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異次元緩和後の日本の投資家の動き

 4月25日に財務省は4月14日~20日の対外及び対内証券売買契約等の状況を発表した。これによると、この期間の対外債券(中長期債)投資は8626億円の資本流入超となっていた。つまり日本の投資家は外債を買っていたのではなく、差し引き8626億円売っていたということになる。その前の週も3328億円売り越しとなっており、これで6週連続の売り超しとなっていた。

 4日の異次元緩和により、日銀は国債のイールドカーブ全体の低下を促すことを目的に、長期国債の保有残高が年間50兆円に相当するペースで増加するよう買入を行う。長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数を現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長する。この結果、毎月の長期国債のグロスの買入額は7.5兆円規模(これまでは3.8兆円程度、4月の買入予定額は6.2兆円)になる。2013年度の長期国債のカレンダーベースの発行予定額は126.6兆円となっており(年間発行額156.6兆円から短国の30兆円を差し引いたもの)、7.5兆円の12か月で88.7兆円をグロスで日銀が購入するとなれば、毎月の発行額の70%を買い入れることになる。

 これまで超長期債の主たる買い手となっていた生保・年金、さらには一部海外投資家等は利回りの低下もさることながら、流通市場の縮小もあり、今後は日本国債への投資を縮小することが予想され、欧米の海外市場では思惑的な買いも入っていた。しかし、現実には日本の投資家は外債を買うどころか、むしろ欧米の債券の利回り低下で利食い売りを出していたと思われる。

 いわゆる機関投資家は、そう簡単に年度の運用計画を修正することはできない。4月4日の異次元緩和を受けて、すぐに外債投資の比重を高めると言った動きはしてこない。ただし、債券市場に動揺が見えるなどしたことで、今年度の運用計画そのものを白紙にし、あらためて計画の練り直しを行ったところも多かったようである。

 すでにいくつかの生保の運用の見直しが発表されているが、そのほとんどは確かに国内債を抑制し、外債を積み増すというものではあるが、それほど大きな修正ではなかった。これは為替リスク等もあるが、そもそも欧米の主要な国債利回りがかなり低下しているという事情も影響していると思われる。

 ちなみの14日から20日の対内債券(中長期債)投資は1993億円の流出超に、前の週も1763億円の流出超となっていた。短期債も流出増となり、異次元緩和を受けていったん海外投資家は円債を売ってきているようである。こちらは、4月4日の異次元緩和以降の日本の債券市場の荒れ具合を見て、ポジションを減らしてきたと思われる。

 いずれにしても、それほど大規模な資金の移動が生じているわけではないものの、今後は日本の国債の流通市場が日銀の介入により、縮小することが予想され、投資家もそれに備えた動きをせざるを得ない。国債市場の機能低下も予想され、それが異次元緩和の導入以降の超長期債市場に現れている。この動揺は時間とともに収まるかもしれないが、今後は以前ほど国債市場が安定するとは考えづらい。不安定な市場となれば、それだけ市場参加者も神経質になりかねない。つまり長期金利が何かのきっかけで跳ね上がりかねないという環境になりつつある。このあたり、政治家や日銀関係者は、言動に細心の注意を払う必要もあろう。

アベクロ政策と国債問題

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by nihonkokusai | 2013-04-30 09:56 | 債券市場 | Comments(0)

日銀の政権交代

 2013年3月20日、日銀では政権交代が行われた。もちろんこれは選挙によるものではなかったが、いわゆる日銀理論をベースとした政策から金融政策のレジーム・チェンジ(体制転換)が行われ、いわゆるリフレ政策をベースにした政策に転じることになった。

 長きに渡る政権がひっくり返されたといえば、2009年8月30日の第45回衆議院議員総選挙における民主党の政権奪取が連想される。民主党は単独で総議席の3分の2に迫る308議席獲得と圧勝し、鳩山内閣は当初70%を超す高い支持率を得てスタートした。

 参考までに安倍内閣の支持率は、読売新聞社によると4月12~14日調査分で74%、前回3月15~17日の72%をこえるなど高い支持率を示していた。アベノミクス効果による円安・株高等がかなり意識されていると思われる。安倍内閣の支持率は昨年12月の内閣発足直後から毎月上がっており、4回連続の上昇は、毎月調査を始めた1978年以降で初めてだそうである。安倍内閣が日銀との連携を強化して、成長を重視した経済政策を進めていることを評価する人67%に上り、日銀が決めた大規模な金融緩和策を「評価する」は54%と「評価しない」の30%より多かったそうである(読売新聞)。

 この調査結果を見ると、どうやに日銀の政権交代による期待については、評価しているむきは多いものの、54%という数字は「いや、ちょっと待てよ」とみている人もそれなりに多いことを示しているように思われる。

 アベノミクスは三本の矢というが、一本目の次元の違う大胆な金融緩和という期待に負うところが大きい。リフレ政策を全面に打ち出して、円安・株高を加速させ、それが支持率アップにも繋がっているのは確かであろう。今後の安倍政権の支持率の行方は、実は日銀の政策とその効果にかかっているという見方もできよう。

 そうであれば、日銀の政権交代によるレジーム・チェンジの効果を見定める必要がある。それには今回の自民党が政権を取り返した事例よりも、2009年の民主党が政権を握った際のレジーム・チェンジの際の状況が参考になるのではなかろうか。

