牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

<   2013年 08月 ( 29 )   > この月の画像一覧

日本だけが中央銀行への依存度を高めてしまうリスク

e0013821_9501259.jpg 高橋是清が1931年12月に蔵相に就任し、直ちに禁輸出を再禁止し高橋財政がスタートするが、この背景には世界恐慌と呼ばれる世界的な経済金融危機が発生し、それが旧平価に対し円がとくに弱かったタイミングで金本位制に移行した日本を直撃した。

 1929年に米国で大恐慌が発生した。当時の対米輸出の中心であり、外貨獲得の主役であった生糸輸出の破綻を通して国際収支を圧迫した。生糸だけでなく鉄鋼、さらには米など農産物等の物価も急激に下落。農村では米価の下落に加え、冷害も加わり、多大な影響を受けた。株価も急落し、物価や株価の下落により中小企業の倒産が相次ぐ。失業者が街にあふれ、「大学は出たけれど」が流行語となった。これらにより国民一般の購買力も大きく低下した。いわゆる昭和恐慌であり、金の流出を避けるため、財政健全化の必要から緊縮財政となり、強力な金融引き締め策も相まって、デフレに陥った。時の蔵相の名前から井上デフレと呼ばれた。

 2008年のリーマン・ショック、2010年あたりからの欧州の信用不安の拡がりもまた、1929年の世界大恐慌と同様に百年に一度とされる世界的な金融経済危機を発生させた。日欧米の危機封じ込め作戦の中心にあったのが、中央銀行による国債の買入を主軸とした非常時の対応策であった。時間を稼ぐための手段ではあったが、結果として危機封じ込めに成功したといえる。すでにギリシャの長期金利の動向が問題視されるようなことはなくなり、格付け会社の動きが大きなニュースに取り上げられることもなくなった。米国の株式市場は過去最高値を更新してくるような状況になった。

 日米欧の中央銀行が非常時の対応を行ったことにより、市場は中銀依存度を高める格好となった。それがバーナンキ・プットやドラギ・マジックと呼ばれ、日本ではアベノミクスと呼ばれた。

 百年に一度とされる危機が去りつつあるのであれば、過剰な痛み止めの投与は少しずつ減らす必要がある。FRBはその準備を進め、9月のFOMCで購入する債券の金額を徐々に減少させることを決定し、量から金利、つまり非伝統的な手段から通常手段に移行しようとしている。ECBやBOEもフォワード・ガイダンスを持ち込むことで、やはり量からの撤退を行いつつある。そのようななかにあり、世界的な危機が後退しつつあるにもかかわらず、大胆とか異次元とか呼ぶような金融政策を行っている中央銀行がある。

 高橋財政はたしかにデフレからの脱却を意図したものであるが、それは過去まれに見る不況からの脱出を計ったものである。それに対してアベノミクスと呼ばれる政策は長きにわたる日本のデフレの状態からの脱却を目指すとして、非常時の対策をさらに強化して実行してきている。欧米が市場の中銀依存度からの脱却を図っているのに対して、日本ではむしろそれが強化されてしまっている。

 高橋財政の際も非常時の対応から脱却しようとして、その中心にいた高橋是清が軍部により暗殺されてしまう。予算獲得のために中銀依存度を後退させるようなことはできなくなった。アベノミクスでは財政健全化を唱えているものの、その要のひとつ消費増税についても決めあぐねているばかりか、消費増税で景気悪化を招いた際には、日銀の追加緩和を求める声も出ている。

 バズーカ砲と呼ばれた異次元緩和の第二弾が実施されると、高橋財政時の日銀による国債引受という手段となんら変わらないとの認識も出てくる恐れがある。市場関係者からは、それでも特に問題はなかろうとの声もある。果たしてそうなのか。危機が去っても中銀依存度をさらに高めてしまう中銀の末路を確かめる意味でも、高橋財政後の日本の財政金融状態を再確認すべきではなかろうか。

拙著「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」を参考、ご予約受付中です。



*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-08-08 09:25 | 日銀 | Comments(0)

『聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓』のまえがきより

 この本を読んでいただけるとおわかりの通り、私はリフレ派と呼ばれる人達の考え方に対しては、あまり賛同できません。そのリフレ派がデフレ脱却の手本としていたのが高橋財政でした。リフレ派は特に大きなレジーム・チェンジとされた日銀による国債引き受けが、デフレ脱却に大きな効果があったとの見方をしていたのですが、ここに違和感を覚えていました。是清の政策が何か勘違いされている面があるのではないかと訝しんでいたのです。

