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デフレの意味、日銀の白川総裁の講演より

 日銀の白川総裁は6日の講演において、デフレの問題について指摘している。デフレの問題については、まさに日銀が矢面に立たされている問題であり、どのような分析をしているのか興味深い。

 総裁は日銀が毎四半期行っている「生活意識に関するアンケート調査」の結果から、物価の上昇については8割強の方が「どちらかと言えば困ったことだ」と回答したのに対し、物価の下落については、「どちらかというと好ましい」という回答が三分の一程度を占めている点を指摘した。

 これに対し、新聞などでは、国民の声としてデフレからの脱却が必要であるという記事を多く目にするとして、デフレとは「物価の継続的な下落」を意味することを考えると、このふたつの事実は矛盾するが、このことはどのように解釈すべきかと問うている。

 これについては総裁が指摘しているように、「デフレ」という言葉が様々な意味で使われているためであることは確かであり、ある意味、都合良く使われているものであるとも言える。

 「ある人はデフレを物価の継続的な下落という意味で使う一方、別の人は景気の悪いことという意味で使い、また別の人は賃金が下がっていることという意味で使っています。資産価格の下落をデフレという言葉で表現している人もいます。」

 政治家あたりから日銀に求められるデフレ解消とは、景気や雇用面を意識した面が強いように思われる。あたりまえだが、物価だけ上昇させても、政治家にとってはデフレ解消とは認識しないであろう。物価だけを上げたければ、公共料金の軒並みな値上げなどの強攻策でも可能であるはず。むろんそのようなことは選挙を意識すればできるものではないであろうが。

 また、資産価格の下落については、まさにその資産を保持している資産家や企業、さらに市場関係者などがデフレとして強く認識しているものではないかと思う。

 「実質成長率が停滞したままで単に物価だけ上がっても名目成長率は上昇しますが、それは、各種のコストが上昇し、そのコスト転嫁から物価が上昇するような場合であり、国民の生活水準は向上しません。」

 「多くの方々が望んでいるデフレからの脱却とは、単に物価さえ上がればよいということではなくて、企業収益や雇用・所得の増加など、より良い経済状態の実現を指しているものと理解されます。エコノミストの言葉に翻訳すると、実質成長率の上昇です。」

 実質成長率が高まれば、需給ギャップは縮小し、物価も上昇し、デフレは解消に向かう。問題はどうすれば実質成長率が高まるかということになる。これについて総裁は、「成長力強化の取り組みと金融面からの後押しの両方が必要だ」としている。

 そこで大きな問題としているのが、円高の問題である。日銀に限らず、円高の経済・物価への影響については、日本経済にはマイナスの影響を及ぼす可能性の方をより強く意識する必要があることは確かであろう。

 これに対して総裁は、何よりの為替レート変動対策は競争力の強い商品・サービスの開発としている。ただし、それがなかなか難しいのが現在の日本企業姿でもある。特に以前は競争力の優れていた電機メーカーのここにきての凋落ぶりを見ても、競争力の強い商品を生み出すことや、その競争力を維持することの難しさを示している。

 「やや長い目でみた場合、グローバル化した経済で最終的に鍵を握る競争力とは、差別化された商品、付加価値の高い商品であると思います。」と総裁は指摘しているが、これにはたとえばアップル社の製品などが典型的なものとなろう。これには長年培われてきた技術とともに、時代の流れを読むセンスなども求められよう。このあたり特に家電などハイテクセクターなどが昔に比べて、日本はやや後退してしまっているような感じも受ける。ここを梃子入れするには、何が必要なのか。それには日銀の金融緩和策というよりも、その技術力を向上させ、センスを磨く下地作りがまず必要になるようにも思われる。

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by nihonkokusai | 2012-09-10 09:46 | 日銀 | Comments(0)

ECBの金融政策のよる新国債買い切りプログラム(OMTs)の是非

 9月6日のECB理事会で、市場から国債を買い取る新たな対策を正式に決定した。ECBが発表したプレスリリースによると、それは「Outright Monetary Transactions」と呼ぶようである。アウトライト取引とは単純に売りもしくは買いを行うことであり、今回のECBの場合は、国債の単純な買い切りを示すことになろう。

 これまでのECBが行っていた流通市場における国債買入はSMP(証券市場プログラム、Securities Markets Program)と呼ばれていたが、これとは別な国債買入であることを示すため呼び名も変えたものと思われる。

 これまでのSMPは2010年5月のギリシャなど欧米諸国の財政不安にともなう市場の動揺に対する欧州連合(EU)による最大7500億ユーロ規模のユーロ圏支援基金と証券買い取りプログラムと呼応して取られた措置である。

 これにより、ECBが国債の流通市場に介入することになったが、1999年のユーロ発足以来、欧州の中央銀行が国債の買入を実施するのは初めてであった。この際のECBによる国債の買入目的は、日銀のように市場への資金供給が目的ではなく、あくまで国債市場の安定化、市場機能の正常化が目的とされた。金融政策への影響を避けるために、国債買入で放出した資金を回収する手段を講じた。

 SMPは2010年5月に実施されたあと一時中断し、2011年8月に再開されたが、2012年3月を最後に再び中断されていた。2010年5月はギリシャ国債を購入し、2011年からはスペインとイタリア国債を購入したとみられるが、ECBはこの国債買入について規模やその対象について明らかにしていない。2012年4月以降、購入を見送ったのはドイツ連銀による猛反発が要因とされた。

 今回のECBによる新国債買い切りプログラム(OMTs)には、SMPと異なり明確な条件が付けられている。国債買入の対象となる国は、まずユーロ圏諸国に対しEFSF・ESMによる支援を要請し、その支援を受けるための財政再建等に取り組む必要がある。つまりECBによる国債買入を実施するには、対象となる国がEFSF・ESMによる支援を受けることが前提となる。SMPにより買入が開始されても、条件が巡視されなければ一時的に停止もありうる。

 買入の対象は期間1~3年の国債が中心となる。買い入れ規模に上限は設けない。つまり無制限の買入となるが、買入には条件が付いている点にも注意する必要がある。

 買い入れた債券については、民間債権者を含むその他債権者と同等の扱いとなる(優先債権者待遇を適用しない)。国債買入で放出した資金は回収される(不胎化)。

 買い取った債券の保有残高と時価は毎週公表し、保有債券の平均償還期間と国別内訳も毎月公表される。これもSMPと大きく異なる点である。

 OMTsの導入によりSMPは中止する。ただし、購入済みの証券の非不胎化措置は継続され、またSMPにより買い入れた債券については満期まで保有する。

 今回のOMTsの決定によりECBは新たな領域に踏み込んだとの見方がある。ドラギ総裁は、「今回の対策は、ユーロの将来に対する投資家の根拠のない懸念からくる債券市場のゆがみに対処することができる」と述べた。

 これに対して今回の決定に一人反対したドイツ連銀のバイトマン総裁は、ECBの国債買入は金融政策が財政政策に隷属する恐れがあり、ECBが最終的に多大なリスクを各国の国民に再分配するという危険性もはらんでいるとしている。

 ECBによる国債買い入れは紙幣増刷による政府への財政ファイナンスに等しいと懸念を示すバイトマン総裁の意見も正論であろう。しかし、ユーロ危機の封じ込めには、かなり思い切った手段が必要となる。マーケットの不安をまず払拭させない限り、危機が繰り返し訪れる。つまりマーケットでの南欧国債の売りに歯止めを掛けることで、危機を緩和しうる。ただし、この政策はバイトマン総裁の主張するように副作用も伴うものであり、また対象国の財政健全化がせなされなければ一時的な時間稼ぎとしかならない。

 今回の新国債買い切りプログラムの是非については、すぐには解答は出ないと思う。今後もドイツ連銀総裁はこの買入については反対の立場を貫こう。米国のQEを含め、中央銀行による国債買入に対する評価については、もう少し時間も必要になりそうである。

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by nihonkokusai | 2012-09-09 11:36 | 中央銀行 | Comments(0)

マーケット・サバイバル術、確証バイアスを利用せよ

 以前に「マーケット・サバイバル」という本で以下のようなことを書いた(現在、「マーケット・サバイバル」の内容は同じパン・ローリング社の「日本国債先物入門 [改訂版] (現代の錬金術師シリーズ)」に収められている)。

 「相場に臨むにあたって、ポジションを持っている状態と持っていない状態でも相場に対する見方が異なることも注意しなければならない。いったんポジションを持つと自分のポジションを正当化する情報ばかりに目がいくようになってしまいがちである。これでは普段の冷静な見方ができなくなる恐れがある。」

 これは自分のディーラー時代の経験を元に書いたものであったが、このような現象は社会心理学や認知心理学で「確証バイアス」と呼ばれることをあとから知った。確証バイアスとは自分が聞きたくない情報を無視もしくは軽視し、自分の先入観を裏付ける情報を重要視してしまう現象を指す。確証バイアスによって人は信念を獲得し、その信念を確証するものを探そうとする一方、信念に反することがらを探すのではなく黙殺したり、あるいは低い価値しか与えなかったりもするとされる。

 相場にあたって、この確証バイアスによる弊害を取り除く必要もあり、その方法として、マーケット・サバイバルでは下記のような指摘をした。

 「自分の相場勘が当たり、評価益が膨らんでいる状態では、利食いゾーンを模索するため、ある程度の冷静さは保てる。だが、問題は評価損が膨らんでいる場合であろう。ここで必要なのは損切り、つまりロスカットルールを設けることである。」

 相場に関わる人にとり、当たり前のことであり目新しい方法ではないが、自分の信念により利益が出れば良いが、それにより損失が膨らむばかりとなる懸念もあり、それには機械的にポジションを切り、損失を確定してしまうとともに、冷静さを取り戻すことが重要となる。

 確証バイアスは個人の相場観では取り除かねばならないが、全体の相場に影響していることも多く、これはむしろ利用する必要もある。個々の市場参加者ばかりでなく、市場そのものが「確証バイアス」を持っている場合である。現在でいえば、FRBがQE3を行うであろう、といったバイアスである。これはもちろんバーナンキFRB議長の発言などを通じてマーケットが勝手に予想したものであるが、バーナンキ議長がそのようなバイアスを仕向けたとも言える。このため例えば、米雇用統計で非農業雇用者数が予想を下回ると、そのバイアスが強まることになる。

 相場そのものに、このようなバイアスが掛かることは多い。これはマスコミも影響していると思うが、ある特定の材料にバイアスが掛かるとそれに関する関係者の発言や、それに関わる経済指標の動向ばかり重視され、これが短期的な相場変動の要因になり、本来、他の要因にも影響を受けるはずのものが無視されるなり、軽視される。これも人間が形成する相場である以上、致し方ない部分はあるが、確証バイアスが掛かっているであろうことは常に認識すべきかと思う。確証バイアスゆえに相場がおかしい、と見えるときがあろうが、これも相場であり、そこで儲けを得るには、そのバイアスをうまく理由することも重要になってくると思われる。


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by nihonkokusai | 2012-09-08 09:53 | 投資 | Comments(0)

ECBの新国債買入は何故、アウトライト取引と呼ぶのか

 9月6日のECB理事会で、市場から国債を買い取る新たな対策名は英語で「Outright Monetary Transactions」とあった。これまでのECBによる国債買入は「Securities Markets Program」(証券市場プログラム)となっていた。証券市場と言っても主に国債市場のことで、そこでの買入のプログラムであった。これに対して今回は、「アウトライト取引」と称した理由は何であろうか。金融市場でアウトライト取引とは、すでに日本語化されているものであり、売戻条件を付さない買入もしくは買戻条件を付さない売却を示す。つまり単純な市場からの買い、もしくは売りを示す。

 何故、アウトライトという言葉を使ったのかについては、プライマリー(発行)市場からではなくセカンダリー(流通)市場から国債を購入するということを意識して使ったのではないかとの指摘があった。

 現在の中央銀行の多くは国債の直接引受は禁じられている。たとえば米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。以前、指摘したようにまた、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。

 欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっている。つまり、ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。当然ながら欧州中央銀行(ECB)も国債の直接引受は禁じられている。

 しかし、今回のOMTsに対してただ一人反対したドイツ連銀のバイトマン総裁は、今回の買い入れは紙幣増刷による政府への財政ファイナンスに等しいと考えており、ECBが最終的に多大なリスクを各国の国民に再分配するという危険性もはらんでいるとしている(ロイター)。

 今回のECBによる新たな国債買入の目的は、あくまで国債市場の安定化、市場機能の正常化であり、政府への財政ファイナンスではない。

 また、日銀やFRB、BOEの国債買入は、市場に対して資金を供給することが大きな目的である。ここには長期金利の低下を促す目的もあるが、これは市場金利の跳ね上がりを抑えるものではなく、少しでも金利を下げて景気や物価に働きかけようとするものである。

 ところがECBの国債買入は、財政不安に伴う金利上昇の抑制であり、金利上昇により資金調達が困難になることを避けるのが目的となる。つまり、財政ファイナンスそのものではないが、それを助けるための政策であることは確かであり、バイトマン総裁の指摘はある意味正しい。

 ドラギ総裁を初めとしてECB理事たちが、今回のプログラムの名称を「Outright Monetary Transactions」と呼ぶことにしたのは、バイトマン総裁の反対を意識し、財政ファイナンスに近い物ではあるものの、これはあくまで市中から買い入れることで、禁じられた国債引受ではないことを示すのが目的であるかと思われる。この名称を見ても、かなり今回の国債買入については神経を注いでいたように思われる。

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by nihonkokusai | 2012-09-07 17:55 | 国債 | Comments(0)

予算の執行抑制策で財源が底をつく時期は11月末に

 赤字国債の発行に必要な特例公債法案の今国会成立は絶望的となったことから、今年度予算の執行に必要な財源が足りなくなるおそれがあるとして、政府は執行抑制策を7日の閣議で決定する。予算の執行抑制が実施されれば、戦後初めての異例の事態となる。

 この2012年度政府予算の執行抑制策で、地方交付税交付金の支給延期などにより、財源が底をつく時期が当初の想定より約1か月遅い11月末になるようである。

 地方交付税交付金の16.4兆円は4月と6月、9月、11月に分割して支払われている。9月4日に予定していた4.1兆円の支払いを延期し、7日に再配分する予定。市町村分は今月すべて支出するが、道府県分の2.1兆円は今月から11月まで7000億円ずつ3回に分割して交付される(NHK)。さらに11月に自治体に配分を予定している4.1兆円のうち6000億円は毎年、自治体への配分に先立ち一般会計から特別会計に投入してきたが今回、この繰り入れ措置も凍結する(日経新聞)。また、自治体が資金不足に陥るのを回避するため、金融機関から新たに借り入れる場合には国が利子を負担する(時事通信)。

 国立大学への交付金と私学助成を半分以下に減額するほか、一般会計から特別会計への繰り入れの抑制などを行うとしている(日経新聞)。

 歳入の4割強を占める赤字国債38.3兆円は特例公債法案が成立しなければ発行できない。赤字国債発行に必要な特例公債法案の今国会成立が絶望的となり、このままでいけば10月中にほぼ財源が底をつく計算になっていた。そのタイムリミットが11月末まで延びることになる。

 ただし、秋に開かれる見通しの臨時国会でもし特例公債法案が成立しなければ、さらに厳しい追加の執行抑制策を迫られる。現状では、政府は国民生活に影響が生じない範囲で支出を先送りすることになるが、今後の状況次第では生活保護など社会保障など国民生活に関わる支出、もしくは政府機関の一時封鎖、さらには国債の償還・利払い費などを含む国債費、これは日本国債そのものへの信認への問題となりかねないが、これらについても対象となる可能性も出てくることになる。

 もちろん国民生活や日本国債の信認に関わるようなことは避けるべきであり、今回もぎりぎりになって法案は成立するであろうと認識されているようである。たとえば、国債市場の動きを見ても、特に動揺が走るような状況にはなっていない。

 しかし、これからの政局が全く読めないこともあり、漠然とした不安感は残る。現在マスコミを賑わせているのは、今月21日に投開票の民主党の代表選、同じく26日の自民党総裁選の行方となる。トップがそれぞれ誰になるかで次期選挙の様相も変わろう。ここに橋本大阪市長が党首となる新党が大きく絡んで、今後の政局は全く読めない状況にある。次の衆院選の時期も不透明ながら、その結果についても予断を許さない。

 このように政局の行方が全く見えていない中、とにかく必要な法律だけは早期成立させて、国の資金繰りへの懸念は早期に払拭すべきと思う。しかし、これが政争の具となってしまいいかねないだけにやっかいである。

 財源が底をつく新たなタイムリミットは11月末に延ばされた。ここからさらに引き延ばすことは、かなり困難が伴い、悪影響が出る可能性もある。日本国債にとっても、これは決して好材料ではないはずである。なんとか早期に特例公債法案が成立することを、願うばかりである。


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by nihonkokusai | 2012-09-07 09:43 | 財政 | Comments(0)

自民党と民主党、日銀へのアコードと外債購入要請への疑問

 自民党は8月31日に国内経済の再生に向けた政策をまとめた「日本経済再生プラン」を発表した。ここには円高・デフレから脱却するために政府・日銀で2%程度の物価目標を協定として締結。日銀による外債購入など、日銀法改正を視野に大胆な金融緩和措置を講じることなどを盛り込んでいるそうである。

 9月5日付けの日経新聞によると、民主党が次期衆院選で掲げるマニフェスト(政権公約)の素案の中に政府と日銀感のアコード(政策協定)を結び、円高是正と一段の金融緩和を期待し、日銀に外債購入を要請する方針を打ち出したそうである。

 対日銀に関しては、「アコード」と「外債購入」という部分で、民主党案は自民党案のまさにコピペ(コピーアンドペースト)となっている。別に民主党が自民党案の真似をしたと指摘するつもりはない。両党ともに同じような主張をしていたことについて、少し疑問を呈したいと思った次第である。

 そもそもアコード(協定)の意味を取り違えていると思われる。政府と中央銀行のアコードというのは、米国の「アコード」のことを通常示す。第二次世界大戦後、国債の利払いコストを抑えさらに利上げによる国債価格の下落を回避しようとしたアメリカの財務省と、インフレ抑制のために金融引き締めを主張するFRBとの対立が激化した。このため1951年にトルーマン大統領の調停により、財務省とFRBとの間で「アコード」が成立し、国債管理政策と金融政策が「分離」され、これによって低金利政策は廃止され、FRBは政府からの「独立性」を強めたのである。

 2009年8月に白川日銀総裁は、このアコードについて次のようなのような発言をしていた。

 「米国の政策アコード導入以前の金融政策は、国債価格のペッグと申しますか、国債価格を支持するということに割り当てられていました。しかし、アコードの導入により、そうしたことから解放されて金融政策が物価安定という目的に割り当てられるように変わり、中央銀行が独立性を回復しました。」と述べている。

 今回の自民党と民主党のアコードとはこの歴史の経緯から見れば「逆アコード」とも言えるものである。

 ただし、自民党と民主党のアコードというのは、ニュージーランド準備銀行が、年度始めに政府側の代表である財務大臣との間で法律に基づいて物価安定のために金融政策を実行するという契約書を取り交わすPTA(Policy Targets Agreement)と呼ばれる政策目標協定のことを意識したものなのかもしれない。

 もしくは英国で財務省が「物価の安定」の内容を決定し、イングランド銀行が政府の経済政策を具体化する責任を負っていることで、英国を意識したものなのかもしれない。つまりはニュージーランドや英国風のインフレ・ターゲッティングを求めているのであろうか。

 日本の金融政策そのものの在り方を問い直したいとの気持ちもわからなくはないが、自民党と民主党のアコードは、日銀の独立性を排除し政府の意向を強く反映させる金融政策を行うようにしたいとも取れる。これが世界の金融政策の歴史そのものに逆行した動きとなることは言うまでもない。政府の意向が強く反映された中央銀行に対して、果たしてこれまで通りの信認を得ることができるのか甚だ疑問である。

 また、日銀による外債購入については、その目的が円高対策であるのであれば、日銀法の改正が必要になる。

 日銀法第40条には、「日本銀行は、その行う外国為替の売買であって本邦通貨の外国為替相場の安定を目的とするものについては、第三十六条第一項の規定により国の事務の取扱いをする者として行うものとする。」とあるように、介入などを含めた為替操作に繋がる日銀の仕事は事務方であり、あくまで介入を行うのは国、政府の役割となる。

 このため、自民党案には日銀法改正を視野に、とある。またもし民主党が日銀に外債購入を要請し、それが円高対策を念頭に置いたものであれば、法律違反をしろと言うことになる。もちろん民主党もそのあたりは認識し、日銀法改正も含んだものとしての主張かと思われる。

 しかし、日銀法改正までして日銀に外債を購入させると円高対策となるのであろうか。そんなことをせずとも、単純に政府が為替介入をすれば済むことではなかろうか。デフレ対策と称して何にでも日銀に責任を負わせようというつもりなのであろうか。

 政府による為替介入、この場合はドル買い円売り(もしくはユーロ買い円売りか)となろうが、それには政府短期証券を発行して資金を手当てしなければならない。それに対して日銀が直接外債を買えば、その分資金が市場に出回るので、緩和効果も狙えると考えているのかもしれない。しかし現在、日銀は基金による国庫短期証券の買入等を行っており、同様の効果が出ているはずである。

 別に日銀が直接に外債を買わずとも、政府が大規模為替介入をして、その介入資金で米債等を買えば済む問題なのではなかろうか(もちろん、それを相手国が容認するかという問題が存在するが)。それとも政府ではなく日銀が直接為替介入を行えば、もっと上手に円安誘導が可能と自民党と民主党は認識しているのであろうか。

 念のために付け加えると、過去の介入の事例を見ても、円高にブレーキを掛けることはあっても、流れを変えさせるようなことは出来ていない。あくまで市場全体のマインドが大きく変化しない限り、介入での為替操作には限界がある。だから矛先変えて、さらに欧州の信用危機対策等も込めての一石二鳥の外債購入なのかもしれないが、結果は介入とあまり変わらず、日銀券の信用の裏付けとなる日銀資産に為替リスクの伴う外債が積み上がるだけと、個人的には思うのであるが。

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by nihonkokusai | 2012-09-06 09:22 | 日銀 | Comments(0)

日本国債のデフォルトはあり得ないのか

 日本国債に関しては危機的状況だという見方と、まったく問題はなく日本国債のデフォルトはあり得ないという極端な見方に分かれている。今回は後者の「日本国債のデフォルトはあり得ない」という表現に隠されたリスクについて考えてみたい。

 「日本国債のデフォルトはあり得ない」との根拠について、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。」との財務省が外国格付け会社に宛てた意見書(2002年5月)の一文が引き合いに出されることがある。

 財務省のムーディーズ宛の意見書には「近年自国通貨建て国債がデフォルトした新興市場国とは異なり」とあるように、自国通貨建ての国債でも過去にデフォルトしたケースはありうる。ただし、「国内金融政策の自由度ははるかに大きい。更に、ハイパー・インフレの懸念はゼロに等しい。」ともあるように、日本のような先進国がデフォルトを引き起こす懸念については、極めて低いことが指摘されている。さらに「通常の財政健全化策を疑問視する一方、金融市場を大混乱に陥れるような手段が採られると想定するのは非現実的。」とある。

 ここで財務省のこの意見に異議申し立てをするつもりはないが、最後の「非現実的」との表現は、絶対にないと表現したものではないように思われる。例えば、今年度の特例公債法案の成立が遅れ10月以降の資金繰りが困難となった場合には、国債の利払い等が滞る可能性がありうる。このように国債の利払いがなされないこともデフォルトとみなされる。もちろんそんなことにはならないと思うが、現在の政局状況を見る限り、そのリスクはゼロ%ではなかろう。

 金融市場を大混乱に陥れるような手段が採られる懸念は低いと思うが、ブラックスワンの存在のように皆無ではないはずである。現在でも日銀による国債引受を主張している国会議員が存在する。日銀が財政ファイナンスを行っているとの認識が強まるだけで、日本国債に対して、海外からだけでなく国内投資家からもその信用を失う懸念がある。もちろんこの可能性もいまのところ極めて低いことも確かであるが、政局次第で状況も変わりうる。

 「日本国債のデフォルトはあり得ない」という点については、自国内で借金の貸し借りが成立している限りは、政府が自国民から借金をしているだけなので、国家全体が負担を背負うことにはならない、という見方がある。つまり、家庭内でお金の貸し借りをしているだけなので、さほど深刻な状況ではない、という考え方である。

 政府の借金は膨大でも、その9割程度を国民が背負っているので国全体としての借金ではないから、問題はないとの考え方である。ここにはいくつか問題点がある。まず「自国内で借金の貸し借りが成立している限りは」と条件をつけて、「日本国債のデフォルトはあり得ない」としている点にある。このまま無限に国内資金で日本国債が賄えるわけではない。いずれこれにも限界は来よう。しかし、巨額の新規国債の発行は現時点の予測でも2020年以降も続く予想となっている。自国内で日本国債が消化がむずかしくなった際にはどのように考えるのかが、これには示されていない。

 「家庭内でお金の貸し借りをしているだけなので、さほど深刻な状況ではない」と本当に言い切れるのかも疑問である。何かしらの要因で日本国債への懸念が強まり、日本国債が売り込まれる可能性は皆無では無い。期間リスクが意識され長期や超長期債を売り、その資金が短期市場に向かうだけでも、長期金利は跳ね上がる懸念は存在する。特に日本では長期間にわたり超低金利が継続し、その間に政府債務が積み上がっているだけに、ちょっとした長期金利の上昇でも、その影響が大きくなる。

 また、「家庭内でお金の貸し借りをしているだけなので、さほど深刻な状況ではない」という表現については、もしもの時には政府が借金棒引きをして、国民に負担させるだけなので問題はないとの表現にも置き換えられそうである。さすがにこれをしてしまうと国民生活に深刻な事態を引き起こすことは言うまでもない。先進国ではその可能性は確かに薄いと思われる。

 ただし、太平洋戦争の際の日本の国家財政においても、自国内で借金をしていた。ここには日銀も絡んでいた。戦時中と現在の状況の直接比較は問題もあろう。確かに家庭内でお金の貸し借りをしているだけなので日本国債の「デフォルト」そのものの可能性は低いのかもしれないが、それでも結果として国民にその分の負担を強いて深刻な事態が発生する懸念は将来に向けて存在することも確かではなかろうか。

 日本国債はそう簡単にデフォルトするものではないことは確かであるし、そのような懸念も起こしてはいけないものである。国内でそのほとんどを消化できていることも大きな利点であることは間違いない。日本国債には引き続き買い手も存在しているし、海外からの投資も継続している。需給面では当面問題はない。しかし、だからといって全く安心であり、今後も巨額の国債を発行し続けても何ら問題はないと決めつけてしまうことにはリスクもある。だからこそ財政健全化に向けた動きは今後も必要になってくるはずなのである。


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by nihonkokusai | 2012-09-05 09:26 | 国債 | Comments(1)

日米欧の中銀の追加緩和期待がすべて国債買入というのは何故なのか

 現在、市場が期待しているFRBやECBの追加緩和策は、両者ともに国債買入である。さらに、円高等の進行などで日銀が追加緩和に動くとすれば、その選択肢として可能性の高いものは基金の増額であり、その対象となるのは国債が中心となろう。また、いずれBOEも追加緩和に動く可能性もあり、それは資産購入プログラムの拡大となり、つまりFRB、ECB、BOJ、BOEともに国債の買入となる。

 しかし、それぞれの国債買入の目的は異なっている。31日のジャクソンホールでのバーナンキFRB議長の講演内容からも確認できるように、もしFRBがQE3を実施するとしたら、その目的は労働市場の改善となる。

 それに対しECBの場合はユーロ圏におけるリスク回避が目的であり、中央銀行がイタリアやスペインの国債(期間3年あたりまでの中短期債?)を買い入れることで、国債需給に影響を与え、国債利回りの上昇を抑制し、市場に漂うリスクを回避することが目的となる。

 イングランド銀行の場合は、量的緩和策であり景気の下支えが目的となる。また、日銀にとっての基金の増額は、円高株安等の動きを抑制し、景気や物価に働きかけることでデフレの払拭がその目的となろう。

 それぞれ目的は異なるものの、手段は国債買入となってしまうあたり、他に効果的な手段が見当たらないことをうかがわせる。

 もし熱が出たら、その原因はなんであれ、医者は抗生物質を患者に与えることが多い。抗生物質で熱は緩和されるかもしれないが、根本的な解決策にはならない。しかし、軽い病気であればあとは寝ているだけで、直るケースも多いであろう。国債買入は万能薬のようであるが、使い方によってはその効き目が出なくなることもある。

 抗生物質についても大量使用するとその効果がなくなると言われるように、国債買入というある意味特効薬についても、大量にしかも何度も使用するとその効果はなくなるばかりか、その副作用の影響も出る恐れがある。

 このあたりは、FOMCの議事要旨にも示されており、参加者からは現状ではその国債買入プログラムの有効性について疑問視する声もあり、経済活動への影響は一時的なものかもしれないと指摘する参加者もいた。 さらに何人かの参加者からは、米国債やMBSの市場機能を阻害するのではとの懸念が示された。いずれFRBのバランスシートを正常化させる際に詐害要因になるとの懸念も示され、数人の参加者からは中期的なインフレ期待を引き上げてしまうのではないかとの懸念も示された。

 また、ECBによるユーロ加盟国短期債の購入については、「市場ストレスを軽減し、国債の流動性リスクを緩和することができるであろうが、財政破綻リスクの高まりを原因とする金利上昇を抑制することはできない」(岩田一政氏のレポート「ユーロ危機:最後の貸し手と政府債務破綻処理」より)との見方もある。

 日銀による量的緩和策時代の分析もいろいろと出ていたが、金融機関にとり資金調達コストを抑制し、資金繰り不安を払拭したとの結果が得られる一方、総需要・物価への直接的な押し上げ効果は限定的との実証結果が多くみられた(日銀「量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ」より)。

 米国のQEについては、市場への影響は出ていたことは確かではあるが、実体経済への効果については見方が分かれている。バーナンキ議長はそれなりに効果はあるとの認識のようであるが、これは他に有効かつ可能な手段が見当たらないため、そのようにアピールせざるを得ない面もあるのではないかとも考えられる。

 政策金利に引き下げ余地がなくなり、伝統的手段が使えなくなった際の非伝統的手段は、その目的はさておき、中心となるのは結果として国債買入とならざるを得ない。しかし、何度も使えば当然その効果はなくなる。また、政策金利の上げ下げ以上に、いずれその副作用が出てくる恐れがある。短期的な治療薬として有効なものであっても、あくまでこれは市場のマインドに影響を及ぼすなどして、症状を一時的に抑えるものでしかない。雇用の促進や財政破綻リスク、景気の回復、デフレの解消、いずれの病気に対する中央銀行の処方箋が同じということそのものが、金融政策には限界があることを示しているように思われる。


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by nihonkokusai | 2012-09-04 12:26 | 国債 | Comments(0)

ECB総裁とドイツ連銀総裁の決戦は木曜日

 「ドラギ対バイトマン」というと、まるで怪獣映画のようなタイトルになってしまうが、この映画(?)には前作があり、そのタイトルは「トリシェ対ウェーバー」であった。

 ECBのトリシェ前総裁の後任には当初、ドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっており、ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)のウェーバー総裁(当時)が最有力視されていた。しかし、そのウェーバー総裁は、「個人的な理由」で2011年4月末にドイツ連銀総裁を辞任した。

 ウェーバー総裁は、ECB理事会において、インフレを加速し中央銀行の政治的独立性を損なうとして加盟国の国債買い入れに強硬に反対しており、それがドイツ連銀総裁を辞任し、つまりは次期ECB総裁候補から降りた要因となった。歴史にもしもは無いが、ウェーバー総裁が辞任せずに、ECB総裁となっていたならば、ECBの政策は大きく変わっていた可能性がある。

 今年8月2日のECB政策理事会後のドラギ総裁の会見で、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。さらにドラギ総裁は、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにした。

 ドラギ総裁はワイオミング州ジャクソンホールに参加予定で、講演も予定されていたにも関わらず直前になってシンポジウムへの参加を取りやめた。その理由として、向こう数日に多忙を極めると予想されるためとECB報道官は語っていた。

 ECBが検討しているとされる短期国債主体としたスペインやイタリアの国債を買い上げるための非公表の利回りターゲット設定が完全に詰められていない可能性がある。ECBとEFSFとの役割分担、さらにEFSFが銀行免許を得て国債を購入するとの方式等もあるが、このあたりの対策を協議するためなのか、ドラギ総裁だけでなくECB理事もジャクソンホールには出席しなかった。

 ブンデスバンクのバイトマン総裁は、引き続き国債買入再開に反対の姿勢を示していることも影響し、最終的な落としどころをいまだ探っている可能性もある。このバイトマン総裁はジャクソンホールのシンポジウムに参加するようであるが、予定されていた3日の滞在を1日に短縮するようである。

 ECBが2011年8月に国債買い入れを再開した際には、バイトマン総裁やシュタルク専務理事ら4人が、債券買い入れに反対したとも伝わった。今回はいまのところバイトマン総裁のみが反対を表明している。ドイツのメルケル首相はECBの国債買入に対しては賛成しているようで、ドイツの元財務次官であったアスムセンECB理事も賛成に回るであろうとの見方が強い。ただし、アスムセン氏は、ウェーバー前ドイツ連銀総裁の影響を強く受けているとも言われている。

 さらに、9月12日のドイツの憲法裁判所が欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性をめぐる判断を確認しないことには国債買入を再開することはできず、もしECBが短期債の非公表の利回りターゲット設定による買入を行うにしても、9月6日には具体的な発表はできず指針を示すのみではないかとみられている。

 ウェーバー前ドイツ連銀総裁が加盟国の国債買い入れに強硬に反対し辞任していたことで、ECBの国債買い入れは薬物に似ており、政府が依存症に陥るリスクがあるとの認識を示したバイトマン総裁も辞任するのではないかとの観測も出ていた。実際にバイトマン総裁はECBの国債買入への反対を理由に何度か辞任を検討との報道もあった。しかし、反対を貫くために辞任せずにいるとの見方もある。

 これについては、9月6日の木曜日に開催されるECB政策理事会でいったいどのような決着が付くのか。イタリア出身のドラギ総裁もドイツ出身者以上にブンデスバンクの流れを引き継いでいる総裁とみられ、バイトマン総裁の指摘も理解しているはずである。中央銀行がそこまで首を突っ込むことには大きなリスクを伴うが、現在、ユーロ圏の危機を救えるのはECBとの認識もあろう。ドラギ対バイトマンという映画は、まさに現在のセントラルバンカーが抱える大きな矛盾を示す戦いであるようにも思われるのである。

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by nihonkokusai | 2012-09-03 09:53 | 中央銀行 | Comments(0)

消費増税や歳出枠を定めても新規国債発行額は抑制できず

 野田首相は8月31日の閣僚懇談会で、歳出の大枠71兆円を2015年度まで継続する方針を決めたそうである。少子高齢化に伴う社会保障費の自然増が毎年度1兆円規模であることなどを考えれば、その分の歳出削減を目指すこととなり、このように歳出にギャップをかけることは重要だと思う。

 内閣府はこの閣議で経済財政の中長期試算を報告した。

「経済財政の中長期試算」
http://www.npu.go.jp/policy/policy01/pdf/20120831/20120831_naikakuhu.pdf


 2020年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字は15.4兆円と名目国内総生産(GDP)比で2.8%にとどまり、消費税率が10%になっても政府が国際公約として掲げる黒字化が達成できない見通しとなっている。

 ただし、国と地方を合わせたプライマリーバランスの赤字幅は、2015年度16.1兆円、対名目GDP比で3.2%、2020年度に15.4兆円、同2.8%との見通しで、2010年度の名目国内総生産(GDP)対比での赤字半減という目標は達成するとの見込みのようである。

 これらの数字は2020年度までの平均成長率を名目で1%台半ば、実質1%強とする「慎重シナリオ」でみた場合となる。消費者物価指数上昇率は2012年度にプラスとなった後、超長期的には1%近傍で安定的に推移するとしている。

 2020年度の新規国債発行額にあたる財源不足は52.5兆円まで膨らむ見通しで、2012、2013年度は基礎年金の国庫負担分をつなぎ国債で賄うため46.8兆円、46.0兆円と、46兆円台になる。消費増税の実施後、2014年度は42兆円台に縮小するが、2016年度からは再び増加に転じる予想となっている(日経ネット版の記事を参照、経済財政の中長期試算で数値を確認できる)。

 新規国債の発行額となる歳出と税収等の差額については、消費増税の実施後は縮小するといっても42兆円規模であり、2012年度の46.8兆円(2.6兆円のつなぎ国債を含めた数値)よりは削減されるといっても40兆円規模が継続され、2020年度には50兆円台の見込みとなっている。

 これまでの日本の新規国債の発行額の推移を見てみると、1997年度は18.5兆円であった。1998年度に34兆円に急増し、2001年度には小泉首相が30兆円に抑えたものの、2002年度に35兆円に。2006年度、2007年度は30兆円割れとなったが、2008年度は再び増加し33兆円台に。2009年度に至っては金融危機等の影響から53.5兆円と50兆円を超えたが、当然ながら40兆円台といっても決して小さな数字ではない。

 消費増税が実施されても、この新規国債の発行額はそれほど抑制されず、「経済財政の中長期試算」によると、むしろ2020年度には52.5兆円と2011年度以来の50兆円超えが予想されている。これには歳出増とともに、国債残高が毎年積み上がっていくため、その分金利負担が増加し、利払い比と償還費を合わせた国債費が年々増加傾向になるとの予想になっていることも影響している。

 利払い費に絡んでは、「金利ボーナス」と呼ばれる利払い費用の抑制効果がなくなり、その分増加しやすい状況となっていることにも注意が必要である。金利ボーナスとは、過去の高い金利の国債が償還期を迎えると、その分は低い金利で借り換えることになり、その分の利払い負担が軽減される効果のことである。しかし、1990年代後半以降は長期金利の低位安定が長く続き、その抑制効果は次第になくなりつつあり、今後は国債残高の増加がそのまま利払い費に影響する状況となっている。

 超低金利が果たしてどこまで継続するのか予測は難しい。現在の超低金利が続いたとしても、利払い費の抑制には限界があるとともに、長期金利が上昇すれば、その分、国債費の増加に大きく影響してくることになる。

 消費増税が実施されても、プライマリーバランスはそれほど改善されず、さらに毎年度の新規国債の発行額も大きく減少することは想定できず、毎年度40兆円を超えるような発行規模が維持されてしまうことを認識しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2012-09-02 11:56 | 国債 | Comments(0)
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