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特例公債法案未成立に対する市場参加者からの危惧の声

 10月19日に臨時の国債市場特別参加者会合が開催された。今回のテーマは「特例公債法案成立遅延の市場への影響について」であり、まずこの件について以下の説明が財務省からあった(以下、国債市場特別参加者会合(第46回)議事要旨より引用)。

「仮に、特例公債法案が成立しない状態が続く場合、・・・具体的には、12月4日の10年債入札から支障が生じ、その後は、特例公債法案が成立するまでの間、利付国債の発行は休止せざるを得ない。一方、発行が休止となった場合、特例公債法案が成立した後は、休止されていた間の発行額を取り戻す必要があるため、毎月の利付国債の市中発行額を現在よりも増額する必要が生じる。」

 今回の臨時の会合では、市場参加者の代表ともいえる国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)が、あらためて財務省から特例公債法案成立遅延の市場への影響に関して最新の情報を得ることがひとつの目的であり、財務省としてはその影響や利付国債の発行を休止した際の市場への影響を少しでも緩和する方策についてプライマリー・ディーラーから意見を聞くことが目的となっていたとみられる。

 そして、今回は異例ともいえる財務大臣の出席もあり、マスコミの関心度も高かった。国債の休債という事態が何を招くのか、現場の担当者達の意見を聞くことにより、事の重要性をあらためて市場関係者とともにそれ以外の人達(特に政治家の方々)にも、広く認識してもらうことも結果として大きな目的になったとみられる。

 出席者、つまりプライマリー・ディーラーから出された意見等をみると、かなりの危機感を抱いていることがわかる。

「金融市場に対して極めて大きな悪影響を及ぼし得るものであり、待ったなしで打開する必要がある。」

「12月債の発行が不可能な状況となれば、これまで築いてきた市場との信頼関係が基礎から崩れ落ちる。」

「今後市場の動揺や国の債務管理政策に対する信用失墜も想定される中、法案の成否に伴う混乱は、日本国債の将来と本邦財政にとって致命的なダメージを及ぼしかねない。」

「仮に一度発行が停止すると、この信頼関係が崩れ、発行再開以降の消化に多大な困難が伴うことであろう。」

「国債の発行停止は政府の支出及びサービスの停止から国民生活に大きな影響を及ぼすだけではなく、発行コストの増大を通じて国民にとって恐らく兆円単位の負担増につながると申し上げたい。」

「歳出の抑制が国民の生活や経済活動に直結する政府の機能、例えば、医療や介護、外交、安全保障、災害復興等にまで広がると、経済への打撃、国債の大幅な信用度の低下といったリスクも懸念される。」

「財政・国債市場の安定と国民生活の安心が密接につながっていることに、市場関係者としてあらためて気づかされる事象であり、このようなリスクを顕在化させることはあってはならない。」

「特例公債法案が政治的な駆け引きの材料に使われるようなことで不安が募り、財政運営に対する政府の管理能力に一度マーケットが疑問を持つようになると、金融市場における信認の低下、国債に対する投資家の投資スタンスの慎重化、債務管理の不安定化、といった事態悪化の連鎖的反応という負のスパイラルが到来するリスクも完全には排除できなくなる。」

「これまで財務省や市場参加者が、当会合や投資家懇、在り方懇などを通じて膨大な国債発行を円滑に消化してきており、海外投資家からもこの点を信用されて今の低位安定な金利を維持する市場形成が可能となっていた。それが今回の事態を通じて、崩壊する危機があることについて強い危機感を持っている。」

 これらの意見については、まさに同意である。これまでこつこつと築き上げてきた政府と市場との「信頼関係」が国債価格の安定化の基になっている。日本国債の価格が安定しているのは、もちろん買い手が存在し需給が安定していることともに、このような信頼関係が重要な要因となっている。ちなみに欧州の信用不安の発端となった2010年のギリシャの国債価格の急落は、まさにこの政府と市場との信頼関係が失われたためであった。

 この信頼関係に亀裂が生じると、事態悪化の連鎖的反応も起こりかねないと、国債を売買している現場の関係者がコメントしているのである。このあたり、特例公債法案を政争の具としている政治家の方々には真摯に受け止めていただき、なるべく早く成立させ、市場の不安感を払拭してもらいたい。


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by nihonkokusai | 2012-10-31 09:35 | 国債 | Comments(0)

日銀の予想通りの追加策と予想外の共同文書

 日銀は31日の金融政策決定会合で、追加緩和策を決定した。内容は資産買入等基金の規模を11兆円増額、内訳は長期国債が5兆円、短期国債が5兆円、そしてリスク資産が1兆円程度。リスク資産はETFが5000億円、REITが100億円、社債が3000億円、コマーシャルペーパーが1000億円程度となる。

 さらに貸し出し増加を支援する無制限の資金供給の枠組み創設の検討を執行部に指示、この新しい貸出枠と既存の成長基盤強化の資金供給を、貸出支援基金と名付けるそうである。

 そして、日銀総裁と財務相・経済財政相との連名によるデフレ脱却に向けた取組についてを公表。政府日銀が一体となってデフレ脱却を目指すという、何となくアコードを意識したかのような内容となっていた。

