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FRBが物価目標としたPCEデフレーターとは何か

 1月25日のFOMCの終了後に発表された「長期目標と政策戦略」という声明文において、FRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。このPCEとはそもそも何であるのか、拙著「ネットで調べる経済指標」などを元にしてまとめてみたい。

 米商務省が発表している個人所得(Personal income)、個人消費支出(Personal consumption expenditures)、PCEデフレーター(Personal Consumption Expenditure Deflator)は米国の経済指標の中にあって、注目されるもののひとつである。公表日時は毎月下旬の東部時間午前8時30分(夏時間:日本時間午後9時30分、冬時間:日本時間午後10時30分)である。

 ネットでチェックするには、下記米国商務省経済分析局のサイトにある「National」をクリック、その中の「Personal Income and Outlays」に最新データがアップされる。

http://www.bea.gov/national/index.htm

 これは米国の個人の所得と消費について調査した指標であるが、このうち個人所得とは、社会保険料を控除し実際に個人が受け取った所得のこととなる。この個人所得は消費動向を決定付ける大きな要因ともみられている。賃金給与・賃貸・利子配当等といった所得の構成項目や、可処分所得・貯蓄率なども同時に発表される。

 個人消費支出(PCE)とは1か月間に実際に米国の個人が消費支出した金額について集計したものであり、米国のGDPの7割を占める個人消費の動向は米経済にも大きな影響を与えることで注目されている。特に名目個人消費支出の前月比などが注目される。

 名目個人消費支出(名目PCE)を実質個人消費支出(実質PCE)で割ったものが、個人消費支出(PCE)物価指数もしくはPCEデフレーターと呼ばれるものであり、これも同時に発表される。PCEデフレーター変化率がプラスであれば物価上昇、マイナスであれば物価下落と捉える。

 特に価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたものを「コアPCEデフレーター」と呼び、FRBが物価指標の中で最も重要視している指標のひとつとなっている。その理由としては消費者物価指数に比べて、バイアスが生じにくいためといわれている。

 2007年11月にFRBは金融政策の透明性を高めるための追加措置を発表して、この中で、経済見通し(Economic Projections)の発表回数をこれまでの年2回から年4回に増やし、予測の対象期間も2年間から3年間に拡充し、物価に関してさらに新たな指標として、「個人消費支出(PCE)」の全体価格指数を加えている。これにより、PCEのうち食料とエネルギーを除いたコアPCEでみたFRBの物価見通しも発表されることになった。

 さらに今回、FRBは物価の目標(ゴール)を、PCEデフレーター(前年比)の2%に置いた。今回、FRBがコア指数ではなく総合指数を使ったのは、足下物価動向を見るにはコア指数が良いが、長期的に見ると総合指数が適切と判断したものと思われる。

 参考までに昨日発表された12月のPCEデフレーターは前年比でプラス2.4%となり、FRBが目標(ゴール)とする2.0%を上回っている。


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by nihonkokusai | 2012-01-31 09:48 | 中央銀行 | Comments(0)

日本の債務残高はいくらなのか

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 財務省は政府の債務残高としていくつかの集計を出している。これは大きく4つに分けられ、「国と地方の公債等残高」、「国と地方の長期債務残高」、「国債及び借入金残高」、そして「一般政府総債務」がある。

 その前に日本の国債残高については「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」という集計が、このなかの内国債のうちの「普通国債(2011年度末見込み667兆円)」がそれにあたる。ちなみに現在、外貨建ての日本国債は発行されておらず、また残高もないためすべて内国債である。

 この「普通国債」とは建設公債と特例公債(赤字国債)の残高である。つまり財投債は含まれない。また、借換債は元々は建設公債と特例公債の借換であるため、借換債という区分はない。また集計上、交付国債などは「借入金、交付国債等」として借入金等に含まれる。財投債についても償還が主として税財源により賄われる債務ではなく、またこれは政府短期証券も同様であるため、それぞれ普通国債とは区分されている。

 「国と地方の公債等残高(2011年度末見込み859兆円)」とは、「普通国債(同667兆円)」に借入金として「一般会計借入金(同15兆円)」と「交付税特会借入金(同34兆円)」を加え、さらに地方債残高(同141兆円)を加えたとなる。これは、一般的な政策経費や税収等に連動する国・地方の債務を集計したものであり、財政運営戦略の残高目標として用いられている指標である。これは内閣府計量分析室が出している。

