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債券先物の障害発生と債券相場下落の関係

 8月7日に東京証券取引所においてシステム障害が発生し、長期国債先物(債券先物、JGB先物とも呼称される)を含む金融派生商品の取引が9時22分から10時55分にかけて停止した。日経新聞によるとこれはルーターの故障が原因であったそうである。

 債券先物の取引がこのようにシステム障害などで一時停止すると何が起きるのが。債券先物は、国債を中心とした債券取引の大きなヘッジツールであるとともに、債券相場のベンチマークのような存在である。また、現物債などに比べてヘッジファンドなどの海外投資家の売買が盛んであるという特色を持っている。

 ヘッジツールという意味では、8日には40年国債の入札があったが、7年国債の価格に連動する長期国債先物を40年債入札でのヘッジに使うことはあまり考えられず、入札への影響は軽微であったと考えられる。しかし、これが5年国債や10年国債の入札であれば、債券先物をヘッジツールとして使うことが考えられるため、状況次第では国債入札そのものが延期されるような事態になった可能性もあった。

 債券相場のベンチマークという意味では、相場の居所が掴みづらくなることが考えられる。このため前回、大規模なシステム障害が起きた2008年7月22日には、現物取引も閑散となり、日本相互証券での現物取引もほとんど出合いがない状況に陥った。しかし、今回は長期債主体に現物売りが入り、7日の午前中の日本相互証券では、10年債利回りは前日比+0.030%の0.765%、30年債も+0.0030%の1.810%が売られていた。

 これは債券先物を買い建てていた投資家が、ヘッジとして長期債を売却した可能性とともに、政局の行方が影響していた可能性がある。自民党が衆院への内閣不信任決議案や、参院への首相問責決議案を提出する構えを見せたためで、もし消費増税が先送りされるようなことになると財政への懸念が強まり、国債への売り圧力が強まるとの連想である。

 たしかにこれが相場に大きく影響していたことは確かであり、その後さらに債券相場は売り圧力を強め、8日に10年債利回りは0.8%台に乗せてきた。債券先物も144円を大きく割り込んだ。これには海外での米債安や欧米の株高、さらには円高の動きが落ち着いてきたことなども背景としてはあろう。ただし、今回の債券の売りにはシステム障害がひとつのきっかけとなっただけでなく、海外投資家などからの売りを誘う大きな要因となった可能性がある。

 それは、今回と同様のシステム障害が債券先物で発生した2008年7月22日にも起きていたのである。当日の様子を私の当時のコラム「若き知」から見てみたい。

 「債券先物は後場に入り次第に上値が重くなり、あっさりと136円も割り込んだ。14時半近くには、ややまとまった売りが債券先物に入り、この時間に先週末比88銭安の135円68銭に下落した。同じ時間帯に、日経平均先物もやはり出来高を伴っての買いが入り、13180円に上昇。その後引けにかけて、再び日経平均が先物主導で上昇してきたこともあり、債券先物は一時先週末比91銭安の135円65銭をつけ、大引けは86銭安の135円70 銭となった。」

 このとき何が起きていたのか。これについては下記のようなコメントをしていた。

 「どうやら、債券先物買い、日経平均先物売りのポジションを組んでいた投資家がそのポジションを外してきた可能性がありそうである。これは債券先物のシステム障害が嫌気されて、債券先物に絡んだポジションを外してきた可能性も否定できない。」

 今回、8月7日と8日の日経平均先物は確かに上昇しており、債券先物は7日の後場に入り売り圧力を強めている。消費増税の先行きが不透明となり、これによる投資家からの売りが入った可能性はある。ただし、これまで消費増税の先送りの懸念など何度もあったはずで、今更このように反応することもやや違和感がある。もちろん2010年8月の小沢ショックと呼ばれた債券相場の下落が意識された可能性はないとは言えないが。

 しかし、今回も東証のシステム障害を嫌気した海外投資家などが、債券先物買い・日経平均先物売りのポジションを解く、もしくは日本の債券先物ポジションを縮小させたような動きが出ていた可能性がありうる。

