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相場で何か違和感を感じたときには

 違和感を感じるか感じないかは、ある程度の経験や知識が必要となる場合もあるが、直感的に何かおかしいと感じる場合もある。相場の世界においても、この違和感を感じた際には、何がおかしいのかを早めに確認することも重要である。

 ロンドン・オリンピックの開会式でインド選手団の入場の際に、インド選手のユニフォームを着用せず1人だけ赤色の上着と青色のパンツという出で立ちで行進していた女性がいたことに気が付いたであろうか。この女性はインドの選手やコーチ等ではなく、ショーの出演メンバーが紛れ込んでいたそうで、セキュリティの甘さなどが指摘された。

 この女性は特に関係者に止められる様子もなく堂々と行進していた。しかし、大会関係者は早めに気づいて対処すべき問題であったはずである。一般人が紛れ込むことはありえないとの自信からか、そのようなチェックが行われなかったのであろうか。ただし、全世界の何億人もの人はその女性への違和感は感じていたはずである。

 相場の世界でも、このような違和感を感じたときには何かしらの対処が必要となる。何かおかしいと感じたときには、その理由を確認するとともに、仮にそれにより相場が変動する可能性を感じたならば、できうる限りの対処を行うことも必要であろう。

 2003年6月の国債相場は自分でもいろいろと反省すべきことがあった。これは自分の書いたものでもその痕跡が残っている。

 2003年6月4日のコラムでは、「現在10年国債の利回りは0.5%にまで低下している。これはもちろん歴史的な低利回りである。この国債相場に対して懸念する声も強い。また国債の価格の上昇による売買益などは無視して、国債が急落したらどれだけ損失が発生するのかといった見方しかできないようにすら思える記事なども見受けられる。1%金利が上昇したら銀行保有の国債はどれだけ損失が発生するのか計算するのは簡単である。しかし、それ以前に1%金利が上昇するという根拠を述べてほしい。」と書いていた(債券ディーリングルーム、2003年6月4日の「若き知」より) 。

 ちなみに債券相場がピークアウトするのは、これからわずか1週間後である。しかも、それからしっかり1%程度長期金利は上昇することになる。見事な相場観(?)としか言いようがない。

 ところが6月9日にはこんなことを書いていた。「災害も警戒している時には起きることなく、忘れたころに起きる。相場の格言に「まだはもうなり、もうはまだなり」というのがある。もうこんなに買われているなら下がるはず。ところがいっこうに下がらない。・・・最近の株価の戻りは一時的なものと見ている人が多い。米国株に追随しているだけとの見方も強い。・・・経済指標も決して景気の回復を示すものはない。ないが株が下げなくなったのは何故なのか。誰か無理に買っているわけでもないようである。」と株の反発に対して、一種の違和感らしきものを感じていた様子があった。

 「大きな流れが変わりつつある兆候と言えなくもない。その動きはたぶん目に見えないものであろう。しかし、株価がその兆候を捕らえているとしたらどうなるのか。今回も結果として株は一時的な反発に留まるかもしれない。だが、このようなちょっとした兆候みたいなものは常に気をつけなければならない。」(債券ディーリングルーム、2003年6月9日の「若き知」より)

 どうやらこのあとのVARショックと呼ばれる国債価格の急落に対しては、ピークアウトする近くまで妙な強気でいたものの、寸前になり株価の動向がちょっと変だとして警戒心を強めていた。これは寸前になって予感が当たったとかを自慢したいものではなく( ?)、このような違和感を元にしての兆候の変化をかぎ取ることも、リスク回避には必要ではないかと思った次第である。

 そういえば、1998年末の運用部ショック(国債価格の急落)の際にも、日経新聞に出た小さな囲み記事に違和感らしきものを感じていた市場参加者も多かったはずであり、これがひとつの発端となった。当時の資金運用部が国債市場でどのような存在であり、そこの国債運用に変化が出るということは何を意味するのか。その結果はのちに国債価格の急落という運用部ショックとして現れた。

 今回の欧州の信用不安によるドイツやフランス、さらに英国やスイス、そして米国の長期金利の低下は、国債のバブル相場となっていることは確かではなかろうか。これについては「買われる理由があるため買われている」のであろうが、過去最低の利回りの更新が続く様子は、2003年6月までの日本国債の動きに近いものがある。

 いずれこの大きな反動がくるであろうが、それが何をきっかけにくるのかはなかなか予想しづらい。この兆候が、たとえば株価の動向などから読み取れることができるのかもしれないが、これもわからない。

 しかし、相場の動きに何か違和感を感じたら、それはしっかりチェックしておく必要がある。もし今回のオリンピック開会式でのインド選手団に紛れていたのがテロリストであったとしたら、たいへんな事態となる。この場合、主催者による迅速な対応があれば、大きなリスクの芽を、とりあえず押さえ込むことも可能となる。同様に相場変動の兆しを何かしらの動きで感じた際には、取り得ることが可能な範囲での対処する必要があり、それにより少しでもリスクを軽減、もしくはそれに乗じて利益を得ることも可能となる。


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by nihonkokusai | 2012-07-31 10:01 | 債券市場 | Comments(0)

先物取引の重要性と課題

 日銀の白川総裁は、Futures Industry Association(先物業協会)が主催したコンファランスにおいて「先物取引市場と業界の課題」というテーマで講演を行ったが、この邦訳が日銀のサイトにアップされており、今回はこの内容について見てみることにする。

 先物取引は商品だけでなく金融の世界でも歴史はあるが、一般にはあまり知られていない。個人的にも債券先物が取引されるまではほとんど関心はなかった。しかし、現在では金融のデリバティブの世界では中心的に存在ともなっており、たとえば債券市場の動向を見るにあたって長期国債先物(債券先物、JGB先物とも呼ばれる)は、ペンチマークのような存在となっている。

 先物取引といえばシカゴでの取引が有名であるが、そのシカゴが参考にしたのが、18世紀初頭、大阪の堂島では始まった米の先物取引である。この時代すでに証拠金や差金決済といった仕組みがあり、限月などの仕組みも出来ていたのである。白川総裁も先物取引所と呼べる組織が、世界でおそらく最も早く日本で設立されたとしている。

 「洗練された市場が自律的に発展したという事実は、条件さえ整えば、日本において先物取引が繁栄し得るのではないかとの期待が全くの的外れでなはいことを示唆している。」と白川総裁は指摘しているが、現実に債券市場での長期国債先物取引を見る限り、十分活用されていることは確かである。また、日経平均先物も個人を含めて活発な取引が行われている。

 ところがこの先物市場を含めての取引が危機を迎える場面があった。「金融危機の頂点、とくに2008 年の後半においては、欧米を中心に金融市場はほとんど機能を停止した」(白川総裁)状況にあり、カウンターリスクが強まり、CDS取引を含む店頭(OTC)デリバティブ市場において、問題が先鋭化していた際、問題への対応を検討するにあたり、「店頭デリバティブ市場については、比較的問題が少なかった先物市場の経験が広く参照された」とある。

 ここで注意しておくべきは、「先物取引」と呼ばれる取引は、大阪堂島、シカゴのCME、CBTで発達したことでもおわかりのように「取引所取引」である。債券先物は東証、日経平均先物は大証で売買されている。つまり相対で行う店頭取引ではない。外為市場では先渡し取引を先物取引と称することもあるが、厳密な意味では先物取引ではなく、外国為替証拠金取引についても厳密には先物取引ではない。

 改革を進めるにあたり「店頭デリバティブ市場は、先物市場に一層近づくことになる。標準化になじまない商品についても、証拠金の受払いや取引の報告という、先物市場で有効性が確認されている義務が課されることになっている」(白川総裁)とされ、店頭デリバティブは、歴史のある先物取引が参考にされ、今後同じような形式の取引になっていくことが予想されている。

 また、白川総裁は、「先物市場は、取引所とそれに関連した清算を行う仕組みという、すぐに活用できるモデルを示しているが、そのモデル自体に改良の余地が残されている。」とも述べている。この清算を行う仕組みに関しては、下記のような事例も総裁は指摘している。

 「リーマン・ブラザーズの破綻によっても日本では大きな混乱は発生せず、その結果国境を越えた影響は最小限に止まったが、日本国債清算機関(JBGCC)における危機管理の手順に改善の余地があることも明らかになった。・・・リーマン・ブラザーズの法的な倒産手続が始まり、同社が日本国債清算機関に対し国債と資金を引き渡すことができないと判明したところから、必要な国債と資金を手当てできるまでの間、日本国債清算機関は多大な労力を費やした。それは綱渡りであった。」

 この事例研究はかなり重要なものであろう。何かしら大きなアクシデントが生じた際の対応はこのような清算機関にも当然求められるものとなる。しかし、「清算機関は、その利用者が破綻した時でも健全性を維持しなければならないが、これを実現するのは容易ではない」(白川総裁)。

 国債取引に関するリスク軽減への取り組みとして、総裁は日本国債の決済期間の短縮も指摘している。今年4月以降、日本国債の取引は、それまでの T+3 決済からT+2 決済に短縮され、未決済残高が削減された。さらに決済期間を T+1決済まで短縮するための検討も開始されている。

 金融という大きなインフラが構築されているが、その中にあって国債の取引が円滑に行われているのは、実は多くの仕組みに支えられている。特にあまり目立たないが決済や清算機能であり。これが円滑に働いていなければ、市場そのものは成り立たないことにもなる。

 ちなみに資金の決済は最終的に日銀の口座が使われることになろうが、白川総裁は「日本銀行は、証券取引所や東京金融取引所を含むさまざまな金融市場インフラ運営者との間で、長きにわたり建設的な関係を構築してきた。同時に、中央銀行に口座を保有しているからといって、緊急時に中央銀行から自動的に資金供給を受けられるとは限らない点も強調したい。」とも釘を刺している。


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by nihonkokusai | 2012-07-30 13:30 | 債券市場 | Comments(2)

日銀のこれから課題

 日銀は世界の中央銀行の先駆けとなる格好で、1999年2月にゼロ金利政策を導入し、政策金利をほぼゼロ近辺に引き下げた。このゼロ金利政策は2000年8月に解除されたが、その後、日本のデフレ圧力はさらに強まることとなり、2001年3月からは量的緩和政策を導入した。これは政策金利がこれ以上引き下げられないことから、政策目標を日銀の当座預金の残高にするという、過去に例のない政策を打ち出した。これは政策金利を上げ下げする伝統的な手段に対し、非伝統的手段と呼ばれた。

 デフレは日本独自のものであり、よもや欧米の中央銀行が同様の手段を取ることになろうとは、誰も考えてはいなかったのではなかろうか。

 日銀の量的緩和政策は結局、2006年3月まで続くこととなる。7月にはゼロ金利政策も解除され、2007年1月に政策金利は0.5%まで引き上げられた。しかし、日銀の政策金利の引き上げはここまでとなった。

 2007年あたりから、米国のアメリカの住宅価格の下落をきっかけに、サブプライム問題が発生し、それが2008年のリーマン・ショックを引き起こし、世界の金融経済に大きな衝撃を与えることとなった。日銀は再び利下げを行ったが、そののりしろはわずかに0.5%しかなく、オペの増額などで緩和効果を計った。

 それに対して、欧米の中央銀行は非伝統的手段を講ずることとなり、2009年3月にFRBはのちにQE1と呼ばれる量的緩和策を導入し国債等を買い入れることとなった。イングランド銀行も量的緩和策として国債の買入を決定したのである。

しかし、2010年にはいると今度はギリシャを発端とする欧州の信用不安が強まり、これが世界の金融市場を揺るがすこととなった。これに対して2010年5月にECBは市場機能の正常化を目的として、国債の流通市場に介入することを発表した。1999年のユーロ発足以来、欧州の中央銀行が国債の買入を実施するのは初めとなる。

 2010年10月に今度は日銀が、実質的なゼロ金利政策、時間軸の明確化、さらに国債を含めた資産買入等の基金創立を検討するという包括的な金融緩和策の実施を決定した。  そして、2012年1月にFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くことを決定し、日銀も2月に中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことを決定した。

 これはFRB、日銀ともに正式にはインフレ目標の導入と認めてはいないが、これまでインフレ目標の採用は行ってこなかった主要中銀がついに実質的なインフレ目標を導入したと認識されたのである。

 欧州の信用不安はギリシャを発端として、アイルランド、ポルトガル、そしてスペインに拡大してきた。いずれイタリアにも及ぶ可能性もあるなど、対策は幾度も講じられるが問題解決には至らず、むしろ問題は拡大し長期化する恐れもある。

 このような状況下、日本はさておき、欧米諸国も財政への懸念もあることで、財政政策には頼れず、このため自ずと対策は中央銀行頼みの状況が強まっている。

 安全資産として外為市場では円が買われたことで、円高抑制に向けた対策も日銀に求められ、さらに消費税増税による景気への影響も懸念されるため、この対策も日銀に委ねられた格好となった。

 基金の増額はどうしても国債中心に成らざるを得ないものの、日銀にとり財政ファイナンスとも意識されかねないため、国債の買入増加も慎重とならざるを得ない。

 しかし、このように日銀の慎重姿勢に対する批判も、与野党の一部から出ており、それが日銀法改正の動きにも繋がっている。しかし、この日銀法改正は日銀の独立性を損ないかねない。日本のこのような政治的な圧力は、世界の金融の歴史の流れに完全に逆行するような格好となっている。

 日欧米の中央銀行は、すでに非伝統的手段を取らざるを得ないが、さらなる緩和については限界もある。しかし、対策は中央銀行に期待され、期待を裏切られると批判される。特にその傾向が日本で顕著であり、これは日銀の政策委員の人事にまで影響を与えつつあり、日銀審議委員もやっとここにきてフルメンバーが揃った。さらに2013年には日銀の総裁、副総裁の後任人事も注目されている。今後の日銀総裁の後任人事や日銀法改正などの状況次第では日銀の信認そのものが試される可能性もある。それが日本の金融経済に大きな影響を与えかねない。このため、これからの日銀の動きに対しても注意して見て行く必要があろう。


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by nihonkokusai | 2012-07-30 09:48 | 日銀 | Comments(0)

新日銀審議委員の金融政策に対するスタンス

 7月24日に日銀の佐藤審議委員・木内審議委員就任の記者会見が行われ、その要旨が25日に日銀のサイトにアップされた。今回はこの要旨から、2人の新審議委員の金融政策に対するスタンスを探ってみたい。

 その前に2人が審議委員として政府から提示された経緯を確認してみたい。今年の4月4日に日銀の中村審議委員と亀崎審議委員は任期満了となったが、後任人事は混迷した。まず、亀崎委員の後任人事の提示が見送られたのは、事前に候補者名が報じられ、これにより政府が今回の提示を断念したとの見解も示された。その際、一部報道で名前が挙がっていたのは伊藤忠相談役の渡辺康平氏だが、これについては自民党議員がそれはありえない、との発言も出ていた。

 そして、中村清次審議委員の後任については、3月23日に河野龍太郎氏を起用する人事案を政府は提示していたが、これは野党の反対により両議院の同意という条件を満たせなかった。河野氏が日銀寄りのスタンスであるからとの理由で、与党民主党内からも反対の意見が挙がったのである。

 しかし、長期に渡る日銀審議委員の空席を回避するため、政府としては与野党から反対されない人事案を出す必要に迫られた。その結論として出されたのが、佐藤氏と木内氏であろう。いわゆるマーケット枠が急に2人となったのは、欧米の中銀のスタイルに近づける意図もあったのかもしれないが、実業界から持ってくることが困難であったことも想像される。

 反対されない人事案であったということで、新審議委員のスタイルはハト派、つまり金融緩和に積極派とのイメージが強いかもしれない。マスコミでもそのような報じられ方をしているように感じるが、現実にはそうではないのではなかろうか。

 たしかに佐藤氏はこれまでの日銀の政策にやや批判的かとの印象を個人的には持っていたが、木内氏については日銀に対するスタンスは個人的に明確ではなかった。たしかに今年に入ってのレポートで木内氏は「政府と日銀の連帯強化」が必要との持論も展開していたことを報じられてはいたが、どちらかといえば木内氏は中立的なスタンスではないのかとの印象である。そのあたりを探るためにも、今回の記者会見の内容は参考になる。

 早速、会見内容を確認してみると、日銀が示している物価のパス、またデフレ脱却のパスを満たすにあたり、佐藤氏は「資産買入れ等の金融緩和が、如何にして物価の回復に結び付くのかというパスを、もう少しクリアにしていけるような、そういった政策運営が必要なのではないか」と指摘している。そのパスが見出せずになかなか苦労しているのが日銀であるが、ぜひこのあたり新鮮な意見を出していただきたい。

 ちなみに佐藤氏はこの発言の前に、「現状の金融政策については、周知の通り、強力な金融緩和を進めているということで、資産買入れ基金の増額を順次進めてきていると理解しています。」としている。

 ちなみに木内氏も「現状の経済のもと、デフレ圧力は緩和の方向に向かっていることは確かだと思います」と発言している。ただし、2014年度にかけて1%に達するかどうかについては疑問を投げかけいている。そのため、新たな形の金融緩和を柔軟に考えていくことが必要としている。これは緩和論者というよりも現在の日銀のスタイルそのものであろう。

 金融緩和における為替への影響について佐藤氏は、「日銀が努力はしていますが、なかなか努力の割に報われないというところは、そういった海外要因も影響しているかと思います。」とも指摘している。そういえば、河野龍太郎氏はかつて無制限介入を唱えていたことがあったらしい。このあたり、佐藤氏よりも河野氏の方が、むしろ河野氏を反対していた議員の考え方に近かったのではなかろうか。

 木内氏はデフレについて、「インフレ率の期待については、金融政策である程度上げることが可能ではないかと思います」としている。ただし、「引き続き、インフレ期待の引き上げというのは、日本銀行がデフレ脱却に向けた強い姿勢を示すことで、ある程度可能な分野ではないかと思っています。」・・・ハト派であろうか。

 「限られた選択肢の中から知恵を絞って、常にデフレ脱却に向けて新たな政策を考え出していくという姿勢は、今後も必要だろうと思っています」との木内氏の意見もあり、まさにその通りであるが、これも日銀の現在のスタイルそのものであろう。

 物価安定の目途としての1%という数字については、佐藤氏は理想的には2%としながら、「スタート地点として 1%を目指していくという、現状の日銀の考え方は理解できる」としている。

 また、「当面の目途としての 1%というのは、結論から申し上げると妥当かと思っています。」との木内氏のコメントもあった。

 以下、もう少し踏み込んでみたいところだが、長くなってしまいそうなので、結論を言えば、2人の新審議委員は現在の日銀のスタイルからそんなに離れているわけではない。むしろかなり近いように感じる。もちろん最初の会見であり、少し控えめにコメントしていたとか、日銀担当者の意見が反映されたためとの見方も出ようが、それなりに自らの意見を述べていたとの印象である。

 そして佐藤氏は「国債の直接引受け、これは、財政規律の観点から厳に避けるべき」と指摘し、木内氏も「国債の買入れが財政の規律を緩めることにならないかどうか、そういうリスクを常に意識して政策を運営しなければならないのではないかと思っています。」と指摘している。まさにその通りであるかと思う。

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by nihonkokusai | 2012-07-27 09:36 | 日銀 | Comments(0)

日銀による金融政策のターゲット

 日銀は1995年3月の短期金利低め誘導以来、無担保コール翌日物の金利を政策金利にしています。取引量も多く金利全体の基準とも言えるものなので、日銀としてもオペレーションなどによってコントロールしやすいため、これを操作することにより、さらに長い期間の金利にも間接的に影響を与えることが可能となります。

 政策金利がゼロ近辺となった際には別な目標が必要となります。このため、2001年3月から2006年3月の量的緩和政策の際のターゲットは日銀の当座預金残高となりました。

 リーマン・ショック以降の金融経済危機への対応の際には、無担保コール翌日物の金利の引き下げ余地に限界があり、新型オペによる資金供給額が目標とされました。

 2010年10月の包括緩和政策の決定により、ゼロ金利政策が打ち出され政策金利の引き下げ余地はほぼなくなりました。このため、新たに導入された資産買い入れ基金の額が金融政策における新たなターゲットとなっています。

 伝統的手段において、中央銀行は短期金利を動かすことにより、より長めの金利に働きかけようとします。つまり、債券市場そのものに影響を与えることで、景気や物価の動向に働きかけようとしているのです。将来の物価変動とともに短期金利の先行きの見通しが、長期金利を形成します。短期金利の将来の見通しについては中央銀行の金融政策の動向が大きな影響を与えます。これについては、政策金利が実質的なゼロ近辺にまで低下してしまった場合の金融政策、いわゆる非伝統的手段における金融政策の内容を確認するとそのあたりが明確になります。

 2010年10月の決定会合で決められた包括緩和政策についても、ゼロ金利政策を復活させたことに加え、「中期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとし、時間軸を明確化しました。これによりゼロ金利が長期化されると市場が予想すれば、より長い期間の金利の低下を促します。これが時間軸の強化とも呼ばれるもので、長期金利の低下を促すことが目的となります。さらに日銀のバランスシート上に基金を創設することを決定しましたが、この基金による長期国債の買入は、日銀券ルールには縛られないかたちでのものとなりました。このあたりも長期国債の需給に大きな影響を与えることとなります。


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by nihonkokusai | 2012-07-26 11:19 | 日銀 | Comments(0)

長期金利の世界記録更新なるか

 7月23日、スイスの10年債利回りが0.443%近辺まで低下し、長期金利の世界記録に接近した。

 スペインが地方政府向けの支援を余儀なくされ、それにより銀行支援だけでなく、財政面からも全面的な支援を仰ぐのではないかとの警戒が出て、23日の欧州市場ではリスク回避の動きを強めた。

 スペインの10年債利回りは一時7.6%近辺まで上昇し、イタリアの10年債利回りも6.32%近辺に上昇しアイルランドの10年債利回りを上回った。スペインを助けたらイタリアを助ける資金はないとの懸念も出ていたようである。

 これに対して安全資産として23日にドイツの国債は買われ、10年債利回りは一時1.126%と、過去最低を記録した(24日はムーディーズがドイツ等の格付け見通しをネガティブに変更したため反落しているが)。同様の理由で英国債も買われ、10年債利回りは一時1.407%とこちらも過去最低を記録している。米債も買われ、10年債は一時1.4%近辺に低下し、こちらも過去最低水準に。

 スイスの国債もやはり安全資産として買い進まれた結果、0.443%近辺とこちらもデータがある限り、過去最低の利回りを更新したのである。

 それではこれまで世界の長期金利の低い方でのワールドレコードは、何%であるのかご存じであろうか。その前に「長期金利」という定義そのものが少し曖昧な面があり、このあたりを確認しておきたい。

 現在、世界の長期金利として認識されているのは、日本を含めて10年国債の利回りであると思われる。長期金利という表現より、長めの期間の金利のベンチマークとして認識されているのが、10年国債の利回りである。しかし、10年債の利回りが長期金利(ベンチマーク)として認識されたのは、それほど昔ではない。

 そもそも米国債は以前、10年債よりも30年債のほうが売買高も多く、ベンチマークとなっていた。日本においても戦後初めて発行された国債は7年満期であり、それが10年に変わったのは1972年1月からである。しかも、その後は集中的に10年債中心に売買が行われた時代もあったが、国債の発行年限の多様化により、年間発行額から見て今年度では10年債(27.6兆)は2年債(32.4兆)や5年債(30.0兆)よりも少ない状況になっている。

 ただし、米国は30年債の発行が一時停止されていたこともあり、その後10年債がベンチマークとして意識されるようになり、日本でも長期金利といえば10年債の利回りとの認識は続いている。これは欧州各国もどうやら同様のようである。

 ということで、10年債利回りを長期金利として見なして、その最低記録はいくつなのかといえば、記録が正確に残っている限り、日本において2003年6月11日のザラ場中(引けではなく取引時間中)に日本相互証券で記録した0.430%であると考えられる。

 そのワールドレコードが、ついにスイスによって塗り替えられようとしている。2003年6月の日本記録というか世界記録の更新は、その後の反動売り(VARショック)もあり、日本ではあまり良いイメージが残っていない。だからこそ、日本の長期金利は低下しつつあるも0.7%近辺に止まっているのであろう。

 しかし、もしスイスがこの記録を塗り替え、さらにドイツや米国、英国の長期金利がいずれ1%を割り込み、日本の長期金利に迫るようなことがあれば、過去の栄光(?)を取り戻すべく、日本の長期金利もあらたな記録更新に挑むのかもしれない。そんなことも感じさせるここにきての日欧米の長期金利の動きである。


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by nihonkokusai | 2012-07-25 09:48 | 債券市場 | Comments(0)

「欧州危機再燃とオリンピック」

 ユーログループは20日に、スペインの銀行救済向けの最大1000億ユーロの金融支援を最終承認したが、銀行問題だけではなく地方財政の問題が、あらためてクローズアップされた。スペイン政府はこれまで、自治州を破綻させない方針を示し、自治体支援の為の基金を設定するなどしているが、あらためてスペイン政府の財政そのものへの懸念も強まった。

 さらに今度はギリシャの債務問題が再浮上する可能性も出てきている。ギリシャの債権者である欧州連合の欧州委員会と欧州中央銀行、国際通貨基金のトロイカが、24日にアテネ入りするが、ギリシャが支援に向けての約束を果たすか疑念が広がっているそうである。ギリシャ政府は3月に合意した支援プログラムをめぐる融資条件の緩和を望んでいるとも伝えられた。

 2009年秋あたりから騒がれ出したギリシャの債務問題は2010年に入り、市場を大きく揺るがすこととなり、それがアイルランドやポルトガルに波及し、イタリアやスペインに及ぶこととなった。欧州連合などは危機封じ込めのために、必死の努力を行ってきてはいるが、それは対処療法とならざるをえず、いくら穴をふさいでも違うところから水漏れが続いてしまうような状況が結果として続いている。

 まもなくロンドン・オリンピックが開催される。日本では東京オリンピックは高度成長の象徴となったが、これはその後、戦後初の国債発行へと繋がることとなる。札幌オリンピックが開催された1972年は日本列島改造論が出た事に加え、福祉元年とも言われた年となった。その後のオイルショックも加わり、高度成長から低成長時代に移るとともに、一般歳出に占める社会保障費を増加させるきっかけともなった年である。

 そして、長野で冬季オリンピックが開催されたのが、1998年2月である。この2月に30兆円の公的資金枠を設けた金融システム安定化2法(改正預金保険法、金融機能安定化緊急措置法)が成立するなど、日本では不良債権問題が大きくクローズアップされていた。11月にはムーディーズによる日本国債の格下げがあり、年末には運用部ショックもあった。

 このように日本でオリンピックが開催された年は、財政金融問題から見ると何かしらのターニングポイントになっていたように思われる。

 そういえば前回、夏のオリンピックが開催されたのは北京であるが、その開催は2008年8月8日から8月24日にかけてである。このあとすぐ起きたのがリーマン・ショックであった。もしかすると今回のロンドン・オリンピックのあと、世界の金融市場で何かしら大きな変化が起きるかもしれない。そんな予兆も感じさせる今回のスペイン等の動きでもある(悪い方向か良い方向かはわからないが)。


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by nihonkokusai | 2012-07-24 09:46 | 国際情勢 | Comments(0)

6月に都銀は3か月ぶりの債券買い越しに

 7月20日に日本証券業協会は6月の公社債投資家別売買高を発表した。これによると、都銀は2兆2899億円の買い越しとなった。5月は5993億円の売り越し、4月は過去最高水準の5兆1028億円の売り越しとなっていたが、6月は3か月ぶりの買い越しに転じた。

 同時に発表された国債の投資家別売買高でみると、都銀は中期債を1兆2691億円買い越し、長期債は6261億円、超長期債は3592億円の買い越しとなり、長期・超長期債が5月の売り超しから買い越しに転じた。6月の10年債利回りは0.8%台でのレンジ内での動きが続いていたが、都銀は中期債を中心に長期、超長期債を含めて幅広く買いを入れていたことが伺える。

 都銀の次に買い越しで目立ったのが外国人で、全体で1兆7562億円の買い越しとなっていた。こちらも中期債を5728億円、長期債を9788億円、超長期債を1960億円の買い越しとなり、都銀同様に幅広く買いを入れていたことが伺える。

 生保は5月は売り超しとなっていたが、6月は8004億円の買い越しに転じた。超長期債中心の買い越しとなり、超長期債が6190億円、長期債871億円、中期債を521億円の買い越しに。

 地銀は6月は3650億円の売り越しと5月の4284億円の買い越しから売り越しに転じた。長期債を4546億円売り越しており、10年債の0.8%近くでは戻り売りを入れていた可能性がある。

 信託銀行は4975億円の買い越し、農林系金融機関も6112億円の買い越し。信託は中期と超長期を買い越して長期債を売り越し。農林系は中期・超長期主体の買い越しに。このあたりの動きを見ても、10年債の0.8%がかなり意識されているようにみえる。信金も7895億円の買い越しとなっていたが、こちらは幅広い年限での買い越しとなっていた。

 6月の債券相場が引き続き高値圏で安定していたのは、スペインへの懸念などにより、欧州の信用不安が後退せず、リスクオフの動きが継続していたことによる。リスク回避の動きから米国債やドイツ国債等が買われ、日本国債も同様に買われた。ただし、2003年のVARショックの記憶も残り、特に長期債については0.8%割れが一時的となるなど、警戒心も強かったが、押し目では投資家の買いが控えていたようである。

 6月の短期債の売買高をみると、外国人が11兆4585億円の買い越しと5月の11兆6562億円と同様の買い越しが続いていた。外国人は昨年10月以降、10兆円を超える短期債の買い越しが継続している。

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by nihonkokusai | 2012-07-22 09:54 | 債券市場 | Comments(0)

欧州でのマイナス金利の背景と日本のマイナス金利の可能性

 7月18日にドイツの2年債の入札において、平均落札利回りがマイナス0.06%(前回0.10%)と初めてマイナスとなった。

 流通市場では、スイスやドイツ、デンマークの2年債利回りはすでにマイナス圏にあるが、17日にフィンランドの2年債利回りが、18日にはオーストリア2年債利回りも初めてゼロを下回った。また、フランスの短期国債もマイナス利回りとなっており、ベルギーの短期国債は17日の入札ではじめて発行利回りがマイナスとなった。

 ちなみにデンマーク中銀ではECBの利下げに合わせて、7月5日に主要政策金利である貸出金利を0.25%引き下げ0.20%にし、譲渡性預金(CD)金利を0.05%からマイナス0.20%に引き下げている。

 これはEUには属しているがユーロ圏には入っていなデンマークが、自国通貨のクローネが、ユーロに対し強くなり過ぎないようにするための措置とみられた。この際、当座預金金利はゼロ%に据え置き、市中銀行が中銀の当座預金に保有する預金残高の上限を697億デンマーククローネに引き上げた。当座預金にこのような上限があることで、譲渡性預金のマイナスの効果も発生するものとみられる。

 さて今回の欧州での国債のマイナス金利の背景であるが、そこには欧州の信用不安が根底にあり、その結果、高格付けの国債が希少性を帯びてきた事に加え、銀行に対する警戒感が要因となっていると思われる。

 つまり、ユーロ圏内の銀行は大量に抱える資金の保管場所として、最も安全とされる中央銀行、つまりECBの当座預金口座などが使えるが、当座預金口座に預けられない運用者にとり、安全な運用先は格付けの高い国債となり、たとえ金利を払っても、それは安心料との認識となっているものと思われる(実際にはマイナスだから資金の運用者が利息を支払うわけではなく、買い付け価格と償還価格において損失が発生する格好)。

 このような資金運用者にとり、銀行の口座に資金を置くという手段もあるが、欧州の信用不安による南欧国債の暴落、さらにギリシャへの貸し出しやスペインでの金融不安も加わり、域内銀行は大きな痛手を負っている。このため欧州の銀行への不安も根強く、いわゆるクレジットリスクがあるため、ここに大量の資金を置くという選択肢も考えづらい。

 また域内の銀行にとってECB等から資金を借りるには当然、担保が必要となる。その担保として主に使われるのが国債であるが、銀行としてもこの担保の国債はより安全なものとせざるを得ない。このため、格付けの高く、為替リスクのない、価格変動リスクも小さな期間の短いユーロ圏内での国債へのニーズが強く、それが結果として、該当する国債のマイナス金利を生んでいるということも考えられる。

 これらが欧州におけるマイナス金利の要因と思われるが、日本においても2003年1月に無担保コールオーバーナイト取引においてマイナス金利が発生したことがある。これについて、当時の私のコラム(若き知)では下記のように説明していた。

 「2002年から外銀の間では、日本国債の格下げなどから日本のカントリーリミット及び日銀へのクレジットラインを減らす動きがあった。すでに外銀はユーロ市場などを通じてジャパンプレミアムなどにより円をマイナスで調達することが可能になっており、そのような資金を含め日銀の当座預金に残していた。もちろん日銀の量的緩和による影響も大きい。しかし、資金が日銀へのクレジットラインへのリミットに達しそうになり、ついに一部の外銀がマイナス金利でも良いからと資金を放出してきたのが要因と言われる。すでにユーロ円市場ではマイナス金利は発生していたものの、国内では初めてであった。」

 これについては、日銀の「短期金融市場におけるマイナス」(2005年1月5日)というレポートでは以下のような説明があった。

「金利取引円のリスクフリー・レートがゼロ%近辺まで低下しているなかにあって、為 替スワップ取引でドルの希少性(需要)が高まると、円転コストのマイナス化は容易に発生する現象である。 」

「通常の資金貸借を想定すれば、金利がマイナスになることは考えにくい。しかし、資金取引の裏側にあるモノ(担保)に関するニーズがある程度強まると、資金の取引レートがマイナスになることは十分にありうる。」

 さて、日銀は7月17日に基金ではなく通常の長期国債買い入れ、市場関係者は輪番オペと呼んでいる国債の買入において、残存期間1年以下を対象に0.1%の下限金利を撤廃し、マイナス金利での買い入れも容認することにした。これまでは正の金利を入力することになっていたものを、短期国債や1年以下について、「正、負、ゼロのいずれかの値」を入力することに変更したのである(ブルームバーグより)。

 現実に日本でのマイナス金利が再び生じるかどうかについては、過去の日本のマイナス金利は、ジャパンプレミアムがついたことによる影響であり、現在とは全く状況が異なる(むしろ正反対か)だけに考えづらい。

 またユーロ圏というかEU内の特殊な事情が、EU内でのマイナス金利を形成しているとみられるため、これが日本国債にも波及し、日本でのマイナス金利が発生するということは現状、考えづらい。もちろん超過準備の付利の存在も大きく影響しよう。ただし、短期債主体に海外資金が日本国債に流入し続けているという状況は確かにあり、さらに日銀が短国やCP買入の入札下限金利の0.1%を撤廃したこともあり、今後、何かしらの事情が加わることで、日本でのマイナス金利の可能性が全くないとはいえないことも確かであり、日銀としてもそれに備えた措置を取ったものと考えられる。

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by nihonkokusai | 2012-07-20 09:51 | 債券市場 | Comments(0)

日銀の様々な選択肢とは

 18日に6月14、15日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。この中から特に「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」のところを確認してみたい、

 「日本銀行は、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進しており、引き続き適切な金融政策運営に努めていくという方針で一致した」とある。

 この場合の強力が金融緩和とは、たとえば基金による資産買入等を進めることによって緩和効果を計るものである。市場ではどうしても追加の緩和策がなければ、緩和していないようなイメージではあるが、基金を増額したとしても、それが実施されるのは時間をかけてであり、さらにその効果が出るのもまた時間が掛かるといわれる。

 それから考えれば、7月12日の金融政策決定会合で決められた基金による買入オペの見直しの方が実際の緩和効果を高める可能性がある。これにより短国の利回りが大きく低下することは考えられないものの、短国の需給にはそれなりの影響を与えることが考えられ、実際の緩和効果が発揮される可能性もありうる。追加緩和の有無ばかりでなく、強力な金融緩和策が続けられているということそのものを認識する必要もあろう。

 ちなみに日銀は、通常の長期国債買い入れ、いわゆる輪番オペについても札割れを回避するとの目的から、残存期間1年以下を対象に0.1%の下限金利を撤廃した。

 「複数の委員は、欧州債務問題を起点として大きなリスクが顕在化した場合などには、わが国に色々なルートで悪影響が及ぶ可能性があるため、様々な選択肢を予め排除することなく、適切に対応できるよう備えておく必要があると述べた。」

 この場合の様々な選択肢というものが難しい問題となる。短国も含め基金の増額もしくは買入対象資産の条件変更、超過準備の付利撤廃、通常の国債買入の増額などがありそうだが、基金の増額以外の可能性はあまり高くはなさそうである。

 超過準備の付利撤廃については、今回の基金オペの一部変更により、さらにその可能性は後退したと思われる。白川総裁は量的緩和を行った際の状況を踏まえ、短期金融市場の機能を失わせることになる付利撤廃については当面の選択肢には含まれないと予想される。通常の国債買入の増額については、むしろ基金による買い入れる国債の条件を変えることで対処してくるのではなかろうか。

 「複数の委員は、欧州債務問題への懸念が直ちに解消することはないとしても、いずれ問題への対応が進むとともに、安全資産への需要が減少する可能性があり、その場合には、米国、ドイツやわが国の長期金利が、反動で上昇する可能性があると指摘した。」

 すでにドイツなどの2年債利回りがマイナスになるなど、比較的安全とされる国債への資金集中はバブルの様相を示しているように思われる。それに対して日本では2003年の国債利回りの歴史的低水準からの急反発を経験していることで、欧米の国債に比べれば、その利回り低下はかなり慎重となっている。それでも日本の長期金利は0.8%を割れている。国債がここまで買われるには当然ながら理由が存在し、反対に売る理由が見当たらない。これはこれでバブルであることを意識させるものであり、長期金利が反動で上昇する可能性については常に意識しておく必要はあろう。

 「固定金利オペで応札総額が買入予定額に満たない「札割れ」が頻発していることについて、多くの委員は、札割れは強力な金融緩和が市場に浸透していることのひとつの表れであるものの、基金の残高を予定通り積み上げられるよう、引き続き金融調節部署はオペ運営面での工夫を講じていく必要があるとの認識を示した。」

 この結果、7月11日、12日の金融政策決定会合において、オペ運営面での見直しが行われ、固定金利方式・共通担保資金供給オペを5兆円減額し、その分、短期国債買入を5兆円増額し、さらに、短国やCP買入の入札下限金利の0.1%を撤廃するなどしたのであろう。

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by nihonkokusai | 2012-07-19 09:19 | 日銀 | Comments(0)
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