスフランは下落し、すでに米国株式市場も反発していたことも手伝い、29日の東京株式市場は買いが先行して始まったというわけである。

 市場の動きを理解するためには、このようにそれまでの流れを掴んでおくことが重要であるとともに、市場参加者は何に注目しているのか、その感応度も意識しておかないと、このような動きは理解できなくなる。だからマーケットは面白い。

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by nihonkokusai | 2014-01-30 09:50 | Comments(0)

市場の感応度に注意

 市場の動向を見る上では、なかなか理屈が成り立たないことが多い。そこで「市場のことは市場に聞け」と突き放したような言い方もされる。市場が正しいかどうかはさておき、市場の動きを読む上では、市場が何に対して感応度が強くなっているのかに注意すべきである。

 テレビなどのニュースを見て、暢気に芸能人のスキャンダルや風物詩などばかり流して、もっと取り上げるべき記事があるだろうとの声が聞こえるときがある。テレビのニュースも当然ながら視聴率を意識しており、それは視聴者がどのようなニュースに関心があるのかが重要になる。視聴者の関心が何に向いているのか、を捉えることが善し悪しはさておき重要となる。

 これは市場も同様である。この点を理解しないと、自分の見方は正しいはずだが、市場が間違っていたおかげで損をしたということになりかねない。ケインズは著作で、金融市場における投資家の行動パターンを表す例え話としての美人投票を挙げている。「投票者は自分自身が美人と思う人へ投票するのではなく、平均的に美人と思われる人へ投票するようになる」と。市場は短期的には市場参加者が何に注視しているのかで動きが決まる。

 市場参加者が何を重視しているのかをある程度直感的に得ることが市場でサバイバルする上で重要となる。その感応度の大きさ、さらにその先行きについての予測と、不確定なことが起きたときに感応度の大きさの変化などを即座に感覚的に捉えることが重要となる。残念ながらこれらを材料別に数値化することはできず、目で捉えるというよりも感じるものとなる。

 今回のアルゼンチンやトルコ、中国の問題も突然出てきたものではなく、すでにそこにあった問題であった。ところが欧州の信用不安がそれを覆い隠す厚いベールとなり、そのベールが剥がれてくると、今度は欧米の景気回復やFRBのテーパリングの行方が注視されるようになり、新興国のリスクは追いやられていた。FRBはテーパリング開始を決定し、今年に入り順調に上昇していた欧米の株価も頭打ちとなった。市場では注目すべき材料がなくなり、新たな材料を見いだそうとした。そのようななかで新興国の問題が取り上げられるようになり、トルコ・リラやアルゼンチン・ペソが狙い撃ちされた。それがリスクオフというテーマに繋がり、円やスイスフランが買われ、ギリシャの国債が売られた。

 しかし、この新興国という材料に対しての市場の感応度は2010年のギリシャ・ショックなどに比べ、あまり高いものではなく、消去法的に出現したものとも言える。世界的な金融危機が続いたことで警戒心は強いものの、いまのところ金融システム不安に繋がるような恐れは少ない。大火事になる前にぼやで消火可能と思われる。市場の感応度も次第に薄れ、別の材料を模索することになるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-01-29 09:59 | 国際情勢 | Comments(0)

新興国が新たな火種となるのか

 世界の金融市場がまた怪しげな動きをし始めた。24日に外為市場でアルゼンチン・ペソが2002年以来の大幅安となり、アルゼンチンは24日に為替管理を緩和すると発表し、ドル買いへの税率を引き下げ、普通預金口座でドルの購入を認めた。このような小手先の手段で市場の動揺が収まるとも思えないが、このままアルゼンチン・ショックと呼ばれるものが発生するのかどうかはまだ不透明である。

 これまでアルゼンチンは通貨下落を防ぐために自国通貨を買い支えてきたが、その介入の結果、外貨準備高が約294億ドルとピークの2010年末から4割強も減少した(25日付け日経新聞)。このため介入により通貨下落を防ぐことが難しくなったとの観測が強まり、22日にはアルゼンチン中央銀行の介入が実施されず、まさにペソが狙い撃ちされた。27日の下げ幅は、1日としては2002年の金融危機以来最大になった。

 トルコは政府の汚職スキャンダルなどもあり、政情不安などからトルコ・リアが急落した。トルコ中央銀行は23日に為替市場で2年ぶりの直接介入を実施したものの、下げ止まらず、むしろトルコ中央銀行の先週の会合での金利据え置き決定がひとつの要因となり、27日の外為市場でトルコ・リラは一時最安値を更新した。ただし、その後トルコ中央銀行が緊急の金融政策決定会合を28日に開催すると発表し、この発表を受けて利上げ観測が強まり、リラは急反発した。

 中国の動向も注意が必要であり、シャドーバンキングへの懸念も燻っている。ただし、こちらは問題とされた中国の中誠信託の高利回り信託商品の償還については、デフォルトが回避された模様である。

 今回のアルゼンチンなどの新興国通貨の下落要因として、23日に発表された1月の中国製造業PMI速報値が悪化したことも挙げられていた。欧州の信用不安がアルゼンチンなどに飛び火しなかったのは、通貨の買い支えが効いていたとの指摘もあるが、市場の注目度が極度に欧州に集中していたことも要因であった。ところがその欧州の信用不安が潮を引くように後退すると、アルゼンチンやトルコ、さらには中国などのリスクがあらためて見えてきたのである。FRBのテーパリング開始決定で、新興国に投資されたマネーが引き上げられる懸念も背景にあった。

 欧州の信用不安のきっかけとなったギリシャ・ショックはギリシャの債務の操作が明らかとなり、ギリシャへの信認が一気に崩れギリシャの国債が急落した。同様に債務に不安を抱えるアイルランドやポルトガルに飛び火した。最もインパクトがあったのはギリシャのユーロ離脱への懸念と、それによるユーロ崩壊の危機であった。今回については、アルゼンチンの問題が国際的な危機的状況を導くとは考えづらいが、新興国に対する警戒心が強まることは確かであろう。

 ユーロ危機後の世界を見る上では、いくつかの注意点がある。2013年はユーロ危機の後退とともに、欧米の景気回復等に助けられ米国株式市場はダウ平均が過去最高値を更新し続け、年末に最高値を更新するなど、バブル崩壊前の日本の株式市場を連想させるような動きとなっていた。その反動がいつ起きてもおかしくはなかった。さらにユーロ危機の後退は円安を促したが、これについても米国政府からの円安への牽制も出るなか、円安の動きが抑制される可能性がある。アベノミクスと日銀の異次元緩和が円安を導いたとして、日銀への追加緩和期待を抱くのは勝手であるが、それで円高の動きを抑えられたとしても一時的と思われる。為替市場の流れを変えられるかどうかは、世界的なリスクの行方次第になると考えられるためである。

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by nihonkokusai | 2014-01-28 10:06 | 国際情勢 | Comments(0)

日銀の追加緩和観測が後退

 ここにきての円安調整というか円が底堅くなりつつあるのは、米国のルー財務長官による円安形成発言とともに、日銀の追加緩和への期待が後退したことによる影響も大きいと思われる。ここ数日、特に材料も出ていないにも関わらず、円が売られ日経平均先物が買われていた。短期筋の仕掛けと思われるが、その背景に日銀の追加緩和観測があった可能性がある。

 こと金融政策に関しては、債券市場の関係者と、株や為替の関係者には多少の温度差が存在するようである。債券市場関係者にとって、追加緩和に対しての期待はさほど強くはない。むしろ余計なことはやってくれるなとの意識も強い。国債の需給はそれでなくてもタイトとなり、国債の流動性も一時よりは回復しつつあるとはいえ完全に回復してはいない。景気も回復過程にあり、追加緩和に期待を持つような状況にはない。

 これに対して円安・株高のトレンドを維持させるためにも、外為市場や株式市場の関係者からは追加緩和への期待は強いと思われる。消費増税は確実に日本経済を悪化させる。政府の経済対策とともに、悪影響を事前に防ぐための予防的措置としての追加緩和期待もあるのかもしれない。

 債券市場というか金利に関する関係者と株や為替の関係者の間での認識のギャップの背景には、実務の上での日銀との距離感が影響している可能性がある。短期金融市場は日銀とかなり深く関わっており、伝統的な金融政策は金利の操作にあるので当然といえば当然ながら日銀の動向が大きく市場に影響を与えている。債券市場も裏を返せば長期金利を決定している市場であり、非伝統的な金融政策は国債の買入が中心となり、その意味でも日銀との距離は近い。

 だから債券市場関係者の見立てのほうが正確と言うわけではないが、比較的冷静に見ている面もあるのではなかろうか。さらに外部環境も日銀による追加緩和の可能性を後退させているとみておくべきではなかろうか。

 現在の日銀が望む市場の姿は、円の下落基調が続き、株式市場は上昇基調を続け、国債の利回りは抑えられたままというものであろう。2012年11月のアベノミクスの登場以来は、まさにその理想的な姿となっている。景気も回復し、物価も市場関係者の予想を超える上昇となっている。もしこのような理想型とならなければ、日銀には追加緩和期待が強まっていたことも予想される。日銀は戦力の随時投入はしないのではなく、しなくても良い地合が続いたといえる。

 日銀にとって理想的な状況が続いたのは、アベノミクスによるものが中心ではないと私はみている。すでにFRBが量的緩和の縮小を決定しているが、その背景にアベノミクスがあったわけではない。安倍氏の発言が円安調整のきっかけを作ったことは確かであり、追加の財政政策も景気の下支えとなったことも確かである。しかし、現在の世界的な景気回復はアベノミクスによるものではない。その恩恵に日銀というか日本も与っているに過ぎない。つまり世界的なリスクが後退し、景気も回復している過程にあり、このような状況下で日銀が追加緩和を行うことは考えづらい。

 22日の黒田日銀総裁の会見においても、消費増税の影響はさほど大きくはなく、基調的には緩やかな回復を続けていくとし、CPIについても半年程度1%台前半という水準が続いたあと、目標としている2%に続くとしている。当面のCPIについては、民間のエコノミストなども1%台前半で当面推移するとの見方も多い。その後の見方は日銀とギャップがあるが、それでも少なくとも半年の間は、物価目標が達成できなそうだから追加緩和をするということも考えづらい。

 日銀の追加緩和については、まったくないというわけではないが、現在の良い環境が維持されている限りにおいて、少なくともあと半年程度は日銀が動くことはないのではなかろうか。ただし、まったく新たなリスクが発生した場合にはその限りではない。

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by nihonkokusai | 2014-01-25 11:47 | 日銀 | Comments(0)

ダボス会議と1999年のゼロ金利政策

 安倍晋三首相は1月22日からスイスで開く世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に出席し基調講演を行った。日本の総理大臣としては初めての基調講演となり、このなかで、アベノミクスの成果を強調したうえで、法人税の実効税率の引き下げを含む税制改革に取り組む決意を表明した。

 ダボス会議とは、非営利財団の世界経済フォーラムが開催する会議の通称であり、スイスのダボスで開かれるため、こう呼ばれる。世界の著名な政治家や経営者らが集まり討論を行うが、サミットやG7などのような公式の会議とはかなり趣が異なり、参加者同士が直接顔を付き合わせて討議が出来る場とされている。そういった意味で、ただの民間会議ではあるが特異な世界会議と言われている。

 日本の首相がいまごろになってやっとはじめて基調講演に立ったことに、どれだけの意味があるのかは不明ながら、世界に向けての情報の発信の場となることは確かであろう。それよりも、その後の個別会議のほうがこの会議の性質上は意味があるように思われる。

 今回のダボス会議には、安倍首相とともに甘利経済財政担当相、さらに何度も出席し常連ともいえる黒田東彦氏が日銀総裁として出席する。またECBのドラギ総裁、イングランド銀行のカーニー総裁、欧州連合欧州委員会のバローゾ委員長、韓国の朴槿恵大統領、中国からも上級指導者が出席するそうである。

 このダボス会議の重要性が市場参加者の一部で強く意識されたのは1999年2月の会議においてであろう。この年のダボス会議には日本から自民党の加藤紘一氏や榊原英資財務官などが出席し、米国からはルービン財務長官、サマーズ財務副長官などが出席していた。榊原英資氏とサマーズ氏はハーバード大学で一緒に席を並べた旧知の間柄だったそうだが、とにかくこの4人がどうやら直接会ってひそひそ話をしていたようなのである。

 その席で、米国側から円高と日本の長期金利の上昇に対して懸念が示され、場合によってはさらなる金融緩和を要求されたとされている。この米国側の話が加藤氏などを通じて日本政府に伝わり、直後の野中自民党幹事長による長期金利上昇懸念発言などに繋がることになる。

 米国側から懸念が示された日本の長期金利の上昇とは、1998年12月の運用部ショックと呼ばれた日本国債の急落である。国債価格が下落するということは長期金利が上昇することになる。なぜ日本国債の下落に米国が懸念したかと言えば、日米の長期金利が接近することで米国債を大量に保有している生保などが、米国債を売却し日本国債に乗り換えるのではないかとの懸念が出たためとされている。

 この米国側の懸念はその後、正式にアナウンスされたが、それに慌てたのが日本の政府関係者であり、日本の長期金利上昇に必要とされる手を打たざるを得なくなり、日銀には国債の直接引受まで言及された。さすがにそれは出来ぬと、その代わりに打ち出されたのが、1999年2月の日銀による「ゼロ金利政策」である。このときのゼロ金利政策はデフレ対策などではなかったこともあり、日銀は長期金利の落ち着きをみて、早期に解除したかったと言える。

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by nihonkokusai | 2014-01-24 09:41 | 日銀 | Comments(0)

人々の期待・予想とはいかなるものなのか

 1月9日に日銀が発表した「生活意識に関するアンケート調査」の結果がなかなか面白かったので、ここであらためて紹介したい。対象は全国の満20歳以上の個人4000人だそうで、無作為に選出した人を対象とした世論調査である。

 このなかで、「日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げていることをご存知ですか」との質問があった。その回答は次の通り。

1 知っている 29.4 ( 36.9 ) 2 見聞きしたことはあるが、よく知らない 31.3 ( 40.7 ) 3 見聞きしたことがない 38.9 ( 21.7 )

 括弧は9月調査のものであるが、日銀が消費者物価の前年比上昇率2%の目標を掲げていることを知っているとしている人は全体の3割に過ぎない。さらに見聞きしたことがないとの回答が4割近くいる。

 2013年4月に日銀が決定した量的・質的金融緩和(QQE)により、日銀は消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するとしている。これは予想物価上昇率を上昇させることが大きな目的となっている。ところで予想物価上昇率とは何であろうか。

 予想物価上昇率は期待インフレ率とも呼ばれるが、実はこの期待インフレ率こそくせ者である。実際に我々が将来の物価の行方をどのように判断しているのかを具体的に示す指標は存在しない。

 ひとつの指標としては、この日銀のアンケート調査のようなものがある。今回の調査でも、 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか、との質問項目がある。さらに1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか、との質問もある。この数値に果たして何の意味があろうか。あなた自身、もしくは身内の人に1年後の物価の居所を予想している人が果たしているであろうか。

 このため専門家の見方が集約するであろう物価連動国債の居所から将来の物価の居所を探ろうとすることもある。しかし、それもあくまで債券市場関係者の一部が売り買いしているものであり、需給要因など他の要因の影響も大きくなる。さらに市場関係者だからといって将来の物価を正確に見通すことなど不可能である。2013年初頭にストラテジストやエコノミストが1年後の株価や為替、債券の居所をどれだけ適切に見通していたであろうか。なかにはある程度予想通りの数字になった分析者がいたとしても、それは市場では「当たった」と表現する。

 一般の人が日銀の金融政策のことを正確に理解しているのかどうかは、上記のアンケートからみても非常に不透明である。債券の専門家でも日銀が国債を大量に買えば物価が上がる理屈を適格に言えるものはいないはずである。異次元緩和を決定した日銀からもその経路について明確な説明は見たことがない。

 アベノミクスと呼ばれるリフレ政策は世界的なリスク後退時にタイミング良く打ち出された。このため急速な円高調整が起きた。それにより株高も生じ、円安は実態経済にも影響を与え、物価上昇にも寄与した。このあたりの経路は明確である。しかし、円安の効果を取り除いてしまうと、あとは何か残るのか。景気回復については、世界的なリスク後退による欧米の景気回復の影響も寄与していることも考慮する必要がある。

 そもそも一般消費者に対して、予想物価上昇に働きかけるものが金融政策なのであろうか。日銀が債券市場から国債を購入してもそれが何を意味するか、知っている人がどれだけいるのか。実体経済そのものが回復し、それが賃金に跳ね返ってこそ、将来の期待が強まる。円安や電気料金などの上昇により物価だけが上がってしまうと、それは期待より懸念を生みかねない。実体経済の回復にどのように寄与させるのか。それは国債を大量に買えば良いという問題ではないはずである。

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by nihonkokusai | 2014-01-23 17:25 | 日銀 | Comments(0)

景気見通しと日銀の追加緩和の有無

 国際通貨基金(IMF)が21日に発表した最新の世界経済見通しによると、2014年の世界の経済成長率は若干ながらも加速し約3.7%に達する見込みとしている。昨年10月の前回予想から0.1ポイントと小幅に上方修正した。

 多くの新興市場及び途上国・地域では、国内の弱さが引き続き懸念されるが、先進国・地域からの需要が力強さを増し成長を押し上げることになろう、とIMFは指摘している。

 日米欧など先進国の今年の成長率は2.2%と、前回予想より0.2ポイント高まる見込み。米国の2014年の成長率は、2013年の1.9%から加速し2.8%に達する見込みとしており、さらに英国の2014~2015 年の成長率は平均で2.25%に達する見込みとなっている。ユーロ圏については、景気後退局面から回復へとシフトし、成長は力強さを増し2014年は1%、2015年は1.4%に達する見込みとしている。

 日本については、一時的な財政刺激策が、2014年初めの消費税率引き上げの負の影響を一部相殺することで、2014年の年間成長率は1.7%としている。前回予想から0.4ポイント引き上げられた。その後2015年には1%まで減速するだろうとの予測となっている。

 そして、新興市場及び途上国・地域の成長率は全体で、2014年は5.1%、2015年は5.4%に達するとしている。

 4月の日本の消費税引き上げによる景気への影響が懸念され、日銀には追加緩和観測も一部にある。しかし、今年に関してはIMFも指摘しているように、消費増税による落ち込み分をカバーすべく消費増税に備える経済対策に5.5兆円規模の国費を投入する予定となっている。上記のIMFの見通しが正しいとすれば、欧米を主体に景気は回復基調となるなど外部環境も良好であり、消費増税による景気の落ち込みは回避されるとの見方も可能となるのではなかろうか。

 すでに政府が予防策としての経済対策を実施する。そこにさらに日銀の追加緩和は果たして必要となるのであろうか。世界的なリスクの後退もあり、まさに不透明感は払拭しつつあるなか、日本を含めて景気は回復基調にある。予防的な意味合いからの日銀の追加緩和はむしろ考えづらい。

 このあたり昨年4月の異次元緩和で状況はかなり変わってしまったことを意識する必要がある。日銀の黒田総裁は戦力の随時投入はしないとしているが、それはしないのではなくて「できない」のである。いったんしてしまうと、異次元緩和が普通の緩和となりかねない。しかも、大きな花火をいったん打ち上げてしまったため、市場はかなりの規模の緩和策でなければ納得せず、むしろ市場へには逆効果となる懸念すらある。

 追加緩和期待をするのは勝手ではあるが、日銀は自ら手足を縛ってしまっている。次に追加緩和をするとなれば、それなりの砲弾も必要であり、それも連続して実施できるような状況にもない。もちろん、戦力の随時投入方式に戻ることもあるかもしれないが、いずにしても市場の期待を上回るような手段を打つことはかなり困難となる。景気が回復基調にある間は、日銀はとにかく推移を見守っていかざるを得ないと思う。

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by nihonkokusai | 2014-01-23 09:48 | 日銀 | Comments(0)

都銀は9か月連続で国債を売り越し

 20日に日本証券業協会が発表した12月の公社債投資家別売買高(除く短期証券)によると、4月から11月まで売り越しとなっていた都市銀行は12月も1兆9906億円もの売り越しとなっていた。都銀の売り越しは異次元緩和決定の4月以来、9か月連続となる。

 この公社債投資家別売買高を見る際にはいくつか注意すべき点がある。そのひとつに、この都銀分には都銀が直接、国債入札で落とした分は含まれていないことがある。発表している証券業協会のサイトには、国債の投資家別売買高の集計に関する解説資料のなかに次のような指摘がある。

「協会員から、本店、支店及びその他の営業所における、当月中に取り扱った国債の一般売買分(現先(条件付売買)を除き、発行日前取引を含みます)の状況について、売買 の主体である投資家別に報告を求め、集計しています。 特別会員については、登録金融機関業務に係る取扱いについてのみ報告を求めております。」

 この集計はあくまで証券会社を通じて行った売買高が集計されている。都銀などは特別会員として参加しているが、都銀の扱い分は登録金融機関業務に係る取扱いのみとなっている。

 国債入札に関して、具体的にどこが落札したのかは公表されていない。記事などで報じられるものは、証券会社などにヒアリングして集計したものであり、外資系の一部大手などが公表しないなど、完全なものではない。都銀や生保は国債入札で証券会社等を通さずに直接落とすことも良くあるとされるが、これについても入札を担当している財務省や日銀の関係者など以外はわからない仕組みになっている。

 このように都銀については、直接国債を入札で落とした分を含めると、9か月連続の売り超しとなっていたのかどうかは不明ながら、ポジションを落としていることは確かだと思われる。

 12月分については都銀以外の機関投資家はほぼ買い越しとなっていた。地方銀行が4202億円、信託銀行が6048億円、農林系金融機関が6290億円、第二地銀が2190億円、信用金庫が8662億円、その他金融機関が8259億円、生損保が1兆2448億円、投資信託が6071億円、事業法人が1286億円のそれぞれ買い越し。外国人は10億円の買い越し。

 国債の投資家別売買高から内訳をみると、都市銀行は中期債を1兆6834億円売り越していた。買い越しについては、地銀は中長期債主体、信託銀行は超長期と中期、農林系はまんべんなく、第二地銀は中長期主体、信金は長期主体、その他金融は中期債主体、生損保は超長期主体、投信は中期主体、事業会社も中期主体のそれぞれ買い越しに。外国人投資家は超長期と長期を売って、中期を買っていた格好に。

 ここでも注意すべきは、超長期、長期、中期の区分はあくまで入札時のものであり、10年の長期債も発行して7年経過して残存3年債となっても、中期債ではなく長期債としてカウントされる点である。ただし、売買の中心は直近に入札されたカレントものと呼ばれるものの割合が大きいことで、おおよその動きはこの集計から掴めることも確かである。

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by nihonkokusai | 2014-01-22 09:50 | 債券市場 | Comments(0)

ルー財務長官の円安牽制発言は要注意

 アメリカのケネディ駐日大使が、和歌山県太地町で行われているイルカの追い込み漁について「非人道性を深く懸念している」として反対する立場を表明し、ツイッター上で大騒ぎになっていたようだが、16日のルー米財務長官の発言も要注意である。

 米国のルー財務長官は16日の講演において、日本経済に関し「為替に過度に依存すれば長期的な成長はない」とし、日本の為替政策を「注視し続ける」と述べた。

 ドル円の動きを確認してみると、アベノミクスが登場前の2012年10月あたりまでは、80円割れとなっていたが、そこから急速に円高調整が入り、2013年5月に103円台をつけたあと、いったんドル売りが入りドル円は6月に95円を割り込む。その後は三角持ち合いとなり、それが頂点に達した昨年11月あたりから再び円安の動きを強め、2014年に入り年初に105円台に乗せた。しかし、次第にドルの上値が重くなり、1月20日に104円を割り込んでいる。

 16日のルー財務長官の円安牽制は唐突のように受け取られたようではあるが、急に米国政府の意向が変化したわけではない。

 昨年2月のG7の共同声明を巡る解釈を巡り、明らかに日本政府からの為替に関する発言に変化が生じていたことに注目したい。このときのG7には、ルー次期財務長官は議会での承認を待っている段階であり、代わりにブレイナード財務次官が出席していた。ブレイナード氏は次期FRB理事の指名を受けている。

 この際に、匿名のG7関係筋が「G7声明は誤って解釈された。同声明は、円の過度な動きに対する懸念を示すものだった。G7は円の一方的なガイダンスを懸念している。」としていたが、この匿名のG7関係筋はブレイナード財務次官ではないかとみられている。

 本来であれば、財務長官が出席すべきG7であったが、ルー氏が財務長官として出席できない状況にあり、その意向がブレイナード財務次官に伝えられていた可能性もありうる。そもそもブレイナード氏個人の意見が出されたことも考えづらい。ブレイナード財務次官はこの際に「為替相場は市場が決めるというのは先進国間のルールだ」と述べていたが、これは明らかに日本政府への牽制と言えた。

 先日のルー財務長官の発言は、ある意味、公式に日本に対して円安政策に釘を刺した格好となる。12月のFOMCでテーパリングが決定されたが、日銀には追加緩和期待すら出ている。このため、金融政策の観点から見れば円売りドル買いの動きが強まりやすい。だからこそ、今年始めにドル円は105円台まで上昇したといえる。

 日本政府は昨年のG7以降、為替に関する発言にはかなり慎重になっており、ルー財務長官に釘を刺されるような日本政府関係者からの発言等はほとんどみられない。しかし、ここにきての日本の景気回復や物価の上昇には円安による影響がかなり大きいことも確かである。安倍首相は「景気回復を全国に届ける」と述べるなど、デフレ脱却に向けた姿勢をあらためて見せたが、それには円安以外に効果的な政策が現状は見当たらない。そのあたりも意識されてのルー財務長官による発言であったようにも思われる。

 16日のルー財務長官の円安牽制発言はすぐには影響を与えなかったものの、これをきっかけにいったん円安のトレンドが変わる可能性がある。まもなくFRBもトップが入れ替わる。為替市場ではこのFRBと日銀の金融政策を重視していることもあり、今後のドル円の動きは要注目となりそうである。

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by nihonkokusai | 2014-01-21 09:41 | Comments(0)
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