 ここで今回の決定会合で気になったことをメモしておきたい。

 まず決定会合の内容が事前に流れていたとみられること。事前に資産買入等基金の10兆円程度プラスリスク資産の増額は報じられていた。今回は政府による経済対策と歩調を合わせた格好となっており、この報道は日銀関係者というよりも政府関係者から漏れた可能性が高いと思われる。

 今回の決定会合はたいへん時間がかかり、結局、公表文が発表されたのは14時46分となっていた。通常の2日間の会合ではないため、多少時間が掛かることもあるがここまで時間が押すことは珍しい。その理由としては共同文書の作成等に時間が費やされた可能性がある(これについては展望レポートの景気・物価見通しを巡り政策委員内の激論が影響したとの見方も、31日日経)。

 その前に貸出支援基金についてであるが、これは既存の成長基盤強化の資金供給の進化バージョンであり、それほど新鮮みのあるものではないが、これを付け加えてきた理由のひとつが、「無制限」という用語を使いたかったからであろうと推測される。ECBやFRBの追加緩和でも、無制限との表現が意識されており、日銀としてもどこかにこの言葉を加えたかったものと思われる。

 そして今回の追加緩和の大きなポイントとなりそうなのが、政府と日銀の共同文書である。政府と日銀が一体となってデフレ脱却に向けて最大限の努力を行うとしているが、「一体」となってとの表現がアコードを意識させる。

 今後の物価動向については、「デフレ脱却等経済状況検討会議」において定期的に報告するとの表現もある。政治家の一部からはイングランド方式のインフレターゲットを求める声も出ていたが、そのイングランド銀行ではインフレ目標値から1ポイント以上乖離した際に総裁が、金融政策委員会の議長として財務相あて公開書簡を作成しなければならないとされている。

 ただし、「政府は、デフレからの脱却のためには、適切なマクロ経済政策運営に加え、デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠であると認識している」との表現あたりは、日銀の意向も反映されているように思われる。共同文書が一方的に政府から押しつけられたものというよりも、少しでも効果を出すため日銀も協力せざるを得なかったものとみられ、その意味でもこの文章を加えてきたように思われる。

 ちなみに共同文書の大臣の署名は、なぜか前原大臣の方が、城島財務相よりも上になっていたのも気になったところではある。まあ、これについては前原大臣が出席していたということも影響していたのかもしれないが(これに関して実際には、建制順によるものとのご指摘をいただきました。この場合は内閣府、財務省の順となるようです)。

 今回の追加緩和については、ほぼ織り込み済みであったものの、プラスアルファを仕掛けてきた。これをどのように評価すべきか。今回の追加緩和には、政府というか民主党も選挙を意識しての動きも感じられる。さらに日銀は今回政府とともに市場、さらに市場の中でも海外の反応を意識しての追加緩和策を決定したように思われる(今日の米国はそれどころではなかったが)。個人的にはこのプラスアルファの部分がかなり気になる。共同文書は単なる文書であり拘束力があるものではないが、これは日銀が今年2月の物価の目途の設定の加え、また一歩踏み込んできたものと受け取りたい。このあたり、市場もあまり無視すべきものではないように思われる。

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by nihonkokusai | 2012-10-30 17:49 | 日銀 | Comments(0)

世界の債券市場が100兆ドルの規模に、ここ10年間で2倍以上に拡大

 英国の独立系シンクタンクのTheCityUKが発表した「BOND MARKETS 2012」によると、世界の債券市場(Includes bonds, notes and money market instruments)の規模が2012年3月現在で100兆ドル近く(99兆8590億ドル)になったようである(元データはBIS)。

 このうち国内債(Domestic)が約7割(70兆1480億ドル)を占め、国際市場で発行された債券(International)が3割(29兆7110億円)を占めている。ちなみに国内債(Domestic)は居住者により自国通貨建てで発行された債券のことであり、国際市場(International)で発行された債券とは、非居住者により発行された債券、もしくは居住者により発行された債券で自国通貨建で非居住者向けに発行された債券、もしくは外貨建ての債券を示す。

 国別の国内債(Domestic)の市場規模を見てみると2012年3月現在、トップは米国で合計26兆3910億ドルとなり、その内訳としては財務省証券(国債)を主体とする公共債が13兆2470億ドル、金融債(MBSなど)9兆7040億ドル、社債3430億ドルとなっている。米国債は財務省証券(国債)と並んでMBSの市場が非常に大きいのも特徴である。

 第2位が日本で合計14兆510億ドル。このうち国債を主体とする公共債が12兆1430億ドル、金融債が1兆470億ドル、社債が8610億ドルとなっている。公共債の規模だけみれば米国と肩を並べている(2011年は日本が米国を抜いていた)。

 3位以下の国は合計と公共債だけで確認すると、3位はフランスで3兆5740億ドル(公共債1兆8740億ドル)、4位が中国3兆4070億ドル(1兆4850億ドル)、5位がイタリアで2兆9730億ドル(2兆560億ドル)、6位がドイツで2兆6210億ドル(1兆8380億ドル)、7位英国1兆8230億ドル(1兆5240億ドル)、8位カナダ1兆6220億ドル(1兆1340億ドル)、9位スペイン1兆5740億ドル(7500億ドル)、その他12兆1120億ドル(6兆5320億ドル)、合計で70兆1480億ドル(42兆5930億ドル)となっている。

 ユーロ圏の国でみると、フランスがトップであるが、公共債だけでみるとイタリアが最も多い。また、財政への懸念も強いスペインは9位となっている。

 国内債(Domestic)と国際市場で発行された債券(International)の割合を見てみると(BISとIMFのデータからTheCityUKが集計)、日本では99%がDomesticとなっているが、英国は32%にすぎない。米国は79%、イタリアが73%、フランスが63%、ドイツが54%となっている。日本の国内債の割合が突出していることがこれからも確認できる。

 このように世界の債券市場規模は年々膨れあがっていることがわかる。残高で2002年が42兆3910億ドルであったものが、2012年は99兆8590億ドルと10年間で2倍以上となっている。リーマン・ショックや欧州の信用不安により、国債を中心とした債券発行量も増加し、債券市場規模はますます拡大してきている。その中にあって欧州の財政不安も国債発行が影響し、その対策としての中央銀行による国債などの債券購入なども、これだけ膨らんでいる債券市場が背景に存在しているということであろう。


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by nihonkokusai | 2012-10-30 09:31 | 債券市場 | Comments(0)

騙されないための個人向け債券の基礎知識

 先日の日経新聞によると、東京都新宿区の82歳の男性医師が架空の社債購入を持ちかけられ、現金9360万円をだまし取られていたそうである。2011年4月に男性宅に「株式会社アドバンスエレメント」という架空会社の社債販売の案内パンフレットが届き、その後、関連会社の社員を名乗る男から「その社債は新宿区の個人しか買えない。1千万円で購入すれば1500万円で買い取る人がいる」と持ちかけられたそうである。また、以前には東京都江戸川区の17歳の男子高校生が、架空の社債購入を持ち掛けるなどして2千万円をだまし取るという詐欺事件も発生したが、こにきて未公開株などとともに個人向けの社債を巡る詐欺事件が結構発生している。

 ふたつの事件とも騙されたのは高齢者であり、オレオレ詐欺の社債版のようなものではあるが、特に後者の事件は高校生が犯人であったのに驚かされた。高校生が「社債」という存在そのものを知っていたのかと関心してしまったが、もちろん関心している場合ではない。

 私も一度、「病院債」を買わないかとの電話セールスを受けたことがある。さすがにすぐに危ないと思い電話を切ってしまったが、勉強のため(?)話ぐらい聞いておけば良かったとあとから反省した。このような文章を書くにも良い事例となったはず。この件についてはそういうわけで、具体的な詐欺の方法はわからないが、これは国民生活センターのサイトによると、勧誘時に「医療機関債」のほか「病院債」、「医療債」、「病院への投資」などという言葉が用いられている詐欺のようである。「医療機関債は国債と同じで、元本割れすることのない安全な商品である」「人工透析ができる医療機関にお金を出せば、高い利息が付く」などと、預貯金や国債と同じであるといった、事実と異なる説明や、高利率であることだけを強調するなどの問題勧誘が見受けられるそうである(国民生活センター、http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20110825_1.html)。

 このような詐欺被害を未然に防ぐには、少なくとも勝手に送られたパンフレットや、見ず知らずの人からの電話セールスについては詐欺であると思っていた方が良い。

 たしかに一般の人が債券を購入するというのは、それほどポピュラーではない。個人向け国債あたりであれば、テレビなどでも宣伝しており、それなりに認知度が高いかもしれないが、それでも購入経験のある人はそれほど多くはないと思われる。このため今回はこのような詐欺に遭わないためにも、債券について基礎的なものを知ってもらおうと、まとめてみた。

 債券は株式などと同様の有価証券である。株と違うところは、満期がありその間、半年ごとに利子が支払われ、額面金額が償還時に戻ってくるというものである。有価証券なので途中で売却もできるが、それには買い手が必要になる。また預貯金と違うところは、お金を銀行に貸すというか預けるのではなく、証券を買うことで買い付けの価格があり、購入金額と償還金額はかならずしも一致しない。利子については比較的預貯金よりも高めに設定されている。

 債券の中で最も多く発行されているのが国債である。国債には個人向けの国債があり、そのうち個人向け国債(復興国債)は財務省が一定期間過ぎれば買い取ってくれるため流動性リスクや価格変動リスクがない。3年固定、5年固定、10年変動の3タイプある。また、個人向けには新窓販国債という国債もあるが、こちらは利率は個人向け国債よりも高いが、途中売却の際には金融機関を通じ市場で売却し換金するため、価格変動リスクがある点に注意が必要となる。

 地方公共団体が当該地域に居住している個人や営業拠点等がある法人などを対象に発行する債券が、個人向け地方債で、正式には住民参加型市場公募地方債であるが、ミニ公募地方債とも呼ばれている。こちらは国債より比較的利子も高いことや地域貢献も意識されてか人気が高い。ミニ公募地方債については総務省や自治体のサイトを参照してほしい。ただし、地域貢献などと称するミニ公募地方債らしき詐欺まがいの債券もあるため要注意。私も電話勧誘で勧められた病院債(医療機関債)も電話ではそのそのようなうたい文句であった。

