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日本の長期金利は0.8%台での膠着感強める

 日本の長期金利は4月4日の日銀の異次元緩和を受けて翌日の5日に0.315%まで低下した。ところがこの日に0.620%まで上昇し、5月13日に0.8%台、15日に0.9%台に乗せてきた。5月22日にバーナンキFRB議長は、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘し、米国の長期金利は2%台に乗せてきた。これを受けて23日に日本の長期金利は1.0%に上昇した。日経平均は16000円に接近し、ドル円は103円台をつけたが、長期金利含めて株もドル円もこの日がピークとなった。

 長期金利はその後もやや不安定となるものの1%は超えることなく、6月に入ると12日に0.900%まで上昇し、翌日13日に0.795%まで低下したが、6月中はほぼ0.8%台での推移が続くことになった。この間の東京株式市場もやはり方向感に乏しい動きとなっており、日経平均は13000円台を挟んでの動きが続いていた。

 日経平均の13000円は甘利明経済再生担当相が2月の講演で、1万3000円を目指して頑張る気概を示すことが大事だ、と述べたことで甘利ラインと呼ばれている。この水準を抜けた際に「甘利越え」との表現もされていた。結果からみると、どうやらこの甘利ライン大きな節目のラインであったことは確かなのかもしれない。

 これに対して長期金利の0.8%台は特に意識されていたような水準ではなく、結果としてここで落ち着いてしまっている。日本の長期金利は米国の長期金利の動向に影響を受けやすいが、今回は違っていた。6月19日の会見でバーナンキFRB議長は年内に緩和策の縮小に踏み切る可能性を示した。これを受けて米長期金利は大きく上昇し、24日には一時2.66%近辺をつけ、ドイツの長期金利も一時1.85%に、英国の長期金利も2.59%近辺まで上昇した。日本の長期金利もあらためて1%台に乗せるだろうと予想されたが、0.890%までの上昇に止まっていたのである。

 この日本の長期金利の安定の要因は何なのか。需給面でみれば日銀の異次元緩和による影響が考えられる。超長期債の流動性低下への懸念もあったが、とにかく大量に発行される国債の巨大な買い手が存在していることは確かである。FRBが量的緩和を縮小することで、米国債への影響はあろうが、需給面で日本国債に影響が出ることも考えづらい。投資家によっては米国債の急落で、日本国債も売らざる得ない場面もあるかもしれないが、それで日本国債の需給に大きく影響することも考えにくい。

 28日に発表された5月の全国コアCPIが前年同月比0.0%と7か月ぶりにマイナス圏を脱した。今後も円安に伴う輸入価格の上昇などを背景に緩やかな上昇が見込まれている。ただし、それでも日銀の2%のコアCPIが2年以内に達せられとの見方はまだ少ない。早期のデフレ脱却については、かなり難しいとの見方も長期金利の上昇抑制要因となっているのであろうか。

 長期金利がこのあたりで安定していれば、日銀にとってもひと安心となろう。米長期金利の上昇に日本の長期金利がついていかなかったのは、日銀の異次元緩和の効果が発揮されているとの解釈もできる。

 ただし、いつまでも長期金利や日経平均が安定しているわけではない。7月に入ると新たな動きを見せてくることも予想される。7月1日発表の日銀短観では、設備投資計画を含めて大きく改善されることが予想されている。FRBによる出口政策への懸念による市場の動揺が収まれば、日経平均はあらためて甘利ラインから上昇基調となることも予想される。そうなれば、さすがに長期金利はある程度上昇してもおかしくはない。それでも国債を売る国内の投資家がいるのか、となると売り手も限られる。今後も日本の長期金利、つまり日本国債の動向に大きな影響を与えるような材料が出ない限り、多少動きはあったとしても限られたものとなり、当面の日本の長期金利は1%以内で安定し続けるのであろうか。


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by nihonkokusai | 2013-06-29 11:01 | 債券市場 | Comments(0)

安倍首相発言に出てきた高橋是清

 6月19日にロンドンのギルドホールにおける安倍総理大臣の経済政策に関する講演が首相官邸のサイトにアップされている。ここで安倍首相は高橋是清に関する発言をしていた。

 「ワンス・アポン・ア・タイム。日本に、高橋是清という、財政家がおりました。帝政ロシアの軍事的脅威に、日本が、立ち向かおうとしていた時代です。なんとしても、日本政府の国債を、ロンドンの銀行団に、引き受けてもらう必要がありました。そのためたった一人、高橋は、シティにやって来ました。そのとき、助けてくれたのは、誰だったでしょう。」

 「たった一人」との表現は正確ではない。正確には「たった二人」である。高橋是清が日露戦争の戦費調達のために英国を訪れていた際には、ある有名な秘書役を同行させている。その秘書役とは深井英五であり、のちの日銀総裁となる人物である。深井は金融恐慌時に活躍するとともに、高橋財政時には日銀副総裁として高橋財政を支えた人物でもある。そのような人物が秘書役でいた以上、「たった一人」との表現はどうかと思う。ドラマ「坂の上の雲」でもロンドンで高橋是清(西田敏行)に付き添っていた深井英五が描かれていた。

 それはさておき、そのとき助けてくれたのは、「香港上海銀行ロンドン支店長、サー・ユーウェン・キャメロン」である。幸田真音さんの「天佑なり」にも解説があったが、現在のデイビッド・キャメロン首相の、高祖父に当たる。

 「(高橋是清は)ジョン・メイナード・ケインズが、「一般理論」を発表する5年前、高橋は1931年に、ケインズを先取りする政策を打ち、深刻なデフレから、日本を、世界に先駆けて救い出すことに成功したのです。」

 確かに高橋財政により世界恐慌後、世界に先駆けて、世界最速で日本はデフレからの脱却に成功した。

 「高橋は、私を勇気づけてやまない先人です。」

 この表現からもアベノミクスは高橋財政を模範としていたことは確かなようである。

 「1931年、大蔵大臣に返り咲くと、「その日のうちに」、金の輸出を停止します。「その日のうちに」、というところが大事です。こびりついたデフレ心理は、一気に吹き払わない限り、取れないからです。」

 スピード感という意味では、昨年11月の衆院解散後の街頭演説で、大胆な金融緩和、輪転機ぐるぐる発言をして政権奪取後はリフレ政策を行うことを明確にし、それにより市場に影響を与え、いわゆるアベノミクスを生み出した。それは高橋是清のスピード感も意識していたということか。その高橋是清が金輸出停止をする直前に会って相談していた人物こそ、深井英五日銀副総裁であったのだが。細かいことはさておき、

 「私は、まさに、それを、試みました。人々の期待を上向きに変えるため、あらゆる政策を、一気呵成に、打ち込むべき、と、そう考えました。」(安倍首相)

 あらゆる政策を一気呵成というよりも、異次元緩和への前向き姿勢に市場は驚いた面があり、それをいち早く察したヘッジファンド含む海外投資家が円売り・日本株買いを加速させて、アベノミクスが生まれた。

 ジム・ロジャーズ氏は週刊誌のインタビューで、2012年11月、安倍晋三首相が無制限の金融緩和政策を行うと発表した直後に日本株を買った理由として、一般的に、紙幣が多く出回るようになると、株価は必ず上がるだから、その前のタイミングを見計らって買ったとしている。ジョージ・ソロス氏も自らのファンドでアベノミクスに賭けて、円売りや日本株買いを仕掛け、短期間で巨額の利益を上げたとされている。

 「強い、政治的意思がなかったせいで、デフレは退治できなかった。私が持ち込んだのは、それです。強い、政治的意思でした。きょう、皆さんに、覚えて帰って欲しいことも、ここに尽きます。私の経済政策とは、私の政治的意思に、裏打ちされています。」

 極端なリフレ政策がこれまで取られてこなかったのは、国債の大胆な買入やマネタリーベースの大幅な増加で物価上昇を起こせるのかどうか不透明な部分があったことに加えて、財政ファイナンスを意識したような政策はのちのち円や国債への信認低下にも繋がりかねないとの不安もあったからではなかろうか。強い意志がなかったというより、効果が見えないのに危険な政策はとれないとの判断が働いていたと思われる。

 それをやると言った安倍総裁の発言と、実際に日銀がそれを実行に移したことに驚いて、急激な円安・株高を招いたことは確かである。景気もここにきて回復基調となっており、消費者物価もプラスに転じるのは時間の問題となっている。これのどこまでがアベノミクスの影響によるものなのかの判断は難しいが、円安・株高が影響していたことも確かである。しかし、これからは異次元緩和によるところのリスクが顕在化してくることも想定される。ECBのドラギ総裁が26日に「金融政策で実体経済を成長させることはできない」と述べていたように、アベノミクスの成否は三番目の矢である成長戦略にかかっている。政治的意思が試されるのは、むしろこれからではないかと思われる。

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by nihonkokusai | 2013-06-27 09:22 | アベノミクス | Comments(0)

超長期国債先物の再開

 日本取引所グループは6月18日に、デリバティブ市場の統合(大証と東証)を控えて制度整備要綱を公表した。このなかで、2014年4月から超長期国債先物取引を再開する方針を正式に表明した。

 債券先物といえば、通常は長期国債先物を示す。日本初の金融先物取引として1985年10月に東証に上昇され、日本のデリバティブ市場の草分けとなるとともに、債券市場においても大きな影響力を持っている。

 ところがこの長期国債先物の使い勝手が良いばかりに、ほかの債券絡みの先物は上場してもなかなか売買高は膨らまず、債券先物に関しては売買面からみて、ほぼ長期国債先物の独占状態となっている。債券に関する東証に上場している先物には取引残存期間5年・利率3%の中期国債を標準物とした中期国債先物、残存期間20年・利率6%の超長期国債を標準物とした超長期国債先物、そして2009年3月からスタートした取引単位を長期国債先物の10分の1としたミニ長期国債先物がある。このうち超長期国債先物取引は2002年12月限月以降、新たな限月取引を休止している。中期国債先物取引もほとんど売買がなく、ミニ長期国債先物も開店休業状態にある。

 東証と大証の経営統合により、長期国債先物など現在、東証に上場しているデリバティブ関係の商品は大証のシステムに統合される。このため債券先物のシステムも大証管理のものに2014年3月に統合される。この機会に超長期国債先物も再開されることになったのである。超長期国債先物の再開理由としては、4月4日の日銀の異次元緩和後に超長期国債の流動性が著しく低下したことも影響した可能性がある。ある程度流動性のある超長期国債先物が機能していれば、こういった際にヘッジも可能となる。

 2014年3月の大証システムへの移管にともない、長期国債先物の取引にも変更がある。現行のシステムでは誤発注予防のため呼値可能値幅が設定されているが(例えば長期国債先物はザラ場中は20銭等)、これが即時約定可能値幅となり、上下10銭を飛んで動くような場合にはいったん板寄せのような格好となり、昔のスタイルに戻る。さらに現在、成り行き注文は出せないが、引け成り行きの注文も可能となるようである。取引時間帯についてはイブニング・セッションが午前3時まで延長される。

 2014年4月に再開される超長期国債先物については、標準物のクーポンは6%(長期も6%)、取引単位1億円(同1億円)、呼び値の刻みは100円につき5銭(同1銭)、即時約定可能値幅は30銭(同10銭)、受け渡し適格銘柄は残存18年以上21年未満の20年利付国債(同残存7年以上11年未満の10年利付国債)となっている。値幅制限に関しては9.0円(同3.0円)となっている。サーキット・ブレーカー制度についてはまだ具体的な発表はない。取引手数料も超長期は未定となっている。

 果たして超長期国債先物が上場再開して、売買高が膨らむであろうか。過去の経緯を見る限り、個人的にはあまり期待は持てない気がする。取引を停止した2002年に比べて超長期国債の発行額や残存額は大きく増えているが、日中先物で頻繁に売買するにはそれなりの使い勝手も求められる。少しでも超長期国債先物への投資家などの使い易さを高める工夫も必要ではないかと思われる。今更、制度そのものの変更は難しいかもしれないが、クーポン設定を無理に長期に合わせずに中期債先物と同様の3%程度にして、実勢利回りに近づける。さらに取引単位をミニ同様の1000万円にするだけでも、投資家の関心を呼ぶのではなかろうか。実際に取引単位の引き下げを求める声は国内投資家からも聞こえている。

 超長期国債先物にある程度の流動性が出てくれば、ヘッジニーズが強まるとともに、イールドカーブの動向を睨んだ長期国債先物との裁定機会も拡がる。超長期国債先物の流動性向上に向けて、大胆で異次元の改正を行うことで、債券先物全体の売買高拡大に向けた期待に働きかけるというのはどうであろうか。

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by nihonkokusai | 2013-06-26 09:26 | 債券市場 | Comments(0)

米国の出口政策による日銀への影響

 FRBのバーナンキ議長は6月19日のFOMC後の記者会見において、失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせるのが適当と見ていると述べ、一定のペースで規模を縮小し、失業率が7.00%程度に下がっていくことを目安に、来年半ばにかけて緩和策を終了するという意向を示した。

 2012年12月12日のFOMCで、年末に終了するツイストオペの代わりに毎月450億ドル規模の米国債購入を決定した。これまでのツイストオペでは、450億ドルの短期債を売って長期債を購入していたが、短期債を売却しない分、FRBのバランスシートは拡大することになる。これにより現在FRBは、400億ドルのMBSの買入を含めると月額850億ドルを買い入れている。国債の償還分の買入も行っている。

 この際に少なくとも2015年半ばまで低金利を維持するとの文面が声明文から削除され、その代わりに、米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、という数値のガイダンスに変更された。いわゆるデュアル・マンデート(最大限の雇用と物価安定)のそれぞれに、期間を限定せずに目標が課せられた。ただし、これはこの目標に向けて金融政策が自動的に変更されるというわけではなく、かなり裁量部分を残していた。

 量的緩和策など非伝統的手段をとった中央銀行にとり、その出口政策は重要である。日銀が2001年3月から2006年3月まで続けた量的緩和策は、目標が日銀の当座預金残高であり、これは技術的には引き下げることは容易であった。福井元日銀総裁は当座預金の目標額を何度か引き上げたものの、その際に国債の買入額は増加させなかった。2006年3月の量的緩和の解除の際、国債の買入については減額や停止は行われていない。