 そして「国と地方の長期債務残高(同894兆円)」とは、国と地方の債務をはっきりさせるため、交付税特会借入金を地方債務(同201兆円)に組み入れ、国の借入金とは区別し集計している。ここに「普通国債(同667兆円)」と「借入金等(同26兆円)」を加えたものである。これは利払・償還財源が主として税財源により賄われる長期債務を国・地方の双方について集計したものである。資金繰りのための短期の債務や貸付先からの回収金により、利払い・償還を行う財投債は含まれない。日本政府の債務としては、良くこの数値が主に用いられる。政府債務とはそもそも徴税権を担保とした債務であると捉えれば、国だけでなく地方も含めたこの数値が該当しよう。これは財務省主計局調査課が出している。

 しかし、国の資金調達活動の全体像を見るためとして、別の集計が存在する。財政法28条に、国会に提出する予算には、参考のために左の書類を添附しなければならないとあり、この中に「国債及び借入金の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度末における現在高の見込及びその償還年次表に関する調書」がある。この財政法第28条に基づき、国債及び借入金の状況に関する残高を算出したものが、「国債及び借入金残高(同996兆円)」となる。これは国による債務、つまり国債と借入金(交付税特会借入金を含む)残高である。「普通国債(同667兆円)」と「借入金等(同59兆円)」に、ここには財投債(同114兆円)と政府短期証券(同156兆円)が加わり、合計996兆円となる。これは財務省理財局国債企画課が出している。

 一部報道によると、財務省が1月26日公表した2012年度一般会計予算の関連資料によると、国債と借入金、政府短期証券を合わせた国の債務残高が2012年度末で1085兆5072億円となったと報じられたが、それはこの国債と借入金残高の最新データであるとみられる。ちなみにこの記事によると2011年度末の段階では985兆3586億円となる見込みとあった。

 そして、「一般政府総債務(同1024兆円)」とは、経済の実態把握及び国際比較に資するため、世界共通の基準(SNA)に基づき、一般政府(中央政府、地方政府及び社会保障基金)の金融負債残高を体系的に集計したもので、国債(割引短期国債除く)が559兆円、交付税特会の借入金34兆円を含む借入金等が63兆円、国庫短期証券(割引短期国債44兆円を含む)が149兆円、独法等債務54兆円、地方政府債務183兆円、社会保障基金債務15兆円で、合計が1024兆円となる。ただし、これは2009年度末の実績の数値である。こちらは内閣府経済社会総合研究所が出している。

 いずれにしても、国の債務としてのとらえ方はいろいろとあるが、すでに日本の借金は1000兆円規模であるということに変わりはない。


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by nihonkokusai | 2012-01-29 10:34 | 国債 | Comments(0)

日銀の白川総裁の会見から見たFRBの新たな枠組みなど

 25日の金融政策決定会合後に行われた白川総裁の会見内容が、日銀のサイトにアップされており、今回のFRBによるあらたな枠組みに関する部分への発言などを中心に見て行きたい。ちなみに総裁の会見時点では、当然ながらFOMCの声明文は発表されてはいないが、ある程度の内容は掴んでいた可能性はあると思われる。

 総裁は、中央銀行が情報発信を通じて金融政策の透明性を高める重要性について、独立性を与えられている中央銀行は国民あるいは市場参加者への説明責任を果たす必要があること、金融市場における期待の安定を通じて、金融政策の有効性を高めることにつながることを挙げている。

 ただし、具体的にはどのような情報発信が真に政策の透明性や有効性の向上につながるかは、経済や金融市場の状況、制度的・歴史的な背景などにより、国によって様々であるとし、日銀も様々な手段で金融政策の透明性向上に努めているとして、以下の発言があった。

 「そうした中で、政策金利を巡る時間軸に関しては、日本銀行は「中長期的な物価安定の理解」──つまり消費者物価指数の前年比で 2%以下のプラスの領域にあり、中心は 1%程度──に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針を明らかにしています。」

 今回、FRBが物価目標を設定するかまで白川総裁が掴んでいたかどうかはさておき、今回、FRBがやろうとしていることは、国によって形式に違いはあれど、日銀がこれまで行ってきたものとそれほど大きな違いはないと見ているようである。これは次のような発言からも伺える。

 「ご質問は、FRBの新しい方式をどのように評価するかということも含んでいましたが、今申し上げたように、各国の中央銀行は、それぞれが置かれた環境の中で最適な方法を模索していますので、私がFRBの新しい方法について論評することは差し控えたいと思います。日本銀行としては、私どもが現在行っている説明の仕方、コミュニケーションの方法が、金融政策の透明性や有効性の観点から最も適切であると考えています。」

