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自分の金融資産を守るには

 AIJ投資顧問の年金資産消失問題を見ても、金融市場に資金を預けることには常にリスクを伴うことは確かである。AIJ投資顧問は損失を巧みに隠蔽するなどしており、この問題で一概に金融市場は危険であると決めつけるわけにはいかない。むしろ、年金基金や生命保険金、さらに我々の預貯金などを運用している金融機関の多くは信頼のおけるものであることも確かである。

 それでも金融市場での資金運用にはリスクが伴う。自分の金融資産を守るためには、そのリスクを少しでも軽減させる必要がある。そのためにはいくつか必要なことがある。

 ひとつはコアとなる資金については極力、安全資産で運用すべきということである。将来の備えなどに必要な資金については元本が毀損する恐れのある物への投資は控えるべきである。そのためには預金保険制度が適用される範囲内での預金などが候補となろう。しかし、それを大きく超える資産を持っている方には、個人向け国債が良い。途中売却できない期間があるため、そこに注意する必要があるが、その期間を超えれば国債でありながら、価格変動リスクも流動リスクもない。いつでも財務省が額面で買い取ってくれる。

 しかし、国債は危ないのではないかと信用リスクを気にする人がいるかもしれない。しかし、日本の金融商品の中核にあるのが国債であり、仮に日本国債の信用リスクが毀損すれば、それは日本の金融資産全体に影響を与えるばかりか、国債を保有している金融機関にも影響を与える。日本の信用リスクに関する将来像については見方も分かれるが、その影響を完全に排除するには国外での生活を考える他に手段はない。このあたり、日本国債は暴落するかという問題ではなく、国民としては暴落させてはいけないものであろう。

 そしてコアとなり、絶対に元本を失ってはならない資金以外での余裕資金があれば、預貯金や個人向け国債以外の金融商品が数多く存在し、それらに資金を振り向けることも候補に挙がろう。多少のリスクは覚悟の上で、預貯金や国債の利子以上の収益を確保したいという方も多いであろう。その際にまず心がけるべきことは、なるべく原商品を購入するという機会を設けることであろう。つまりは、株式なり債券なりであり、為替投資の機会としては外貨預金などもある。

 株や債券などの原商品を購入することにより、実際に価格変動リスクや流動性リスク、そして信用リスクといった基本的なリスクを経験として学ぶことができる。もちろん株や債券を購入する前に、必要最低限度の知識を得ておく必要もある。ただし、投資の際には他人の意見に惑わされることなく、自ら判断する必要がある。証券を発行する企業の財務内容などをチェックするとともに、少なくともチャートの読み方程度はできるようにしておくことも必要であろう。

 そして、損失が発生したとしてもこれは貴重な経験と認識することも大事である。大きな損失を発生させたディーラーはちょっとした成功体験を自分の相場観の良さによるものと勘違いし、のちに大きな損失を発生させることが多い。それよりも最初に損失を発生させると、なぜ損をしたのかをしっかりと考えることで、のちの投資に生かせることにもなる。

 そのような経験を経た上で、運用をプロが行っている投資信託などに資金を振り向けることも必要か。大手証券出身のAIJの資金運用がどのようなものであったのかを見るまでもなく、金融市場での資金運用は非常に難しい。私のディーラー時代の経験からも確かなのは、安定的に収益を出すことは大変難しいということである。そのことすら、経験がないとわからない。もちろんある程度の安定した収益が出せるようなプロ達も存在するのも確かである。それをどのようにして見分けるのかも重要であるが、それにはある程度、金融市場に関する経験や知識、情報が必要になる。そのためには自らまず原資産の運用をしてみることが、一番良い手段になると思われるのである。


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by nihonkokusai | 2012-03-31 16:41 | 投資 | Comments(0)

4月2日からBLOGOSさんからも牛熊メルマガを配信致します

 4月2日から「牛さん熊さんの本日の債券」をBLOGOSさんからも配信させていただきます。「牛さん熊さんの本日の債券」は、さっと読めば当日の金融市場の様子がわかるメルマガです。金融市場関係者のみならず、金融に関心のある方、ぜひこの機会に牛熊メルマガをご購入いただければと思います。