 日銀による国債引き受けは戦後の財政法で禁じられており、現在の主な国でもやはり中央銀行による国債引き受けは禁じられています。その禁じられた政策を行ってまで、デフレから脱却をめざすとするリフレ派の意見は、危険な発想と考えていました。

 ところが2012年11月のアベノミクスの登場により、そのリフレ政策が日銀の金融政策に取り入れられることになり、私自身たいへん大きな衝撃を受けました。私ばかりでなくマーケットも同様であったようです。このショックもあって円安・株高が急速に進行し、リフレ政策を全面に打ち出したアベノミクスは流行語にもなりました。

 アベノミクスにおける金融政策では、さすがに財政法で禁じられている日銀による国債引き受けまでは踏み込みませんでしたが、その代わりに年間発行額の7割もの国債を買い入れるという異次元緩和政策が2013年4月4日に決定されたのです。

 リフレ派の政策が日銀の政策となり、その模範とされたのが是清の政策であるのならば、高橋財政を改めて確認し、それとアベノミクスを比較することがたいへん重要なものになると考えていました。そんな矢先にこの本の執筆を依頼され、異次元緩和を受けて市場が揺れ動いている最中に書き上げたのが本書なのです。

 本の執筆にあたり、あらためて高橋財政のことを調べて見ると、どうも是清はデフレ脱却をめざし、期待に働きかけることを目的として、日銀による国債引き受けを行ったわけではなさそうだということがわかりました。高橋財政でデフレ脱却に成功したのは、最初のレジーム・チェンジとされる金輸出禁止による効果が大きかったように思われるのです。期待に働きかけるというより、円安や財政政策、政策金利の引き下げなどにより直接に経済に働きかける経路が存在していたのです。その財政政策に必要とされる国債の発行方式として日銀の国債引き受けを選択したと思われます。

 これに対してアベノミクスでは、円安による株高や輸入物価の上昇等への影響はあったものの日銀の異次元緩和が実体経済に働きかけるような経路が見当たりません。リフレ派の言うところの期待に働きかける効果についても、なにやら呪文で物価が上昇するかのような印象を持っています。

 アベノミクスの中心には日銀の異次元緩和があり、その異次元緩和の主役は国債です。その日銀による国債引き受けが、高橋財政の出口政策を困難にさせることになりました。アベノミクスもやはり同様に出口が大きな問題となることが予想されます。このあたりについてはぜひ本文を読んで見てください。

 書きたかった高橋是清の政策がこのようなかたちで本になり、うれしい限りです。より多くの方に読んでいただき、アベノミクスとは何であるのかについて、あらためて考える際の参考にしていただけると幸いです。

 拙著『聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓』のご予約受付中です。アマゾンでのご予約はこちらから、お願い致します。書店より早く入手が可能となるようです。




*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-08-07 11:16 | 本の紹介 | Comments(0)

長期国債先物の制度変更も検討すべきでは

 一般に債券先物と呼ばれるのは、東証に上昇している長期国債先物で、1985年に日本で初めて上場した金融先物取引である。来年には東証と大証の統合を受けて債券先物のシステムは大証に統合される。このタイミングで超長期国債先物取引が再開されるが、長期国債先物についてもその制度変更を考慮すべきタイミングに来たのではなかろうか。

 長期国債先物における課題のひとつが個人の参入である。そのためにミニ取引を導入したが、閑古鳥が鳴いている状態にある。債券取引は株やFXなどに比べて難しそう、ということもあるが、1985年の導入当初は個人の参入もそれなりにあった事も確かである。ところが、時間の経過とともに個人の取引は減少していった。プロ同士の駆け引きの場に個人の入る余地なしと言ってしまえばそれまでだが、日経平均先物やFX同様に値動きがある以上は個人の参入余地も十分にあると思われる。大証とのシステム統合で債券先物を取り扱う業者も増加するとみられ、これもひとつのチャンスとなる。

 個人投資家にとって、アベノミクスに対してはここにきて多少薄れてきたとは言え、関心は高いはずである。このアベノミクスの中心にあるのが拙著「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」でも指摘したが、日銀の異次元緩和であり、それにより大胆に買い入れる国債である。今後の日本国債の動向については、債券市場関係者だけでなく個人も多いに関心を持っていると思われる。特にアベノミクスの出口のことを考慮すると、国債市場に大きな影響が出てくることも想定される。

 そのような際にヘッジという手段というより、投機的な取引の一環として長期国債先物の運用を考える個人投資家が増えてきてもおかしくはない。そのために長期国債の制度そのものを変更し、個人に少しでもわかりやすい先物取引にしてはどうか。

