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メルケル首相が称賛したカナダでの財政再建とは

 夏季休暇明けのメルケル首相がまず訪問したのは、ユーロ圏内の国ではなくカナダであった。オタワで開かれたレセプションでメルケル首相は、カナダの財政規律や経済成長促進、借金に依存しない経済を称賛し、17カ国から成るユーロ圏の手本になると指摘したそうである(ブルームバーグ)。メルケル首相が称賛したというカナダでの財政再建とはいったいどのようなものであったか、これまで何度かこのコラムでも指摘したが、再度振り返ってみることにする。

 カナダの財政赤字は、1970年代以降、景気低迷の中での歳出拡大、それに伴う国債費増大などにより大幅なものとなり、累積債務残高も急速に増加しました。累積債務残高の対GDP比で、1991年度以降、カナダはG7各国の中でイタリアに次いで高い水準となっていました。このため、財政再建が重要課題となっていたのです。

 本格的に財政再建に取り組み始めたのが1993年11月に発足したクレティエン政権でした。同政権では財政赤字削減のために閣僚級のメンバーからなる特別委員会を設置し、選挙公約である「3年以内に財政赤字の対GDP比を3%以内に抑える」という目標をもとに財政の立て直しを進めていきました。その結果、1994年度以降、財政再建は強力に進められ1997年度以降は単年度ベースで財政黒字を計上したのです。

 クレティエン政権はプログラム・レビュー(Program Review Tests)を導入し、6つの基準を設定し、これに基づいて全ての既存政策について徹底した見直しを実施したのです。その6つの基準とは、国民に求められているのかという公共の利益の基準、政府が提供すべきなのかという政府の役割」の基準、連邦政府に適切な仕事なのか州政府の仕事なのかの基準、民間に任せることはできないのかという民営化の基準、効率を上げることはできないのかという効率性の基準、 その結果残った仕事についての費用負担の適切さの基準です。

 州への交付金や州との権限関係の見直し、失業保険制度や年金制度の改革、産業補助金の削減、政府企業の民営化やエージェンシー(外局)化、連邦公務員の削減、内閣組織の簡素・効率化などが積極的にすすめられ、各省庁の予算を1994年度から4年間で平均22%も削減したのです。

 歳入についても大規模法人税の税率引上げ、付加法人税の税率引上げ等が実施されたものの、カナダでの財政再建は主に歳出削減により進められていったのです。

 財政再建を進めた時期に、米国経済の回復によりその影響を受けやすいカナダ経済が回復したことも、カナダの財政再建を支えた要因として指摘されています。 しかし、カナダの経済に対する信任が国内外で厳しく問われたことで、そうした危機感が国民に共有されたことが、カナダの財政再建を成功させた大きな原動力になったことも確かであると思われます。

 日本でも2009年の民主党政権が行った事業仕分けは、カナダのプログラム・レビューが参考にされたものです。しかし、カナダの財政改革は腰の座ったものであったのに対し、日本における短時間での仕分け作業では財政削減効果は限定的です。すでに1990年代のカナダ以上に危機的な状況となっている日本でも、本格的な財政再建が必要であり、それは国民も求めているものであるはずです。(参考、財務省資料「カナダの財政再建について」)


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by nihonkokusai | 2012-08-20 10:33 | 財政 | Comments(0)

日本での政策金利のマイナスはあり得るか、また効果はあるのか

 2009年7月にスウェーデンの中央銀行であるリクスバンクは世界で初めてマイナス金利政策を実施した。預金ファシリティの金利をマイナス0.25%に決定したのである。預金ファシリティとは超過準備に利息を支払う制度である。

 この政策については、超過準備にマイナスの金利をつけることにより、その分の資金が市中に還流させることが目的かとの見方があった。しかし、実際には0.25%の政策金利に対し、0.5%上乗せしてロンバート貸出金利、0.5%差し引いて預金ファシリティ金利(その結果マイナス0.25%)を単純に決めただけのことであったようである。

 今年の7月5日に、デンマーク中銀ではECBの利下げに合わせて、主要政策金利である貸出金利を0.25%引き下げ0.20%にし、譲渡性預金(CD)金利を0.05%からマイナス0.20%に引き下げている。これは 自国通貨のクローネが、ユーロに対し強くなり過ぎないようにするための措置とみられた。

 たしかにマイナス金利と聞くとインパクトのある政策のように思われるが、実際のところそれほど影響が出ることは考えづらい。日本でも、たとえば超過準備の付利をマイナスにしたとしても、その資金が流れる先は国庫短期証券などであろう。銀行の貸し出しを延ばそうとしても、そもそも企業に資金を借りて設備投資をしようという意欲がなければ、貸出が伸びるわけではない。これまでも日銀がゼロに近い金利で貸出を行っても、それが直接景気浮揚に結びつくわけではなかった。もちろん、景気が回復基調となり資金需要が増えてくれば、その効果は出てくるわけではあるが。つまりはマイナス金利だろうが、金融政策で景気に直接刺激を与えることは難しい。

 日本では以前、預貯金金利を課税などにより実質的にマイナスにしてはどうかとの意見も出ていた。金融機関などが保有する大量の資金は、それを安全に置く場所は限られるため、マイナス金利であろうが、リスク資産に向かうようなことは考えづらい。それに対して、個人は金利に敏感であるため、極力、マイナス金利は避けようとすることが考えられる。つまりペナルティが付く預金に対しては、現金を引き出して現金として保管しよう。つまりタンス預金が増える。

 まとまった資金は個人向け国債等に振り向けられることも予想される。これで国債の安定消化には繋がりそうにみえるが、実はそうでもない。銀行はコア預金という考え方があり、普通預金でも一定金額は口座に滞留しているため、その分、ある程度期間の長い国債等で運用することがある。ところが個人の預貯金口座に資金が置かれなくなると、金融機関は運用する資金そのものが減少し、長い期間の国債が買えなくなり、これは国債需給にマイナスの影響を与える懸念がある。

 預貯金金利まで実質マイナスとなるとなれば、個人はたとえ保有する現金が増えても、それを消費、いや浪費するようなことは考えづらい。欧州と異なり、もし日本でのマイナス金利があったとしてその背景に考えられるのはデフレである。つまり、デフレの解消が想定できなければ、大事な現金は利息はつかなくてもできるだけ安全に保管し、将来に備えることを優先すると考えられる。マイナス金利にすれば景気浮揚に繋がるとの見方は、決して正しいとは思えないのである。


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by nihonkokusai | 2012-08-19 11:13 | 日銀 | Comments(0)

今回の日本の長期金利上昇の要因

 最近の長期国債先物(債券先物)のチャートを見ると、7月23日から25日にかけて連日144円64銭が当日高値となっていたが、この144円64銭が3月半ばあたりからの上昇相場における目先の高値となった。10年債でみると7月23日から26日にかけて0.720%まで連日買われていたが、やはりこの0.720%で利回りは底打ちした。

 その後の債券先物の動きをみると、7月31日にいったん144円を割り込んだが、そこから8月3日に144円57銭まで買い戻されている。10年債も0.730%まで利回りが低下した。この背景には、8月2日のECB政策理事会で国債の買い支え等が発表されず、スペインの10年債利回りが再び7%台に乗せるなど、あらためてリスク回避の動きが出ていたことがある。

 ただし、この間の日本の株式市場の動きを見ると、日経平均は8月3日に一時的に下げてはいたがすぐに切り返すなど、7月25日あたりから上昇相場が継続しており、これは米国のダウ平均なども同様の動きとなっていた。また、外為市場でもあきらかに円高の動きが止まり、ここ数日はやや円安の動きを強める格好となっていた。

 債券先物は、その後、8月6日あたりから下落基調となる。そのきっかけとして自民党が衆院への内閣不信任決議案や、参院への首相問責決議案を提出する構えを見せ、消費増税の行方が不透明になったこと、さらに7日の債券先物のシステム障害があった。ただし、これはひとつのきっかけであり、8月3日の高値144円57銭から16日の安値143円27銭までの下落については、海外のリスク回避のためのポジションを解消してきたことが最大の要因であった。

 これは、この間の米国債、ドイツ国債、英国債の動向、さらには欧米の株式市場と東京株式市場の動向、そして外為市場の動きをみれば一目瞭然である。つまり円債もリスク回避という理由で、海外投資家などにより買われた反動が起きたということであろう。

 特に7月23日あたりにかけては、ドイツの2年債利回りがマイナスとなり、また10年債利回りも歴史的な低水準となり、米国債も同様の動きとなっていた。日本の長期金利も0.8%を大きく割り込み、0.7%に迫った。欧州の信用不安は燻り続け、不安解消への有効な手段は考えられなかった。欧州の景気悪化懸念もあり、世界経済への影響も危惧され、一部の国の国債利回りが歴史的水準にまで低下した。

 しかし、欧州の信用問題に関して、スペインの財政も問題視されたが、市場で懸念されていたのはむしろスペイン国債の利回り上昇であった。これについては7月25日に、ECBのドラギ総裁がロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要ないかなる措置を取る用意があると表明するなどしたことが、市場の不安心理をやや後退させた。

 このように今回の日本の長期金利上昇は、その前の利回り低下が外部要因によるものであったと同様に、欧米市場動向による外部要因であったことは確かである。このため、今後、まだ調整が続くのか、それともどこかのタイミングで底打ちするのかも、海外動向次第ともいえるのではなかろうか。

 日本の長期金利が上昇したと言っても、いまのところは0.720%から0.860%(8月16日)までに過ぎないわずかな調整である。特にここにきての動きの背景には、欧州の政治家も夏休み等で政治家の動きが鈍く、またロンドン・オリンピックの開催もあり、ユーロ圏の動向にあまり関心が持たれなかった面もあろう。

 しかし、来週はさっそくギリシャとドイツ、フランスとの首脳会談を控えているなど、あらためて財政危機が意識される可能性もある。ただし、今回の円債を含めた調整により、上値が重くなることも確かとみられ、もし10年債利回りが0.720%を下回るとなれば、相場の地合が大きく変わるぐらいのあらたな材料が必要となりそうである。


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by nihonkokusai | 2012-08-18 11:11 | 債券市場 | Comments(0)

2020年東京オリンピックの開催の可能性と日本の財政への影響

 ロンドン・オリンピックでの日本人選手の活躍により、世界的なイベントとしてのオリンピックの魅力があらためて日本でも見直されたのではなかろうか。今月20日にオリンピックのメダリストによる凱旋パレードが銀座で予定されている。もしこれが実現すれば100万人規模の人がパレードを見に来ると予想されており、大きなイベントになることに間違いはない。このパレード開催の背景には、2020年東京オリンピックの招致にむけて、特に都民の支持率を高めようとの意図もある。

 2020年の夏のオリンピック開催都市を選ぶIOC総会は、来年9月7日にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれる。今年5月の第1次選考で、東京、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)の3都市が最終選考に進んでいる。

 トルコは2020年のサッカー欧州選手権にも立候補しており、同じ年に大規模な競技大会を開催することは困難としてやや不利との見方もある。ただし、サッカー欧州選手権の開催地はまだ確定しておらず、このあたりの状況は不透明となっている。また、スペインについては、欧州の信用不安の震源地のひとつともなっているため、オリンピックどころではないという状況ではなかろうか。このため2016年の大会にも立候補していた東京が有利との見方もあるが、こちらは地元東京都民の支持率の低さが大きなネックとなっている。

 しかし、今回のロンドン・オリンピックでの日本人選手の活躍により、日本でのオリンピック開催に向けた機運が今後盛り上がる可能性がある。私を含めて、一定の年代層にとり生きている間にもう一度オリンピックの地元開催を見てみたいという人もいるであろうし、夏季オリンピックの地元開催を全く知らない年代層にとっても、地元で開催されるオリンピックへの関心があらためて高まるのではなかろうか。

 もし2020年の夏季オリンピックの東京開催が実現すれば、日本での久しぶりのピッグイベントとなる。費用は最低限に抑えられるとされながらも、このオリンピック開催によるインフラ整備等にはかなりの費用がかかることが予想される。

 現在の都内のインフラは前回の東京オリンピックで整備されたものが多い。特に首都高や新幹線、青山通り、東京モノレール等の交通網が整備された。首都高などすでに50年以上も経過しているものはあらためて、メンテナンス等も必要とされるであろうし、渋滞回避のための整備も必要になるのではなかろうか。

 これらのインフラ整備等も含めて、あらたな費用もつぎ込まれるとみられるが、公共投資により日本の景気回復のひとつのきっかけとなる可能性もある。また、商業化されてきているオリンピックでもあり、一定の収入も見込めるであろう。また、海外からの観光客の流入などにも繋がり、日本への宣伝効果も大きなものがある。

 東京オリンピックに向けてのインフラ整備等の反動が、昭和40年不況を呼び、戦後初の国債発行に繋がった。以前にも指摘したが、オリンピックの国内開催は、日本の財政面で大きな転換の年となっていた。

 札幌で冬季オリンピックが開催された1972年は日本列島改造論が出た事に加え、福祉元年とも言われた年となった。その後のオイルショックも加わり、高度成長から低成長時代に移るとともに、一般歳出に占める社会保障費を増加させるきっかけともなった。

 長野で冬季オリンピックが開催されたのが、1998年2月である。この2月に30兆円の公的資金枠を設けた金融システム安定化法が成立するなど、日本では不良債権問題が大きくクローズアップされた。11月にはムーディーズによる日本国債の格下げがあり、年末には運用部ショックもあった。日本の財政悪化が加速されたのが、この1998年あたりからである。

 もし2020年の東京オリンピック開催が決まれば、日本の財政にとっても、2020年が大きな節目の年になる可能性がある。2020年あたりまでは現在の国債発行ペースが維持できるかもしれないが、これがいつまで可能なのかは現時点ではっきりしない。できれば、これをきっかけに日本の財政悪化に歯止めが掛かり、財政再建への道筋が見えてくるような格好となれば良いが、過去のオリンピックの時と同様に財政がより厳しい状況になってしまう可能性もある。日本の財政が良い方向に向くのか、それとも悪い方向に向くのか、このあたりは当然ながら、政治家の仕事となろう。


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by nihonkokusai | 2012-08-17 09:46 | 財政 | Comments(0)

日銀の長期国債保有額が日銀券残高を上回る

 日銀が発表した8月10日現在の営業毎旬報告によると、日銀が保有する長期国債は約80兆9698億円となり、発行銀行券残高の約80兆7876億円を上回った。

 この長期国債とは資産のうちの国庫短期証券を除く国債の66兆4709億円と、別枠となっている資産買入等の基金のうちの国債14兆4989億円を加えたものである。

 日銀の国債買入には、行内ルールとして日銀の保有する国債残高を銀行券発行残高の範囲内とする運営ルール、いわゆる日銀券ルールが設けられている。

 日銀券ルールが設けられたのは、2001年3月19日の日銀金融政策決定会合の際である。日銀は量的緩和政策を決定し、その際に国債買切りの増額も決めている。このときに新たなルールが提案されたのである。 その際、当時の藤原副総裁は次のように発言している。

 「これまでの銀行券と長期国債保有をマッチさせるルールは守るべきだと思う。私としてはこれまでの増加額ルールをストックのルールに変え、本行の長期国債保有額の上限を銀行券発行残高とするのが良いのではないかと考える」(2001年3月19日の日銀金融政策決定会合議事録より)。

 国債の買入れについては、長期国債オペで成長通貨を供給するという目的で、それまではフローベースで増加額ルールを設けていたものを、ストックのルールに変えたことで日銀券ルールが生まれることになった。さらに当時の速水総裁は次のように発言をしている。

 「長期国債買切りオペの増額は、やりようによっては大きな副作用を伴うものである。今回の措置が国債の買い支えとか財政ファイナンスを目的とするものでないことは当然であるが、そうした誤解をされないためにも明確な歯止めを用意しておくことが不可欠だと思う。具体的には長期国債オペで成長通貨を供給するとこれまで私共が言ってきた考え方を堅持する意味で、今度は銀行券のフローではなく発行残高を上限として必要に応じ国債の買切りオペを行うという考え方が適当ではないかと思う」

 こうして「銀行券発行残高という明確な条件を設ける」という日銀券ルールが行内ルールとして生まれた。

 ただし、この日銀券ルールは、これまでの日銀の国債買入に適用されるものであり、基金で買い入れた国債は臨時措置のために分別管理されているため、形式上はまだ日銀券ルールに抵触はしていないと日銀はしている。

 しかし、別枠で買い入れようが、日銀が保有している国債が日銀券発行残高を上回ったことに変わりはない。実際には短期国債も加えれば、すでに日銀券ルールに抵触していたという事実もあり、日銀券ルールそのものの意味もかなり失われているのが現状であると思われる。

 政策金利はすでにゼロ近傍となり、これ以上の引き下げは現実的には難しい(マイナス金利という手段はあるが)。このため実質的な金融政策のターゲットは現在、資産買入等の基金の額となっている。その際に大きく基金の額を引き上げるには国債を中心にを増やすしかない。

 これについて市場参加者が、財政ファイナンスを目的とするものでないとの認識であるのであれば、特に大きく問題視されるものではない。欧米の中央銀行も大量の国債買入を実施しているが、それぞれ危機対応のためのものであり、財政ファイナンスを意識したものではない。日銀も同様との連想も働いていよう。

 日銀券ルールはあくまで歯止めをかけるためのものであり、「財政ファイナンスを目的とするものでない」と日銀が主張し、それをマーケットも受け止めれば問題はない。しかし、今後、マーケットが日銀は財政ファイナンスを目的に買入れている、もしくは財政規律を無視した国債発行がなされ、それに日銀も協力していると認識されてしまうと、長期金利の急上昇に結びつく懸念はある。

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by nihonkokusai | 2012-08-16 09:44 | 日銀 | Comments(0)

日本国債の実勢価格の算出の仕方

 債券の中でも売買高が多く、取引の中心となっている国債の価格や評価額はどのように算出されているのかご存じであろうか。国債はどこかの取引所で株のように売買されて、その利回りが長期金利としてニュースで発表されているわけではない。たしかに債券先物(長期国債先物、JGB先物)は東京証券取引所で売買され、その価格は株価と同様にひとつであり、引け値や清算値ははっきりしている。ところが、肝心の現物国債は店頭取引、つまりは業者と投資家が直接相対で取引しているものである。

 数百兆円もの残高のある国債の評価額は、大量に保有している銀行や生保、年金、日銀等々の資産価値に大きな影響を与えることになる。しかし、個別の取引価格等は顧客との守秘義務もあり、外部に発表する必要はない。このため、この評価については、日本証券業協会が発表する公社債店頭売買参考統計値、もしくは日本相互証券(BB)の発表する国債価格が使われる。国債は金利商品であり、利率や償還日の違い等で価格で比較ができないため通常の比較には利回りが使われる。その利回りから価格が算出される。どちらも、複数の証券会社(日本証券業協会は21社、BBは18社)からの報告された15時を基準とした価格をもとに、(その中の上下を割愛して)平均値を算出したものである。また、日本経済新聞や野村証券等が共同で開発した債券標準価格(JS Price)も使われているようである。このあたりは使い分けがなされているようで、基本的に相場の居所を確認するには日本相互証券(BB)の利回り(価格)が参考にされるが、財務上の評価等を算出するには日本証券業協会が発表する公社債店頭売買参考統計値が使われることが多いようである。また、年金などのインデックス運用などを行っているところを中心に、また社債などの価格をチェックするためとして、債券標準価格(JS Price)が使われることもある。

 日本相互証券(BB)に関しては、「一定の基準により選定した主要顧客および当社のデータに基づき算出した午後3時時点における国債価格」としているように、現物の取引利回り(価格)については、業者と業者がポジションの調整として利用している日本相互証券での取引価格が市場での大きな目安となっている。こちらの気配はBBの端末を持っているところはどこでもチェックができる。ただし、売り買いをどこが提示したり、行っているのかは画面上ではわからない仕組みとなっている。カレント物と呼ばれる直近に入札のあった国債については、かなり頻繁にこのBBで取引されているため、これが大きな目安となる。相場の上げ下げ、方向性については債券先物でチェックができるため、債券先物とこのBBでの現物の値動きから、おおよその債券相場の動向とともに、国債価格の居所を確認することが可能となっている。

 ただし、国債には利率や償還日が異なれば銘柄が違う。すべての国債がいつも売買されているわけではない。むしろ売買されている銘柄の方が少ないぐらいである。流動性の低い銘柄の場合の報告値段は各業者(証券会社)の推定実勢になる。つまり、イールドカーブ(縦軸に利回り、横軸に期間を目盛りにとったグラフ)の形状等からその期間の利回りの居所を探り、さらに発行量や利率等も参考にして各業者が推定した価格(利回り)を報告することになる。その結果、同じ銘柄の公社債店頭売買参考統計値とBB国債価格にバラツキ等が出ることもある。

 このように流動性の高い国債といえども、実勢価格については各業者による投資家との売買価格がひとつの基準にはなるものの、現実にはそれに加えBBの価格動向やカーブの情勢、債券先物の動向等々を意識して各銘柄の推定価格を各業者が提示していると思われる。

 国債の実勢価格については、現実の利回り動向が日本相互証券の画面でも確認できることで、外部から見ても基準値がおかしいかどうかを判断しやすいため、LIBORの不正操作のようなことはしにくい面がある。さらに複数の基準値の存在で、チェック機能が働く面もあるかもしれない。

 LIBORの不正問題についての対応を考えるにあたっては、出合った金利そのものが外部で確認できるような工夫も求められるのではなかろうか。また、使われる基準値について英国銀行協会の数値だけが使われている点にも問題があるのかもしれない。


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by nihonkokusai | 2012-08-15 09:59 | 国債 | Comments(0)

米国の財政の崖とは何か

 7月9日の日銀、白川総裁は会見の中で、米国経済に関して次のような発言をしている。

 「いわゆるfiscal cliff(財政の崖)の問題を反映し、財政政策の先行き不透明感が強い状態が続いており、その回復力に引き続き注意が必要です。」

 今年に入り、バーナンキFRB議長は「fiscal cliff」という言葉を使うようになり、メディア等でも注目されるようになった。また、格付け会社も注目しているようで、6月にS&Pは財政の崖の回避に期待するとのコメントを出している。

 「fiscal cliff(財政の崖)」とは、かなり昔から使われていた用語であるようで、特定の時期に何らかの事情で緊縮財政となり、これによる雇用を中心とした景気への悪化が予想される状況を示す。

 今回バーナンキ議長が示した「財政の崖」とは、今年末に所得税などに対する大型減税策、いわゆるブッシュ減税が期限切れとなることに加え、2011年にアメリカの債務上限が問題視された際に2013年1月からの強制的な予算削減が決まっており、この減税の期限切れと歳出の自動削減による急激な財政引き締め状態に陥ることを示す。この影響は米GDPの約4%にも達するとみられており、米議会がこの急激な財政引き締めを緩和しなければ、米景気そのものが崖っぷち状態に陥る懸念が出ているのである。

 米国にとっても今後の緊縮財政策は避けられないものの、あまりに急激な削減は景気に悪影響を及ぼしかねない。米議会では共和党も民主党も「財政の崖」はなるべくなだらかものにしようとの見方では一致しているようであるが、両党の考え方そのものには大きな隔たりが存在しており、ねじれ議会の問題が崖として立ちはだかる可能性がある。

 11月には米大統領選挙と議会選挙が控えており、その結果次第では、財政の崖を回避するような動きが強まるのではないかとの期待もある。しかし、それでも残された時間は限られている。さらに米国の債務は、大統領選が実施される11月から年末にかけて再び法定上限に達する見通しともなっている。「財政の崖」の緩和を巡る駆け引きに、債務上限引き上げ問題が絡み、米政府の資金繰りが問題視される懸念も出ている。

 米国の財政の崖については、事前にこれだけ警戒され、バーナンキ議長も警告を発している以上は、大きなショックは回避されるとみられる。市場でも警戒はしているが、それを材料に米株などを売るような環境でもない。崖が発生する可能性は現状、それほど高くはないであろうとの希望的観測も働いているのかもしれない。ただし、その動向そのものが一時的な材料視されることもある。年末までのスケジュールを見ると、途中、ハラハラさせられる場面もあるかもしれないことで、今後もfiscal cliff(財政の崖)の問題は注意して見ておく必要がありそうである。

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by nihonkokusai | 2012-08-14 09:37 | 財政 | Comments(0)

英国大手銀行の不正事件の要因

 8月6日に、英国の老舗の世界的な大手銀行「スタンダード・チャータード銀行」は、過去10年近くに渡って「イラン政府」と合計で約19兆円ものの不正取引を行ったとアメリカ・ニューヨーク州の金融当局が発表しました。

 英国のこちらも世界的な大手銀行といえるバークレイズは2005~2009年に虚偽申告を繰り返し、経済の実態とかけ離れてLIBORを上げ下げしたとして、英国の金融当局は約70億円(5950万ポンド)の課徴金を課され、バークレイズのボブ・ダイヤモンド最高経営責任者(CEO)が辞任に追い込まれました。  世界でも最大級の金融グループで英国に拠点を置く、HSBCホールディングスはメキシコの麻薬カルテルなどの大量のマネーローンダリングを行なっていたとして非難されました。

 そして、米金融大手のJPモルガン・チェースは、デリバティブと呼ばれる取引で失敗し、約20億ドルの損失を計上すると発表しましたが、この舞台となったのはロンドンです。

 これらの銀行が起こした事件は英国の銀行が起こしたもの、もしくは英国で起きたものです。ロンドンの金融街はシティと呼ばれ、今でも金融の一大中心値であり、ここには世界の中央銀行の基になったとされるイングランド銀行があるように、近代の金融システムそのものが形作られたのがロンドンです。

 つまりオリンピックが行われていたロンドンは、ギリシャ発祥のオリンピックが近代オリンピックとなってフランスやイギリスで開花されたように、イタリアやオランダで生まれた金融取引を近代的な金融システムとして成立・発達させたのがイギリスです。この近代金融システム発祥の地であるイギリスで大きな金融の不祥事が発生したということは、これまでの金融の歴史も大きく関わっていると思われます。

 そもそも金融取引は信頼・信用が重要な要素となっています。イギリスは17世紀あたりからの大陸との貿易や産業革命などを経て、その信用を積み重ねたことで、ロンドンを拠点とした一大金融取引の中心地となってきました。

 そのことを示すものとして、London InterBank Offered Rate(LIBOR)があります。LIBORは複数の銀行が出している金利を平均値化して、ロンドン時間午前11時に毎日発表される指標となる金利です。これは英国内の住宅ローンや預金金利などに直接影響する金利であるともに、国際的な融資などにおける国際金融取引の基準金利として、またスワップ金利などデリバティブ商品の基準金利としても利用されています。

 LIBORの金利は各銀行が提示するものですが、その金利については銀行ごとの裁量に任された部分があり、不正しようと思えば可能となっています。ただし、これは制度的な欠陥というよりも、金利が相対取引でつくものである以上は致し方ない面もあります。担当者が適切な数値を出しているであろうとの信頼に委ねられていた面も大きかったのです。

 この信頼が結果として裏切られました。リーマン・ショックの際のLIBOR操作については、高い金利を提示することで、自分の銀行が危ないという指標にされかねず、致し方のない面もありました。これについてはこれにはイングランド銀行のタッカー副総裁の関与があったのではないかとの見方もありましたが、この関与は否定されました。ただ、それ以前から自らの利益を挙げるため一部の人間による操作が行われていたとなれば、たいへん大きな問題です。これは現在、調査が行われている段階です。

 国際金融市場の中心は、以前はロンドンのシティでした。ところが2つの大戦を経て、基軸通貨がポンドからドルに移り、アメリカのウォール街が国際金融市場の中心となり、イギリスの金融街は衰退しました。

 それを回復させたのが1980年代のサッチャー政権による金融大改革、ビッグバンでした。これは金融に関わる規制を緩め、民間の裁量を高めるのが目的で、これにより金融街シティは復活し、ユーロが発足しても、ヨーロッパの金融の中心地はロンドンであり続けたのです。

 この規制緩和などにより金融業界はおおいに発展し、デリバティブなど多くの金融商品が生み出されたこともあり、金融取引は膨張しました。その結果、金融機関の利益そのものも巨額となり、信用よりも利益を稼ぐことが重視されるようになったのです。

 その膨張が止まり、さらにリーマン・ショックや欧州の信用不安などにより一段と金融機関の収益が圧迫されるようになりました。このため不正をしてまでも利益確保に走る者が現れ、今回のような事件が起きたものと思われます。

 また、英国銀行の不正がここにきて明らかになった背景には、米国の金融当局による欧米を中心とした大手金融機関に対する規制強化の動きも影響しているようです。いずれにせよ、今後は金融機関に対する規制はさらに強化され、金融機関への風当たりもますます強まり、金融機関や金融市場にとってはたいへん厳しい時代になることが予想されます。


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by nihonkokusai | 2012-08-13 09:42 | 国際情勢 | Comments(0)

6月の海外からの日本国債への投資状況

 財務省は8月9日に6月の国際収支(速報)を発表した。これによると経常収支は前年比19.6%減の4333億円の黒字となった。「貿易・サービス収支」が赤字転化したことに加え、「所得収支」の黒字幅が前年同月比で縮小したことから、経常収支の黒字幅は縮小した。ただし、所得収支の縮小は利払いの集中する6月末日が週末と重なり7月にずれ込んだことが主因だそうである(ロイター)。

 国際収支の発表には、付表として対外・対内直接投資、対外・対内証券投資も発表されている(財務省トップページ > 国際政策 > 関連資料・データ > 国際収支状況 > 報道発表資料)。このうち、6月の対外・対内証券投資を確認してみたい。

 国内から海外の国債等への投資は、主要国・地域ソブリン債への対外証券投資で確認できる。米国債への国内からの投資は、ネットで6月は9466億円の増加となり、5月も9855億円の増加となっており2か月連続の増加となった。ユーロ圏の国債についてみると、6月のドイツのソブリン債への投資は3214億円の減少。フランスは185億円の減少、英国は920億円の増加となっていた。

 日本の債券に対する海外からの投資を見てみると、6月はネットで1兆6661億円の増加となり、5月の1兆6630億円の増加とほぼ近い増加となった。内訳としては中長期債が1兆2660億円、短期債が4001億円の増加となっていた。5月は中長期債が5247億円、短期債が1兆1383億円の増加となっていた。

 6月の対内証券投資の地域別内訳をみると、中長期債での購入額が大きいのが、英国の1兆3534億円、中国の1484億円。流出ではシンガポールの955億円、フランスの760億円。

 中長期債への英国の差し引き購入額し5月の3145億円増から1兆3534億円増となっており、ヘッジファンドなどが中長期債主体に購入してきたようである。

 短期債の購入が大きいのは、英国の5兆8434億円、中国の949億円。これに対して流出は、フランスの1兆795億円、ルクセンブルグの1兆7129億円、シンガポール3867億円、UAE2887億円、タイ2480億円等々。

 6月の日本の国債を主体とする債券への海外からの投資は英国経由もしくは中国を中心に継続しており、それが4月と同様に中長期債主体になっていた。6月の債券相場のじり高の背景には、こうした海外投資家からの長めの期間の国債買いも影響していたものと思われる。

 ちなみに8月8日に発表された7月の対外及び対内証券売買契約等の状況(月次・指定報告機関ベース)によると、対内証券投資については中長期債が2554億円(6月が1兆2348億円)、短期債が5771億円(6月が3867億円)のそれぞれ取得超となっており、7月については中長期債の投資は6月に比べてやや手控えていたことがうかがえる。


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by nihonkokusai | 2012-08-11 09:53 | 国債 | Comments(0)

「近いうち」と「近い将来」の違い

 「近い将来」と「近いうち」にはニュアンスからみて、どの程度の違いがあるのであろうか。「近い将来家を建てます」と「近いうち家を建てます」では、確かに「近いうち」のほうが現実味がある。このため、自民党の谷垣総裁は、8月に入り突然渋りだした消費増税法案の早期成立をあらためて受け入れたのであろうか・・・(たぶん何か別な要因があると思われるが)。

 7日から8日にかけて債券市場では国債が売られ、8日に10年債利回りは0.8%台に上昇している。ただし、0.8%であろうが長期金利が非常に低い位置に止まっているのは確かである。債券相場は久しぶりに動いて、先物もそれなりに崩れたが、この程度の下落は過去の下落相場に比べれば大きなものではなく、ごく普通の値幅である。

 しかも今回は昨日指摘したように債券先物のシステム障害による影響が多分にあり、また米債や株式市場の動向も影響していた。もし日本への信認が揺らいだとなれば、東京株式市場も売られてしかるべきではなかったろうか。さらには外為市場の動きを見ても日本売り、つまり円売りが入った形跡はあまり見られなかった。

 もちろん、今回の国債売りが消費増税の行方に全く関係なく、日本の財政再建の行方が国債市場には影響しないと言いたいわけではない。ただし、今回の国債市場の動きを見ても、政局の行方については、市場は一歩引いて見ていることが感じられるのである。

 毎月巨額の国債発行を肌身に感じている債券市場関係者にとり、日本の財政再建は避けられないとの認識を持つ人は多いはずである。それでも国債の入札は順調にこなしており、投資家の需要も引き続き強く、世界的なリスクオフの動きという海外要因もあるが、長期金利は1%を割り込んだままの状況が続いている。しかし、もし何かしらのきっかけで、この好循環の流れに変化が生じた場合には、大きな相場変動も起こりうる。ただし、それがそう簡単には起きない状況にあるのも事実である。

 今回の消費増税の行方については、むしろ三党合意が成立したことが意外、と見ている向きも多かったとみられる。もし仮に消費増税法案の成立が先送りされたとしても、国債相場が急落・暴落するようなことはなかったのではないかと思われる。現実に消費税が引き上げられても、財政に影響するのは数年先の話であるとともに、予定された引き上げでも国債発行額はそれほどは減額されないとの見込みとなっている。

 現在の国債市場の需給バランス等を見る限り、これが大きく崩れるとすればかなり衝撃的な材料がなければ難しい。民主党も自民党も財政再建は避けられないとの見方をしている限り、この安定した国債の需給バランスが変わらない限り、国債への信認失墜とかで急落することは考えづらい。

 ただし、国債も市場で取引されており、国債利回りが歴史的な低水準にあるというのも事実である。この背景には、米国やドイツなどの国債利回りの低下や円高など、欧州の信用危機を背景としたリスク回避の動きが根底にある。このため、こちらの動向に大きな変化が生じれば、日本国債も上昇相場から下落相場に転じる可能性がある。しかし、これはあくまで相場の上げ下げの一環である。

 つまり日本の国債市場は当面大量の国債発行を消化しうる土台があり、日本国債への信認を意識した仕掛け売りが成功するような状況にはない。ただし、永久にこの好環境が継続するということもまた考えられない。まだ消費増税を政局の道具にできるぐらいの余裕はあるのかもしれないが、いずれ真剣に財政再建に向けての舵取りをしなければ、取り返しのつかないことになるのも事実であろう。「近いうち」にはなくても「近い将来」に、日本の財政問題が国債市場で問題視される可能性がある限り、政治家はそのあたりを肝に銘じ、財政再建に向けた真剣な取り組みを行っていくべきではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2012-08-10 09:31 | 国債 | Comments(0)
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