 ところが、その後の日米欧の中央銀行は競うかのように国債の買入を中心とした政策を拡大してきた。その金額だけでなくオープンエンド型の買入も実施してきた。

 2012年9月のFOMCで住宅ローンを担保にした証券であるMBSを毎月400億ドル追加購入することを表明したが(QE3)、物価安定の下で労働市場の改善が実現できるまでMBSの購入を継続するとして、このMBSの買入はオープンエンド型(無期限)となったのである。

 日銀も追随する格好となり、2013年1月22日の金融政策決定会合で、日銀は政府からの要請のあった「物価安定の目標」を導入することを決定するとともに、あらたな追加緩和策として「期限を定めない資産買入方式」を導入することを決めた。さらにその買入を4月4日の異次元緩和で大幅に増額したのである。

 今回のFRBの出口に向けた姿勢への変化は、市場に動揺を与えた。特に新興国市場に大きな影響を与え株や債券、通貨の下落を招いた。米債も下落し10年債利回りはあっさりと2.5%台に上昇した。

 今回の出口政策は条件付きであり、しかもFRBはいきなり購入をやめるわけではない。それでも今回のFRBの姿勢の変化とそれによる市場への影響度をみると、出口政策がいかに難しいのかを示している。

 日銀は白川前総裁時代には、このFRBのようにかなり裁量の余地を残していた。これがリフレ派には甘い政策ともとられ、2%の物価目標を設定し、それが可能になるまでは異次元緩和を継続することを約束してしまっている。

 ECBも国債買入手段は残しているが、それを使うことはよほどのことがなければない。イングランド銀行もFRBが出口を意識しているなかにあり、国内の経済・物価動向がおかしくならなければ、あらたな量的緩和を行うことは考えづらい。

 その結果、取り残されてしまう格好の日銀は、いつどのタイミングで出口政策をとれるのか。物価目標達成が困難とみれば、追加緩和を迫られる可能性もあり、それが国債の買入となれば、出口政策を困難にさせるだけでなく、国債市場に対しさらなる流動性の低下といった影響を与えかねない。

 日本の物価目標はほんとうに2%で良いのか。消費増税による物価上昇まで加味すると4%近い物価上昇が目標となっているが、現実にそれを国民は受け入れられるのか。少し日銀も裁量の余地を設ける工夫もしなければ、思わぬ円安や長期金利の上昇などを招く可能性もある。FRBの出口戦略は今後の日銀の政策にも大きな影響をあたえかねず、それに対する配慮もいずれ必要になるであろう。

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by nihonkokusai | 2013-06-25 09:40 | 日銀 | Comments(0)

FRBは出口に向かい、残された日銀の運命とは

 6月19日のFOMC後の記者会見で、バーナンキFRB議長は年内に緩和策の縮小に踏み切る可能性を示した。雇用などの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に緩和策を縮小するのが適当と見ていると述べ、一定のペースで規模を縮小し、失業率が7%程度に下がっていくことを目安に、来年半ばにかけて緩和策を終了するという見通しを示した。

 FRBの量的緩和策は非伝統的手段による非常時の対応であった。欧州の信用リスクを中心とした世界経済・金融のリスクの後退により、出口に向けた経路を打ち出したことになる。いわゆる時間を稼ぐ政策への必要性が後退してきたと言える。

 FRBによる大量の資金供給が絞られることにより新興国市場などへの影響も懸念されるが、バブルが形成されてはじかれるより、一時的にショックは起きても、経済環境の好転の方が意識され、これは世界経済にとってもマイナスというよりもプラスの影響をもたらすものと考える。もちろんその縮小に向けての条件が整うことがなければ、緩和策の終了が先送りされることも考えられるため、このあたりはかなり慎重に進めることも予想される。

 FRBが量的緩和政策を止めるとなれば、それを行っている主な中央銀行は日銀だけとなる。ECBは2012年9月に市場から国債を買い取る新たな対策を決定した。対象となるイタリア、スペイン、ポルトガルなどの国債の無制限買入ではあったが、ECBの購入には厳しい経済的条件が課され、期間も1~3年となるなど、現実にはかなりの制約もあり、実際にはこれによる買入は実施されず、ユーロ圏の信用不安の後退により実施される可能性は極めて薄くなっている。イングランド銀行も新たな国債の買入は行っていない。こちらも三度目の量的緩和が打ち出される可能性はゼロではないが可能性は低下しつつあるのではなかろうか。

 FRBが国債を含めた債券の買入を停止するとなれば、それを行っている日米欧の中央銀行は日銀だけとなる。日銀は2%という物価目標を設定しまっている関係上、目標が達せられるまで国債買入を止めるわけには行かない。

 この日銀の異次元緩和についてバーナンキ議長は19日の会見で次のようにコメントしている。

 「デフレ期待を壊し、物価上昇率を日銀が目標と設定した2%に上げるため、日銀は非常に積極的な政策を実施している。積極的な政策の初期段階では、投資家は日銀の政策による反応を学んでいる状態で市場が不安定になるのは驚くべきことではない。また、日本国債市場は米国債市場などよりも流動性が小さい。全体を考えると、日本がデフレに取り組むのは重要であり、デフレの解消とともに思い切った金融政策や財政出動、構造改革を進める『3本の矢』には賛成だ。たとえ日銀の政策が米経済にいくらかの影響を及ぼしたとしても、日銀の黒田総裁や日本の取り組みを私は支持する」(日経新聞の記事より引用)

 FRBの量的緩和はその目的がいつの間にかデュアルマンデートに置き換えられて雇用の回復等になっているが、元々の理由はリーマン・ショックや欧州の信用不安による世界的な経済や金融危機に対処するもの、時間を買う政策であったはずである。ECBやイングランド銀行の国債買入もしかり。日銀も基金による国債買入等を行ってきたのも同様である。ところが、アベノミクスの登場により、それが2%の物価目標への政策に置き換えられて、日銀は引くに引けない状況に自ら追い込んでしまった。バーナンキ議長はFRB議長としては、非常時の対応から脱する道を選んでおきながら、日本に対しては昔のバーナンキ教授時代のごとく黒田日銀の異次元緩和を支持している。自らの理論に対して、実験的な意味合い含めて日銀の動向を見つめているようにも見受けられる。それではその壮大な実験がうまく行かなかったら、どうするのであろうか。むろんバーナンキ氏がその責任を負うことはない。自らは早めに危険なところからは脱して、取り残した日銀の行方を興味深く観察していくつもりではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-06-23 10:10 | 日銀 | Comments(0)

FRBの出口が意識され、米独英の長期金利が急上昇

 6月19日のFOMC後の会見で、バーナンキFRB議長は、雇用などの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に緩和策を縮小するのが適当と見ていると述べ、一定のペースで規模を縮小し、失業率が7%程度に下がっていくことを目安に、来年半ばにかけて緩和策を終了するという見通しを示した。今後の量的緩和縮小について、条件付きながら具体的な道筋を示した。

 これを受けていわゆる緩和マネーの流入が減少するとの懸念が出てきたことから、20日の米国株式市場は前日比206ドル安となり、21日には前日比353ドル安と今年最大の下げ幅を記録した。22日は41ドル高とやや買いが入ったものの、米債は22日も下落した。またドイツや英国の国債も大きく下落しており、つまり米独英の長期金利がここにきて急上昇しているのである。

 19日に米10年債利回りは2.3%台に、20日には2.4%台に、21日には2.5%台に上昇した。米10年債利回りの推移を確認すると、2013年3月や2012年10月につけた水準を上回り、次の節目は2011年7月の水準である3%近辺となる(ブルームバーグのサイト上のグラフを参照)。
「米国債10年チャート」(ブルームバーグ、期間設定を「3年」に)

 ドイツの10年債利回りも21日には1.74%近辺まで上昇した。ドイツの10年債利回りは2013年1月や2012年9月につけた水準を抜けており、次の節目は2012年3月の水準である2%近辺となる。
「独国債10年チャート」(ブルームバーグ、期間設定を「3年」に)

 英国の10年債利回りも21日に2.42%近辺に上昇した。英国の10年債利回りは2012年3月につけた2.4%の水準に。ここを抜けると、米国債と同様に2011年7月以来の3%台も見えてくる可能性がある。
「英国債10年チャート」(ブルームバーグ、期間設定を「3年」に)

 FRBの量的緩和の縮小への動きは、リーマン・ショックや欧州の信用不安という長きに渡って世界的な危機の拡大にやっと終止符が打たれつつあることを示している。欧州の信用不安が完全に後退したわけではないが、たとえばギリシャの10年債利回りの推移を見ても、2012年3月には30%を越えていたものが、2012年6月あたりから低下し続け2013年5月には10%を一時割り込んできている(ただし、21日には政局の不安定化もあり11%台に上昇していたが)。ギリシャの10年債利回りの2010年あたりからの推移を見る限り、大きな嵐は過ぎ去ったと言える。
「ギリシャ国債10年チャート」(ブルームバーグ、期間設定を「3年」に)

 FRBの今回の動きは、異常時の対応から正常時の対応に移ることを意味すると思われる。もちろんここにきて燻ってきている中国への不安など、不安材料はまだまだ存在する。テールリスクは消え去ることはないが、いったん激動の波は収まったことは確かではなかろうか。

 日米欧を中心とした超低金利の時代が終焉することが予想され、米国や英国の長期金利は再び3%台の時代を迎える可能性が出てきた。そうなれば米債の影響も受けやすい日本の長期金利も1%割れのままというわけにはいかなくなるであろう。それでなくても日銀の異次元緩和の影響で、不安定な相場が続いているだけに、米独英の長期金利の上昇を受けて、日本の長期金利は1%台に乗せてくることも予想される。今後の米独英と日本の長期金利の動きにも十分注意したい。
「日本国債10年チャート」(ブルームバーグ、期間設定を「3年」に)

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by nihonkokusai | 2013-06-22 11:28 | 債券市場 | Comments(0)

5月の荒れた債券相場に投資家はどう動いていたのか

 日本証券業協会は6月20日に5月の公社債投資家別売買高を発表した。5月の債券相場も4月に続いてかなり荒れた相場となっていた。

 簡単に振り返ってみると、5月10日にドル円が100円台に乗せたことをきっかけに債券は再び地合が急変した。5月13日に債券先物は4月5日の安値で下値の節目とも言えた143円10銭を割り込み、相場の地合が完全に変化した。10年債利回りは15日には2012年4月以来の0.9%台乗せとなった。

 22日にバーナンキFRB議長は、議会証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘した。バーナンキ発言等を受けて22日の米国債券市場で米債は下落し10年債利回りは2%台に乗せた。

 23日の債券先物はサーキット・ブレーカー発動し140円70銭まで下落し、現物10年債利回りは1.000%をつけ昨年4月5日以来の1%台乗せとなった。外為市場でドル円が103円台をつけるなど円安ドル高が進み、これが好感されて日経平均は一時16000円に接近した。ところが、この日に日銀は債券相場の下落を止めようとシグナルオペと市場で呼ばれる資金供給オペを実施、さらに国債入札日にも関わらず国債買い入れをオファーした。これをきっかけに債券先物は買い戻し圧力を強め、債券相場は大きく切り返したのである。

 4月の債券市場における最大の売り手は都市銀行であり、中長期債主体に2兆7971億円もの売り越しであった。この都銀は5月も売り越しており、1兆128億円の売り越しに。国債の投資家別売買高でみると超長期を1831億円の売り越し、長期は2329億円の買い越し、中期は8598億円の売り越しとなっていた。

 4月に1兆8852億円も買い越していた地銀は5月は差し引きで263億円の売り越し、中期債は買い越すが長期、超長期債を売り越していた。第二地銀も152億円の売り越しとなった。

 買い越しの最大手は信用金庫となり、1兆4448億円の買い越し。長期債を6375億円、中期を2634億円買い越していた。信託銀行も1兆3029億円の買い越しとなり、中期債を1兆4470億円買い越していた。長期債は4554億円の売り越し、超長期債は2657億円の買い越しに。農林系金融機関も1兆1005億円の買い越しで、こちらは長期債を4897億円、超長期2810億円、中期も2028億円の買い越しに。

 生保・損保は8202億円の買い越しに。超長期は6553億円の買い越しとなり、超長期債の購入を回復させてきた。ちなみに4月の生保による超長期債の買越額は1000億円を割り込んでいた。

 外国人は4546億円の売り越し。長期債を7111億円売り越し、中期債を1986億円の買い越しに。

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by nihonkokusai | 2013-06-21 09:32 | 債券市場 | Comments(0)

2013年3月末の日本国債(短期債除く)の保有者

 6月19日に日銀は2013年1~3月期の資金循環統計を発表した。これによると2013年3月末時点の家計の金融資産は1570兆5990億円(2012年12月末速報値1546兆7085億円)に増加した。

 この資金循環統計を基に、2013年3月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を自分で算出してみた。ただし、これは国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に集計し直したものである。一般的に国債の保有者の割合としては、こちらの数値が使われることが多い。

 3月末の国債(国債・財融債のみ)の残高は、807兆1421億円(同784兆9632億円)と前回の12月末から22兆1789億円増加した(速報ベース)。国庫短期証券を加えると約969兆円となる。参考までに日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく時価ベースとなっている。

銀行など民間預金取扱機関 314兆9018億円(12月末300兆2249億円)、39.0%(同38.2%)
民間の保険・年金 222兆3979億円(同211兆7344億円)、27.6%(同27.0%)
日本銀行 93兆8750億円(同90兆9024億円)、11.6%(同11.6%)
公的年金 62兆9924億円(同67兆9244億円)、7.8%(同8.7%)
海外 35兆2469億円(同34兆8580億円)、4.4%(同4.4%)
投信など金融仲介機関 32兆1704億円(同37兆4568億円)、4.0%(同4.8%)
家計 24兆2126億円(同24兆4656億円)、3.0%(同3.1%)
財政融資資金 9034億円(同8691億円)、0.1%(同0.1%)
その他 20兆4417億円(同16兆5276億円)、2.5%(同2.1%)

 前回の2012年12月末に比べて、残高が大きく増加していたのが銀行など民間預金取扱機関で14兆6769億円増、続いて民間の保険・年金銀行の10兆6635億円増、その他が3兆9141億円増、日銀の2兆9726億円増となっていた(速報ベースでの比較)。 その他の増加には、非金融法人企業(主に民間の事業会社)が4兆4903億円も増やした影響が大きい。

 これに対して減少していたのが、投信など金融仲介機関で5兆2864億円の減少、公的年金で4兆9320億円の減となっていた。

 この時期はまさにアベノミクス効果も発揮されて、次元の違う金融緩和などへの期待から円安修正が進み、株は上昇した。この間に銀行や生保を主体に国債の残高を積み上げていた。反対に投信などは国債のウエイトを低下させたものとみられる。

 国庫短期証券を含んだ数字で見ると、今回海外は全体の8.4%のシェアとなり、過去最高を記録した9月末の9.1%からさらにシェアダウンした。

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by nihonkokusai | 2013-06-20 09:42 | 国債 | Comments(0)

10年国債のリオープン方式について

 6月14日に開催された国債市場特別参加者会合と国債投資家懇談会の議事要旨が17日に発表された。そのなかで財務省から「10年債のリオープン方式について」との提示があった。財務省による発表は下記の通り。

 「日本銀行の金融緩和を受けて、今後、銘柄によっては、流動性が低下することも懸念されることから、1銘柄当たりの発行量を十分確保するため、市場実勢にかかわらずクーポンを同一として、強制的にリオープン発行することの是非を検討してはどうかと考えている。また、10年債の強制リオープンの是非を検討しているのは、将来のチーペストとなり得る銘柄の流動性を懸念するためである。」

 現在、10年国債の発行は毎月行われており、クーポン(利率)は入札日当日の朝方の実勢利回りに応じて財務省が決定している。つまり実勢利回りに近い利率となることで、発行価格は100円に近いものとなる。利率が実勢利回りと乖離すれば、その分が価格に影響してくる。

 現在の10年国債は償還日が四半期に一度に統一されている。3月、6月、9月、12月である。たとえば3月、4月、5月に発行される10年国債はすべて10年後の3月に償還される。償還日が同じで、利率も同じとなると同一銘柄としてまとめられる。これがリオープンと呼ばれる発行となり、2013年3月と4月の10年国債は利率が0.6%と同じであったために同一銘柄となった。償還日や利率が異なると回号が異なり、同じ10年債でも別な銘柄として売買されることになる。

 財務省からは、日銀の異次元緩和による国債買い入れによる流動性低下の問題が浮上したことに加え、長期国債先物の価格に影響を与えるチーペストと呼ばれる残存7年国債の厚みを事前に確保するために、同一の償還日のものは利率を統一して3つまとめてひとつの銘柄として発行するというものである。これについて財務省はすでにヒアリングをかけており、賛成・反対の両意見が出ていた。

 「事前に意見を聞いた際には、賛成・反対が分かれた。賛成の立場からの主な意見としては、足元のボラティリティの上昇やレポレートの高止まりを受けて、強制リオープン方式は流動性確保に資するというもの。他方、反対の立場からの意見としては、簿価分散の観点や100円に近い価格で購入できることの魅力を挙げられた。このほか、強制リオープンは他の年限にも必要であるとする意見や需給がタイトになった場合には流動性供給入札を工夫することで対応できるといった意見もあった。」

 個人的には実勢に応じた毎月の利率設定も必要かなと思いながらも、将来も見据えての流動性を考慮すれば銘柄統一は行った方が良いと思う。ここでは主に反対者の意見をピックアップしてみたい。

 「5年債及び10年債の安定消化を支えてきたのは国内預金系金融機関であり、同金融機関にとっては、強制リオープンによる簿価通算が、新たな投資機会の制限になり得る。例えば、相場下落局面においては、リオープン債購入により簿価が下落し、購入した瞬間に評価損が生じることとなり、反対に、相場上昇局面においては、リオープン債購入により評価益状態にある簿価を上げてしまう。」

 これは金融機関の投資行動に影響を与えかねない面であり、この点には注意が必要か。  「最終投資家の投資行動を踏まえると、銘柄数が多い方が国債市場の安定に資するため、他の方法を考えるべきである。」

 その投資家からはこんな意見も出ていた。

 「日本国債の銘柄数は他国に比べても多いと考えており、これ以上銘柄数を増やすよりは、銘柄数をまとめて1銘柄当たりの流動性向上を図ったほうがよいと考える。」

 流動性からは選択肢の豊富さで銘柄数が多いほうが売買しやすい面もあるものの、発行量の面からは絞り込んだ方が売買しやすい面もある。10年債だけではなく20年債も含めて検討してはどうかとの意見も多くみられた。これらを踏まえ、財務省は以下の提案を行った。

7月以降の入札において、
1、20年債については、簿価分散のニーズも限定的であったということで、完全なリオープン方式、すなわち3か月間同じ銘柄で通す形とする。
2、10年債については、今後はクーポンが0.1%動く場合でも新銘柄とはせず、リオープンとし、0.2%以上動いた場合は新銘柄にする。
3、2年債、 5年債については、もともと月々の発行ロットが大きいため、現状維持とする。