 個人向け社債については、とにかく自分が知っている会社の債券であることがまず重要。見ず知らずの会社の社債投資は避けるべきか。もちろん格付け等を確認することも大事だが、国債と同様に安全などとアピールされていたとすればちょっと疑った方が良い。国債並に安全な社債は余程名のしれた大手企業が発行するようなものに限られる。また名の知れた大手企業だから絶対安全というわけでもないところにも注意は必要か。

 社債の中でも銀行の発行する個人向け劣後債については、どちらかといえば富裕層向けのものであり、しっかり証券会社などで説明を聞くことをお勧めする。もちろん他の個人向け債券もしっかりした証券会社で購入するものであれば、詐欺まがいのものはないはずである。劣後債については今回説明は省略する。

 個人向け外貨建て債券、たとえばブラジル、トルコ、ロシア、オーストラリアなどの通貨建ての債券については、高利回りで発行体が国際機関などなので格付けが高く人気となっているものもある。発行体の高格付けが必要条件だが、たぶんこれは満たされているはず。そして利率についても単純に日本の債券より高いからと納得するのではなく、現地の利率などもチェックして比較も必要となる。高利回りはそれだけリスクが高いとみておくことも大事である。そして問題は為替リスクであり、その通貨の動向をほとんどチェックできないような人は手を出すべきでない。まして円安・円高とは何か、そもそも為替は何で動くのかを理解してから望むべきである。私も90歳近い叔父に円高とは何だと聞かれたことがある。どうやら海外通貨建て商品に手を出してしまったようだが、知識なしにお金を投じるべきではない。高利率に惑わされず、その対象通貨が、今後余程のことがない限り下落はないとの自信があるのであれば、購入すべきものである。

 個人向けの仕組み債については、一般の社債に比べ、高格付け・高利回りであることが多く、大変魅力的に見える。この仕組み債は何かしらの条件付きで利子が高めに設定されているものである。しかし、極端に有利な金融商品というものはない。仕組み債がなぜ高格付け・高利回りを達成できるかというと、仕組み債に組み込まれたデリバティブにある。そのリスクを完全に理解することは個人には難しい上に、大きな損失を被る危険性があり、それを理解した上であるならば良いが、良くわからなければ手を出すべきではない。

 そしてこれは個人向け国債以外の個人向けの債券に言えることだが、途中売却には注意すべきである。債券なので途中売却は可能だが、売却した時の市場環境次第では買った値段よりも低い値段でしか売れないということも多々ある。販売した証券会社等で買い取ってくれるが、流動性のない小口の債券であるため証券会社の買い取る価格は低くなり、そこには手数料相当分も含まれる。個人向け債券は満期まで持つことが大前提となる。

 また、個人向けの債券はいつでも買えるわけではない。人気のある社債は一瞬で売切れてしまうこともあり、日ごろから情報を仕入れておくことが重要となる。個人向け国債については財務省のサイトで、ミニ公募地方債については総務省や自治体のサイトを参照。個人向け社債や外貨建て債券は各証券会社のサイトや窓口で確認する必要がある。

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by nihonkokusai | 2012-10-28 12:07 | 投資 | Comments(0)

来週の市場動向を見る上での注目点

 米国のダウ平均は、ブラックマンデーからちょうど25年目にあたる10月19日に205ドルもの下げとなり、22日には243ドルの下げとなった。これだけの調整が入ると日本株も大きく下落してもおかしくないところではあったが、この間の日経平均は9000円近辺で非常に底堅い動きを見せていた。この底堅さの背景には、外為市場での円安の動きがあった。

 10月11日あたりからじりじりと円安ドル高が進行し、22日に80円台に乗せてきた。ユーロ円も22日に104円台をつけた。ユーロドルの動きを見ると9月の半ばあたりからほぼ横ばいの動きになっていることからもわかるように、今回は円安の動きである。

 この円安の背景にあるのが、日銀による追加緩和期待であるのは明らかながら、その円安の目先の起点となっていたのが10月11日~12日あたりとなっいたこともチェックしておく必要がある。つまりこの時期に東京でIMF・世銀の年次総会が開催されていた。世界の金融関係者が東京に集まっており、日本がそれなりに注目されていた期間である。このタイミングで円安の動きになったのは、IMFのラガルド専務理事が「日銀はさらなる金融政策に踏み切る準備ができると確信している」と述べたことも影響しているかもしれないが、日銀の追加緩和観測だけによるものかどうかも検証しておく必要もあるのではなかろうか。

 円安の背景のひとつには、欧州の信用不安に対する注目度がやや後退したことも挙げられよう。東京でIMF・世銀の年次総会も比較的波乱無く終わったが、欧州の今後を巡って激論が交わされたような気配もない。楽観視するつもりはないが、ここにきてのイタリアやスペインの長期金利の動向を見ても、危機感がかなり後退してきたことが伺える。特にイタリアについては、18日の国債入札で、過去最大規模となる180億ユーロ相当発行していた。1回の発行額としては欧州で過去最大となる。国内の個人投資家含めての需要が強かったことを見ても、かなり不安感が払拭されつつある様子もうかがえる。

