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日本国債先物の過去最高の出来高の日と過去最低の日に起きていたこと

 日本の債券先物の記録について、あらためて確認してみたい。その前に拙著「日本国債先物入門 [改訂版] 」がまもなく発売される。日本の債券先物に関する書籍はほとんどないはずで、たいへん貴重な本とも言える。債券先物の仕組みから、その歴史、さらにディーリングで気をつけるべきことなど、債券先物に関する多くの部分を網羅している。よろしければアマゾン等では予約も開始されているので、ご購入いただけるとうれしい。

 という宣伝はさておき、その債券先物の記録について、その数値とともにそれを付けた日の状況を確認してみたい。

 債券先物は通称であり、正式には長期国債先物取引であり、それが上場されているのは東京証券取引所である。この東証では、「TSE Derivatives Market Highlights」という冊子を作成し関係者に配布している。私も直接いただいているが、これは東証のサイトでもその内容を確認できる。

 直近で出されたものは今年1月に作成されたものであるが、この中の「取引記録」を確認してみたい。

 まず長期国債先物の1日最高取引高を記録したのが、2007年6月7日の21兆1110億円である。これは債先(ラージ)の取引単位が1億円のため、21万1110枚との表現もできる。その日の様子を私のサイト「債券ディーリングルーム」の「臨機応変」過去ログから見てみると、「海外投資家による売り、オプションに絡んでの中期売りといった観測もあるが、先物は売り回転が効いている状態ともなり出来高を伴っての急落」とあった。

 債券先物の売買では海外投資家の割合が非常に高い。ちなみに2011年は先物の売買高で37.8%、先物オプションに至っては59.3%の割合を占めている。2007年6月の記録達成には、この海外投資家の動向が大きく影響していたものと思われる(実際には債券先物の手口は公開されておらず、推測せざるを得ないのではあるが)。

 続いて1日の最低取引高をみてみると、わずかに510億円。これを記録したのは1985年10月28日とある。残念ながら「債券ディーリングルーム」の記録は1996年からで、ここには記録がない。そこで「日本国債先物入門 [改訂版] 」の原稿から、これに関するところをご紹介したい。

 「日銀は、1985年10月25日に短期金融市場を操作して「第二の公定歩合」といわれた短期金利の高め誘導を実施した。JGB先物にとってこのタイミングは最悪であった。無理やり短期金利を上げたことで、長期金利にも上昇圧力が加わり、債券が売られる展開となったのだ。JGB先物市場には大量の売り注文が殺到した。そうでなくてもJGB先物は上場したばかりでご祝儀による大量の買いポジションを抱えていた証券会社が多かった。売りが売りを呼ぶ展開となり、2日間値が付かないという大混乱となってしまった。1985年10月24日に101円63銭で引けていたJGB先物は、25日、26日に値が付かず、ストップ安で張り付いたままとなった。28日にようやく96円63銭で寄り付いたものの、その後も下げて、11月14日に安値89円82銭を付けたところで、ようやく底入れした。実に12円近い下げである。」(日本国債先物入門 [改訂版] より)

 長期国債先物が上場したのが1985年10月19日である。その直後にこのような急落があり、10月28日はストップ安が続き、やっと値がついたときの出来高が記録に残ったのである。25日、26日には値が付かなかったので、実際の最低取引量はゼロではあるが、東証のデータはあくまで出来高が記録されていた中での最低記録が掲載されたものと思われる。

 そして債券先物の最高建玉残高の記録は31兆415億円。つけたのは2000年2月8日。このころの債券相場は膠着状態が続いていたことで建玉も膨らんだものと思われる。また、最低建玉残高は1985年12月12日の1兆4585億円。1985年10月の日銀による短期金利の高め誘導が解除されたのが12月18日であり、それまでの債券先物は急落の後遺症もあり、どうやら盛り上がりに欠けていたものと思われる。

 債券先物の過去最高値と過去最安値については、次回ご紹介したい。

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by nihonkokusai | 2012-06-07 10:18 | 債券市場 | Comments(0)

欧米の国債は価格変動リスクを意識すべき

 いまさら何を言っているのかと言われそうなタイトルではあるが、これについては日本の債券市場参加者はかなり意識しているとみられる半面、欧米の債券市場参加者には連日の史上最低金利更新に酔っているのか、もしくは麻痺しつつあり、その後の反動リスクを現実に意識できない状況にあるように見える。

 ここにきて米国、英国、そしてドイツ、さらにフランス、オーストリア、ベルギー、オランダ、フィンランドの各長期金利(通常は10年満期の国債の利回りを示す)が、連日のように過去最低を記録していた(今週に入りやや調整はしているが)。

 ドイツは1871年のドイツ帝国の成立以来の低金利。英国も記録がある1700年台初めに遡れる記録だとか(4日の日経新聞より引用)。

 1929年の大恐慌の頃の米長期金利が2%台半ばから3%台にあったのに対し、現在の米景気は減速懸念はあるといってもプラス成長となっている。EUについても減速懸念はあるが2012年はゼロ近辺での成長予測となっている。物価についても日本のようなデフレに陥る兆しはいまのところ欧米では観測できない。

 ファンダメンタル面では、これほどの長期金利の低下の理由は見出せない。ただし、需給面から見ると、欧米の長期金利の低下要因が垣間見えてくる。供給だけからみれば、特に米英などの財政状況見る限り、良い状況ではないのは明らかであるが、需要面からみれば、比較的安全とされる国債に資金が向かいやすくなっている。

 言うまでもなくギリシャやスペインなどに対するリスクが意識されている。ギリシャにはユーロ離脱の可能性があり、そしてスペインについては金融危機への懸念が強まっている。この欧州に対しての信用不安の強まりが、安全資産への資金シフトを強め、それが英米独を中心とした国債買いを強めることとなった。

 為替リスクがないことで、ユーロではこれまでドイツ国債などに比べて比較的利回りの高い国債に買いが入ってきた。ところがギリシャ危機により、この動きが反転した。これには格付け会社の格下げも大きく影響し、特に南欧諸国の国債が売られ、それにより域内金融機関等の資金が今度はドイツ国債中心に向かい、さらに為替リスクはあるものの米国債や英国債にもユーロ圏内の資金が向かった。米国債の保有国の残高推移を見ると、たとえばルクセンブルグやベルギーなどが、大きく米国債の残高を伸ばしていたことが伺える。これに加え、中東やアジア諸国の資金などもより安全性を求めて、英米独、さらには円高にともなって日本国債にも短期債を中心に資金が流れ込む構図となっている。

 このあたりの動きは2003年の日本の債券市場にも起きていた。ただし、こちらは国内要因だけでの話であり、グローバルな資金移動が起きていたわけではないが、国債バブルを形成するのは需給面であることを示していた。

 2003年6月のいわゆるVARショックと呼ばれた日本国債の価格が急落した背景には、たしかに銀行のリスク管理上の不備がひとつの要因とされた。ただし、これを不備と呼ぶべきかどうかはやや疑問もある。このリスク管理上の欠点を利用して、積極的に大きな相場を仕掛けていたような気配すらあったのも事実である。それだけの資金が銀行に流れ込む構図が要因としてあった。そのひとつが日銀による量的緩和政策と時間軸の強化である。量的緩和は当座預金の残高を引き上げて、余剰資金を貸し出し等に向けさせようとするものであったが、その貸出が伸びない以上、資金の行き先は国債となった。さらに銀行に対しての公的資金の導入もあり、この資金も当然ながら国債に向かうこととなった。その結果、2003年6月11日に0.430%という世界の歴史上でも最低といわれる長期金利の水準をつけたのである。

 米国、英国、そしてドイツの長期金利が果たしてどこまで低下するのかは、結局はファンダメンタルズなどで説明ができない以上、2003年6月の日本の長期金利のように、マーケットが勝手に決めることとなろう。そうなればその反転の兆しもマーケットの動きから読み取る必要がある。

 日本では2003年6月に入り、マスコミ等ではさすがに長期金利の低下に対して警戒感を強める内容のものが出てきていた。そして、6月の20年国債入札ではあまりに利率が低すぎて購入を見送るとの大手生保の指摘も出た。さらに株式市場も反発の兆しを見せているなど、いくつもの兆しのようなものが出ていた。

 現在の一部欧米諸国の長期金利は、ある意味、欧州の恐怖指数の裏返しようになっているため、欧州への不安が後退しない限りは、高値警戒そのものも出にくい面がある。2003年の日本でも長期金利の低下過程では、買う要因ばかり目について、売る要因が見当たらない状況にあった。しかし、それはあくまで幻想であり、いずれ相場の反動はやってくる。国債には価格変動リスクが存在することをあらためて思い知らされることになる。そのときのための心の準備をしておく必要があり、何かしらの兆候は見逃さないようにしておくことが重要となろう。


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by nihonkokusai | 2012-06-06 10:14 | 国債 | Comments(0)

1949年に日銀政策委員会が設置された経緯

 日銀の最高意思決定機関である政策委員会(旧日銀法上)は、1949年の日銀法の一部改正により誕生したものである。この導入についてはGHQ(連合国軍総司令部)による「戦後民主化」の一環として打ち出されたものであったが、当初はジョセフ・ドッジ顧問(ドッジ・ラインの立案者)の日本銀行から独立した政策決定機関であるポリシー・コントロール・ボードを置くとの構想(米FRBを意識か)に対し、ジョセフ財政顧問と当時の一万田日銀総裁の会談等により、最終的には日銀内部に置かれることとなった。このあたりのやりとりについては、日銀百年史に詳しく記述されている。

日本銀行百年史(第5巻) http://www.boj.or.jp/about/outline/history/hyakunen/hyaku5.htm/

 ここで議論を呼んだのは政策委員会の互選により議長を定めるとした点で、日銀の最高意思決定機関の政策委員会議長に、日銀の業務執行の最高責任者である日銀総裁が付くことを意味する。もし日銀総裁が議長という権限を持つと、これに太刀打ちしていく材料を得ることは非常に困難であるので、総裁の思惑通りに物事が決まっていくのではとの懸念が示されていた。ただし、これについては修正は施されず、委員の任命は内閣のみの権限とせず、衆参両院の同意を要するとの修正が行われ、「日本銀行の一部を改正する法律」が昭和24年6月3日に公布・施行された(日銀百年史より)

 これにより、これまで大蔵大臣の認可を必要としていた「基準割引歩合および貸付利子歩合」(いわゆる公定歩合)の決定・変更、ならびに公開市場操作の対象となる債券の種類については、政策委員会の権限となった。

 政策委員会のメンバーは、日銀総裁、大蔵省代表1名、経済安定本部代表1名、金融業に関し優れた経験と見識を有する者2名(都銀と地銀)、商業及び工業に関し優れた経験と見識を有する者1名、農業に関し優れた経験と見識を有する者1名の計7名で、議長は委員の互選により決められる(これは形式上のものとなり日銀総裁が議長に)。

 この政策委員会の設置は、日銀のガバナンスの上で画期的な意義を有する改革との認識もあったが、結果として中央銀行としての独立性・中立性の観点からは大きな進展はなかったとされる。日銀法42条の大蔵大臣による日銀に対する一般的監督権は有効であり、さらに第47条に基づく内閣または大蔵大臣の日銀役員の罷免権が有効であるため、とされたのである。

 また、政策委員会を日銀内部に設置するにあたり、従来の日本銀行理事会あるいは参与制度の上に政策委員会を設けるのは、屋上屋を架するものであって無意味に近く、政策委員会が睡眠委員会(スリーピング・ボード)となる可能性が大きいとの意見もあったようであるが、この意見は結果として正しい見方となったようである。これは旧日銀法がのちに改正されるひとつの要因ともなった。


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by nihonkokusai | 2012-06-05 09:47 | 日銀 | Comments(0)

国債のイメージキャラクターにAKB48

 財務省は29日に平成24年度の国債広告の実施に関する報道発表を行ったが、その中でイメージキャラクターにアイドルグループのAKB48などが起用されることが明らかになった。

 今回の国債の広告の目的としては、個人向け国債の商品性を知ってもらうこととともに、個人向け国債により調達した資金が、東日本大震災の復興のための財源に使われることを説明することで、個人向け国債の購入を通じて復興に協力できる点をアピールするようである。

 キャッチコピーは、復興応援国債が「みんなの想いを、被災地のチカラに。」、復興国債が「届けよう、復興への想い。」となる。個人向けの復興国債は通常の個人向け国債であるが、復興応援国債とは金額に応じて金貨や銀貨がもらえる個人向け国債である。先日、この「復興応援国債」を持つ人に贈る金貨・銀貨の一般公募デザインが発表された。

 そして注目されたのがイメージキャラクターである。メインキャラはオリジナルキャラクターのコクサイ先生であるが、復興応援団として、夏に白鵬(第69代横綱)、秋に澤穂希(女子サッカー選手)、冬にAKB48(アイドルグループ)、春に中畑清(プロ野球横浜DeNA監督)が選ばれた。

 現在、日本のスポーツ界で注目されている「なでしこジャパン」の澤選手はさておき、国技である大相撲代表で横綱が登場するのもわからなくないが、何故、中畑監督なのであろうかがやや疑問であった。これらの人選については、財務省の記者レクで詳しい説明があったようであるが、報道ではこのあたりの詳しい解説はなかったように思う。今回のイメージキャラクターは、復興応援という趣旨に照らして選ばれたそうである。そういえば中畑監督の出身地は福島県であり、復興支援活動に取り組んでいる。また、白鵬関やAKB48も支援活動をしており、澤選手は震災後の日本に勇気を与えてくれたなでしこジャパンの中心人物であった。

 さらに今回は復興財源を調達するための国債の広告ということで、各出演者の協力もあり出演料等も抑えられたそうである。ここ2年あまりは予算の制約上国債の広告に著名人の出演はなかったが、今年度の国債の広告経費総額はこれだけの著名人が揃っても、前年度並みに抑えられている。

 今回、国債のキャラクターに現在人気絶頂ともいえるアイドルグループが登場することは、かなり注目を浴びそうである。夏及び冬の募集期には、テレビCM・新聞広告にも協力するそうで、冬にはAKB48の国債のCMがテレビに流れるのかもしれない。過去に藤原紀香さんが国債のイメージキャラクターになったときもかなり衝撃を受けたが、今回もなかなか衝撃的である。

 若い人に復興国債に対する関心を持ってもらうためには、このように人気アイドルの起用も有効な手段ではなかろうかと思う。また、個人向け国債の主要な購入層である60代や70代には、澤選手や横綱、福島出身の中畑監督は起用は有効ではなかろうか。著名人のキャラクターの起用により、復興(応援)国債への関心が高まるとともに、復興支援が意識されれば、今後の復興国債、復興応援国債の販売額が増加してくる可能性もある。

 現在、ドイツや米国、英国などの国債は人気絶頂である。国債人気のバロメーターである長期金利はそれぞれ史上最低水準をつけている(これが良いことかどうかはさておき)。日本国債もその流れについていっている。現状、日本国債も個人がそれほど買わなくても、十分に消化可能な状況にあるが、将来のことを考えれば、販売先の裾野を広げておくことは重要であろう。


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by nihonkokusai | 2012-06-02 10:30 | 国債 | Comments(0)

日本の長期金利に対する学習効果

 5月31日に日本の長期金利は0.810%まで低下し、2003年7月以来の水準をつけてきた。これについては18日の牛熊コラム「日本の長期金利はどこまで下がるか」にてもコメントしたが、欧州の信用不安が解消されない限りは、米国やドイツの長期金利の低下と相まって、日本の長期金利もその低下余地を探ることが考えられた。

 現実に30日の欧米市場では、スペインへの懸念の強まりを背景にリスクオフの動きを強めた結果、ドイツ、英国、米国の長期金利は記録的な水準に低下した。ドイツの10年債利回りは過去最低を記録し、英国の10年債利回りもやはり記録がある中での過去最低に。米国の10年債利回りも、1.6%を割り込んできた。

 欧米の長期金利が記録的な水準まで低下しているにもかかわらず、日本の長期金利の低下ピッチは比較的緩やかなものとなっている。もちろん水準としては、2003年以来の水準ではあるが、その2003年6月11日につけた過去最低利回りは20年債で0.745%、そして10年債では0.430%である。これはまだ低下余地があるとの見方もできるかもしれないが、投資家をはじめとして市場参加者は国債を買い進むことにはかなり慎重になっているともいえる。

 これは以前にも示したが、過去の10年債利回り、つまり長期金利での1%割れとなったあとには、大きな反動を経験していたためと思われる。つまり学習効果も働いていよう。そのひとつの現れとして、24日の20年国債の入札とその後の動きがあった。18日に20年国債は1.6%を割り込み1.570%近辺まで低下していた。しかし、その後23日には1.665%に利回りは上昇した。24日の20年国債入札はやや低調な結果となり、27日から28日にかけて1.690%近辺まで利回りが上昇していた。この背景には生命保険会社がコスト等を意識したことで、入札を含めてあまり積極的に買いを入れていなかったことも要因ではないかとみられた。そのため業者が入札で抱えたポジションを売りに出して相場は下げ、そのポジション調整売りが一巡したあとで銀行などからの押し目買いが入ったものとみられる。

 この生保の動きが思い起こされるのが、2003年6月17日に日本の債券のバブル相場がはじけたきっかけである。日経平均株価が9000円台を回復したことに加え、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなり、日本の最大手の生命保険会社がこの水準では超長期国債の購入を手控えるとの報道があり、これをきっかけにして、債券相場が急落したのである。この債券相場の急落はたしかにVARなどによる銀行の異常なまでの買い上げが大きく影響していたことは確かであるが、きっかけは超長期に対する生保の姿勢であったともいえる。

 そういえば、1998年末の運用ショックの際も日経新聞の小さな囲み記事がきっかけになったと記憶している。1998年にも長期金利は1%を割り込む水準まで低下しており、その反動との見方もできた。

 このあたりの過去の動きが、日本債券市場関係者には学習効果として働いているとみられる。それに対してドイツや英国、米国のここにきての長期金利の低下は過去にはあまり経験がなく、2003年の日本の債券相場の如く、まずはどこまで低下してくるのかを試してきているようにもみえる。あとから見ればバブルの動きに見えようが、買われている最中はその買い要因に目が向けられることで、その後の反動を見越しての売りは仕掛けづらく、むしろ大きく踏まされる可能性が強い。相場の大きな流れには逆らわない方が良い。

 しかし、日本の長期金利については、特に国内要因主体で低下しているわけでもないため、比較的冷静な面もある。円高株安などの要因もあり、債券は売りづらい状況にあるが、この大きな嵐が過ぎ去るまでは、2003年の記憶が残る限り、大手銀行も大手生保も積極的に国債を買い進むようなことは手控えてくる可能性がある。少なくとも2003年につけたような長期金利の0.5%割れまでの低下は考えられず、日本の長期金利の低下幅はかなり限定的になるものと予想している。


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by nihonkokusai | 2012-06-01 10:02 | 債券市場 | Comments(0)
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