 また、今回の会見では、欧州の問題について、下記のようなコメントもあった。

 「欧州各国の国債を多く保有する欧州の金融機関では、資金調達面での不安などから、資産圧縮――いわゆるデレバレッジング――の動きが強まり、金融面からの下押し圧力が高まるリスクもあります。また、こうした欧州の金融機関のデレバレッジングの影響は、グローバルに波及する可能性もあります。」

 念のため、デレバレッジング(deleveraging)とは、Leverageに接頭語Deを付けた造語で、資産もしくは負債の圧縮のことを指す。銀行などが投資していた資金を回収し自己資本比率を高めることである。

 現状では欧州の銀行によるデレバレッジングは、新興国経済などへの大きな下押し要因となってはいないが、現在、ギリシャに対する債務交換協議が続けられており、その結果次第では、デレバレッジングの動きが強まる懸念はある。

 「特に欧州勢が高いシェアを持つ中東欧向けに加え、アジアなど他の地域向けでも、同じくプレゼンスの大きい貿易金融などの分野において、今後、デレバレッジングによるマイナス面が生じないかどうか、注意してみていく必要があると考えています。」

 そして、欧州の信用問題に関するIMFの役割として次のような指摘もあった。

 「IMFは2つの重要な役割を果たし得ると考えています。1つは、スタンドバイと呼ばれる資金融資や、FCL(フレキシブル・クレジット・ライン)などの融資枠の設定を通じて、当該国の資金繰りを安定させ、市場からの信認の維持・回復を支援することです。2つ目は、IMFの持っているサーベイランス機能を活用し、資金支援の際に事前・事後に設定される条件、いわゆるコンディショナリティの遵守を支援国に求めることを通じて、財政再建や構造改革の実施に向けた規律付けを行うことです。」

 このあたり少しわかりづらかったので、用語を含めて少し調べてみたところ、スタンドバイ・クレジット・ファシリティー(SCF)とは、短期的な国際収支上のニーズを抱える低所得国へ金融支援であり、フレキシブル・クレジットライン(FCL)とは、段階的という形をとらないで融資を実効する危機予防制度で、同制度の承認を得られたならば、融資条件に縛られることはないそうである。また、IMFによる融資を受ける場合に、当該国政府はその経済・財務政策の遂行を約束しなければならず、これがコンディショナリティといわれる制約条件である(以上、IMFのサイトより)。

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by nihonkokusai | 2012-01-28 09:35 | 日銀 | Comments(0)

FRBの物価目標の設定と日銀の物価安定の理解の類似性

 25日のFOMCの終了後に発表された声明文によると、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導レンジを0-0.25%に据え置くことを決定し、「異例に低いFF誘導水準の維持が2014年後半まで続く事が正当化されるとFOMCは予想している」とした。つまり、事実上のゼロ金利政策を解除する時期を、これまで公表してきた来年の半ばから1年余り先延ばしし、少なくとも2014年の遅い時期まで続ける方針を示した。

 この理由としては、あらたに発表された「長期目標と政策戦略」という別の声明文に理由が示されている。これには16名のFOMCメンバーによる「適切な政策引き締め時期に関する予想」がグラフ化されており、このグラフを見れば利上げ時期の先延ばし理由がわかるようになっている。

 細かいようであるが、現在FOMCの投票権を持っているのは理事会からの7名の理事全員と地区連銀から5名の連銀総裁の12名である。しかし、適切な政策引き締め時期に関する予想は17人が行っている。これは理事が現在定員7名ではなく5名であり、また地区連銀の総裁はニューヨーク連銀以外は毎年変更されるため、この予想については12の地区連銀総裁がすべて予想したことで、理事5名、地区連銀総裁12名、合計17名の予想となっているようである。

 適切な政策引き締め時期に関する予想グラフを見ると、2012年が3名、2013年が3名、2014年が5名、2015年が4名、2016年が2名となっている。また、もうひとつの年末のFF金利予想グラフを見ると、0.5%以上の予想が11名いる。このため、委員会制度をとっているFOMCということで、過半数が金融引き締め派となるのが、2014年であり、年末予想で0.5%以上が11名いるのがはっきりしており、2014年の遅い時期としたとみられる。

 それはさておき、今回、最も注目されているのが、長期的に見た物価のゴールの設定であろう。

 The inflation rate over the longer run is primarily determined by monetary policy, and hence the Committee has the ability to specify a longer-run goal for inflation. The Committee judges that inflation at the rate of 2 percent, as measured by the annual change in the price index for personal consumption expenditures, is most consistent over the longer run with the Federal Reserve's statutory mandate.