 「この10年債のリオープン方式については、6月償還の7月、8月の入札について実施することとしたい。9月は償還が3か月延長されることからいずれにしても新発債となる。10月以降のリオープン方式については、7月、8月の状況を見ながら、そして9月の国債市場特別参加者会合及び国債投資家懇談会において議論させていただきたい。」(財務省)

 上記のように発行方法が変更されるようである。国債市場そのものには大きな影響を与えるものではないが、念のためにチェックしておきたい。しかし、日銀の異次元緩和はこのようなところにも影響を与えつつあるのかと、あらためて感じた次第でもある。

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by nihonkokusai | 2013-06-19 09:13 | 国債 | Comments(0)

レジーム・チェンジとは何か

 アベノミクスの支柱になっている異次元緩和について、「レジーム・チェンジ」と安倍首相は語っていた。本田悦郎内閣官房参与は2013年2月の時事通信社とのインタピューで次のように語っている。

 『「レジームチェンジ」、つまり金融政策の枠組みを変えることによって、緩やかなインフレ予想を国民に持ってもらうことが重要だということです。デフレに順応するのではなくて、デフレと闘う積極的な金融政策、積極的な日銀を演出する。そのためには、それまで日銀がやっていたような小出しの金融緩和ではだめです。2%のインフレ率を達成するまでは「無制限」に国債、特に長期国債を買っていくとアピールすべきだと申し上げました。「レジームチェンジ」「無制限国債購入」でいきましょうと。』

 安倍首相がレジーム・チェンジという用語を口にしたのは、本田氏の助言によるものなのかもしれない。日銀が無制限に国債、特に長期国債を買っていくと2%の物価目標が達成できるとの主張である。

 レジーム転換(レジーム・チェンジ)という用語については、「需要がないから、いくら資金を供給しても無駄という受動的な金融政策のスタンスを、事前に決められたインフレ率に到達するまで積極的に資金を供給し続け、断固としてデフレに立ち向かう、という能動的な金融政策へ転換させることを意味している」との解説もあった(「平成大停滞と昭和恐慌」田中秀臣・安達誠司著)。

 この本のなかで、レジーム転換の事例として、高橋財政における1931年11月の禁輸出禁止と1932年12月の日銀の国債引受開始をあげている。

 ここでいくつか疑問が生じる。そのひとつが、日銀が無制限に国債を買い入れれば、どのようにして物価に働きかけるのか、という経路問題である。これについては黒田日銀総裁の説明による3つの経路が詰まっているのではないかと、先日このコラムでも指摘した。

 安倍自民党総裁は昨年11月に輪転機ぐるぐるという発言もしていたが、日銀が国債を直接引き受けて財政ファイナンスを行うようなことがない限り、日銀が市場からいくら国債を買い入れても日銀の当座預金残高やベースマネーが膨らむだけとなる。ただし、政府が財政拡大を行い、その資金を日銀による国債の直接引き受けで行えば、現在はそれが財政法で禁じられているぐらいであり、インフレを引き起こしてデフレ脱出に効果はあるかもしれない。しかし、今回の異次元緩和は財政ファイナンスを意図したわけではないと、政府も日銀も説明している。

 1932年12月に開始された日銀の国債引受は、金輸出解禁により財政拡大が容易になるとともに、主に満州事変による軍事費拡大に対応したものである。シ団による引受が国債価格の下落等で困難になっていたこともあり、国債発行にはいったん日銀が引き受けるという手段を講ずるほかなかった。これは財政ファイナンスという格好となったが、日銀が保有した国債は銀行等に売りオペでその多くを売却したことで、高橋財政時においては、少なくともインフレそのものは抑えられていた。

 もし高橋財政時の1932年12月の日銀の国債引受開始を大きなレジーム・チェンジとするのであれば、アベノミクスの金融政策のレジーム・チェンジも目指すところは、財政ファイナンスではないかとの疑問も出てくる。

 ただし、高橋財政時のデフレ脱却は、日銀の国債引受が始まった頃にはいったん完了していた。高橋蔵相は日銀引受による国債発行について、以前に明らかにしていたが、その期待がデフレ脱却に大きな働きをしていたとは思えない。最初のレジーム・チェンジとされる1931年11月の禁輸出禁止により、円安政策や金利の低下策等が講じられ、期待というよりも直接に実体経済に働きかけられていた面があり、日銀が国債を大量に購入すればデフレから脱却できる、という効果については甚だ疑問が残る。

 高橋財政時の株価の様子をみると、1931年11月の禁輸出禁止により円安・株高が進むが、いったん調整局面を迎えている。このあたり現在の株安と似たところがある。高橋財政時でそれがまた急回復するのが、1932年12月の日銀の国債引受開始時あたりとなっていたのは確かである。もしアベノミクスでも第二のレジーム・チェンジが必要となるとするならば、それはいったい何になるのであろうか。

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by nihonkokusai | 2013-06-18 09:31 | アベノミクス | Comments(0)
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