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ドル円100円突破すると債券先物を売る人

 11月15日の日本の債券市場は久しぶりに動きを見せた。引け際まで債券先物(長期国債先物の中心限月)は145円近辺、10年債の利回りは0.6%近辺での膠着相場となっていた。ところが債券先物は14時50分あたりからそこそこまとまった売りが入り、144円90銭近辺から144円65銭まで下落したのである。この日の大引けは36銭安の144円66銭。現物債をみると10年債主体に売りが入ったように思われる。10年債だけでなく超長期債も大きく下落し、中期ゾーンにも売りが入った。

 債券先物の15日の高値と安値の差は38銭、前日比は36銭と債券先物の値動きとして、それほど大きいものではない。しかし、ここにきてあまりに膠着感が強く、一日あたりの値幅、前日比ともに小幅なものとなっていたことで、15日の債券先物の動きは目立った。

 今回の債券先物の動きは一時的なものなのか。それともトレンドが変化する兆しであるのか。そもそも何故、15日に売ってきたのか。債券市場では手口が公開されておらず、どこが何をどのくらい売ってきたのかはわからない。しかし、動きそのものからはある程度の推測も可能となる。

 今回の債券の下落は当然の如く起きたとみる向きも多かったのではなかろうか。相場の動きを見て11月6日あたりから地合が変わりつつあると感じていた。相場はこのまま崩れるかとみていたが、反対に戻りを試す展開となった。7日のECBの電撃利下げ、8日に発表された米10月の雇用統計、さらにイエレン氏の議会証言等とそれによる米債の動向にも影響されたが、結果として先物は145円を挟んでの動きとなっていた。

 ところが15日に債券先物は崩れた。この背景のひとつにドル円が100円台をつけたことがあると考えられる。それにより日経平均も15000円台に乗せたが、日経平均の水準よりも、ドル円の水準に注意したい。これはアベノミクスをきっかけとした円高修正が進んで、今年5月にドル円が100円を突破した際の動きに似ていたためである。

 日本時間5月10日の午前3時前に2009年4月以来となる100円台へ突入した。この円安を受けて東京株式市場は反発し、日経平均は2008年6月6日以来の14500円を回復。5月10日の債券先物は売りが先行し、144円45銭で寄り付いた。東京時間でさらに円安が進行しドル円は一時101円台に。後場に入り債券先物はサーキットブレーカーが発動し、中心限月の6月限は前日比1円安の143円72銭まで売られた。現物は10年債のカレントに売りが入り、2月25日以来の0.7%台乗せとなった。中期債や超長期債も先物の下落が意識されて売られたが、この日の売りは債券先物と10年債主導の売りとなっていた。

 仕掛ける時間帯は異なっており、さらに5月はサーキットブレーカーが発動するなど派手な動きとなっており、このあたり違いはあるものの、債券先物と10年債主導の売りとなった点に共通項がある。翌日の5月11日も債券先物はサーキットブレーカーが発動するなど、下落は続き、5月15日に10年債利回りは0.920%に上昇した、しかし、この日の日銀のシグナルオペで買い戻しが入り相場は反発した。

 このようにドル円の100円台乗せが、15日の債券相場のひとつのきっかけとなった可能性がある。仕掛けていたのは海外投資家の可能性が高いように思われる。ただし、今年に入ってのドル円の100円台回復は7月にもあった。5月のバーナンキ議長によるテーパリング発言で、ドル円は再び100円を割り込むが、その後ジリジリと切り返し7月3日に100円台を回復していた。この日の債券先物は一時11銭安の142円18銭まで下落し、現物10年債利回りは一時0.900%と6月12日以来の0.9%台乗せとなったが、当日中に切り返している。仕掛けはなかったとはいえないが、すぐに押し目買いが入っていた。さらに9月6日にもドル円が100円台をつけ、10年債利回りは0.790%に上昇したが、この時の先物の売りは限定的であった。

 今回の債券先物の下落も一時的なものとなる可能性がある。ただし、膠着相場が長く続いていたあとだけに、それなりにボラタイルな動きをみせるかもしれない。今後の債券相場の動きを見る上でも、ドル円の動きにも注意しておく必要がある。



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by nihonkokusai | 2013-11-19 09:44 | 債券市場 | Comments(0)

アベノミクスがスタートして1年

 アベノミクスがスタートしたのは、衆院解散が正式に表明された2012年11月14日とされている。当時の野田首相は11月14日に国会で行われた党首討論で安倍晋三自民党総裁に対し、当国会中の議員定数削減法案可決に協力することを確約し、16日に衆議院解散を行うと明言した。解散が正式に表明されたことで、安倍首相誕生への期待から円安・株高の動きが強まる。この急激な円高調整とそれによる株式市場の上昇は、新たな政権による金融経済対策への期待が背景にあり、その新たな金融経済政策がいつしかアベノミクスと呼ばれるようになった。(拙著「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」より)

 アベノミクスはどのようにして生まれたのかを覚えているであろうか。11月16日の衆院解散の翌11月17日における熊本での街頭演説において安倍自民党総裁は、衆院選後に政権を獲得した場合、金融緩和を強化するための日銀法改正を検討する考えを重ねて表明した上に、建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう、新しいマネーが強制的に市場に出ていくと述べた。さらに同日の山口市での講演では、安倍総裁は、輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう、と発言したのである。

 政府と日本銀行が政策協調してデフレ脱却をして円高を是正し、経済を成長させていく新しい成長戦略を前に推し進めて行かなければいけません、との発言もあったが、要するにデフレの原因は金融政策にあるとして、その対策をまず日銀に押しつけたのである。衆院が解散されたとなれば、民主党への支持率の低下により、安倍自民党総裁が次期首相となる可能性が極めて高くなる。そのタイミングで安倍氏から、財政ファイナンスを意識させるような発言が飛びだした。

 これを受けて急速な円高調整が始まり、その円安が株高を招き、スパイラル的な円安株高を演出した。そこにはジョージ・ソロスなど有力ヘッジファンドがかなりの金額による円売り日本株買いを仕掛けたことも影響した。この円安株高がいわゆるアベノミクスという言葉を生み出した。のちに安倍首相はあらたな金融経済政策について「三本の矢」という表現を使った。一本目の矢は日銀が大胆な金融緩和をする。二本目は、政府が財政政策で実需を生み出す。三本目は、TPPや大胆な規制改革などを含む成長戦略で、成長を持続的な軌道に乗せることである。しかし、財政政策も補正予算を主体とした公共投資の一時的な拡大に過ぎず、成長戦略もTPPはさておき、特に目新しいものではない。アベノミクスとは、結局、第一の柱である金融政策に負うところが大きい。

 日銀法は結局、改正されなかったが、これは日銀総裁・副総裁人事でアベノミクスを実現してくれるであろう自分を選んだことによる。黒田総裁は安倍首相の意思をほぼ100%反映した異次元緩和策を就任からさほど時をおかず、4月4日の最初の金融政策決定会合で決定したのである。

 問題はこの異次元緩和策がどのような効果があり、どのような副作用をもたらすのかという点にある。効果といっても、円安の動きはそれまでにいったんピークアウトし、日銀の大胆な緩和があらためて円安を演出したようには見えない。株式市場も同様ではあったが、米国の株式市場が過去最高値を更新するなどしたことで、底堅い動きとなった。しかし、実は円安も日本の株高もアベノミクスや日銀の異次元緩和が要因かといえばそうではない。ヘッジファンドの仕掛けのきっかけ等にはなったが、その背景には円が売られやすく、株が買われやすい環境にあったためである。それは言うまでもなく欧州の信用リスクの後退があった。

 日銀の異次元緩和はリフレ政策ともいえる。2年間で物価目標2%を達成するとしたが、そのために行ったのは年間発行額の7割も国債を買い入れるという手段である。果たしてゼロ金利という状況のなかで、大胆に国債を買い入れてどのようにして物価に働きかけるのか。その説明が皆目ほからない。期待や気合いでなんとかしようとしているらしいが、そんなもので物価が上がるとは到底思えない。しかし、日銀が異常に国債を買い入れていると言う事実は残る。これが財政ファイナンスではないと言っても、状況が変わればそのように写る懸念もある。だから黒田総裁は消費増税を予定通り行うことを要求していた。しかし、消費増税だけではなく、このままリフレ的な政策が続けばいずれ財政規律に対して懸念が強まることも予想される。それを見越してか、長期国債先物の海外投資家の売買シェアが5割を超えてきている。

 アベノミクスが1年経過した。国債への信用は何とか維持され、長期金利は0.6%近辺と低位で維持されている。この金利が低位で維持されていることこそ、物価は上がらないと市場参加者が予想していることを示している。しかし、物価が上がらずとも日本国の信用低下でも、長期金利は上昇する。また、リフレ派の言うとおりに仮に物価が本当に2%に向けて上昇してくれば、長期金利も上昇する。現在の長期金利の低位安定は結果としてそうなってはいるが、そうしようとしているわけではない。この妙な均衡が崩れるとアベノミクスのリスクが一気に顕在化しうる。



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by nihonkokusai | 2013-11-17 11:54 | Comments(0)

欧州危機は去った

 女性として初めてドイツ政府経済諮問委員会(五賢人委員会)のメンバーとなった、マインツ大学のビアトリス・ウェーダー・ディ・マウロ教授は、ニューヨーク大学教授のヌリエル・ルービニ氏と賭けをして、その結果、マウロ教授が勝ったそうである(ブルームバーグ11月15日の記事より)。

 その賭けの内容とは、2012年1月にギリシャがユーロ圏を同年に離脱するかどうかを賭け、勝った方はシャンパンをもらうというもとか。国際会議に頻繁に参加するルービニ氏とマウロ氏は顔を合わせるたびに「シャンパン!」と言い合うそうである。

 ドイツの五賢人委メンバーは政府にユーロ圏危機への対応法を助言していたそうで、賭けに勝ったのはマウロ教授だけではなく、ドイツ政府を中心としたユーロ加盟国の首脳達達ということになりそうである。どうやらシャンパンを空ける時が来た。

 アイルランドは14日、欧州連合(EU)から2010年末以降受けてきた金融支援を12月半ばに終えると発表した(日経新聞11月15日朝刊)。支援の条件として国際社会に約束していた財政再建を着実に進め、自力で市場から資金を調達していく目途がついたためである。金融危機後にユーロ圏で支援を受けた国のなかで、アイルランドが初めて脱却を果たすことになり、ユーロの債務危機はひとつの節目を迎えた。アイルランドの10年債利回りは2010年秋に7%を上回り、2011年夏には一時15%にまで達していたが、足元では3%台半ばで安定している(日経新聞11月15日朝刊より)。

 個人的にはユーロ危機は2012年の7月あたりで最悪期を脱したものと見ている。これは為替市場におけるユーロの動きや、イタリア国債の利回りのチャートなどをみても明らかである。ただし、これはECBの積極的な金融政策などをきっかけに、あくまで市場のマインドが変化したものであり、具体的に何かしらそれを示唆するような出来事があったわけではない。今回のアイルランドが金融支援脱却の発表は、それを示す象徴的な出来事と言えよう。

 もちろん危機が完全に過ぎ去ったというわけではない。ポルトガルも順調に行けば来年にも支援を終えると期待されているが、肝心の危機発生元となっているギリシャについては難航しており、追加支援が必要との見方もある。ユーロ危機が完全に去ったとみるには、ギリシャに対する支援が終了する必要がある。

 ただし、ユーロ危機はあくまで市場が招いたものである。ギリシャ危機はギリシャ国債への信認失墜が大きな要因であり、それが格下げ等により、まさに売り浴びせといった状況となり、国債価格の急落が危機を招いた。その国債価格がEUの支援やECBの金融政策等により沈静化し、国債利回りの急激な上昇は収まり、危機前の水準に戻りつつある。不安は完全に払拭されたわけではない。しかし、そろそろシャンパンを空けても問題はないのではなかろうか。欧州の危機は去った。あとはその危機対応の後片付けが待っている。



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by nihonkokusai | 2013-11-16 11:15 | 国債 | Comments(2)

日米欧の金融政策の行方はまちまちに

 注目されたイエレン副議長の次期FRB議長就任に向けた承認公聴会だが、その公聴会を前に証言テキスト(草稿)が事前に配布され、FRBのサイトにもアップされた。このなかで、イエレン氏は失業率はピークの10%からダウンはしているが、10月に7.3%とまだ高く、それは経済や労働市場が潜在的水準をかなり下回る状況だとの見方を示した。同時に、インフレ率は2%というFRBの目標(ゴール)を下回り、当面はその水準で推移する見通しを示した。

 市場のコンセンサスとしては、FRBのテーパリングの開始決定は来年3月以降との見方が依然として強く、このイエレン副議長の証言内容もその見方を強めるものとなりそうである。ただし、バーナンキ議長としてはできれば任期中に出口への道筋をつけておきたいとの気持ちに変わりはなかろう。イエレン氏の発言では、資産購入プログラムの縮小時期については具体的な言及は避けていた。バーナンキ議長の任期中での、テーパリング決定の可能性は残っていると思うが、それには財政協議の行方とともに、発表される雇用などの経済指標をひとつひとつ見極めて行く必要がありそうである。

 13日にはイングランド銀行のインフレレポートも発表され、イングランド銀行のカーニー総裁は、必要なら2015年の選挙前に金利を引き上げる用意があると言明した。英国の景気は予想以上に速いペースで回復しており、雇用も回復している。イングランド銀行は量的緩和策も実行し、その枠は3750億ポンドまで拡大されたが、現在はそれを使い切っており、その枠を維持している段階にある。どうやらイングランド銀行は出口に向けての姿勢を取りつつあり、利上げはまだかなり先ではあるとはいえ、向きそのものは変えてきつつある。量的緩和策をどうするのかについても興味深い。

 13日にはプラートECB専務理事がWSJとのインタビューで、インフレ率をECBの目標に近づけるために必要であれば資産買い入れや、中銀預金金利のマイナスへの引き下げなどの措置を講じることが可能との見解を示した。ECBは11月7日の理事会で利下げを決定したように、まだ出口に向けて方向転換出来る状況にはなさそうである。7~9月期のユーロ圏域内GDP速報値の伸びも鈍化した。しかし、危機は去った以上、ここからさらに非伝統的手段を講じるような状況にもない。このあたり今後のECBの金融政策の舵取りを困難にさせる可能性もある。

 日銀は舵そのものを取ってしまっている。目標に向かって突っ走るのみ、という状況にあるが、その目標達成への道筋がはっきりしていない。欧米の金融政策を取り巻く環境は、かなり変化してきている。金融政策はある程度、風を読みながらの行動が求められる。しかし、日銀の現在の金融政策はこのような風の変化に応じての変更を困難にさせている。中途半端な緩和も、当然ながら引き締めも難しい。とにかくバズーカを撃って、あとはその結果を見守り続けるしかない。問題はそのバズーカが本当に効果があるのかという点であり、やってみないとわからない、結論は2年後という政策も、ある意味危険な賭のように思える。



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by nihonkokusai | 2013-11-15 09:33 | 中央銀行 | Comments(0)

インフレレポート受けてBOEの利上げ観測

 8月7日のイングランド銀行のインフレレポート公表の際に初めての記者会見に臨んだカーニー総裁は、高止まりしている失業率が7%になるまでは、過去最低の水準である年0.5%の政策金利を維持する方針を示した。イングランド銀行は失業率の見通しについて2016年の後半まで7%を上回ると予想していることから、この予想通りとなれば今回の方針は3年後まで現在の低金利政策を維持することを示唆した格好となる。つまりこれがフォワード・ガイダンス(時間軸政策)の具体的な数値目標となった。

 イングランド銀行は四半期毎(2月、5月、8月、11月に)にインフレレポートを発表している。インフレレポート(Bank of England inflation report)はインフレと言ってはいるが、物価の状況だけでなく、景気見通しや金利動向など、中央銀行としての金融政策に関連する経済見通しを公表している。

 8月のインフレレポートの発表と同時に、フォワードガイダンスを導入したが、それ以降の英国の経済指標をみると、英国の景気は予想以上に速いペースで回復している。このため市場では、予想よりも早い時期に利上げに踏み切るのではないかとの観測が高まっていた。10月25日に発表された英国の7~9月期GDP速報値は前期比0.8%増加した。これはイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)メンバーが示した0.5%という見通しを上回った。さらに同時期の失業率は7.7%とこちらもMPCの見通しの7.9%を下回っている。しかも長年にわたり英国経済を悩ませてきたインフレ率も、予想よりわずかながら速いペースで低下している。(ロイターの記事を参照)

 カーニー総裁は「回復の勢いが鮮明になるまでの間は、金融政策を引き締めるつもりはない」とコメントしており、いまのところは出口を模索するような状況にはない。しかし、13日に発表されたインフレレポートでは、利上げ検討時期の前倒しを示唆し、見通しを良い方向で修正される可能性があることが示唆された。13日のロンドン株式市場では、利上げ時期が予想よりも早まる可能性もあるとの観測が広がり、ロンドン株式市場は大幅下落となった。

 英国の10年債利回りは9月5日に約2年ぶりの3%台をつけていた。米10年債利回りも3%台をつけており、米債の下落の影響を受けた格好となる。その後、英国の10年債利回りは2.5%台まで低下したが、ここにきて再び上昇基調となり、2.8%台をつけた。今回もFRBのテーパリング早期開始観測等が影響しているとみられるが、国内要因にも影響を受けていることが考えられる。インフレレポートの内容次第では、英国の10年債利回りが上昇してくる可能性はあったが、13日の英国の10年債利回りは2.85%近辺まで上昇したものの、ほぼ変わらずの2.80%となっていた。

 ECBは7日の政策委員会で電撃利下げを決定し、それに対して8日に発表された10月の米雇用統計を受けてバーナンキ議長の任期中のテーパリング開始予想が再浮上した。これについては、イエレン副議長の次期FRB議長就任に向けた承認公聴会の内容も確認したい。そこに今回、イングランド銀行の発表するインフレレポートを受けてイングランド銀行の利上げ観測が浮上してきた。



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by nihonkokusai | 2013-11-14 09:52 | 中央銀行 | Comments(0)

アベノミクスでも国債が動かない理由

 10月の米雇用統計を受けて、バーナンキ議長の任期期間中のテーパリング開始決定の可能性が再浮上した。米10年債利回りは12日の東京時間で2.77%あたりまで上昇している。これに対して日本の長期金利は0.6%近辺にあり、予想以上に低位安定している。ちなみに通常長期金利と呼ばれているものは、直近に入札された10年物国債の利回り(所有期間利回り)のことを指す。

 国債の価格と利回りは反対の動きをする。たとえば10年物で毎年利子が10%もらえる国債を100円で買ったとする。その国債の金利が5%になってしまったら、どうするか。もちろん10%の国債を持っている人はラッキーとなるが、国債は有価証券であり、市場価格が存在する。つまり毎年10%の利子がもらえる国債は値上がりする。その価格が買ったときの100円から150円ぐらいになる。それは何故か。国債は100円で償還される。つまり150円で買った国債は償還時に100円になってしまうので、50円損をする。その損失を1年あたりに直すと5円となる。つまり毎年利子が10円もらえるが、そこから5円の損失をマイナスすると残りは5円となる。つまり10%の利子の国債も、価格が100円から150円に上昇することで「金利」が5%となるのである(期間等の細かい計算はここでは除いている)。

 アベノミクスの最初の柱である日銀の量的・質的金融緩和、いわゆる異次元緩和により、日銀は年間の国債発行額の7割も購入することになった。異次元緩和の目的は消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年比を2%に引き上げようとするものである。そのために国債を大量に買うことになった。どうして国債を大量に買えば物価が上がるのか。残念ながら私はその説明はできない。日銀もいろいろと説明はするが、良くわからない。その経路はさておき、とにかく日銀は国債を大量に購入していることは事実である。

 日本の国債残高は今更言うまでもなく巨額である。財務省が先日発表した国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(9月末現在)によると、普通国債で約728兆円、短期国債などを合わせた内国債(日本国債に外貨建てはない)で約840兆円ある。ただし、これを買い入れる資金は国内中心に存在しており、特に日銀が頑張って購入せずとも、当面は民間金融機関を中心に安定消化される見込みとなっていた。そこに日銀が無理矢理国債を大量に購入したために、国債が買われ、つまり長期金利が低下した面は確かにあるが、本当にそうであろうか。

 需給だけで国債価格が動くのかと言えばそうではない。FRBもせっせと毎月850億ドルも債券(国債とMBS)を購入し続けているが、米国の10年債利回りは1%台から3%台に跳ね上がり、その後2.5%近辺に低下して、また2.77%近辺に上昇している。この背景には米国のテーパリングの行方が大きな材料となっている。つまり市場参加者の予測、予想などにより長期金利、国債の価格は乱高下しうるのである。

 それに比べて日本の長期金利、つまり国債の価格はあまりに動かなすぎる。異次元緩和決定の翌日は一日で0.3%から0.6%台に動くようなこともあった。また5月に長期金利は1%まで上昇したが、7月あたりからじりじりと下がってきている。これはいったい何故なのか。

 日本国債への信用はとりあえず維持されていることもあろうが、その根本にはデフレからの脱却は無理、日銀の2年間の2%の物価目標など達成は不可能との認識が根底にあるかと思う。日銀は時間軸政策を放棄した格好ではあるが、国債市場では時間軸が強く意識されているかのようである。つまり日銀の異次元緩和でも物価の上昇はありえない、だから現在の超緩和策はずっと続くとの予想があってこその超低金利ということになる。

 アベノミクスが登場してまもなく1年が経過する。欧州の信用不安後退というタイミングで出てきたことによる急激な円高調整と、この円安と世界経済の回復を背景とした株高により、アベノミクスはうまく行っているかのような印象を受ける。しかし、この長期金利を見る限り目的は果たされてはいない。もし物価が上昇すると市場が予想していれば、それは当然、長期金利に働きかける。その長期金利の上昇を抑制するため、日銀がうまく買いオペを利用する、みたいなこともない。日銀は淡々とオペを打っているだけである。どうもこの長期金利の動向を見る限り、アベノミクスは決してうまく行っているとは思えないのである。

聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓

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by nihonkokusai | 2013-11-13 08:06 | アベノミクス | Comments(0)

米雇用統計受けてのテーパリングの行方

 ここにきてサブライズが続いている。11月7日のECB政策理事会での電撃利下げに続き、8日に発表された10月の米雇用統計で非農業雇用者数が予想の10~12万人増を大きく上回り、前月比20.4万人増となったのである。これにより年内最後の12月のFOMCでのテーパリング開始決定の可能性が再浮上した。

 8日に発表された10月の米雇用統計で失業率は7.3%と前月の7.2%から0.1%悪化したものの、非農業雇用者数は予想の10~12万人増を大きく上回り、前月比20.4万人増となった。9月の雇用者数も14.8万人増から16.3万人増に、8月も19.3万人増から23.8万人増に上方修正された。10月の増加には民間部門の増加が影響し、特にヘルスケアなどのサービス部門が17.7万人増と大きく寄与していた。

 政府機関の一部閉鎖が民間雇用にも影響を与えたとの見方も強かったが、米労働省は「政府機関閉鎖の影響は見られなかった」と述べたと伝えられた。たしかに20万人増という数字を見る限り、さほど影響はなかったように見える。

 ただし、米大統領経済諮問機関(CEA)のファーマン委員長は10先の雇用統計の発表を受けて「政府機関の閉鎖前は」と前置きした上で、「米経済は勢いは増していた」と指摘。同委員長は10月の雇用統計が実態を正確に反映していない可能性に言及し、政府機関閉鎖が景気回復の障害になったとの認識を示した(11月12日付け日経新聞朝刊)

 たしかに雇用統計についてはやや振れの大きな指標であり、12月6日に発表される11月の雇用統計の数字を確認する必要もある。7日に発表された米国の7~9月期GDPは、年率2.8%増と市場予想を上回ったが、予想からの上振れ分は在庫投資の伸びが影響したものであり、内需の柱である個人消費は減速していた。FRBは今後発表される米経済指標を確認しながらテーパリングの開始時期を見極めようとするのではなかろうか。ちなみに経済指標のひとつともいえる株価をみると、ここにきてダウ平均は過去最高値を更新している。

 さらに注意すべきは財政協議の行方である。米与野党の有力議員が2014年の歳出上限について早期に合意しようという動きもある。合意が可能となれば暫定予算の問題が解決され、12月でのテーパリング開始決定に向けての大きな支障がなくなる。この合意がなければテーパリング開始の決定はかなり困難となろう。

 FRBの動向については、FOMCメンバーの今後の発言等にも注意を払う必要がある。まず注目されそうなのが14日に予定されているイエレン氏のFRB議長人事承認をめぐる公聴会であろう。もちろんこの場でテーパリング開始時期についての具体的な言及はないと思われるが、政府機関閉鎖による影響を含めての景気などの認識は示されよう。いまのところまだ市場でのコンセンサス来年3月以降となっているようだが、イエレン氏の発言内容次第では12月もしくは1月にテーパリングを決定との市場での認識が強まることも予想される。

 果たしてバーナンキ議長は就任期間中に出口への道筋をつけることができるのか。意外にその可能性は高いのではないかと個人的には見ている。



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by nihonkokusai | 2013-11-12 08:13 | 中央銀行 | Comments(0)

債券先物の海外投資家のシェアが5割を超えた

 東京証券取引所が発表した9月の投資部門別売買状況(株券/CB/先物・オプション取引)によると、海外投資家の長期国債先物の売買高に占める割合が53.66%となり、月刊ベースでは過去最高を記録した。

 長期国債先物の売買シェアは、例えば2012年の通年でみると証券会社が42.41%、海外投資家が39.92%とこの2つの部門が4割程度ずつとほぼこの2つで8割を占め、残りのうち銀行が13.13%の割合となっていた。

 今年8月のシェアを見ても、証券会社44.79%、海外投資家40.71%、銀行13.51%と昨年通年の比率とほぼ同様となっていた。ところが9月に海外投資家がいきなり5割を超えて過去最高のシェアを記録していたのである。

 売買高をみても8月は夏休みを取る市場参加者が多かったこともあるが、証券は8月の38万7747枚から48万7476枚に、海外投資家は35万2461枚から82万1006枚とこちらは倍以上の伸びとなっていた。売買高からみると直近では6月に海外投資家は97万6319枚と9月を上回っていたが、この際のシェアは49.57%と5割は上回ってはいなかった。

 この海外投資家には、外資系金融機関の自己売買部門の取引も含まれるが、自己部門の売買高は昔に比べて大きく減少しているとみられ、その多くはヘッジファンドなどを主体とした委託取引かと思われる。

 国債残高に占める海外投資家の比率は、今年6月末時点ではわずか4.2%に過ぎない。しかし、このように長期国債先物の売買高に占める割合は全体の5割を超えてきている。国債の相場は最終的には現物の需給で決まると言われる。だからこそ海外投資家が日本の財政悪化を材料に先物などを使って売り仕掛けをしても相場は崩れず、オオカミ少年と呼ばれた。今回も懲りずにまた仕掛けてきたのかと言えば、どうもそうではなさそうである。9月のFOMCでテーパリング開始が見送られ、米債が買い戻されるような状況で、日本国債を売り仕掛けすることは考えづらい。

 9月の海外投資家による先物売買の増加については、証券や銀行などの部門の売買高が伸びなかったこともあろうが、海外投資家が日本国債への関心を引き続き強め、先物オプションなどとともに売買高を維持させていると考えられる。9月の長期国債先物オプションの売買シェアをみるとプットは約7割、コールは約6割のシェアとなっており、長期国債に締めるシェアをさらに上回っている。もちろん何かしらのヘッジ等に使っている可能性もある。

 原商品に対して先物やオプションなどのデリバティブ商品は、本体に対する尻尾に例えられる。本体が尻尾を動かすのが普通ではあるが、何かしら日本国債の信用低下に関わるような材料が出た際には、尾が本体を動かすことも考えられる。ここにきて国債残高をあらためて増加させてきていると言われるメガバンクではあるが、4月以降大きく残高を減少させていた。そして海外投資家が何かに備えるかのように先物のシェアを増加させている。この裏には日銀の異次元緩和、つまりリフレ政策によるリスクを意識している可能性もある。今回も懸念だけでオオカミ少年となるのであろうか。たしかにこのまま日本の国債市場が安定し続けるであろうという予想はあまりに楽観的すぎる。特に日銀が壮大な実験を行っている以上、そのリスクは強まってきていると見て必然であろうと思うし、それに備えるような動きの一環として、先物の海外シェアの増加とも言えるのではなかろうか。



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by nihonkokusai | 2013-11-11 09:45 | 債券市場 | Comments(0)

ECBの電撃利下げの理由

 「兵は拙速を聞く」、孫子の言葉である。これを実践したのが、11月7日のECB政策理事会でのドラギECB総裁であった。そういえば昨年4月4日の日銀の黒田総裁による異次元緩和の決定も同様であったか。

 11月7日のECB政策理事会では、主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利を0.25ポイント引き下げ、過去最低の0.25%とした(適用は13日から)。預金ファシリティー金利については現行の0.0%のままとしたが、今後はマイナス金利の可能性も出てきた。会見でも「技術的な用意は整っており、ECBが有する手段のひとつだ」とドラギ総裁はコメントしている。

 31日に発表された10月のユーロ圏消費者物価指数は前年同月比0.7%の上昇となった。予想は1.1%となっていたことで、この予想を大きく下回った。エネルギーコストが1.7%低下し、2009年11月以来の低水準となったことなどが背景にある。さらに9月の域内失業率は過去最悪の12.2%と発表された。ユーロ圏域内GDPは第2四半期にプラス成長となったものの、物価はECBのインフレ目標の2%を大きく下回り、雇用も悪化している。外為市場でのユーロの上昇もあり、ECBは「12月」の政策委員会で利下げを実施するとの見方が出ていた。

 これまでのECBの金融政策変更のパターンを意識すれば、11月の総裁会見で12月の利下げの可能性をほのめかし、市場にその意向を浸透させた上で、12月に決定との見方が多かったと思われる。ただし、一部に11月7日に利下げを決定するのではとの見方があったことも事実である。今回、ドラギ総裁は、バイトマン独連銀総裁が中心となる理事会メンバーの約4分の1の反対を押し切って、利下げを決断した(ロイター)。

 今回のECBの電撃利下げは今後のECBの金融政策を見る上で、いくつかの注意する必要がある。FRBや日銀などと異なり、大所帯(理事会メンバー23人)となり、しかも国を跨いでいるECBでは政策変更に向けてコンセンサスを形成するにはある程度の時間も必要とみられた。そのためトリシェ前総裁は一月前の示唆というパターンを作っていたとみられるが、ドラギ総裁はそうではなくある程度の意見が固まれば、多少の反対があっても時を置かずに金融政策を変更するということを今回示した。これによりECBの金融政策に対する市場予想にも変化が生じ、その分市場の波乱要因ともなりかねない。

 ここで注意すべきは金融緩和については、今回のようなサプライズの方が効果的であるという事実である。実際にどこまで意図したのかはわからないが、今回の利下げ決定により急激なユーロ安を招く結果ともなった。反対に金融引き締めに関しては、徐々に市場に織り込ませる必要がある。FRBのテーパリング開始についても、この手法が取られている。

 ECBの金融政策の決定パターンに変化が生じたことで、今後市場で何が起きるのか。今回は先手を打っての決定であったが、これは初回しか通用せず、今後は市場も構えることになる。このため物価や雇用等の経済指標次第では、追加緩和を意識して市場が先手を打って動くことも予想される。市場が追加緩和を要求しているかのように写るかもしれないが、このような市場の動きをECBはどのように捉えるのか。

 もうひとつの問題として、さらなる追加緩和が可能なのかという点がある。利下げ幅としてはまだ0.25%はあるとはいえ、すでに実質的なゼロ金利政策に近い。預金ファシリティー金利をマイナスにすることもあるかもしれないがすでに限界に近い。金利そのものを操作できるのは、あったとしても残り一回となる。そうなると別の手段を講ずる必要があり、エコノミストの間では追加LTRO実施の可能性を指摘する声も上がっているが、その政策手段は限られよう。たとえば国債の買入はあくまで危機対応であったはずである。今回の電撃利下げは、このような追加措置が必要とならないようにするため、早めに手を打ってきたとも言えるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-11-10 17:31 | 中央銀行 | Comments(0)

異次元緩和の限界、アベノミクス登場からまもなく1年

 アベノミクスが登場してまもなく1年が過ぎようとしている。アベノミクスがスタートしたのは、衆院解散が正式に表明された2012年11月14日とされている。当時の野田首相は11月14日に国会で行われた党首討論で安倍晋三自民党総裁に対し、当国会中の議員定数削減法案可決に協力することを確約し、16日に衆議院解散を行うと明言した。解散が正式に表明されたことで、安倍首相誕生への期待から円安・株高の動きが強まる。この急激な円高調整とそれによる株式市場の上昇は、新たな政権による金融経済対策への期待が背景にあり、その新たな金融経済政策がいつしかアベノミクスと呼ばれるようになった。

 安倍首相はあらたな金融経済政策について「三本の矢」という表現を使った。一本目の矢は日銀が大胆な金融緩和をする。二本目は、政府が財政政策で実需を生み出す。三本目は、TPPや大胆な規制改革などを含む成長戦略である。その一本目の作戦を具体化したのは2013年3月20日に日銀総裁に就任した黒田東彦氏である(以上、拙著「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」より一部引用 )。

 果たしてアベノミクスと呼ばれた金融経済政策は何であったのか。1年経過した時点で総括する必要もあるのではなかろうか。特にアベノミクスの支柱ともいえた異次元緩和政策の効果について検証しておく必要がある。

 物価や景気動向に関する指標を確認すれば、アベノミクスの登場以降は上向いていることがわかる。これを見る限り、効果は絶大であったとの見方もできるかもしれない。アベノミクスという言葉も持てはやされ、今年の流行語大賞の候補のひとつになると思われる。それでは実際のアベノミクスと呼ばれるものは、具体的にどのような作用を及ぼしたのか。

 11月以降の急激な円高調整とそれに伴う株高については、安倍自民党総裁のリフレ発言がきっかけとなったことは確かであろう。ただし、この時点では安倍首相は何もしていない。リフレ派のいうところの「期待」に働きかけたとされるかもしれないが、相場に急激な動きが生じた際には、通常は「投げ」や「踏み」が入っている。つまり買われ続けた反動の投げが投げを呼ぶ急落、もしくは売られ続けてショート(空売り)が溜まっていたところの買い戻しの連鎖である。

 昨年11月以降の急激な円安は、円を買い仕掛けていた向きの投げが誘発されたことによる。それは安倍氏の発言に促された面はあるが、それ以上に円高を仕掛けていた理由そのものに懸念が生じていたことが大きい。つまりは欧州の信用リスクの後退が背景にあった。アベノミクス登場のタイミングでのヘッジファンドの円売り仕掛けも効果的であった。この円安が株高を招き、世界的なリスク後退の波に乗り、景気も回復基調となり、円安やエネルギー価格の上昇が予想を多少上回る物価の上昇を招くことになる。

 ここに4月4日の日銀の異次元緩和がどのように絡んで来るのか。安倍首相の発言をそのまま具体化したのが異次元緩和であり、これは市場の期待を裏切ることはなかった。ところが、円安の動きは5月にドル円が103円台まで上昇したあたりでブレーキが掛かる。異次元緩和で円安が生じたというよりも、安倍氏の発言をきっかけに、リーマン・ショックと欧州ショックという連続した世界的な金融経済危機以前の水準に戻されただけとも言える。つまりこのの円安はあくまで異次元緩和による影響というよりも、世界的な危機の後退が背景にあったと言える。

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by nihonkokusai | 2013-11-08 09:48 | アベノミクス | Comments(0)
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