 さすがに2008年7月というリーマン・ショック前の頃に比べれば、値動きの大きさに違いはあるものの、今回もこれまであまり日中の動きがなかっただけに、久しぶりに大きく売られたとの印象がある。これにより相場そのものの方向性が変わったり、あらためて日本の財政が材料視されることになるのかもしれない。しかし、8月7日から8日にかけての今回の債券相場の下落は、このシステム障害そのものが2008年7月22日と同様に大きく影響した可能性が高いのではないかと思われる。


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by nihonkokusai | 2012-08-09 09:26 | 債券市場 | Comments(0)

8月8日、9日の金融政策決定会合の予想

 8月8日、9日に日銀は金融政策決定会合を開催する。前回7月11日、12日の決定会合以降、日本の景況感に大きな変化はない。金融政策については現状維持となると予想される。

 7月25日の講演で山口副総裁は、「何らかのショックによって見通しが下振れたり、見通しを巡るリスクが大きく高まるような場合には、追加的な金融緩和を実施することを躊躇しません。」と発言していた。

 7月の会合以降、スペインへの財政懸念によるリスク回避の動きが強まり、スペインの10年債利回りは再び7%台に乗せ、外為市場ではユーロ円が95円を割り込むなど円高が進行し、欧米の株安もあり、日経平均も一時8300円を割り込んだ。しかし、その後はやや株も持ち直しており、円高の動きも一服している。一時リスクは大きく高まったものの、その後は落ち着きを取り戻しつつある。

 7月31日、8月1日に開催されたFOMCでは金融政策は現状維持となり、QE3とか超過準備の付利の引き下げもなし、超低金利政策の継続期間についても、2014年の遅くまでとの表現を据え置いた。8月2日のECB政策理事会でも主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いた。ただし、記者会見でドラギ総裁は、利下げの可能性について討議したことも明らかにした上、短期債主体にイタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明した。

 ECBは追加策を出さなかった上に国債買入も具体的な内容が発表されず、ドイツ連銀のバイトマン総裁が国債買入に反対したことが明らかなり、市場では一時リスク回避の動きを強めることとなった。

 しかし、その後、市場は冷静さを取り戻し、短期債主体のイタリアやスペイン国債の買い入れ実施の可能性を意識した動きも出て、7月25日には7%を越えていたスペインの2年債利回りはここにきて3%台に低下した。

 欧州の動向も日銀の金融政策には大きな影響がある上に、FRBがもし動きを見せていれば、為替動向も意識して日銀が追加緩和に動く可能性はあったが、欧州の動向はやや落ち着き、FRBも動きを見せなかったことで、日銀も追加緩和に動く可能性は少ない。

 ただし、市場では今回から新審議委員が2人参加することで政策委員会の様子が変わるのではないかとの見方があり、また、日銀による国債の買入での未達が起きたことで1年を越える期間の国債でも買い入れの際の下限金利を撤廃するのではないかとの見方もある。

 これについては、まずマスコミ等でハト派と意識されている佐藤審議委員・木内審議委員が今回の決定会合から参加することで、追加緩和に前向きの動きが出るのではとの期待があるかもしれない。しかし、審議委員は日銀役員であるが、2人は日銀プロパー出身ではないことで日銀の業務などについても詳しく知る必要がある。また、少し様子を見たいと、期間をおいて状況を確認したいとするはずで、いきなり追加緩和を議事提案するようなことはしないと思われる。そもそも佐藤氏はさておき、木内氏あたりはそれほどハト派との認識ではない。2人が加わってもいきなり追加緩和に傾斜するようなことはないと思われる。

 7月31日の2年国債の入札で落札利回りが0.1%を下回った。さらに1日の残存期間1年以上2年以下、および2年超3年以下を対象にした基金による国債買入において、未達が発生した。このため残存1年を越える長期国債の買入れについても、下限金利を撤廃するのではないかとの観測がある。

 そもそも、下限金利については決定会合の決定事項ではなく、いつ決めてもおかしくはない。実際に7月12日の金融政策決定会合で、基金を通じた短国買入の入札下限金利の0.1%の撤廃は発表したが、7月17日に基金ではなく通常の長期国債買い入れ(輪番オペ)においても残存期間1年以下を対象に0.1%の下限金利を撤廃している。タイミングはさておき、今回の決定会合で残存1年以上の長期国債の買入の際の下限金利を撤廃するかどうかは、8月2日の森本審議委員の会見での発言が参考になりそうである。

 「長期国債の買入れについては、昨日発生した札割れがこれからも続くのか、そうした中でオペの運用上の工夫で、それが上手くクリアされていくのかを見極めながら、引き続き、資産買入れは着実にしっかり進めていきたいと考えています。」(8月2日の森本審議委員の会見より)

 8月6日の国債買入(輪番オペ)において残存期間1年以下と残存1年超10年以下の2本がオファーされたが、未達は免れており、もう少し状況を見るのではないかと思われる。このため、今回の決定会合での、残存1年以上の国債買入の際の下限金利撤廃のアナウンスもないのではないか予想している。

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by nihonkokusai | 2012-08-08 09:27 | 日銀 | Comments(0)

東証は金利スワップ取引の清算・決済業務を10月から開始

 8月6日の日経新聞朝刊によると、東京証券取引所グループは10月から子会社を通じ、デリバティブの一種である「金利スワップ取引」を清算・決済する業務を始めるそうである。 東証は子会社の「日本証券クリアリング機構」を通じ、まずは取引量の多い円建てのロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を対象に、金利スワップの清算・決済業務を始めると日経は伝えている。ただ、LIBORそのものが今後どうなるかわからない状況ではあるが。

 円LIBORのスワップ取引額は1日当たり6兆円規模にのぼり、このうち6割程度の取引を手掛ける日系の金融機関の利用を期待しているそうである。それだけ問題化されているLIBORは、日本のスワップ市場にも大きな影響を与えていたということにもなる。

 金融商品については毎日売買される価格が主に取り上げられているが、実はその売買が円滑に行われるためには、決済と呼ばれる証券等と金銭の受け渡しがスムーズに行われる必要がある。

 売買約定が成立してから決済が行われるまでの一連の流れとして、現在は売買、清算、決済の三段階に区分できる。これらのうち、売買機能を担う主体を市場、清算機能を担う主体を清算機関、決済機能を担う主体が決済機関と呼ばれる。

 日本における金融商品の「取引所」市場の有価証券の売買については、すべて「日本証券クリアリング機構」が清算業務を行っている。昔は各証券取引所で行われた売買については、それぞれの市場で清算業務が行われていたが、2003年1月14日から、市場横断的な統一清算機関である日本証券クリアリング機構により一元的に清算業務が行われるようになった。また、東証における先物・オプション取引についても、2004年2月2日から日本証券クリアリング機構により清算業務が行われている。つまり債券先物の清算業務は日本証券クリアリング機構で行われている(東京証券取引所のサイトより一部引用)。

 清算機関は、売買の相手側に代わり、証券の受渡し、資金(決済代金)の受払いについて債務の引受けを行い、決済履行を保証する主体であり、決済の相手方として、決済機関に対し証券や資金の振替指図を行う(日本証券クリアリング機構のサイトより)。つまり、売買の売り手買い手にとり、清算機構が間に入ることで確実な決済が保証され、決済上の相手方リスクを軽減させられる。さらにネッティングにより決済量を大幅に減少させることができるのである。

 ちなみに、店頭取引が主体となっている日本国債の現物取引に関しては、2005年5月からは日本国債清算機関(JGBCC)の業務が開始された。これが創設される以前は、清算がないまま各当事者が相互に日銀ネット上で決済を行なっていた。しかし、清算機関が創設されたことにより、参加者同士の取引に関わる決済は、原則として日本国債清算機関に集約され、清算を経て決済を行うことが可能となった。

 今回の東証のスワップに関する清算業務においては、取引を行っている金融機関や機関投資家が、取引額に応じて証拠金や手数料を東証グループに支払う格好となる。これは取引所に上場されている金融派生商品と同様の手続きとなる。

 リーマン・ショック等を経て金融派生商品取引に清算機関の利用を義務付ける動きが強まり、日本では11月から段階的に清算機関の利用が義務付けられるそうである。東証は昨年7月に、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の清算・決済業務を始めているが、今後は取り扱う対象も徐々に広げる見込みのようである。来年初には、円建ての東京銀行間取引金利(TIBOR)も対象に加えるほか、再来年には米ドルなど海外通貨建ての金利スワップ取引も対象になる(日経新聞より)。

 ちなみに証券取引での最終的な資金の決済は1988年に稼働した日銀ネットを通じて行われている。金融機関同士が行う資金取引の決済や国債など証券取引の代金の決済や、民間決済システムの最終的な決済には、日銀の当座預金での振替が利用されている。


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by nihonkokusai | 2012-08-07 09:44 | 債券市場 | Comments(0)

メダル効果とアナウンスメント効果

 連日、ロンドン・オリンピックでの日本人選手の活躍がマスコミを賑わせている。マスコミがこれだけ騒ぎ立てているのは、日本ばかりでなく世界中の人々が、オリンピックでの自国選手の活躍ぶりに関心を持っているためであろう。オリンピック期間中は自国選手でメダルが期待される競技は中継され、メダルが取れれば、そのシーンは繰り返し報じられ、本人のマスメディアへの出演機会も増え、一躍時の人となる。注目されれば、スポンサーもつくであろうし、CMなどの機会も増える。マイナーな種目でもメダリストとなれば一目置かれる。

 オリンピックの商業化への批判もあるが、それだけ注目度の高さを示している。オリンピックという巨大イベントのひとつの成功要素として、金、銀、銅というメダルを授与するというシステムを編み出したことがある。オリンピックには、メダリストとそうでない選手がいる。もちろん入賞者もいるが、オリンピック期間中はさておき、それを過ぎるとメダルを取れなかった選手達は人々の記憶から忘れ去られる。それに対しメダリスト、中でも金メダル、もしくはなかなか自国でメダルを取れなかった競技でのメダリストは記憶に残される。

 オリンピック前から国民に期待されている選手が期待通りの活躍をすれば、一躍ヒーローとなり、あまり期待はされずにメダルを取ると、意外感からこちらも注目度が上がる。これに対して、期待されているもののメダルを逃すと注目度が落ちる。また、そもそもメダルに届かない競技は、放映等も制限される上、入賞でもしない限りはあまり取り上げられることもない。

 つまりメダルの存在そのものが大きな差別化の要因であり、選手もだからこそ血眼になり、上位入賞ではなくメダル、なかでも一番輝く金メダルを取りに行こうとする。そのメダル争いがまた熾烈なものとなり、観ている者に感動を与えることになる。

 しかし、このメダルはそう簡単に取れるものではないことは誰もが知っているし、だからこそ注目される。このような単純明快で勝者と敗者をはっきり区分けしてしまうシンボルを作ることによって、全世界が注目するイベントが盛り上がる。

 中央銀行の金融政策も政策金利というシンボルを作り、その上げ下げにより期待を盛り上げる。市場の期待ばかり先行してしまうと失望感ばかり強まってしまう。そこに必要なものとしてはサプライズ効果もある。アナウンスメント効果とはいったいいかなるものなのか。期待を抱かせるにもどうすれば良いのか、このオリンピックという祭典の盛り上がりが、そのひとつの答えを示しているような気がする。まあ、オリンピックと金融政策を無理矢理結びつけるなとのご指摘もあろうが・・・。


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by nihonkokusai | 2012-08-06 09:54 | 日銀 | Comments(0)

ドラギ対バイトマン

 8月2日のECB政策理事会では、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いた。これは予想通り。下限金利の中銀預金金利もゼロ%に、上限金利の限界貸出金利も1.50%に据え置いたが、これについては下限金利をデンマーク中銀のようにマイナスにするのではないかとの期待が一部にあったようである。

 記者会見でドラギ総裁は、利下げの可能性について討議したことも明らかにした。このため9月に主要政策金利を0.25%引き下げ0.5%にするとの見方が強まっている。ECBはこれまで政策金利を動かす際には、前回の会合でそれを示唆するようなことが多い。ちなみにマイナス金利については、「未知の領域だ」との答えがあったそうである。

 市場が期待していたのは、利回りが大きく上昇していたスペインやイタリアの国債への対策であった。7月26日にECBのドラギ総裁はロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要ないかなる措置をも取る用意があると表明していた。このため、何かしらの対策が講じられ発表されると期待されたが、結果として具体策の発表はなかった。

 ドラギ総裁の会見では、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。国債買入は9月以降となりそうで、さらに新たな債券買い入れに際しては、これまでのプログラムと異なり、厳格な条件が付くようである。短期債が主体で、債券が不胎化されるかどうかもはっきりしていない。

 このように債券買入について具体的な発表がなかったのは、ドイツ連銀(ブンデスバンク)のバイトマン総裁が国債買い入れプログラムに疑念を抱いていることが大きな要因になっている可能性がある。実際にドラギ総裁はバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにしている。ECBが採決の内容を外部に公表するのは日銀やFRB、ECBなどと異なり、極めて異例と言える。ただし、反対したのはバイトマン総裁だけで、過去に同様なことがあった際、ドイツ連銀に組みしたルクセンブルグやオランダの中銀総裁、さらにドイツ出身のアスムセン理事(ドイツの元財務次官)も今回ドイツ連銀側には付かなかったことは興味深い。

 ECBによるイタリアやスペイン国債の買い入れはいずれ実施される可能性はあるが、その内容はドイツ連銀の反対も影響し、これまでに比べて消極的なものになる可能性がある。またドラギ総裁は、数週間以内に、これまで行ってこなかった非伝統的な金融政策の追加の枠組みを準備するとの発言もあった。これはやや気になるところでもあるが、こちらもどれだけ踏み込んだ政策になるのかはわからない。

 今回のECBの対応については、事前のドラギ総裁発言を受けてもう少し踏み込んだ内容を市場では期待していた。このため、外為市場でのユーロや欧米の株式市場、そしてスペインやイタリア国債などへの失望売りを招き、ドラギ・ショックともいえるような動きとなった。

 マリオ・ドラギ総裁はイタリア出身ではあるが、ドイツ連銀の伝統を受け継いだ総裁とも見なされており、欧州危機に対しては積極的な対策を講じる必要性は認識していながらも、それに対して慎重なドイツ連銀のバイトマン総裁の考え方も十分理解しているとみられ、それが会見内容にもところどころ現れている。

 8月1日の米FOMCでは追加緩和については次回の可能性を示唆するような格好となり期待感は残したが、昨日コメントしたように実際に追加緩和が実施される可能性はむしろ低いようにも思われる。それよりもスペインやイタリア国債が再度売られてきたことでの、ECBへの対応の方が期待されたが、これも簡単には踏み込めず、何かと言えば中銀頼みとなっている状況で、その中央銀行による対応にも自ずと限界があることが見えてきつつある。

 外為市場ではECBは追加緩和をしなかったことで、ユーロが下落しているように、金利差などよりもリスクが大きな注目材料ともなっている。もしユーロに対しての円高を阻止しようとするならば、現状ではユーロへのリスクを後退させるか、円のリスクを増加させるしかない。もし為替介入により阻止しようとしても、市場の大きな流れを逆流させることはかなり困難である。

 同様にECBによる国債市場への介入も、スペインやイタリアのリスクそのものを後退させるわけではない。さらに、中銀のポートフォリオそのものへの警戒とともに、先々のインフレリスクも意識されよう。市場などではECBによる積極的な対策を望んでいようが、積極的に踏み出せないというのがECBの現状であり、それが今回市場で見透かされた格好となったものと思われる。

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by nihonkokusai | 2012-08-04 11:31 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの次の手とそのタイミング

 7月31日から8月1日に開催したFOMCにおいて、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標を0~0.25%に据え置いた。QE3とか超過準備の付利の引き下げもなく、超低金利政策の継続期間についても2014年の後半までとの表現を据え置いた。  FOMC後に発表された声明文では、景気認識について、前回の「今年の景気は緩やかに拡大する」から「今年の前半を経過した時点で経済活動がやや減速している」と下方修正している。

 さらに声明文では、「必要な時に適切な追加の緩和策を行う」として、前回の「さらなる措置を適切な時に行う用意がある」との表現からやや踏み込んだ格好となった。

 これにより9月12日から13日にかけて開催されるFOMCでの追加緩和期待も強まったようである。果たして9月の追加緩和の可能性はどの程度あるのか、またその手段はどのようなものがあるのか。

