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リスクオンの流れは一時的だったのか

 東京でのIMF・世銀の年次総会が終わり、その後の市場の動きを見てみると、欧米市場でのリスクオンの動きが強まり、外為市場ではユーロがドルや円に対して上昇し、また円はドルなどに対しても下落基調となってた。また、欧米の債券市場では、スペインやイタリアの国債が買われた半面、ドイツや英国、さらに米国債が下落基調となっている。

 ここにきて何かしら新たな材料が出ているわけではない。しかし、ギリシャやスペインを巡る過度に悲観的な見方が再び後退したこと、米国の経済指標の一部に良いものが出た事に加え、発表された7-9月期の企業決算が思いの外悪くなかったことなども要因として上げられる。

 10月12日あたりからの動きを振り返ってみたい。

 12日にドラギECB総裁は会見で、債務危機克服に慎重ながら楽観論の兆候があると指摘し、これも影響したのか、12日のユーロ圏の債券市場では、域内17か国の国債利回りが揃って低下した。スペインは11月に支援要請の見通しか、との報道もあった。12日に発表された米国の消費者態度指数は予想外の上昇となり、2007年9月以来の水準に改善した。

 15日にドイツのショイブレ財務相が、ギリシャのデフォルトが起きることはないと言明し、市場ではギリシャがユーロ圏を離脱するとの観測が後退した。15日のギリシャの10年債利回りは、3月の債務再編後の最低水準となった。そして15日発表された9月の小売売上高が前月比1.1%増と市場予想を上回った。米株式市場では、シティの7~9月期決算も好感された。

 16日にドイツの連立与党幹部が、スペインが予防的な信用枠をESMに求めることにドイツは反対ではないと発言、16日発表されたドイツの10月の景気期待指数が改善した。16日の米国株式市場では、ここにきて発表された米主要企業の四半期決算が市場予想を上回り、米企業業績の悪化懸念が薄らいだことや、10月の米住宅市場指数の上昇も受け、ダウ平均は大幅続伸となった。

 17日にムーディーズはスペインの格付けを据え置くと発表。これが好感されてスペインの国債は買われ、10年債利回りは今年4月以来の水準に低下した。イタリアの国債も買われ、10年債利回りは今年3月以来の水準に。反対にドイツ国債は売られ、10年債利回りは前日の1.55%近辺から1.64%近辺に上昇した。英国債の利回りも同様に上昇に、10年債利回りは前日の1.82%から昨日は1.92%に上昇。そして米10年債利回りも、前日の1.72%近辺から1.81%近辺に大きく上昇したが、米住宅着工件数が4年ぶり水準に戻したことも、米債の売り要因となった。

 マーケットが好材料に反応しやすくなったことが、地合の改善をうかがわせる。いわゆる潮目の変化を指摘する向きもいる。これにはリスクオフに賭けて相場を張っていた向きが、反対売買を行ってきた面もあろう。過去には何度もこのような動きはあったが、一時的なものであった。ただし、外為市場でのユーロの動きを見てみると、ドルや円に対しては7月24日あたりを底に上昇基調を維持している。その動きがさらに強まったようにも見える。

 9月にECB、FRB、そして日銀はそれぞれ追加の緩和策を決定した。これが今回のリスクオンの動きの背景のひとつであると考えられる。もちろんこれらはあくまで時間を稼ぐものでしかない。しかし、それ以上にこの追加緩和も手伝い悲観的なマインドが後退してきたことも大きいのではなかろうか。

 米国では大統領選挙を控え「財政の崖」問題もある。欧州では引き続き信用問題も残り、この問題はそう簡単には解決するものではないのも確かである。日本では総選挙を控えての駆け引きも続いている。中国も思ったほどではないにしろ景気は落ち込んでいる。今後に向けての不透明感は確かに強い。しかし、そういった中にあっての今回のリスクオンの動きをどう解釈すべきか。

 たしかに19日の米国株式市場では、マイクロソフトやマクドナルドなど主力企業の四半期決算が市場予想を下回ったことなどをきっかけに、ダウ平均は前日比205ドルもの下げとなるなど、リスクオンは一時的なのかと思わせる動きとなっている。しかし、19日は、あのブラックマンデーからちょうど25年目にあたることもあり、株式市場はやや神経質になっていた可能性もあり、外為市場でのリスクオフの動きは限られた。このあたりもう少し様子を見る必要もある。

 10月18日に日本の債券先物の前後場の出来高が5兆円を超えた。5兆円を超えたのは今年3月16日以来となる。19日には3兆円に減少したが、建玉の減少幅が限られていたこともあり、18日にはあらたに何かしらのポジションが作られていた可能性もある。今後の動きを占う上で、このあたりを含めて相場の各所に気を配って見る必要もあるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2012-10-22 09:51 | 債券市場 | Comments(0)

異例といえる2か月連続の追加緩和はあるのか

 10月18日付けの日経新聞の一面には、「物価上昇0%台後半 日銀、追加緩和検討へ」との記事が掲載された。日銀は10月30日に展望レポートを発表するが、その際に2014年度の消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年からの上昇率の見通しをゼロ%台後半とする方向で検討に入ったそうである。

 前々から指摘しているが、そもそも展望レポートの数値は日銀の政策委員がそれぞれ出したものを集計してからその中央値なりが出される物であり「検討」との表現はやや違和感がある。「2014年度見通し(委員の中心値)も1%には達しない見込み」(ブルームバーグ)、「目標とする1%の物価上昇を14年度に達成するのは難しい状況」(朝日新聞)あたりの表現のほうがまだよいが、それでも政策委員全員が出す数値でもヒアリングしたわけでもないはずで、この数値がどこから湧き出たのかが、やや不思議ではある。

 各新聞社などは、これにより日銀が「追加緩和を検討」と揃って伝えたあたりを見ると、一部の観測記事というより、どこからかその意向が漏れていたとも思われる。

 これについては産経新聞が「野田佳彦首相が17日に経済対策の取りまとめを指示したことを受け」て、追加の金融緩和策を打ち出す方向で検討に入ったと伝えており、このタイミングでこのような追加緩和観測が流れたのは、政府の動きが影響していた可能性が強い。

 30日の会合までには時間があるが、すでに市場ではこれらの報道もあり追加緩和期待が織り込まれつつあるかと思う。ここにきての円安については、日銀の追加緩和期待が主因ではないと思われるが、影響を与えているのも確かであろう。

 もし日銀が30日に追加緩和を行うとなれば2か月連続となり、特に何かしらの金融ショックなどが発生したわけでもなく、景気が急激に落ち込むような事態となっているわけでもないだけに、極めて異例の事態となる。

 もし日銀が本当に30日に追加緩和を行うとなれば、基金による資産買入の増額が予想され、国債等を5兆円程度の増額、さらにリスク資産の買入増額などが予想される。また買い入れる国債の年限を延ばすなどの措置が取られる可能性もある。

 しかし、今回基金の増額を行ってもそれがどのような経路でCPIの上昇に働きかけられるのかははっきりしない。しかし、それでも多少なり円安・株高等に働きかければ、御の字ということなのであろうか。

 総選挙に向けて与野党の攻防戦が激しくなり、今回の政府の緊急経済対策も選挙を見据えたものと思われる。攻防戦の目玉というか人質が「赤字国債発行法案」となっており、完全に政争の具と化している。今回の緊急経済対策の財源となる予備費は国会の議決は必要はないにしても、本格執行には当然ながら「財源を裏付ける赤字国債発行法案の成立が欠かせない」(日経新聞)。

 赤字国債発行法案の成立を優先し選挙そのものを先延ばしたい与党に対し、自民党など野党は早期の解散総選挙を目指し、ぎりぎりの攻防戦が繰り広げられている中にあり、与野党ともに意見が一致しているのは、日銀の追加緩和への期待のようである。

 すでに日銀の当座預金残高は昨日46兆円もの規模に膨れあがっている。FRBやECBに対して金融緩和において日銀の踏み込みが足りないとの指摘もあるが、毎月のように政治的な圧力により基金による国債買入等を増額していけば、それでデフレが一気に解消するものでもない。いずれこのようなことが繰り返されると、日銀が財政ファイナンスを行っているとの見方に変化しかねないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2012-10-19 09:35 | 日銀 | Comments(0)

8月の米国債の国別保有残高

 米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES、http://www.ustreas.gov/tic/mfh.txt)によると、今年8月の日本の米国債(短期債含む)保有残高は1兆1215億ドルとなり、7月の1兆1162億ドルから増加した。

 これに対してトップの中国も1兆1536億ドルと、7月の1兆1493億円から増加した。中国による米国債保有額は今年になって頭打ちとなり、それに対して日本の保有額がじりじりと追いつこうとしているものの、逆転するまではまだ時間もかかりそうである。中国は保有する外貨準備の運用の多様化を進めたり、介入の頻度を落としているといわれるが、米国債の保有額は昨年末に一時落ち込んでからは、一定水準を維持している。

 米国債の増加額が目立つ国としてスイスがある。スイスフラン維持のための介入により、外貨準備が急ピッチで増加しており、その一部が米国債にも振り向けられているものとみられる。また、英国も7月に比べて大きく増加させていた。

 上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)。中国(China, Mainland)1153.6 、日本(Japan)1121.5、石油輸出国(Oil Exporters) 263.0、カリブ海の金融センター(Carib Bnkng Ctrs)256.9、ブラジル(Brazil)253.9、スイス(Switzerland)202.2、台湾(Taiwan)198.0、英国(United Kingdom)153.6、ロシア(Russia)153.3、ベルギー(Belgium)142.6。

 7月23日あたりにかけてドイツの2年債利回りがマイナスとなり、また10年債利回りも歴史的な低水準となり、米国債も同様の動きとなっていた。日本の長期金利も0.7%に迫った。欧州の信用不安は燻り続け、欧州の景気悪化懸念もあり、世界経済への影響も危惧され、一部の国の国債利回りが歴史的水準にまで低下したのである。

 しかし、欧州の信用問題に関して、スペインの財政も問題視されたが、市場で懸念されていたのはむしろスペイン国債の利回り上昇であった。これについては7月25日に、ECBのドラギ総裁がロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要ないかなる措置を取る用意があると表明するなどしたことが、市場の不安心理をやや後退させた。このため8月半ばあたりまで米国債は下落基調となり、米10年債利回りは1.8%台に上昇した。

 8月半ばあたりからは、ギリシャの債務に関する交渉などの行方が気になり、市場では再びリスクオフの動きが強まった。8月22日に発表された7月31日~8月1日開催の米FOMCの議事要旨によると、米経済が大幅に改善しない限り、FRBはかなり早期に追加緩和を行う可能性が示された。これを受けてQE3への期待感も出たことで、その後米国債は8月末にかけて米10年債利回りは1.5%台に低下していた。このように米債はいったん崩れたものの、その後切り返しており、その間に海外からの買いも入っていたとみられる。

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by nihonkokusai | 2012-10-18 07:57 | 国債 | Comments(0)

日本の商業銀行と中央銀行設立の背景

 銀行の設立も明治政府にとり大きな課題となった。民間からも銀行設立の願いなどが相次いでいた。日本における本格的な商業銀行は、明治維新後に誕生した第一国立銀行とされている。明治政府は大蔵少輔伊藤博文の建議に基づいて、アメリカのナショナル・バンク制度にならった発券銀行制度を導入することとなった。

 米国では1863年に国法銀行が設立され、国法銀行による銀行券発行について規定する全国通貨法が制定された。これによって南北戦争以前の複数通貨がグリーンバックと銀行券が流通する単一通貨の制度となったのである。渡米し現地視察を行っていた伊藤の建議により1872年12月に国立銀行条例が定められたのである。

 この銀行制度の導入にあたり、伊藤案に対し、イングランド銀行をモデルにした中央銀行制度を導入すべし、とした吉田清成との間で銀行論争が闘わされた。結局、井上馨の裁断によって、伊藤案が採用されることになったのである。伊藤案を起案した人の中には、銀行界の中心的な人物となる渋沢栄一もいた。

 1877年2月に西南戦争が勃発。政府はこの戦争のための費用を調達するため、大量の不換政府紙幣、不換国立銀行紙幣を発行したことで、貨幣の価値が急落し激しいインフレーションが発生した。

 当時の大蔵卿(現在の財務大臣)は大隈重信。大隈は積極財政を維持したまま、外債を発行することによって不足している銀貨を得て、それを市場に流せば安定すると主張した。ちなみに当時、対外決済に通常用いられていたのは銀貨であった。

 これに対して、現在の次官にあたる大蔵大輔の松方正義は、明治維新以来の政府による財政の膨張がインフレの根本原因であるとし、不換紙幣を回収することがインフレに対しての唯一の解決策であると主張したのである。

 松方の主張は大隈の財政政策を根幹から否定するものであり2人は対立する。このため伊藤博文が松方を内務卿に抜擢すると言う形で財政部門から切り離して、一旦は事態収拾が図られた。

 ところが、1881年の「明治14年の政変」によって大隈や、大蔵卿を務めた佐野常民らが政府から追放されると、今度は松方が大蔵卿に任命され、インフレ対策のために自らの主張した政策を実行することとなったのである。