 10月30日に日銀は追加緩和を決定するであろうが、よくよく考えると10兆円もの基金を増額して何をしたいのかといえば、本来は長期金利の低下を促すのが目的となるはず。ところが、今回の日銀の追加緩和は結果として長期金利の上昇を促すのが目的であるかのように思われる。つまり、追加緩和により円安株高となれば(材料出尽くしで反対に動く可能性は残るが)、それは債券の売り要因と長期金利の上昇を促す可能性がある。今回はリスク資産の買入等も検討されるとみられるが、基金の増額よりもこちらの方が目的とされる効果は大きいように感じる。

 とにかく来週は10月30日の金融政策決定会合で何が決定され、それにより市場がどのように動きのかがひとつの焦点となる。もちろん30日に発表される展望レポートの中身についてもチェックしておく必要がある。

 そして臨時国会が29日に招集されるようであるが、債券市場にとりもうひとつの注目材料となっている特例公債発行法案の行方も気掛かり材料となる。26日の臨時の国債市場特別参加者会合の内容にも注目したいが、市場参加者も仮に12月の国債入札が休債となれば、先行きへの不安感を強めることも予想される。それ以上に国民生活そのものへの影響もあることで、さすがに自民党も特例公債発行法案については成立させる方向にもっていくのではないかと期待を込めて予想している。法案成立が具体化すれば、これによる先行き不透明感が払拭され、売られていた超長期債に押し目買いが入りそうである。ちなみに11月1日には10年国債入札が予定されているが、投資家需要はそれなりに見込めるとみられる。

 そして、日本株への影響は限定的であったとはいえ、米国株式市場の動向も注意が必要になる。円安効果で出遅れていた日本株が戻してきたとしても、欧米の株式市場が下落傾向となってしまえば、日本株の上値も抑えられる。ここにきての米株安の背景になっている米企業の業績不振は、それでなくても尖閣諸島を巡る日中関係の悪化により自動車関連企業を中心に日本企業の業績にも影響が出ているだけに、無視できないものとなる。そして米国市場動向を見る上で、2日に発表される米雇用統計も注意しておく必要がある。


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by nihonkokusai | 2012-10-27 08:35 | 債券市場 | Comments(0)

日銀は10月30日の決定会合で何を決定するのか

 10月30日の日銀による金融政策決定会合において、追加の緩和策が決定されるとの観測が強まっている。今回は、本当に日銀は追加緩和を行うのか、もしその場合には何を行うのかを検証してみたい。

 その前に今回追加緩和期待が強まった背景を確認してみると、ひとつには10月30日に発表される展望レポートにおいて、2014年度の消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年比上昇率の見通しがゼロ%台後半となり、目途としている1%には届かないのではないかとの観測があった。また、政府による経済対策に歩調合わせる必要から追加緩和を行うのではないかとの見方もあった。さらにIMFのラガルド専務理事が「日銀はさらなる金融政策に踏み切る準備ができると確信している」と述べたことも影響している可能性もある。

 10月の展望レポートを受けての追加緩和という想定は以前からあった。しかし、それを踏まえて日銀は9月に前倒しで追加緩和を行っていた。これは10月のIMF・世銀総会を意識しての可能性もあると個人的には考えていたが、IMFはさらなる追加緩和を求めるようなコメントを出してきた。

 緩和策を考える前に、10月30日に本当に追加緩和があるかどうかも考えておく必要がある。これについて、これだけ追加緩和観測が流れている中にあって現状維持とするのであれば、1999年9月の決定会合以来になるとの指摘があった。

 1999年9月の決定会合で日銀に対して、米国に協調介入を促すべく、追加の金融緩和策を取るようにとのプレッシャーが政府サイドからかけられていた。マスコミも日銀が追加の金融政策をとることは既成事実であるかのような報道をした。しかし、このプレッシャーを払いのけて、日銀は現状維持を決断。この際には速水総裁(当時)の辞任説も広がっていたのである。

 今回はさすがに現状維持で意地を張るような状況ではない。しかし、30日に追加緩和を決定するとなれば2か月連続となり、極めて異例となることも確かである。23日、24日の米FOMCも現状維持となったこともあり、日銀としては9月に追加緩和を行ったことで、今回追加緩和を行うことは想定はしていなかったのではなかろうか。

 しかし、追加緩和への期待は強まり、外為市場や株式市場ではそれを織り込んでの動きになっている。米株の大幅な下落にもかかわらず、日経平均は9000円近辺で底堅い動きをしていることや、ドル円が80円台をつけたことの要因のひとつは、この日銀の追加緩和観測であったと考えられる。こうなると何もしないという選択肢は取りづらいか。

 それではもし追加緩和を行うとすれば何をしてくるのか。まず想定されるのは、9月と同様に資産買入基金の増額である。9月の増額の対象は短期国債5兆円程度、長期国債5兆円程度であった。今回も5兆もしくは10兆円の増額の可能性がある。今朝の日経新聞によれば10兆円との観測のようである。

 今回は株や為替の動きも意識してリスク資産の増額を行う可能性もある。今年末て購入枠を使い切ることで来年に向けた枠をあらたに設定する可能性がある。9月の決定会合でも一部の委員からリスク性資産の買い入れ増額を求めるような発言があった。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)、社債・CP等の買入をあらたに増額するという選択肢もありうる。

 また日銀による外債購入を求める声も出ている。これについてはいずれにせよ為替操作が目的であることが明らかである以上、そうなれば財務省の所管となろう。また、相手国との交渉も必要となるため、これは中央銀行というより政府の仕事と思われる。そもそも政府が為替介入を行えば結果としてもれなく外債も付いてくるし、介入に必要な資金手当てのために発行するFBは日銀が基金オペで市場から購入している。ただし、相手国との交渉としては、米国との交渉はむずかしそうだが、相手がユーロ圏となると話が違ってくる。日本政府は既に多額のEFSF債を購入済みであり、ESM債についても購入も検討している。ESM債をもし日銀が購入するとなれば米債より抵抗は少ないように思われる。いずれにせよ30日に外債購入を検討するようなことはなさそうである。

 これ以外としては、基金により買い入れる国債の年限延長、もしくは期限を設けないことも考えられる。可能性としてはいずれ3年から5年あたりまでの期限延長はありうるが、期限を無制限にすると輪番オペと変わりがなくなる。ECBのあらたな国債買入も期間を1~3年としている。ドラギ総裁の発言からは財政ファイナンスと意識されないための配慮とみられる。すでに日銀も輪番オペでの日銀券ルールは実質的には守られていないとの見方はあるが、財政ファイナンスと意識されそうなことは極力避けるとみられる。このため、基金により買い入れる国債の年限等については現状維持とするのではなかろうか。

 そしてもうひとつ超過準備への付利撤廃もしくは引き下げという選択肢もある。9月に日銀は国債買入の下限金利を撤廃している。そして日銀の準備預金はすでに40兆円台に積み上がっている。ここで付利を廃止して、この積み上がった準備預金を少しでも運用のための資金として活用されるとの連想が働けば、それなりのアナウンスメント効果もありうるかもしれない。ただし、それを行ってしまうと短期金融市場が量的緩和の際のように機能不全に陥ることも想定される。過去の白川総裁は発言内容からもこの可能性は薄いように思われる。


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by nihonkokusai | 2012-10-26 09:41 | 日銀 | Comments(0)

日本国債には9月も幅広い年限に投資家の買いが入る

 10月22日に日本証券業協会は9月の公社債投資家別売買高を発表した。これによると短期国債を除くベースで、都銀は1兆2779億円、信託銀行は1兆3795億円、農林系金融機関は6256億円、信用金庫は3419億円の買い越しに。ただし、地銀は3200億円の売り越しとなっていた。

 生保は1兆837億円の買い越し、海外投資家も1兆1416億円の買い越しとなり、9月は地銀と第二地銀、個人とその他を除く投資主体が買い越しとなっていた。

 国債の投資家別売買高でみると、都銀は超長期国債を2959億円越していたが、長期国債を1兆4219億円、中期国債を1546億円買い越していた。信託銀行は超長期を2317億円、長期を4405億円、中期を6879億円のそれぞれ買い越し、また農林系金融機関も超長期を4077億円、長期を1148億円、中期を359億円のそれぞれ買い越しに。地銀は長期を4531億円売り越していた。

 生保は超長期債を8217億円、長期を1270億円、中期を2061億円の買い越し、さらに外国人も超長期債を775億円、長期を1596億円、中期を8493億円の買い越しに。

 超長期債は生保や農林系金融機関、長期は都銀や信託、そして中期は信託や外国人主体に買い越しとなるなど期間別にみても、中期債から超長期債にかけて幅広く投資家からの買いが入っていたことが伺える。

 債券先物の日足チャートを見ると、9月は8月ほどではないか、それなりに動きはあった。8月も中旬までは売りが優勢となり、その後切り返したが、9月も同様の動きをしていた。

 6日のECB政策理事会では償還期間1~3年の国債を無制限で買い入れることを決定した。これを受けイタリアやスペインなどの国債が買われた半面、ドイツ国債や米国債は下落し、米10年債利回りは1.68%近辺に上昇した。欧米の株式市場は軒並み上昇し、ダウ平均はリーマン・ショック後の高値を更新。債券先物は再び144円を割り込む。13日のFOMCでFRBはMBSを毎月400億ドル買い入れるなどの追加緩和策を発表。ただし、将来のインフレが懸念されてか14日の米国債券は大きく下落し、18日に10年債利回りは0.825%に上昇した。

 9月19日の日銀金融政策決定会合では資産買入等の基金を70兆円程度から80兆円程度に10兆円程度増額するという追加の緩和策を全員一致で決定。ややサプライズとも言える追加緩和で債券先物は143円90銭まで買い戻された。その後、円高の動きが強まったこともあり、24日に10年債利回りは0.8%を割り込み、25日に債券先物は9月6日以来の144円台を回復した。

 ちなみに9月の短期債の売買高をみると、外国人が13兆2681億円の買い越しとなり、8月の12兆3960億円、7月の14兆1707億円、6月の11兆4585億円、5月の11兆6562億円と、外国人は昨年10月以降、10兆円を超える短期債の買い越しを継続させている。

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by nihonkokusai | 2012-10-25 17:02 | 国債 | Comments(0)

特例公債法案成立の遅れによる市場への影響

 26日に財務省で臨時の国債市場特別参加者会合が開催されることが22日に発表された。テーマは「特例公債法案成立遅延の市場への影響について」である。

 現在、特例公債法案は完全に政争の具とされ成立の目途は立っていない。すでに戦後初めての予算の執行抑制が実施されているが、このまま特例公債法案が成立しなければ11月末にほぼ財源が底をつく計算となっている。そうなれば、さらに厳しい抑制策を実行する必要があり行政サービースにも大きな支障が出る懸念がある。それとともに注意しなければならないものとして国債市場への影響がある。

 もしこのまま特例公債法案が成立しなければ、12月以降に何が起こるのかをあらためて検証してみたい。9月14日の国債市場特別参加者会合では財務省から、いまだ成立していない特例公債法に関する以下の説明があった。

 「現時点では、平成24年度における特例債の発行根拠となる特例公債法案が成立していないため、特例債の発行を後ろ倒ししているが、利付債の入札発行を平準的に行っていくには、法案が11月までに成立する必要があり、法案提出部局である主計局とともに、早期成立の必要性について引き続き訴えてまいりたい。」(財務省のサイト、国債市場特別参加者会合(第45回)議事要旨より)

 これは11月末までに法案が成立しなければ、12月以降の国債発行に支障が出る可能性があることを示唆している。つまり11月末までに特例公債法が成立しなければ、12月入札予定の国債が休債に追い込まれる可能性が高い。これについては10月22日にNHKでも次のように報じている。

 「財務省によりますと、このまま法案の成立が遅れた場合、来月末にも、市場に向けて発行する国債がなくなり、入札ができない異例の事態になるということです。」

 12月4日には10年国債の入札が予定されている。もしこれが休債となれば、10年債としては1987年10月以来の休債となるようである。また、2008年10月にリーマン・ショックの影響により、海外投資家のニーズが後退したことなどから、物価連動国債(10年物)の入札が中止された。その後、15年変動利付国債の入札中止もあった。とにかく国債の休債というのは異例の事態であることは間違いない。

 国債発行ができなくなり休債となれば、需給逼迫で国債は買われるとの見方があるようだが、いずれその未発行分は発行しなければならないものであり、単純に国債買いとはならないはずである。むしろ、日本の国債発行に支障が出ることそのものが、懸念視されかねない。

 ちなみにこの特例公債法案が成立しなくても、日本の場合には国債の利払い・償還がすぐに滞ることはない。つまりデフォルト事由が発生することはない。これは国債の利払い費と償還費は、「国債整理基金特別会計」にプールされた資金で支払われるためである。

 一般会計において発行された国債などは、一般会計からの繰入資金(これが国債費と呼ばれるものである)を財源として国債整理基金特別会計から利払いが行われる。 さらに一般会計から本特別会計への定率繰入や、「特別会計に関する法律」の規定により発行される借換債の発行収入金等を償還財源として、60年償還ルールに従って減債され、国債整理基金特別会計から償還が行われている(財務省のサイト、国債整理基金特別会計より)。

 今年度の国債費が入らずとも、国債の利払い費と償還費はすでに特別会計でプールされた資金で手当できることで、今年度の国債の利払い費や償還費がすぐに払えないという事態には陥らない。つまり特例公債法が成立しないことで、日本ではデフォルトが生じることはない。

 だから特例公債法は早期成立させなくてもかまわない、というわけではもちろんない。今後の予算の執行にさらなる支障が出ることは間違いなく、債券市場をはじめとして金融市場の混乱要因になりかねないため、早期に成立させる必要があるのは当然である。

 26日の臨時のPD会合(国債市場特別参加者会合)では、特例公債法案成立の遅れによる休債となった際の債券市場への影響等について対応を協議すると思われる。市場は先行き不透明なものに対してはかなり警戒する。警戒心の強まりから市場参加者が神経質となり、その結果市場が不安定化し、日本国債への信認への警戒を強めるようなことにもなりかねない。このような不安定要因は、米国の「財政の崖」懸念のように景気にも影響を与えかねず、国民生活そのものにも支障が出る懸念があるとともに、国債市場にも影響が出る懸念があるため、早期に払拭すべきものであろう。

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by nihonkokusai | 2012-10-24 10:02 | 国債 | Comments(2)

イタリアで個人を対象にした国債が人気に

 イタリア政府は18日の国債入札で、過去最大規模となる180億ユーロ(1兆8600億円)相当を発行した。1回の発行額としては欧州で過去最大となり、米国債に次ぐ規模となるそうである。

 このイタリア国債は、ユーロ圏ではなくイタリアのインフレ率に連動した期間4年の債券である。年間利回りは国内インフレ率(たばこを除くイタリアの消費者物価指数)プラス2.55ポイントとされている。そして投資家は満期まで保有していれば、特別「忠誠プレミアム」を得られるそうである。

 1.9兆円規模と行っても、日本では一回あたりの発行額としては普通というか少ないぐらい(2年債2.7兆円、5年債2.5兆円、10年債2.3兆円等々)なので、どうもこの巨額の発行額に慣れてしまっていてか、今回の凄さにピンとこなかった。しかし、このイタリアの国債入札はいろいろな意味で興味深いものとなっていた。たとえば、発行額が過去最大であることに加え、これが個人投資家への直接発行であり、その意味でも欧州でも過去最大となっていたことである。

 この国債は基本的に小規模投資家を対象にしたものであり、イタリアの国内個人投資家向けのものであった。ただし、ウォールストリートジャーナル(WSJ)によると、イタリア財務省国債管理局の関係者の話として、購入のほとんどは機関投資家によるものだったとの指摘もあったようだ。ただし、個人投資家の需要についても「相当なものだった」としており、国内からかなりの需要があったことは間違いない。ちなみに日本での個人向け国債(復興国債)は個人以外は購入できないが、このイタリアの国内個人投資家を対象にした国債は機関投資家も購入できるようである。

 興味深い点のもうひとつは、今回の入札に個人投資家がインターネットで直接国債をイタリアの財務省から購入できる仕組みが初めて使われたことにある。このシステムは財務省とイタリア証券取引所が構築したものだとか。イタリア証取は欧州最大の債券の電子取引所を運営しているそうである(WSJ)。

 つまり、米国のトレジャリー・ダイレクトのイタリア版である。米国の個人向け国債である貯蓄国債も財務省から直接購入ができる仕組み(トレジャリー・ダイレクト)が設けられている。米国民であれば(入力の際に社会保障番号が必要)財務省からネットを通じて個人向けの米国債を購入できる。

 日本で個人向け国債が発行される際にも、日本版のトレジャリー・ダイレクト構想も出たようだが、日本ではインターネットを使った財務省からの直販システムについては決済のために使われる日銀との問題や、トレジャリー・ダイレクトで使われている社会保障制度の番号を利用した本人確認のためのシステムが必要になるため、実現性はいまのところ薄いようである。

 イタリア銀行(中央銀行)によると、小規模投資家(個人投資家)が持つ資産は同国政府債務の4倍以上に当たる8兆ユーロ強に上るとか(WSJ)。この資金が動き出したとも言えそうで、それだけイタリアに対する国内からの信認が戻ってきた現れとも言える。欧州の債務危機がこれで収まってきたと言うわけではないものの、そのひとつの兆候とも言えるものではなかろうか。

 ちなみに日本の個人向け国債については、直近10月発行分の販売額は3034億円に止まるなど低迷しているが、これは決して日本国債への個人投資家の信認が薄れているためとかではない。あくまで金利の低さが要因である。金利だけでなく安全性等も意識すれば、もう少し日本でも個人向け国債の需要が伸びてもおかしくはないと思うのだが。

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by nihonkokusai | 2012-10-23 09:10 | 国債 | Comments(0)

株式市場から債券市場への資金シフトという表現はおかしい

 いわゆるリスクオフと呼ばれる動きの場合に、リスク資産から安全資産への資金シフトが起きたと論じられることがある。反対にリスクオンの動きが起きた際には今度は安全資産からリスク資産に資金シフトが起きたとされることがある。しかし、そんなことが現実に起きるであろうか。

 たとえば機関投資家の場合には、年度ベースもしくは半期ベースなりで、ある程度の運用方針が決められている。株式の組み入れ比率、国債を主体とした債券の組み入れ比率、さらに外債への組み入れ比率等が事前に決まっている。これを相場環境が予想と異なってきたので、途中で大きく組み替えるということは考えづらい。

 海外投資家の影響力の大きい日本の株式市場で日本株を売却し、日本国債を購入するような海外投資家が果たしているであろうか。もちろんある程度足の早い投資家であれば、そのようなシフトが皆無ではないだろうが、それは金額から言えば微々たるものであろう。

 また、ヘッジファンドが株先売り債券買いを行ったなどと観測されることもあるが、これはリスクオフに対して株と債券のポジションを傾けただけであり、裁定取引でも何でもない。まして資金がシフトしているわけでもない。

 もちろんリスクオフの動きの際に、株式を売却しその資金を一時的に短期の国債等に振り向けている可能性はあるが、これはシフトというよりあくまで一時的な待避資金であるに過ぎない。

 リスクオフの際の株式市場ではどうしても売り手が目立つことになる。売られるとストップロス等も発生し、売りが売りを呼ぶような状況となるが、その売却資金をたとえば10年国債にいきなり振り向ける投資家などがいるとは思えない。

 反対に長期債投資を行っていた投資家が、株が上がりそうだから10年債を売ってその資金で株式を購入するということがあれば、それはどのような投資家であろうか。もちろん個人であれば、保有していた個人向け国債を売却して、勧められるままに株式を購入といったこともあるかもしれないが、それが資金シフトを起こすほどの金額になることも考えづらい。

 長いスパンで見ると機関投資家を含めて、資金シフトが起きていたということはありえるかと思う、つまり毎年の運用方針の変化により、結果としてそれが資金シフトに繋がることは考えられる。しかし、それは短期間に起こるものではない。何気なく聞くと、そうかなと思いがちなことも、よくよく考えるとおかしいことはままある。株式市場から債券市場への資金シフトという表現はやはりおかしいと思う。

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by nihonkokusai | 2012-10-22 11:29 | 債券市場 | Comments(3)
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