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by nihonkokusai | 2012-03-30 16:51 | 自己紹介 | Comments(0)

日銀は強力な金融緩和を推進し続けるのか

 3月28日に千葉県での宮尾龍蔵審議委員の講演内容が日銀のサイトにアップされた。今回はこの内容について見てみたい。

 その前に宮尾審議委員は2010年3月26日に日銀審議委員に就任したので、就任後2年が経過したことになる。その間、2011年10月27日の金融政策決定会合では資産買入等の基金を50兆円程度から55兆円程度に5兆円程度増額することに一人反対していた。この際に宮尾委員は資産買入等の基金を10兆円程度増額する議案が提出していた。また、今年3月14日の決定会合でも資産買入等の基金を5兆円程度増額し、70兆円程度とする議案が提出したが否決された。この際には現状維持との議長提案には賛成票を投じている。

 これらの動きから宮尾委員はハト派的なイメージを持たれていると思われる。このため今回は「金融政策運営」に関する部分を中心に見てみたい。

 2月14日に日銀は大きな政策変更を行ったが、これについて「強力な金融緩和を推進し ていくと明言し、積極的な緩和姿勢をより明確にした」と指摘しているが、その効果波及経路については、「金利を通じる経路やポートフォリオ調整を通じる経路の両面から、長めの金利やリスクプレミアムの低下をもたらし」、「借入コスト、株価・為替レートを含む様々な資産価格、銀行貸出などに働きかけ、企業・家計の支出に影響を及ぼして、最終的には景気・物価にプラスの効果を及ぼしていくという経路」を想定しているという。

 2月の決定後の状況を振り返ると、「今後の積極的な金融政策運営に対する見通し(根拠を伴って形成される予想)を通じて、長めの金利や人々のリスクテイク意欲に働きかける形で、2 年債金利の低下と円高の修正および株価上昇がみられました」とある。2月14日の日銀の政策変更の効果として、円高修正と株高を上げている。つまりこれは円安と株高の動きを促進させようとの意図があったとみられる。「円高修正・株高の流れが形成されてはいましたが、2月の決定もそういった動きを形成する一因になったとみられます」とも発言している。

 「足もとまでの金融環境の改善傾向が、海外経済の改善等とともに続いていけば、それが起点となって、企業収益あるいは慎重な企業経営者のマインドも好転し、前向きな投資支出等が増え、同時に成長力・付加価値創造力が高まることが期待されます。円高修正や株高の動きは、消費者心理の改善や外国人観光客の増加などにもつながり、国内需要を一層刺激する可能性もあります。そして、こうした動きは景気の持続的回復と物価の緩やかな上昇をもたらす方向に働くでしょう」

 上記の発言を見る限り、日銀による実質的なインフレ目標の導入と追加緩和の目的が、円安や株高の後押しであり、それにより景気回復に繋げようとしたことが伺える。過去にも日銀は今回と同様に円高や株安を意識して、金融緩和を行ったことがある。プラザ合意後の急激な円高への対策は、日銀の金融政策に押し付けられ、これがバブルを加速させたとも指摘されている。

 今回も日銀は、この宮尾委員の指摘を見る限り、円高対策が大きな目的であり、さらに1%の物価上昇率を目指し、それが見通せるようになるまで金融緩和を強力に推進するという形でコミットメント(約束)をより明確にしたことにより、今後、さらなる追加緩和を行ってくる可能性が高い。

 もちろんこれには「潜在的な副作用に対する適切な目配り」もしてくるであろうが、少なくとも物価が上昇してこない限りは、強力な金融緩和を推進してこよう。となれば、いずれ日銀の金融政策が脱デフレを成功させることも考えられるが、それが景気回復以上に資産価格の上昇を招きバブルの温床となる可能性もある。またデフレ脱却は現在の日本経済にとり悪いことではないものの、長期間、デフレに慣らされた日本経済にとって物価の上昇は、各所に大きな衝撃を与える可能性もある。

 2月の日銀の政策変更は市場の動向を見る限りにおいて成功を収めたといえる。しかし、中央銀行による金融政策頼みの対策はいずれその副作用を招くことが予想される。日銀はこの先、アクセルをさらに踏み込むことはあっても、よほどのことがない限りブレーキを踏むことはできなくなる可能性がある。それによる先々への懸念も今回の宮尾委員の発言から感じた次第である。


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by nihonkokusai | 2012-03-30 10:04 | 日銀 | Comments(0)

消費増税の動向に鈍感な国債市場

 民主党執行部は消費税率を引き上げるための法案の事前審査で、前原政策調査会長は追加増税を削除するなど新たな修正案を示したうえで、今後の対応について一任を求め、28日未明に議論を打ち切った。

 これに対し消費税率の引き上げに慎重な議員らは「議論は尽くされていない」などとして強く反発している。政府は民主党の了承を経て、30日に閣議決定し国会に提出する方針だが、民主党内での造反リスクも高まっているという(28日日経新聞)。

 野田総理は消費増税に対して政治声明をかけると表明しているが、民主党内でも大きな壁が存在し、また連立を組む国民新党も反対している。もし衆院本会議での採決で、党内から50人あまりが造反すれば法案は否決されることとなる。自民党の行方も注目されるが、現在のところでは法案が成立する見込みは立っていないように思われる。

 日本の長期金利が低位安定している、つまり国債価格が安定している理由のひとつに、将来の増税の余地があるためとの見方がある。もしそうであれば、この消費増税を巡る動きは国債の売り要因となってもおかしくはないが、国債市場はほとんどこれを材料視していない。

 日本国債の需給が安定していることが価格安定の最大の要因であることも確かであろうが、消費増税の行方にここまで鈍感となっているというのも腑に落ちない。消費増税は間違いなく実施されるであろうとの楽観的な見方が市場を支配しているわけでもないはずである。むしろ、財政再建の先送りは今に始まったことではなく、もし今回、消費増税法案がたとえ廃案となろうが、それで国債を売ってもまた買い戻せざるを得ないとの認識であろうか。

 ユーロ圏の国では、ギリシャ発の信用不安により各国とも財政再建に向けた動きに神経質になっている。少しでも財政再建が遅れるような兆しがあると、当該国の国債が売られたりする。しかし、日本の場合には国債が長期にわたり安定消化され続けており、そう簡単には需給バランスが崩れることは想定しづらいため、思惑などによる売りは損失をもたらす結果になる可能性は確かに高い。つまり日本の場合には財政再建の遅れに対して、国債市場が警鐘を鳴らすようなことにはなっていない。だから消費増税反対派も強気の姿勢で臨める面もあるのかもしれない。


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by nihonkokusai | 2012-03-29 09:50 | 国債 | Comments(0)

積極的な金融政策の効果と限界

 白川日銀総裁の「Federal Reserve Board と International Journal of Central Bankingによる共催コンファレンス」での講演内容が日銀のサイトにアップされた。今回はこの中から、「積極的な金融政策の効果と限界」に関する部分を見てみたい。

 白川総裁は金融危機後の積極的な金融政策による副作用や限界に関し、十分な注意が払われていなかった側面として4点、指摘している。

 第1にあげたのは「バランスシート修復の重み」である。「金融緩和はバランスシート修復に伴う痛みの緩和剤でしかない。しかも、この緩和剤は長く服用すれば、過剰債務の削減インセンティブを低下させ、最終的に必要なバランスシート修復の達成時期の遅れというコストを伴う側面もある」と総裁は指摘している。

 日銀は1999年2月にゼロ金利政策を行い、2000年8月にいったん解除したものの、2001年3月に量的緩和政策を実施。これも2006年3月に解除され、2007年2月に政策金利を0.5%まで引き上げたが、2008年にはそれは0.1%まで引き下げられ、2010年10月に包括緩和策として実質的なゼロ金利政策を再開した。つまり一時的に政策金利が少しだけ上昇した時期はあれど、1999年から現在に至るまで、政策金利はほぼゼロに近い水準で推移し続けたことになる。

 総裁は「もちろん、低金利の効果はバランスシートの毀損していない経済主体にも及ぶ」としているが、これは日本経済全体にもかなり影響を与えているはずである。つまり、超低金利に適応した経済となってしまっており、それは今後、もし仮に物価が上昇した際には大きな影響をもたらす可能性を秘めている。さらに総裁は過剰債務の削減インセンティブの低下についても指摘していた。

 第2として「金融緩和によって誘発される需要が、異例の低金利下によってのみ採算が合う投資案件である場合には、資源配分が非効率になり、経済全体の生産性や潜在成長率への悪影響も無視できなくなる」点をあげている。低金利の継続が経済全体の生産性に影響を与え、潜在成長率を下押しするリスクも認識しておく必要はあろう。

 第3として金融仲介機能への影響をあげており、「中央銀行の行う金融政策と支出を行う企業や家計との間には、両者を繋ぐ銀行や金融市場が存在し、これらの仲介機関が適切に機能しなくなると、金融緩和の効果も期待できなくなる。」としている、緩和度合いがある臨界点を超えると、逆に利鞘の低下をもたらし、金融仲介機能も弱まり得るとの指摘は、現在の日本の状況そのものではなかろうか。

 第4としてあげているのが、金融緩和の国際的波及と自国経済へのフィードバック効果で「自国経済がバランスシート調整下にある場合、金融緩和は自国の民間経済主体の支出増加を促すというより、グローバル投資家の利回り追求や為替レートの減価圧力を通じて効果を発揮する傾向が強まる。」と指摘している。つまり国際商品市況の不安定化や、通貨安競争を生むことになる。今年2月、日銀は実質的なインフレ目標政策を導入し、追加緩和も実施したが、これには円高調整の後押しも意識されていたものと推測される。つまりは、金融緩和の国際的波及による自国経済へのフィードバック効果がひとつの狙いであったのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2012-03-28 09:29 | 日銀 | Comments(0)

平清盛と貨幣経済

 日銀の森本審議委員は3月22日に兵庫県で講演したが、その際に神戸にゆかりのある平清盛について下記のように触れている。

 「平清盛は、幕末の神戸開港に先駆けること約700年前に、大輪田泊(神戸市兵庫区)を修築して宋との貿易を活発化させました。また、物価安定には苦労したようですが、大量に輸入した宋銭を流通させ、現在へとつながるわが国の貨幣経済発展の道筋をつけるなど、中世の日本経済で大きな役割を果たしたと言われています。」

 平安時代の中期に皇朝十二銭は鋳造が取りやめとなり、それまでの貨幣は粗悪で使われなくなったことで貨幣は交換手段として利用されなかった。その後、価値基準として使われたのが米や絹であった。しかし、平安時代の末期から農業生産力が向上し、商品流通の拡大などを背景として貨幣に対する需要が高まった。また、中国との貿易などにより大量の銅銭が輸入されるようになり、「渡来銭」と呼ばれた銅銭が貨幣として使われるようになった。

 この中国からの銅銭の購入に使われたのは奥州などで産出された「金」であった。当時の日本は東アジア地域有数の金の産出国であり、大量の金が中国向けに輸出され、それがマルコ・ポーロの「東方見聞録」における 黄金の国「ジパング」伝説に繋がったのである。

 渡来銭はその後、室町時代中期あたりまで国内に流入し、江戸時代前期まで国内貨幣として広く流通することになるが、ここには平清盛が大きな役割を果たすこととなる。平清盛は南宋との貿易で大量の銅銭を輸入し、朝廷に働きかけて銅銭の流通の許しを得て渡来銭を決済手段とし、これにより絶大な経済力と権力を手中にした。大量の銭が流通することにより貨幣経済も急速に進んだのである。

 百練抄という歴史書には、「銭の病」という記述があるとか。1179年6月に流行したお多福風邪らしき疫病が「銭の病」と呼ばれたとされているそうである。しかし、この「銭の病」の正体は、インフレであるという学説もある。また、平安時代の末から大量の渡来銭が輸入されて貨幣経済の発達とともに、富裕な僧侶などが延暦寺など有力寺社の保護のもと、銭を貸して高利の利息をとる専門の金融業者が現れた。つまり多額の債務者が発生したことで、銭の病と呼ばれたとの見方もある。貨幣経済の発展の初期段階でインフレやデフレ、さらに債務問題等がすでに発生していたとみられ、なかなか興味深い。このあたり興味のある方は、「経営者・平清盛の失敗 会計士が書いた歴史と経済の教科書(山田真哉著)」なども参考になるのではなかろうか。

 平家が壇ノ浦で滅亡し、源頼朝が開いた鎌倉幕府は中国からの銭の輸入を行わなかった。その後一時的に銅銭の流通を認めたものの、貨幣経済が混乱するとの理由から、再び銅銭の流通を否定した。しかし、貨幣経済の進展により、1226年に鎌倉幕府も渡来銭の利用を公式に認めるようになったのである。海外からの輸入に頼り、国内での貨幣の鋳造が行われなかったのは、当時の政府には地方で産出される銅から貨幣を生産するほどの力が存在していなかったことも要因として指摘されている。


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by nihonkokusai | 2012-03-27 09:22 | 金融の歴史 | Comments(0)

日本国債の保有者、海外シェアがさらにアップ

 23日に日銀は昨年10~12月期の資金循環統計を発表した。これによると2011年12月末時点の家計の金融資産は1483兆4822億円、金融資産・負債差額は1126兆6471億円となっていた。家計の金融資産は9月末より増加していたが、1500兆円近くでの頭打ち状態は続いている格好に。また、民間の非金融法人企業の現金・預金は204兆8121億円となっていた。これに対して一般政府の金融資産は473兆6671億円、金融資産・負債差額はマイナス625兆4282億円となっており、負債総額は1099兆953億円となっていた。

 この資金循環統計を基に、2011年12月末時点の国債保有者別の割合を算出してみた(国債・財融債のみ、国庫短期証券は含まず)。

 昨年12月末の国債(国債・財融債のみ)の残高は755兆3903億円と9月末から7兆1985億円増加した(速報ベース)。国庫短期証券を含むと920兆円規模となる。参考までに日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく時価ベースとなっている。

 日本国債の最大の保有者は銀行など民間預金取扱機関となり、金額で274兆2246億円、全体に占める割合は36.3%となった。次に民間の保険・年金が198兆5191億円の26.3%、そして、公的年金が69兆7122億円の9.2%、日本銀行が67兆6307億円で9.0%、海外が50兆9099億円の6.7%、投信など金融仲介機関が36兆1849億円の4.8%、家計が28兆4541億円の3.8%、財政融資資金が7559億円の0.1%、その他28兆9989億円の3.8%となっていた。

 前回の2011年9月末に比べて残高が大きく増加していたのが民間の保険・年金で13兆906億円増(速報ベースの比較)となっていた。続いて日銀の4兆141億円増(同)、海外の3兆5059億円増と続く。これにより海外のシェアは6.3%から6.7%に上昇した。

 これに対して大きく減少していたのが、銀行など民間預金取扱機関で10兆497億円の減少となっていた。また、投信など金融仲介機関が3兆6288億円減、家計が1兆375億円の減となった。銀行などの売りに対して、保険や年金などが買い向かった構図となっていたようである。家計については5年固定利付きの個人向け国債の償還を迎え、この時期の個人向け国債の販売額そのものは回復してものの、その一部は預貯金等に流れたため残高そのものは減少したものとみられる。

 海外投資家の残高・シェアともに拡大しており、欧州の信用危機により日本国債への資金シフトを続けていたことが、この数字からも伺える。国庫短期証券を含んだ数字でみると、海外は全体の8.5%のシェアとなり(日銀の参考図より表)、これまで最高だった2008年9月末の8.5%に並ぶ水準となったようである。


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by nihonkokusai | 2012-03-24 10:17 | 国債 | Comments(0)

1月の米国債国別保有残高

 米財務省が発表した2012年1月の米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES、http://www.ustreas.gov/tic/mfh.txt)によると、日本の米国債(短期債含む)保有残高は1兆790億ドルとなり、昨年12月の1兆582億ドルから増加した。

 これに対してトップの中国も1兆1595億ドルと昨年12月の1兆1519億円から増加した。中国による米国債保有額はここにきて減少傾向となっていたが、1月は久しぶりの増加となった。

 上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)。中国(China, Mainland)1159.5 、日本(Japan)1079.0、石油輸出国(Oil Exporters) 258.8、ブラジル(Brazil)229.1、カリブ海の金融センター(Carib Bnkng Ctrs)227.8、台湾(Taiwan)177.9、スイス(Switzerland)145.4、ロシア(Russia)142.5、英国(United Kingdom) 142.3、ルクセンブルグ(Luxembourg)138.7。

 米国債保有国の上位陣の動向を見る限り、昨年12月から1月にかけては残高をやや増やすか現状維持となり、やや減少が目立ったのはルクセンブルグ(150.6→138.7)ぐらいであった。

 外為市場でのユーロの動きをみると1月半ばあたりから、徐々にユーロが買い戻されるなど、この動きを見る限り欧州の信用不安は後退しつつあった。欧州の信用不安により安全資産として米国債も買い進まれていたが、1月にその反動売りも入った。

 ところが1月25日のFOMCでは、事実上のゼロ金利政策を解除する時期を、これまで公表してきた来年の半ばから1年余り先延ばしし、物価に対して特定の長期的な目標(goal)としてPCEの物価指数での2%に置くことを決定した。これをきっかけに一時崩れかけていた米国債は再び買われ、1月末に米国10年債利回りは1.8%近辺に低下したのである。

 その後の米国債の動きを見ると、3月13日のFOMCまでは高値圏での推移が続くことになる。結局、FOMCの時間軸の長期化なども手伝って、1月の米国債国別保有残高についても大きな動きはなかったものと思われる。


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by nihonkokusai | 2012-03-23 09:48 | 国債 | Comments(0)

2月の日銀の追加緩和による債券市場への影響

 21日に日本証券業協会が発表した2月の公社債投資家別売買高(短期証券を除く)によると、都市銀行は6155億円の買越しとなっていた。都市銀行は2011年3月以降、売り越しと買い越しが交互に繰り返されていたが、ついにそのパターンが崩れた。また、同時に発表された国債の投資家別売買高をみると、長期債を6024億円買越しており、久しぶりに長期債主体に購入したようである。

 日銀は2月14日に追加緩和を実施しており、資産買入等の基金をこれまでの55兆円程度から65兆円程度に10兆円増額し、その増額対象は長期国債(期間1~2年)とすることを決定した。しかし、すでに中期債の利回りはかなり低水準にあったことで、都市銀行はそれよりもやや期間の長い国債主体に買いを入れてきたものと思われる。

 地方銀行は差し引きではあまり動きはなく、都市銀行と同様に中期国債もそれほど大きく増加させていない。これに対して信託銀行は差し引きで7975億円の買越しとなっており、国債の売買から見ると中期債3908億円、超長期債を1344億円、長期債1413億円と中期債主体であった。しかし、金額そのものはそれほど大きくはなかった。農林系金融機関は6904億円の買越しとなり、この月も超長期国債を5799億円買越しており、中長期債はあまり変化はなかった。

 生損保は7122億円の買越し。こちらも農林系金融機関同様に超長期国債を5920億円の買越しに。1月の生損保による超長期債の購入額が大きく落ち込んでいたが、2月はやや回復している。

 そして海外投資家は5374億円の買越しに。国債でみると中期債を6245億円買越しているが、1月の4715億円の買越し額と比べて極端に大きくなっているわけではなく、海外投資家は引き続き淡々と中短期債を購入しているようである。

 このように公社債投資家別の売買高を見る限り、2月14日の日銀による追加緩和の影響は限定的であったとみられ、都市銀行がやや長めの国債を少し購入した程度であった。日銀の追加緩和はむしろ円安や株高の動きを加速させることとなり、それは3月13日あたりからの債券の大幅調整を招く要因のひとつとなった。ただし、3月の債券相場の調整の要因としては米債相場の下落が大きかったのも確かである。この相場の調整過程での投資家の押し目買い動向を探る意味でも、来月に発表される3月の公社債投資家別売買高も注目したい。


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by nihonkokusai | 2012-03-22 09:48 | 債券市場 | Comments(0)

日銀が実質的なインフレ目標を導入した理由

 2月13日から14日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が発表された。この会合では、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことにすることを決定した。日銀はこれより、デフレ脱却に向けてより能動的に対処する姿勢を強めるなど、2月14日は日銀の金融政策が大きく変わったが、何故にこのタイミングであったのか。それについては、議事要旨で次のような記述があった。

 「当面の金融政策運営を検討するに当たって、委員は、金融政策運営に関する情報発信については、かねてから、より良いあり方を模索する不断の検討が必要との認識が委員間で共有されてきたこと、そうした中、前回会合では、米国FRBにおいて情報発信のあり方を巡る検討が進められていることを踏まえ、何人かの委員から改めて、中長期的な 物価安定の理解や、それに基づく時間軸の示し方について、検討していく必要があるとの問題提起があったこと、実際に 、米国FRBが物価安定に関する長期的な目標(longer-run goal)を示したことを契機に、中央銀行の物価安定に対する姿勢について関心が改めて高まっていること、等を踏まえ、金融政策運営に関する情報発信のあり方について議論することにした。」

 1月23日・24日の議事要旨を確認してみると、確かに次のような記述があった。つまり1月25日のFOMCでの情報発信の方法をかなり注視していたことが伺える。

 「何人かの委員は、こうした時間軸の示し方は、現下の日本経済の情勢等を踏まえると、金融政策の透明性や有効性の観点から適切であるが、米国FRBがコミュニケーション政策を見直していることもあり、情報発信のあり方については不断に点検を続けていくことが重要であると付け加えた」

 1月25日のFOMCでは「長期目標と政策戦略」という声明文において、FRBは物価に対して特定の長期的な目標(goal)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。これについてバーナンキFRB議長は、数値目標に縛られるようなインフレ・ターゲットとは異なるとの見解を示していたが、大枠としてはいわゆるインフレ目標政策を導入したということになろう。

 このFRBの動きが要因となり、日銀も同じ方向に舵をきることを2月14日に決定したものと思われる。この背景には政治からの緩和圧力が以前にも増して強まっていたことや、円安・株高の動きに対してさらなる押し上げ効果も意識されたのではないかと予想される。

 日銀の目指すべき物価上昇率については、政策委員の間からはいろいろと意見も出たようで、複数の委員からは、「1~2%」という表現にしてはどうかとの意見があったり、長期的には主要国の多くと共通の物価上昇率を目指す必要があり、現状、それは「2%」であるとの意見も出ていた。日本の現状を踏まえれば1%程度までの上昇もかなり厳しい状況にあることで、「当面」としては1%とし、 より長い目でみて「2%以下のプラスの領域にある」と幅を持って表現したことは適切であったかと思う。

 そしてその目標については、「中長期的な物価安定の目途」と呼ぶとし、 その英語表 現については 「The Price Stability Goal in the Medium to Long Term」とすること が相応しいとの認識を共有したと、記事要旨にはわざわざ記されている。英語表現まで強調するあたり、FRBの政策変更を日銀がかなり意識していたことが伺える。

 ただし、FRBとの差別化を図ることとともに、日銀のデフレ脱却に向けた能動的な姿勢への変化を印象づけるため、日銀は基金の増額も行った。それについは以下の記述が議事要旨にあった。

 「資産買入等の基金について、大方の委員は、日本銀行の政策姿勢の明確化を行動で裏付ける観点から、10兆円程度という思い切った規模の増額を行うことが適当との見解を示した。」

 日銀は実質的な政策変更の明確化を行動で示し、これは結局、市場にもインパクトを与えることになり、その後の円安・株高を加速させることになったのである。


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by nihonkokusai | 2012-03-21 11:44 | 日銀 | Comments(0)
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