 その手段としては、7月17日のバーナンキ議長の議会証言の内容からある程度推測が可能となる。

 議会証言でバーナンキ議長が示唆した追加緩和として、米国債やモーゲージ担保証券(MBS)などの追加債券買い入れ、つまりQE3。そして、連銀窓口貸出や超過準備金利引き下げ。さらに時間軸の強化、つまり超低金利政策の継続期間についていつまで続けるかの予想期間の先延ばしがある。

 このうち市場が最も期待しているのはQE3であろうが、この手段はFRBとしては最後の有力カードとして温存していたいものと考えられること以上に、いくつか実現を難しくさせる理由が存在する。

 そもそもQEの目的は長期金利を低下させ、住宅投資を活発化させるものであろうが、すでに米国長期金利は歴史的低位水準にあるとともに、住宅市場に関してはやや回復基調ともなっており、ここで無理にQEを行う必要性はない。アナウンスメント効果を意識しても、すでに国債市場にかなり踏み込んでしまっており、余程の事態とならぬ限りは、QE3については実現性はかなり低いのではないかと思われる。技術的な問題としてツイスト・オペを実施している中での、追加債券の買入も難しい面がある。

 次に連銀窓口貸出や超過準備金利引き下げであるが、7月5日に開催されたECB政策理事会で、預金ファシリティ金利をゼロ%としたことで、FRBが超過準備の付利引き下げを行うのではとの思惑もある。しかし、日銀は市場機能を維持させるため、付利を引き下げることはしないとみられるのと同様に、バーナンキ議長としても付利の引き下げ効果と付利を維持することでの市場機能維持を秤にかければ、付利の維持を選択するのではないかと思われる。

 このため、予想される緩和策としては9月のFOMCでは、経済物価情勢見通しも発表されることで超低金利政策の継続期間の予想をさらに引き延ばす、いわゆる時間軸強化あたりにしておくのではないかと考えられる。これもあくまでアナウンスメント効果でしかないが、市場からの追加緩和期待に応えなければならないとすれば、このあたりの選択となる。ただし、これにしてもあくまで約束ではなく予想である。しかも、先に延ばすほど、現在行っている緩和策の効果はないことを自ら明らかにしてしまいかねない。この選択肢もなかなか難しい面がある。

 11月には米国では大統領選挙が予定されていることで、現政権に有利とされるような政策はその直前には行いづらい。つまり、10月23日から24日にかけてのFOMCでは、余程のことがない限り政策変更が行いづらい。このため、早期に市場の期待に応えておくのであれば、9月のFOMCでしかない。ただ、9月のFOMCで時間軸強化あたりでお茶を濁すのであれば、むしろ何もせず先々の追加緩和の期待をつなぎ止めておくだけという手段もありうるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2012-08-03 09:52 | 中央銀行 | Comments(0)

つなぎ国債発行による影響

 7月31日に2012年度の赤字国債を発行するための特例公債法案の修正案が、閣議決定された。

 基礎年金の国の負担分を二分の一に維持する2.6兆円の財源について、政府は当初「交付国債」を発行して対応するとしていた。消費税率の引き上げの見通しが立っていないとなれば「つなぎ国債」の発行は難しいとし、安住財務大臣は「交付国債」を発行する案を示していたのである。

 ところが、交付国債を発行した場合には、将来の年金支払いに備えて保険料を原資とした年金特別会計の積立金を取り崩していったん穴埋めする必要がある。このため厚労省は「一時的であっても積立金を取り崩せば、年金財政への信頼が揺らぐ」と反発していた。結局、自民、公明両党の反対により、社会保障・税一体改革関連法案に関する民主党と自公両党による3党合意でこれは撤回されることが決まった。

 つなぎ国債としての年金特例公債の償還財源は、審議中の社会保障・税一体改革法案の施行による消費税の増収分を充当することになる。これに伴い、政府は今年度内に補正予算を編成し、年金特例公債の発行による歳入の追加との年金特別会計への繰り入れを行うことになる。

 財務相は今年度想定される2.6兆円の年金特例公債(つなぎ国債)の増発分に関して、カレンダーベースの発行額は変更しない方針を明らかにしている。この分は前倒し発行分の取り崩しで行うことで、今年度予定されているカレンダーベースでの発行額149.7兆円に変化はなく、このため国債市場への影響も限定的となる。

 ただし、自民党は31日の役員会で、この修正案にも現時点で反対する方針を確認しており、衆院で可決される可能性は高いようであるが、参院で可決・成立されるかどうかは見通せない状況となっている。

 政府・民主党は、特例公債法案の衆議院での採決について、消費税増税法案の参議院での採決前に行う構えだが、自民党はこの法案を解散・総選挙に追い込むためのカードというか人質としているようである。

 国債市場にとり、つなぎ国債が発行されても国債需給にはほとんど影響されないため、材料視していない。ただし、特例公債法案が成立しない場合には、10月中に財源がほぼ枯渇するとの見通しも示されており国債市場への影響も考えられる。危険な綱渡りは避けるべきではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2012-08-02 11:07 | 国債 | Comments(0)

基金による国債買入で再び未達が発生。今後の対応は

 日銀が6月1日に実施した基金による国債買入において5月16日以来の未達が生じた。日銀は残存期間1年以上2年以下、および2年超3年以下を対象にした国債の買入をオファーしたが、2本とも応札額が買入予定額に届かない未達となった。残存1年以上2年以下は、買入予定額5000億円に対して応札・落札額が3594億円、残存2年超3年以下は買入予定額2000億円に対して応札・落札額が964億円にとどまった。

 7月30日に実施された2年国債(利率0.1%)の入札では、最低落札価格100円00銭5厘(0.097%)、平均落札価格100円00銭6厘(0.096%)となり、落札利回りは2005年6月の入札以来の0.1%割れとなった。応札倍率も11.83倍とやはり2005年6月の入札(268.48倍)以来の二桁台となるなど、かなりの需要がみられた。

 公社債投資家別売買高をみると、外国人は昨年10月以降、10兆円を超える短期債の買い越しが継続している。

 7月5日に開催されたECB政策理事会では、政策金利であるリファイナンス金利を0.25%下げて、1999年のユーロ導入以来の過去最低水準となる0.75%とすることを決定し、さらに民間銀行がECBに預金を預け入れる際の預金ファシリティ金利も0.25%引き下げられゼロ%とした。このため、預金ファシリティに預けられた資金が、日本の短期債に流れ込んでいるとの見方もある。しかし、これについては為替リスクが伴う上、今朝の日経新聞にもあったように、預金ファシリティに滞留していた資金は、利子はつかないが安全な当座預金に向かったと思われ、日本の短期債への影響はなかったのではないかと思われる。

 ただし、すでにドイツなどの2年債利回りはマイナスとなっており、安全資産としてドイツなどの中短期債を購入していた投資家が、その一部を買わせリスクを負っても日本の中期債に振り向けてきている可能性はありうる。

 もちろんその前に、短期国債を主体に大口の買い手となっている日銀の存在も、中短期債の需給に逼迫感を強めさせている事も確かで、ここに海外投資家の買いが追い打ちをかけた結果での未達現象であるとも言える。

 日銀は7月12日の決定会合で、固定金利方式・共通担保資金供給オペ等で未達となるケースが多く出てきたことから、固定金利方式・共通担保資金供給オペを5兆円減額し、その分短国買入を5兆円増額し、さらに短国買入の入札下限金利の0.1%を撤廃した。その後、7月18日には、通常の長期国債買い入れ(輪番オペ)の残存期間1年以下を対象に0.1%の下限金利を撤廃していた。

 それぞれ、日銀が目標どおりの国債を買い入れて資金を供給しやすくするための措置であるが、それでも今回のように残存1年以上の国債買入で未達が発生したことで、1年を越す期間の国債買入の下限金利0.1%の撤廃観測も出ていたようである。

 国債買入の下限金利の撤廃は、金融政策とは異なる技術的なものであり、これを金融政策決定会合で決める必要はなく、7月18日のようにいつ事務的に発表されようが問題はない。7月12日の基金の国債買入の下限金利の0.1%等も金融政策の変更とは異なるものであった。ただし、実際に日銀が残存1年を越す国債買入の下限金利を撤廃するかどうかは、不透明であるが、今後札割れが度重なれば、その思惑は強まるとみられる。


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by nihonkokusai | 2012-08-02 09:41 | 日銀 | Comments(0)

議事録にみる日銀が国債買い入れオペ対象を拡大した理由

 日銀は31日に金融政策決定会合議事録等(2002年1月~6月開催分)を公表した。

 2002年1月に日銀は国債買い入れオペ(輪番オペ)の対象を、それまでの発行後1年以内のもの(1年ルール)から、発行年限別の直近発行2銘柄を除くに拡大しているが、2002年1月15、16日の金融政策決定会合議事録から、その理由を探ってみたい。まず当時の和田企画参事官からの説明があり、その部分を見てみたい。

 「国債買入オペについては、実質的な中央銀行による国債引受との見方を排除するために、国債売買基本要領において、買入対象から、発行後1年以内のものを除いている。・・・この1年ルールは昭和42年の国債買入開始時から導入しているが、最近、国債の発行市場・流通市場は格段に整備されてきている。また、この1年ルールの存在に加え、先物割安銘柄を除外しているため、長期ゾーンの買入対象は事実上残存8~9年の銘柄のみであり、中短期ゾーンに比べて著しく対象銘柄が少ないといったマイナスの影響が生じている」

 これについて解説すると、日銀は資金供給手段のひとつとして国債の買入を1967年2月から始めているが、買入対象については国債の日銀引受との見方を避けるため、買入対象から、発行後1年以内のものを除くという「1年ルール」を設けた。さらに債券先物のチーペースト(現渡し可能な再割安銘柄でこの価格が先物に連動、通常残存7年の10年債)を買い入れて流通玉を減少させてしまうと、先物の踏み上げが生じるリスクがあるため、それも除いての買入を行っていた。

 国債市場が整備され、活発な取引が行われている中で、1年ルールがあると特に10年債の対象銘柄が少なくなっていたことで、その拡大を図ることが大きな目的であった。

 「新たなルールとして、発行年限別の直近発行2銘柄を除くものにしたいと考えている」(和田企画参事官)とあるが、なぜ直近発行2銘柄を除くにしたいのかという理由としては、「取引が活発でペンチマークを形成している発行直後の銘柄を、対象銘柄から除けば、ベンチマーク銘柄について市場での価格形成を歪める惧れはないと考えられる」としている。つまり、なるべく対象銘柄を拡大したいが、カレント物とも呼ばれる直近発行銘柄への影響を考慮するとともに、直近発行2銘柄を除くということで国債引受との見方も排除することも意識されたものとみられる。

 「新ルールに移行した場合、買入対象銘柄の市中発行残高は、金額ベースだが現状比3割強の増加となる」(和田企画参事官)

 これに関する政策委員の反応は、中原伸之審議委員が、「国債の購入がやりやすくなって機動的なると思う」とコメントしている。田谷委員、三木委員なども賛成し、実際の採決でも全員一致で賛成としている。

 このように日銀が国債買い入れオペ対象を拡大したのは対象銘柄を増やすことが目的であり、日銀執行部が事前に用意した内容で意外にあっさりと決められていた。政策委員などから、日銀による国債の直接引受に近づくといったような懸念は示されていなかった。銘柄は拡大されても、国債の買入と直接引受では明確な違いがあるとの認識によるものであろうか。

 米国でもFRBは資金供給手段の手段として米国債の買い切りを直近発行銘柄を除くという条件付きで行っている。さらに日銀はすでにTB(現在はTDB)の買い切りなど行っており実際に1年というルールが必要かとの問題もあり、1年ルールの撤廃を求める声も強かったことなども、1年ルール撤廃の要因であったとみられる。

 ちなみに、国債売買基本要領では「発行後1年以内のもののうち発行年限別の直近発行2銘柄を除く」と、「発行後1年以内のもののうち」との表現が残っているのは、当時すでにすでに発行が停止されていた4年国債や6年国債の2銘柄が恒久的に対象から外れることになるため、1年以内という文言が残されたそうである。

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by nihonkokusai | 2012-08-01 09:46 | 日銀 | Comments(0)
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