「ほっ」と。キャンペーン

牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

<   2013年 02月 ( 23 )   > この月の画像一覧

魅力的な金融商品となりうる個人向け国債

 2月26日にある新聞社の方の取材を受けたが、そこで取り上げられたのは個人向け国債のことであった。個人向け国債の販売額は2012年1月の発行額が7454億円と少し回復したものの、その後は低迷しており、今年1月の発行額は3539億円となっていた。個人向け国債の販売低迷の理由は、その利率の低さにある。過去の個人向け国債の販売額と利率の推移を見れば明らかであり、個人はその商品性そのものよりも利率に目を向けていることがわかる。

 国債への懸念が影響しているのではないか、との指摘もある。巨額な政府債務への漠然とした不安感はあろうが、たとえば銀行預金と比べて国債の安全性が低いと考えている方がそんなに多いとは考えにくい。もちろん国債は有価証券であり、元本が必ず返ってくる預貯金よりもリスクが高そうとの認識も残っているかもしれない。ところが個人向け国債の商品性をあらためてみると、国内の金融商品の中にあって、ある意味最強の商品であると言える。この場合はあくまでリターン(利益)を求めてというよりも、その安全性とともに、いろいろな状況変化にも対応できる商品としての意味においてである。その商品性が今後、遺憾なく発揮される可能性が出てきた。

 日銀は2%の物価目標を導入し、新総裁候補とされている黒田東彦氏はその目標達成には2年以内が適切との見方を示した。本当に2%の物価上昇が可能かどうかは不透明ながら、これを含めたアベノミクスへの期待も大きい。今後物価が上昇してくるとなれば、長期金利もいずれ上昇してくることが予想される。もしも個人向けの物価連動国債が発行されれば、その物価上昇分はリターンとしてそのまま反映されるが、現在それは発行されていない。しかし、10年変動タイプの個人向け国債でも物価が上昇し、それに応じて長期金利が上昇すれば、その分利率が上昇する仕組みとなっている。

 10年変動タイプの個人向け国債を購入せずとも、預貯金でも利子が上がったタイミングで定期預金などを乗り換えるという手段もある。ただしそれは乗換のタイミングも難しく、手続きも面倒である。その点、10年変動タイプの個人向け国債であれば、長期金利の動向が半年毎に支払われる利子に反映される仕組みとなっている。

 長期金利が上昇すれば、本来であれば国債の価格は下落する。ところが個人向け国債は発行日から1年経過すれば、財務省が元本で買い取ってくれる。つまり有価証券でありながら価格変動リスクがゼロ、さらに当初1年間は特別な場合を除いて換金できないが、それ以降はいつでも財務省が買い取ってくれる。流動性リスクも当初1年を除けばゼロということになる。信用リスクについても国債は国内金融商品にあっては最も安全性が高い商品とされている。

 価格変動リスクや流動性リスクが抑えられているということは、百年に一度というような世界的な金融ショックが今後また新たに生じたとしても、個人向け国債であれば安心といえる。

 もちろん余裕資金であれば、アベノミクスに乗って株式や投資信託等での運用を考えても良いであろう。それに対し将来の備えとして、少なくとも元本を維持したい、リスクはなるべく抑えたい、できれば金利が上昇しても、その上昇分もある程度利子に反映されてほしいというのであれば、10年変動金利タイプの個人向け国債はかなり魅力的な金融商品となる。

 次回の個人向け国債の10年変動金利タイプと5年固定金利タイプの募集は3月7日から29日まで。3年固定金利タイプは毎月募集している。

 日銀の独立性がなぜ重要なのかを解き明かすため、書き下ろしたのが「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」です。ぜひご一読いただけるとうれしいです。キンドルの端末でダウンロードいただくか、スマートフォンやタブロイドでもキンドルのアプリでダウンロードできます。定価は250円です(こちらでの無料キャンペーンはいまのところ予定しておりません)。

「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-02-28 12:00 | 国債 | Comments(0)

昨年からの円安の流れの根底にあるもの

 日銀の正副総裁人事は政府による正式な提示、さらには国会の同意が必要となるが、日銀の白川方明総裁の後任にはADB総裁の黒田東彦氏、副総裁には学習院大学の岩田規久男教授と日銀から中曽宏理事を昇格させる方向で決まりそうである。

 いわゆるリフレ派というかアンチ日銀派とも呼ばれる黒田氏と岩田氏の起用により、アベノミクスへの期待があらためて強まり、25日にドル円は94円台をつけるなど円安が進み、日経平均も11600円台に乗せるなど東京株式市場も大きく上昇した。

 ところがイタリアの選挙の情勢が伝わると状況が一変し、ドル円は一時90円台、ユーロ円は118円台をつけるなど急激な円高が進行した。その後ドル円は92円台、ユーロ円は121円近くまでそれぞれ戻してはいるが、ここでいったん円安の流れは一服する可能性がある。

 昨年からの円安の流れの根底にあるのは、欧州のリスク後退によるものである。これは外為市場でのユーロそのもの動きや、スペインやイタリアの長期金利の動向などを確認すれば明白である。円高基調が変化していたところに、日本では安倍政権の登場で、次元の違う金融政策に対する期待が出たことで円安が加速した。そこにはヘッジファンドなどの動きも加わっていたが、これは流れに乗って仕掛けてきたと言える。いわばギリシャ・ショックの際にギリシャ国債をとことん売り込んだように、流れに乗れとばかりに今度は円売りの動きを強めたのである。

 この円安というか円高調整の動きは当然ながら国内では歓迎され、それにより株も買われた。政府関係者などからも為替に関する発言も相次いだ。ところが円高調整ならばしかたないとしても、円安に誘導するかのような動きに対しては、欧米などから懸念の声もあがり、それがG7とG20の声明という結果に繋がった。為替に関する責任者といえる麻生財務相はG7あたりから為替に関するコメントは一切控えるようになってきたことからも、そのプレッシャーの大きさが伺える。

 円の動きだけを見ると、アベノミクスへの期待という材料を元に仕掛け的な動きも入った事で、相場の変調が見極めづらかった。これに対し、たとえばユーロドルの動きをみると、あきらかに2月初めあたりからトレンドが変化していた。つまりユーロの買い戻しがいったん止まっていたのである。

 昨年、11月あたりからの外為市場の「ユーロ」や「米株」などの動きをみると、リスクオンの動きが続いていたことがわかる。これらは当然ながらアベノミクスへの期待が背景にあるわけではない。このリスクオンの動きにいったんブレーキが掛かり、今回のイタリア選挙が材料視され、再びリスクオフの動きが出たものと思われる。ユーロの信用不安は一時期よりは後退したことは市場のマインドを見ても明らかではあるが、完全に払拭されたわけではない。

 アベノミクスという言葉が一人歩きしているようだが、現実には安倍政権も日銀も何ら具体的な政策を実行しているわけではない。今年度の補正予算が成立したのは昨日26日であった。日銀が2%の物価目標を決めても本当に物価が上がる確証も、それに至る道筋も明らかにされているわけではない。つまりは期待感のみが先行している。これについては欧州の信用不安の沈静化にあたって、具体的に行動を起こさずとも政策を打ち出したことで市場に安心感を与えたドラギECB総裁の政策に似たものと言えるかもしれない。ただし、それぞれ絶好のタイミングであったためとも言えるのではなかろうか。

 欧州にしても本当に信用回復となるためには、もう少し具体的な行動も必要となる。イタリアの選挙の結果次第では財政再建の後退が意識され、再び不安感の方が強まる可能性がある。日本ではリスク後退による円安の流れをうまく捕まえたものの、欧州のリスク後退の流れが止まれば、円安の流れもそこでブレーキが掛かり、アベノミクスという魔法の言葉による効果も限定的になる。今後の為替の動きを見る上では、再び欧州の動向が焦点となる可能性もある。

 この流れのなかでの円債の動きについてだが、円安株高の最中でも円債は日銀の追加緩和期待による買いなどから強含みで推移している。5年債利回りはここにきて連日のように過去最低利回りを更新し、長期金利も0.7%を割り込んできた。今のところは、円債が大きく崩れる要因は見当たらない。債券先物も過去最高値を再度伺う位置にきている。ただし、このように売る材料が見当たらないという好環境そのものに、ある種のリスクも感じる。念のための警戒も必要かと思われる。

 日銀の独立性がなぜ重要なのかを解き明かすため、書き下ろしたのが「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」です。ぜひご一読いただけるとうれしいです。キンドルの端末でダウンロードいただくか、スマートフォンやタブロイドでもキンドルのアプリでダウンロードできます。定価は250円です(こちらでの無料キャンペーンはいまのところ予定しておりません)。

「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-02-27 09:15 | 為替 | Comments(0)

日銀正副総裁人事案が固まる

 日経新聞などの報道によると、政府は3月19日に退任する日銀の白川方明総裁の後任にアジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁を起用する人事案を固めたそうである。副総裁には学習院大学の岩田規久男教授を充て、もう1人の副総裁には日銀から中曽宏理事を昇格させる案を軸に検討と伝えられた。

 25日にも政府案が出されるとされていたこともあり、どうやら政府案はこの報じられた布陣となりそうである。国会の同意についても、民主党の賛成が得られる可能性が高いとみられる。たしかに3人ともこれまで予想されていた名前であるものの、意外感もあった。

 ひとつには黒田氏の起用にあたっては、ADB総裁が任期途中であるため後任問題が残ることもあり、個人的にはそれほど可能性は高くはないのではとみていた。特に中国あたりが虎視眈々とその席を狙っているとも伝えられていた。それであれば財務省出身の武藤氏の可能性もと思ったが、岩田一政氏を含め両元副総裁については、過去に量的緩和解除に賛成したことなどがネックとなったのであろうか。

 黒田氏については、これまでインフレ目標の導入と積極的な金融緩和を求める主張をしており、たしかに安倍首相の意見に近い。さらに首相の掲げていた日銀総裁の条件、国際金融界での幅広い人脈、海外への情報発信力等にも合致する。

 黒田氏以上に意外感のあったのは、副総裁に起用される岩田規久男氏であった。まさにリフレ派筆頭とも言える人物であり、1990年代前半に翁邦雄氏との間で、マネタリーベースなどについて論争を繰り広げた翁・岩田論争でも有名な人物である。いよいよその持論を日銀の副総裁となって展開することになるのであろうか。

 もうひとりの副総裁は日銀の中曽宏理事を昇格させる案となっている。これである程度は現場の意見も反映されるであろうが、小規模な岩田・翁論争みたいな事態が発生する可能性がある。

 積極的なインフレ・ターゲット論者が現場に入った事例は海外にもある。たとえば金融政策を決定する立場となると自らの主張を変化させてきた事例として、現在のFRB議長の存在があげられる。これに対して、今回の日銀の正副総裁の人事は日銀の金融政策にどのような影響を与えるであろうか、恐い物見たさを含めて興味がある。

 すでに日銀は安倍政権の意向もあり、2%の物価目標を導入している。ただし、これは日銀としてはフレキシブルなインフレ・ターゲットとの認識であり、岩田規久男氏の言うところのインフレ・ターゲットとは次元が異なっている可能性がある。ただし、より積極的な金融政策を行うにしても手段は限られる。

 このあたりについては黒田氏の過去の発言なども参考になるかもしれない。黒田氏はかなり前ではあるが、あるセミナーでこのような発言をしていた。「金融政策にはいろいろなチャンネルがある。ポートフォリオリバランスで資産の中身を替えるときに、外貨資産の購入に絞る必要はない。株や実物資産、外貨資産、さらには極端なことを言えば、直接的にモノを買うことで消費や設備投資を代替してもよい」と。

 少なくとも黒田氏は円安のための外債購入については反対であった。このため日銀による外債購入の可能性はほぼ消えたとみて良い。特に黒田氏や中曽氏は国際経験が豊かであり、今回のG7やG20、さらには米国の意向なども意識してくるとみられ、こちらの配慮について抜かりはなさそうである。

 それに対して超過準備の付利引き下げなどについては、白川総裁ほどは配慮してこないかもしれない。資産の買入についても、リスク資産を含めて拡大し、より期間の長い国債の買入も行ってくる可能性がある。いわゆる日銀券ルールについても撤廃されるかもしれない。そうなれば今後は、財政ファイナンスとの認識も強まってくる可能性もありうる。日銀法改正の可能性も出てこよう。今回の日銀の正副総裁人事により、アベノミクスによるリスクがあらためて認識されてくることも予想される。

 日銀の独立性がなぜ重要なのかを解き明かすため、書き下ろしたのが「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」です。ぜひご一読いただけるとうれしいです。キンドルの端末でダウンロードいただくか、スマートフォンやタブロイドでもキンドルのアプリでダウンロードできます。定価は250円です(こちらでの無料キャンペーンはいまのところ予定しておりません)。

「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-02-26 09:52 | 日銀 | Comments(3)

物価上昇率が高まるメカニズム

 政府による日銀の正副総裁の人事では、これまでインフレ目標を主張していた黒田東彦氏が総裁に、そしてリフレ派の筆頭ともいえる岩田規久男氏が副総裁とする案が固まったそうである。これからいよいよ本格域なリフレ派によめ物価上昇のための金融政策が試されることになりそうだが。ここではいわばアンチリフレ派ともいえる立場からの物価上昇に対するメカニズムについて、2月20日の日銀の森本審議委員の講演を元に考えて見たい。

 「景気が改善するもとで経済全体の需要が供給能力との対比で増加し、マクロ的な需給バランスが改善すれば、数四半期程度のタイムラグを伴いながら、消費者物価の上昇につながっていきます。」

 森本委員は前提が物価の上昇ではなく、景気回復の結果として物価の上昇が起きるとしている。

 「世界に先駆けての急速な少子高齢化やグローバル化など日本経済を取り巻く環境は大きく変化しましたが、これに対する経済構造の適応が遅れた結果、経済成長率が趨勢的に縮小し、人々が成長期待を持てなくなってきていることが、慢性的な需要不足の一因となっています。」

 この経済構造の適応の遅れとかは、果たして日銀の金融緩和が足りなかったからなのであろうか。

 「慢性的な需要不足が生じるもとで、多くの企業では、賃金の抑制等のコスト削減の取り組みが行われました。しかし、自社の製商品に強気の価格設定を行うことができない熾烈な価格競争の中で、こうしたコストの削減が採算の改善につながりにくい状況が続きました」

 コストの削減には賃金の抑制も含まれるが、これにより終身雇用・年功序列という日本の雇用体系が維持できなくなり、賃金の上昇にも期待が持てなくなったことも、デフレと呼ばれる状況が大きな要因であったはずである。

 「こうした状況を打破するためには、成長力を強化し、企業や家計の中長期的な成長期待を高め、慢性的な需要不足を解消することが必要となります。」

「成長力を強化していくうえでは、その前提となる就業者数の確保と就業者一人一人が生み出す付加価値(付加価値生産性)の向上が必要です」

 日銀の金融緩和だけでこのような政策が可能だとは到底思えない。大胆な金融政策で気合いを入れるのは良いが、その副作用も考える必要があるとともに、金融緩和だけでは、慢性的な需要不足を解消することは難しいことも確かである。生産性の向上も金融緩和だけで行えるのであろうか。

 「資産買入等により、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促し、企業や家計が十分な低利で調達できる金融環境を実現することを狙いとしています。」

 すでに短期金利はゼロ近辺、長期金利も0.7%台と歴史的な低金利にある。企業も家計も十分に低利で資金は調達できている。ここから基金で日銀が国債を大量に買っても、長期金利の引き下げ余地は0.7%しかない。それでどれだけの効果があるというのであろうか。このあたりの説明はなく、森本委員は基金による国債残高が膨らんだ数値を示しただけであった。これは森本委員の説明不足とかではない。そもそも日銀の金融緩和では、低利で資金調達ができる環境を作るだけであり、限界があることを示していると思われる。このようなアンチリフレ派の意見に対して、リフレ派が今度は金融政策の現場で自らの主張を試すこととなる。

 日銀の独立性がなぜ重要なのかを解き明かすため、書き下ろしたのが「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」です。ぜひご一読いただけるとうれしいです。キンドルの端末でダウンロードいただくか、スマートフォンやタブロイドでもキンドルのアプリでダウンロードできます。定価は250円です(こちらでの無料キャンペーンはいまのところ予定しておりません)。

「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-02-25 11:16 | 日銀 | Comments(0)

出口を意識しつつあるFRB

 20日に発表された1月29、30日開催のFOMC議事要旨によると、何人かの委員が、「経済見通しの変化や、資産購入の有効性とコストに対する評価の変化に応じ、資産購入のペースを変える準備をすべきだと強調した」とある。現在、FRBは毎月総額で850億ドルの米国債などを購入している。

 その前に資産買入についてのリスクも述べられていた。何人かの委員からは出口政策の困難さが指摘された。つまり買い入れた資産をスムーズに売却が可能であるかということになる。日本の場合を考えると、たとえ物価が上昇してきたからといって日銀が保有する国債を果たして売却できるかどうか。日本よりは容易かもしれないが、市場にも大きな影響を与えかねないはずである。

 数人の委員はインフレに対する警戒を指摘し、さらに何人かの委員は金融の安定を妨げるような市場行動への警戒を指摘していた。これに関しては、FRBのスタイン理事が2月7日の講演で、長期間の低金利政策は金融安定を脅かすリスクをもたらしかねないと警告していた。つまり資産バブルへの警戒である。資産価格が加熱状態にあることを示す決定的な根拠が出そろうまで待つのでは遅いとの指摘もあった。

 さらにFOMCの議事要旨によると、何人かの委員から、「有効性やコスト、リスク次第では、労働市場が相当程度改善したと判断する前に資産買入を減速もしくは停止せざるを得ないのではないか」との指摘もあった。

 米国の経済情勢が改善しつつあることは確かであり、その背景のひとつには欧州のリスク後退もある。リーマン・ショックに続く欧州の信用不安により、世界的な金融不安の高まりが経済にも影響し、日欧米の中央銀行は積極的な金融緩和策を講じてきた。米国では財政の崖問題等もあったが、これは現実にはさほど大きな懸念材料ではなかった。根本的なリスクは欧州にあった。今後も米国の債務問題等は残るが、それで非常時にあったための積極的金融政策を続けなければいけない理由とはならない。

 もちろんすぐに撤退することは考えづらくても、経済が上向きとなってきているとなれば、通常の金融政策に戻ることを考えることは自然なことと思われる。それに対して日本ではデフレからの脱却を旗印に、さらなる追加緩和の可能性が高まっており、その追加緩和に積極的な人物を日銀総裁に推そうとしている。金融政策にはタイムラグがあるとともに、リスクが高まっている際には効果が薄いが、そのリスクが後退すれば緩和効果が強まることも考えられる。その緩和効果がどのようなかたちで現れるのかも、今後は注意する必要がある。今回のFOMCの議事要旨からはそのリスクも意識して、今後FRBは動いてくるであろうと思われる。

 日銀の独立性がなぜ重要なのかを解き明かすため、書き下ろしたのが「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」です。ぜひご一読いただけるとうれしいです。キンドルの端末でダウンロードいただくか、スマートフォンやタブロイドでもキンドルのアプリでダウンロードできます。定価は250円です(こちらでの無料キャンペーンはいまのところ予定しておりません)。

「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-02-23 08:55 | 中央銀行 | Comments(0)

物価の安定とは何であるのか

 2月20日に日銀の森本審議委員の講演を元に、あらためて「物価の安定」とは何であるのかについて考えてみたい。

 日銀法第二条には、「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」とある。

 その前の第一条には「日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。」さらに二項として「日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。」とある。

 日銀法上、日銀の目的は信用秩序の維持であり、理念として物価の安定を掲げているが、この理念が1月の決定会合でターゲット、つまり正式に目的に格上げされたような格好となっている。

 それでは「物価の安定」とはいかなるものなのか。これ概念的に定義すると、「様々な経済主体が、物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」だそうである。これでは良くわからない。森本委員は物価の安定とは、「雇用の増加と賃金の上昇、企業収益の増加などを伴いながら経済がバランスよく持続的に改善し、その結果として物価の緩やかな上昇が実現する状態」だとしている。

 安倍首相はデフレ脱却という状況は貨幣的状況なので、それは日銀の金融政策において行うとしている。さらに日銀法改正についてもいまだに示唆しており、そこには日銀にFRBのように目的に雇用の安定も含ませようとの思惑もあるのではなかろうか。

 金融政策により雇用を改善させ、賃金も上昇させるとなれば、その前提となるのは、本来であれば企業業績の回復も伴わなければならず、森本委員は「その結果として」物価の緩やかな上昇を実現させるとしている。

 これは安倍首相の意向から考えれば真逆の発想とも思われる。デフレは貨幣的現象なのだとすれば、金融政策でもし物価が上がれば、それにより企業業績も回復し、雇用も賃金も改善する、という発想なのではなかろうか。

 「輸入物価が上昇するような場合には、物価上昇率が先行して高まることもあり得ますが、この場合、交易条件が悪化して家計や企業の実質所得は減するため、景気の改善を伴わない物価上昇となります。日本銀行が目指すのは、こうした姿での物価上昇ではありません。」(森本委員)

 政府はさすがにG7、G20後には海外からの批判を押さえ込むため、円安を意識させる発言を控えるようになったが、そもそもアベノミクスと呼ばれる動きは、円安も意識されていたことは確かであり、それによる株高が景気改善への期待を起こさせた。結果としては円安による輸入物価の上昇もある程度は避けられないはずである。

 「わが国の場合、長期間にわたり前年比ゼロ%近傍の低い物価上昇率が続いてきましたので、現在は、これを前提に形成された低い予想物価上昇率を基に意思決定がなされる姿が定着しています。こうした現状を前提とすれば2%の「物価安定の目標」は高すぎるとの印象を持たれるかもしれません。」(森本委員)

 印象を持たれるというより、その意見は日銀の審議委員内部からも出ていた(1月の金融政策決定会合議事要旨より)。

 「今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みが進展し、企業や家計の成長期待を高めることができれば、その先も持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率は高まっていくと考えられます」

 つまりは政府の提唱している三本の矢がデフレ脱却には必要であるということであろう。デフレの解消は日銀の金融政策だけでは無理であり、物価の上昇が起きうる状況を整備する必要がある。それには中央銀行による大胆な金融緩和だけでは、もしそれで物価に影響を与えたとしても、物価上昇だけが先行してしまう懸念もあるのではなかろうか。

 日銀の独立性がなぜ重要なのかを解き明かすため、書き下ろしたのが「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」です。ぜひご一読いただけるとうれしいです。キンドルの端末でダウンロードいただくか、スマートフォンやタブロイドでもキンドルのアプリでダウンロードできます。定価は250円です(こちらでの無料キャンペーンはいまのところ予定しておりません)。

「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-02-22 07:57 | 日銀 | Comments(0)

1月の債券市場における投資家の動き

 2月20日に日本証券業協会は1月の公社債投資家別売買高を発表した。短期国債を除くベースで、都銀は9746億円の買い越しとなり4か月ぶりの買い越しとなった。地銀も1971億円の買い越し、信託銀行が2兆4392億円、農林系金融機関も5686億円、信用金庫は4691億円のそれぞれ買い越しとなった。

 生損保も5059億円の買い越し、投資信託も3289億円の買い越し、海外投資家も3440億円の買い越しとなっていた。

 投資家は差し引きでは買い越しとなっていたが、年限別の売買にはそれぞれ偏りも見えていた。それを国債の投資家別売買高でみてみると、都銀は超長期債を3145億円、長期債を2632億円売り越していた半面、中期債を1兆4074億円買い越していた。1月31日の2年債入札でも大量に落札したのは大手銀行ではないかと観測されていた。

 信託銀行は超長期債を5983億円、長期債を1兆434億円、中期債を5930億円それぞれ買い越した。円安株高の進行もあり、パッシブ系の年金運用者などからのリバランスに伴う円債買いが入ったものと思われる。

 農林系金融機関は超長期を2053億円、長期債を2728億円それぞれ買い越していた。信用金庫は長期債を2052億円買い越していた。

 生保は超長期債を5914億円の買い越し。そして外国人は超長期債を1431億円、中期債を1876億円買い越していた。

 1月の債券相場は米国での財政の崖問題が回避されたことや円安による株高もあり、売りが先行した。その後は、日銀による積極的な緩和策なども意識されて中期債主体に買いが入った。22日の金融政策決定会合で日銀は2%の物価安定の目標とともに、期限を定めない資産買入方式を導入した。超長期債は増発懸念などで上値が重くなったが、29日の夕方に発表された2013年度の国債発行計画で増発はほぼ予想の範囲内に収まった。31日に債券相場は中期債主体に上昇し、債券先物も144円40銭をつけた。

 短期債の売買高をみると、外国人がこの月も15兆4445億円の買い越しとなっていた。昨年12月は外国人の買い越しが10兆円を割むが、再び10兆円以上に回復した。1月に入ってからも円安の動きは継続し、ドル円は90円台を回復するなどしていたが、海外投資家による短期債の買い越しは継続していた。

 日銀の独立性がなぜ重要なのかを解き明かすため、書き下ろしたのが「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」です。ぜひご一読いただけるとうれしいです。キンドルの端末でダウンロードいただくか、スマートフォンやタブロイドでもキンドルのアプリでダウンロードできます。定価は250円です(こちらでの無料キャンペーンはいまのところ予定しておりません)。

「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-02-21 09:38 | 債券市場 | Comments(0)

2%の物価目標の無理矢理感

 1月21日・22日分の日銀金融政策決定会合議事要旨が公表された。この会合で日銀は政府からの要請のあった「物価安定の目標」を導入することを決定し、同時にあらたな追加緩和策として、「期限を定めない資産買入方式」を導入することを決めた。

 この際の議事要旨ということで、内容はかなり注目され、2月19日の金融市場はこの議事要旨の中の「複数の委員は、短期国債の買入れの強化は、短期ゾーンの金利低下を通じて、為替市場へ働きかける観点からも重要であると指摘した。この間、複数の委員は、例えば、資産買入れの対象となる長期国債の残存年限を5年程度まで延長することも考えられると述べた」との発言に影響を受けたようである。今回はこの議事要旨の中から、2%の物価目標に対する政策委員の意見について見てみたい。

 この目標設定はいわゆるアベノミクスによる影響が大きい。日銀法改正をちらつかせて、目標を設定させたとの見方もできる一方、安倍政権への期待で円安・株高も進み、日銀としてもその流れを強めさせるには、達成の可能性はさておき、導入に踏み切らざるを得なかった面もあったのではなかろうか。

 実際にこの2%の物価目標に反対した委員もいたわけで、1%に達する前に拙速な金融緩和策の後退を行う政策意図がないことを明確に示せば、1%でもいいだろうとの意見もあった。今回の会合では大勢意見に従いたいと述べた委員もいたことがわかり、これはつまり異議を唱えたのは2人の委員ではなく、少なくとも3人以上いた可能性がある(実際にはかなりいたと思われるが)。

 2%の物価目標に反対の理由としては、「現状、中央銀行が2%という物価上昇率を目標として掲げるだけでは、期待形成に働きかける力もさほど強まらない可能性が高く、これをいきなり目指して政策を運営することは無理がある」などがあげられているが、これに対しては次のような意見が出ていた。

 「様々な研究結果を見ても、かなりの割合の人々のインフレ予想は、将来の政策やそれによる経済の変化を織り込んで形成されていると考えられるので、これらの人々の予想形成に働きかけることは自然であると付け加えた」

 人々のインフレ期待を高めることは可能かもしれないが、実際に物価を上昇させるのは、期待だけで可能なのかという点が疑問である。このあたりについてはあまり説明がなされていない。

 「一人の委員は、労働力人口が毎年 0.6%ずつ減少していく中で、2%の物価上昇率を安定的に実現するためには、きわめて高い生産性の上昇が必要になるという厳しい現実を直視する必要があると述べた。また、もう一人の委員は、政府が消費者物価の前年比上昇率2%という目標の達成に向けた 責任を分かち合うことが明示されなければ、企業や家計の期待形成に働きかける効果は限定的ではないかとの見方を示した。」

 安倍首相はデフレは貨幣的現象と述べたそうだが、物価を上げればそれで済む問題でもなく、そもそも金融政策がどのような経路を通じて物価上昇に寄与するのかもはっきりしていない。解消すべきはデフレではなく、デフレとなっている経済環境であり、そのために三本の矢が必要と言うことなのかと思う。

 今回の日銀の決定会合議事要旨は、決定についてかなりの無理矢理感もあったことで、内容はかなり興味深いものとなっており、物価への金融政策の影響などを議論するのにも良い教材となるのではなかろうか。

 日銀の独立性がなぜ重要なのかを解き明かすため、書き下ろしたのが「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」です。ぜひご一読いただけるとうれしいです。キンドルの端末でダウンロードいただくか、スマートフォンやタブロイドでもキンドルのアプリでダウンロードできます。定価は250円です(こちらでの無料キャンペーンはいまのところ予定しておりません)。

「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-02-20 09:34 | 日銀 | Comments(0)

必要なのは次元の違う財政再建策なのでは

 2月18日の日経新聞の経済教室は、小林慶一郎一橋大学教授の「財政再建も成長戦略」と題するものであった。ここでのキーワードは聞き慣れない「パブリック・デット・オーバーハング(public debt overhang)」であった。

 失われた20年、一貫して日本経済を悩ませているのが国債など公的債務の膨張であり、これが経済成長を阻害する主因であったとする考え方が、「パブリック・デット・オーバーハング」だそうである。ちなみに、デット・オーバーハングとは、債権者が「支払いの猶予」を認めた場合、企業は存続が可能になるが、新規の資金を借りることが難しくなるような現象を指すとか。

 この考え方を示した論文の記述者がまた興味深い。ハーバード大学のカルメン・ラインハート教授とケネス・ロゴフ教授、モルガン・スタンレーのヴィンセント・ラインハート氏による論文だとか。カルメン・ラインハートとケネス・ロゴフといえば「国家は破綻する」(原題は「This Time Is Different」)の著者である。ヴィンセント・ラインハート氏は元FRBの金融政策局長で、カルメン・ラインハート教授のご主人である。

 「パブリック・デット・オーバーハング」と題された論文によれば、先進国が公的債務の累積を経験した26の事例を調べた結果、そのうち23の事例で長期にわたる経済成長の低迷が起きていたという。公的債務のGDP比が90%をこえてからこの関係が生じるようである。つまり90%を超えると急に経済成長の阻害要因になるという。

 小林教授によると、最近まで公的債務が経済成長率に負の影響を持つことは実証的に確認されていなかったそうで、近年のデータの拡充により、高債務の事例が加わったため、こうした事実が発見されたという。

 その説明のひとつに小林教授は「非ケインズ効果」を挙げている。つまり、財政支出拡大や減税で財政悪化が進むと、将来の財政再建の痛みが非常に大きいと予想されるようになる。するとそれに備えようと貯蓄が増え、現時点の消費が抑えられる。つまり「公的債務が増えると消費が減る」。

 このあたりの関連性については、特に日本では研究の余地があるのではなかろうか。日本経済の低迷の要因をデフレという一言だけでは片付けるのは無理がある。もしパブリック・デット・オーバーハングといった考え方が正しいとすれば、2%の物価目標のために、結果として国債を大量に買い入れる中央銀行の存在は、経済成長をむしろ妨げるようなことになりうる可能性はないのだろうか。

 抜本的な財政再建が先延ばしされれば、経済成長を促す長期的な政策を実行することが困難になる。信用できる長期の成長戦略が示されないと、将来の収益見通しが不確実となり、企業は新技術や新分野に打って出ようとしなくなり経済成長は低下する。企業は既存の技術やビジネスにしがみつき、生産性上昇は停滞し、実質金利も上がらない、と小林教授は指摘する。

 個人的にこの意見はかなり筋が通るように思われる。デフレ脱却というより、失われた20年から脱却するのに必要なのは、次元の違う金融政策とかではなく、次元の違う財政再建策なのではなかろうかとも思うのだが。その手段は政府に任せるとして。

 日銀の独立性がなぜ重要なのかを解き明かすため、書き下ろしたのが「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」です。ぜひご一読いただけるとうれしいです。キンドルの端末でダウンロードいただくか、スマートフォンやタブロイドでもキンドルのアプリでダウンロードできます。定価は250円です(こちらでの無料キャンペーンはいまのところ予定しておりません)。

「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-02-19 09:50 | 財政 | Comments(0)

白川日銀総裁と松下元総裁の奇妙な類似点

 日銀の白川総裁は4月8日の任期満了を待たずに3月19日に辞任すると発表した。総裁として議長として望む金融政策決定会合は、3月6日、7日が最後となる。

 白川氏が総裁となったのは、2008年4月9日。この年の9月にリーマン・ショックが起きる。10月には日銀、無担保コール翌日物金利の誘導目標値を0.5%から0.3%に引き下げ、11月には補完当座預金制度に基づく付利を開始、12月に無担保コール翌日物金利の誘導目標値を0.3%から0.1%に引き下げ、長期国債買い入れオペを毎月1.2兆円から1.4兆円に増額した。

 2009年3月に長期国債の買い入れを月1.4兆円から1.8兆に増額、12月には臨時の金融政策決定会合を開き、追加の金融緩和策を決定。10兆円規模の新型オペを導入した。

 2010年にはギリシャ・ショックが世界を襲う。3月に固定金利オペを大幅に増額。8月に臨時の金融政策決定会合を開催し新型オペの拡充策と新たに貸出期間6か月の新型オペ10兆円を新設。そして10月には、質的なゼロ金利政策を再開、時間軸政策、基金オペの実施という包括緩和策を導入した。

 2011年3月は東日本大震災が発生し、日銀は資産買い入れ基金を総額40兆円に増額した。8月には基金の総額を50兆円に、また固定金利オペを5兆円から10兆円に拡大した。10月には資産買入れ等の基金を55兆円程度に拡大。

 2012年2月に物価安定の目途(コアCPIの1%)を示し、資産買入等の基金規模を65兆円程度に増額。4月には資産買入等の基金を70兆円に増額し、買入対象となる長期国債の残存期間も1年以上3年以下に延長した。9月には資産買入等の基金を80兆円程度に増額。10月に資産買入等基金の規模を91円程度に増額、貸出支援基金を設立、政府と日銀の共同文書を公表した。12月には資産買入等の基金を101兆円程度に増額したのである。

 2013年1月には日銀は政府からの要請のあった「物価安定の目標」を導入することを決定し、同時にあらたな追加緩和策として、「期限を定めない資産買入方式」を導入することを決めた。

 このように白川総裁の任期中、日銀は追加緩和か現状維持だけとなり、金融引き締めは一度も行わなかった。これに対して前任の福井総裁は量的緩和解除、ゼロ金利解除と利上げも行っている。その前の速水総裁も2000年8月にゼロ金利解除を行っている。

 一度も金融引き締めを行わなかった総裁には、やはり任期満了を待たずに辞任した松下総裁もいる。どうもこの松下総裁と白川総裁には、任期満了前の辞任や引き締めをしなかったことだけでなく、任期中に大きな震災も起きるなど、偶然ではあろうが似たところがあった。

 松下康雄氏が日銀総裁に就任したのは1994年12月17日であった。1995年1月に阪神・淡路大震災が発生している。この年の2月にベアリングズ社が経営破綻した。4月に公定歩合を0.75%引下げ1.00%に。8月にはコスモ信用組合破綻・木津信用組合の一部業務停止命令・兵庫銀行破綻があり、9月に公定歩合を0.5%に引下げた。1998年には海道拓殖銀行、山一證券、徳陽シティ銀行の経営破綻に対処するため特融措置を決定している。

 松下総裁の任期中は主に国内での金融危機が発生し、白川総裁の任期中には欧米での金融危機が発生したことで、結果として金融緩和策が続けられてきた。阪神・淡路大震災と東日本大震災という大きな災害も発生し、金融インフラの維持という大きな仕事も行ってきた。

 松下総裁も白川総裁も、あまり目立たなかった総裁であったかもしれない。それぞれ批判もあろうが、日銀総裁として大きな危機の中、しっかりと仕事をやり遂げてきたことは確かではなかろうか。いや緩和が足りないとか、デフレから脱却できていないとの指摘もあるかもしれないが、果たしてそうであろうか。このあたりの評価はもう少し時が経ってからの方が良いような気がする。G20では議長国ロシアのシルアノフ財務相から白川方明日銀総裁の3月退任が紹介された際、各国の出席者はこれまでの白川氏の貢献を満場の拍手でたたえ、次々に握手を求めたそうである(時事通信)。

 日銀の独立性がなぜ重要なのかを解き明かすため、書き下ろしたのが「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」です。ぜひご一読いただけるとうれしいです。キンドルの端末でダウンロードいただくか、スマートフォンやタブロイドでもキンドルのアプリでダウンロードできます。定価は250円です(こちらでの無料キャンペーンはいまのところ予定しておりません)。

「日銀の独立性がなくなる日 [Kindle版]」


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ、通称、牛熊メルマガでは毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。ご登録はこちらからお願いいたします。

BLOGOS版「牛さん熊さんの本日の債券」
まぐまぐ版「牛さん熊さんの本日の債券」

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2013-02-18 09:39 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー