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財政ファイナンスとは何か、牛さん熊さんの国債入門

猫 前回の「アベノミクスを理解するための日銀入門」がたいへん好評だったので、その第二弾として、今度は「牛さん熊さんの国債入門」として、二人にお話を伺いたいと思います。最初に鳩派大学の専任講師の熊さん、よろしくおねがいいたします。

熊 鳩派大学の熊です。どうかよろしく。

猫 そしてもうおひと方は、鷹派総合研究所特別顧問の牛さんです。

牛 鷹派総研の牛です。よろしくお願い致します。

猫 今回はお二人に前回の日銀のお話にも絡めて国債のお話を伺いたいのですが、最初に財政ファイナンスについて、伺いたいと思うのですが。

熊 いきなり財政ファイナンスかね。いくらなんでも最初は国債とはなんぞや、あたりから進めるべきではないのかね。

牛 まあまあ、アベノミクスの人気化で、日銀とともに国債にも注目が集まっているので、話題のトピックを元に二人で話しをして、少しずつ国債のことを知ってもらえれば良いかと思いますよ。

猫 そうしていただけるとたいへん助かります。とりあえずそもそも財政ファイナンスとは何かについて教えてください。

熊 財政ファイナンスとは、中央銀行が政府に対してマネー(資金)をファイナンス(調達)という意味であり、財政赤字の拡大に中央銀行が直接協力をするという意味となる。これは国債のマネタリゼーション(貨幣化)とも呼ばれている。

猫 すみません、何を言っているのかさっぱりわかりません。

牛 政府が発行する国債を日銀が直接引き受けるこということは、政府の財政赤字に対して、日銀が資金を融通することになりますね。つまり政府は国債を市中に発行、つまり民間金融機関などに買ってもらうのではなく、日銀に強制的に引き受けさせて、日本で唯一の発券銀行である日銀は、その分の日銀券を発行して政府に資金を貸すことになるわけです。

猫 政府が民間から借金するのと、中央銀行から借金するのって、そんなに違いがあるのですか。

熊 日本では財政法という法律で、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせてはならないと定められている。つまり財政ファイナンスを禁じているわけだな。

猫 なんで禁じられているのですか。

牛 中央銀行が、いったん国債の引受などにより政府への直接の資金供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まります。中央銀行による国債引受は麻薬に例えられることがあります。いったん踏み入れてしまうと常用することになり、元には戻れず最後に身を滅ぼすことになります。先進主要国が中央銀行による政府への信用供与を厳しく制限しているのは、こうした考え方に基づくものです。

猫 禁じられているのは日本だけではないのですか。

熊 米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっておる。

牛 欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっています。ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されているのです。

猫 でも米国の中央銀行であるFRBも、欧州中央銀行(ECB)も、さらに日銀も国債を大量に買っていますよね。国債を大量に買っていても財政ファイナンスとはならないのですか。結果は同じじゃないですか。

熊 結果はさておき、その目的が問題となるわけだな。日銀が金融政策の手段として民間から国債を買い入れて資金を供給するのであれば、それはひとつの金融緩和手段となるわけだ。ところが財政の穴埋めを目的としてしまうと、日銀がまさに政府の打ち出の小槌となってしまうということだ。

牛 有名な高橋是清氏が日銀による国債引受を行った際に、途中まではデフレの解消等のためにうまくいっていたのですが、いったん甘い汁を吸ってしまった政府は、この打ち出の小槌を離そうとしなかったのです。それが結果として、二・二六事件で高橋是清蔵相が暗殺され、その後の日本のハイパーインフレーションの原因となりました。それで戦後に財政法で日銀による国債引受は禁じられたのです。

猫 でも金融緩和を目的しすれば、日銀はいくらでも国債を買って、結果として政府の財政を助けることになりませんか。

熊 日銀が財政ファイナンスではないと言っていれば問題はあるまい。政府も財政再建をしているというポーズを取っていれば良い。それよりも日銀の大胆な金融緩和でデフレを脱却することが、まず先決だろう。

牛 その点にはたいへん危険性が伴いますね。それでなくても国債の買い手として日銀の存在感が強まっている中、日本政府の債務残高はすでに1000兆円も存在しています。このまま日銀が大量に国債を買い続けるとなれば、財政ファイナンスに近いものとの認識が出てくる懸念もあります。このあたり節度ある国債の買入をする必要があると思いますよ。

熊 そう簡単にマーケットが不安がることなどなかろうて。日銀は輪番オペと呼ばれる通常の国債買入には銀行券ルールがある。つまり日銀の保有する国債残高が、日銀の発行している銀行券の残高を抜かないという自主ルールだ。しかし、これは短期債を含んでおらず、さらに基金による買入を含むと、すでに破られたルールとなっているが、市場は一切、動揺は見せておらんだろう。

牛 市場心理というのは、移ろいやすいもので突然変化します。2010年初頭のギリシャもそうだったでしょう。いま大丈夫、こんなに買っても大丈夫、ならこれからもっと買っても大丈夫なんて、どなたが保証してくれるのでしょうか。

熊 そんな悲観的な見方ばかりするから、これまでも大胆な金融緩和を日銀はできなかったのだろう。そのあたりの意識からまず変える必要がある。

猫 でも素人の私が言うのも何ですが、とてもリスクがあるような気もするのですが。

牛 やってみなくちゃわからない。でもやってみたら失敗した、なんてことになったら取り返しが付きませんよ。このあたりはとにかく慎重にする必要があり、たとえ銀行券ルールを撤廃することになっても、その代わりに何かしらの歯止めを設けるなどする必要はあると思います。

アベノミクスを理解するための日銀入門

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by nihonkokusai | 2013-03-31 10:53 | 国債 | Comments(4)

黒田日銀総裁はオズの魔法使いか

「あなたの魔法だけがこの国を救える」
「魔法使いのふりをして」

 これは現在公開されているディズニー映画、「オズ はじまりの戦い」の中に出てくる台詞である。私はまだこの映画は見ておらず、予告編の中から拾ったものであるが、この台詞の意味するところは、多くの方はご存じかと思う。

 「オズ はじまりの戦い」は、ライマン・フランク・ボームの名作児童文学「オズの魔法使い」(1900年5月に出版)に登場する魔法使いのオズがいかにして誕生したのかを描いたものである。そのオズはどのような人物であったのか。

 その前に「オズの魔法使い」がどういう物語であったのか、簡単にあらすじを追ってみたい。

 アメリカ・カンザス州に暮らす少女ドロシーは竜巻に家ごと巻き込まれ、飼い犬のトトと共に不思議な「オズの国」へと飛ばされてしまう。途中で脳の無いカカシ・心の無いブリキの木こり・臆病なライオンと出会い、それぞれの願いを叶えてもらうため「エメラルドの都」にいるという「魔法使いのオズ」に会いに行くというストーリーである。

 1939年に製作された映画「オズの魔法使い」では、ジュディ・ガーランドが主人公となり、白黒の画面がオズの世界に入るとカラーとなる演出が当時の話題となった。この映画を知らなくても主題歌となった「虹の彼方に(over the rainbow)」は誰もが知っている名曲である。

 この「オズの魔法使い」には政治的な解釈ができるとの説があるのをご存じか。それは当時の米国の金融政策をめぐる議論、特にデフレからの脱却が大きなテーマになっていたとの解釈である。

 アメリカでは南北戦争時の不換紙幣発行増によるインフレなどから兌換制度への要望が強まり、1873年の「貨幣法」によって金本位制をアメリカの通貨制度として定め、1879年に施行された。この金本位制への移行が、その後の不況やデフレの要因とされ、金銀複本位制を求める運動が広まった。

 1896年の米大統領選挙はデフレ対策が大きな争点となった。金本位制を維持するか(アンチリフレ派)、金銀複本位制とするのか(リフレ派)が争点となっていたのである。金銀複本位制は通貨の価値を落としかねないとして、金本位制を主張していたマッキンリーが勝利した。

 「オズの魔法使い」を書いたジャーナリストでもあった原作者のライマン・フランク・ボームは、農民達が苦しんでいるのをみてリフレ政策に賛同していたとの説がある。農民をイメージしていたかかし、工場労働者をイメージしたブリキのきこり、さらに金銀本位制を主張していた大統領候補を臆病なライオンにたとえて、金の重さを表す「トロイオンス(oz)」つまり、「オズ」の魔法使いにそれぞれの願いをかなえてもらいに会いに行くという解釈である。

 実際には原作者にこのような意図があったのかどうかは定かではなく、純粋な文学作品として書かれた可能性もあるが、どうやらこのオズの物語が現代の日本に蘇ったかのようである。

 ドロシー達が頼ったオズは本当は魔法使いなどではなかった。それが「オズ はじまりの戦い」の中でも描かれている。そんなオズがどうして大魔法使いと認識されたのか。まさにここにはオズの世界にいる人達による「期待」に働きかけられていた面が大きい。そんなオズと、期待先行の新体制の日銀がオーバーラップしてしまう。原作でもそんなオズに頼ろうとしたというのは、当時はまだ米国にはなかった中央銀行という存在を原作者はイメージしていたのであろうか。

 黒田日銀総裁は果たしてデフレ脱却を可能にする本当の魔法を持っているのであろうか。それともその魔法が使えると信じさせることで、魔法のような効果を生み出せるのであろうか。4月3日、4日にその魔法の一端が見えてくる。

 いよいよ4月3日、4日の黒田総裁にとり最初の日銀金融政策決定会合も控え、その前に是非、拙著「アベノミクスを理解するための日銀入門」で、さらっと現在の日銀の姿を確認してみてください。

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by nihonkokusai | 2013-03-30 09:53 | 日銀 | Comments(0)

2月の債券市場における投資家の動き

 3月21日に日本証券業協会は2月の公社債投資家別売買高を発表した。発表からすでに一週間程度経過してしまったが、あらためてこの数値を確認しておきたい。

 短期国債を除くベースで、都銀は3120億円の売り越しとなった。地銀は1769億円の買い越し、信託銀行は2兆5139億円とこの月も2兆円を超える買い越しとなった。農林系金融機関も7310億円、信用金庫は1581億円のそれぞれ買い越しとなった。

 生損保も7012億円の買い越し、投資信託も3316億円の買い越し、海外投資家も2528億円とそれぞれ買い越しとなっていた。

 都銀と第二地銀を除くとほぼ買い越しとなっていたが、年限別の売買にはそれぞれ偏りも見えていた。それを国債の投資家別売買高でみてみると、都銀は長期債を4319億円買い越していた半面、中期債を6462億円売り越していた。超長期債は20億円の買い越し。ちなみに都銀は1月に長期債と超長期債を売り越して中期債を買い越していた。

 信託銀行は超長期債を6500億円、長期債を1兆7968億円の買い越し、中期債は1678億円の売り越しに。円安株高の進行によるパッシブ系の年金運用者などからのリバランスに伴う買いが、長期・超長期主体に引き続き入ったものと思われる。この買いがどこで一巡するのかも、今後は注意する必要がある。

 農林系金融機関は超長期を5630億円買い越し。生保も超長期債を7410億円の買い越し。外国人は長期債を4878億円売り越していた半面、中期債を7307億円買い越していた。

 短期債の売買高をみると、外国人がこの月も11兆1877億円の買い越しとなっており、外投資家による短期債の買い越しは継続していた。

 2月の債券相場を振り返ってみると、月初は1月の米雇用統計を受けた米株高と10年債利回りが2%台に乗せるなどの米債安などから、円債も売りが先行した。しかし、中期ゾーン主体に買いが入り、5年債利回りは0.135%と過去最低利回りを更新し、10年債利回りも0.8%割れに。1月31日の2年債入札での銀行により大量応札観測もあり、中期ゾーンの需給にややゆがみも生じたような動きとなっていた。その後、債券先物は144円前半での主体の小動きが続き、10年債利回りも0.7%台での動きとなっていた。

 2月25日に日銀の白川方明総裁の後任に黒田東彦総裁を起用、副総裁には岩田規久男氏と中曽宏氏を軸に検討と伝えられた。アンチ日銀派とされる黒田氏と岩田氏の起用で、アベノミクスへの期待が強まった。債券市場では積極的な追加緩和策への期待も出てきたが、特に期間の長めの債券の買入等も期待され、超長期債を中心に買い進まれた。イタリアの政局が不透明となったことで、25日の外為市場ではドル円は94円台から一時90円台に、ユーロ円も一時120円割れとなった。円債はさらに買い進まれ、26日に5年債利回りは0.115%に低下し連日で過去最低を更新。10年債利回りも0.7%割れとなり、20年債利回りも1.7%を割り込んだ。27日に債券先物は145円台を回復した。

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by nihonkokusai | 2013-03-29 10:01 | 債券市場 | Comments(0)

日銀の国債保有、銀行券ルールにかわるもの

 3月26日に日銀の黒田東彦総裁は、衆院財務金融委員会で国会に提出した「通貨及び金融の調節に関する報告書(半期報告)」について概要を説明した。その後、金融政策運営などをめぐり質疑に応じた。

 その一部をインターネットでの中継で見ていたのだが、20日に就任したばかりにも関わらず、適格な受け答えをしていたとの印象である。日銀総裁の仕事をはじめたばかりながら、このような報告と質問に答えるためには、それなりの準備も必要だと思われる。28日には参院での同様の報告が予定されている。日銀は臨時の金融政策決定会合を開催するとの観測というか思惑もあったが、このスケジュールから見てもそれは難しいのではなかろうか。無理に臨時会合を開かずとも、4月1日の日銀短観も確認し、3日、4日の通常会合であらためて次元の異なる大胆な金融政策を検討したほうが良いと思う。

 その次元の異なる大胆な金融緩和の内容は、26日の黒田総裁の発言内容からみて、どうやら現在行っている日銀の金融政策の整理統合とその拡張にあるようで、次元は異ならず、それほど大胆なものにはならないと予想される。その大胆さにも限度があるのは、財政ファイナンスとの線引きが必要になるためである。

 アベノミクスと呼ばれた政府の政策が期待に働きかけたように、新体制となった日銀も「大胆な」とか「無期限」、「無制限」などの言葉をうまく使い、コミュニケーション・ポリシーを重視するような政策を行ってくると予想される。2年間のうちに2%の物価上昇達成、というのもコミュニケーション・ポリシーを意識したものであろう。

 大胆な金融緩和の内容としては、資金供給手段として使われている通常の国債買入(輪番オペ)と基金による国債買入の統合がありそうである。国債等の買入を一本化し、毎月買い入れる国債の金額をはっきりさせ、その目標金額をこれまでの2本を合計したものとする。その金額もこれまでのものからさらに引き上げてくることもありうる。つまり2014年からスタートする予定であった月額の買入予定額の導入を輪番と統合して前倒してくることになるのではなかろうか。これについて、無期限の国債買入の前倒し、との表現はおかしい。そもそも2014年以降を無期限としていたわけであり、これは月額の買入方式を前倒しするだけで、無期限であることには何ら変わりはない。

 26日の黒田総裁は月額買入の額より重視すべきはストックと発言していたが、そのストックの額も目標に設定されることも予想される。輪番と基金の統合となれば日銀の資産の中の国債の額が目標値とされる可能性もあるが、それよりも量的緩和策の再導入ということで、再び日銀の当座預金残高を目標としてくることが予想される。すでに現在の政策でも今年末には80~90兆円程度に当座預金残高は積み上がることが想定されており、その金額を少なく見積もっても100兆円程度かそれ以上に引き上げることが予想される。現実に各金融機関が当座預金をそのまま残してくれるのか、そもそも当座預金残高を増やして本当に物価に働きかけられるのか、という疑問は残るものの、現時点で考えられるのは、このような目標である。

 日銀保有の国債残高に基金のものも統合してしまうと、銀行券ルールは完全に形骸化することになる。これについては新たな歯止めを作る必要もある。すでに形骸化しており、実質的な財政ファイナンスとされてもおかしくはないとの見方もあるが、ここに線を引くことは、象徴的な意味合いながらも重要なことになる。27日の日経新聞では、「一部には、決定会合で1か月程度かけて財政ファイナンス懸念の払拭策も検討したうえで、結論を得る案も出ている」としているが、これは次回の決定会合の大きなポイントになると個人的にも考えている。これにはたとえば、昨年12月末現在、国債(短期債除く)の全体に占める日銀の保有比率が11.6%となっているが、この数値にある程度の制限を設けるなどの方式もひとつの手段となるかもしれない。

 おかげさまで、拙著「アベノミクスを理解するための日銀入門 [Kindle版]」はキンドルの有料部門でも50位以内に入っております。日銀への注目度も高くなっているだけに、ぜひこの本で日銀の基礎知識とアベノミクスとの関係の概要を掴んでください。日銀に絡んだ記事の背景等の理解にお手伝いできると思っております。

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by nihonkokusai | 2013-03-28 09:20 | 日銀 | Comments(0)

岩田・翁論争を知っていますか

 3月26日付け日経新聞の経済教室は、翁邦雄京都大学教授による「量的緩和、出口の展望必要」と題するものであった。この内容はいろいろな意味で興味深い。翁氏といえば、岩田・翁論争でも有名である。これは1990年代初めに当時の岩田規久男上智大学教授と翁邦雄日本銀行調査統計局企画調査課長との間でのマネーサプライ論争であった。

 そのマネーサプライ論争に決着を付けるべく、岩田規久男氏は今度は日銀副総裁という立場で自らの説を試すことになる。それに対して翁氏はすでに日銀を離れており、岩田・翁論争から見ると、日銀の内部外部という意味からは、立場が完全に入れ替わっている。この論争は学者と日銀の実務者との論争との見方をされたが、今度は元学者の日銀副総裁(岩田氏)と、元日銀実務者でいま学者(翁氏)という立場ということになる。

 これはこれでたいへん興味深い。特に岩田規久男日銀副総裁は、これから日銀の現場を見ることになる。実務者の話を外の人ではなく、内部の人として聞くことになる。それでも果たして意見が変わらないのか。2年間で2%の物価目標を達成できなければ辞任するとおっしゃり、自らの退路をすでに作ってしまっているかに見える。それよりも自らの主張が現場にマッチしているのかどうかと確認作業をまず行っていただきたいと思う。

 今回の翁氏の経済教室では、「量的緩和の財政的コストはデフレ脱却時で初めて明確になる」と主張している。つまり出口を意識した上での、大胆な金融緩和でなければ、混乱を招くばかりでなく、コストも生じることで、それを誰が支払うかという問題も生じるという。

 出口についてはどうやら岩田氏と翁氏は意見が一致しているようで、日銀のバランスシートは維持したまま、短期金利を上昇させる手段を示唆している。これに関し翁氏は具体的な手段として、当座預金残高の付利を誘導目標の水準にすれば良いと述べている。

 ただし、このような手段の問題以上に深刻化するのが、物価安定と財政の持続性にどう折り合いをつけるか、ということであると翁氏は指摘する。「デフレ脱却までは財政当局と日銀の利害は一致する。しかしその後は、財政の持続可能性維持のために低金利を望む財政の論理と、物価安定のための金利引き上げを必要とするインフレ目標は正面衝突する」と指摘している。

 これについてはいろいろと見方も分かれるのではなかろうか。ファンダメンタルに即した金利の上昇であれば、国債の保有者にとっても大きな問題とはならず、発行体である政府にとっても税収増も予想されることで、それほど大きな衝突にはならない可能性もある。ただし、個人的に懸念しているのはこれほど国債残高が膨れあがった状況での金利上昇を経験したことのないであろう市場参加者の心理状態である。デフレが続く間は安心して国債は買えるが、もし本当にデフレからの脱却ができるとして、2%を超える長期金利はまさに未体験ゾーンとなりうる。

 今回の経済教室は、そもそも日銀の金融政策でデフレ脱却が可能という前提で話が進められているように思われるのが、少し残念であった。大胆な金融緩和がデフレ脱却を可能にさせるのか、できればそのあたりを聞きたかった。立場が逆転し、あらたな視線での新岩田・翁論争を見てみたい気もする。

 ちなみに、拙著「アベノミクスを理解するための日銀入門 [Kindle版]」では、リフレ派の熊さんとアンチリフレ派の牛さんの論争というか会話を通じて、アベノミクスに関わる日銀への関心を高めて頂きたいというのが狙いであった。書いた際には意識はしていなかったが、岩田・翁論争のような格好になれば、という気持ちもどこかにあったのかもしれない。もちろんそれほど高度な論争になってはいないが、この本が現在の日銀のことを理解する手助けになればと思う。

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by nihonkokusai | 2013-03-27 09:19 | 日銀 | Comments(0)

2012年12月末の日本国債(短期債除く)の保有者

 3月25日に日銀は2012年10~12月期の資金循環統計を発表した。これによると2012年12月末時点の家計の金融資産は1546兆7085億円(2012年9月末速報値1509兆6129億円)に増加した。アベノミクスへの期待による円安株高効果がこちらにも現れた結果に。

 家計の金融資産・負債差額は1193兆3514億円(同1155兆1602億円)であり、一般政府の債務残高は1112兆3448億円(同1132兆7203億円)となっていた。

 家計の現金・預金は853兆9401億円と過去最高を記録した6月末の844兆1202億円を抜いて過去最高額を更新。こちらも国債投資の原資となる民間の非金融法人企業の現金・預金は219兆1122億円と前回より減少したが高水準を維持している。

 この資金循環統計を基に、2012年12月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、これは国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に集計し直したものである。一般的に国債の保有者の割合としては、こちらの数値が使われることが多い。

 12月末の国債(国債・財融債のみ)の残高は、784兆9632億円(同780兆1016億円)と前回の9月末から4兆8616億円増加した(速報ベース)。国庫短期証券を加えると約960兆円となる。参考までに日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく時価ベースとなっている。

銀行など民間預金取扱機関 300兆2249億円(9月末270兆6741億円)、38.2%(同34.7%)
民間の保険・年金 211兆7344億円(同209兆4620億円)、27.0%(同26.9%)
日本銀行 90兆9024億円(同83兆7171億円)、11.6%(同10.7%)
公的年金 67兆9244億円(同66兆5868億円)、8.7%(同8.5%)
海外 34兆8580億円(同56兆695億円)、4.4%(同7.2%)
投信など金融仲介機関 37兆4568億円(同38兆7578億円)、4.8%(同5.0%)
家計 24兆4656億円(同25兆4965億円)、3.1%(同3.3%)
財政融資資金 8691億円(同8450億円)、0.1%(同0.1%)
その他 16兆5276億円(同28兆4928億円)、2.1%(同3.7%)

 前回の2012年9月末に比べて、残高が大きく増加していたのが銀行など民間預金取扱機関で29兆5508億円増、次に日銀の7兆1853億円増、続いて民間の保険・年金銀行の2兆2724億円増となっていた(速報ベースでの比較)。

 これに対して減少していたのが、海外投資家で21兆2115億円の減、その他が11兆9652億円の減となっていた。その他の減少には、対家計民間非営利団体による9月末比11兆8292億円の減少が大きく影響していた。

 この時期はまさにアベノミクス効果も発揮されて、次元の違う金融緩和などへの期待から、円安修正が進み、株も上昇した。この間に海外投資家は大きく残高を減少させたが、それ以上に国内銀行が残高を積み上げた。国庫短期証券を含んだ数字でみても、今回海外は全体の8.7%のシェアとなり、過去最高を記録した前回の9.1%からシェアダウンした。

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by nihonkokusai | 2013-03-26 09:10 | 国債 | Comments(0)

個人向け国債が毎月発行に?

 3月19日付けの日経新聞によると、財務省は個人向け国債について2013年度中に現在発行されている3種類すべてを毎月発行する態勢に移行するそうである。個人向け国債の1回当たりの発行額を少なくする代わりに発行の頻度を高め、個人の投資需要にきめ細かく対応するとのこと。

 現在、個人向け国債は個人向け復興国債として発行されている。名称は異なっていても以前の個人向け国債と商品性にはなんら変わりはない。個人向け国債は半年毎に長期金利の状況に応じて金利を見直す10年変動タイプの国債と5年固定金利タイプの国債が1月、4月、7月、10月の年4回発行四半期毎に発行されている。また、3年固定タイプの国債が毎月発行されている。これを統一して、10年変動、5年固定、3年固定すべて毎月発行とするようである。ただし、いつからスタートするのかは、販売する金融機関のシステム変更の必要がある可能性もあるとみられ、近く個人向け国債を取り扱う金融機関に意見聴取を始めるそうである。

 毎月発行にする狙いについては、これまでは国債の償還が集中する月と、新規に販売する月にズレがあった。このため満期を迎えた国債の償還金が新規の国債に再び投資されず、保険や投資信託、預金に移ってしまうことが多かったこともある。このように毎月販売には国債の再投資をしやすくする狙いがあるとか。

 ただし、個人向け国債の資金がほかの金融商品(その多くは預貯金の可能性も)に流れていったのは、長期金利の低下による影響が大きい。このため、毎月販売としても長期金利が低位安定している限りは、なかなか販売を増額することは難しいかもしれない。

 3月20日から日銀は新体制に移行し、今度は次元の違う金融政策により、さらに長期金利の低い状態が続く可能性もある。ただし、その可能性の是非はさておき、日銀が目標に掲げる2%の物価上昇の可能性を本気で信じるのであれば、今後は10年変動タイプへの需要が伸びてくる可能性もある。

 個人向け国債は利子が低いのは確かであるが、価格変動リスクはなく、当初の1年は特別な理由がないと売却できないが、その後は財務省が買い取るので流動性リスクもない(当初1年除く)。信用リスクについては、国債は円と同様の信用力を持ち、国内の金融商品で最も安全性が高いものである。特に購入金額の限度額は設けられておらず、1000万円以上の購入も当然可能である。本来であれば、元本を毀損したく資金の投資先としてはベストな金融商品である。このあたり、もう少し認識されても良いように思う。

 2013年度国債発行予定額によると、個人向け国債の2012年度の販売予定額は2兆円、2013年度の販売額予定額は1.6兆円を見込んでいる。長期金利の超低位が続く限り、なかなか販売は伸びづらいと思うが、毎月発行にすることで、10年変動、5年固定が購入しやすくなることは確かである。

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by nihonkokusai | 2013-03-25 09:31 | 国債 | Comments(0)

黒田日銀のレジーム・チェンジ?

 3月20日に日銀は新体制がスタートした。安倍首相の辞令交付は20日が祝日であったため21日となったが、黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁、中曽宏副総裁の任命日は20日となる。ただし、黒田総裁は白川前総裁が任期を待たずに退任したことから、3月20日から4月8日までがとりあえずの任期となり、4月9日以降の5年間分はあらたに国会同意が必要となる。ちなみに日銀の総裁副総裁及び審議委員の任期は五年で、再任できるが(日銀法第二十四条)、日銀法改正後の速水氏、福井氏、白川氏、ともに再任はなく、黒田総裁が再任されると初めてのケースとなる。

 日銀の金融政策決定会合の議長、つまり政策委員会の議長については黒田総裁となるが、事故がある場合に議長の職務を代理する者および代理する場合の順位については、第一順位が岩田規久男副総裁、第二順位が中曽宏委員、第三順位が審議委員で先任の宮尾龍蔵委員となっている。これに対して、執行機関としての日銀総裁の職務を代理・代行する場合の順位については、第一順位が日銀出身の中曽宏副総裁、第二順位が岩田規久男副総裁、第三順位が企画担当理事(雨宮理事)となる。このあたりの順位もなかなか興味深い。金融政策の決定については、安倍首相の押すリフレ派筆頭の岩田氏が上位となるが、日本の金融のインフラを支えている日銀の業務については、さすがに岩田氏ではなくその業務にも精通している中曽氏が上位となっている。

 21日に黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁、中曽宏副総裁による就任会見も開かれた。黒田総裁は2%の物価上昇率目標達成へ「量的、質的両面から大胆な金融緩和を進める」と表明した。目標達成については2年で達成できれば好ましいとした。

 この目標達成について岩田副総裁は、達成できなければ、まず説明責任を果たす。ダメなら辞任するとの発言を今回も繰り返した。これに対して麻生財務相は21日、日銀の岩田氏による2%の物価目標を「2年で達成できる」と答弁したことに関連し、「学者とはこんなものか。実体経済が分かっていない人はこういう発言をするんだと正直思った」と述べ、否定的な考えを示した。安倍首相の考え方に最も近い一人が岩田規久男氏であり、間接的ながらリフレ派である首相とアンチリフレ派とも見える財務相の見方の違いが明らかになった。

 臨時会合があるかないかを私から特に申し上げるべきではないと黒田総裁は語ったそうだが、リーマン・ショックや震災などの何かしらの特殊な要因があったわけではなく、サプライズ効果を意識した臨時会合であれば、事前に宣告などしたら無意味である。それ以前に少なくとも黒田総裁、岩田副総裁は日銀についてはこれからいろいろと把握せねばならず、福井元総裁のようにその事前学習の必要ない総裁であればともかく、今回については臨時会合を開く余裕があるとは思えないのだが。

 臨時の決定会合の有無はとにかく、4月3日、4日の会合で大胆な金融政策なるものを打ち出す必要があり、市場もそれを期待している。ただし、その内容はすでに事前に予想された範囲内に収まるのではなかろうか。基金で買い入れる国債の量と年限の延長、それにより超長期債まで買い入れている通常の国債買入(輪番)との統合、これに伴い日銀券ルールの撤廃とそれに変わる何かしらの指針の設置(言葉だけかもしれないが)、リスク資産の買い入れ増額(市場規模を考えると限界あり)、などが予想される。

 付利の撤廃については、付利撤廃と当座預金残高を同時に行なうことが可能と主張されたあまり実務をご存知なさそうな方がいたが、それはかなり矛盾をはらむ。少なくとも国内に金融不安は存在せず、超過準備におく必要性を持たせためには付利撤廃は難しいはずである。

 白川体制と大きくレジーム・チェンジという面では、22日の日経新聞にもあったように、今後日銀は白川体制時の包括緩和政策にみられた「資産」に働きかける政策から、反対側の「負債」に働きかける政策に転じる(つまり量的緩和の復活)。一見、大きな政策変更に見えるが、速水元総裁の政策に戻すだけであり、すでに日銀の当座預金残高は50兆円超えて、過去最高水準に達している。白川体制時もここをもっとアピールしておけば良かった気もするが、アピールしても市場は聞く耳を持たなかったようにも思う。とにかくも日銀の新体制によるレジーム・チェンジはこんなものになるのではないかと思う。

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by nihonkokusai | 2013-03-23 15:37 | 日銀 | Comments(2)

激動の5年間、白川日銀総裁退任会見より

 日本銀行の白川方明総裁は2013年3月19日に4月8日の任期を待たず退任した。これは正副総裁が同時に3月20日から就任できるようにするためのものであった。3月19日に白川総裁退任記者会見が開かれその要旨が日銀のサイトにアップされた。今回はこの要旨を元に白川前総裁の本音の部分を引き出してみたいと思う。

 白川前総裁は、「この5年間を一言で言うと、激動の5年間でした」とまず語っている。私の牛熊ブログに18日にアップしたタイトルも偶然(?)ながら「白川日銀の激動の5年間を振り返る」であった。まさに激動の5年間であったことは、このコラムでも解説させていただいた。

 「わが国を含め欧米諸国が現在展開している非伝統的な政策の評価も、いわゆる「出口」から円滑に脱出できて初めて、全プロセスを通じた金融政策の評価が可能となる、そうした性格のものだと思っています。」

 白川日銀の5年間の評価については、アベノミクスの登場もあり大きく分かれている。その結果は、まさに出口から出られ、普通の金融政策に戻れたときに、初めて評価が可能となる。

 「物価が2%上がり、給料も同率上がるだけでは、国民の生活水準が向上するわけではありません。物価が上がり、円の為替レートが同率円安化しても、対外価格競争力が高まるわけではありません。物価上昇のもとでは、歳入も増えますが歳出も増えるので、財政バランスの改善効果も限定的です。私どもが実現したいのは、実質経済成長率が高まり、その結果として、物価上昇率も高まっていくという姿です。」

 これは最後の最後にあらためてリフレ派に贈る強烈なパンチのひとつか。そもそもどのようにして物価を金融政策で上げるのか、という問題もあるが、物価だけが上がっても意味はない。成長率が高まり雇用も改善しその結果として物価が上がる必要がある。

 「どのような経済活動も、全てお金を必要とするという意味では、全ての経済現象は「貨幣的現象」と言えます。しかし、だからと言って、全ての経済現象を貨幣だけで説明できるわけではありません。仮に、この命題を、「中央銀行の供給する通貨、いわゆるマネタリーベースを増加させれば物価が上がる」という意味に解釈すると、過去の日本の数字、あるいは近年の欧米の数字が示すように、マネタリーベースと物価との関係、リンクというのは断ち切れています。」

 全ての経済現象は確かに貨幣的現象であるが、だからマネタリーベースを増加させれば物価が上がるなどという説を「断ち切れています」と完全否定している。ここは重要なポイントである。岩田規久男副総裁などいわゆるリフレ派の意見と真っ向対立している部分である。もし間違った理論で金融政策を突っ走ってしまうと、出口から出られず混乱をきたす懸念がある。

 「デフレを克服する上で、中央銀行の強力な金融政策は必要ないのかというと、これはもちろん必要であり、金融政策の役割はあるのかというと、その答えはもちろんYESだと思います。ただ、同時に、現在の日本の置かれた状況を考えると、競争力・成長力の強化に向けた幅広い主体による取組みが不可欠です。金融政策は強力な手段ですが、その効果の本質は、非常に低い金利水準を実現する、あるいは流動性を潤沢に供給することによって、家計や企業が、明日ではなく今日支出するように動機付けていくことです。」

 日銀が強力な緩和を行えば自動的に物価が上がるわけではない。ただし、物価が上昇できる下地作りに緩和策は欠かせない。このあたり新執行部も現場と向き合えば、次第に理解してくると思われる。たぶん、ではあるが。

 「結局のところ、悪化した財政バランスを回復する方法は、財政再建に取り組むか、デフォルトか、あるいはインフレで債務を帳消しにするか、この 3 つしかないわけです。仮に、財政再建への取組みがなされないとすると、残り 2 つとなり、どちらにしても、通貨の信認、つまり物価の安定と金融システムの安定を維持できません。そういう意味で、通貨の信認を維持していく上で、財政の持続可能性が非常に大事であるということについて、もっと強調して書くべきであったのではないかと感じています。」

 新体制があまり無茶なことをした際、出口に向けて問題を来すとすれば、この部分に係わってくると思われる。日銀がどういう手段であれ、国債をさらに大量に購入するとなれば、財政ファイナンスと意識される懸念がある。ここには政府による財政再建への取り組みも同時に行われなければ、通貨への信認、さらに財政の持続可能性が問題視される懸念が存在しよう。

 「「期待に働き掛ける」という言葉が、「中央銀行が言葉によって、市場を思い通りに動かす」という意味であるとすれば、そうした市場観、政策観には、私は危うさを感じます。」

 アベノミクスにより期待ばかりが先行し、またその円安株高という表面上の結果から、コミュニケーション・ポリシーの重要性も指摘されているが、新生日銀はいずれこのギャップに悩まされることも予想される。それは日銀ばかりでなく政府も同様かもしれない。ただ個人的には、それでも白川氏にはもう少しマーケットに向けて期待を働きかけることをしても良かったのではないかと思っている。特に2012年の物価安定の目途(コアCPIの1%)を示したバレンタイン緩和の効果を持続させると、市場のマインドは早めに変化していた可能性があったのではなかろうかと思っている。

 「「市場のインフラをしっかりと作っていくということです。私は、そうした努力こそが「市場を大事にする」ことの最も本質的な意味だと思っています。」

 日銀に課せられた仕事というか目的は、物価の安定以前に信用秩序の維持にある。このことも新執行部には肝に銘じていただきたい。日銀法改正の動きもいまだ見えるが、それには金融のインフラを日銀が管理していることも十分認識していただきたいと思う。

 白川総裁、本当に激動の5年間、お疲れ様でした。

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by nihonkokusai | 2013-03-22 09:55 | 日銀 | Comments(0)

議事録に見る2001年3月19日に決定した量的緩和政策

 12年前の2001年3月19日、日銀は量的緩和政策を決定した。今回はそのときの日銀の議事録を元にして、あらたに量的緩和政策の導入を検討と伝えられている新体制となる日銀が何をしようとしているのかを探ってみたい。

2001年3月19日 日銀金融政策決定会合議事録
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2001/gjrk010319a.pdf

 日銀の議事録の最初には出席者が掲載されている。議事録の公表が10年後としたのは、政策委員の任期(5年、再任可能)ということで、10年後には政策委員は現役としては残っていないことを前提に10年後と決められたとされる。このため政策委員には現役のメンバーはいない。そのかわり説明等を行う日銀の執行部のメンバーをみると、企画室審議役に白川方明氏、企画室企画第一課長に雨宮正佳氏の名前がある。2001年に量的緩和政策を決めた際には、この両氏が大きく関わっていたことが伺える。

 白川方明氏はもちろん今日3月19日で任期満了となった日銀総裁である。白川氏が何故、2010年10月にゼロ金利政策の再導入の際に、量的緩和を復活させずに資産買入基金の創設という別な手段を選択したのか。これについては2001年に量的緩和政策を導入した際の反省を生かしてとの意味合いがあったともされる。

 これに対して雨宮氏は2001~06年に採用した量的緩和政策を事務方で立案した中心的な人物とされる(19日の日経新聞)。日銀が18日に発表した人事で、金融政策の企画・立案を担う担当理事に企画畑の中枢を歩んできた雨宮正佳氏が復帰した。19日に辞職する白川方明総裁にとって、いわば最後の人事がこの人事であり、量的緩和政策の導入を避けていた白川氏が、何故、雨宮氏を戻したのか。もちろん20日にスタートする新体制が量的緩和政策を再開させようとしており、そのためのバックアップとして最も適任ともいえる人材を送り込んだとの見方もできる。果たしてそれだけなのか、今回の人事は今後の日銀の動向を見る上でも大きなポイントとなりそうである。

 前置きが長くなってしまったが、12年前の日銀の金融政策決定会合で、特に量的緩和政策導入に関してどのような意見が出ていたのかをピックアップしてみたい。

 「従来の金利をターゲットとした枠組みを超えて、マネタリーベースや日本銀行当座預金の供給額をターゲットに資金供給を増やすことだと思う。このような政策については、これまではコントローラビリティや実態経済への影響に確認が持てないことなどを理由に採用を見合わせてきたが、現下の情勢では著しい弊害がないという限度においた試してみる価値も出てきていると考えられる」(藤原副総裁)

 「ゼロ金利で約束した方が、量で約束するよりもコミットメントの強さは強いと思う。なぜかと言えば、量で約束しても将来のゼロ金利になる保証はない訳である。これに対してゼロ金利で約束すれば将来の各時点で最大限の金融緩和を約束したことになるからである。勿論それに対する注釈として量が直接経済に影響するのであれば別ということがある」(植田審議委員)

 「デフレ・スパイラルを阻止するために、緩和政策を行い、それを物価上昇率が安定的に0%以上になるまでつづけるとのコミットを補強するために国債買い切りオペ増額をセットで打ち出したいと思っている訳である」(篠塚審議委員)

 「マネタリーベースを伸ばした時には、金利へのインパクトよりはおそらくポートフォリオ・リバラランシング、あるいは資産価格、株や為替を通じて機械受注、設備投資に効いてくるような結果が出ている訳である。・・・マネタリーベースを伸ばすことが一種の重要な意味を持っていることが分かったと思う」(中原委員)

 「中央銀行が流動性を潤沢に供給していることを量の面で市場に明示することが重要だと思う。」(三木委員)

 「量的緩和の場合には、物価は貨幣的現象であるというようなことを前提に、量の将来に亘るコミットをすることによって期待インフレ率を上昇させるという考え方が一番基本にあると思う。・・・期待インフレ率を上昇させることは、量を増やす時に片方で節度を求めると期待インフレ率は上がらないかもしれない。そこは非常にリスキーな問題になることは十分踏まえておかなければいけないと思う。」(竹富委員)

 「リザーブ・ターゲッティング、すなわち、実質ゼロ金利になった後に銀行システムにリザーブを追加的に供給し続けていくことにどれ位実質的な意味があるのかについて、私は余り積極的な意味を認め難いと思うし、リザーブ・ターゲッティングに転換することによって、追加的な緩和の余地が大いに生まれてくるような、ある種のいるイリュージョンを与えることにもなりかねないと思う。ただ先程ここは「期待」に影響を与えることが大事な場面だと言ったが、その観点から考えると全く否定し去ることができない要素も入っているように思う」(山口副総裁)。

 新体制となった日銀が、量的緩和政策を再導入するとなれば、12年前にあった議論と同じような議論が繰り返されることが考えられる。何も進歩がないではないかといえば、それまでであるが、ここに金融政策の大きな限界も控えている。「量を増やす時に片方で節度を求めると期待インフレ率は上がらないかもしれない」という竹富委員の発言にも注意を払いたい。「マネタリーベースを伸ばすことが一種の重要な意味を持っている」との中原委員の発言が正しいのか、あらためて試される。

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by nihonkokusai | 2013-03-21 09:15 | 日銀 | Comments(2)
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