 長期国債先物は標準物という架空の国債を取引するが、その利率は6%に設定されている。6%という利率は東証に長期国債先物が上場された1985年当時の長期国債の利率を参考に決定された。その後の長期金利は低下し続け、現在は1%以下となっている。

 標準物の利率は、実際に発行される10年債の利率と大きく乖離し、標準物の利率を引き下げようとの動きが過去にもあった。しかし「標準物利率の引き下げによって表面利率が他の銘柄に比べ極めて低い銘柄が複数限月にわたり最割安銘柄になった場合における長期国債先物取引の流動性への影響に懸念がある等の理由により」(東京証券取引所『国債先物取引市場創設15周年を迎えて』より)、変更されずに現在に至っている。ほかにも債券先物の価格の連動性を考慮して、このままでも問題ないのではとの市場参加者からの声も出ていた。

 ただし、長期国債先物が東証に上場してからすでに四半世紀以上経過しており、その間に長期金利が下降しただけでなく、国債の残高や発行額が劇的に増加している。財務省は先物のチーペストのことも意識して10年債のリオープン発行を増やすような対策も講じている。そのチーペストをなるべく残存10年に近いものとすれば、長期国債先物の動きが長期金利に連動しやすくなり、現在の7年債に連動するよりも値動きもよりわかりやすくなる。

 標準物の利率をより実勢を配慮して、たとえば2%あたりとし、受け渡し適格銘柄も現在の日本国債の巨額な発行高を考慮すれば、残存9年以上11年未満の10年債としても、1985年当時の発行額と比較して問題はない。もちろん日銀がカレント含めて大量に国債を購入して流通玉が減少している現実も配慮しなければならない。しかし、その日銀による国債の大量購入が債券の流動性を低下させており、その流動性を補完する意味での先物の改革も必要であろう。このため債券取引のなかでも流動性の高い長期国債先物の流動性をさらに向上させ、いまのうちに個人も含めて参加者の裾野を拡げておく必要があると思う。



*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-08-07 09:46 | 債券市場 | Comments(0)

テーパリングのタイミング

 金融市場関係者の間で最近流行っているカタカタ語に「テーパリング」というものがある。市場関係者などからは今頃、何を行っているのかと言われそうだが、テーパリング(tapering)とは、FRBのバーナンキ議長が発した用語で、量を減らすことを意味し、量的緩和の縮小を示す用語である。出口戦略(exit strategy)の一環ではあるが、あえて出口との用語は使わず、引き締め策に転じるのではないことを示しているとみられる。このあたり、出口戦略に向けてかなり神経をとがらせているように見受けられる。

 そのテーパリングの有無を見定めるための指標のひとつが雇用である。FRBの使命というか目標として定めているのは物価安定と雇用最大化を促すという「デュアル・マンデート(2つの目標)」のひとつである。

 8月2日に7月の米国の雇用統計が発表された。7月の非農業雇用者数は16.2万人増となり、事前予想の18万人程度(日経新聞)を下回った。同時に発表された5月と6月分もそれぞれ下方修正された。失業率は前月から0.2ポイント低下して7.4%と、2008年12月以来の水準まで改善した。この雇用統計を受けて、少なくとも9月での量的緩和縮小決定はないかもしれないとして、2日の米10年債利回りは前日の2.7%台から2.60%近辺に大きく低下していた。

 米債は2日に大きく戻したものの、その前日に下げた分を取り戻した格好となっており、いわゆるショートカバーが入ったようだ。この日、CMEグループは米雇用統計発表3秒前に、米10年債と30年債の先物取引を5秒間停止した。市場が過度に変動した場合に自動的に発動されるストップ・ロジック・イベントが発動したそうであるが、短期的な売買がかなり入っていたことをうかがわせるものであった。

 このような仕掛け的な動きが市場の値動きを大きくさせることも予想され、FRBとしては「バーナンキ・プット」という言葉が生まれるぐらいに特に株式市場には神経をとがらせており、出口戦略はかなり慎重に行っているように思われる。ちなみにバーナンキ・プットとは、米国の株価が下落すればバーナンキ議長が追加緩和策等で株価を支える動きをしてくれることを表現したカタカナ専用語である。

 セントルイス連銀のブラード総裁は、労働市場と経済が強さを増している確証を得た上で、債券購入のペースを減速させるべきだとの発言したようだが、ここにきての米国の経済指標のデータを見る限り、大きく悪化しているものは少なく、FRBが経済指標次第としているテーパリングの時期については、7月の雇用統計を受けてもさほど後退しているようには見えない。ダウ平均やS&P500種株価指数などは過去最高値を更新し続けている。

 今回の7月の数字も失業率はテーパリングの前提となる7%近辺への低下も見えてきつつある(ゼロ金利を続けるのは失業率が6.5%まで)。このため9月のFOMCでテーパリングが決定される可能性も十分にありうる。バーナンキ議長も自らの退任時期も睨み、9月あたりからのテーパリングの開始を意識しているのではないかと思われる。テーパリングの前提条件は、雇用を含めて米景気の回復、物価の安定を掲げてはいるものの、実際には世界的な金融経済リスクの後退が意識されているとみられるためである。

 拙著『聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓』のご予約受付中です。アマゾンでのご予約は下記画像をクリックいただければ専用ページに移行します。書店より早く入手が可能となるようです。よろしくお願い致します。



*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-08-06 09:37 | 中央銀行 | Comments(0)

『聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓』

e0013821_182371.jpg
 このたび「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」という本を書かせていただきました。まもなく発売されます。

 この本の表紙カバーの安倍首相と高橋是清が並ぶ写真を見て、本の内容についてピンときた方もいらっしゃるかもしれません。

 安倍首相は2013年6月のロンドンでの講演で、「ワンス・アポン・ア・タイム。日本に、高橋是清という、財政家がおりました。」と話をはじめ、深刻なデフレから日本を、世界に先駆けて救い出すことに成功した人物として高橋是清を紹介しました。

 高橋是清が深刻なデフレからの脱却のために打ち出した政策が高橋財政です。それがスタートしたのは1931年12月です。安倍首相はむかし、むかしと言いましたが、この年に生まれた方でご存命の方も多いはずです。高橋財政は過去の歴史の物語などではなく、少し前の出来事でもあったのです。

 高橋是清は当時の日本の財政や金融を知り尽くした人物でもありました。その高橋是清が打ち出した政策とはどのようなもので、それがアベノミクスとどう関わりを持っているのか。そして何故、高橋財政は結果として失敗したのか。ぜひこの本でそれを確認してみてください。

 アベノミクスは高橋財政と同様に悲劇的な結末を迎える危険性が存在します。消費増税を含めた財政再建策を先送りし、既得権者へのバラマキを許し、その結果、異次元緩和で見えにくくさせた財政悪化が表面化、長期金利の急激な上昇を招いて世界経済のリスクとなる懸念が存在します。私たちは高橋是清からの警告をしっかり受け止め、アベノミクスの行く末を見守って行く必要があるのです。

 アマゾンでのご予約は下記の画像をクリックしていただけると御購入ページに移ります。アマゾンでは書店より少し早く入手が可能となるようです。



目次

はじめに

第1章 アベノミクスと高橋財政、共通する時代背景

○アベノミクスが模範とした高橋財政
リフレ政策への決意と期待のスパイラル
高橋是清を取り上げた麻生財務相の発言

○高橋是清とその時代の状況
楽観主義者だった是清
騙されて奴隷、騙されて無一文、そして日銀へ
日露戦争の戦費調達で活躍し、貴族院議員に
第一次世界大戦による好況、終戦後のバブル崩壊
短期間だった高橋是清内閣
関東大震災による被害と補償
不況に追い打ちをかけた金融恐慌
日銀特融と裏白日銀券の発行
日本経済をさらに冷え込ませた世界大恐慌

○震災、金融危機……酷似する時代状況
バブル崩壊後の不良債権処理に苦しむ日本経済
アジア発の通貨危機が世界に波及
債券相場の混乱とゼロ金利政策
デフレに拍車をかけたゼロ金利解除
量的緩和政策の解除に意欲的だった安倍官房長官
デフレを深刻化させた世界的な金融危機
ギリシャ問題で表面化した欧州の信用不安
未曾有の被害を出した東日本大震災
時々刻々、矢継ぎ早の対応
アベノミクスと高橋財政が生まれた共通の背景
首相がコロコロ代わるところもウリ二つ

コラム 高橋財政とアベノミクスの時代

第2章 高橋財政の成功と挫折

○高橋財政の背景にあった金本位制
円安・低金利・積極財政を柱とした高橋財政
国際協調の流れに沿った金本位制への移行
世界大戦による金輸出禁止と、戦後の再解禁
昭和恐慌の発生

○高橋財政とはどのような政策だったのか
政権交代と高橋財政のスタートで市場のムードが一変
政権交代による期待
円安放置とその後の為替安定策
金融緩和による低金利政策
財政拡大策と裏腹に発行が決まった初の赤字国債
膨らむ国債、国債依存度の上昇
高橋財政前に景気回復の下地はできていた

○高橋財政で成功したこととは
世界最速でのデフレ脱却! その一方での摩擦と孤立
一石三鳥の妙手とされた日銀の国債引受
日本財政「ちぐはぐさ」の淵源
市中銀行・日銀・大蔵省の相互不信が招いた財政ガバナンス危機

