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LIBORや格付け会社は民から官へ?

 9月26日の日経新聞電子版によると、LIBORを管理している「民間組織」の英国銀行協会は25日、英政府の求めがあればLIBORの算出・公表の権限を手放す考えを表明したそうである。

 「英政府は28日に発表する改革案でLIBORを金融当局の監督対象に組み込む方向で調整中。同協会が受け入れ姿勢を示したことで、規制強化の流れが固まった。」

 LIBORとは「London InterBank Offered Rate」の略で、一般的には民間組織の英国銀行協会(British Bankers Association)が複数の銀行の金利を平均値化して、ロンドン時間午前11時に毎日発表するBBA LIBORのことを指している。金融自由化の流れの一環として、1986年に現行方式がスタートした。

 民間主導の金融市場づくりの象徴とされ、政府や中央銀行の権限が直接には及びにくかった(日経新聞)とされる。米ドルだけでなく英ポンド、日本円、ユーロ、豪ドル、ニュージーランドドル、スイスフラン、カナダドル、デンマーククローネの9通貨について発表され、歴史もあり短期金利の重要な指標となっている。

 LIBORは、英国の住宅ローンや預金金利などに直接影響する金利であるともに、国際的な融資などにおける国際金融取引の基準金利として、またスワップ金利などデリバティブ商品の基準金利としても利用されている。

 ブルームバーグによると、「英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)のトレーダーだったタン・チ・ミン氏が簡易電子メッセージを通じ、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を操作できると当時の同僚らに伝えていた」そうである。

 タン氏は同じくRBSを解雇されたニール・ダンジガー氏らトレーダーとの2008年4月2日のメッセージのやり取りで、「すてきなLIBOR。われわれの6か月物での工作が全体を動かした。ハハハ(hahahah)」と記した(ブルームバーグ)。

 単独での操作は技術的に困難であるが、LIBORの金利は、上下4行を除いたもので計算される仕組みであり、銀行数行がもし結託して行えば、その操作は可能となる。まさに「われわれの工作」であれば操作できる。 この記事からも、不正が行われていたことは事実であり、このあたりは捜査が進むとさらに明らかになるとみられる。そうなれば、規制強化の流れは避けられないものと思われる。

 LIBORに対し、日本においてこれに相当するリファレンス・レートが、TIBOR(東京銀行間取引金利)である。日本時間午前11時時点の、特定銀行のオファードレートを、やはり民間組織であるところの全国銀行協会が集計して平均値を公表している。こちらについても昨年、金融庁は「TIBOR」を不正操作しようとしたとして、シティグループ証券とUBS証券を行政処分した。自社の取引に有利になるよう恣意的に金利を提示することを複数の銀行に働き掛けていたそうである。 LIBORの動向次第では、日本でもTIBORを民間組織から、金融当局の監督対象に組み込む動きになる可能性もあるかもしれない。

 この民間組織という面では格付け会社も同様に民間会社である。エンロンの問題で格付機関のあり方が問題視され、格付け会社がサププライム・ショックを招いたひとつの要因ともなった。欧州諸国の財政問題では、もちろん根本的な原因はギリシャなどの財政そのものにあるものの、市場のリスクオフの動きを加速させたのは他ならぬ格付け会社であったことも確かであろう。こちらについても、公的機関が格付けをすべきとの意見も出ており、格付け会社ムーディーズのCEOも、ソブリン格付けの引き下げをめぐって格付け会社を批判している各国政府が格付け会社を設立すべきだとの見解を示したそうである(ロイター)。

 そもそも格付け会社によるソブリン格付けはいわゆる勝手格付けであり、各国から依頼されたものではない。それでも社債などの格付けには、そのベンチマークとなる国債の格付けを行う必要もあるため、格付け会社はソブリン格付けを行っている。しかし、そのソブリン格付けそのものが、大きく市場に影響を与えている以上、民間会社の勝手格付けに対してもある程度の規制等も必要になるとの見方もあろう。そうなればむしろ公的機関が格付けをすべきものであるのかもしれない。もしくはムーディーズのCEOが指摘したように、「専門性と市場の信頼性を兼ね備えた公的機関がソブリンの信用に関する見解を示すべき」なのかもしれない。金融については規制強化の動きが今後ますます強まることが予想され、LIBORばかりでなく格付け会社も「民から官へ」の動きとなることも予想される。


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by nihonkokusai | 2012-09-30 09:56 | 国際情勢 | Comments(0)

特例公債法案成立の遅れによる国債への影響

 9月14日の国債市場特別参加者会合で財務省から、いまだ成立していない特例公債法に関する説明があった。

 「現時点では、平成24年度における特例債の発行根拠となる特例公債法案が成立していないため、特例債の発行を後ろ倒ししているが、利付債の入札発行を平準的に行っていくには、法案が11月までに成立する必要があり、法案提出部局である主計局とともに、早期成立の必要性について引き続き訴えてまいりたい。」(財務省のサイト、国債市場特別参加者会合(第45回)議事要旨より)

 これは11月末までに法案が成立しなければ、12月以降の国債発行に支障が出る可能性があることを示唆している。つまり11月末までに特例公債法が成立しなければ、12月入札予定の国債の一部が休債に追い込まれる可能性が高い。

 そうなれば需給逼迫で国債は買われるとの見方があるようだが、いずれその未発行分は発行しなければならないものであり、単純に国債買いとはならないはずである。むしろ、日本の国債発行に支障が出ることそのものが、特に海外投資家などから懸念視されかねない。

 ちなみにこの特例公債法案が成立しなくても、日本の場合には国債の利払い・償還がすぐに滞ることはない。つまりデフォルト事由が発生することはない。これは国債の利払い費と償還費は、「国債整理基金特別会計」にプールされた資金で支払われるためである。

 一般会計において発行された国債などは、一般会計からの繰入資金(これが国債費と呼ばれるものである)を財源として国債整理基金特別会計から利払いが行われる。 さらに一般会計から本特別会計への定率繰入や、「特別会計に関する法律」の規定により発行される借換債の発行収入金等を償還財源として、60年償還ルールに従って減債され、国債整理基金特別会計から償還が行われている(財務省のサイト、国債整理基金特別会計より)。

 今年度の国債費が入らずとも、国債の利払い費と償還費はすでに特別会計でプールされた資金で手当できることで、今年度の国債の利払い費や償還費が払えないという事態には陥らないのである。つまり特例公債法が成立しないことで、日本ではデフォルトが生じることはない。

 だから特例公債法は早期成立させなくてもかまわない、というわけではもちろんない。今後の予算の執行にさらなる支障が出ることは間違いないため、早期に成立させる必要があるのは当然である。

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by nihonkokusai | 2012-09-29 11:20 | 国債 | Comments(0)

ドイツ国債は下落するのか

 9月26日のドイツの10年債入札(満期、2022年9月4日)で応札額が39.51億ユーロとなり、目標上限の50億ユーロに届かず札割れとなった。9月5日の10年債入札(満期、2022年9月4日)でも応札額が39.30億ユーロとなり、目標上限の50億ユーロに届かず札割れとなっていた。その前にはやや遡り4月12日の10年債入札で41.09億ユーロと、やはり目標上限の50億ユーロに届かずに札割れとなっていた。つまり10年債入札では今年3回目の札割れとなった。

ドイツの国債入札結果はこちらのサイトで確認できる。
http://www.deutsche-finanzagentur.de/en/institutional/primary-market/auctions-results/

 9月5日の平均利回りは1.42%、9月27日は1.52%となっていたが、この水準では投資妙味に薄れたことで、実質的な札割れとなったとみられる。ただし、この札割れによって、資金調達計画への影響はないようである。また、市場への影響も限定的で、26日にはスペイン国債の下落などから、ドイツ国債の利回りはむしろ低下していたぐらいである。

 2011年11月の際のドイツの10年債入札の際の札割れは、市場に大きな衝撃を与え日本国債への売り圧力ともなったが、今年に入ってのドイツの10年債入札の札割れは、またか程度の受け止め方となっている。これは札割れとなっても、ドイツ政府の資金繰りに影響が出ないような仕組みとなっていることもある。

 ドイツでは入札予定に届かなかった金額分の国債は、いったん政府が保有し、それを7つある証券取引所で売却する場合にはドイツ連銀が、そして電子取引プラットフォームで売却する際にはドイツ国債会社(GFA)が行う格好となる。したがって流通市場で売却したのち国庫にお金が入る仕組みとなっている。

 ただし、今月は2回とも札割れが発生したのは、ドイツの国債の利回りが過去最低水準にまで低下していたことが大きな要因であるのは間違いない。これに関して、ドイツの国債発行機関であるドイツ国債会社(GFA)の責任者、カール・ハインツ・ドーブ氏が、同国の国債利回りが歴史的な低水準から上昇するとの見方を示していた(9月25日、ブルームバーグより)。

 ちなみにドイツでは2000年9月に連邦大蔵省、連邦銀行及び連邦債務管理庁の3機関に分散されていた国債管理事務はドイツ国債会社(German Finance Agency:GFA)に統合され、これにより国債の入札や管理の仕事はドイツ国債会社(GFA)に移された。

 このGFAのトップであるカール・ハインツ・ドーブ氏が「(ドイツ国債の)利回りが歴史的に低い期間を経て、長期的に利率が上昇する段階に復帰する兆しがある」と指摘したのはやや気になる。ただし、「この動きがどのくらい急速に起こるかは分からない」とも述べていたようであるが。

 果たして同氏の言うところの「兆し」とは何であるのか。今回の10年債入札での札割れもその兆しとしているのか、そのあたりはこの記事からは不明である。しかし、2011年11月のドイツの国債の札割れをきっかけとしたドイツ国債の下落を受けて、日本国債も一時ながら急激な調整が入っていたことで、このあたりは注意すべきものとなろう。

 ドイツ国債の歴史的水準への利回り低下の背景には、スペインなどの財政問題によるユーロ圏内の信用不安がある。ユーロ圏内での為替リスクのない最も安全とされるドイツ国債に資金が流入し、その結果、2年債利回りはマイナスとなり、10年債利回りも過去最低水準に低下している。

 たしかにファンダメンタルズや国債需給など他の要因等考えると、ドイツ国債はやや買われすぎているとの判断もあるのかもしれない。ちなみに、GFAはユーロ圏支援の拠出金に充てるため、今年第2四半期と第3四半期の国債発行規模を拡大するようである。

 ただし、リスク回避の動きが継続する限りにおいて、ドイツ国債に向かった資金が急激に引き揚げられるような可能性はいまのところ考えづらい。しかし、ドイツ国債もひとつのバブル相場の様相にあることは、マイナス金利の発生を見ても確かであろう。いずれその反動が出ることも予想される。そのあたりのリスクも念のため意識しておく必要があるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2012-09-28 09:20 | 国債 | Comments(0)

日銀の追加緩和の理由

 日銀の山口副総裁は、9月19日に決定した追加緩和の理由について、特に10兆円という規模の大きさに関して、以下のような発言をしていた。

 「現下の経済・物価情勢に関する認識のもとで、長い目でみた経済・物価の見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくという軌道を踏み外さないようにするためには、大きな金額が必要と考えたためです。」

 10月の展望レポートで、経済・物価の見通しが下方修正される可能性もあり、今後の経済・物価の見通しが持続的な成長経路に復していくようにするためとしながら、何故、今回は「大きな金額」が必要となったのであろうか。それほど大きな景気の落ち込みが懸念されているのであろうか。大きな金額が必要との理由が、これではあまりはっきりしない。

 「増額の対象については、リスク性資産という選択肢もありますが、現在わが国では、投資家の不安心理やリスク回避姿勢からリスク・プレミアムが拡大するような状況にはないため、短期国債および長期国債としました。」

 これはFRBの追加緩和を意識しての発言のように思われる。実質的な効果からみて、リスク性資産の購入という手段もあったとみられるが、今回は短国と長国のみの買入となった。

 これについて山口副総裁は、日本の資金調達構造を引き出して、長期の社債やモーゲージローンの割合が高い米国と異なって、期間3年以下の貸出等の割合が高いという特徴をひとつの理由としていた。

 確かに短国と期間3年以下の長期国債の買入理由にはなろうが、そもそも資金調達意欲そのものが限定的であり、だからこそ日銀の当座預金残高も過去最高水準まで増加している状況にあり、果たして国債買入で貸出等が伸びることになるのであろうか。

 「基金の積み上げ完了時期については、従来は来年6月末としていましたが、来年12月末まで延長しました。経済情勢を踏まえれば、基金を積み上げる期間についてもより長くし、先ほどご説明した金融緩和を長期間にわたって継続する約束を補強することが適当と判断しました。」

 10兆円もの増額となれば、毎月の買入等を考慮すれば、期間の延長は避けられなかったものとみられ、「金融緩和を長期間にわたって継続する約束を補強すること」は結果としてそうなったとも言える。そして12月末まで延ばしたことで、さらなる買入余地を残す結果ともなる。

 下限金利の撤廃については、「基金の増額と下限金利の撤廃を組み合わせることで、金融緩和の効果はより強力に発揮されると考えています。」とあった。確かにそのインパクトは一時的だがあったことはあった。しかし現実には下限金利を撤廃しても0.1%以下の金利の世界の話であり、すでに札割れ等が起きていたこともあり、現状追認型の変更とも言えることで、その実際の効果はさほど大きくはないと思われる。

 以上のように今回の日銀の追加緩和に関しては、その規模の大きさなどからのアナウンスメント効果のほうが多分に意識されていたように思う。その意味では追加緩和は、円高進行の抑制、株価の下落の歯止めといった意味では多少なりに効果はあったと思われる。ECB、FRB、そして日銀が単独で追加緩和を行うより、目的は三者三様ながらも、タイミングを合わせることで、世界的なリスクに対処しようとの日米欧の中央銀行の意思がはっきりと見えたことは好感すべきものと思われる。今回の日銀の追加緩和の目的は、実はこの部分が大きかったのではないかと思っている。

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by nihonkokusai | 2012-09-27 09:34 | 日銀 | Comments(0)

日銀の包括緩和からまもなく2年

 日銀が包括緩和政策を決定したのが2010年10月5日であった。金融緩和を一段と強力に推進するために、包括的な金融緩和策を実施することとなった。9月24日の日銀の山口副総裁の講演でこの包括緩和について触れており、それも参考にあらためて包括緩和政策とは何であったのかを振り返ってみたい。

 包括緩和政策では最初に、政策金利である無担保コールレート翌日物金利をこれまでの0.1%から、0~0.1%前後に促すこととし、実質的なゼロ金利政策を再開することとなった。

 第2に資産買入等の基金と名付けた金融資産の買入れプログラムを導入し、そのもとで長期・短期の国債、さらにCP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資法人投資口(j-REIT)といったリスク性資産を幅広く買入れることになった。「これは長めの市場金利やリスク・プレミアムへの働きかけを通じて、金融緩和が企業の資金調達コストにまでしっかりと波及するよう促す措置である」(9月24日の日銀の山口副総裁の講演要旨より)。

 第3に「こうした実質的なゼロ金利政策や金融資産の買入れ等の措置を通じた強力な金融緩和を、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで継続すると約束しています」(9月24日の日銀の山口副総裁の講演要旨より)。

 最後の部分は、当初「中期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとして、時間軸を明確化した。しかし、今年2月14日に日銀は「物価安定の目途(ゴール)」を設定しており、包括緩和の時間軸は、この「物価安定の目途」がまさに目途となる。

 当初、2010年10月時点での資産買入等の基金の規模は基金の規模は、買入資産(5兆円程度)と、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション(30兆円程度)を合わせ、35兆円程度であった。また、買入資産の内訳については、長期国債および国庫短期証券の規模を合計3.5兆円程度、リスク性資産であるCP、ABCP、社債、ETF、j-REITの規模は合計1.5兆円程度となっていた。

 それが2012年9月19日の追加緩和により、2013年末までの買入資産(55兆円程度)、そして固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション(25兆円程度)を合わせ、80兆円程度にまで膨らむ。また買入資産の内訳については、2013年末までに長期国債および国庫短期証券を合計48.5兆円規模、CP、ABCP、社債、ETF、j-REITは合計6.72兆円規模となっている。

 資産全体の規模は導入時から11倍となっているが、このうちリスク性資産は導入時に比べ約4.5倍であり、市場規模から見て、量そのものはそれなりの大きさではあるが増加額は5.22兆円でしかない。それよりも長期国債および国庫短期証券は13倍近くなっており、量も約45兆円もの増額となる。このうち長期国債に至っては、当初に比べて20倍を超える大きさとなっている。

 この数値だけ見る限り、日銀の包括緩和は結果として量的緩和に近いものとなっていると言えよう。すでに日銀の当座預金残高は過去最高を記録し、9月25日には44.9兆円と45兆円近くにまで増加する。量的緩和政策においての目標としたピークの数値が30~35兆円であったことを考えると、このときよりも10兆円近く増加している格好となる。

 9月19日の追加緩和が国債の買入の増額となったことについて、山口副総裁は次のように理由付けをしている。

 「増額の対象については、リスク性資産という選択肢もありますが、現在わが国では、投資家の不安心理やリスク回避姿勢からリスク・プレミアムが拡大するような状況にはないため、短期国債および長期国債としました。これらを、それぞれ5兆円程度増額することにより、イールドカーブ全体にわたって金利低下を働きかけることとしました。」

 すでに日本の長期金利は0.8%を割り込むなど低位安定しており、ここからさらにイールドカーブ全体の低下圧力を促しても、その効果は限定的と思われる。しかし、今回の政策では規模そのものの大きさのアピールも意識されたように思われ、それが結果として短期国債および長期国債の増額になったのではなかろうか。

 結局、日銀は包括緩和と名称は変えたものの、結果としては2001年3月から2006年3月まで続いた量的緩和政策の規模をさらに大きくさせたものになっているように思われるのである。

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by nihonkokusai | 2012-09-26 09:28 | 日銀 | Comments(1)

日銀の佐藤委員と木内委員の加入の影響

 9月24日に8月8日、9日に開催された日銀の金融政策決定会合議事要旨が発表された。この8月の会合から佐藤健裕審議委員と木内登英審議委員が新たに参加した。彼らが政策委員会全体のスタンスを変えて、日銀を追加緩和に動かすのではないかとの観測も、一部市場参加者にあったようであるが、いきなりの新人(あくまで日銀政策委員としてですが)が日銀総裁を含めて、政策委員全体の考え方、スタンスを変えるなどのことは考えられない。実際にもこの時の会合では、金融政策について全員一致で現状維持としている。

 ただし、この決定会合後の白川総裁の会見では、2人の委員が加わったことに関して、「活発な議論に貢献した」、「2人とも中央銀行の政策に責任を有する委員としてバランスのとれた発言をした」との発言があった。そのあたりどのような発言をしたのか、今回発表された議事要旨から探ってみたい。

 当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要の中で、「ある委員は、包括的な金融緩和政策の実施から2年近く経過した現時点でデフレを脱却できていないことを踏まえると、為替相場への働きかけなど、インフレ期待を高める一段の工夫が必要ではないかとの認識を示した。」

 「また、一人の委員は、市場からデフレ脱却に向けた日本銀行の姿勢に疑念を抱かれれば、政策効果が減殺される可能性があると述べた。」

 総裁が会見において、2人が活発な議論に貢献したと発言したことで、その内容も議事要旨にしっかり記載されているとみておかしくはない。内容から見てこの「ある委員」と「一人の委員」が、木内登英審議委員と佐藤健裕審議委員ではないかと思われる。

 二人の新審議委員は審議委員就任の会見等で「為替相場への働きかけ」を主張していたが、日銀による外債購入含めて、もし為替操作が目的となればそれは政府の仕事となるため、これについて白川総裁は会見などで否定的な発言をしていた。

 それでもこの会合で「ある委員」は持論を持ち出してきたと思われる。ただし、これには日銀法の改正等も必要になる事に加え、外債を購入という遠回りの手段を取らずとも、政府による介入で同様の効果が出ることは以前にこのコラムでも指摘した。

 そして今回発表された議事要旨における資産買入等の基金についての議論では、特に増額すべきとの意見はなかった。むしろ、ある委員が、「長期国債買入れの入札下限金利撤廃に関する思惑を無用に高めることのないよう、適切に情報発信していく必要があると付け加え」ていた。

 9月18日、19日の追加緩和では基金の増額だけでなく、国債買入れの入札下限金利撤廃も発表されたが、8月時点ではその思惑を打ち消そうとの意見が出ていた。これも、もしかすると新たに加わった委員からの発言であったかもしれない。もちろん総裁等の発言の可能性もあるが、この部分の発言は9月会合の結果からみるとたいへん興味深い。つまり今後の基金の増額があれば、政策委員内でも下限撤廃やむなしとの認識がそれなりにあったはずである。

 その9月の会合での追加緩和は、佐藤委員と木内委員の2人の審議委員の加入が大きく影響したと見る向きもあった。しかし、たとえ2人が加わっていなくとも、9月に追加緩和は実施されていた可能性は高いとみられる。それは9月の追加緩和は、ECBやFRBの追加緩和が結果として大きく影響していたとみられるためである。つまり、もしFRBの追加緩和等が見送られていれば、日銀は今回ではなく短観を確認し展望レポートの発表に合わせ、10月の会合を待って追加緩和を検討したとみられるためである。

 実際のところ佐藤委員と木内委員の加入による影響については、9月の決定会合での議事要旨も確認する必要がある。確かに日銀の政策委員が形式上はハト派的なスタンスを強めたであろうことは確かである。しかし、8月は全員一致で現状維持となり、委員による議事提案はなかった(さすがに新人委員によるいきなりの議事提案は考えづらいが)。9月の会合で今度は全員一致で追加緩和を決定していることを見ても、これは日銀総裁を中心とした政策委員の執行部の影響力の大きさを示しているともみられ、2人の委員の加入により日銀の金融政策が大きく変わったわけではないと思われる。

<お知らせ> 50+(フィフティ・プラス)というサイトに、『金融緩和だけが日銀の仕事じゃない!―「日本銀行の仕組みがわかる本」久保田博幸さんインタビュー』が掲載されました。また、WEB R25の『「人民元建て外貨預金」のメリットは?』という記事に私のコメントが紹介されています。

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by nihonkokusai | 2012-09-25 09:42 | 日銀 | Comments(0)

11月末までに特例公債法が成立しなければ12月の国債の一部が休債に

 9月14日の国債市場特別参加者会合での財務省からの説明には、いまだ成立していない特例公債法に関するものもあった。

 「現時点では、平成24年度における特例債の発行根拠となる特例公債法案が成立していないため、特例債の発行を後ろ倒ししているが、利付債の入札発行を平準的に行っていくには、法案が11月までに成立する必要があり、法案提出部局である主計局とともに、早期成立の必要性について引き続き訴えてまいりたい。」(財務省のサイト、国債市場特別参加者会合(第45回)議事要旨より)

 これはつまり11月末までに法案が成立しなければ、12月以降の国債発行に支障が出る可能性があることを示唆していると思われる。つまり、場合によると国債発行ができず休債となる可能性がある。

 国債の休債としては1984年(昭和59年)に長期金利の上昇を受けて、景気動向への配慮から条件改定は見送られ、シ団引受けの長期国債の発行が6月から8月まで3か月連続休債となったことがあった。

 また、2008年10月にリーマン・ショックの影響により、海外投資家のニーズが後退したことなどから、物価連動国債(10年物)の入札が中止された。その後、15年変動利付国債の入札中止もあった。

 もし仮に11月末までに特例公債法が成立しなければ、12月債の一部が休債に追い込まれる可能性が高いようである。そうなれば需給逼迫で国債は買われるとの見方があるが、いずれその分は発行しなければならないものであり、単純に国債買いとはならない。むしろ、日本の国債発行に支障が出ることそのものが、特に海外投資家などから懸念視されかねない。


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by nihonkokusai | 2012-09-24 09:29 | 国債 | Comments(0)

8月も幅広い投資家による国債買いが入る

 9月20日に日本証券業協会は8月の公社債投資家別売買高を発表した。ただ、いったんアップされたもののうち都市銀行のデータが誤っている可能性があるとし、データを訂正後、ホームページに再掲載され、この再掲載されたデータを元に見てみたい。

 これによると、都銀は2859億円、地銀は6671億円、信託銀行は1兆278億円、農林系金融機関は1兆1449億円、信用金庫は8808億円とそれぞれ買い越しとなっていた。

 また、生保は1兆19億円の買い越し、海外投資家も1兆179億円の買い越しとなり、個人とその他を除くすべての投資主体が買い越しとなっていた。

 国債の投資家別売買高でみると、都銀は超長期国債を1373億円売り越していたが、長期国債を2197億円、中期国債を1879億円買い越していた。地銀は長期を5429億円買い越して中期を1491億円売り超し、そして信託銀行は超長期を2173億円、長期を4529億円、中期を4427億円のそれぞれ買い越し、また農林系金融機関も超長期を3329億円、長期を1676億円、中期を5567億円のそれぞれ買い越し、信用金庫も長期を3407億円、超長期を1134億円の買い越しと期間別にみても、中期債から超長期債にかけて幅広く金融機関からの買いが入っていたことが伺える。

 生保は超長期債を8722億円の買い越し、さらに外国人に至っては中期債を1兆1363億円も買い越していた。

 債券先物の日足チャートを見ると、7月23日から25日にかけてつけた144円64銭が今回の上昇相場における高値となり、10年債でみると7月23日から26日にかけて0.720%まで連日買われていたが、やはりこの0.720%で利回りは反転した。

 その後8月に入り、消費増税の行方が不透明になったこと、さらに8月7日の債券先物のシステム障害も加わり、国内投資家も利食い売りやポジションの調整を急いだとみられ、やや乱高下しながらもダウントレンドとなり、債券先物は8月21日に143円43銭まで下落し、10年債利回りも8月16日、17日に0.86%まで上昇したが、ここで債券相場はいったん底打ちした。

 8月15日に米10年債利回りは1.8%台まで上昇していたが、その後買い戻しの動きを強め同様にドイツの国債も買われたことで、日本国債も押し目買いの動きを強め、上昇トレンドとなったのである。

 欧州ではギリシャの債務に関する交渉などの行方が気になり、市場では再びリスクオフの動きが強まった。このため、東京株式市場は上値が重くなり、この株安も債券市場には追い風となった。22日に発表された7月31日~8月1日開催の米FOMCの議事要旨では、米経済が大幅に改善しないかぎり、FRBはかなり早期に追加緩和を行う可能性が示され、これを受けてQE3への期待感も出ていた。

 8月中旬までの債券の下落相場で、そこそこポジション調整が行われていたかに思われたが、むしろこの投資家動向を見る限り、売った投資家もその後あらためて買いを入れたとみられるとともに、下げ過程でも押し目買いを入れていた投資家も多かったように思われる。

 9月に入ってからも8月同様に一時債券相場は調整が入ったが、この際にも投資家は押し目買いスタンスで望んだ可能性もある。これは来月発表される公社債投資家別売買高で確認したいが、このように国債を主体に投資家需要が旺盛な限り、今後の日本の債券相場は大きく崩れることも考えづらい。

 ちなみに8月の短期債の売買高をみると、外国人が12兆3960億円の買い越しとなり、7月の14兆1707億円、6月の11兆4585億円、5月の11兆6562億円と、外国人は昨年10月以降、10兆円を超える短期債の買い越しを継続させている。

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by nihonkokusai | 2012-09-22 12:24 | 債券市場 | Comments(0)

日銀の国債買入の下限金利の撤廃は輪番オペにも適用

 日銀は9月18・19日の金融政策決定会合において追加の金融緩和策を発表した。資産買入等の基金を70兆円程度から80兆円程度に10兆円程度増額する。この増額の対象となるのは短期国債5兆円程度、長期国債5兆円程度。さらに長期国債の買入を確実に行うため「買入」における「下限金利」(現在、年0.1%)を撤廃するとした。社債の買入についても同様となった。

 この長期国債の買入における下限金利の撤廃について、当日は市場関係者の間で一部混乱があったようである。これは日銀は日銀券ルールに基づく国債買入(輪番オペ)と、資産買入等の基金による国債買入を行っており、今回の下限金利の撤廃について通常の買入である輪番オペにも適用されるのかということであった。

 19日の決定会合後に発表された公表文の「金融緩和の強化について」によると、金融緩和を一段と強化する観点から「資産買入等の基金」につき、以下の決定を行った、とある。下限金利の撤廃については、長期国債の買入れをより確実に行うため、「当該買入れにおける入札下限金利(現在、年 0.1%)」を撤廃する。社債の買入れについても同様とする、としている。つまりこれには輪番オペに関しては触れていない。私自身はこの表明で、輪番オペも基金による買入も両方適用されると解釈してしまったが、確かに輪番オペもそうなるとはどこにも表記がなかった。

 これについては、総裁会見で記者から次のような質問があった。

「本日、長期国債買入れの入札下限金利を撤廃しましたが、輪番オペの下限金利についてはどうされるお考えでしょうか。」

 この質問に対する総裁の回答は以下の通り。

 「銀行券見合いの長期国債買入れの下限金利については、執行部にその運用が授権されていますが、資産買入等の基金に関する本日の決定との整合性を考えれば、入札下限金利は撤廃されることになります。その際、銀行券見合いの長期国債買入れについては、買入対象を残存 3 年以内に限っていないため、入札下限金利も全ての残存期間について撤廃されることになります。」

 つまり資産買入等の基金による国債の買入は、金融政策決定会合での決定事項であるが、輪番オペに関しては日銀の執行部マターとなっているため、こちらについては特に発表をしなかったものとみられる。ただし、資産買入等の基金に関する本日の決定との整合性を考えれば、入札下限金利は撤廃されることになると総裁は指摘していたが、このあたりは過去の経緯を知らなければ、市場参加者も理解しづらい部分であり、本来であれば公表文に注釈として付け加えるべきではなかったか。

 ちなみにもし「日銀券ルール」そのものについて、何かしら変更があるとすれば、これは執行部マターではなく決定会合マターになると思われる。これは下記の措置が2009年1月22日の金融政策決定会合で明文化されたためである。

参考、2009年1月「長期国債買入れの当面の運営について」
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/mok0901c.pdf

 輪番オペによる国債の買入対象は特に残存3年以内に限っていないため、入札下限金利も全ての残存期間について撤廃されることになると白川総裁は指摘していたが、まあ超長期とかの長い期間の金利については、さすがに意識することはないでしょうが、結果として全期間適用ということになる。

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by nihonkokusai | 2012-09-21 12:39 | 日銀 | Comments(0)

2012年6月末の日本国債(短期債除く)の保有者

 20日に日銀は今年4~6月期の資金循環統計を発表した。これによると2012年6月末時点の家計の金融資産は1515兆1479億円(2012年3月末速報値1513兆3619億円)、金融資産・負債差額は1159兆2780億円(同1145兆3902億円)となっていた。

 家計の金融資産は3月末より増加していたが、1500兆円近辺での頭打ち状態が続いている。ただし、現金・預金は844兆1202億円と過去最高となり、その一方で株式・出資金や投資信託の残高が減少した。。

 また、こちらも国債投資の原資となる民間の非金融法人企業の現金・預金は208兆4307億円となっていた。

 これに対して一般政府の金融資産は483兆2094億円(同487兆6465億円)、金融資産・負債差額はマイナス640兆7093億円(同611兆6411億円)となっており、負債総額は1123兆9187億円(同1099兆2876億円)となっていた。

 この資金循環統計を基に、2012年6月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、ここではマスコミで主に報じられている国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの、国庫短期証券は含まない数値を個別に集計しなおしたものである。一般的に国債の保有者の割合としては、こちらの数値が使われることが多い。(エクセルで国債・財融債のみ抜き出して、わかりやすい保有者別に集計し直すが、そこそこ手間が掛かる作業。集計し直したエクセルファイルがほしい方は御連絡を)。

 6月末の国債(国債・財融債のみ)の残高は、773兆1580億円(同760兆6926億円)と前回の3月末から12兆4654億円増加した(速報ベース)。国庫短期証券を加えると約940兆円となる。参考までに日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく時価ベースとなっている。

 日本国債の最大の保有者は、銀行など民間預金取扱機関となり、金額で272兆172億円(同280兆1178億円)、全体に占める割合は35.2%(同36.8%)となった。次に民間の保険・年金が205兆9916億円(同199兆9108億円)の26.6%(同26.3%)、そして、日本銀行が79兆5140億円(同72兆3903億円)で10.3%(同9.5%)、公的年金が68兆7312億円(同69兆9124億円)の8.9%(同9.2%)、海外が53兆895億円(同47兆1546億円)の6.9%(同6.2%)、投信など金融仲介機関が38兆3454億円(同33兆571億円)の5.0%(同4.3%)、家計が27兆35億円(同27兆6729億円)の3.5%(同3.6%)、財政融資資金が7693億円(同8795億円)の0.1%(同0.1%)、その他27兆6963億円(同29兆5972億円)の3.6%(同3.9%)となった。

 前回の2012年3月末に比べて残高が大きく増加していたのが日銀で7兆1237億円増、続いて民間の保険・年金銀行の6兆808億円増、海外の5兆9349億円増、投信など金融仲介機関の5兆2883億円増となっていた(速報ベースでの比較)。

 これに対して大きく減少していたのが、銀行など民間預金取扱機関で8兆1006億円となっていた。

 1月から3月にかけて大きく買い越していた銀行が、期が変わったこともあり益出しの売りを入れてきたとみられる。これに対し、日銀は基金による国債買入等も進め残高は膨らみ、全体のなかのシェアも10%を越えてきた。相場環境も良かったことで、生保なども大きく買い越しており、3月末にかけて残高を落としていた海外投資家もあらためて買い越しに転じていた。

 国庫短期証券を含んだ数字でみると、海外は全体の8.7%のシェアとなり(日銀の参考図表を参考)、これまで最高だった2008年12月末の8.6%を上回り過去最高となったものとみられる。

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by nihonkokusai | 2012-09-21 09:43 | 国債 | Comments(0)
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