 黒田日銀のマニフェストに掲げた大きな目標は2%の物価目標を2年で達成するというものである。しかし、これは日銀理論をベースとした政策から見ると、非常に達成が難しいものとなる。そのために打ち出した政策はこれまでの路線上にあるものながら、量を極端に大きく見せるものとなった。これでどのようにして目標達成を可能とするのか、その具体的な道筋は示されていない。さらに債券市場を混乱させるなどの副作用も出ており、日銀はまずそのための火消しに走ることになった。

 民主党が政権を握った際には、官僚との関係がかなりぎくしゃくしたと言われる。同様の事態が今回の日銀内部で発生する可能性もある。それでもアベノミクスへの期待感が維持している間は良いかもしれないが、物価目標達成に向けて今後はいろいろと問題が表面化することも想定される。今後CPIは回復すると予想されているが、足下CPIは3月の全国で前年比マイナス0.5%にいる。アベノミクス登場が昨年11月だとすれば、すでに半年経過しているが、期待感が物価に働きかけている様子は見えていないのが実情である。

 そもそも物価さえ上げれば何とかなる的な発想に問題はないのか。物価上昇への道筋含めて、日銀にはその説明が求められる。そこで適切な答えが出なければ、期待が失望に変わる可能性もある。円安・株高は海外要因に助けられているというか、海外要因が根底にある。世界的なリスクの後退とそれによる景気回復への期待である。そこに日米欧の中央銀行の超緩和策が後押ししている。

 海外要因による円安や世界的に株高にブレーキが掛かると、アベノミクスへの成果が問われる。その際に注目されるのは、日銀の金融政策となろう。政権交代により、ルビコン川を渡り、パンドラの箱を開けてしまった日銀が、今後はどのような政策をとるのか。果たしてレジーム・チェンジした金融政策への支持はどこまで続くのか。非常に興味深い。

アベクロ政策と国債問題

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by nihonkokusai | 2013-04-27 12:28 | 日銀 | Comments(0)

債券市場の動揺の理由

 リフレ的な政策を全面に打ち出した安倍政権によるアベノミクスは、その一本目の矢の仕上げとして日銀に大胆な金融緩和を要求し、それを自ら選んだ黒田日銀総裁が実行に移した。

 これにより、人々の期待が高まったことは事実であろう。円安・株高もあり、日本はデフレから脱却して明るい展望が開けるとの認識も拡がっている。日銀や政府の景気判断も上方修正され、景気の気に働きかけていると。リスクを犯しても大胆な政策を打ち出せば状況は打破できる、との期待が強まっているが、果たしてそのリスクとは何なのか。

 ここはもう少し冷静に物事を見ておく必要もある。今回の政策で、果たして誰か痛手を被ったであろうか。等価交換と言う言葉がある。何かしら大きな作用を行えば、何かしら副作用が生じる。ところが、今回のリフレ政策は一見、どこも痛手を被ったようなところはない、ように見える。だからこそアベノミクスが受け入れられ、本屋にはその関連書籍のコーナーも出来ている。Win-Winで皆ハッピーというのはどこかおかしくはなかろうか。

 4月4日の異次元緩和後の国債の動きが気になる方も、債券関係者以外にもいるかもしれない。それとも円安傾向が続き、株価が上がっている状況が続く限り、アベノミクスは効果が出ており、多少の債券市場の動揺など意識する必要はない、と考えている方の方が多いのか。とにかく債券市場の動揺は何かしらの兆候を示していた可能性がある。もちろんそれは発行額の7割も中央銀行が自国国債を買い入れるという、大胆な政策が国債の需給面に影響を与えたためであろうが、投資家が引いたのは、果たして流動性の問題だけであろうか。

 今回の日銀の異次元緩和の目的は、2%の物価上昇としているが、そのための政策の中心にあるのは、より長い期間の国債の大量購入である。これにより国債のイールドカーブ全体を押しつぶし、さらに国債を買い入れることによる大量の資金供給により日銀の当座預金残高を一気に引き上げようとするものである。ただし、それで本当に物価が動くという保証があるわけではない。現実に当座預金残高は昨年末の倍近くに膨らんでいるが、物価に影響が及んでいる気配はない。もちろん円安の影響により今後は物価が多少なり上昇してくることは予想されるが、当座預金残高が直接物価に影響したわけではない。欧州リスクからの急激な円高の反動による円安でもたらされたものである。

 今後、物価が思うように上昇しなかったならば、期待感が先行している市場からはさらに大胆な政策が要求されよう。その結果、さらなる国債買入増額となれば、それは国債市場の流動性をさらに低下させかねず、市場機能が失われるリスクが生じる。それとともに財政ファイナンスとの認識が強まる可能性がある。もちろんそれは政府の意向次第ではあるが、もし消費増税が先送りされるなどすれば、その認識を強めさせかねない。

 高橋是清による日銀引受は、たしかに途中まではうまくいった。デフレからも脱却したが、その出口政策に失敗し、二・二六事件で高橋是清は暗殺され、国債の日銀引受という打ち出の小槌はさらに振られることになり、戦後のハイパーインフレを生む。それを反省して財政法では日銀による国債の直接引き受けは禁じられることになった。

 今回の異次元緩和は日銀による国債の直接引き受けではないとしているが、日銀券ルールは撤廃し、より長い期間の国債を大量に買い入れ、直近発行銘柄の買入も可能にするなど、自ら財政ファイナンスではないとするために置いておいた標識を撤廃した。超長期債の動揺は、このあたりの漠然としたリスクも意識してのものとも言えるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-04-26 09:21 | 債券市場 | Comments(0)

矛盾だらけの異次元緩和

 日銀の当座預金残高が17日に69兆7200億円となり、過去最高を記録し約70兆円近くとなった。岩田規久男日銀副総裁は、就任前のインタビューにて、「インフレ率を2%にするためには、日銀当座預金を昨年末の約40兆円の倍、70~80兆円にすべきだ」と述べていた。

 4月4日の金融政策決定会合で決めた量的・質的金融緩和策では、マネタリーベースが、年間60~70兆円に相当するベースで増加するよう金融市場調節を行うとしていた。年間60~70兆円というのはマネタリーベースの増加ベースとなり、2012年末のマネタリーベースの実績138兆円規模が、2013年度が200兆円、2014年末が270兆円となる。

 岩田副総裁の発言が正しいとすれば、このピッチでのマネタリーベースの増加(増加分のほとんどは日銀当座預金)では、インフレ率は2%どころではなく跳ね上がりかねないのではなかろうか。

 それ以前にすでに日銀の当座預金残高が、昨年末の倍近いところまできているが、それで何かしら物価上昇に波及しうる兆候が出ているのであろうか。タイムラグはあるにせよ。

 アベノミクスの登場以降の円安・株高がその大きな兆候だという人もいるかもしれない。これには「期待」への効果は確かにあったかと思うが、それは果たしてマネタリーベースの増加が影響していたものなのか。そもそもどれだけの人が日銀の当座預金残高に関心を持っていようか。

 日銀はコアCPIの2%という物価目標に対して、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するとしている。26日に発表される展望レポートでは、2年後に2%の物価目標が達成しうるという予測が示されると予想される。

 2年で2%の物価上昇は達成できるのかとの質問に対して、宮尾審議委員は会見で次の発言を繰り返していた。

 「今回、私どもは2年程度の期間を念頭において、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために今回の「量的・質的金融緩和」というパッケージを決定し、実行に移したということです。」

 まったくこれは答えになっていない。会見前の講演ではその道筋を示してはいたが、そのポイントには、世界経済の安定化、それによる世界経済の回復基調を背景にあげている。リーマン・ショックや欧州の信用不安という大きなショックの後退により、世界経済の回復が日本経済にも影響を与えるとしている。つまりは異次元緩和があっての2%の物価上昇という前提になっていない。

 宮尾審議委員を含めて、六名の審議委員が26日の展望レポートでコアCPIの予想を大きく引き上げたならば、その理由の説明が求められる。宮尾委員の会見では、記者から2%の目標は2年程度で達成できるという事に関し、「宮尾審議委員が何故ここでご自身の考えを述べないのか、よく分かりません。」ともコメントしている。この点についての説明責任も審議委員には求められるはずである。

 さらにこれまでの日銀の考え方を踏まえた上で、今回の異次元緩和がどのように物価に波及するのかの経路について、日銀プロパーであり、これまでの日銀の政策にも携わってきた中曽副総裁の意見も聞きたいところである。

 債券市場にも異次元緩和の影響が及んでいるが、すでに生保や年金、地方の金融機関などが国債投資を減少させるとの見方も強まっている。それでなくても国債発行額のうちこれまでの4割弱から7割強を日銀が買い入れることで、債券市場の実質的な規模が縮小し、参加者も減少するとなれば、その機能低下による影響も考えておく必要がある。

 高橋是清は日銀による国債引受を行ってはいたが、それは当時の国債の流通市場が整備されていなかったこともあり、日銀はいったん引き受けた国債を銀行に売却していた。今回、日銀はあくまで買い入れるだけが目的となっている。国債の市場機能を低下させて、その結果、イールドカーブは全体に低下するどころか、いびつな動きになりかねない。それでどのように実態経済に働きかけられるのか、このあたりの説明もほしいところである。

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by nihonkokusai | 2013-04-25 09:20 | 日銀 | Comments(0)

イタリアの2年債利回りが過去最低になったことの意味

 4月22日の欧州市場では、イタリアの2年国債の利回りが一時1.208%まで下げ、ブルームバーグによるとデータ集計を開始した1993年以来の最低を記録したそうである。23日には1.2%を割り込みさらに記録を更新し、10年債利回りは2010年11月以来の4%割れとなった。

 22日の日本時間の夕方に、イタリアの2年債利回りが過去最低になったとの記事が出ていたが、これを見て一瞬目を疑った。ドイツやベルギー、オーストリアとかの2年債利回りではなく、イタリアの2年債利回りが過去最低を記録したのである。これは欧州のリスク後退を示す、大きな象徴的な出来事ではあるまいか。

 ブルームバーグによるとイタリアの15年債利回りも4.23%と2006年12月以来の低水準となったそうである。2006年末と言えば、ギリシャ・ショックどころか、リーマン・ショック以前の水準である。

 2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。ギリシャの格下げ等も伴いギリシャの国債が急落したのが欧州の信用不安の発端である。

 それがポルトガルやスペインを経て、イタリアに波及した。ユーロというシステムの維持が可能かどうか試されることになった。その意味ではイタリアの金利、つまりイタリア国債の価格の動きが、ユーロの安定度を測るひとつの目安ともなっていたはずである。

 そのイタリア国債の利回りが低下し、2年債に至っては過去最低水準まで低下したという。これはつまりユーロ圏というシステムへの不安とともに、信用不安もかなり後退してきたことの現れと言えるのではなかろうか。

 日本ではアベノミクスの登場と、黒田日銀による異次元緩和に浮かれ、このあたりの状況についてあまり関心はなさそうだが、そもそも昨年末あたりからの急激な円安と株高の根底には、欧州の信用リスクを中心とした世界的なリスクの後退がある。その流れをアベノミクスへの期待が加速させ、ヘッジ・ファンドなどが仕掛けやすい環境を形成したとみられる。

 株価の上昇については、日本株ばかりでなく米国株式市場でもダウ平均が過去最高値を更新してきた。これには日米欧の中銀による積極的な資金供給策による影響ばかりでなく、世界経済の回復期待があろう。それも欧州のリスクの後退が背景にあると考えられる。

 今回の円安・株高の要因としてアベノミクスがどの程度関与しているのかを具体的に計ることは難しい。ただし、アベノミクスだけで今回の円安・株高が生じたとみて、その効果に絶対の信用を置くこともどうかと思う。このあたりは冷静な分析も求められる。

 ちなみにイタリアに限らず、スペインやポルトガルの国債が今回買われた背景には、ECBの利下げ観測に加え、日本の生保や年金による買いが今後入るとの期待感もあろう。しかし、少なくとも期待感が不安感を打ち負かしている環境そのものの要因を理解することも重要かと思われる。

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by nihonkokusai | 2013-04-24 09:16 | 国債 | Comments(0)

3月の債券市場における投資家の動き

 4月22日に日本証券業協会は3月の公社債投資家別売買高を発表した。3月20日に日銀の黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁が就任した。異次元緩和への期待も強まっていたなかで、投資家は果たして国債を主体に債券市場でどのような運用をしていたのか気になるところである。

 短期国債を除くベース、つまり1年以上の残存期間の国債について、都銀は7921億円の買い越しとなっていた。地銀は4137億円の買い越し、信託銀行は3兆2110億円と3兆円を超える大幅買い越しとなっていた。農林系金融機関も3750億円の買い越しに。

 生損保は1兆221億円の買い越し、投資信託も5347億円の買い越しとなっていたが、海外投資家は1191億円の売り越しとなっていた。

 都銀は買い越しに転じ、信託の買い越し額もさらに大きくなっていたが、年限別の売買にはそれぞれ偏りも見えていた。

 それを国債の投資家別売買高でみてみると、都銀は長期債を2兆7924億円も買い越していた半面、中期債を1兆8525億円売り越していた。超長期債は1562億円の売り越し。ちなみに都銀は2月も中期債を売り越して中期債を買い越し、ただし超長期は買い越していた。都銀による長期債の2兆7924億円の買い越しは、2004年4月以降のデータのなかでは最高の買い越し額となっていた。

 信託銀行は前年限で買い越しとなっており、超長期債を1兆1181億円、長期債を7683億円、中期債1兆1663億円のそれぞれ買い越し。円安株高の進行に伴うパッシブ系の年金運用者などからのリバランスの買いが、中期ゾーンを含めて引き続き入っていたものと思われる。

 農林系金融機関は超長期を2557億円買い越し。生保も超長期債を9265億円の買い越しに。

 外国人は長期債を1兆4540億円売り越していた半面、中期債を1兆1724億円買い越していた。2月も金額はこれよりは少ないが、やはり外人は長期債売り、中期債買いをしていた。

 短期債の売買高をみると、外国人がこの月も13兆8073億円の買い越しとなっており、外投資家による短期債の買い越しは継続していた。

 3月の債券相場を振り返ってみると、日銀総裁候補の黒田東彦氏は4日の衆議院運営委員会の所信聴取で、デフレ脱却へ向け可能なことは何でもやると表明し、長期の国債も購入対象として検討すべきだと述べた。4日の債券先物はこの発言を受けて上昇し、145円32銭の高値引けとなり、12月11日につけた過去最高値を更新した。5日も債券に買いが入り10年債利回りは0.6%割れに。8日の30年国債入札は順調な結果となったが、一部の投資家が直接大量に応札した可能性があり、このため債券相場は一時大きく買われた。

 12日の5年国債の入札は無難な結果となったが、20年国債の入札は低調な結果に。しかし、超長期債の売りも限定的であった。むしろ中期ゾーンの買いがいったん止まり、超長期債や長期債には投資家の買いが入った。このあたりで都銀が中期債から長期債に入れ替えていた可能性がある。

 ユーロ圏財務相会合ではキプロスへの財政支援と引き換えに全ての銀行預金への課税を決めたことを受け、キプロス政府は16日に全銀行口座からの引き出しを制限する預金封鎖を開始した。この異例の措置に市場は動揺した。15日の米10年債利回りは2%割れとなっていたこともあり、18日の現物10年債利回りは再び0.6%割れに。20日に日銀の黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁、中曽宏副総裁が就任したが、大胆な金融緩和の期待も強く、特に長期、超長期債に買いが入った。21日に債券先物は145円75銭まで上昇し、連日で債券先物の最高値を更新した。

 このように3月の債券相場は、超長期債には信託銀行や生保、長期債には都銀や信託銀行からの買いが入っていた。中期債は信託銀行などからの買いは入るものの、都銀による売りにより上値が抑えられた格好となっていた。

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by nihonkokusai | 2013-04-23 09:37 | 債券市場 | Comments(0)

2%の物価上昇の道筋とリスク

 日銀の宮尾龍蔵審議委員は、4月18日の岐阜県での講演において、2%物価安定目標への道筋を示した。それによると、

 1.海外経済の正常化は、わが国の輸出・生産の回復基調を後押しし、企業収益を高めます。

 2.基調的なリスクオンの継続と米国長期金利の緩やかな上昇により、さらには日本銀行の強力な緩和策により、資産価格や為替レートを含む金融環境は緩和した状態がサポートされます。

 3.それらは企業の設備投資や構造変革など前向きな動きを後押しし、潜在成長率の緩やかな上昇をもたらします。

 4.持続的な景気回復期待のもと、家計の消費支出も堅調に推移し、需給ギャップの改善を伴いつつ物価は徐々に上昇します。

 5.この間、人々のインフレ予想も徐々に高まり、こうしたもとで、2014年度中には消費者物価上昇率は 1%程度を超えて高まっていきます。

 最初のポイントは、世界経済の安定化、それによる世界経済の回復基調をまず背景に上げている。二番目の基調的なリスクオンの継続という言葉からも読み取れるが、リーマン・ショックや欧州の信用不安という大きなショックの後退により、世界経済の回復が日本経済にも影響を与えるとしている。

 リスクオフからリスクオンの動きに変わって何が起きたかと言えば、円安である。もちろんイタリアやスペインの国債利回りの低下などもあるが、急激な円高の修正が入った。そこにタイミングよく、安倍政権の登場により円安の流れが加速させ、米国の株式市場の上昇などもあり、東京株式市場は大きく上昇した。積極的な金融緩和への期待が、資産バブルのような状況を生み出した結果、資産価格が上昇した。

 ここまでは確かに現在の動きの解説となる。問題は4月4日に異次元緩和と呼ばれた緩和を行って、企業の設備投資をどのようにしたら前向きにさせられるのか。人々のインフレ予想も徐々に高まり、こうしたもとで、2014年度中には消費者物価上昇率は 1%程度を超えて高まっていくとしているが、これは異次元緩和がなくても、世界的なリスクの後退での影響で、可能であったのではなかろうか。

 そもそも安倍首相や、岩田副総裁のこれまでのコメントを考えれば、特に海外要因等にたよらずとも、マネタリーベースを大胆に引き上げれば物価は上がると言っていなかったか。実際、すでに日銀の当座預金残高は岩田氏が2%の物価上昇に必要と言っていた70~80兆円に届こうとしている。これですでに2%の物価上昇は可能となる状態にいるということになるのではなかろうか。

 少なくとも宮尾委員は世界経済を取り巻く環境の改善、日本の景気回復とともに物価上昇をもたらすことを可能にするとの認識と思われる。日銀の金融政策はこのように流れを押すことは可能かもしれない。しかし、岩田氏の過去の発言からは、日銀の当座預金残高を倍にすれば、物価を上げられるとしている。そのために日銀は発行額の7割もの国債を買い入れる結果となっている。何かおかしくはないだろうか。

 「先日の金融政策決定会合における議論を通じて、長期国債の大規模な買入れと年限長期化といった施策は、イールドカーブ全体に一段と強力な下押し圧力を掛けるという点で、これまでの私の提案を上回る強力な緩和効果が期待できると判断し、後述するコストやリスクも勘案したうえ、「量的・質的金融緩和」の導入に賛成することとしました。」(宮尾審議委員)

 確かに異次元緩和を受けてイールドカーブは一時大きく低下し、10年債利回りは0.315%、20年、30年の利回りは1%割れとなった。しかし、その後イールドカーブはそこから跳ね上がっている。日銀が国債を大量に買い入れることで国債市場の機能に影響を与えかねないとの懸念も出て、国債市場は乱高下した。長期金利は日銀が操作できるものではないことは、これを見ても明らかであろうし、ここからのイールドカーブの低下にどれほどの意味、というか効果があるのか。このあたりも説明していただきたい気がする。

 イールドカーブの低下により企業・家計の借入負担を軽減するとの説明はあったが、すでに長期金利は世界最低水準にまで沈んでおり、その恩恵はすでに十分に得ている。何といっても恩恵を受けているのは日本政府であろう。企業は借り入れどころか自己資金が豊富なところも多い。

 銀行や機関投資家などのポートフォリオ調整により、国債投資から銀行信用やリスク資産への投資にシフトする、との期待も述べているが国債とリスク資産での市場規模は桁が違う。日銀がそもそもリスク資産の買入額に比べて、国債買入額を極端に多くしたのはそのマーケット規模が大きな理由であったはずである。

 今回の措置は「期待」への働きかけを重視しています、とも宮尾委員は指摘している。「2%の消費者物価上昇率を目指すシナリオが道筋に沿って徐々に実現していくと、それを人々が実感して先行きの見通しに対する信頼を強めます」とあるが、その理論的な背景となっている日銀の当座預金残高と物価の上昇の関連性をどのように見たら良いのか。すでに70兆円に達しようとしている当座預金残高で、どのような働きかけが物価にされているのか。むしろここが聞きたいところである。そこをはっきり説明してくれなければ、その期待なるものはいずれ懸念に変化してくる可能性がある。

 「大規模な国債買入がもたらす金利を起点とした全般的な波及ルートと、通貨量のコントロールを新しく導入して、インフレ予想へ働きかけるルートを同時に追求することで、デフレ脱却に向けた強いメッセージを示し、政策効果をより高めようとする枠組みと理解できます」(宮尾審議委員)

 大規模な国債買入がもたらす財政ファイナンスへのリスク波及ルートと、通貨量のコントロールを導入しても効果なかった前回の量的緩和時と同様にインフレ予想に働きかけることはかなわず、資産バブルを促進し、それが崩壊してしまうという結果にはなるまいか。

アベクロ政策と国債問題

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by nihonkokusai | 2013-04-22 09:27 | 日銀 | Comments(2)

日銀の国債買入方式の修正

 日銀は4日に決定した量的・質的金融緩和策(QQE)における国債の新たな買入について、市場参加者の意見を取り入れ、買入方式を一部修正し18日の夕方に発表された。

 量的・質的金融緩和策では、長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。毎月の長期国債のグロスの買入れ額は7兆円強となる(国債には償還があるため、その分も考慮しての買入額)。これにより日銀が保有する長期国債(残存1年以上の国債)は2012年末が89兆円となっていたが、それが2013年末に140兆円、2014年末に190兆円まで引き上げられる。

 長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数を現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長する。この結果、毎月の長期国債のグロスの買入額は7.5兆円規模(これまでは3.8兆円程度、4月の買入予定額は6.2兆円)になる。2013年度の長期国債のカレンダーベースの発行予定額は126.6兆円となっており(年間発行額156.6兆円から短国の30兆円を差し引いたもの)、7.5兆円の12か月で88.7兆円をグロスで日銀が購入するとなれば、毎月の発行額の70%を買い入れることになる。

 この具体的な買入方式については、金融政策決定会合の公表文には書かれておらず、決定会合後の夕方に、「当面の長期国債買入れの運営について」が日銀金融市場局から発表された。まさに突貫工事で作成したとの印象である。

 4日の夕方にはエコノミストなどが日銀に集められたが、ここでは新政策への説明が中心となり、集まった市場参加者もこれにより具体的に市場にどのような影響があるのか、はかりあぐねていたのではなかろうか。その影響は翌5日に現れ、債券市場は史上まれにみる乱高下となったが、日銀が発行額の7割も買い入れることによる国債市場の機能低下への懸念が大きな要因となった。このあたりについて日銀も2009年のイングランド銀行による量的緩和時の英国債市場の混乱などから、ある程度の想定はあったのかもしれないが、あまり準備が進んでいたわけでもなさそうであった。

 11日にはあらためて市場参加者との対話の強化を図ることを目的に、「市場参加者との意見交換会」が開催された。しかし、参加予定者は金融調節取引対象先、機関投資家など市場参加者ではあったものの、初回ということもあってか役員クラスが集められた。5日以降の債券市場の混乱ぶりを見る限り、早めに実務者レベルでの会合をもつべきであったとは思うが、それが開催されたのは17日となった。

 4月17日に「市場調節取引実務担当者との意見交換会」が開催されたが、ここでは1回当たり1兆円程度で4月に5回、5月に6回実施する予定となっていた国債買入について、市場への影響が大きいため、出席者からは、金額を小さくして高い頻度にした方が良いとの意見が多かった(ブルームバーグ)。これを踏まえて18日に日銀はあらためて「当面の長期国債買入れの運営について」を発表したのである。

 ここでは4月と5月分について発表されたが、このうち5月分を見てみると、修正前は6回で合計7兆4400億円予定の国債買入であったものを、修正後は16回で7兆5000億円程度となった。修正後は原則として2つの残存期間区分を同時にオファーすることになり、つまり16回の半分の8回、オペが入ることになる。

 金額についても修正前に比べてそれぞれの年限に幅を持たせ、相場状況等に合わせて裁量の余地を持たせた格好となっている。たとえば残存期間1年超5年以下は修正前の5月合計3兆円が3~3.5兆円に。残存期間5年超10年以下も修正前の3.4兆円が3~3.5兆円に。残存期間10年超、つまり超長期債は当初の8000億円が、8000億円~1兆2000億円に何げに上方修正されていた。

 残存期間1年超5年以下については、残存期間の区分を細分化して同時にオファーすることがあるとしており、これは2年債あたりに集中する可能性を配慮したようである。

 買入対象銘柄の残存期間が重複する利付国債の入札日(流動性供給入札を含む)には、原則オファーしないことも明記された。これはつまりカレント物の流動性に多少なり配慮するとともに、「財政ファイナンス」と受け止められることを防ぐ狙いがあるそうである(19日の日経新聞)。あまりしっかりとした歯止めのようには思われないが。

 日銀は大胆な緩和策を講じ、それによる国債市場の混乱を目の当たりにし、次々と手を打ち、債券市場もやや落ち着きを取り戻してきた。そんなところに、今回の国債買入方式の修正発表も市場は好感した格好となった。しかし、池のなかのクジラはクジラである。債券市場の混乱がこれで完全に払拭されるとも思えない。

アベクロ政策と国債問題

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by nihonkokusai | 2013-04-21 16:31 | 国債 | Comments(0)

長期金利の変動リスク

 日銀は「金融システムレポート(2013年4月号)」を公表した。ここでは金融機関による金利上昇に伴う債券時価損失のところが注目されていた。

 全年限にわたり金利が一定幅上振れるパラレルシフトの場合、金利が1%上昇した際、国際統一基準行で3.2兆円、国内基準行で3.4兆円の評価損が発生するとの試算があった。ちなみに2%の上昇となると、パラレルシフトの場合に国際統一基準行で6.2兆円、国内基準行で6.3兆円の評価損が発生する。

 日銀は大胆で異次元の緩和政策により、2年間でコアCPIを前年比2%とするのであれば、長期金利も当然ながら同様に上昇してくるはずである。その際の金融機関の評価損については、金利が1~3%程度上昇するなどストレスが生じても、銀行の資本基盤が損なわれることは回避されると指摘もあった。

 このレポートには、長期金利の変動リスクについての項目もある。

 「長期金利の水準は、先行きの成長率予想やインフレ予想のほか、財政悪化懸念を含む各種のリスクプレミアムや金融政策に対する期待など、様々な要因に影響される。」とある。

 長期金利を見る際には、経済成長率や物価動向とともに、財政プレミアムがオンされてくるのかどうか、さらには金融政策による期待というか、不安も含めて影響が出る。ここで不安としたのは、今回の大胆な緩和政策にて、国債の流動性リスクが意識されるなどしたことで、債券市場は一時混乱しており、一概に期待ばかりではないようである。

 ソブリンCDSプレミアムからみての財政悪化懸念の高まりは特に窺われないとあるが、「ソブリンCDS市場の流動性が低く、同プレミアムが、必ずしもわが国の財政状況に対する市場の見方を正確に反映しているとは限らない点に留意が必要」ともあるようにあくまで参考指標でしかない。ただし、債券市場を見ても現状、財政悪化懸念が強まっている気配はないことは確かである。

 先行きの成長率予想は0.5~1%程度、インフレ予想をみるとエコノミストによる長期物価予測はここ数年低下傾向にあるが、3月時点では、サーベイ調査によれば市場参加者の長期物価見通しが幾分上昇しているものの、まだあくまで幾分であった。

 「ゼロ・クーポン・インフレーション・スワップのレートや物価連動国債の利回りからみたBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)も、やや上昇している」とある。

 ゼロ・クーポン・インフレーション・スワップには解説もあり、ゼロ・クーポン・インフレーション・スワップ(ZCIS、インフレ・スワップ)とは、CPI の変化率を参照する変動金利と満期時一括払い固定金利(ゼロ・クーポン)を交換する金融派生商品とある。

 いずれにしても、物価連動国債は今年度から発行が再開されるが、5年前に発行が停止されており、流動性は極端に低いとみられるため。こちらもあくまで参考数値となろう。インフレ・スワップについても流動性は限定的のようである。

 日銀のレポートでは、別の手法を用いてわが国の長期金利の要因分解を試みている。概ね似通った動きをみせている日米英独4か国の長期金利の変動から、グローバルに共通な要因と考えられる「共通成分」を抽出し、長期金利を共通成分とその他(国内要因など)に分解すると、わが国の長期金利は、ごく足もとではその他(国内要因など)の縮小を主因に低下しているが、ここ数年の趨勢的な低下は、グローバルに共通な要因によることがわかる。

 たしかにこのような分析をしないと長期金利の理論的な背景が分析できないことはわかるが、これは市場の動向を見ていればある程度わかる。欧州リスクが日米欧独の長期金利の動向に大きく影響していたのが、アベノミクスの登場で足下では日銀の金融政策の動向に大きく影響を受けていた。それをこのレポートでは、数値化して見せている。このグラフを見ると、2006年3月のいわゆるVaRショック前には特異な動きをしていたことが見てとれる。今回の日銀の大胆な緩和以降の長期金利についても一時0.315%にまで低下したことで、2006年3月の時と同じような特異な動きになっていたと推測される。

 ここ数年の趨勢的な低下については、「金融規制の強化や有担保調達ニーズの強まりなどを背景とする安全資産としての国債需要の高まり、あるいは各国中央銀行による安全資産の買い入れなどが、国債需給のタイト化を通じて、長期金利の水準を押し下げているという可能性である」が指摘されている。

 安全資産としての国債需要については、欧州リスクが一時に比べて後退してきたことで、今後はむしろ後退してくる可能性がある。また各国中央銀行による安全資産の買い入れについてはFRBなどは出口政策を模索しつつある。それに対して日銀は発行される国債の7割も購入することで、国債需給のタイト化は今後も続く。これはむしろ超長期債を中心に国債市場の流動化を阻害しかねない。このあたりの分析も今後は必要となりそうである。