○財政規律が失われるリスク
日銀国債引受が招いた悲劇
高橋財政の出口戦略
高橋財政後に起きたこと

○高橋財政とアベノミクスはどこが同じか
高橋財政とアベノミクスの共通点
高橋財政とアベノミクスの相違点

コラム 日銀法改正の動き

第3章 高橋財政はアベノミクスでも通用するのか

○動きだしたら止められないアベノミクスの金融政策
高橋財政は今も通用すると主張するリフレ派
市場に期待を引き込む
結果としての財政ファイナンスと狙っての財政ファイナンス
多くの国々が中央銀行による対政府与信を禁止している理由

○日銀の異次元緩和の問題点
異次元緩和のキーナンバーは「2」
政策の中心が金利からお金の量へ
撤廃される暗黙のルール、制限なしの買入が可能に

○国債の動きがアベノミクスのキモになる
アベノミクスのセンターは日本国債
異次元緩和の効果、その3つの経路
異次元緩和を受けての国債の動き 急騰から一転急落
リスクを見た大手銀行が利益確定売りに走った
長期金利が1%に上昇! ついに調整局面へ
期待と不安が交錯した長期金利の変動リスク

○日銀は出口戦略を示すことができるのか
FRBの出口政策で取り残される日銀
自らを追い込んでしまった日銀
高橋財政とアベノミクスの共通の悩み
入口はどこか、出口はあったのか
            
○海外は日本の経済政策を懸念? ある程度黙認?
円安政策についての海外の懸念
異次元緩和についてはむしろ好意的?
壮大なる実験を注視する世界
異なるドイツ・イタリア、両首相の反応
IMFはアベノミクスを警戒

コラム 実質金利と名目金利

第4章 高橋財政からアベノミクスが学ぶべき教訓

○規律を失った財政の暴走は止められない
歳出増加、しかし増税は先送り
消費税の引き上げが目指すもの
フィスカル・ドミナンスへの懸念
GDP比2倍超! 天文学的な額の借金をどうする

○アベノミクスに求められる成長戦略
アベノミクスの成長戦略は今のところ期待はずれ
必要なのは金融政策よりも成長戦略
生産性の低い部門に資金をつぎ込むことの怖さ
グローバル化に向けた新たな成長分野を創ることがカギ

○出口戦略の有無が成否をわける
求められるのは、高橋財政の上を行くこと
あらためてリフレ政策の危険性を説く
高橋財政に学ぶべき出口の難しさ
大胆さを補完する繊細な注意こそ必要
[PR]
by nihonkokusai | 2013-08-05 18:03 | 本の紹介 | Comments(0)

10年前の異次元緩和に関する議論

 日銀の金融政策決定会合議事録等(2003年1月~6月開催分)が公開された。2003年3月25日に開催された臨時の金融政策決定会合では、インフレターゲットに関する意見のやり取りがあった。

 量的緩和策のなかでの、透明性向上と流動性強化の波及メカニズムに関する議論のなかで、まず福間委員からはリスクマネージメントなしにバランスシートを膨張させることは私企業では考えられないし、中央銀行としても考えられないとの指摘があった。また、インフレターゲットは、リスク・マネージメントとは完全に相反するわけで、両者の整合性を取りながらやっていかなければならないとの指摘があった。黒田日銀の異次元緩和によるバランスシート膨張には、果たしてリスク・マネージメントはどれだけ存在しているのか。

 福間委員はイグジット・ポリシーについても言及し、将来、今の量的緩和を脱する時に、幸いにも経済が良くなったという時に、非常に矛盾に満ちた政策をとらざるを得ない。我々の持っている資産を値下がりさせるような手段を取らなくてはならないと指摘している。

 「このイグジット・ポリシーは今直ちに考える必要はないが、頭の片隅に置いてやっていかねばならない」と言及している。これはそのまま現在の黒田日銀に向けられた発言とも言えるべきものである。参考までに当時の量的緩和策は福井総裁が国債買入の増額は行わなかったこともあり、当座預金の残高引き下げだけであれば比較的簡単に行えたのである。このあたり福井総裁は出口のことをかなり意識していたことは確かであろう。

 中原委員は、量的緩和の副作用として、短期市場の流動性が偏在してすること、それが中長期のマーケットにも波及していることを指摘。相場観が一方的でボラティリティが非常に低下していることについても触れている。これがVaRショックと呼ばれる、数か月後の債券の急落を招くことになった。そして市場では「デフレというのは単なる貨幣的な現象ではなく、グローバルな供給過剰とかその他色々な要因が複雑に絡みあっているものであり、マネタリーな分野だけでの対応で、デフレ脱却はできない」という認識が生まれているとしている。現在も債券市場関係を中心に、同様の考え方を抱いている人は多いはずである。

 須田委員は、企業、家計部門にとりマクロ的に見た支出の制約要因は流動性ではなくて、マネタリーベース供給が貸出等へ拡張的に作用しにくい点を指摘、ベースマネーが増えれば、マネーサプライは増加し、やがてデフレは止まる、という単純な貨幣数量説に基づいて、人々はインフレ予想を形成しているわけではないという当たり前のことが確認されたとしている。

 この当たり前のことは10年経過すると、当たり前ではなくなったのであろうか。日銀総裁が黒田総裁に代わってからは、このような当たり前の意見が審議委員からはほとんど聞けなくなっている。考え方が変わったというより、すでに10年前にその効果が疑問視されていたことを、黒田日銀は異次元緩和と称して行っているだけであると言える。

 ただし、田谷委員はマネタリーベースと為替相場の関係が経験的にも全くないとまでは言い切れないと指摘しており、同様の発想というか思惑により、からアベノミクスによる円安が生まれたことが考えられる。

 植田委員からは、「量について、これまで効果は小さいが、もっとやれば効くのではないかという議論は絶対負けない議論だと思うが、ある種、負け惜しみという感じもしないでもない」との発言もあった。的を射た表現と思う。

 これらの意見に対して、岩田副総裁はインフレターゲットというかダイナミックターゲットを導入すべきとの主張であり、波及メカニズムについては根幹は実質金利だと指摘している。このあたり、黒田総裁の主張に近い。さらに出口政策に関しては、物価連動債のようなものをいつでも国債に取り替えるというような政策も提案していた。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-08-05 13:42 | 日銀 | Comments(1)

消費増税を予定通り実施すべき理由

 ねじれ解消後初の臨時国会が8月2日に召集された。国会のねじれが解消し、安定政権が少なくとも3年程度は続くことも予想されるなか、安倍政権の最初の試金石は消費増税の行方となりそうである。消費増税法案は2012年8月に民主、自民、公明3党などが賛成したことで可決、成立している。ただし、この消費増税法案には附則18条が含まれており、安倍首相は種々の指標を確認し、経済情勢をしっかりと見極めながら判断していくとしている。つまり見直す可能性を残した格好となった。

 これに対して公明党の山口代表は記者会見で「消費税率を2段階で引き上げることは、いろいろな議論を経て法律で決めたことであり、重いものだ。いま出されている意見はすでに検討済みのものであり、変えなければならない状況にあるとは判断していない」と述べ、消費増税の見直しについては否定的な考えを示した(NHKニュース)。

 自民党の大島・前副総裁は派閥の会合で、「基礎的財政収支の赤字を平成27年度までに半減するなどとした財政健全化目標については、閣議決定であるとともに、国際公約でもある」と指摘。自民党の野田税制調査会長も、「財政健全化のシナリオが崩れることになれば相当のダメージがある。さまざまな経済指標を見ると、消費税率を引き上げる数少ないチャンスになりつつあり、タイミングが来れば安倍総理大臣は淡々と決断すると期待している」と述べた(NHKニュース)。

 さらに黒田東彦日銀総裁は7月29日の講演のあとの質疑応答で、「消費税の2段階の引き上げによって日本経済の成長が大きく損なわれるということにはならないと、日銀政策委員会のメンバーは考えている」と語った(日経新聞電子版)。

 「私は」ではなく「日銀政策委員会のメンバーは」としていたのは個人的な考え方というよりも、日銀としてそのような認識を持っており、予定通りの消費増税を実施するよう働きかけたように思われる。

 消費増税が景気に対してマイナスの影響を与える以上、このタイミングでの引き上げは避けるべきとの意見はある。しかし、そもそも社会保障費の増加に対して何ら踏み込んだ手段を講じてこなかったのは、この消費増税を担保にしていたからであり、このタイミングでも遅いくらいである。世界的なリスク後退もあり、米経済の回復等も見込まれ、国内景気も回復しているなかにあり、いまが引き上げの良いタイミングであろうことも確かではなかろうか。

 それよりも注意すべきは、黒田総裁の発言である。アベノミクスの実質的な主軸は、成長戦略でも財政政策でもなく、リフレ政策を意識した大胆な金融政策である。その異次元緩和の手段が日銀による巨額の国債買入である。これは見方によれば、財政ファイナンスと認識されかねない。それが財政ファイナンスではないことを示すためには、政府が財政規律を守る姿勢を見せることが重要となる。その財政再建策の中心に消費増税がある以上、これをもし予定通り実施しないとなれば、自民党の野田税制調査会長が指摘したように、財政健全化のシナリオが崩れ、長期金利に財政リスクプレミアムが上乗せされて、相当のダメージが加わる懸念が生じる。

 これについてはIMFも、「財政再建が遅れ日本の国債に対する投資家の信頼が揺らげば、市場の混乱などを通じて世界全体の成長率を大きく押し下げるおそれがある」との指摘をしている(NHK)。

 長期金利に財政リスクプレミアムが上乗せされるといったテールリスクを心配する必要はないと、これは債券市場関係者からも指摘されるかもしれない。それほどまでに日本国債への信頼度は高いものがある。しかし、それに頼っていつまでも巨額債務問題を野放しにしてしまうと、大きなしっぺ返しが訪れるであろうことも確かではなかろうか。そのようなリスクを避けるためにも、特に日銀が大胆な国債の買い入れを実施しているなかにあり、消費増税は予定通りに実施するべきものであろう。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-08-03 08:37 | 財政 | Comments(0)

2003年3月の臨時の金融政策決定会合の意味

 日銀の金融政策決定会合議事録等(2003年1月~6月開催分)が公開された。このなかで興味深いのは、2003年3月25日に開催された臨時の金融政策決定会合である。このときの状況について、私はコラムで次のようにコメントしていた。

 「3月25日に日銀は臨時の金融政策決定会合を開催しました。20日には福井新日銀総裁が誕生しています。政府からはさっそく日銀に対して要求・要望が強く出されたと思われ、それに対応する形で福井総裁は臨時の金融政策決定会合を開催したと思われます。まず、行動を起こすことによって政府からの信頼を得ようとしたものと思われ、実際に臨時の会合を開催したにもかかわらず、その結果は現行の政策を維持することを全員一致で決定しました。「なお書き」と呼ばれる「当面の金融政策運営について」の最後に付け足された「なお・・・」の部分や、ロンバート金利(公定歩合)について一部修正があったものの、大きな変更はありませんでした。しかし、そのあと開催された通常の政策委員会(毎週、火曜日、木曜日)において、銀行保有株買取枠を2兆円から3兆円に拡大しました。これを政府は高く評価したようです。ただし、福井総裁は3兆円が限度と釘を刺しています。」(債券ディーリングルームの若き知より)

 この会合ではいったいどのようなことが話し合われたのか。最初の挨拶で福井総裁は、「討議の結果、あるいは結論を東京市場が開いている間に公表すべきだと思っていて」と述べ、当日は異例の8時からのスタートとなっていたことが指摘されていた。市場をかなり意識した会合であったことがわかる。

 最初に金融市場動向について白川方明理事と山本謙三金融市場局長に説明を求め、山本局長が説明した。そのあと福井議長は白川理事に「白川理事は特にないか」と質問し、白川理事は「ない」と答えている。もちろんこの白川理事はのちの日銀総裁である。

 次に調節方針等についても、白川理事と山口廣秀企画室審議役に説明を求め、のちの副総裁となる山口企画室審議役が説明をしている。説明後に「白川理事は特にないか」と質問し、白川理事はやはり「ない」と答えている。

 このあたりのやり取りもなかなか興味深い。実はこのパフォーマンスを重視したとみられる臨時会合には、白川理事(のちの総裁)は反対していたのではないかとの見方がある。「ない」との返事に特に意味はなかったのかもしれないが、その姿勢をあらわにしたかのような印象も受ける。

 臨時会合について、須田委員は不透明感をもたせる可能性を指摘していたが、これに対して福井議長は、3月20日に米英軍はバグダッドへの攻撃を開始したことや、3人のボードメンバー(総裁と副総裁2人)の変更があり、政策対応の不透明感を軽減させ、過剰な期待感も抱かせないために開いたと説明している。ただし、4月7、8日には通常会合が予定されており、このときに市場がそれほど動揺していたわけでない。

 中原委員からも、この会合が持つ問題意識を総裁の方から十分説明する必要がある、との指摘もあった。植田委員からは、臨時会合はアクシデント的な定例会合では対応できないような事象が起きた場合に開くものであり、今回はグレーゾーン位かな、との意見もあった。これはつまり今回は本当に必要あったのか、との意見のように思える。

 私もこの臨時会合の印象はやはり必要あるのかと思っていたが、実際の政府からの要望の有無はさておき、早く行動を起こすことが重要との福井総裁の考え方もわからなくもない。実際にこの後も追加緩和を打ち出し、福井総裁への評価は高まることになる。これはこの年6月の債券市場のVaRショックを起こす要因ともなるのであるが、福井総裁の市場との対話をより意識した政策もひとつの金融政策手段であろう。これに対して次の白川総裁はその姿勢を大きく変えた。パフォーマンスよりも安定重視といった感じであるが、その白川総裁の次の総裁はまさに次元が変わってしまった感があった。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-08-02 09:22 | 日銀 | Comments(0)

消費税引き上げを躊躇するリスク

 日本の景気は着実に回復基調となっている。2013年4~6月期のGDP実質成長率は年率で前期比3.5%増の予想となっており、消費の盛り上がりが生産を押し上げ、雇用の改善が再び消費を促す好循環の兆しが出ている(日経新聞)。その雇用についても6月の完全失業率は前月比0.2ポイント低下の3.9%と4%割れに。失業率の改善は2か月ぶり。3%台はリーマン・ショック当時の2008年10月以来となった。6月の有効求人倍率は前月より0.02ポイント上昇して0.92倍となり、2008年6月以来の高水準に。円安による自動車などの輸出企業の業績回復が求人を増加させてきているようである。

 この日本の景気回復の背景に円安効果があり、その円安にはアベノミクスによる影響があったことは間違いない。異次元緩和が物価を押し上げるかはさておいて、安倍自民党総裁の輪転機発言に飛びついた海外投資家が、円安や日本株高を仕掛けたことは確かである。その背景には欧州リスクを中心とした世界的なリスク後退があったにしても、急激な円安にはリフレ派の意見を取り入れたアベノミクスが効果を発揮したと言わざるを得ない。

 このアベノミクスが模倣したとするのが高橋是清による高橋財政であり、リフレ派はこれをレジーム・チェンジという言葉を使って称賛しており、デフレ脱却の手本としている。この高橋財政は円安政策と財政政策、そして金融政策をミックスした政策であり、昭和恐慌と呼ばれた不況から脱することを目指したものであった。当然ながらデフレ脱却というより不況からの脱却に向けて政策を総動員した。

 アベノミクスは不況ではなくデフレからの脱却を意図したものであるが、デフレ脱却のためには政策を総動員する必要があるとリフレ派は考えているのであろう。このため来年4月からの消費増税はなんとしても止めたいとの意向も強いように思われる。安倍晋三首相のブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一氏は、「2年で5%の増税は景気に与えるショックが大きく、かえって税収が減少する可能性があるとし、1年ごとに1%ずつ引き上げていくなど漸次的な増税が望ましいと表明」(ロイター)し、安倍首相も同様の考えを持っているようである。

 政府が来週にもまとめる中期財政計画では、4月からの消費税率の引き上げを今の時点では明確には盛り込まないようである。消費税引き上げには、景気情勢などを総合的に判断して引き上げを最終判断することになっており、その前に税率を引き上げた場合、景気などに与える影響や必要な経済対策について有識者らから意見を聴くよう指示する方針も伝えられた。

 これに対して甘利明経済再生担当相は30日の経済財政諮問会議終了後の会見で、消費税引き上げについて、リーマン・ショックのようなよほどの外的要因がない限り、消費税を引き上げないとの選択肢はないと述べた。ただし、上げ幅については「私が言及することではない」とし、専門家の意見なども踏まえて安倍晋三首相が最終判断すると指摘している(ロイター)。

 ここで注意すべきは、高橋財政の結末である。高橋財政は「その後」をみるべきではなく、それ以前の政策とその成功だけをみるべきとの意見もリフレ派からはあったが、高橋財政の出口の失敗は見て見ないふりはできない。要するに極端なリフレ政策のリスクは財政規律を蔑ろにするところにある。高橋是清は緊縮財政に移行しようとして、2・26事件で暗殺されてしまう。

 IMFのチーフ・エコノミストのオリビエ・ブランシャール氏は、アベノミクスに対して、「公的債務が極めて高水準なことを踏まえると、中期的な財政再建計画がないのであれば財政による景気刺激策を実施するのはリスクが高いといえる」と指摘していた。その中期的な財政再建計画の要のひとつが消費増税である。このあたりをしっかりと認識しておかなければ、市場が動揺しかねず、アベノミクスが結果として失敗する可能性もある。

 日銀の異次元緩和で大量の国債を購入しても、それが財政ファイナンスと認識されないのは、政府による財政規律の維持が大前提となっているはずである。景気への配慮も必要かもしれないが、現在の日本の債務状況のなかで異次元緩和を行ってしまった以上、財政規律を維持する姿勢を堅持することのほうが重要ではなかろうか。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp


[PR]
by nihonkokusai | 2013-08-01 09:43 | 財政 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー