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日銀が建設国債だけを市場からは買えない理由

 安倍自民党総裁の金融政策を巡るトーンが少し変わってきているようであるが、それでもまだ「物価目標2%達成するまで無制限な金融緩和を」、「物価目標2%超で、引き締めに入る技術が中央銀行に問われている」というやや理解に苦しむ発言が出ている。それはさておき、ここでもう一度11月17日の安倍総裁の発言について確認してみたい。ただし、今回は建設国債の発言に関する部分である。

 自民党の安倍総裁は11月17日に熊本市内で講演し、衆院選後に政権を獲得した場合、金融緩和を強化するための日銀法改正を検討する考えを重ねて表明した。「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と述べ、日銀が建設国債を全額引き受けるのが望ましいとの考えを表明した(日経新聞)。

 同日、山口市では「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」(安倍総裁)との発言もあったようだが、それはさておき今回は「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう」との発言部分にあらためて注目したい。

 この「建設国債」に違和感を覚えた人は私を含めて少なからずいたのではなかろうか。なぜならば、市場から建設国債を買うのは非常に難しい、というかまず無理であるためである。毎年何兆円も建設国債などの国債が発行され売買されているのに、それはおかしいだろうと言われるかもしれないが、とにかく建設国債だけを市場から買うことは技術的に無理である。

 2012年度の国債発行額を財務省のサイトで再確認してみたい。今年度の国債発行額はトータルで174兆円となっている。このうち建設国債が約6兆円、赤字国債が約38兆円、復興債が約2.7兆円、財投債が15兆円、借換債が約112兆円となっている。そしてカレンダーペースの市中発行額が約150兆円となっている。

 国債には建設国債、特例国債(赤字国債)、復興債、財投債、借換債というようにいわゆる発行根拠法別に種類分けがある。ところが国債は、ご存じのように割引短期証券、2年、5年、10年、20年、30年、40年、個人向け国債等々のかたちで発行されている(詳しくは拙著「最新国債の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システムなどをご参照いただきたい)。

 FBとTB(割引短期証券)が混在して国庫短期証券として発行されているように、2年債とか10年債は入札、発行される毎にそれぞれ発行根拠法別に混在されて発行されている。それぞれ発行根拠法別(建設国債なのか特例国債なのか等)の管理はされているが、それを把握できるのは財務省だけなのである。つまり投資家が購入した10年国債が、建設国債なのか赤字国債なのか、借換債なのか保有者はわからない。

 ここで借換債が出てきたが、そもそも借換債は建設国債と赤字国債であり、それぞれ60年かけて償還されなければいけないため(60年償還ルール)、借換債が発行されている。つまりこれらも元々は建設国債や赤字国債である。

 市場で売買される際の国債は、建設国債とかを買うのではなく2年国債や10年国債を買うことになり、それが発行根拠法では何になるのかはわからない。いくら国債の資金のやり取りを任せられている日銀といえども、発行根拠法別で建設国債だけを市中、つまり市場から購入することなどはできない。

 11月17日の安倍総裁の「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう」との発言は、もし本当に買入れを意識しての発言であるのであれば、このあたりの国債の仕組みについて理解していない人がシナリオを書いたと思われる。ただし、もし日銀が直接建設国債を引き受けるとなれば話は違ってくるのだが。

 キンドルの電子書籍にて書き下ろしました「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」(定価300円)にも日銀の国債引受のリスクについて書いてます。是非、読んでみてください。

「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」


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by nihonkokusai | 2012-11-30 09:45 | 日銀 | Comments(0)

カナダ人のカーニー氏がイングランド銀行総裁に

 英国政府は11月26日に、英国の中央銀行であるイングランド銀行のキング総裁の後任にカナダの中央銀行であるカナダ銀行のマーク・カーニー総裁を任命すると発表した。

 現在のイングランド銀行総裁はマーヴィン・キング氏である。キング総裁は2003年6月30日に前任のエドワード・ジョージから引き継いで総裁就任し、任期は2013年6月30日までとなる。

 イングランド銀行総裁の人事については、副総裁含めて、首相の助言に基づいて女王が任命する形式となっている。任期は5年で再任できる。人選にあたっては財務省の影響が大きく、これまでは現役の総裁や財務次官などと検討し、財務相が首相に候補者を推薦する格好となっていた(このあたりは日銀総裁人事とも似ているか)。ちなみに現在のキング総裁は副総裁から総裁に就任した。

 イギリスのオズボーン財務相はキング総裁の後任について、9月に公募する方針を明らかにしたが、どうやらこれはいわゆる出来レースとなっていたようである。つまり、オズボーン財務相が白羽の矢を立てていたのは、そのときすでにカナダ銀行のマーク・カーニー総裁であったようである。11月28日の日経新聞の記事によると、10か月かがりで説得したとある。オズボーン財務相は公募について「公正で開かれた手続きで行う」と述べ、選考過程の透明性を高めるためだと説明したようだが、どうやらこれは別の意図もあったように思われる。

 次期イングランド総裁候補にはタッカー副総裁が最有力とされていたものの、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作問題で関与が疑われたことがネックとなったようである。また、ターナーFSA長官との声もあったようだが、こちらも中銀保有国債の償却発言などがネックとなったのかもしれない。ただし、この時点でカナダ銀行のカーニー総裁を推す声もあるとの指摘もあった(共同通信)。少し、情報は漏れていたのかもしれない。

 中央銀行総裁に外国人を起用するのは極めて異例であるが、これはある意味、イングランド銀行らしいものでもあった。実は1997年のイングランド銀行の改革により政府からの独立後最初のMPCメンバーにすでに2人の外国人が入っていた。現在もアメリカ人のボーゼン委員がMPCメンバーに入っている。

 しかし、総裁そのものに外国人を起用するというのは、結果的に選出の責任者といえるジョージ・オズボーン財務相は、なかなか思い切ったことをしたと思う。しかも、2月に就任を打診しても、カナダに住み続けたいとして就任要請を断ったとされるカーニー氏を、いろいろな待遇込みでなんとか口説き落としたとされる。

 ちなみにカーニー氏には、イギリスとカナダの二重国籍を持つ奥さんと、娘4人がいるとか。イングランド銀行総裁になるにあたり、イギリスの市民権も取り二重国籍となるようである。

 カーニー氏が率いるカナダ銀行はリーマン・ショックなどによる金融危機後に、G7の中でいち早く引き締めを実施し、2010年には政策金利を3度にわたって引き上げている(ロイター)。また、カナダ中銀は2009年に条件付きながら政策金利を翌年半ばまで過去最低の0.25%で据え置く姿勢を示し、いわゆる時間軸政策の先鞭をつけたとされる(これについては日銀が先輩のような気がするが)。

 このような手腕が評価されての起用とみられる。さらにカーニー氏は金融安定化理事会(FSB)議長でもあり、銀行に対しては規制強化が必要との立場でもある。

 イングランド銀行総裁となれば、カナダ銀行とはまた大きく状況も異なる。来年6月までにはいろいろと情勢も異なってくると思われるが、どんな手段を講じてくるのか楽しみである。ちなみに日銀の白川総裁の任期は来年4月である。こちらの人事の行方も注目だが、誰が選ばれるのか以前に、誰が選ぶのかも分からない状況にある。

電子書籍にて書き下ろしました「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」がキンドルストアーにて好評発売中です(11月29日現在、Kindleストアのベストセラーランキングの有料部門で第35位)。ぜひアマゾンのキンドルにてダウンロードしていただけるとうれしいです。定価300円での販売となります。


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by nihonkokusai | 2012-11-29 09:43 | 中央銀行 | Comments(0)

打ち出の小槌はない、福井前日銀総裁のコラムより

 「あたりまえ体操」というのが流行っているが「あたりまえ」の事が、なかなか「あたりまえ」として一般に認識されないことがある。だから政治家からも妙な意見が飛びだすことがある。

 さすがに安倍自民党総裁などの発言に対して、この方がコラムとして意見を述べていた。福井俊彦前日銀総裁(現、キヤノングローバル戦略研究所理事長)である。今回は「打ち出の小槌はない」と題した福井氏のコラムを元に金融政策を取り巻く「あたりまえ」のことについて再確認したい。

「キヤノングローバル戦略研究所」サイト内のコラム「役員室から」より
http://www.canon-igs.org/management/toshihiko_fukui/20121121_1663.html

 いきなりの冒頭から「インフレターゲットや国債の日銀引き受けなど、政府と日銀との関係について新聞紙面でいろいろな記事が目に着くようになった。私は、政治的な議論に直接関与する立場にはないが、通貨に対する信認、それと裏腹の関係にある国家に対する信認に絡む問題であるだけに、人々の間で真剣な議論がなされ、十分慎重に検討が進められることを願っている。」とある。

 このコラムが政治家による発言を意識して書かれたものであることが、これからも明らかである。通貨、そしてその裏腹の関係にある国家に対する信認こそ、実は最も重視すべきものであるとしている。これも当然のことであろう。

 「近代国家の成立が相次ぐ時代になって、一国において通貨を発行する権限を根源的に持っているのは誰か、それは国、即ち政府をおいて他にない、との考え方が一般的となり、政府の持つこの権限は「通貨高権」と呼ばれるようになった。しかし、政府が自国の貨幣や紙幣を全て発行してうまく行った実例がどれ程あったであろうか。現在も、政府の発行する通貨は額面の小さい補助貨幣に限られているのが通例である。」

 「中央銀行は、財政を司る政府でもなく、営利を追求する民間銀行でもない。このような中央銀行に紙幣(銀行券)を発行する権限と通貨全体を調節する権限を独占的に与えておけば、財政上の必要からも、営利追求上の必要からも離れ、規律ある通貨制度を確立することが出来ると考えられたわけである。」

 政府紙幣を発行せよとの意見もあるが、紙幣を発行する権限を政府から切り離したことにより、むしろ通貨の信認を得ようとしたのが歴史上、中央銀行という存在が生まれた理由である。

 「とは言え、中央銀行の場合も、その発行する銀行券は資産勘定に立つのでなく、民間銀行の場合と同じく負債勘定に計上される。中央銀行券は、人々にとっては資産であるが、当該中央銀行にとっては借金証文である。従って、中央銀行も資産の健全性を保つことなく銀行券を無暗に発行することは許されないし、たとえどのような方向から強い要請があろうとも、経済実勢との対比で適正な範囲を超えて通貨供給を増やすことも許されない。」

 経済実勢に即した通貨供給を行ってこなかったのが、デフレの原因ではないかとの指摘もあるかもしれない。「経済実勢との対比で適正な範囲」というところにはいろいろな議論があるものと思われる。

 「国債は最も信用のおける金融資産と考えられており、今のようにデフレが長く続いている状況の下では、国債ならば中央銀行が無制限に買い入れて金融緩和を図っても大丈夫だ、と考える人が出て来ている。しかし、国債が人々から信用されるかどうかは、偏にその国債を発行している政府が規律正しく財政運営をしているかどうか、にかかっている。最近の欧州の状況を見るとこのことが非常によく分かる。」

 今度は国債の話である。国債の信用はそれを発行する政府の財政運営に関わっていることは、ギリシャの事例をみなくても、あたりまえのことであろう。

 「また、政府が中央銀行に対して限りなく国債の買い入れを求めたり、中央銀行の国債買い入れを当てにして財政の箍を緩めたりすると、そのこと自体が国債の信認を大きく傷つけることとなってしまう。買入国債が赤字国債でなく、建設国債であっても、公共投資対象物件の耐用年数に応じて償還しなければならないことを考えると、この間に非常に大きな差があるとは言い難い。」

 まさに安倍自民党総裁の発言を意識してのものと思われる。一度、中央銀行に頼り切ってしまうと、そこから抜け出すことが容易ではなくなる。高橋是清が二二六事件で暗殺された理由を考えても明らかである。それをもし知らない方がいれば、ぜひ拙著「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」(キンドルストアーにて販売中)を読んでいただきたい。

 必要もないのに財政法で禁じられている日銀による国債引受の糸口を作ってしまうことは危険極まりないことになる。そして、下記のような発言もあった。

 「中央銀行引き受けで発行される場合には、市場外の発行となるため市場の評価とは無関係に発行される。その行き着くところ、もし中央銀行が政府の申し出通りに国債を引き受けなければならないとすると、それは政府自身による通貨の発行と実質的には同じこととなり、財政規律が最も失われ易いケースとなってしまう。そして中央銀行は、自律性はおろか存在価値そのものに疑念を抱かせることとなろう。」

 ここは債券市場関係者など、ある程度国債に関する知識のある人にとってはあたりまえのことながら、一般の人には理解しづらい面でもあろうか。安倍自民党総裁が自らの発言に対して、後ほど国債引受とは言っていないと修正ともいえるような発言をしたのも、このようなリスクがあることをさすがに認識したためと思われる。

 「日本経済がいくら厳しい局面に立たされていると言っても、苦闘を避けて安易な道を選び、政府による日本銀行への干渉を正当化したり、国債の日銀引き受けへの道を開くとすれば、それは、先進国の地位を自ら放棄するのみならず、公的部門の累積債務が異常に膨らんでいる日本の実情を踏まえて考えると、これらの施策は、狙い通りインフレ期待を呼び起こして景気刺激の効果を生む前に、投資家離れと市場金利の上昇を呼び起こし、財政破綻、経済破綻の危険を手許へ引き寄せる結果となる可能性の方が大きいものと推察される。」

 このリスクについても「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」で指摘したが、日銀は無理矢理にならばインフレは起こせるが、それをしてしまうと取り返しがつかなくなる。ここは政治家もわきまえておく必要があろう。

 「日銀の金融緩和政策が経済実態に照らして十分かどうか、政府の経済政策と整合性が取れているかどうか、これらは今後とも徹底的に議論されて然るべき課題であるが、功を焦って一線を飛び越えると、日本再興のために様々な苦労と負担をしなければならないと覚悟している人々の心情を裏切り、未来への夢や国益の全てを一挙に淵に放擲することとなってしまう。」

 12月の総選挙を控え、経済政策については日銀にある程度押しつけようとの論調も垣間見られる。それは「日銀法改正」まで言及されていることで明らかであるが、日銀が緩和不足かどうかについてはたしかに議論されても良いが、日銀による国債引受、さらに日銀法を改正して日銀の独立性を歪めるようなことは、過去の歴史を振り返っても完全に時代に逆流するどころか、非常に危険な方向に向かいかねない。

「打ち出の小槌はない!」、もって瞑すべしである。と福井氏は結んでいるが、まさにその通りであると思う。

 キンドルの電子書籍にて書き下ろしました「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」。ぜひアマゾンのキンドルにてダウンロードしてください。「こんな大著が300円で読めるなんて、ありがたいやら、申し訳ないやら」との感想もいただきました。定価は300円です。よろしくお願い致します。

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by nihonkokusai | 2012-11-28 09:31 | 日銀 | Comments(0)

10月30日の決定会合で佐藤委員が独自の議案を提出

 11月26日に10月30日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。この会合では追加緩和策が決定され、資産買入等基金の規模を11兆円増額した。さらに貸し出し増加を支援する無制限の資金供給の枠組み創設の検討を執行部に指示、この新しい貸出枠と既存の成長基盤強化の資金供給を貸出支援基金とする。 そして、日銀総裁と財務相・経済財政相との連名によるデフレ脱却に向けた取組についてを公表した。

 この決定会合のポイントは異例とも言える2か月連続の追加緩和とともに、政府日銀が一体となってデフレ脱却を目指すという政府と日銀の共同文書であった。しかし、今回は少し違うところに焦点を当ててみてみたい。それは今回の会合で、審議委員から議案の提出があったことである。これについては特に白川総裁の会見等では触れられていなかったかこともあり、意外感があった。

 議事要旨によると佐藤委員から、物価見通しの記述について、「消費者物価の前年比は、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して、徐々に緩やかな上昇に転じ、 2014年度には当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に着実に近づいていく」から「消費者物価の前年比は、当面ゼロ%近傍で推移した後、マクロ的な需給バランスの改善などを反映して、徐々に緩やかな上昇に転じていく」に変更し、政策運営方針の記述について、1%を「見通せるようになるまで」から「安定的に達成するまで」に変更する旨の議案が提出されたそうである。

 これは採決の結果、反対多数で否決されたが、 賛成票には佐藤委員とともに、木内委員の名前があった。

 さらに佐藤委員と木内委員は、議長から会合における多数意見を取りまとめるかたちで、「基本的見解」の議案が提出された際に、反対票を投じている。ちなみにこれはあくまで基本的見解に対する議案であり、金融政策そのものへの反対票ではない。

 これについて、佐藤委員と木内委員は、自身の物価見通しは展望レポートの記述に比べてより慎重であること、今回決定した金融緩和の強化に加え、コミットメントの文言を変更すべきと考えていることから、反対したとある。

 確かに議事要旨を確認すると、「複数の委員は、マクロ的な需給バランスと消費者物価との相関が依然として緩やかであることを踏まえると、マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力を控えめにみておくべきであり、「1%に着実に近づいていく」との評価は難しいのではないかと指摘した。」とある。複数の委員というのは佐藤委員と木内委員ということなのであろうか。

 また、コミットメントの文言について、やはり複数の委員から、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」との文言を変更し、それを対外公表文に明記することで、金利などへの働きかけをさらに強め、日本銀行の緩和姿勢をより明確にすることができないかと問題提起した。これに対して大方の委員は、現時点でコミットメントの文言を修正することには慎重な見解を表明した、とある。

 1%を「見通せるようになるまで」から「安定的に達成するまで」に変更するとなれば、確かに1%の意味合いも異なってくる。このあたりは自民党などが主張する2%の物価目標も意識される。しかし、佐藤委員は2%という数字の変更ではなく、「安定的に達成するまで」との文面変更を主張していた。このあたり微妙な落としどころを探っているということなのであろうか。

 「何人かの委員は、仮に基金の運営について市場に誤解があるのであれば、増額完了後も、「1%」を目指して強力に金融緩和を推進していくというコミットメントの考え方に即して基金を運営していくことを、改めて対外的に説明していくことで払拭すべきとコメントした。複数の委員は、日本銀行の現状認識を正確に伝えるため、まだ「1%」を見通せるとの判断には至っていないことをしっかりと説明していくことが重要であると付け加えた。」

 市場等に向けて、日銀はかなり強力な金融緩和を行っているとの姿勢を示すことは重要である。この会合でも追加緩和を実施したことで、いわゆるアナウンスメント効果も意識すべきかと思われる。ただし、それでまだ「1%」を見通せるとの判断には至っていないことを説明するとなれば、むしろさらなる追加緩和期待を強めることになる。現実に12月の決定会合での追加緩和期待はかなり強いものとなっている。

 10月30日の決定会合における佐藤委員の議案提出はある意味、興味深いものではあったが、これについてはこの議事要旨が出るまでは明らかにはされていなかった。共同文書などへの関心が高かったことも影響していたのかもしれない。これについては政府関係者から情報が漏れるようなこともなかった。確かにこのような反対意見そのものは確かに重要であると考えるが、それにしてもその内容については、金融政策そのものには反対せず、やや中途半端な印象も受ける。11月の決定会合では全員一致で金融政策は現状維持となったが、このときには佐藤委員からの10月30日同様の議案の提出はなかったのであろうかということも気になる。

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by nihonkokusai | 2012-11-27 09:30 | 日銀 | Comments(0)

「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」のご紹介

 書き下ろしの新著、「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」を出させて頂きました。キンドルストアーにて定価300円にて、ダウンロードできます。

「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」

 この本では、世界的な超低金利時代にあり、その終焉を見据えての準備をする必要があるのではないかと思い書いたものです。そして、もしも国債の日銀引き受けなどが行われてしまうと、むしろそれが危機の始まり担ってしまう懸念もあり、その注意喚起を含めて書いたものです。

 おかげさまで多数のダウンロードをいただいており、キャンペーン期間中、キンドルのランキング(無料)でベスト10に入っておりました。また、キャンペーン後のキンドルのランキング(有料)でベスト100に入っております。

 19日にはキンドルの端末が発売されましたが、iPhoneやアンドロイドなどのスマートフォン、もしくはiPadなどのタブロイド端末にて、キンドルのアプリを入れるとキンドルの本を読むことができます。

 ぜひ、この機会に「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」をダウンロードいただき、電子書籍とはどのようなものなのか確認いただけるとうれしいです。

「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」
目次

第1章 歴史上希な超低金利が世界各地で発生した理由

1-1 オオカミ少年の物語
1-2 これから金利の話をしよう
1-3 いつから日本の短期金利は実質ゼロなのか
1-4 日本の長期金利が世界最低記録を更新した日
1-5 歴史上2%割れの長期金利は極めて希
1-6 危機の原点は米国の住宅バブルの崩壊にあった
1-7 リーマン・ショックによる日米欧の金融緩和
1-8 欧州の信用不安による日米欧の金融緩和
1-9 まだまだ続いた金融緩和
1-10 日米欧の金融緩和と超低金利の関係
1-11 ドイツの金利がマイナスになった理由
1-12 ショックの後遺症

第2章 超低金利時代終焉の予兆

2-1 変化の兆し
2-2 円安の兆し
2-3 2012年9月が日本の転機となった可能性
2-4 日銀のデフレ脱却への前傾姿勢
2-5 日銀の物価安定の目途の意味
2-6 米国の財政の崖問題
2-7 欧州問題の先行き
2-8 市場の潮目の変化を知るための事例
2-9 消費増税のタイミングと金利
2-10 日本の金融不安と欧州の信用不安の類似点

第3章 超低金利時代に慣らされてしまった日本

3-1 居心地の良い超低金利時代
3-2 デフレ脱却とはどういうことか
3-3 超低金利により助けられた日本政府
3-4 世界の債券市場が10年間で2倍以上に拡大
3-5 政治の動向に無反応な債券市場
3-6 メガバンクの国債売買益は過去最高水準に
3-7 財政の持続可能性の重要性
3-8 日本の債務残高はいくらなのか

第4章 超低金利の終焉で起きること

4-1 超低金利時代に終止符が打たれるか
4-2 2013年は日本にとって変化の年になる可能性
4-3 高橋是清の事例と本来学ぶべき事
4-4 リフレ政策による長期金利の上昇
4-5 長期金利2%程度までの上昇の可能性
4-6 長期金利の上昇と財政への影響

第5章 超低金利時代の終わりを危機の始まりにするな

5-1 中央銀行による国債引受が禁じ手である理由
5-2 日本で日銀による国債引受が禁じられた理由
5-3 禁じられた日銀の国債引受の例外
5-4 日本国債のデフォルトはあり得ないのか
5-5 ソブリンリスクとは何か
5-6 国債の損失額と7%という分岐点の意味
5-7 危機に備えた防衛方法

「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」

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by nihonkokusai | 2012-11-24 16:50 | 本の紹介 | Comments(0)

二度のゼロ金利解除と安倍総裁

 NHKニュースによると「自民党の安倍総裁は、記者会見で、日銀による建設国債の引き受けなどを検討するとしたみずからの発言に、政府内から批判が相次いでいることについて、「『日銀が直接買い受ける』とは言っていない」と述べ、財政規律の観点からの懸念は当たらないという認識を示しました。」とある(NHKのサイトより)。

 NHKは安倍総裁の発言内容をそのまま記載したとみられるが、「買い受ける」という用語はこれまで聞いたことがない。「引き受ける」と言うつもりが、「買い取り」と言う言葉が交じり、「買い受ける」という新語が登場したものとみられる。

 「自民党の安倍総裁は、先週の講演で、政権に復帰した際に、公共事業の財源に充てるために発行される建設国債を、日銀に引き受けさせることを検討する考えを示しましたが」とNHKも示していたが、安倍総裁の先日の熊本市内で講演では、「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と述べており、直接引受(直接買い受け?)との表現はないが、それを意味していたと見ておかしくはない。

 安倍総裁は昔から日銀に対しては批判的であったようで、2000年8月の日銀によるゼロ金利解除のときの官房長官は中川秀直氏であったが、副官房長官は安倍氏であった。当時の政府と日銀との間で激しいやり取りがあったであろうことは想像に難くない。

 さらに2006年7月にも日銀はゼロ金利政策を解除している。このときの官房長官が安倍氏であった。この際に下記のような記事があった。

 「ゼロ金利解除については、きょう、与謝野担当相が「7月にやっていただいても、8月にやっていただいても、日銀が独立性をもってやる判断だ。したがって、自らの責任と見識で判断すると信じている」と述べる一方で、安倍官房長官は、金融面から経済を十分支えてほしいとの観点で、当面ゼロ金利政策の継続が望ましいとの考えを示していた。(ロイター)」

 ご存じのように与謝野氏は日銀法改正に関わったぐらいであり、日銀の独立性を重視していた。それに対して安倍氏は今度は官房長官の立場で、ゼロ金利政策の解除を迎えたこととなるが、解除には反対の立場にあったようである(その前に2006年3月に日銀は量的緩和政策を解除しているが)。

 2006年3月の量的緩和政策の解除、さらに6月のゼロ金利政策の解除の際に政府は議決延期請求権は行使していない。当時の財務大臣は谷垣前自民党総裁であった。谷垣氏も日銀の独立性については配慮していたものとみられ、当時の小泉首相もこのあたりは認識していたとみられる。いわゆる上げ潮派も周りには多かったものの、小泉元首相は日銀に対してほとんど干渉していない(表面上は)。このあたり、何故だろうかと疑問を常々持っていたが、直感的にリフレ政策のリスクを嗅ぎ取っていたのではないかとの指摘もあった。

 そして、その小泉首相のあとを引き継いだのが、その安倍氏であった。安倍政権は2006年8月から2007年の8月までであったが、この間、日銀は2007年2月に政策金利を0.5%に引き上げているが、やはり政府からの直接的な干渉はなかった。この間は利上げができるだけの経済環境にあり、それほど金融政策には関心がなかったのかもしれない。

 しかし、安倍政権終了後に世界情勢が大きく変わった。2007年8月にパリバ・ショックが、2008年9月にはリーマン・ショックが起きている。そして、2009年9月に政権が民主党に移った。

 安倍総裁にとり、2回のゼロ金利解除を政府の要職として経験し、日銀はある意味、目の敵のような存在であったのかもしれない。しかし、自ら首相となったときには特に動かず、なぜか今回、再び自民党総裁に返り咲いてから、過去の記憶が舞い戻ったかのように日銀への干渉を強めようとしている。

 自民党の政権公約にもデフレ・円高からの脱却に向けて「欧米先進国並みの物価目標(2%)を政府・日銀のアコード(協定)で定める」方針などを明記している。そこには日銀法改正も視野に入れているようである(ただし、ここにきて日銀法改正についてもややトーンダウンしている模様)。

 過去の経緯を見ると、安倍総裁は日銀との関係について、政府の要職としていろいろ考慮すべき立場にいたと見られ、それなりの知識も得ていたはずである。しかし、最近の言動から見ると、日銀の独立性を軽んじるようなものや、財政法で禁じられている日銀の国債引受と取れるような発言をするなど、配慮が感じられない。これは自民党にとっても決してプラスではないと思われる。

 選挙までの期間もあり、もし政権を取り、再び首相に返り咲くことを意識しているのであれば、先々のリスクを感じさせるような言動は差し控えるべきではないかと思われる。そして、あらためて日銀の独立性についても一定の配慮を望みたいと思う。

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by nihonkokusai | 2012-11-23 09:04 | 日銀 | Comments(0)

1998年の日銀法改正の意味

 中央銀行が政府からの独立性を得たのは、イングランド銀行にしろ、FRBにしろそれほど昔ではない。FRBではルービン元財務長官の働きが大きかったといわれる。ECBはドイツ連銀の流れを汲んでいるとともに、複数国を跨いでの中銀という特殊性からも独立性は当初から必要なものであった。そして、イングランド銀行の政府からの独立についてはブラウン氏が立役者となった(ただし黒幕もいた)。

 1997年5月にブレア政権が誕生し、ブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し、「独立性」を高めるという大胆な改革に踏み切った。

 この改革とは、イングランド銀行総裁、副総裁、理事、外部らの委員で構成される金融政策委員会へ政策運営権限を委譲すること、外国為替市場介入権限を部分的にイングランド銀行へ委譲すること、準備預金制度の法制化、銀行監督権限をイングランド銀行から分離し新設された金融監督庁へ移管すること、そして国債管理業務の財務省への移管などである。

 この世紀の大改革のシナリオはすでに5年前に書かれていたそうで、その著者は当時25歳の若さでブラウン氏から顧問に起用された「フィナンシャル・タイムズ」の記者、エド・ボールズであった。

 「万年野党に甘んじていた労働党が政権党として信頼を得るには、経済界、特に金融市場の信用が不可欠だとボールズ氏は考えていた・・・金融政策を政治から切り離し、イングランド銀行に任せることで、労働党は独自の経済政策に専念できると訴えていた。訴えは、そのままブラウン氏の政策方針となった。」(2005年5/3・10週刊エコノミスト「ロンドンで見たイングランド銀行 華麗なる改革史」より)

 1998年4月1日に日本銀行法の全文改正を内容とする、日本銀行法が施行されたが、これには上記のイングランド銀行の独立性を高める動きなどが影響したようである。また、これには国内要因も影響していた。

 1957年から1960年にかけて、金融制度調査会が中央銀行制度に関する広範な議論を行い「日本銀行制度に関する答申」をとりまとめたが、一部両論併記の答申ということで改正にはいたらず。その後、1965年頃にも法改正の動きがあったが、やはり実現しなかった。これは政府と日銀との関係をどのようにするのか、特に日銀の独立性を認めるべきかどうかといったことが争点になっていたのである。

 ところが、しばらく時が過ぎて、1996年あたりから再び日銀法を改正すべきだとの声が強まってきた。これは欧州の動きとともにバブルの終焉と、その後の金融界の構造変化も要因とみられた。バブル崩壊後の金融システム不安の原因は、金融システム自体に問題があったのではないかとの認識が広まり、その旧システムを支えていたのが大蔵省であり、旧日銀法に縛られていた日銀であった。

 1996年2月に、大蔵省(当時)改革プロジェクトチームが組織された。当時、一連の接待汚職などによる大蔵省不祥事に端を発して、金融改革に対する機運が盛り上がった。与党のプロジェクトチームが発足し、金融改革の大きな柱として上がったのが日銀法改正であった。大蔵省の影響化にあった日本銀行を、より独立色の高いものにしようとする試みである。それまで日銀法改正の試みは何度か行われても実現には至らなかったが、思わぬかたちで改正の機運が高まった。

 日銀法改正の行方は、金融制度改革問題に取り組む与党プロジェクトチームにかかっていたとされる。1996年4月にプロジェクトチームが日銀に乗り込み、改革の火蓋は切られたが、この日銀法改正についてはかなり難航したようである。そもそも本来議員立法にて行うべきものと見られたが、結局、大蔵省が事務局となっている金融制度調査会が中心となって進められた。

 このあたり、当事者の方に是非、話を聞いてみたいようにと思われる。何故、日銀に独立性が必要であったのかを、この日銀法改正のことを参考に訴えていただきたいと思う。世界の歴史の流れは中央銀行にはしっかりとした独立性が必要であることを認識させてきた。それにもかかわらず、ここにきて日銀の独立性を歪めるような日銀法改正の動きが出てきている。このような歴史の流れに逆行するような動きには断固反対である。

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by nihonkokusai | 2012-11-22 09:28 | 日銀 | Comments(0)

10月に都銀は2兆円規模の債券売り越しに。期初の売りか

 11月20日に日本証券業協会は10月の公社債投資家別売買高を発表した。これによると短期国債を除くベースで、都銀は2兆343億円の売り越しとなった。また、信託銀行も7233億円の売り越しとなっていた。

 それに対して地銀が1兆5640億円の買い越し、農林系金融機関も5561億円、第二地銀が4720億円、信用金庫は7110億円のそれぞれ買い越しとなった。

 生保は9107億円の買い越し、そして海外投資家も8334億円の買い越しに。

 国債の投資家別売買高でみると、都銀は長期債を2兆1432億円、そして超長期債を1774億円それぞれ売り越していた(中期債は4344億円の買い越し)。都銀による長期債の2兆円を超す売りは4月の2兆1068億円以来である。これは10月に入り下期入りして、4月と同様に期初の益出売りと思われる。

 また、信託銀行も長期債を1兆310億円の売り越していた(超長期債は1746億円の買い越し)。

 これに対して地銀は長期債を1兆213億円、超長期債を2203億円買い越しており、都銀の売りに対して、結果として買い支えた格好に。農林系金融機関は超長期を3311億円買い越し、長期を1021億円買い越しに。

 生保は超長期債を7581億円の買い越し。そして外国人も長期債を2965億円、中期債を5481億円の買い越していた。

 都銀が大幅売り越しとなっていたものの、地銀などが買い支え、超長期債は生保や農林系金融機関などが買い越しとなり、債券市場の需給はしっかりしている。

 債券先物の日足チャートを見ると、10月は方向感に乏しい展開となっていた。債券先物は143円80銭あたりから144円50銭あたりの間での、狭いレンジの中での小動きとなっていた。

 10月17日にスペインの格付けが維持されたことなど好感されてリスクオンの動きが強まり、スペインやイタリアの国債が買われ、反対に米債やドイツ国債は売られた。このため10月18日に一時先物は143円79銭、10年債利回りは0.795%と0.8%に迫ったが、ここが結局、10月の安値となりその後、じりじりと反発した。

 ちなみに10月の短期債の売買高をみると、外国人がこの月も12兆1459億円の買い越しとなった。9月の13兆2681億円、8月の12兆3960億円、7月の14兆1707億円、6月の11兆4585億円、5月の11兆6562億円と、外国人は昨年10月以降、10兆円を超える短期債の買い越しを継続させている。

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by nihonkokusai | 2012-11-21 09:35 | 債券市場 | Comments(0)

9月の米国債の国別保有残高

 米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES、http://www.ustreas.gov/tic/mfh.txt)によると、2012年9月の日本の米国債(短期債含む)保有残高は1兆1307億ドルとなり、8月の1兆1228億ドルからさらに増加した。

 これに対してトップの中国は1兆1555億ドルと、8月の1兆1552億円から微増というかほぼ変わらず。中国による米国債保有額は今年になって頭打ちとなり、それに対して日本の保有額がじりじりと追いつこうとしている構図が続いている。ただし、年内の逆転は難しそう。中国は保有する外貨準備の運用の多様化を進めたり、介入の頻度を落としているといわれるが、米国債の保有額は昨年末に一時落ち込んでからは、一定水準を維持している。

 前月に比べ増加額が多かったのはルクセンブルグ。また、スイスも引き続き米債保有を増加させている。スイスフラン維持のための介入により、外貨準備が急ピッチで増加しており、その一部が米国債にも振り向けられているものとみられる。

 上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)。中国(China, Mainland)1155.5 、日本(Japan)1130.7、石油輸出国(Oil Exporters)267.0、、ブラジル(Brazil)250.5、カリブ海の金融センター(Carib Bnkng Ctrs)240.4、台湾(Taiwan)200.4、スイス(Switzerland)195.8、ロシア(Russia)162.8、ルクセンブルグ(Luxembourg )148.1、香港(Hong Kong)135.7。

 9月の米国債券市場は総じて下落基調となっていた。9月6日のECB政策理事会では償還期間1~3年の国債を無制限で買い入れることを決定。これを受けイタリアやスペイン、ポルトガルの国債が買われた半面、ドイツ国債や米国債は下落した。また、12日のドイツの連邦憲法裁判所はESMの批准を条件付きで同国に認める判断を下し、これを受けてリスクオンの動きが強まり、ドイツや米国の国債が売られた。

 13日のFOMCでFRBはMBSを毎月400億ドル買い入れるなどの追加緩和策を発表した。さらに超低金利政策を据え置く時期を、2015年半ばまでとして時間軸を延長させた。これについては、将来のインフレが懸念されてか米国債券は大きく下落した。しかし、その後、スペインやギリシャの債務問題への警戒感が再燃し、再びリスクオフの動きを強め、米債は反発している。

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by nihonkokusai | 2012-11-21 09:34 | 債券市場 | Comments(0)

禁じられた日銀の国債引受の例外

 日本を含めて主要先進国では中央銀行による国債引受は禁じられていることを示したが、日銀については国債引受には例外が存在している。このため、日銀はすでに国債引受を行っており、日銀による国債の直接引き受けは問題ないと論じる向きもいる。 今回はこの日銀の国債引受の例外について見て行きたいが、この部分を含めて今回、キンドルの電子書籍にて書き下ろした「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」を11月22日までキャンペーンとして無料でダウンロードできます(23日以降は定価300円での販売に)。是非、読んでみてください。

 さて、日銀が保有する国債のうち償還期限が到来したものについては、財政法第5条のただし書にある「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りではない」という規定に基づいて、特別会計の予算総則に記載され、国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借換えに応じることができる。これは国債の日銀乗り換えとも呼ばれている。これはつまり、日銀が保有している国債が満期償還を迎えると、1年間に限って現金償還を延長し、現金の代わりに短期国債を発行し、それを日銀が引き受けるというものである。

 これについては次のような解説もある。日銀による国債の買入れは、日本の経済成長に応じて日銀券の流通を増加させるために行われているとも言える。このため、買入れにより購入された日銀保有の国債が満期償還を迎えた場合に、日銀券の流通量を維持するために、再び別の国債の購入する必要がある。これは日銀券の流通量を増加させるものとはならず、物価上昇を引き起こすおそれがないことから、事務効率に資するため市場を通さずに国債発行当局から直接国債を購入する場合がある。

 そしてもうひとつ、日銀による公債の引受けは財政法により原則として禁止されているが、政府短期証券(FB)については当該条項の適用を受けないと解されており、日銀法でも日銀がFBの引受けを行うことができる旨の条項が設けられている(日本銀行法第34条第4号3)。

 ただし、FBの発行が1999年度以降、原則として市場における公募入札により発行する方式に改められ、この公募入札方式への移行後は、日銀がFBの引受けを行う場合は、政府からの要請に応じて例外的に行う臨時引受けと、日銀の業務運営上必要がある場合に自らが行う引受けに限られることになった。

 このうち、政府からの要請に応じて実施する臨時引受けには、市場における公募入札において募集残額等が生じた場合と、為替介入の実施や国庫資金繰りの予想と実績との乖離の発生などにより「予期せざる資金需要」が発生した場合に限定されている。また、臨時引受けを行った政府短期証券については、可及的速やかに償還を受ける扱いとなっている。このように臨時引受けについては、中央銀行による政府向け信用のあり方の観点も踏まえ、一時的な流動性の供給となるような明確な「歯止め」が設けられている。

 以上のように、確かに日銀による国債引受については例外がある。しかし、両者ともに財政ファイナンスを目的としたものではない。日銀保有の国債償還分の1年間に限って現金償還を延長するのも、60年償還ルールに基づいた借換債の発行増による市中への影響を軽減させるなどの目的もあるものとみられる。さらに、FBについては「予期せざる資金需要」が発生した場合などにはむしろ短期的な措置としては必要なものであろう。それぞれ、あくまで短期的な措置である。

 このような例外措置が存在しているからと言って、日銀による国債の直接引受を行っても問題ないという意見はおかしい。繰り返すが、これらは財政ファイナンスそのものを目的としているものではない。もし、日銀が財政ファイナンスを目的とした国債引受を行うとなれば、その時点で市場参加者による国債への信用が失われよう。当然ながら長期金利にもその影響は及ぶであろう。そして、その歯止めが効かないと認識されると、歴史上何度も繰り返されたような悲惨な事態が起こりうる。それだけは絶対に避けなければならない。

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by nihonkokusai | 2012-11-20 09:37 | 日銀 | Comments(4)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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