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今後の消費者物価指数の動向

 11月29日に発表された10月の全国消費者物価指数は、日銀が目標(前年比プラス2%)に置いている生鮮食品を除くコア指数は前年同月比プラス0.9%となった。上昇率は2008年11月の1.0%の上昇以来の大きさとなり、9月は0.7%の上昇であったことでプラス幅が0.2ポイント拡大した。

 さらに食料(酒類を除く)とエネルギーを除いたコアコア指数は前年同月比0.3%上昇となった。2008年10月以来、5年ぶりのプラス転換となった。

 これらの上昇要因としては、10月の傷害保険料の引き上げが主な要因となった。外国パック旅行の価格の上昇も寄与した。その半面、これまでの上昇要因となっていたエネルギー価格はむしろ下落要因となっていた。

 今後の全国CPIの動向を見る上において参考となる11月の東京都区部の消費者物価指数は、コア指数が前年同月比は0.6%の上昇、コアコア指数は前年同月比0.2%の上昇となっていた。コアは10月の0.3%の上昇から0.6%の上昇、コアコアは10月のマイナス0.2%からブラス0.2%とプラスに転じている。11月の東京都区部の消費者物価指数の上昇要因としては、家庭用耐久財や教養娯楽用耐久財、宿泊料や外国パック旅行などが寄与していた。

 11月の東京都区部の消費者物価指数も意識すると、来月発表される11月の全国消費者物価指数の前年比は限りなく1.0%に近づくことが予想される。ここにきて円安の動きが再び加速していることもあり、12月のコアCPIの1.0%台の上昇もありうるか。ただし、来年1月以降はエネルギー価格による寄与度が低下する半面、消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあり需給バランスのさらなる改善も見込まれている。年度末に向けてコアCPIは1.0%近辺、コアコアも前年比プラスで推移すると予想される、

 これにより日銀としては異次元緩和から1年目の来年4月の中間報告で、異次元緩和により順調に物価も上昇しつつあるとの認識を示す可能性もある。ただし、その中身をみると円安やエネルギー価格の上昇、傷害保険料の引き上げ、さらにはテレビやパソコンなどの価格上昇による影響も大きい。テレビは高付加価値製品へのシフトで単価がアップしていることに加え、消費増税前の住宅購入の増加による影響もある。パソコンについては円安の影響で調達している部品価格の上昇や、アップルのiPadなどの価格そのものの引き上げなども影響している。

 異次元緩和というかアベノミクスによる円安効果は出ているが、異次元緩和そのものによる物価への直接的な影響はこれらを見る限り、見いだしにくい。これをどのように日銀は判断するのか。物価の下振れの可能性を意識したから、さらに異次元緩和を追加するというのは、消費者物価指数の実証研究をしっかりやらないと意味はなく、今後の副作用(国債の流動性や信用への懸念等々)の方が懸念材料となりかねない。

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by nihonkokusai | 2013-11-30 11:15 | 景気物価動向 | Comments(0)

投資家の国債市場に対する見方

 11月25日に財務省で開催された国債投資家懇談会(第52回)の議事要旨が公表された。国債投資家懇談会とは、「国債の消化を一層確実かつ円滑なものとするとともに、国債市場の整備を進めていくため、国債の投資家と直接かつ継続的に意見交換を行う」(財務省)会合である。こちらは国債市場特別参加者制度に基づく国債市場特別参加者会合とは異なり、特に一定の優遇措置といった意味合いではないが、国債を購入している投資家と国債を発行している財務省が意見交換をすることも重要であり、このような場が設けられている。

 ちなみに国債市場特別参加者会合と国債投資家懇談会の参加者は、何がどう違うのか。債券市場関係者以外の方には、わかりづらいかもしれない。国債市場特別参加者とは、そのメンバー表を見てわかるように証券会社とメガバンクである。このメンバーは業者と呼ばれ、国債を発行する際には、発行体の財務省と国債を保有する投資家の間を取り持つ存在となる。簡単に言えば、生産者と消費者を結ぶ流通業者と同様である。投資家が国債を売買する際もこの業者が頼りとなる。国債の「相場の動向」については業者が専門家となるが、最終的には需給が大きく影響することで、投資家の動きが直接、市場に影響を及ぼすことになる。業者と投資家は発行体の財務省とともに、国債市場を形成している大きな存在となっている。もちろん別途、日銀のような存在もあるが。

 その投資家が現在の国債市場をどのように見ているのか。最近の国債市場の状況と今後の運用見通しについての意見では、「最近金融機関の貸出が多少伸びてはいるが、民間の資金ニーズは本格化していない」との意見が複数出ていた「製造ラインを増やす等の設備投資につながるまでには至っておらず、金融機関としては資金需要が見出せない状況である」との意見もある。このため銀行などは債券で運用せざるを得ない状況が継続している。ただし、金利水準が低いため積極的に購入する状況ではないとの意見も出ていた。

 「債券運用にならざるを得ないが、積極的に投資できる環境ではないため、余資を日銀当座預金に積み上げ金利上昇を待つ状況となっている」との声もあった。金融機関は日銀の異次元緩和に積極的に協力しているわけではなく、当座預金口座に資金を置いておかざるを得ない状況にあるとも言える。ただし、このような意見もあった。

 「当社は、ALMの観点から超長期債の購入ニーズは潜在的にあるものの、資金コストを下回るような金利水準であり、流動性も低いことから投資を見送っている。そのような中、日銀当座預金ではなく、為替ヘッジ付き外債への投資を行っているほか、金利上昇時には再度長期化を行えるよう年限の短い国債を購入しているところである。」

 金利水準の低さや流動性の低下も指摘されている。金利水準が上昇すれば購入したいという声も出ており、その分、押し目買いニーズも強い。ただし、どのような理由で金利が上昇するかによって、その押し目買いスタンスにも変化が生じることが予想される。

 「きっかけは分からないものの、現在の相場は、今後大きく反転する可能性も十分考えられることから、引き続き警戒感を持っている。」

 これは投資家のみならず業者も含めて、その警戒心は強いと思われる。リーマン・ショックや欧州の信用不安により、世界的な金融経済危機が生じていた際には、リスク回避から国債に資金を振り向けざるを得なかったが、その世界的なリスクは大きく後退してきた。株価も上昇しており、円安の進行など外部環境はかなり変化してきている。

 ただし、「日銀がインフレ率2%を達成するのはまだ先であり、金利が上昇するまでには時間がかかるだろう」との見方もあり、金利は低水準を維持している。

 「金利が非常に低い今こそ、財政の健全化を進めないと、長期的な意味で我が国の経済・国民生活を維持することは非常に困難」

 投資家もこのあたりに目を配っていることにも注意しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2013-11-29 09:37 | Comments(0)

日銀の物価目標達成に審議委員から異議あり

 日銀が公表した10月31日開催の金融政策決定会合議事要旨によると、「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の決定において、白井委員からいくつか記述に関する指摘があり、金融政策運営について、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた「道筋を順調にたどっている」から「道筋を緩やかにたどっている」に変更することを内容とする議案が提出され、採決の結果、反対多数で否決された。

佐藤委員からは、見通し期間後半にかけての物価見通しについて「2%程度に達する可能性が高い」から「2%程度を見通せるようになる」に変更する。中心的な見通しについて「2%程度の物価上昇率が実現し」から「2%程度の物価上昇率を目指し」に変更する、物価見通しのリスクについて「上下に概ねバランスしている」から「下方にやや厚い」に変更する、を内容とする議案が提出され、やはり否決された。

 木内委員からも、見通し期間後半にかけての物価見通しについて「物価安定の目標である2%程度に達する可能性が高いとみている」から「上昇幅を緩やかに拡大させていくことが見込まれる」に変更する、などを内容とする議案が提出され、否決された。木内委員は11月26日の講演で、「私自身は、2年程度という短い期間で2%の物価安定の目標を達成することは容易でないだけでなく適当でもない、と考えています。」と発言している。容易ではないというより、適当でないとしている点に注意したい。

 さらに11月13日の講演で宮尾審議委員は、中長期的なインフレ予想が高まっていく可能性が相応にあると私自身はみているとしていたが、経済・物価見通しに対するリスクについて私自身は全体としてみればやや下振れリスクを意識していると指摘した。「景気が良くなると物価が上昇する」という例を挙げており、物価を上げることを優先していたはずの異次元緩和の基本概念とは異なる見解を示した。

 日銀のリフレ政策の基本概念を安倍氏に伝授したとされるアベノミクスの仕掛け人の一人、浜田宏一・内閣官房参与(イエール大学名誉教授)は15日の都内の講演で、2%の物価目標が達成できなくとも景気への好影響が確認できればよいとし、岩田規久男・日銀副総裁が物価目標未達を理由に辞任する必要はないと指摘した。こちらはすでに2%という錦の御旗を下ろしてもよいとの指摘である。

 今年4月に決定された日銀の異次元緩和は、コアCPIの2%という物価目標に対し、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するのが目的である。その2年以内の2%の達成について異を唱える審議委員が少なくとも3人いることがはっきりした。それぞれ言い分は違うことで、各自の議案提示となったが、要するに目標達成は困難であり、それに縛られる政策から脱すべきとの意見であろう。

 宮尾委員は講演内容を見る限り、執行部(総裁・副総裁)が主導する2%達成について異は唱えてはいないものの、金融政策で直接物価を上げるといった表現を避け、さらに物価を含めての下振れリスクを意識していることを表明し、執行部とはやや論調が異なることを示している。

 2%の物価目標に対してはそれを持ってきた浜田宏一氏がすでに下ろそうとしているが、日銀はそう簡単に下ろせるものではない。4月の決定会合以降の会合では全員一致で現状維持となっており、一見一枚岩のように見えるが、実はそうではなく、審議委員6名中、4名がやや執行部と距離を置いてきつつある。残りの森本委員は動きづらい面もあろうが、銀行出身の石田委員の今後の動向も気になる。

 日銀の金融政策は委員会制となっており、多数決で決定される。そのなかで執行部と意見を異にする委員が徐々にではあるが増えてきている。仮に9名中4名が意見を異にするとなれば、あと1人でひっくり返る。アベノミクスの勢いに押され、リフレ政策に一気に舵を切らざるを得なかった日銀ではあるが、その矛盾は次第に表面化する。29日には10月のCPIが発表されるが、今後のCPI予想については、消費増税の影響分を除くとまもなくピークアウトするとの見方が多い。そもそも異次元緩和が物価に働きかけないとなれば、物価目標達成のための追加緩和の意味はない。物価ではなく景気回復の後押しのための金融政策に舵を戻しておかなければ、追加緩和を含めて矛盾が拡がりだす懸念がある。慌てる必要はないが、壮大な実験はあくまで実験であり、正常な金融政策に戻すための方策もそろそろ考えておく必要もあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-11-28 09:45 | 日銀 | Comments(0)

来年度の国債発行額

 11月22日に財務省で開催された国債市場特別参加者会合(第53回)の議事要旨が財務省のサイトにアップされた。国債市場特別参加者会合とは、国債市場特別参加者制度に基づいて開催されるものである。国債市場特別参加者制度とは日本版のプライマリー・ディーラー制度と言えるもので、プライマリー・ディーラー制度は、指定を受けた証券会社や銀行に対し、一定の規模の国債の入札や落札、市場の状況等の報告が義務付けられる代わりに、一定の優遇措置が認められる制度である。その優遇措置のひとつが財務省と直接対話が出来ることであり、それが行われる場が国債市場特別参加者会合となる。

 毎年11月の国債市場特別参加者会合では、翌年度予算に伴う国債発行計画について話し合われる。財務省の市場参加者との対話が行われるようになり、国債発行計画について財務省が一方的に決めるのではなく、市場参加者と意見を交換しながら進めるようになった。このため、たとえ翌年度の国債発行額が大きく増加するとしても、市場参加者がそのための安定消化のために案を練ることになり、それはつまり市場での増発ショックを和らげることになる。対話が行われて以来、国債増発等による債券市場の急落といった事態はほとんど発生していない。それだけの買い手がいるということもあるが、マーケットにサプライズを与えない配慮がされていることも大きい。

 前置きが長くなってしまったが、今回の国債市場特別参加者会合でも、現時点で分かっている範囲での来年度の国債発行計画に関する財務省からの説明があった。

 「発行根拠法別発行額としては、建設・特例国債については「前年度を上回らないよう、最大限努力する」とした中期財政計画に沿って、予算編成作業が進められている。借換債については、26年度概算要求では約120兆円を要求しており、現時点では、今年度より約8兆円上回る見込みである。財投債については、26年度財投計画の規模等により、今後決まることとなる。しかし、平成15年度から16年度にかけて約5兆円増加した10年債の財投債が償還を迎えるため、その分は自然体で増加する点に留意が必要である。なお、年金特例国債(24・25年度:2.6兆円)は、来年度は発行しない。また、復興債については現時点で申し上げられる点はない。」

 最も注目すべき新規国債(建設国債と赤字国債)については、税収の上振れ予想もあり今年度を下回るとの報道もすでに出ていた。借換債は今年度より8兆円上回り、財投債も償還分の乗換もあり、増加される見込み。ただし、年金特例国債はないとなれば、その分、今年度よりも消化余力が出る。

 「消化方式別発行額としては、今年度に発行した国債のうち約5兆円は前年度補正予算のために発行したものであるが、来年度はこのような特殊要因がないことから、その分余計に消化余力が生じることとなる。さらに、足元では第2非価格競争入札が好調であることなどにより、25年度中に発行する前倒債が発行予定額より上振れており、限度額(20兆円)一杯まで発行される見込みである。この上振れ額の大半は26年度の消化余力となる。日銀乗換については、最終的には日本銀行の決定によるものではあるが、今後、当局として要請内容を検討していきたい。個人向け販売分については、足元では堅調に推移していることなどを踏まえて、来年度の発行予定額を検討していきたい。」

 今年度の補正における国債増発は回避されるため、約5兆円程度が今年度に比べて消化余力となる上、今年度の前倒債が限度額一杯(20兆円)発行されるとなれば、そこから必要に応じた調整が可能となる。日銀乗換は日銀の大量の国債買入との影響も意識しなければならない。償還額が増えれば短期国債の引受は増加する。しかし、その金額は今年度が昨年度並みに抑えらたことで、来年度も同様となるのではなかろうか。個人向けは12月から10年変動、5年固定が毎月発行となることもあり、多少、予定発行額は増加されるのではなかろうか。

 借換債、財投債、前倒し発行、第2非価格競争入札、日銀乗換等々、それぞれ詳しく説明しなければ、理解しづらい面もあるかもしれない。とにかく、来年度の国債発行額については、新規国債はやや今年度から減額、借換債や財投債は増額となりそうだが、調整余力(補正や年金特例国債の発行分や前倒債の余力分)も大きい。市場参加者からは30年債などを中心に増発余力があるとの意見が多い。増発になったとしても消化には支障はなさそうである。何といっても大量に買ってくれる中央銀行も存在しており、来年度も国債の需給面では特に問題はないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-11-27 09:48 | 国債 | Comments(0)

日銀が出口に向かう時

 日本の金融市場の行く末を見るとき、日銀の動きが非常に重要視されるであろうことは間違いない。昨年のアベノミクスの登場をきっかけとした円高調整と株高については、日銀の大胆な金融政策が多少なりとも影響したことも確かである。ただし、ここにきて米国株式市場が過去最高値を更新しているのは、アベノミクスや日銀の異次元緩和に依るものではない以上、東京株式市場の上昇要因は海外情勢の変化にかなり依存していることも確かであろう。

 日銀の黒田東彦総裁は11月22日の衆院財務金融委員会で、FRBが議論している量的金融緩和の縮小などの出口戦略について「現時点で具体的なイメージをもって話すのは適当でないが、私どもとしても将来十分参考にさせてもらえる」との考えを示した(日経新聞)。

 FRBは早ければ12月、場合によると1月のFOMCで量的緩和の縮小開始を決定してくることが予想している。雇用等の数字次第ではあるが、バーナンキ議長の任期中にとにかく出口に向けた道筋をつけてこよう。いったん縮小が開始されると、意外に早い段階で国債やMBSの新規の買い付け額をゼロに落としてくることが予想される。これにより、まず第一段階が終了する。次にFRBは保有する国債やMBSの残高縮小に動くであろう。ただし、こちらはゼロまで落とす必要はない。市場、特に米国債市場に悪影響を与えかねない国債の「売りオペ」についても慎重になると予想され、償還された国債を乗り換えないなどで自然に残高を落としてくるのが、第二段階となろう。最終的な利上げという第三段階までにはインフレ等の懸念が出ない限り、かなり時間を使ってくることが予想され、その分、緩和効果を発揮させて市場のマインドに働きかけようとしてくるのではなかろうか。

 それに対して日銀の出口政策はどうするのか。日銀が出口に向けて姿勢を変えることそのものがかなり見通しづらい。今後は日銀が国債を大量に購入することで物価が上がるわけではないことが、徐々に理解されはじめてこよう。それがより明らかとなりそうなのが、来年4月の異次元緩和一周年の中間報告ともなる展望レポートの見通しか。

 ただし、物価については4月からの消費増税の影響を受ける。このため物価そのものは上昇していることが予想され、異次元緩和効果と消費増税の影響をはっきり峻別ができなくなることも予想される。消費増税による景気への悪影響を意識して、日銀は追加緩和を行ってくるとの予想も強いが、そもそも異次元緩和が物価上昇には寄与しないことがはっきりすれば、さらなる異次元緩和の意味がなくなる。また、欧米の中央銀行とベクトルが異なることの影響も気になる。このあたり、なかなか興味深い事例ともなりうる。

 いずれにしても日銀が出口を模索するのはかなり先と思うが、来年4月からは、このあたりの空気が変化してくることも予想される。大胆な国債買入が物価に直接影響を与えないとなれば、それを削減することによる「物価や景気への影響」はかなり限定的となろう。それよりも、債券市場への影響や財政との兼ね合いの方が意識されるかもしれない。こちらも元に戻るだけとなれば、国内を中心に国債の買い手はいる以上、むしろ債券市場からクジラがいなくなる分、流動性も以前のように回復してくることも考えられる。

 ただしこれは物価の上昇等を背景に長期金利が2%を大きく超えるようなことはなく、長期金利の低位安定が継続していたのならばという前提条件が付く。実は日銀の目指す消費者物価指数(除く生鮮)の消費増税の影響を差し引いた2%という目標が本当に達成されて、それにより長期金利が2%を超えて上昇してきたときこそ、日銀の出口政策をかなり困難にさせることが予想されるのである。

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by nihonkokusai | 2013-11-26 09:58 | Comments(3)

欧米の中銀と歩調を合わせられない日銀

 日米欧の金融政策があらためて市場の関心事となり、ドル円は101円台、ユーロ円は136円台を回復し、ダウ平均は引けで16000ドルの大台をつけてきた。22日の日経平均は15500円台に乗せてきている。

 ここであらためて日米欧の金融政策について自分なりの意見をまとめてみたい。まずは一番注目度の高いFRBであるが、バーナンキ議長は任期中に出口に向けた道筋をつけたいとの意思に変わりは無いと思われる。それをイエレン副議長なども支援してこよう。イエレン副議長はたしかにハト派であるが、ハト派だからテーパリングに反対するというようなことは考えない方が良い。そもそもなぜQEのような非伝統的手段を講じなくてはならなかったのかを最も良くわかっている人物のはずである。大規模な国債の買入はあくまで非常時の対応であったはず。ハト派という意味ではバーナンキ議長そのものがヘリコプター・ベンとの異名を持っていたほどであり、その議長本人がテーパリングを強く意識しているのである。

 12月のFOMCでテーパリング開始を決定するとみているエコノミストは全体の5%程度との報道があり、来年1月を含めても市場ではまだ少数派とみられる。11月分の雇用統計を確認し、さらには政府の財政協議の行方もまだ不透明ではあるが、雇用に悪化がみられず財政協議も進展するということがあれば、早ければ12月、遅くとも1月のテーパリングの決定の可能性は高いとみている。意外に少数派の意見が正しかったこともある。少数派の見方が正しかったという例として、11月7日のECBの利下げ決定があった。

 ECBについては、この電撃利下げもあり雇用環境や物価情勢次第では追加緩和もありうると見ているむきが多いのではなかろうか。中銀預金金利のマイナスへの引き下げが会合で話し合われたことも事実のようである。しかし、11月7日の利下げは残り少なくなった切り札を使うチャンスと意識して、より効果的なタイミングを狙って使ってきたように思う。欧州危機は去りつつあり、こちらも危機対応からは脱したいところであろう。ただし、注意すべきはFRBも含めて「伝統的な手段」による金融引き締めには、つまり利上げとなるが、これにはかなり時間を置くであろうということである。これは外部環境だけでなく市場のマインドにも配慮したものと思われる。

 イングランド銀行は、その伝統的手段による引き締めに言及した。カーニー総裁は、必要なら2015年の選挙前に金利を引き上げる用意があると言明した。ただし、これもすぐに政策金利を引き上げると言っているわけではない。あくまで金融政策の向きを変えつつあることを示唆したのである。FRB・ECB・BOEは利上げについてはかなり慎重ながら、非伝統的手段については市場に悪影響を与えないような格好で、店じまいを行うつもりのようである。

 それに対して日銀であるが、異次元緩和という壮大な実験を行ってしまったばっかりに、欧米の中銀と歩調を合わせるわけにはいかなくなった。店じまいどころか、さらに風呂敷を拡げなくてはならないような状況にある。非常時の対応としてではなく、物価を目標まで上げるために大規模な非伝統的手段を講じてしまった。国債を倍買えば、物価がドンと上がるわけではないことは、日銀自身が最も良くわかっていたはずである。トップは入れ替わったが、それまで日銀が否定してきたものをいきなり受け入れることは難しい。しかし、政府の意向は重要であり、異次元緩和は受け入れざるを得なかった。異次元緩和決定以前に安倍総裁のリフレ発言をきっかけに円高調整は進み、株も上昇していた。円安による物価上昇、世界的なリスク後退や米国の株式市場が過去最高値を更新するなどのフォローの材料もあり、いまのところは物価も回復するなど異次元緩和は効果があったかのように見える。しかし、日銀が大量に国債を買うことで、それが直接物価や景気に働きかけているわけではない。リフレ派の一部もどうやらそれを薄々わかってきたような発言もみられる。ここにきての物価上昇は、異次元緩和以前から予想されていたものに、円安やエネルギー価格の影響で幾分、かさ上げされていただけであり、むしろ来年4月以降は頭打ちになるとの予想が多い。今後は思ったほど物価が上がらないときに何をするのか。結局、日米欧で日銀だけが非常時の対策をより規模を拡大して行わざるを得なくなる。それがいったい何を招くのか。次の日銀の一手はかなり注意してみておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2013-11-25 09:41 | 日銀 | Comments(0)

公的年金の運用見直しは必要なのか

 公的年金の改革を議論する政府の有識者会議は20日に、公的年金の国内債券を中心とするポートフォリオの見直しが必要だとする最終報告を取りまとめたそうである。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの公的年金に対し、インフラファンドや物価連動国債などに運用対象を広げるよう提案する見通しだとか。GPIFだけで120兆円、他の公的年金を合わせ200兆円規模となる資産の運用の見直しでは、運用資産の約6割を国債に投資する現在の運用スタンスからリスク分散の姿勢を強めるそうである。有能な資産運用担当者を高額で雇用するなどGPIFの自由度を増すため、独立行政法人から認可法人のような新しい枠組みに移す組織改革も提言する(ロイター)。

 運用先として、国内株式や外国債券の比重を高めるだけでなく、不動産投資信託(REIT)、インフラファンドなどの代替(オルタナティブ)商品に対象を広げる提言を盛り込み、GPIFの組織改革が実施されたうえで、オルタナティブ投資を本格化するそうである。

 どうも良くわからない改革である。国債に偏重した運用を見直すというが、そもそも年金資金は少なくとも元本は維持させる必要があろう。さらに200兆円という巨額資金の運用先は、国債主体にせざるを得ない。リスク分散の姿勢というが、リスク商品を買い込むことでリスクをさらに高める運用となる。百年に一度と言われる危機が立て続けに起きていたが、リスクオフの動きが強まれば、国債で地道に稼いだ運用益を吹き飛ばしてしまう懸念すらある。

 どうもこの改革の目的がわからない。そもそも年金にそれほどの運用益を求める必要があるのか。今後の年金支払いに備えて、少しでも収益をあげてカバーしたいというのであれば、それはかなり危険な行為である。相場の世界で無理をすると失敗する。専門家を集めて運用させるというが、アジアの一部の国での外貨運用のようなプロをかき集めようにも、そんなプロが国内にどれだけ存在しているのか。商品知識だけでなく、相場勘を持ち、多少のリスクを負っても安定した収益をもたらすような人物は限られよう。

 それとも、この運用先の多様化の目的とは、公的年金の資金を使ってリスク性資産を買い入れることで、株価の上昇や不動産価格の上昇、いわゆる資産価格の上昇が本来の目的であるのか。2%の物価上昇に備えるためとしても、本当に物価上昇が可能なのか。国債の一部を物価連動国債に振り向けるというのは良いが、その前にこれだけ巨額の国債残高があるなかでの、2%の物価上昇とそれによる長期金利の動向について、もっと踏み込んだ調査も必要ではなかろうか。

 国内株式の運用上のベンチマークには、現行のTOPIXに加え、日本取引所グループなどが開発した新指数「JPX日経インデックス400」を採用するよう提言するそうであるが、別にこれは提言するべきものでもないはず。どれがベンチマークとして適切なのかは、運用者が判断すべきものである。

 日本国内での資産運用、これは銀行、生保、年金等々であるが、その運用先が国債に偏重していることは確かである。それが日本国債の安定消化を助けてきた。もしこの先、本当にデフレが解消され、長期金利が上昇するようなことになれば、国債市場を取り巻く状況は一変する。国債市場が乱高下するようになった際に、その緩衝材となれるのが公的年金でもある。2%との物価上昇を信じるのであれば、これだけ巨額の国債残高を抱えた状況での、長期金利の上昇という債券市場参加者にとっても未体験ゾーンに突入した際の対処等をまず考慮すべきなのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-11-23 08:48 | 国債 | Comments(0)

都銀は10月も国債を売り越し

日本証券業協会は20日に10月の公社債投資家別売買高を発表した。10月の債券相場は米政府機関の一部閉鎖などの影響も意識されたが、デフォルトに陥る事態は回避され、むしろFRBのテーパリング先送りとの観測などから米債が買われたこともあり、円債もしっかり。10月後半に債券先物は145円台をつけ、10年債利回りは0.6%割れとなっていた。

 10月の公社債投資家別売買高によると、短期債を除いたベースで4月から9月まで売り越しとなっていた都市銀行は10月も3兆236億円の売り越しとなっていた。9月の売り越し額が5506億円程度と減少してきており、10月は買い越しに転じたのではとの観測も出ていたが、むしろ売り越し額は増加していた。

 国債の投資家別売買高から内訳をみると、超長期債は2404億円の買い越しながら、長期債を2兆81億円売り越し、中期債を1兆2076億円の売り越しとなっていた。中期債は異次元緩和の4月からの売り越しが続いており、5月から9月にかけては買い越しとなっていた長期債を2兆円以上も売り越していた。10年債は0.6%を割る水準となり、利益確定売りを入れてきたものと思われる。

 ちなみに、6月の都銀の国債の売買高(除く短期)は3兆5165億円と2004年4月以降では最低となっていたが、ここにきて徐々に回復してきており、9月は10兆4974億円と4月以来の10兆円台となり、10月は17兆1861億円にまで回復した。

 他の投資家の10月の売買状況を確認すると、買い越しの最大手は9月に続き信託銀行となり、1兆606億円の買い越し。内訳は超長期債を3089億円、長期債を3145億円、中期債を2911億円と、それぞれ今回も満遍なく買い越しとなっていた。

 続いて外国人が9929億円の買い越しに。長期債を4540億円、中期債を4683億円とそれぞれ買い越しに。

 次に地方銀行が8773億円の買い越し。国債の内訳を見ると、超長期債151億円売り越し、長期債567億円買い越し、 中期債4953億円買い越し。どうやら国債以外(地方債?)もそこそこ買い越していたようである。

 生損保は6759億円の買い越しに。こちらは超長期債を2268億円の買い越し、長期債は858億円の買い越し、中期債は2495億円の買い越し。

 事業法人が4177億円買い越し、投資信託が3244億円買い越し、農林系金融機関は2765億円の買い越し。事業法人は中期債主体、投資信託は中期債と超長期債、農林系金融機関も超長期債と中期債主体に買い越しとなっていた。

 参考までに国債の投資家別売買高(一覧)を基に、投資家全体の売買高の状況を確認してみたところ、7月は国債合計(短期債と割引債除く)で126兆9632億円となっていたが、8月は140兆円1549億円、9月は156兆1005億円、10月も149兆7425億円と異次元緩和以前の水準に回復しつつある。これだけで判断はできないものの、日銀の異次元緩和による国債市場の流動性の低下はかなり解消しつつあるように思われる。
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by nihonkokusai | 2013-11-22 09:59 | 債券市場 | Comments(0)

金融政策の難しさ

 11月19日のバーナンキFRB議長のワシントンでの講演内容がFRBのサイトにアップされた。このなかでバーナンキ議長は「金融政策がより正常な状態に戻るにはいくらか時間がかかりそうだ」と指摘し、イエレン副議長が14日の米上院公聴会で述べた内容に同意するとした。2013年内でのテーパリングの可能性は残すものの、あくまで経済状況次第という面もあり、これによりバーナンキ議長の就任中のテーパリング開始の可能性はいったん後退した。ただし、テーパリングに関し具体的な言及は避けており、経済状況を睨みながら2014年中に量的緩和を終了させるとの見方は継続していた。 

 しかし、20日に発表された10月29~30日開催のFOMC議事要旨のなかで、多くのメンバーはここ数回の会合において、月額850億ドルで実施している債券購入の規模を縮小する可能性があるとの認識を示していたことが明らかになった。バーナンキ議長は任期中における出口への道筋をつけることをかなり意識していると思われる。 20日の米国市場ではテーパリングの早期開始が再び維持され、株や債券が売られドルは買われた。

 それはさておき、19日のバーナンキ議長の講演では、金融政策をクルマの運転に例えている。経済実態に沿ってブレーキを踏んだりアクセルを踏んだりする。ただし、その操作は2つの理由で困難を伴うと指摘している。ひとつはすぐに効果が現れないという点である。四半期や数年かかることもあり、金融政策を決定するドライバーは目先のことにとらわれずに、先を見て運転をする必要がある。さらに金融政策の効果は、足下の金融政策よりも、先々の金融政策の行方を睨んだ市場の予想(期待)に依存する。つまり、金融政策の決定は目先に拘らずに、先を見て行動する必要があり、さらに市場は今後の金融政策の行方を睨んで動くことで、その見通しに対してどのように示唆を行うのかも重要となる。 

 FRBは軸足を非伝統的手段からフォワードルッキングに移行させようとしているが、そのフォワードルッキング政策にも難しさがある。足下ではなく先を見て金融政策を行いたくても、市場では足下景気の動向をみて、金融政策への期待を強めることがある。期待感で市場が先に動いてしまった場合に、中央銀行が期待に応えないと市場にダメージを与えることもある。市場に先々の金融政策について織り込もうとして、たとえばテーパリング開始を示唆すると、市場は先に過剰反応してしまうことがあり、これでむしろ金融政策をやりづらくさせることもある。市場とのコミュニケーションの難しさについても、バーナンキ議長の講演では指摘している。だからこそ、今回FRBは事前のイエレン氏などの発言で慎重さをにじませ、バランスを取ることにより思惑的な動きを牽制したのではなかろうか。

 金融政策とはそもそもエンジンそのものではない。あくまでブレーキやアクセルの役目である。現実としてはそれよりもショックアブソーバーであったり、エアバッグの役割と言った方が適切ではなかろうか。あくまで景気や物価の過熱や冷え込みを抑えるというのが本来の役割であろうし、そもそも金融政策で物価や雇用を直接動かすことは現実的には無理がある。FRBはデュアルマンデードとして物価と雇用の安定を計ることを目的としているが、金利をどの程度下げれば、失業率が何%低下するとか、国債を何兆円買えば物価が何%上がるとかの方程式があるわけではない。日銀の異次元緩和も国債を買えばいろいろな経路、特に期待に期待して物価は上がるとかのひとつの見方を実験しているが、目標が達成できるという保証があるわけではない。このあたりに金融政策の限界というか難しさがあると思われる。

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by nihonkokusai | 2013-11-21 09:53 | 中央銀行 | Comments(0)

注目度が低い日銀金融政策決定会合だが

 11月20日から21日にかけて日銀の金融政策決定会合が開催される。11月7日のECB政策理事会ではタイミングとして意外感のあった利下げを実施した。13日にイングランド銀行のインフレレポートが発表され、イングランド銀行のカーニー総裁は、必要なら2015年の選挙前に金利を引き上げる用意があると言明した。11月14日のイエレンFRB副議長の議会証言では、米国経済や雇用情勢に対して慎重な姿勢を示し、テーパリング開始時期が先送りとの認識が強まった。

 このように欧米の中央銀行の金融政策に注目が集まるなか、日銀の金融政策の行方については、さほど関心が高まっていない。為替市場や株式市場の一部では、毎回の決定会合で追加緩和への期待も出ているようだが、まさに期待と言うより願望に近い。現状、日銀が動く気配はない。まさに動かざる事、日銀の如しである。

 日銀は4月4日に異次元緩和を決定した。その規模は確かに大胆なものであり、アベノミクスの最初の矢が放たれた。その後、黒田総裁は「戦力の逐次投入をせず、現時点で必要な政策をすべて講じた」とコメントしていたように、かつての日銀が行っていたような微調整のようなことは行わないと宣言している。

 アベノミクスの登場から1年が経過したが、日銀の異次元緩和というバズーカ砲を打つ前に、安倍首相のリフレ政策宣言をきっかけに急速な円高調整が進み、東京株式市場も上昇した。円安の影響もあり、景気は回復基調となり、日銀が目標としている物価についても、0.7~0.8%近辺まで上昇してきている。この結果を見ても、日銀が特に金融政策を変更する必要性は見当たらない。

 今回の金融政策決定会合でも金融政策については現状維持が決定されよう。しかし、このような環境が今後も続くわけではない。うまく行っている間は特に問題は表面化せずとも、日銀が動かざるを得ない状況に追い込まれたときが問題となる。

 歴史上まれにみる大胆な金融緩和政策を行ってきた日米欧の中央銀行は、ここにきて足並みが乱れてきている。その背景には非伝統的手段を講じなければならなかった世界的なリスクの後退がある。イングランド銀行はいち早く向きを変え、FRBも向きを変えるタイミングを計っている。ECBはまだ慎重ながら、アイルランドは金融支援を脱却すると宣言し、14日にはスペインの支援脱却も決まった。足下景気の動向は気になるが、少なくともユーロ圏の信用不安による非常事態宣言はそろそろ解除されてもおかしくはない。

 このような状況下、日銀だけが非常時の対応を倍返しで行っている状況にある。すでに舵は取り払われて、目的地(コアCPI2%)に到達するまでは、突っ走るしかない。必要となれば追加緩和を行うとしているが、残念ながら異次元の緩和は2度はできない。

 まだ先の話ではあるが、来年4月には消費増税がスタートするとともに、異次元緩和から1年が経過し、中間報告も必要となる。すでにアベノミクスの仕掛け人の一人、浜田宏一・内閣官房参与(イエール大学名誉教授)は15日の都内の講演で2%の物価目標が達成できなくとも景気への好影響が確認できればよいとし、岩田規久男・日銀副総裁が物価目標未達を理由に辞任する必要はないと指摘した。2%という錦の御旗を下ろしてもよいとの指摘である。しかし、そう簡単に下ろせるものでもないはずである。

 日銀は現在、何もしなくても良く、帆を上げていれば風が押してくれている。その風向きが変わったり、さらに目標が遠ざかったときに何をしてくるのか、何ができるのか。現在は注目度が低下しつつある日銀の決定会合ではあるが、実はかなりの不透明な材料を抱えていることもまた事実であり、それは時が経つにつれてさらなる矛盾を抱え込み、政策変更をより困難にさせる可能性がある。



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