 1881年大蔵卿に就任した松方正義は、政府紙幣や国立銀行紙幣などの不換紙幣を消却し、正貨準備を増やすなどの政策を行ってきた。そして、不換紙幣の整理をするため正貨兌換の銀行券を発行するための「中央銀行の創立」を提議した。通貨価値の安定を図るとともに、中央銀行を中核とした銀行制度を整備し、近代的な信用制度を確立することが不可欠であるとしたのである。

 日本銀行設立にあたって、そのモデルとしたのはベルギー国立銀行であった。松方は1876年に一時パリを中心に滞在しており、その際にフランス蔵相レオン・セーから、日本が発券を独占する中央銀行をもつべきこと、さらにそのモデルとしては歴史あるイングランド銀行などではなく比較的設立が新しいベルギー国立銀行が良いのではないかといった助言を得ていたのである。

 こうして1882年6月に日本銀行条例が制定され、日本の中央銀行として日本銀行が設立され、同年10月10日に業務が開始された。ちなみに日銀本館は東京駅同様に辰野金吾が設計した物であるが、建物もベルギー国立銀行を参考にしたとされている。

 松方正義は政府発行紙幣の整理を中心とする金融政策の実現に取り組み、この日本銀行の設立を経て、政府発行紙幣の全廃と兌換紙幣である日本銀行券の発行を行う。国立銀行が発行した紙幣も、1883年の国立銀行条例の改正により兌換銀行券である日本銀行券に置きかえられた。

 松方正義は長らく大蔵卿を勤めたのち、内閣制度の発足に伴い1885年に伊藤内閣での初代大蔵大臣となる。その後、1891年に第4代内閣総理大臣に就任した。

「マネーの日本史」http://p.booklog.jp/book/58552より


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by nihonkokusai | 2012-10-17 09:17 | 中央銀行 | Comments(0)

鉄道の日と日本国債

 10月14日は鉄道の日だそうである。昔はたしか鉄道記念日と呼ばれていたような気がするが、日本で初めて新橋と横浜間を結んだ日本初の鉄道が開業したのが、明治5年9月12日(新暦1872年10月14日)であった。それから140年が経過したが、この日本初の鉄道開通には日本初の国債が絡んでいたことをご存じであろうか。以下、拙著「マネーの日本史」よりの引用である。

 岩倉具視、大隈重信、伊藤博文などの明治政府の関係者は鉄道建設の必要性を提唱し、「日本人によって鉄道建設が可能である」としたイギリス駐日大使パークスの意見もあり、鉄道建設に向けての企画が進められた。

 しかし、国内で資金調達をしようとしても、明治政府は財政的基盤といったものもまだまだ固まっていなかった。金銀貨による幣制の統一を目指していたものの、貨幣素材の不足や造幣能力の不十分さもあって、金銀貨の鋳造すらなかなか進まなかったぐらいである。明治政府は資金の調達のために、金銀貨に代わる支払手段として、政府紙幣や国立銀行券といった不換紙幣の発行に依存せざるを得ない状態となっていた。

 商人への借入といった手段も考えられたが、当時の商人たちにもそういった余裕はなかつた。そこでパークスの紹介もあり、来日していた英国人資産家ハラチオ・ネルソン・レイを通じた私的な借入の契約を結ぶことにした。しかし、レイによる資金調達が困難となったことから、ヘンリー・シュローダー商会を通じた公募債として調達されることになる。

 公債収入金の取り扱いについての日本政府の代理店としてオリエンタル銀行が指定され、ロンドン証券取引所で公募されることとなり、1870年4月23日に九分利付きで外債100万ポンドの日本国債が発行された。

 つまり日本で最初に発行された国債は、鉄道敷設を目的とした九分利付外貨国債(年率9%の外貨建て国債)をロンドンにおいてポンド建てで発行されたものであった。この起債は結果として成功し、目論見書に記載されたとおりに1882年に無事償還された。

 ちなみにオリエンタル銀行はアジアにおける貿易金融や資本取引かかわる業務を行っていた当時最大手の英系の国際銀行であったが1884年に経営破綻している。

 日本初の国債は外債であったが、国内債として発行されたのは藩債の支払いのために発行されたものとされている。明治政府は旧幕藩体制下において累積した債務の処理に対して1871年の「廃藩置県」以降本格的に取り組み、その結果として藩債の一部が公債というかたちで支払われ、これが国内で起債された最初の国債になったのである。

「マネーの日本史」http://p.booklog.jp/book/58552

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by nihonkokusai | 2012-10-16 09:08 | 国債 | Comments(0)

『マネーの日本史』、日本のマネーの歴史ぐらい知っておこうよ

 Puboo(パブー)さんより、私の電子本「マネーの日本史」を発売開始いたしました。副題は「日本のマネーの歴史ぐらい知っておこうよ」、金融経済を語るのならばまずは、その歴史ぐらいは目を通しておきましょう。金融関係者や学生の方に限らず、広く一般の方にもぜひ読んでいただけるとうれしいです。

 電子本となりますので、パソコン、iPadやネクサス7などのタブレット端末、またiPhoneやアンドロイドのスマートフォンなどでもお読みいただけます。価格は400円です。ダウンロードは下記のサイトからお願い致します。手続き等もPuboo(パブー)さんのサイトをご確認いただければと思います。参考までに目次を掲載いたしました。よろしくお願いいたします。

「マネーの日本史」
http://p.booklog.jp/book/58552

第1章 古代から中世にかけてのマネーの歴史

1.1 最初の問題、日本最初の貨幣は何
1.2 外貨を使って経済発展させたのは誰
1.3 為替取引が日本で開始されたのはいつ
1.4 平安時代に日本に銀行があったというのは本当か
1.5 貨幣を旗印にした超有名な人物とは誰

第2章 近世(江戸時代)のマネーの歴史

2.1 徳川家康の金融・経済対策を述べよ
2.2 世界で二番目に古く紙幣を発行していた国とは
2.3 荻原重秀のデフレ対策は参考になるか
2.4 暴れん坊将軍自らの金融政策とは
2.5 江戸時代の銀行について140字以内で述べよ
2.6 世界の先物市場発祥の地は日本
2.7 大名の「お断り」とは何か
2.8 日本初の額面を明示した計数銀貨を作った田沼意次
2.9 何故、開国したら金が海外に流出してしまったのか
2.10 江戸時代にあった日本国債のルーツとは

第3章 近代のマネーの歴史

3.1 日本国債は何を目的に発行されたのか
3.2 円という名前をつけたのは誰?
3.3 国立銀行は国立の銀行ではない
3.4 海援隊が日本最初の株式会社という噂
3.5 西南戦争が日銀設立を促したって本当か
3.6 紙や布に押した手の形を手形と言う
3.7 早速、起きた恐慌の原因は何か
3.8 金本位制って何だろう
3.9 裏面が白紙の高額紙幣が発行された理由
3.10 戦時色強まる中で日銀法公布
3.11 高橋是清が凶弾に倒れた理由

第4章 戦後のマネーの歴史

4.1 戦後のインフレ歯止めのために何をした
4.2 三丁目の夕日の時代
4.3 戦後初めて国債を発行したのは何故か
4.4 ニクソン・ショックやオイル・ショックを知っているか
4.5 ちょっとだけ国債のお話
4.6 君はプラザ合意を知っているか

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by nihonkokusai | 2012-10-14 10:19 | 金融の歴史 | Comments(0)

安倍自民党総裁は日銀総裁人事にも言及

 自民党の安倍晋三総裁は10月11日の記者会見で、2008年4月に白川氏が就任して以降の日銀の取り組みへの評価について、「量的な緩和、思い切った緩和を行っていくべきだろうと私は思っている。ということは、今までの対応は不十分ではないかと考えている」と語ったそうである(ブルームバーグ)。

 さらに白川総裁の任期は来年4月となるが(再任の可能性はある)、それまでに衆院選が行われ、安倍氏自らが首相になった場合の次期総裁人事について、「わが党が政権を取っていればの話だが、当然、政府と協調してデフレ脱却のために思い切った大胆な金融緩和を行ってもらえる方」が望ましいと述べた(ブルームバーグ)。

 この会見内容が伝わった際、安倍自民党総裁が政権奪還後に白川総裁を更迭すると示唆したと一時報じられたようだが、これはどうやら誤報であったようである。ちなみに1998年4月1日に施行された新日銀法では、内閣による日銀総裁の解任権はなくなっており、更迭や解任そのものはできない。

 日銀法の第二十五条には、「日本銀行の役員(理事を除く。)は、第二十三条第六項後段に規定する場合又は次の各号のいずれかに該当する場合を除くほか、在任中、その意に反して解任されることがない。」とある。つまり、破産手続開始の決定を受けたとき、この法律の規定により処罰されたとき、禁錮以上の刑に処せられたとき、心身の故障のため職務を執行することができないと委員会(監事にあっては、委員会及び内閣)により認められたときを除いて解任はできない。

 白川日銀総裁の任期は2013年4月8日、その前に山口副総裁と西村副総裁の任期は2013年3月19日となっている。もし仮に安倍総裁が首相となった場合には、白川総裁の再任の可能性はなくなるとともに、たとえば山口副総裁や西村副総裁の総裁昇格といった可能性もなくなるとみられる。そうなれば新たな総裁・副総裁はすべて「思い切った緩和を行っていくべき」人物に置き換わるということになる可能性がある。

 白川総裁の再任については、新日銀法の施行以来の総裁は速水氏、福井氏ともに再任していなかったことで、そもそもその可能性は薄いとみていた。実際にこれだけの政治的な圧力も加わる中、白川総裁としても再任はあまり考えていないのではないかとも思われる。

 その新たな日銀総裁人事を、そもそも誰が行うのかすら現状はわからない。総選挙の時期も不透明ながら、その結果も不透明である。しかし、民主党でも前原氏のように積極的な金融緩和を求める人達も多く、それがすでに日銀審議委員の人事にも影響を与えている。

 たとえ民主党政権が続いていたとしても、いわゆる日銀の執行部(総裁・副総裁)は、現在の執行部とは180度変わった人事になる可能性がある。積極的な金融政策は良いが、手段を間違えるとたいへんな事態も発生しかねない。特に財政ファイナンスを意識させるような政策を取ることになれば、日銀に対する信認そのものが崩れかねない。

 我々の使っている紙幣の表面にある赤い印章は、「日銀総裁」の印章である。「総裁之印」と篆書という字体で書かれているが、日銀券というお札は、我々が安心して使えるように日銀総裁がその価値を保証しているものでもある。それだけ重要な責任を負っているのが日銀総裁であるだけに、その人事についてはかなり慎重な配慮が必要であることは言うまでもない。

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by nihonkokusai | 2012-10-13 09:18 | 日銀 | Comments(1)

議事要旨に見る9月の日銀の追加緩和の理由

 10月11日に日銀金融政策決定会合議事要旨(9月18日・19日分)が発表された。この会合で日銀は全員一致で追加の緩和策を決定した。

 その内容としては、資産買入等の基金を70兆円程度から80兆円程度に10兆円程度増額する。増額の対象となるのは短期国債5兆円程度と長期国債5兆円程度。そして、長期国債の買入を確実に行うため、買入における下限金利(現在、年0.1%)を撤廃し、社債の買入についても同様とするとした。

 この追加緩和は、市場の一部に期待感はあったものの、追加緩和があるとすれば展望レポートの発表にタイミングを合わせるため10月との見方も強かっただけに、サプライズとなった。

 ただし、19日に安住財務相(当時)は閣議後の会見で、同日まで行われる日銀の金融政策決定会合について、米国の量的緩和第3弾(QE3)はじめ先週以来の動きも含め、日本が何をすべきか、今すべきかどうか議論があると思うとの考えを示していた。

 今回はこの議事要旨を元にして、何故、このタイミングで追加緩和を行ったのか。その理由を探ってみたい。

 議事要旨は議事録ほど分量は多くないが、それでもそれなりの分量があるため、ここでは政策委員の検討を中心に、8月8日、9日の決定会合議事要旨と見比べながら確認してみたい。

 9月の会合の議事要旨には「景気・物価の先行きを巡るリスク」に関するところで、「金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要であるとの見解で一致した。」との表記がある。また、「複数の委員は、為替円高・株安が企業・家計マインドの悪化を通じて設備投資や個人消費にマイナスの影響を 及ぼさないか、注視していきたいと述べた」とある。

 8月の議事要旨の同様箇所には、円高・株安への懸念についてはほとんど触れていないように思われる。参考までに8月の会合時と9月の会合時の為替の居所を確認するとドル円はあまり変化ないが、ユーロ円については9月のほうが円安になっていた。日経平均も9月の方が若干高かった。これを見る限り違和感があるが、9月はECBに続きFRBもQE3と呼ばれた追加緩和を行っていたことで、日銀がそれによる円高への懸念を強めていた可能性はある。

 当面の金融政策運営に関する委員会の検討のところで、「何人かの委員は、足もとの景気が想定対比下振れていると現時点ではっきりしている以上、展望レポートでの点検を待つまでもなく、今回のタイミングで政策対応すべきであると述べた。」とある。このあたりを見る限り、展望レポートでの景気の見通しの下方修正を前提に、いずれ追加緩和は行う必要性があり、それは市場が予想していた展望レポートの発表のタイミングを待つまでもないとの認識が示されていた。しかし、何故、このタイミングであったのか。

 「このうちのある委員は、政策対応が遅れた場合には信認を低下させるリスクがあり、今回のタイミングで政策対応を行うことにより、日本銀行の政策運営スタンスを市場にはっきり示すことが必要であると述べた。 」

 この「ある委員」がキーマンのように思われる。もしこれが総裁でなければ、議長である総裁はこの委員の意見を元に追加緩和を行った格好になる。もちろん山口副総裁の可能性とかはあるが、このある委員は白川総裁と見て良いのではなかろうか。

 それでは、「政策対応が遅れた場合には信認を低下させるリスク」とは何か。「遅れた」、「今回のタイミングで」との表現に、安住財務相(当時)の「米国の量的緩和第3弾はじめ先週以来の動きも含め」との発言も加味すれば、FRBの追加緩和に歩調を合わせる格好で、さらにそれによる為替の動きも意識した上で、追加緩和を行ったとも読める。もしこのタイミングで追加緩和を行わなければ、それをきっかけに円高株安が進行しかねないとの読みもあったのかもしれない。

 そして「一人の委員は、為替相場への働きかけなどインフレ期待を高める一段の工夫も必要ではないかとの見方を示した。」とある。8月の議事要旨にも「ある委員は、包括的な金融緩和政策の実施から2年近く経過した現時点でデフレを脱却できていないことを踏 まえると、為替相場への働きかけなど、インフレ期待を高める一段の工夫が必要ではないかとの認識を示した。」とあり、同一の委員の発言かと思われる。これに関しては、たとえば為替相場の働きかけを目的とした外債購入となれば、それは日銀の仕事ではないことで、「一段の工夫」という微妙な表現になったのかと思われる。

 「9月中旬に決定されたFRBによるMBS買入れについて、ある委員は、予め上限や期限を決めずに買入れる点が注目されているが、日本銀行でも資産買入等の基金の上限や期限を累次にわたって拡大・延長してきており、当初の予定をはるかに上回る大規模かつ長期の緩和政策を行っていると述べた。」(9月18日・19日分金融政策決定会合議事要旨)

 FRBのQE3がかなり意識されていたことが、この発言内容からも伺える。


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by nihonkokusai | 2012-10-12 09:29 | 日銀 | Comments(0)

IMFによる日本国債を大量保有する銀行への懸念

 10月9日にIMF・世銀の年次総会が都内で開幕した。本会議は12日に開催するが、その前にいろいろな会合もスタートするようである。この週の東京はまさに世界の金融のセンター街と化する。

 本会議を前にIMFは「世界経済の見通し」や「財政モニター」、「国際金融安定性報告書(GFSR)」などを発表している(IMFの日本語サイトにも要旨等がアップされている)。

 このうち「世界経済の見通し」において、今年の世界経済成長率の見通しを 3.3%と下方修正した。先進国・地域の今年の成長率をは1.3%と予測、また、新興市場および途上国・地域の成長率を5.3%に下方修正した。地域別見通しでは、米国の成長率は、今年は平均で 2.2%となる見込み。そしてユーロ圏の実質GDP は 2012年、全体でマイナスの0.4%の見込みである。日本の2012年の成長率は2.2%の見込みで、震災後の復興が徐々に終了するため、成長ペースは著しく減速するとしている。10月9日の欧米市場では、このIMFの経済見通しを受けて株式市場は下落し、外為市場ではユーロが下落した。

 日本でも、もちろん世界経済の減速による国内経済経済への影響も気になるところであるが、国際金融安定性報告書(GFSR)の中の指摘も念のため注意すべきかと思われる。IMFの日本語サイトのGFSRの要旨には以下の指摘がある。

 「ユーロ圏の危機の進行により、より安全と見なされる国、特に日米への資金の流入が起きている。このため国債金利は歴史的な低水準となっているが、第二章で指摘するように日米とも財政面の大きな課題を抱えている。米国については迫りつつある「財政の崖」と債務残高の法定上限到達、及びそれらに伴う不確実性が当面の大きなリスクである。中期的には、持続不可能な債務動向となるリスクが最大の問題である。日本については巨額の財政赤字と未曾有の債務残高が問題であり、銀行部門と財政部門の相互依存のリスクが高まっている。」

 米国の「財政の崖」とは、今年末に所得税などに対する大型減税策、いわゆるブッシュ減税が期限切れとなることに加え、2011年にアメリカの債務上限が問題視された際に2013年1月からの強制的な予算削減が決まっており、この減税の期限切れと歳出の自動削減による急激な財政引き締め状態に陥ることを示す。この影響は米GDPの約4%にも達するとみられており、米議会がこの急激な財政引き締めを緩和しなければ、米景気そのものが崖っぷち状態に陥る懸念が出ているのである。

 これに対して、日本の財政に関する問題点として銀行部門と財政部門の相互依存のリスクが指摘されている。何を今更という面はあるものの、日本の銀行などが日本国債を大量に保有している現状は日本国債に取り需給面ではもちろんプラス要因であるが、その銀行にとり資産の24%を占める国債が仮に価格が大きく下落した際、銀行などにかなりの損失をもたらすおそれがあるとIMFは懸念を示している。

 2012年6月末時点での日本国債の最大の保有者は、銀行など民間預金取扱機関であり、金額で272兆172億円、全体に占める割合は35.2%となっている。

 「いずれの国についても、中期的な財政健全化の道筋を付け、これを遅滞なく実施に移すことが必要である。ここ数年の経験から学ぶべきことは、市場が信用リスクを問題にし始めるかなり前から不均衡是正に向けた対策をとらなければならないということである。」

 日本国債には現在、海外からも資金が流入している。これは積極的に日本国債を購入しているというより、比較的安全資産が限られる中にあり、ユーロ圏の信用不安などから円が買われ、それにより短期債中心に日本国債に資金が流入している。また、国内銀行も融資の伸びも限定的なことから、どうしても安全資産として国債の購入を続けざるを得ない。ここには日銀の金融緩和政策による影響もある。

 いまのところは日本国債に対して市場が信用リスクを問題にし始めるような兆しはない。だからといって今後も絶対に安心だと保証があるわけでもない。リーマン・ショックや欧州の信用不安は、何かのきっかけに「ありえない」と思われていたようなことが起こることを示している。

 日本国債についても思いがけないきっかけにより、急激に信用不安が生じる可能性は全くないとは言えない。日本の債務残高等の大きさ、政府による財政再建の遅れ等々、潜在的なリスクは存在している。たとえば、デフレ対策と称して日銀による財政ファイナンスとみなされるような政策が実施されれば、それが信用リスクを顕在化させるひとつの要因になりうることも認識しておく必要がある。IMFは信用リスクが顕在化する前に手を打つべしと指摘している。日本でも当然ながら中期的な財政健全化の道筋を付けることが必要である。

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by nihonkokusai | 2012-10-11 07:57 | 国債 | Comments(0)

IMF・世銀年次総会に中国の財務相と中央銀行総裁もドタキャン

 報道によると、東京で開催中のIMF・世銀年次総会に出席予定だった中国の謝旭人財政相と中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁が来日を取りやめたそうである。詳しい理由は明らかにされていないが、日本の沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)国有化に対する対抗措置とみられる(毎日新聞)。IMF・世銀年次総会には金融当局者ばかりでなく、世界の金融機関の幹部らも出席するが、中国工商銀行、中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行の四大銀行首脳は既に欠席が決定していた。しかし、中国の財務相や中央銀行総裁は予定通り出席かとみられていたことで、いわばこのタイミングでドタキャンとなる。

 IMFのスポークスマンによると、周総裁については、「所用のため、東京での講演をキャンセルするかもしれない」との連絡が2日前にあり、その後、代理として易綱副総裁が総会と講演に出席するそうである。また、謝財政相の代理には、朱光耀財政次官が来日するとか(毎日新聞)。世界188か国の財務相・中銀総裁が一堂に会する総会にも関わらず、トップが病気等の理由でなく、多忙を理由に欠席するとは極めて異例である。

 謝財政相と周総裁は当初、総会に出席し、周総裁は最終日の14日に都内で講演を行う予定になっていたことで、まさにドタキャンといえる。もちろんその背景には領土問題があり、政治上の理由での欠席ではあろうか、いくら日本での開催であるからといって、自らも大きく関わるIMF・世銀年次総会に欠席することは、決して良い印象は与えないはずである。ここまで持ち込むのかとの印象であり、この中国の姿勢には世界各国から批判や懸念がむしろ強まるのではなかろうか。

初の電子書籍を販売開始しました。題名は「マネーの歴史(世界史編)」です。古代から現代にかけてのマネーの歴史を探ります。お金や金利、さらに銀行や国債などの仕組みがどのようにして生まれて広がっていったのか。また。お金を融通し合うという金融というシステムができあがって、世界の経済社会にどのような影響を与えたのか、古代から2012年に至るまで、世界史の中から探っていくものです。きっと皆さんが知らなかったことがたくさんあるはずです。
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by nihonkokusai | 2012-10-10 14:17 | 中央銀行 | Comments(0)
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