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2020年の東京オリンピックの効果

 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催にともなう経済波及効果について、招致委員会では3兆円という試算を出している。エコノミストなどからは数千億円から100兆円を超えるといった試算も出されている。このような試算はどのような前提で計算を行うのかによって異なるものの、これだけ数字のブレがあるということは、あまりその数字そのものには意味がないように思われる。実際には数字にははっきり出ない効果が大きいのではなかろうか。

 今年4月4日の日銀による異次元緩和の目的は人々の期待に働きかけるとするものであるが、日銀が大量に国債を買い入れてマネタリーベースを倍にして、それがどのように期待に働きかけるのかがはっきりしない。米国FRBも大規模な債券買入を行ってきたが、それによりインフレ期待が高まって物価が上昇した気配はない。この量的緩和はあくまで市場の動揺を鎮めるためのものであり、市場外に及ぼす影響については限定的であると思われる。その危機が緩和されてきたのであれば、非常時の対応は撤収すべきであり、それが9月17日、18日のFOMCで決定される。新興国市場を含めて市場参加者はこの非常時の対応を続けてくれるとありがたいと思っているかもしれないが、これはタイミングを逃すと副作用も大きくなりかねないものとなる。

 日銀の期待に働きかける政策は、実感がなく良くわからないと言う方も多いのではなかろうか。これは市場参加者も同様であると思う。ところが東京オリンピック開催による期待については、皆が共有するものではないかと思う。競技場や交通手段などのインフラ整備による建設業への効果もあるが、それよりも人口の集中している首都圏で行う夏季オリンピックへの期待は、まさに身近なところで大きなお祭りが開催されるようなものであり、そのお祭りに接することができることへの期待が大きい。

 1964年のアジアで初めて開催された東京オリンピックほどの期待の盛り上がりはさすがにないかもしれないが、それでも東京でのオリンピックがまた見られるとの年配者から、初めて自国開催の夏季オリンピックを見ることができる若い世代は、ある種のわくわく感を感じているのではなかろうか。

 オリンピック招致のプレゼンの様子を見て、2020年に向けて本格的に英語やフランス語などの外国語をマスターしなければと思った子供達も多かったはずである。ボランティア活動など行うにも外国語は必要となる。現在でも多くの外国人が日本を訪れているが、2020年のオリンピックにはまさに世界各国の人達が集まる。しかもそれが自国内で行われ、そのような機会はめったにない。日本をアピールするチャンスであるとともに、異文化にふれあうチャンスとなる。

 我々の子ども時代には、1964年の東京オリンピックや1970年の大阪万国博覧会があった。それに向けての期待の盛り上がりは非常に大きかったように記憶している。現在の子供達にも同様の感動が得られることになる。自分の子どもに自国開催のオリンピックを見せてあげたいとする人達も多いのではないか。もしかすると少子化対策の一環にもなる可能性もある。

 これから2020年に向けて、スポーツ界は選手育成が急務となる。その結果として金メダルを多くとってくれれば、さらにお祭りが盛り上がる。ただし、若い世代を育てる機会となるには、なにもスポーツ界だけではない。日本人の国際性を引き上げるチャンスでもある。海外を知ることにより、日本という国の良さも知ることにもなる。このような貴重なチャンスをおおいに生かすべきだと思われる。ここであらたな人材育成を行い、世界に立ち向かえる人達を育成することで、日本は本当の意味での気持ちのデフレ状態から脱することができるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2013-09-17 09:12 | アベノミクス | Comments(0)

テーパリングの影響と五輪に向けてのマインド変化

 9月12日に行われた日銀の石田審議委員の記者会見の要旨が公表された。石田委員はFRBのコミュニケーションに関して次のような発言をしている。

 「私が思っているのは、マーケットは基本的に買い持ちですから、金利を下げる時は値段が上がるということで好感する一方、金利を上げる時は値下がりする、損をするということですので、マーケットとの対話は難しくなります。」

 マーケットではじりじりと買われ、売られるときは一気にドスンとくるケースが多い。金融政策は金融を緩和するときよりも、引き締める時の方が難しくなる。金融緩和についてはある種のサプライズがマーケットには効果的となる。金融引き締めについては、マーケットが過剰反応するのを抑える意味でもそれをどのようにマーケットに少しずつ織り込ませていくのかが課題となる。石田委員の指摘した通り、市場価格の下落への恐怖心を如何に起こさせないようにするのか、このあたりの舵取りが難しい。

 今回のFRBによるテーパリングについては、うまくマーケットに織り込ませているのではないかと思われる。米国債は下落し、10年債利回りは一時3%台に乗せたが、このあたりは予想の範囲内ではなかったろうか。

 「ネガティブなマグニチュードについては、今のところはコントロールされているようです。一部の人は、外貨準備や海外からの短期借入依存度など、いくつかの指標について、健全性のレベルがアジア危機の時とは格段に高くなっているということを言っていますが、私自身もマグニチュードは世の中がひっくり返るほど大きなものにならないのではないかと思います。」

 これはFRBによるテーパリングによる新興国への影響についての石田委員のコメントである。新興国への影響は以前のアジア危機などに比べれば大きくはないと思われる。ある程度の影響は避けられないものの、現在、すでに落ち着きを取り戻しつつある。

 ちなみにFRBのテーパリングについては、9月17日、18日のFOMCで決定されるであろうとの見方がマーケットでもコンセンサスとなっている。米国景気そのものも回復基調にあることは確かであり、バーナンキ議長としても12月より9月に決定したいとの意向ではないかと思われる。注目はむしろテーパリングの有無よりも縮小幅に移っている。

 「我々日本人には、長く続いたデフレやリーマンショック、東日本大震災など、様々な面で負のプレッシャーが掛かっていたと思いますがそうした中で非常に明るい、将来に対して希望を持てるイベントだと思います。そういう意味ではデフレ脱却に対しても、個人のマインドを明るくするという意味で、将来に対するコンフィデンスを強めていくのではないかと思います。」

 これは2020年の東京オリンピック開催による経済への影響についての質問の答えである。石田委員の指摘通り、「3兆円だとか10 兆円だとか」の数字よりも、特に若い世代への将来への希望を抱かせるイベントであることをもっと注視すべきであると思う。ここでの「デフレ脱却」の意味がわからないが、景気とともに雇用が回復し、その結果として緩やかな物価上昇が起きるということであれば、このオリンピック開催によるマインドの変化は影響を与えて来るのではないかと思う。

 「将来に対する信頼感が個人に出てきて、それで企業の価格設定行動にも大きく影響し、幅広い品目で適切な物価上昇が起こってくるのだろうと思います。」

 デフレ脱却とはこのような動きのことを示すと思われる。それには果たして異次元緩和でマネタリーベースや国債買入規模を2倍にすれば達成できるものなのか。無理矢理インフレへの恐怖を抱かせるような政策をせずに、将来に対する信頼感を抱かせるのが重要であるのであれば、何をすべきなのか。この答えは金融政策では見つからないと思う。

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by nihonkokusai | 2013-09-15 17:17 | 日銀 | Comments(0)

プラスチック・マネー

 プラスチック・マネーといってもクレジットカードなどのことではない。イングランド銀行はプラスチック製紙幣の導入を検討しているそうである(9月10日のブルームバーグ)。

 この計画をロンドンで発表したイングランド銀行のカーニー総裁は、ポリマー製の紙幣は紙のお札より清潔かつ安全で耐久性も高いと説明。切り替え決定となれば、ポリマー紙幣は2016年にも流通し、チャーチル元首相の肖像も採用されるそうである。

 プラスチック製紙幣(ポリマー紙幣)は1988年にオーストラリアで発行されたのが最初とされる。カーニー総裁は、カナダ中央銀行総裁時代にポリマー貨幣を導入したが、この結果、偽造が大幅に減少したとされている(毎日新聞)。シンガポールやニュージーランドなど記念紙幣を含め、世界各国ですでに発行されている。ただし、イギリスで発行されるとなれば、日本でも検討課題に挙がることも予想される。

 少し気が早いが2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、記念硬貨が発行されようが、プラスチック製の記念紙幣というのも面白いかもしれない。ただ、政府発行の硬貨ではなく日銀発行の銀行券での記念紙幣というのは発行が可能なのか。それはさておき、この紙幣が生まれたのがいつ頃なのかをご存じであろうか。

 中国の唐の時代の後期に、茶・塩・絹などの遠距離取引が盛んになるなど商業の発達に伴い銭貨の搬送を回避する手段として「飛銭」と呼ばれた送金手形制度が発生した。高額商品の売買には銭貨の「開元通宝」などでは量がかさんでしまう上、途中での盗賊などによる盗難の危険もあった。このため、長安や洛陽などの大都市と地方都市や特産品の産地などを結んで、当初は民間の富商と地方の商人との間によって「飛銭」という送金手形制度が開始された。これはたいへん便利なものであるとともに、手数料収入に目を付けた節度使(地方の軍司令官)や三司(財政のトップ)などもこれを模倣した。

 飛銭を利用する際に使われた証明書(預り証)が、宋代になると交子・会子・交鈔・交引などと呼ばれ、証明書それ自体が現金の代わりとして取引の支払に用いられるようになった。特に四川地方で発行された交子は世界史上初の紙幣とされている。

 紙幣はたいへん便利なものであったことで、その需要が増え、それに目をつけた政府は軍事費に当てるための財源として交子を乱発し、その価値を失ってしまった。政府に発行をまかせると紙片を乱発しかねないのは歴史が証明している。その後、新たな紙幣を発行するものの、やはり信用を落としてしまい、最終的には銅銭が復活することになった。

 なぜ中国で世界最初の紙幣が誕生したのであろうか。貨幣の材料となり、貴金属などの産出が限られていたこともあるが、宋や元の時代の国家権力が強かったことも要因と指摘されている。それとともに遠隔地との交易など商業の発達がそれを促したものといえよう。紙そのものが中国で発明されたものであり、さらに印刷術も発達していたことが、紙幣の発行を可能にしたといえる。マルコ・ポーロの「東方見聞録」には、元で通貨ではなく紙幣で買い物をする様子を見て驚く場面が登場する。これからも当時のヨーロッパなどでは紙幣が使われていなかったことがわかる(拙著「マネーの歴史 世界史編」より一部引用)。

「マネーの歴史 世界史編」


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by nihonkokusai | 2013-09-13 10:02 | 金融 | Comments(0)

信認により維持されているマーケット

 日銀は9月10日に、8月7日~8日に開催された金融政策決定会合の議事要旨を発表した。この中から長期金利に関する委員からの意見に関して確認してみたい。

 「長めの金利への働きかけについて、多くの委員は、わが国の長期金利が安定的に推移しているとの見方を示した。そのうえで、これらの委員は、海外金利上昇や景況感改善などに伴って生じる長期金利の上昇圧力を、日本銀行による巨額の国債買入れが、強力に抑制していると指摘した。」

 米国の長期金利は米国景気の回復基調やFRBの量的緩和縮小観測などを背景に、一時3%台に上昇した。ドイツの長期金利は2%台に上昇し、英国の長期金利も約2年ぶりの3%台をつけてきた。これに対して日本の長期金利は0.7%台での安定的な推移が続いている。

 この背景には日本国債への信認が継続しているなか、日銀による巨額の国債買入が需給面から大きな影響を与えていることは確かであると思われる。さらデフレ脱却についてもそれを信じている参加者が限られていることも示している。ここにきてのコアCPIの上昇も、エネルギー価格の上昇から多少上振れているものの、異次元緩和以前からあった想定の範囲内にある。もし2%に向けた物価上昇を意識しているとすれば、日本の長期金利がこの程度に収まっていることは考えづらい。FRBの巨額買入は続いているにもかかわらず米国債は大きく下落しており、国債は需給面だけで価格が維持されるものではない。

 「ある委員は、債券市場の流動性に関して、長国先物の値幅・出来高比率がなお高めであると指摘した。別のある委員は、債券市場の不安定さは潜在的には引き続き残されており、今後の国内物価や米国金利の動向が及ぼす影響に注意が必要と述べた。」

 異次元緩和が決定されたあとの国債市場の不安定さは、値動きなどを見る限り次第に解消されつつあることは確かである。債券先物の取引ばかりでなく、現物債の取引についても落ち着いてきている。しかし、池の中にクジラが存在している状況に変わりなく、その日銀の国債買入の動向が常に注目されている。それでもオペ時間や結果発表の時間での先物の妙な動きが、ここにきて見えなくなってきている。慣れというか、そこで仕掛けても妙味がないことがわかってきたのではなかろうか。

 「これに関連して、多くの委員は、金利の安定を確保するためには財政運営に対する信認が維持されることも重要であり、政府が財政健全化に向けた取り組みを着実に進めていくことを期待しているとの認識を示した。」

 日銀の異次元緩和による大量の国債買入が財政ファイナンスと認識されていないのは、政府による財政健全化が背景にある。消費税引き上げの先送りなどを行うと、このあたりに疑問符が生じてくる可能性がある。

 「このうちのある委員は、日本銀行の国債買入れにより金利の低位安定が保たれるとの期待が過度に強まることなどを背景に、財政健全化に向けた政府の取り組み姿勢の後退につながる場合は、市場の国債に対する信認低下から長期金利が上昇し、結果的に日本銀行の政策効果を減殺する可能性があると指摘した。」

 これは信認により維持されているマーケットという存在を理解している委員からの発言のように思われる。日本国債への信認低下による国債価格の急落という事態は、戦後に関していえば過去に経験していない。1998年末の運用部ショックは資金運用部という国債消化に大きく関わっていた存在への懸念が要因であり需給への懸念が背景にあった。2003年6月のVARショックは買われすぎの反動とも言えた。

 戦後に日本国債の信認低下による国債価格の急落の経験はない。しかし、それがもし起きた際に何が起きるのか。それはたとえば2010年のギリシャ国債の動きが示している。また、国債の流動性が急速に低下し、買い手がいなくなったときに何か起きるのかは、リーマン・ショック後の日本の変動利付国債や物価連動国債の動向から確認できる。

 ギリシャはユーロ圏の問題、日本の物国などはそもそも発行量や残高が10年国債などと大きく違うとの意見があるかもしれない。私が言いたいのは、その発行量や外部環境がどうあれ、マーケットでは何かのきっかけで、このような事態が起こりうるということである。それは非常に安定しているように見える日本の国債市場も例外ではない。

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by nihonkokusai | 2013-09-12 09:48 | 債券市場 | Comments(0)

進撃のアベノミクス

 2012年11月の衆議院解散をきっかけとしたアベノミクスの登場により、円高調整に拍車が掛かり、それが株高を演出した。円安と株高の相互作用も生じて、まるで80年前の高橋是清による高橋財政の登場時のような状況を生み出した。

 欧州の信用不安の後退とそれによる世界的な景気回復の動きを背景に、円安効果も手伝い日本経済も回復基調となってきている。9月9日に発表された4~6月期GDP改定値は前期比年率3.8%増と、速報値の2.6%増から上方修正された。政府は13日に公表する9月の月例経済報告で景気判断を「緩やかに回復しつつある」とし、景気回復の認識を明確にするそうである(10日の日経新聞朝刊)。

 アベノミクスは期待というよりもマーケット参加者の恐怖に働きかけた。私の債券ディーラー時代の上司の口癖のひとつに「上げ100日に下げ3日」というものがあった。じりじりと上昇していた相場が、下げる時は勢いよく一気に下げる。これは株式市場や債券市場ばかりでなく、外為市場でも起こりうる。リスク回避、リスクオフとはやしながら円買いポジションを大きく膨らませ、さらなる円の上昇を願っていた投機家達が、地合の変化とともに、マネタイゼーションを意識させるアベノミクスの登場に恐怖した。そこにチャンス到来とばかりにジョージ・ソロスら百戦錬磨のヘッジファンドが円売り・日本株買いを仕掛け、急激な円安・株高を招き、これがアベノミクスの効果と外部からは写ったに違いない。

 安倍政権が選んだ日銀の新たな執行部(総裁・副総裁)はアベノミクスとされるリフレ政策を忠実に実行に移した。これが異次元緩和と呼ばれる政策であり、その波及経路がどうなっているかはさておき、円安・株高に驚喜した人々は、これがデフレ脱却に有効なのかもしれないとの期待を抱くこととなり、アベノミクスは流行語となった。ただし、外為市場などでは「下げ3日」が終わると冷静さを取り戻していた。市場でのアベノミクス効果は一時的であり、その後は米国株式市場やFRBの金融政策などが材料視されて動くようになってきた。

 イェーガー(狩人)となった安倍首相が放った一本目の矢は市場を動かした。円安効果もあり、景気や物価にその分は影響は与えていようが、異次元緩和によるマネタリーベースの増加が景気に直接働きかけている兆候は見えない。そもそも期待とか予想という目に見えないものを相手にしている以上は、外部からは具体的な観察ができない。

 アベノミクスの2番目と3番目の矢は市場を動かさなかった。特にレジーム・チェンジを意識させるほどのものではなかった。ただし、TPPへの参加などの結果は残していることは評価する必要があると思う。

 アベノミクスに対する関心が次第に薄れかけていたときに、2020年の東京オリンピック招致という第4の矢が放たれた。アベノミクスの1本目から3本目の矢については、政府の努力跡のようなものあまり見えず、1本目の矢などまさに人任せ(日銀任せ)の格好ではあったが、4本目については安倍首相をはじめ、かなり精力的に動いていた。これは政府専用機の航続距離などにも表れていると思われる。

 この4本目の矢については、本来の意味での国民の期待を抱かせる。期待そのものが薄れかけていたアベノミクスがこれで再び復活してきた。まさに進撃のアベノミクスとも言えようか。

 消費増税も予定通り実施されるとみられる。昨日指摘したようにオリンピックの自国開催は財政の分岐点となる。この勢いを生かして財政再建にもはっきりとした目途をつけられるような5本目の矢もほしいところ。さらに市場の波乱要因とさせないためにも、1本目の矢の処理についても考えておくこともお勧めしたい。

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by nihonkokusai | 2013-09-11 10:08 | アベノミクス | Comments(0)

東京五輪開催の2020年は日本の財政の分岐点に

 2020年の夏季オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まった。スペインのマドリードが東京を追い上げたとされていたが、決選投票は東京とトルコのイスタンブールの対決となり、東京が選出された。一部のニュースによるとIOC委員の44、45人の票が見込めるとされていたそうだが、最初の投票で東京が獲得したのは42票とほぼ読み通りとなっていたようである。このあたりロビー活動がかなり功を奏しており、決選投票での圧勝は日本のプレゼンテーションもかなり影響していたと思われる。

 東京オリンピック開催決定で今後7年間での日本経済への回復期待も強まろう。9日の東京株式市場は買いが先行し日経平均は14000円台を回復し、外為市場では日本のデフレ脱却が意識されてドル円は一時100円台を回復した。日銀の異次元緩和による期待創出についてはその波及経路がはっきりしないものの、東京でのオリンピック開催による期待は波及経路もはっきりしている。ここにきて回復基調となりつつある日本経済への効果も大きなものとなろう。

 9月9日に発表された4~6月期GDP改定値は前期比年率3.8%増と、速報値の2.6%増から上方修正された。2日公表された法人企業統計の内容が加味され、設備投資が大きく引き上げられたことによる。安倍首相は10月1日の日銀短観を確認してから来年度の消費増税について判断するとしている。その短観も現在調査期間中であり、元々良い数字が期待されているが、そこにオリンピック効果もオンされる。来年4月の消費税の引き上げは予定通りに実施される公算が高くなってきた。

 消費税の引き上げは、日本の財政再建が大きな目的となっている。政府は2020年度までにプライマリーバランスを黒字化するのを目的としているが、予定通りの消費税の引き上げが行われたとしても、その達成は困難との見方も出ている。東京オリンピック開催の2020年までにプライマリーバランスを均衡もしくは黒字化は可能となるのか。過去の自国開催のオリンピックが日本の財政にとって分岐点となっているだけに、2020年も日本の財政にとっても大きな分岐の年となることが予想される。

 ここでも何度か指摘したが、過去のオリンピックの自国開催と財政の動向を再確認してみたい。1964年の東京オリンピックに向けてのインフラ整備等の反動が、昭和40年不況を呼び、戦後初の国債発行に繋がった。札幌で冬季オリンピックが開催された1972年は日本列島改造論が出た事に加え、福祉元年とも言われた年となった。その後のオイルショックも加わり、高度成長から低成長時代に移るとともに、一般歳出に占める社会保障費を増加させるきっかけとなった。長野で冬季オリンピックが開催されたのが、1998年2月である。この2月に30兆円の公的資金枠を設けた金融システム安定化法が成立するなど、日本では不良債権問題が大きくクローズアップされた。11月にはムーディーズによる日本国債の格下げがあり、年末には運用部ショックもあった。日本の財政悪化が加速されたのが、この1998年あたりからである。

 2020年が日本の財政にとり分岐点となるならば、それはこれまでのように悪い方向に向かうのか、それとも良い方向に向かうのか。すでに1000兆円を超えている国の借金がさらに増え続け、日本の債務状態が深刻な問題となり、長期金利が大きく上昇するといった事態が発生するのか。それとも日本の債務悪化に一定の歯止めが掛かり、オリンピック開催をきっかけに日本の債務問題が解消の方に向かうのか。何かしら起きるとすれば前者の可能性が高いように思われるが、後者となるような努力がいまは必要になると思われる。7年という月日は決して長くはない。

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by nihonkokusai | 2013-09-10 09:47 | 財政 | Comments(0)

日銀の次の一手のリスク

 9月3日の朝日新聞の一面に「日銀、消費増税なら追加の金融緩和検討 金利低下促す」との記事が掲載された。この記事によると日銀の黒田総裁は8月30日に集中点検会合に同席した際、増税時に景気が悪化する見通しであれば、追加緩和する方針を示唆していたことが、複数の関係者の話で明らかになったそうである。

 この記事はいくつか注意すべきことがある。ひとつは黒田総裁は消費増税と追加緩和をセットにした話をしているわけではない点である。黒田総裁はこれまでも追加緩和に対しては特に否定はしていない。総裁会見でも支障があれば、上下双方向の調整は行うとしており、今回の発言は特に注目すべきほどのものではない。

 日銀としては細かい金融調節、つまり戦力の逐次投入は行わないとしているが、これも追加緩和を否定したものではない。大胆な異次元緩和を行ってしまったことで、このような大胆な政策を何度も行うことなどできない面もある。また、リフレ政策を全面に押し出してしまった以上は、かつての日銀の政策の延長のようなことはしたくないということもあろう。そもそも実弾に限りがあるという問題もある。

 消費増税による景気への悪影響が出た際に、日銀がそれをフォローする姿勢を示した背景には、政府にはどうしても消費増税を行ってもらわなくてはならない理由も存在する。日銀の異次元緩和による大量の国債買入は、ひとつ間違うと財政ファイナンスと捉えられかねない。財政ファイナンスではないことを示すのは日銀ではなく政府の姿勢が必要であり、政府による財政規律の厳守が担保になっている以上は、世界への公約どおりに消費増税は実施してもらわねば困るものとなる。

 それではもし日銀が追加緩和を行うとしてどのような手段を有しているのであろうか。そもそも今回のリフレ派の壮大な実験場となった日本では、日銀の異次元緩和によりコアCPIが2%に上昇することが理論上の背景にある。物価が上がればデフレが解消されるとしているが、もし予想通りに物価が上がらずに、消費増税による景気悪化が意識されていたならば、日銀の現在の理論からはマネタリーベースを上乗せしなければならず、さらになる大胆な国債買入が必要となるのではなかろうか。質よりも量が求められる。

 来年4月の景気物価動向を予想することは難しいが、もし仮に、あくまで仮の話であるが、2%の物価目標に向けて物価が順調に上昇していたものの消費増税で景気悪化が想定された際に、日銀はどのような政策をとってくるのか。株価下落なども想定されるため、リスク性商品の大胆な買入などが予想される。量というより質が求められるが、日銀としてはこちらの方がまだ実施しやすいと思われる。「貸出増加を支援するための資金供給」や「成長基盤強化を支援するための資金供給」を拡充するなどの方法もありうるか。

 リフレ政策とはデフレからの脱却を目的にしており、それは結果として物価が上がれば良いことになる。景気そのものというよりも物価は金融政策でコントロール可能ということが前提となっている。物価が上がらなければ日銀の責任となるが、景気動向については直接は関与しない。そもそも消費増税は物価を上昇させる結果となるものであり、その分の物価上昇は日銀の目標には加味されないとはいえ、数値上の物価は上昇する。そこにさらなる異次元緩和を行えば、インフレ期待を越してインフレ懸念が生じることも想定される。消費増税後の追加緩和は物価を見るか景気をみるかで手段も異なるとともに、ひとつ間違うと財政ファイナンスへの懸念が強まることや、インフレ懸念に火をつけてしまうことにもなりかねない。

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by nihonkokusai | 2013-09-09 09:54 | 日銀 | Comments(0)

欧米の長期金利上昇の背景と日本の長期金利の異常さ

 9月5日の欧米市場では安全資産とされる米独英の国債が下落した。この結果、米国の10年債利回り、つまり米国の長期金利は6日の東京時間に3%台に乗せた。ドイツの長期金利も2%台に上昇し、一時2.05%と2012年3月以来の水準に上昇した。英国の長期金利も約2年ぶりの3%台となった。

 5日にはECB政策理事会が開催されたが、主要政策金利であるリファイナンス金利は0.5%に据え置き。下限金利の中銀預金金利も0.0%に、上限金利の限界貸出金利も1.0%にそれぞれ据え置かれた。またイングランド銀行のMPCにおいても、政策金利は過去最低水準の0.5%に据え置かれ、量的緩和の枠も3750億ポンドが維持された。

 ECB政策理事会後の記者会見でドラギ総裁は、利下げについては、いつもと同様に協議したと説明し、景気の回復については非常に慎重な見方を持っているとした。ただし、「低水準だが、経済が活力を徐々に取り戻してきた」とし、言葉を選びながら景気が最悪期を脱したと説明した(9月6日日経新聞朝刊)。

 欧州委員会が8月30日発表した8月のユーロ圏景況感指数は95.2と4か月連続で改善した。9月4日に発表されたユーロ圏PMI改定値は総合が51.5と2011年8月以来の高水準となった。ユーロ圏経済は4~6月期に7四半期ぶりにプラス成長を回復し、その後も勢いが増している。

 ユーロ圏の信用不安が徐々に後退し、その分景気回復の足取りがしっかりしつつある。なかなか雇用が回復せず、南欧の経済もまだ不安定であり、ECBも慎重な姿勢を維持せざるを得ない。しかし、ドイツや英国の長期金利の上昇は、欧州が有事から平時に戻りつつあることを示しているように思われる。

 世界的なリスク後退により、米国の長期金利も異常な低金利状態から修正され、まずは2011年7月あたりの水準まで戻ろうとしている。米国債が急落しているというよりも、これまでが異常な低金利であったことによる反動と見ておいた方が良いと思われる。

 米国でもここにきての経済指標は景気回復を示すものが出ており、4日に発表された地区連銀景況報告(ベージュブック)でも、米経済は「控えめないし緩やかなペース」で拡大したとしている。

 シリア情勢など不透明材料はあるものの、9月17日、18日のFOMCにおいて量的緩和が縮小されるとの見方は依然として強い。よほどの不測の事態でも起きない限りは、テーパリング(緩和縮小)が決定され、来年にかけて国債とMBSの買入額が徐々に減額されるという見方がコンセンサスになりつつある。これも見越しての米国の長期金利の上昇とも言える。

 安全資産として買われていた国債が、リスク後退により下落している。参考までにスイスの長期金利も今年6月末頃に1%台に上昇しており、こちらも2011年8月あたりの水準で推移している。しかし、日本国債については5月23日に1.0%にワンタッチしたものの、その後は低下し0.7%台での推移となっている。国内経済については欧米同様に回復基調になっており、9月5日に日銀は景気の現状判断を緩やかに回復しているとし、判断を上方修正している。回復との表現となったが、この表現はリーマン・ショック以降初めてである。

 日本の長期金利が低位で安定しているのは、日銀による大規模な買入があるためとされるし、需給面でみればその通りかもしれない。ある意味、日本のデフレは異次元緩和などで解消できるものではないとの冷めた見方も影響しているのではなかろうか。しかし、異次元緩和の効果はさておき、世界的なリスク回避と景気の回復が欧米の長期金利の上昇を促しているなかにあり、このような低水準にある日本の長期金利が異常に低く見えるのも確かである。

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by nihonkokusai | 2013-09-08 11:56 | 債券市場 | Comments(0)

消費増税に対する浜田氏の意見

 安倍首相は消費増税についての最終判断は10月1日に発表される日銀短観を確認してから行うとか。何のために60人もの有識者を集めて会合を行ったのか、との疑問はさておき、この会合は消費増税に関して、有識者と呼ばれる人達がどのような認識を持っているのかを確認する上でも、貴重な機会であったのかもしれない。

 各参加者の用意した資料とともに、どのような議論が交わされていたのかも議事要旨から確認できる。今回はそのなかで、消費増税反対の急先鋒といえる浜田宏一内閣官房参与のコメントから見て見たい。

 増税の反対理由として、「税率を上げても、それが国民所得を減らすような形で働く状況では何の役にも立たず、国民に負担がかかるだけである。 」と指摘していた。これは長らく議論されていたものであり、これまで消費税引き上げが先送りされた大きな理由であると思われる。

 そして「次に先日発表された第1四半期の4-6月期のGDPの伸びは十分な力が不足している。」としている。

 9月9日に発表されるGDP改定値では、8月発表の速報値から大きく上方修正され、民間調査機関10社がまとめた予測の平均は前期比年率換算で実質3.8%増と速報値(2.6%増)を上回るとされている(日経新聞)。これは2日に発表された4~6月期の法人企業統計でGDP改定値を算出する基礎となる季節調整済みのソフトウエアを除く全産業の設備投資額が予想以上に増加したためである。ところがこのあとのコメントをみると、浜田氏は設備投資の伸び悩みを指摘している(たぶん製造業の伸び悩みの指摘だとは思うが)。

 「今、潜在成長率は、日本経済の成長できる天井のようなところで、そこに向けて一生懸命アベノミクスの一の矢で日本経済を天井まで持っていこうと努力している。それで、雇用も改善している。 しかし、まだGDPギャップが2%ぐらいは存在するので、設備が余っている。設備が余っているところに投資が大きく生まれるはずがない。」

 日銀が国債を大量に買い込むことで、どのようにして潜在成長率を引き上げることができるのか。そこには期待という魔法の効果が存在するのであれば、人々の消費意欲だけでなく企業の投資意欲も引き上げて設備投資も自然に伸びていくというのが、リフレ派の発想ではなかったろうか。もちろんその効果はあるが、それでも時間が掛かるために、増税は時期尚早との指摘のようである。しかし、本当に魔法の効果は現れてくるのであろうか。

 この増税反対意見に対しては、中空麻奈氏が「最近、消費税率の増税の方ばかりに目が行き過ぎているかと思う。消費増税はあくまでも社会保障との一体改革と理解しているので、やはり両輪で考えないとそれは違うのではないかというのがベーシックなところである。 」と指摘している。これが正論のように思う。

 消費増税に反対しているのは浜田・本田両官房参与を筆頭とするいわゆるリフレ派である。黒田日銀総裁は増税賛成派であり、日銀としてはそのようにまとまっているように見えるが、過去の岩田副総裁の発言等からは岩田副総裁は本音では増税に反対しているのではないかとも推測される。読売新聞の社説でも増税反対との意見が出され、政治に影響力を持つある人物の影も見え隠れする。

 アベノミクスはリフレ派の主張をほぼ100%取り入れた政策であった。それが円安株高を招いたとして安倍政権の支持率を押し上げた。このため消費増税の行方についてもリフレ派の主張をある程度尊重さぜるを得ないために、結論をぎりぎりまで先送りしているように思える。

 ここで最も問題となるのは、そのリフレ派の政策は本当に正しいものであったのかという点である。さらに過去のリフレ派の主張には、財政規律については蔑ろにしている面が多分にあった。消費増税の扱いも同様といえる。もし消費増税が先送りされるとなれば、4月4日の異次元緩和とともに財政規律に対する懸念がリスクとして浮かび上がってくる可能性がある。これが最も重要な問題点となる。

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by nihonkokusai | 2013-09-06 09:42 | 財政 | Comments(4)

過去のオリンピック開催国と財政金融危機

 2020年の夏季オリンピックの開催地が日本時間で8日の早朝に決定される。昭和39年の東京オリンピックのときは、私はまだ幼稚園児であったが、聖火リレーを旗を振りながら生で見た記憶や、友人宅のカラーテレビで開会式を見た記憶も鮮明に残っており、個人的には是非東京招致を成功させてほしいと願っている。

 個人的な思いはさておき、日本で過去オリンピック(夏季・冬季)が開催された年は日本の財政にとって大きなターニングポイントになったことは、先日のこのコラムでも指摘した。今度は国内ではなく、海外でのオリンピック開催(今回は夏季のみ)とその国の経済や財政に与えた影響を見てみたい。もちろんオリンピックを開催するのは国ではなくて都市であるため、直接国の財政に影響しない場合もあるかもしれないが、国を挙げてオリンピックを開催する場合がほとんどとみられ、インフラ整備等含めてその国の財政にはかなり影響があると思われる。

 今回は参考までに1964年の東京以降の夏季オリンピック開催国と開催都市を列挙してみた。

1964年東京(日本)、1968年メキシコシティー(メキシコ)、1972年ミュンヘン(西ドイツ)、1976年モントリオール(カナダ)、1980年モスクワ(ソ連)、1984年ロサンゼルス(アメリカ)、1988年ソウル(韓国)、1992年バルセロナ(スペイン)、1996年アトランタ(アメリカ)、2000年シドニー(オーストラリア)、2004年アテネ(ギリシャ)、2008年北京(中国)、2012年ロンドン(イギリス)、2016年リオデジャネイロ(ブラジル)

 1968年のメキシコオリンピックや1972年のミュンヘンオリンピックあたりでは、特にメキシコやドイツが直接関係した世界的な経済金融危機は発生してはいない。参考までに1982年にメキシコの通貨危機が発生し、1989年11月にベルリンの壁が崩壊した。

 1976年のカナダで開催されたオリンピックは、カナダの財政赤字を膨らませ1990年代に入り本格的な財政再建に成功した。

 1980年のボイコット問題で揺れたソ連でのオリンピック開催後、11年経過した1991年にソ連そのものが崩壊した。

 1984年には米国(ロサンゼルス)で開催されたが、翌1985年にプラザ合意があった。米国の貿易赤字と財政赤字の双子の赤字問題による対外不均衡を、先進各国は為替相場の調整で是正しようとしたものである。これにどの程度直接オリンピックの影響があったのは不明ながら、米国の財政そのものが問題視されていたことは確かである。

 1988年に韓国でオリンピックが開催された。その韓国で通貨危機が発生したのは1997年である。

 1992年にはスペインでオリンピックが開催された。今回のオリンピック招致の東京のライバルはスペインのマドリードである。1992年のオリンピック後のスペイン経済は景気が悪化した。

 1996年のアトランタオリンピックの翌1997年にアジアで通貨危機が発生し、それがロシアにも及び、LTCMが1998年9月に破綻に追い込まれた。

 2000年のオーストラリアでのオリンピック以降、オーストラリア経済成長率は鈍化。

 2004年のギリシャでのオリンピックがギリシャの財政を悪化させ、2010年の欧州の信用不安を招くことになる。

 2008年の中国で開催されたオリンピックだが、その後の景気悪化が懸念されたものの、それほど大きな落ち込みとはならなかった。

 2012年のロンドンオリンピックは、欧州の信用不安が吹き荒れるなかでの開催となったが、オリンピック閉会後、次第に欧州の信用不安は後退することとなる。

 個別にはもう少し調べてみることも必要ながらも、オリンピック開催が世界の経済金融危機に多少なり関係していたことも確かではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-09-05 09:56 | 金融の歴史 | Comments(0)
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