 「わが国の財政悪化懸念による金利上昇リスクに加えて、例えば、今後、非伝統的金融政策の巻き戻しを巡る思惑などを契機に海外長期金利が上昇する場合には、わが国の長期金利も上昇する可能性がある点にも留意しておく必要がある。」と今回のレポートではまとめられている。

 それとともに本当に2年で2%の物価上昇が可能であるとするのであれば、それによる影響も意識する必要がある。反対に国債市場の機能にまで影響を及ぼしかねない大胆な金融政策を打っても、物価への影響が限定的となった場合の長期金利の動きについても、今後は考慮しておく必要もあろう。

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by nihonkokusai | 2013-04-19 09:21 | 国債 | Comments(0)

日銀の当座預金残高がすでに70兆円規模に

 日銀の当座預金残高が17日の速報ベースで69兆7200億円となり、過去最高を記録し約70兆円近くとなった。下記データもどうやら毎日チェックしておく必要がありそうである。

資料、日銀当座預金増減要因と金融調節(毎営業日更新) http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu.htm

 2001年3月から2006年3月まで続いた前回の量的緩和の際には、この日銀の当座預金残高が目標とされ、最終的には30~35兆円が目標とされていた。当時のこの目標に比べて、すでに倍の規模になっている。

 そういえば岩田規久男日銀副総裁は就任前、どこかのサイトのインタビューにて、「インフレ率を2%にするためには、日銀当座預金を昨年末の約40兆円の倍、70~80兆円にすべきだ」と述べていた。日銀の大胆な異次元緩和で、すでにその目標値はほぼ達成されているようなのだが。

 それはさておき、ここにきて当座預金残高が大きく伸びた要因は、4月4日の日銀の量的・質的金融緩和の導入による効果、というよりも、それ以降の債券相場の乱高下が影響していたと思われる。

 5日の債券相場の乱高下にはこのコラムでも、また拙著「アベクロ政策と国債問題[Kindle版]」でも触れていたので、そちらを読んでいただきたいが、債券先物市場では5回に及ぶサーキット・ブレーカーの発動があった(5日に売りで2度、8日に買いで一度、10日のイブニング・セッションで売りで一度、12日のイブニング・セッションで売りで一度)。

 これに対して日銀が取った手段は、オペによりまず中短期の金利の跳ね上がりを抑えようとするものであった。

 中短期ゾーンの利回り上昇に歯止めを掛けるべく、11日の午前中に「初の」1年物の共通担保資金供給(全店、固定金利)オペ1.5兆円をオファーした。これはいわゆる「シグナルオペ」であった。「10時10分に打つのは普通は先日付本店オペなので、つまりは通常のタイムスケジュールを逸脱したオペという意思を示すオペ」(ベテラン市場参加者談)で、これは10年前のVaRショック、つまり国債の急落時にも実施されていた。2003年8月27日にオファーされた「手形オペ9か月」がそれであった。

 シグナルオペとは聞き慣れない用語であったかもしれないが、これは日銀がシグナルオペだと言っているわけではなく、短期市場での参加者が、何かしら日銀の意思を感じるオペであると思われるのでシグナルオペと呼んでいるものである。

 実は12日金曜日にも日銀は共通担保資金供給(全店、固定金利)を1.5兆円打ってきた。つまりシグナルオペを打ってきたのだが、この際には黒田日銀総裁の講演内容に目が向いて、債券市場では何となくスルーされていた感があった。

 シグナルオペは15日、16日も続くなど連日、日銀は積極的な資金供給を行った結果、16日までに合計11兆円以上の供給(日経新聞)を行ったのである。これにより、日銀の当座預金残高が予想以上のピッチで増加したのである。

 それで何か物価に影響を与えるような結果が出ている気配はあるのであろうか。17日の日経新聞のやさしい経済学では「期待や予想に働きかける政策の効果をどこまで理論的に示せるかは難しい課題」として、「どんな効果が出るのかは、実行してみないとわからない面が強い」と結んでいる。

 いわゆるブタ積みと呼ばれる、現金を見せてやる気を起こさせる作戦については、過去に経験済みながら、その額を極端に大きくさせるのが、今回の異次元緩和である。それでさっそく債券市場には動揺が入るなど、日銀が予想していなかったであろう事態が早速発生している。日銀がリフレ的な政策にこれまで踏み込まなかったのは、それによるトランスミッション・チャンネルがはっきりしなかった事に加え、その副作用についても考慮していたためと思われる。今後はそのあたりが試されることにもなる。とにかく実行してみないとわからない政策なのだから。

 今後の国債の動きには債券市場関係者ぱかりでなく、幅広く関心が高まる可能性がある。日銀の異次元緩和による国債市場の混乱を理解するには、国債そのものの理解も必要になる。そのためにはぜひ、出版された拙著「アベクロ政策と国債問題 [Kindle版]」をぜひダウンロードしていただけるうれしい。前作「アベノミクスを理解するための日銀入門[Kindle版]」と同様に牛さん熊さんの会話形式で読みやすくなっている。ぜひご一読を。
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by nihonkokusai | 2013-04-18 09:46 | 日銀 | Comments(0)
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