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FRB創設100周年、歴代の議長

 12月16日に米国の中央銀行である連邦制度理事会(FRB)創設100周年の記念式典が開かれた。報道された写真を見ると、ボルカー元議長、グリーンスパン元議長、バーナンキ現議長、イエレン次期議長(予定)が一緒に収まっている。ボルカー議長就任が1979年ということは、このメンバーでFRBの歴史の三分の一を作ったということになる。

 ここでFRBの歴代の議長のなかから、注目される議長をピックアップしてみたい。「FRB議長」(レナード・サントウ著、日本経済新聞出版社)によると、1914年以降の歴代議長は現在のバーナンキ議長を含めて、わずか14人にすぎない。

1.チャールズ・S・ハムリン(1914年8月10日~1916年8月10日)
2.ウィリアム・P・G・ハーディング(1916年8月10日~1922年8月9日)
3.ダニエル・R・クリシンジャー(1923年5月1日~1927年9月15日)
4.ロイ・A・ヤング(1927年10月4日~1930年8月31日)
5.ユージン・メイアー(1930年9月16日~1933年5月10日)
6.ユージン・R・ブラック(1933年5月19日~1934年8月15日)
7.マリネア・S・エクルズ(1934年11月15日~1948年2月3日)
8.トマス・B・マッカーベ(1948年4月15日~1951年4月2日)
9.ウィリアム・マチェスニー・マーティンJr.(1951年4月2日~1970年2月1日)
10.アーサー・F・バーンズ(1970年2月1日~1978年1月31日)
11.G・ウィリアム・ミラー(1978年3月8日~1979年8月6日)
12.ポール・A・ボルカー(1979年8月6日~1987年8月11日)
13.アラン・グリーンスパン(1987年8月11日~2006年1月31日)
14.ベン・S・バーナンキ(2006年2月1日~2013年1月31日予定)
15.ジャネット・イエレン(2013年2月1日~予定)
(「FRB議長」を参考に作成)

 このなかでFRB中興の祖と呼ばれた人物が、マリネア・エクルズである。エクルズ議長の在任期間は、マーチン、グリーンスパンに次いで長い。1929年10月24日の「暗黒の木曜日」と呼ばれたニューヨーク株式市場の急落をきっかけに発生した大恐慌に対して、恐慌時にもかかわらずFRBは公定歩合の引き上げを実施し、これをきっかけに金融機関の破綻が相次ぎ、金融危機を発生させるなど食い止めるどころか悪化させる要因ともなった。

 当時財務省次官補を務めていたマリネア・エクルズ氏は、当時のフランクリン・D・ルーズベルト大統領にFRBの改革案を提示した。これをきっかけにエクルズ氏はFRB議長に就任したのである。この改革案がのちに1935年銀行法となる。

 第2次世界大戦中は戦費調達のための国債発行に対し、FRBは政府の強い要請を受け、長期金利を2.5%に固定するため市場から国債を買い入れていた。エクルズ議長は戦時下の非常事態であり、この政府の要請を受け入れざるを得なかったとされている。

 ルーズベルト大統領の後を継いで就任したのがトルーマン大統領であるが、大統領はエクルズ議長と対立し、1948年4月に議長任期が到来したエクルズの再任を拒否し、エクルズは議長職を解任される格好となった。

 FRB議長は4年の任期があるが再任できる。これに対して金融政策の独立性を守るためとの理由から、FRB理事の任期は16年となっている。エクルズ議長は事実上議長職を解任された後も、FRBの独立性確保のため4年間残っていた理事職にとどまった。これは国債管理政策と金融政策の分離を行うためであった。いわゆるアコードの成立である。アコード成立の帯役者となったエクルズ議長の功績がたたえられ、連邦準備制度本館がマリネア・エクルズ連邦制度理事会ビルディングと命名されたのである。

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by nihonkokusai | 2013-12-18 10:40 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀短観と市場への影響

 日銀が16日に発表した12月全国企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の業況判断DIは「プラス16」となり、9月調査のプラス12から上昇し4期連続での改善となった。調査機関の予想はプラス13~16ポイントであったことで、ほぼ予想の上限に近い。プラス16は2007年12月調査のプラス19以来の高水準となる。先行きを示す2013年3月の予想はプラス14と減速を見込んでいる。ただし、前回の予想もプラス11と悪化を見込んでいたもののむしろ改善した。業種別では木材・木製品や自動車のプラス幅が大きいが、木材・木製品は公共投資や住宅投資に伴う建築需要の高まりが影響しているようである。

 大企業「非」製造業のDIは「プラス20」となり、9月調査のプラス14から上昇し、こちらも4期連続の改善となった。調査機関の予想はプラス15ポイントからプラス19ポイントとなり、予想を上回る改善となった。先行きを示す2013年3月の予想はプラス17としており、やはり減速を見込んでいる。こちらも業種別では消費税増税前の駆け込み需要により、建設や不動産などに加え物品賃貸の改善幅も大きくなっている。

 中堅企業も製造業・非製造業ともに改善し、中小企業の製造業は前回のマイナス9からプラス1に、非製造業もマイナス1からプラス4と、それぞれプラスとなった。中小企業の製造業のプラス転換は2007年以来、非製造業は1992年以来のプラスとなった。

 大企業全産業の2013年度の設備投資計画(含む土地投資額)は前年度比4.6%増となり、9月調査から0.5ポイント低下していた。特に製造業が1.7ポイントのマイナス修正となっていた。

 大企業製造業の2013年度の想定為替レートは96円78銭で、9月調査の94円45銭に比べて円安・ドル高方向に修正された。それでも現在の103円近辺の実際の水準に比べると、かなりの余裕をみている格好。

 今回発表された短観は、総じて予想以上の改善幅を見せていたが、さすがにそろそろ息切れとなる可能性もある。設備投資計画のマイナス修正も気になるところ。ただし、来年4月からの消費増税を前にした駆け込み需要等も引き続き予想され、それほど大きな減速とはならないのではなかろうか。

 短観の大企業DIと日経平均のトレンドはある程度一致する。アベノミクス登場後の急激な円高調整に加え、米国の株高も相まって東京株式市場も上昇トレンドとなっているが、それがいずれピークアウトするのかは、この短観の大企業DIの動向もチェックしておく必要がある。

 債券市場への影響については限定的と思われるが、それでもこの景気の回復は意識すべきものと思われる。日銀の国債買入の影響もあり、長期金利は0.7%近辺と低位安定しているが、CPIも前年比プラス1%近辺にいることもあり、実態経済に比べてやや乖離しているように見える。日銀の国債買入への依存度を高めてしまうと、のちに大きな反動がくる懸念もある。日銀が無理矢理、長期金利を押さえ込んでいるのではなく、そのような「期待」が長期金利を押さえ込んでいることも注意すべきかと思われる。

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by nihonkokusai | 2013-12-17 09:16 | 景気物価動向 | Comments(0)

FRBが創立100周年

 2013年12月23日で米国連邦準備制度理事会は100周年を迎える。1895年にアメリカの金準備が大きく落ち込み、これ対して銀行シンジケート団を動かしてアメリカからの金流出を阻止したのがJ・P・モルガンであった。銅に対する大規模な投機の失敗が銀行取り付けを誘発し、それによって迎えた1907年の金融危機に際してもきわめて重要な働きをしていた。この危機に際してJ・P・モルガンが出した提案が1913年の連邦準備制度設立のきっかけとなったとされる。

 米国は連邦制を採用し、さらに東部と西部、北部と南部といった地域的な対立などがあったことで、中央銀行の設立には大きな抵抗があった。しかし、19世紀から20世紀にかけて幾度も恐慌が発生し、銀行の倒産や企業の倒産などにより深刻な不況が生じた。このため「金融システムの安定化」が求められ、中央銀行の設立の機運が高まったのである。

 1913年に12の地区連邦準備銀行と、これを監督する連邦準備委員会がワシントンに設立された。中央銀行の設立には引き続き反対意見も多かったことから、全米の12地区に地区連邦準備銀行を設立し、それぞれの地区で銀行券である連邦準備券が発行され、各行ごとに公定歩合が設定されることになった。

 この大きな節目の年に、FRBも金融政策や人事面において、マイナーチェンジを迎える。12月17日、18日FOMCにおいて、テーパリングと呼ばれるFRBの量的緩和策の縮小開始が決定される可能性が出てきている。

 さらに人事面では、来年1月末でバーナンキ議長の退任が決まっており、後任の議長にはイエレン副議長が就任する見込みとなっている。そのイエレン副議長の最有力候補にスタンレー・フィッシャー氏の名前が挙がっている。フィッシャー氏は、現代を代表するマクロ経済学者のひとりであり、バーナンキFRB議長やドラギECB総裁は同氏の教えを受けている。米国とイスラエルの両国籍を持ち、大統領はすでに副議長指名を提案し、フィッシャー氏は受け入れたとされている。

 フィッシャー氏がもしFRBの副議長となれば、その影響力は無視できなくなるのではなかろうか。議長となるイエレン氏はハト派の代表格ともいえるが、金融政策運営については、みずからの主張よりもメンバーの意向をより強く反映させてくるとみられる。そのなかでもフィッシャー氏の存在感は強くなることが予想される。フィッシャー氏は大学教授だけでなく、世界銀行チーフエコノミスト、IMF筆頭副専務理事、民間銀行、さらに今年6月まではイスラエル銀行の総裁だったのである。

 FRBはバーナンキ体制から、実質的にイエレン議長とフィッシャー副議長のツートップ体制に移行する可能性もあり、来年2月からの政策運営はたいへん興味深いものとなる。非常時から平時の対応に移行するにあたり、出口に向けてどのような政策手段を講じてくるのか。テーパリング開始のあとは、フォワード・ガイダンスを政策手段の柱にするとみられていたが、バーナンキ路線をそのまま引き継ぐとも考えづらい。100周年を迎えたFRBは来年2月から人心も一新し、より現実的な金融政策に移行してくる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2013-12-16 09:46 | Comments(0)

今週の注目イベント

 12月16日の週は注目のイベントが多くある。年内相場の大きな山を迎えることも予想され、チェックすべき箇所を整理しておきたい。

 12月16日は朝方に日銀短観が発表される。大企業の景気判断は製造業、非製造業ともに4期連続で改善すると見込まれている。ただし、改善幅は小幅にとどまるという見方が多い。民間の経済研究所などの予測によると、大企業・製造業DIはプラス13~16ポイントと4期連続の改善を見込んでいる。大企業・非製造業もプラス15ポイントからプラス19ポイ ントの予測となり、こちらも4期連続の改善を見込む(NHK)。円安により自動車を中心に輸出関連企業の収益改善が見込まれる上に、公共事業の増加や消費増税前の住宅の駆け込み需要よる建設業の業績の伸びなどが影響しているとされる。

 短観そのものによる市場への影響は限定的とみられるが、景気の回復基調を確認することで、東京株式市場にはフォローの材料となろう。ただし、日銀は戦力の随時投入は行わないとしていることで、短観による金融政策への影響はないと予想される。このため、短観に対しての市場の関心はさほど高くはならないと予想される。

 12月16日には国債投資家懇談会(10時半~)、国債市場特別参加者会合(15時半~)が開催される。18日には国の債務管理のあり方に関する懇談会(15時~)が開催される。これらの会合の中心テーマは、来年度の国債発行計画に関してのものと思われる。

 新規国債(建設国債と赤字国債)については、税収の上振れ予想もあり今年度を下回るとの報道もすでに出ている。借換債は今年度より8兆円上回り、財投債も償還分の乗換もあり、増加される見込み。ただし、年金特例国債はないとなればその分、今年度よりも消化余力が出る。今年度の補正における国債増発は回避されるため、約5兆円程度が今年度に比べて消化余力となる。さらに今年度の前倒債が限度額一杯(20兆円)発行されるとなれば、そこから必要に応じた調整が可能となる。

 すでに物価連動国債は、GPIFが新年度から年間4000億円超の物価連動国債を購入すると伝えられるなど、ニーズもあり増額が予想される。個人向けは12月から10年変動、5年固定が毎月発行となることもあり、特に10年変動へのニーズも高まりつつあるため、予定発行額は増加されよう。市場参加者からは30年国債の需要を背景に増額余力があるとの意見も出ている。来年度の国債発行計画の概要については、前回よりもはっきりと見えてくることも予想されるが、年限別の減額等はなく、ニーズがある年限を主体とした増額にとどまるのではないかとみている。

 17日、18日には注目のFOMCが開催される。10月、11月の米雇用統計を確認し、さらに他の経済指標も好調なものも多い。米国の財政問題も解決される見込みが出ており、テーパリング開始が決定される条件は整いつつある。バーナンキ議長の任期中、ただし、メンバーの入れ替えもある1月よりも、今回の会合でテーパリングの道筋をつけてくる可能性は高いと思う。ただし、これは市場もかなり織り込みつつあり、仮にテーパリング開始が決定されたとしても、噂で売って現実で買い戻す、といった相場展開になるのではなかろうか。

 19日、20日の日銀の金融政策決定会合は現状維持が見込まれるが、ここにきて執行部とやや意見を異にする審議委員が出てきており、あらたな議案が提示される可能性もありうるか。いずれにしても日銀の決定会合そのものへの注目度は低い。追加緩和が決定されるような状況ではないため、無理な期待は禁物か。

 これらを受けての相場動向を読むのも難しいが、FRBのテーパリング開始が決定されたとしても、それだけ経済環境が改善してきているという証拠となる。ただし、FRBと日銀の金融緩和における温度差もはっきりし、円は売られやすい地合が続くと予想される。米債はここにきて再び調整色を強めているが、米長期金利が3%を大きく超えてくることも考えづらい。

 円債はこの米債や株の動向、さらには来年度の国債発行計画を睨みながら、引き続き高値圏での方向感に乏しい動きとなることが予想される。高値警戒はあるものの、売り手も限られ、決め手となる売り材料も見えない。日銀の大胆な国債買入は続いている。日本の債券市場を取り巻く好環境は、とりあえず続くものと予想される。

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by nihonkokusai | 2013-12-15 09:55 | 債券市場 | Comments(0)

テーパリング開始の障壁のひとつがなくなる

 米国の民主・共和党の超党派委員会が12月10日に、2年間の予算の大枠で合意に至り、このまま上下両院が関連法案を可決すれば、政府機関の再閉鎖といった事態は回避されることになった。

 10月に米政府機関閉鎖を引き起こした財政問題を巡る騒動は、政府に来年2月7日まで国債発行を認めると同時に、閉鎖中の政府機関を再開するため1月15日までの2014会計年度(10月~翌年9月)暫定予算案が成立したことでいったん収まった。しかし、1月15日にこの暫定予算が失効してしまうため、新たな予算案が議会を通過しない限り、再び10月のような米政府機関の閉鎖の懸念があった。

 10月に2週間続いた政府機関の閉鎖については、米経済に大きな影響を与えるであろうとの見方も強かった。しかし、実際にはそれほどの影響は与えていなかった。これは10月、11月の米雇用統計等の経済指標を確認しても明らかである。それでも1月15日までに新たな予算案が通過できないとなれば、不透明要因となることも確かであり、FRBのテーパリング開始決定判断にも大きな影響を与える可能性があった。

 今回、「2年間」の予算の大枠を決めたのは中間選挙の影響も意識したものだとか。政府機関閉鎖に対する批判も強まっており、両院の超党派の合意は上下両院でも可決されると予想される。今度は来年2月7日までに債務上限を引き上げないと、米国債のデフォルト懸念が生じるが、野党・共和党もこれを人質にとった政策は世論の反発を受けかねず、こちらも事前に解決されるであろうと予想される。

 今回の合意により、FRBがテーパリングを決定する際の大きな障壁が、またひとつなくなることになる。米国の雇用も10月と11月の雇用統計を見る限り回復を見せており、こちらの障壁もなくなった。物価動向についてはゴールとはやや乖離してはいるが、これを持ってテーパリングに反対するメンバーは少ないであろう。それよりも米国経済が雇用を含めて回復基調となっているタイミングで、バーナンキ議長の任期中に実施しておきたいはずのテーパリング開始を決定してくる可能性が強まった。12月17日、18日のFOMCでテーパリングを決定したとしてもおかしくはない。

 そういえば12月23日にFRBは創設100周年を迎えるそうである。記念式典等が開かれるかどうかはわからないが、とにかく大きな節目となる。1月のFOMCはバーナンキ議長にとって最後の会合となる。さらに1月以降は連銀からのメンバーが入れ替わるとともに、理事についても入れ替わり等がある可能性がある。報道によると次期FRB副議長の最有力候補に今年6月までイスラエル銀行の総裁だったスタンレー・フィッシャー氏の名前が挙がっているそうである。このような人事の入れ替わりもあり、できれば今年中にテーパリングについては決着を付けたいところではなかろうかと思う。

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by nihonkokusai | 2013-12-13 09:42 | 中央銀行 | Comments(0)

GPIFに関する伊藤隆敏教授の発言

 公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政府の有識者会議で座長を務めた伊藤隆敏東京大学大学院教授は、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は運用資産の6割を占める国内債券の一部を直ちに売却し始めるべきだ」とブルームバーグのインタビューで述べたそうである。

 伊藤教授は「GPIFについては「国内債中心のポートフォリオ見直しが一つの大きなテーマだ」と指摘し、資産構成比率を規定する「基本ポートフォリオ」の乖離許容幅を利用して下限の52%まで減らすのが「すぐ取り組むべき課題だ」と主張した。

 伊藤教授は(保有する国債は)満期保有なので名目上は損失が生じないとしても、消費者物価や市場金利の上昇に見劣りする機会損失を被れば「受託者責任を果たしていない」ことになると三谷GPIF理事長に対してけん制した。平常時なら巨額の売却は国債市場の波乱要因となりかねないが、黒田東彦日銀総裁が「量的・質的金融緩和」を推進しているとし、「今なら大丈夫だ。市場もGPIFの売りを歓迎する。物価と予想インフレ率、市場金利が上がってからでは危険だ」と語ったそうである(ブルームバーグ)。

 この発言が伝わった12月6日の債券市場は大きく下落した。米雇用統計の発表前のポジション調整売りも入ったと思われるが、この伊藤教授のコメントが材料視されたことも確かである。

 国債の需給面では日銀の大規模な買入が存在している以上、現状では市場にはそれほど大きな影響を与えずに売却は可能なのかもしれない。4月以降、メガバンクは国債を売り越し、それは一時的な国債の乱高下の一因となったが、日銀以外にも買い手が存在していたこともあり、結果として相場が大きく崩れるようなことはなかった。

 「物価と予想インフレ率、市場金利が上がってからでは危険だ」との発言については、まったくもって意味不明である。それは国債保有者すべてが危険に晒されているかのような発言である。そもそも異次元緩和により、長期金利はほとんど上がっていない状況をどう説明するのか。需給面で日銀の国債買入が利回り上昇を抑えている面もあるが、市場参加者が物価の上昇やそれによる金利上昇を意識していない面も大きい。そもそも伊藤教授の相場勘が絶対に正しいとの保証もない。相場を読むことは非常に難しい。これは相場を少しでもかじればわかる。それを部外者(市場関係者外)といえる伊藤教授が適切な相場勘を持っているとも考えづらい。念のため確認しておくが長期金利、つまり国債価格については市場が決定している。

 「予算・人員・給与に関する制約が緩めば常勤の専門家の採用は「今すぐにも可能だ」と述べた。その後に法改正を進め、日銀のような自由度の高い特殊法人にすべきだと強調した。」

 巨額の資金を運用し、適切な相場勘を持ち、ある程度自由な運用で一定の収益をあげられるような腕の立つ専門家などはほとんど存在しない。しかも、その運用の大きな方向性は伊藤教授のような立場の人が決めてしまうと、むしろ運用の方向性は狭められてしまう。たとえそのような専門家が、ある程度の給与で仮に得られたとしても、適切な運用はできまい。

 また日銀のように自由度の高い特殊法人というが、こと金融政策に関しては安倍自民党総裁が日銀法改正をちらつかせ、息のかかった人物を総裁に据えることで、政府の意向を強く反映したものとなっている。このどこに自由度があるというのであろうか。

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by nihonkokusai | 2013-12-12 09:55 | 国債 | Comments(2)

米国の金融政策を決めるメンバー

 米国の金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーは、理事会からの7名の理事全員と地区連銀から5名の連銀総裁の12名によって構成される。地区連銀についてはニューヨーク連銀総裁は常に参加するが、他の11の連銀についてはそのうち4名が参加することで、毎年投票権を持つメンバーが入れ替わる仕組みになっている。

 2013年12月現在の理事会からのメンバーは、バーナンキ議長、イエレン副議長、タルーロ理事、ラスキン理事、パウエル理事、ステイン理事と定員7名のうち1名が欠員となり、6名で構成されている。

 イエレン副総裁は元サンフランシスコ地区連銀総裁でエコノミスト。タルーロ理事はジョージタウン大学教授からクリントン政権時代には大統領補佐官を務めた。ラスキン理事の前職はメリーランド州金融規制局長、ニューヨーク連銀でも働いていた経歴を持つ。そして5月25日に就任したパウエル理事はブッシュ大統領の下で財務次官を務めており、スタイン理事はハーバード大学の経済学教授である。

 すでに来年1月末でバーナンキ議長の退任が決まっており、後任の議長にはイエレン副議長が就任する見込み。ラスキン理事はオバマ大統領が財務副長官に指名している。パウエル理事の任期も来年1月に終了するが、大統領が再指名するとみられている。それでも理事はいずれ定員7名のうち3名が欠員となる可能性がある。

 この理事のポストには、11月8日に退任したブレイナード財務次官(国際問題担当)が指名されるのではないかとの見方もあるが、まだはっきりしていない。イエレン氏の後任となる副議長に関してもいまのところ、誰が就任するのかも未定である。

 FOMCで投票権を持つ地区連銀総裁は、2013年がセントルイス、シカゴ、カンザスシティ、ボストンの各総裁となっていたが、2014年はクリーブランド連銀のピアナルト総裁、フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁、ダラス連銀のフィッシャー総裁、ミネアポリスのコチャラコタ連銀総裁に代わる。

 12月8日にダラス連銀のフィッシャー総裁は次回の12月17日、18日の会合で緩和縮小を決定すべきとの見方を示したが、セントルイス連銀のブラード総裁も次回会合で小規模な緩和縮小を行う可能性があるとの見方を示唆していた。

 バーナンキ議長の退任後は、イエレン新議長を中心に金融政策の舵取りを行う予定ではあるが、残りの理事の後任もまだ不確定であり、イエレン体制をまとめ上げるにも時間がかかる可能性もある。バーナンキ議長としては自らの任期中に、テーパリングの道筋を付けたいとの意向もあるとみられ、それはイエレン氏も意識していると思われる。テーパリング開始に向けて、すでに雇用等の条件は整いつつある。市場も過剰な反応を示さなくなり、可能性は薄いとしながらも12月FOMCでのテーパリング決定も織り込みつつある。あとは財政協議の行方次第の面もあるが、タイミングとしては今月決定してしまった方が良いと思うが、少なくとも1月のFOMCまでに決定される可能性は高くなってきたと思われる。

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テーパリングを決定する条件は整いつつある

 米労働省が12月6日に発表した11月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月から20.3万人増加し、市場予想の18万人増を上回った。失業率も7.0%に低下し、2008年11月以来5年ぶりの低水準となった。

 10月の雇用統計でもある程度確認できたが、10月の米政府機関閉鎖に伴う影響は極めて限定的であり、雇用は予想以上に改善してきている。市場では20万人規模の雇用者数、7%程度への失業率の低下がFRBのテーパリングのひとつの条件と読んでいたかと思う。そのハードルは意外と高く、12月のFOMCでのテーパリング開始の可能性は極めて低いとの見方が大勢であった。しかし、11月の雇用統計の数字を確認したことで12月17日、18日のFOMCでテーパリング開始決定の可能性は五分五分との見方も出てきたようである。個人的には12月の可能性はかなり高いものと考えている。

 ここにきて発表される米国の経済指標も総じて景気回復を示すものが多くなっている。それを端的に示しているのが株価のように思われる。先週は雇用統計を前にポジション調整が入り、下落したものの6日の米国株式市場はテーパリング開始はある程度織り込み、むしろ景気回復が意識されて大きく買い戻されていた。

 テーパリングとはFRBが行っている米国債やMBSの買入額の縮小を示す。QEと呼ばれる、このFRBの量的緩和は何故、実施されたのか。これは米国の景気対策が主目的ではなかった。リーマン・ショックを引き起こしたサブプライム・ショックから始まり、それが収まりかけたところにギリシャ・ショックが起きてしまった。すでに財政政策には限界があり、そもそも欧州の信用不安は財政問題が主因であった。このため日米欧の中央銀行による金融政策への依存度が高まり、その結果、伝統的な金利を操作するものに加え、非伝統的な金融政策、つまり量的緩和や信用緩和と呼ばれる政策が打ち出されたのである。

 その危機はすでに過去のものとなりつつある。欧州の信用不安はかなり後退しているとみて間違いはない。格付け会社ムーディーズは11月29日に、ギリシャ国債の格付けを「C」から「Caa3」に引き上げた。格上げの理由として、財政再建の著しい進展や中期成長見通しの改善に加え、政府の金利負担が大幅低下した点を挙げた。29日にS&Pは、債務返済に関する差し迫ったリスクは後退したとして、キプロスの長期ソブリン格付けを「CCCプラス」から「Bマイナス」に引き上げた。S&Pはスペインの格付けに対して見通しを「ネガティブ」から「安定的」に変更した。 しかし、これらがニュースにもならないほど、欧州の信用不安はマーケットには材料視されなくなった。

 世界的な金融危機がFRBの量的緩和導入の主要因ではあったが、そこから脱する条件として、FRBは雇用の回復等を指摘してしまった。物価と雇用の安定がそもそもの目的である以上はしかたがないが、その条件もタイミング良く満たされつつある。景気や雇用の回復についてはまだまだ疑心暗鬼との見方もあるであろうし、物価も上昇する兆しはない。しかし、それについては伝統的手段でフォローすれば良く、つまり現在の実質ゼロ金利政策を必要とされる期間まで継続させれば良い。そのためFRBはフォワード・ガイダンスを取り入れている。

 テーパリングの開始は新興市場にも影響を与えるとの見方もある意味正しいが、そのような政策に依存してしまったマーケットにも問題があろう。ただし、これについては9月あたりのテーパリング開始観測である程度は織り込まれつつあり、新興国のマーケットを含め、金融市場への影響についてはそれほど大きなものとはならないであろう。これは米国債券市場も同様か。実質的なゼロ金利政策が維持される以上、米長期金利が3%を大きく超えて上昇することも考えづらい。

 バーナンキ議長が任期中の12月か来年1月のFOMCにおいてテーパリングを決定する条件は整いつつある。政府の財政協議の行方も不透明要因だが、これも問題がなくなれば12月17日、18日のFOMCでテーパリング決定の可能性はありうる。非伝統的手段から伝統的手段に舵を取るということは、今後の「もしも」の際に備えた市場への切り札をひとつ温存できることにも繋がる。

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by nihonkokusai | 2013-12-10 09:35 | 中央銀行 | Comments(0)

ビットコインはマネーなのか

 グリーンスパン前FRB議長は、1年で89倍に値上がりした仮想通貨「ビットコイン」について、取引価格は持続できないほどの高水準にあり、通貨ではないとの見解を示した。さらに「ビットコインの本質的価値が何かを推測するため想像力を本当に膨らませなければならない。それを他の人はできるかもしれないが、私はできない」と断言した。

 ビットコイン(Bitcoin)とは中本哲史(Satoshi Nakamoto)と名乗る人物が基本的な概念を生み出した仮想通貨である。ビットコインは、円やドル、ユーロなどのように発行権限を有しその価値を担保する中央政府の存在はない。つまりその信用力の背景に、政府や中央銀行、現物資産があるわけではない。

 ビットコインはminerとよばれるビットコイン採掘管理ソフトの存在があり、これにより流通量が自動調整され埋蔵量にも限界が設定されている。この考え方の背景にあるのが、昔の金本位制であると考えられる。ビットコインの価値は需要と供給の関係によって決定されるのも金市場と同様である。ただし、このビットコインは、やや得体の知れないシステムそのものへの信用を背景になり立っている取引のようである。

 ビットコインは銀行などを介さないので決済手数料が非常に安く、P2Pで取引でき、獲得したビットコインはデジタルウォレットに貯蓄できる。ユーロ危機などを背景に、ビットコインは規制を受けない世界的な通貨という評判が高まり、11月27日に1ビットコインが1000ドルの大台に乗るなど、その価格が急上昇したことも話題になった。

 果たしてビットコインはマネーなのか。発行体の信用力の裏付けもなく、通常の商取引で用いることもできない。当然ながら銀行に預けることもできない。ダークな世界でのまさに闇取引のような存在ともいえる。

 現在の管理通貨制度では、円やドルには金本位制時のように、その価値を裏付ける物的保証は存在しない。その意味では、貨幣価値に裏付けのないビットコインと何ら変わりはないものとの見方があるが、それは違う。日銀券は法律に基づいて、国や中央銀行が責任を持って発行している上、完全な流動性が法律上認められているものである。つまり国がその信用を保証している。ところが、ビットコインは法的に認められたものではない上、何かしらの機関の信用力がバックにあるわけではない。仮想通貨のひとつに、たとえば買い物等につくポイントがあるが、これはその発行体の信用力が背景にある。

 ビットコインについては考え方は非常に面白いが、手を出すべきものではないと思われる。ただし、ネット環境がさらに整って行けば、何らかの信用力に基づいた国や中央銀行ではないところが発行したものが、仮想通貨として認識されて使用されることもないとは言えない。それが世界の統一通貨を生み出す要因になったりすればまさにSFの世界ではある。しかし、税金や決済等々のことを考慮すると、そのようなものが出てくるのはかなり困難を極めると予想される。

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by nihonkokusai | 2013-12-09 09:35 | 金融 | Comments(1)

ECBは立ち止まって様子見のタイミングか

 12月6日の日経電子版の清水功哉編集委員の記事「ECB緩和「予告」した黒田総裁 QQE2もサプライズ型に?」は次のような書き出しで始まっていた。

 『「私は欧州中央銀行(ECB)が今回動くような気がしますが……」。市場を驚かせた11月7日のECBによる利下げの前に、そんな言葉を発していた人物が日銀内にいた。誰か? 実は黒田東彦総裁だったというのが関係者の話だ。』

 「兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久なるを睹ざるなり」との孫子の言葉があるが、金融政策において、特に緩和についてはサプライズ効果も意識して行う方が効果的である。黒田日銀総裁も、日銀プロパーではない黒田氏が総裁就任から短期間で追加緩和策をまとめ上げ、他の委員の同意を得るのは難しいとの市場の見方を覆し、3月20日の就任から2週間程度で異次元緩和策を決定した。これはサプライズ効果も多分に意識したものとみられる。11月7日のECB理事会で決定した追加緩和もタイミングとしては面白いと黒田総裁は意識していたのではなかろうか。

 私の個人的な見方としては、ECBは残り少ないカードを使うタイミングを計っていたと思う。それが11月の追加緩和となった。ただし、できればそれで打ち止めとしたいとの意向もあったのではなかろうか。

 11月のサプライズ緩和により、市場ではマイナス金利を含めた追加緩和への期待も出ていた。しかし、12月5日のドラギ総裁の会見内容などから見て、早期の追加緩和に対して過剰な期待は抱かないほうが良いのではないかと思われる。

 12月5日のECB政策理事会後の記者会見で、ドラギ総裁はECBにはユーロ圏経済を支えるために新たな政策措置を導入する用意があると述べたものの、どの政策措置を利用するかについては具体的に決めていないと発言した(ロイター)。

 一部の市場参加者が期待している追加長期流動性供給オペ(LTRO)についても、供給される資金が景気支援に使われると確信できるまで実施しないとの考えを示した。さらに、この日の理事会では特定の政策措置に関する討議は行われなかったものの、銀行の融資拡大を促すため、預金金利をマイナスに引き下げる案について「簡単に議論」したことを明らかにした。マイナス金利については毎回、簡単な議論は行われていると思うが、ある意味、非常時の対策ともなるマイナス金利やLTROを実施しなければならないほどの危機的状況にはない点にも注意すべきである。

 今回のECBの金融政策の据え置きについては、11月のユーロ圏消費者物価指数速報値が前年比0.9%上昇と10月の0.7%の上昇から伸びが加速し、10月のユーロ圏失業率が低下したことで市場では金利据え置くとの見方が多かった。ただし、金融政策は足下の経済指標で毎度のように変更するようなものではない。もちろん、リーマン・ショックや欧州の信用不安のような金融危機時に、何かの要因で金融市場が動揺を示したような場合には、市場安定の目的で金融政策を変更せざるを得ないような場面もあった。それはあくまで非常時の対応であり、現在の市場をみても危機的状況からはすでに脱しており、金融政策も平時の対応に戻りつつある。

 12月のECB理事会では、追加緩和の要請は誰一人として提案が無かったそうである。今後の追加緩和については含みを持たせており、可能性がないとは言えない。もしかするとあらたなドラギ・マジックを見せるかもしれない。しかし、すでに1年前とは金融政策を取り巻く環境は大きく変化している。FRBもテーパリング開始のタイミングを伺っている。イングランド銀行も軸足を出口に向け始めた。欧州はまだかなり問題を抱えているのも事実であり、出口に向けての方向転換は時期尚早ではあろうが、そろそろ立ち止まって様子をみるタイミングに入っているのではないかと思われるのである。

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by nihonkokusai | 2013-12-08 09:02 | Comments(0)
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