 より長い目で見たインフレ率は主に金融政策によって決められる。そこで委員会は物価に対して特定の長期的な目標(goal)を置くことが可能とし、それをPCEの物価指数での2%に置いたのである。

 参考までに個人消費支出(PCE)物価指数もしくはPCEデフレーターと呼ばれるものは、名目PCEを実質化して実質PCEを計算して求める物価指数のひとつである。特に、価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたものを「コアPCEデフレーター」と呼び、FRBが物価指標の中で最も重要視している指標のひとつとなっている。その理由としては消費者物価指数に比べて、バイアスが生じにくいためといわれている。今回FRBが総合指数を使ったのは足下物価動向を見るにはコア指数が良いが、長期的に見ると総合指数が適切と判断したものと予想される。

 そして、声明文の冒頭ではこの目標等に関しては毎年1月に見直すことも明らかにしている。

 今回のFRBによる物価のゴール、訳せば目標となり、つまりは物価目標の設定については、インフレ目標やインフレターゲットを連想させるが、特にその数値に法的な拘束力などがあるわけではなく、あくまでECBの「物価安定の量的定義」や日銀の「物価安定の理解」に近いものと思われる。参考までにイングランド銀行はインフレ率がインフレ目標値の消費者物価指数で2%の上下1%を越えると、公開書簡を財務相に送って説明することが義務づけられている。

 日銀は「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質的なゼロ金利政策を継続していく方針を明確化している。中長期的な物価安定の理解とは、金融政策運営にあたり政策委員が中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率であり、現在の「中長期的な物価安定の理解」は、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である」としている。さらに、この数字は毎年4月に「点検」される。

 このように今回のFRBによる物価目標の設定は、極めて日銀の物価安定の理解に近いものと言えそうである。


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by nihonkokusai | 2012-01-27 09:49 | Comments(0)

31年ぶりの貿易赤字とそれによる日本国債などへの影響

 25日に発表された貿易統計によると、2011年の貿易収支は2兆4927億円の赤字となり、31年ぶりの貿易赤字となった。

 財務省の報道発表によると、「輸出は自動車、半導体等電子部品等が減少し、対前年比2.7%の減少となった。また、輸入は原粗油、液化天然ガス等が増加し、12.0%の増加となった。その結果、差引額はマイナス2兆4927億円となった」とある。

 東日本大震災によるサプライチェーンの寸断で自動車などの輸出産業に影響が出た事に加え、欧州の信用不安に伴う円高の進行や海外の景気減速、さらにタイの洪水被害なども、輸出の減少に影響を与えたものと思われる。

 さらに福島原発事故の影響により、火力発電所の燃料となる液化天然ガスなどの輸入が大幅に増えたことから、輸入が大幅に増え、その結果、日本は1980年以来、31年ぶりの貿易赤字に陥った。当面は輸出が急回復する可能性も薄く、原発の再稼働の見込みも立たないことで液化天然ガスなどの輸入も継続するとみられ、貿易赤字の状況は続く可能性が強い。

 すでに2011年1月から11月までの貿易赤字は2.3兆円程度となっており、年を通じての貿易赤字は避けられないとの見方は強かった。つまり市場ではある程度想定していたはずであったが、24日の海外市場ではWSJの「日本の輸出大国時代の終わり」などの報道もあり、日本の貿易赤字転落が意識され、円が主要16通貨のうち12通貨に対して下落し、ユーロ円は101円台に乗せ、ドル円も一時77円85銭まで円安ドル高が進んだ。

 欧州の信用不安は多少緩和されつつあるものの、ギリシャの債務交換協議が難航するなど予断は許さない状況にある。しかし、市場のマインドは以前に比べ改善してきているのも確かであり、安全資産として買われていたドイツ国債、米国債、英国債などには戻り売りが入ってきている(ちなみに25日の米債はFOMCの声明受けて買い戻されているが)。このため日本の貿易赤字転落をきっかけとして、安全資産への資金流入の反動から、円売りに流れが傾いた可能性がある。

 円高の流れが修正されることは、日本の輸出企業にとっては悪いことではない。東京株式市場にとってもプラス要因とされると思われるが、多少の不安感も伴う。これをきっかけに、今後、日本の国際競争力の低下などが意識されると、海外投資家による日本株などへの投資に影響を与える可能性もありうる。

 そして、債券市場にとってこの貿易赤字転落が、今後の経常収支の赤字を連想させかねないことに注意する必要がある。すでに経常収支の黒字幅は減少傾向にあるため、いずれかの時点で赤字に転落するであろうとの予想も出ている。経常収支が赤字となれば、国内資金で日本国債を賄うにはそろそろ限界に近づいたことを印象づける懸念もある。それを見越してすぐに日本国債を売ってもまた、踏まされる(空売りして、高いところで買い戻して損失が発生すること)だけであり、オオカミ少年はまだまだ健在であろう。

 とはいえ、本物のオオカミが霧の彼方からやってくるのが感じられるだけでも市場は恐れを抱くことにもなる。そんなマインド変化が現れると市場の動きはあらたな展開を迎える可能性もある。オオカミを引き寄せることのないようにするにはどうすれば良いのか。そのあたりも含め、今国会における消費増税の行方などにも注目する必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2012-01-26 09:34 | 景気物価動向 | Comments(2)

為替介入の良いタイミングでは

 本日発表された貿易統計によると、2011年の貿易収支は2兆4927億円の赤字となり、31年ぶりの貿易赤字となった。

 年間を通じての貿易赤字は避けられないとの見方は強かったが、24日の海外市場では、WSJの「日本の輸出大国時代の終わり」などの報道もあり、 日本の貿易赤字転落が意識され、円は下落しユーロ円は101円台に乗せ、ドル円も一時77円85銭まで円安ドル高が進んだ。

 昨日のニューヨーク市場の引け後、発表されたアップルの決算が良かったことでアップルの株価が急伸したこともあるが、この円安も好感してか、本日の日経平均株価は8900円近くまで上昇している。

 ユーロ圏の信用不安については、ギリシャの債務交換協議が難航するなど予断は許さない状況にある。しかし、市場のマインドは以前に比べ改善してきているのも確かであり、安全資産として買われていたドイツ国債、米国債、英国債などに戻り売りが入ってきている。このため日本の貿易赤字転落をきっかけとして、安全資産への資金流入の反動から、円売りに流れが傾いたとしてもおかしくはない。

 つまり、これまでの円買いの巻き戻しが入りつつあり、それが日本の貿易赤字転落をきっかけにその動きを強めている。ここは為替介入、つまり円売り介入には絶好のタイミングではなかろうか。

 個人的には相場を人為的に動かそうとする、為替介入そのものには反対である。

 それでも介入はやる、というのならばタイミングが重要であり、いまがその良いタイミングではなかろうか。さらなる貿易赤字の解消のための介入ならば、目的も明確となる。(ただし、欧米諸国の理解を得るのは難しいであろうが)

 円買いの勢いが強い際の介入は効果は薄く、むしろ投機筋の標的にされる懸念がある。しかし、その勢いに衰えが見えた際には、介入はかなり効果的なものになりうる。市場参加者の間で円が売られ始め、そろそろ円を売ろうかと迷い始めているところに介入、となれば、押し上げ介入ともなり、巻き戻しにより円を売る動きが強まることが予想される。

 また、貿易赤字により日本の国際競争力の低下などが意識され、円安は日本売りなども連想されやすいが介入での円安となれば、円安に対する解釈も違ったものになりうる。ただし、今のところ日本の株も債券もしっかりしているので、日本売りといった連想は働いてはいないが。


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by nihonkokusai | 2012-01-25 13:06 | 景気物価動向 | Comments(0)

なぜ海外投資家は日本国債を買っているのか

 日本国債に対する海外投資家の保有額が増加しつつあり、このためいずれ海外投資家が保有する日本国債を売ることで、日本国債が急落するとの記事があったようであるがこれは少しおかしい。

 この記事を見た方から、これはどう思うかとの質問があったので、あらためてその質問に、ここでお答えしたい。

 そもそも、ここにきて日本国債の海外保有が増加しているのは短期債主体である。

 日本証券業協会が発表した12月の公社債投資家別売買状況を見ると、海外投資家は11兆7291億円の買い越しとなっているが、このうち短期債を10兆6589億円も買い越しているのである。

 短期市場には確かにその影響は多少出ている。それはあくまで日銀の基金による国庫短期証券の買いオペに札割れが発生したり、国庫短期証券が0.1%以下で入札されたりと、需給がかなりタイトになってしまっているためであるが、ここにもし外人売りが入ればむしろ需給は緩和される。そして、それにより長期国債まで急落することは考えづらい。

 この記事によると、新規国債約43兆円のうち約16兆円を海外投資家が購入しているとあるようだが、これも正しいようで正しくはない。そもそも今年度の新規財源債は44.3兆円である(細かい指摘で失礼)。しかも新規国債ではなく、今年度の国債発行総額約182兆円(四次補正後)と比べるべきであろう。

 参考までに新規国債とは建設国債と赤字国債であるが、これは短期国債ではない。短期国債は借換債である。借換債は元々は建設国債と赤字国債であるが・・・このあたり少しややっこしい。とにかく、新規国債を海外が購入しているかのような表現はおかしいのは確かである。

 また、この記事では、イタリアが過去に海外保有が増加して、それがイタリアの国債売りの要因となり、あたかも海外投資家保有が増加すると危険みたいに書かれていたが、そもそもイタリアはユーロに加盟し、ユーロ圏の国債としては発行額が大きく利回りも比較的高く、財政再建もがんばっていたことで、ユーロ圏の国々から実需の買いが入っていた。その意味では、その後の売りに繋がった。

 しかし、日本国債については残念ながら、利回り等の魅力、さらに積極的な財政再建を進めているとの理由で、長期債などが海外投資家に買われているわけではない。そもそも海外保有率が高いと危険というのならば、米国債などのほうがよほど危険に見えてしまう。

 少なくとも、海外投資家は日本国債を売り崩したくて買っているわけではなく、ほかに大量に購入できて流動性も高い「安全商品」があまりないので、日本国債を買っているにすぎない。そもそも急落させるために買う投資家などがいるとは思えない。それならば債券先物を売ったほうが手っ取り早い。


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by nihonkokusai | 2012-01-24 10:03 | 国債 | Comments(0)

デジタル化している日銀の金融政策

 23日から24日にかけて今年最初の日銀金融政策決定会合が開催される。金融政策については、全員一致での現状維持となることが予想されているが、ここで昨年一年間の金融政策決定会合の様子を確認してみたい。

 2011年1月25日の金融政策決定会合は全員一致での現状維持。2月15日も全員一致での現状維持。

 震災後の3月14日から15日にかけて開催予定の日銀の金融政策決定会合は14日のみの開催とし、政策金利は据え置きとなったが、リスク性資産を中心に資産買入等の基金を5兆円程度増額し40兆円程度とした。これについては須田委員が資産買入等の基金の買入増額対象資産をすべてリスク性資産とするべきとの理由から反対した。

 4月7日の会合は全員一致での現状維持、そして4月28日の会合では西村委員が資産買入等の基金を5兆円程度増額し、45兆円程度とする議案が提出されたが、賛成は西村委員だけで反対多数で否決された。そして、政策金利については全員一致での現状維持となった。

 5月20日の会合も全員一致での現状維持、6月14日も全員一致で現状維持となったが、成長基盤強化支援資金供給における新たな貸付枠の設定を決定した。7月12日の会合も全員一致での現状維持。

 8月4日の会合では資産買入等の基金を40兆円程度から50兆円程度に10兆円程度増額することを全員一致で決定、政策金利の据え置きも全員一致で決定した。

 9月7日、10月7日それぞれ全員一致での現状維持。

 10月27日に資産買入等の基金を50兆円程度から55兆円程度に5兆円程度増額することを8対1の賛成多数で決定した。反対したのは宮尾委員。この宮尾委員から、資産買入等の基金を10兆円程度増額し60兆円程度とする議案が提出され、反対多数で否決された。政策金利については全員一致での現状維持。

 11月16日、11月30日、12月21日のそれぞれの会合は全員一致での現状維持となった。

 現在、日銀は包括緩和政策を行っており、緩和策としては資産買入等の基金の買入増額が中心となる。欧州の信用不安やその影響も受けての円高、株安の進行等もあり、またデフレが解消される兆しも見えない中、金融政策については現状維持か緩和策としての基金の買入増額かの選択となっていた。

 3月の震災を受けての資産買入等の基金の買入増額については、予測しえない事態に対応したもので、この際に須田委員がリスク資産の買入を増やすべしとした反対意見も理解できる。しかし、その後の反対意見はなぜか中途半端なものに見受けられる。

 4月7日は現状維持に賛成していた西村副総裁が28日に追加緩和を求めたが、この一回限りであった。

 10月27日にはより積極的な基金の増額を宮尾委員が求めたが、その後の会合では、現状維持に対して特に反対をしているわけではない。

 8月と10月の会合ではそれぞれ基金の増額を決定してはいるが、その前の会合で特に追加緩和を求めた委員がいたわけでもない。

 つまり昨年の日銀の金融政策を見ると、まるでデジタル化しており、金融政策の変更だけでみるといきなりのオンかオフかの選択しかない。本来であれば基金の増額を決定した前の会合で、基金の増額の可能性を委員がまったく想定していないとは思えない。一人か二人の委員が基金増額を求めるなどしていれば、ややアナログ的な金融政策になりうるが、そういった気配を見せてはいなかった。

 ただし、現在のところは前回の会合ではではないが、事前にマスコミなどを通じて市場も織り込むことで影響も限られてはいる。それでも昨年の金融政策の変遷を見る限り、いきなり物事が決定されているような感じを受けなくもない。このあたりは、全員一致が続いていることの弊害とも言えまいか。

 市場との対話を進める上でも、デジタル化した金融政策よりも、アナログ的な金融政策のほうがわかりやすいと思われる。

 こんな例えはどうかと思うが、特撮のウルトラマンシリーズで人気が高いものは、地球を守る隊員達の個性が表面化したものが多かったように思う。日銀が人気取りに走る必要はないが、隊員ではなく委員の個性というか、それぞれの考え方の違いがもう少し決定会合の結果にも反映されても良いのではないかと思う。そうすれば、決定会合への注目度も多少なり増すのではないかと思われる。


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by nihonkokusai | 2012-01-24 08:34 | 日銀 | Comments(0)

何故、相場は予測できないのか

相場は予測できない。何故なのか。
相場で形成される価格、特に債券や株式などの価格は、市場参加者が売買する際に注目しているものが変化してくるためである。

価格を構成する要素はいくつもあるが、そのうち何の比重が大きいのかを数値で表すことはできない。それは価格から、いや相場の感覚から推測するほかはない。

外から見ると、同じような材料なのに相場の反応が異なるのは理解が難しいであろう。
それは相場を取り巻く空気が変化するためであり、その空気が読めないと、相場そのものも読めなくなる。
しかも、その空気が移ろいやすいので、さらに相場を読みにくくさせている。

相場に勝つには、気持ちの入れ替えが必要というよりも、それまでの固定観念を捨て去る切り替えが重要になる。

思い込みでポジションを抱えたままにするのは危険が伴う。
空気の変わりようは市場参加者もかなり気がついており、いったん逃げようと構えている。
悪材料には反応薄となる半面、好材料には敏感に反応するようになるというのは、いわゆるポジションの巻き戻しが起きている、
その流れに逆らうべきではない。
そして、その動きが一巡後、あらためて相場を動かす要素の何に比重がかかっているかを探ることが重要となる。

こんな相場の世界を機械的に予測しようとすることに無理がある。
相場は人が作っている。だからといって人の集団行動を元にして予測が可能になるわけではない。
それというのもその集団行動を制するものが、今後、何になるのかが予測困難なためである。
そして、その集団行動を制するものへの注目度も変化することで、なおのこと予測を困難にしている。


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by nihonkokusai | 2012-01-22 13:33 | 債券市場 | Comments(4)

日本の金融システム不安の歴史と欧州の信用不安の歴史の類似点

 2010年1月のギリシャ・ショックからの欧州の信用不安が、今後解消に向かうのかどうか。それを1990年代後半からの日本の金融システム不安が解消されていった流れから比較してみたい。

 1990年代初めにバブル崩壊の影響を受けて、バランスシート不況が不良債権問題を生み出すことになり、住専問題から1997年には三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券と金融機関が相次いで破綻した。1998年には日本長期信用銀行が国有化され、金融再生法と金融早期健全化法が成立した。1999年3月30日に大手15行に対する公的資金が注入され、金融機関のリスク許容度が改善した。そして、2003年5月の、りそな銀行への資本注入により、政府は大手銀行は潰さないといった意識が強まった。その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607円がバブル崩壊後の安値となり、その後上昇基調を強めたのである。

 株式市場の動きを見る限り、流れが変化したのは、2003年4月となるが、それまでに政府や日銀などがどのような対応をして、市場がどのような反応をしていたのかを、振り返ってみることにする。

 1998年9月9日の日銀の金融政策決定会合において、無担保コールレートの誘導目標値を0.25%とする3年ぶりの金融緩和策が実施された。11月17日にはムーディーズは日本国債の格下げを発表した。これで日本国債は最上位格付けを失った。そして、11月から12月にかけて日本国債は運用部ショックと呼ばれた急落が起きた。

 1999年2月12日の金融政策決定会合において、日銀はゼロ金利政策を決定した。この背景にはデフレというよりも、運用部ショックによる日本国債の急落があった。2000年8月11日の決定会合で日銀はいったんゼロ金利政策を解除した。

 しかし、日銀は2001年3月19日の金融政策決定会合において、金融政策の目標を、無担保コールレートという金利から日銀当座預金残高の量に変更するという、量的緩和政策を実施した。

 2001年4月に小泉政権が発足したが、小泉政権に対する期待感は強く、高い支持率を維持するなど政治への認識も変化してきた。

 2001年9月11日に米国で同時多発テロが発生。FRBは17日のニューヨーク株式市場の開始前に緊急利下げを実施し、FRBに促されるように欧州中央銀行やカナダも利下げを決定した。日銀も9月18日の決定会合において、追加緩和を決定。

 2002年9月18日、日銀は金融政策は現状維持のままとしながらも、金融システムの安定化のために金融機関の保有株式を日銀が直接購入すると発表した。この影響を受けたのが何故か国債市場で、9月20日の10年国債入札において、10年国債としては初めての「札割れ」が発生したのである。

 2003年1月、無担保コールオーバーナイト取引において「マイナス金利」が発生した。すでにユーロ円市場ではマイナス金利は発生していたものの、国内では初めてのこととなった。

 2003年3月、速水日銀総裁の任期満了にともない福井俊彦氏が日銀「新」総裁に就任し、就任間もない3月25日に臨時の金融政策決定会合が開催され、4月1日以後郵政公社の発足に伴い当座預金残高目標を17~22兆円程度に引き上げることが決定された。

 以上が1998年あたりから2003年にかけての日本の金融システム不安に絡んだ動きであったが、これを見ると今回の欧州の信用危機にも似たような動きがあったように思われるのである。

 まず中央銀行の動きをみると、2009年5月にECBは主要政策金利を0.25%引き下げて過去最低の1.0%とした。さらに金融機関への資金の貸付期間を半年から1年に延長することも決定した。

 2010年5月にECBは国債市場の安定化を目的として国債の流通市場からの買入れを決定。2011年8月からはイタリア、スペイン国債買入れを開始している。

 ECBは2011年4月と7月にインフレ防止のため、政策金利を0.25%ずつ引き上げ、年1.5%とした。

 2011年11月にはトリシェ総裁の任期満了に伴いドラギ氏がECB総裁に就任したが、11月から12月にかけて連続利下げを実施し、政策金利は1.0%に戻している。さらに非標準的手法として、流動性を供給するため期間36か月の長期リファイナンス・オペ(LTRO)を新設した。このあたり日銀の福井総裁就任時の動きに似てなくもない。ただし、福井新総裁は就任中、国債の買い入れを増やすことはなかったが。

 そして、ドイツ政府が11月23日に実施した10年物国債の入札で札割れが発生し、ドイツ国債が下落するなど市場が動揺した。ドイツ国債の札割れそのものは珍しいものではないにしろ、今回足りなかった割合が39%とかなり高くなっていることが市場では嫌気された。ただし、これによる影響は一時的であったが、これも2002年9月の日本国債の札割れを思い起こさせた。

 さらにドイツでは2012年1月の短期債入札で平均落札利回りがマイナスとなった。すでに2011年12月あたりから流通市場ではマイナスとなっていたようだが、日本でも2003年1月にマイナス金利が発生していたのである。

 そして、2011年11月にはギリシャ、イタリアともに首相が代わり新体制となっている。日本の金融システム不安が払拭するタイミングでは、中国の景気拡大などのフォローもあったが、小泉政権に対する期待感なども影響していたとみられる。

 以上にように、日本の金融システム不安の歴史と欧州の信用不安の歴史を振り返ると、いくつか共通点のようなものも浮かび上がる。歴史は繰り返さないものの、似たようなことは起こりうる。欧州の信用不安が解消に向かうのかどうか占うには、この日本の歴史も参考になるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2012-01-21 14:51 | 国債 | Comments(0)
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