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牛熊ゼミナール金融の歴史第23回 銀行の前身は両替商

 江戸時代の三貨制度により金・銀・銭という3種類の貨幣が支払手段として利用され、両替商はこの金銀銭貨の交換ニーズを背景として登場しました。両替とは「両」つまり主に東日本で使われた計数貨幣である「金」を、西日本で使われていた秤量貨幣である「銀」、もしくは小額の計数貨幣である「銭」と替えるという言葉からきています。さらに大坂の銀と江戸の金の交換で「相場」が生じ、時期などにより相場が変化する変動相場となっていたことで、手数料を取って両替をするという仕事が生まれたのです。

 両替のためには基準になる相場を決めなければならず、両替屋の大手が集まりその日の経済動向を読みながら相場を立てていました。この相場は大きな資金を動かす政府である幕府にも報告されるのです。天下の台所と呼ばれた大坂では、全国各地の諸産物が集まり売買されていました。取引の多くは通帳などに基づき信用で売買された後に、商品ごとに定められた期日に代金が支払われました。この決済手段に使われたのが、銀目手形と呼ばれた手形です。このように大坂の商人は、可能な限り現金銀の取り交わしを避け、現金銀を両替商に預け入れ、手形によって決済するといった慣習が出来上がりました。

 両替商はこの銀目手形(決済手段として利用された手形)の引き受け・決済や資金融通を通じ、大坂で発展したのです。さらに両替商は業務を広げ、商人や大名、そして幕府などを取引相手に、預金の受け入れ、手形の発行や決済、加えて、貸し付けや為替取引など各種の金融業務を広く営むようになりました。このように両替商は現在の銀行業務に近い金融機関としての役割を担っていたのです。特に手形の決済制度などは、同時期の欧州など諸外国の金融システムに比べても、かなり発達したものとなっていました。この信用制度の確立により、さらに大坂での商業活動が活発化しました。


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by nihonkokusai | 2011-10-31 18:28 | 金融の歴史 | Comments(0)

展望レポートから見た国内の金融環境

 10月27日に日銀は経済・物価情勢の展望(展望レポート)を発表した。まさに欧州ではEU27か国に続きユーロ圏17か国の首脳会議を行っているところでの発表でもあっただけに、その欧州に関する認識や国内の金融環境の記述を確認してみたい。

 欧州では「金融システムの安定化に向けた動きも進み始めているが、その具体的な実現を巡る不確実性がなお残ることなどから、市場の緊張状態が続いている」とし、「金融面の緊張は、金融機関の貸出姿勢の厳格化や貸出金利の上昇、企業や家計のマインドへの影響などを通じて、実体経済に波及し始めている。」としている。

 市場の緊張状態については包括戦略の合意により多少緩和された格好となったが、今後の問題として、民間債権者が自発的に削減するヘアカット率を50%とし、金融機関の資本増強について合意がはかられたが、今後も金融機関による貸出抑制などによる景気への影響が懸念され、それが欧州諸国の財政再建の進展を妨げることになる可能性がある。

 「先進国を中心に減速した状態が続くとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で、再び成長率を高めていくと考えられる。」としているが、新興国・資源国の先行きについてはやや疑問も残る。さらに、「こうした見通しについては、経済にきわめて大きな影響を及ぼしかねない金融市場のショックは、回避されることを前提にしている。」との但し書きもあった。これはそういったリスクもシナリオのひとつとして想定しておく必要があることを示しているようにも思われる。

 そして国内の金融環境について、「経営環境の不透明感から起債が困難な電力会社を除き、社債市場の発行環境は良好な状態となっている。企業からみた金融機関の貸出態度についても、改善傾向が続いている。企業の資金繰りについても、震災後に、中小企業を中心に厳しいとする先がいったん増加したが、その後は再び改善している。」として、日本企業については、その取り巻く金融環境は緩和の動きが続いているとしている。

 日本の金融環境が安定しているのに対し、米欧の金融環境との間には、際立った違いがみられとして、「LIBOR-OISスプレッドが、米ドルとユーロについては夏場以降拡大しているが、円については安定している」点を指摘している。LIBOR-OISスプレッドは、短期金融市場での資金調達のしやすさの目安ともなり、期日が先のスプレッドは資金調達についての将来の見通しを示す。もし拡大しているということは、市場での懸念が反映されてのものとなる。

 日本と欧米のこの違いについて展望レポートでは、「第1に、わが国では、金融機関が、欧州ソブリン問題の中心となっている諸国の国債等を、多く保有していない点が挙げられる。第2に、金融機関が保有するリスク全体についても、これまで充実に努めてきた自己資本との対比でみて、概ね抑制された状態にある。」としている。

 「日本の金融システムが、大幅な景気後退や株価下落に対して相応の頑健性を有するようになってきている」との指摘もあったが、日銀の包括緩和政策なども手伝い、国内の金融環境は欧米に比べて強固であるように見える。

 ただし、「国際金融資本市場が一段と不安定化する場合などに、内外の金融資本市場間の連関を通じて株価や債券価格が下落したり、金融機関の資金調達環境の悪化を招くことを通じ、その影響がわが国の金融システムひいては金融環境に及ぶ可能性には、引き続き注意する必要がある」との断りもあった。

 この場合の株価の下落への不安はわかるが、「債券価格が下落したり」という箇所については何を想定しているのであろうか。もし、「内外の金融資本市場間の連関を通じて」の日本国債の価格下落といったものを想定しているのであれば、欧州の債務危機は決して他人事ではなく、巨額債務を抱えた日本にも、何らかのかたちで信用不安が押し寄せる可能性がないわけではないことを、この文面は警告していると言える。


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by nihonkokusai | 2011-10-31 09:48 | 日銀 | Comments(0)

牛熊ゼミナール金融の歴史第22回 江戸時代の貨幣の改鋳

荻原重秀による改鋳

 金銀の海外流出とともに日本国内の金銀の産出量が低下しました。米の生産高の向上や流通機構の整備などにより、国内経済が発展し貨幣需要が強まったものの、通貨供給量が増えなかったこともあり、米価は上昇せずデフレ圧力が強まりました。五代将軍綱吉は豪奢な生活を送っていたことに加え、寺社や湯島聖堂などを建立するとともに、明暦の大火や各地で発生した風水害などにより、慢性的な赤字を続けていた財政がさらに厳しくなり、幕府は1695年に貨幣の改鋳に踏み切ったのです。

 将軍綱吉は勘定吟味役の荻原重秀に幕府の財政の立直しを命じ、荻原重秀はそれまで流通していた慶長小判(金の含有率84-87%)から、大きさこそ変わらないものの金の含有率を約57%に引き下げた元禄小判を発行したのです。また銀貨の品位も80%から64%に引き下げられました。しかし、金銀貨の品位引き下げが均衡を欠いていたことから、銀貨の対金貨相場が高騰し、一般物価も上昇したのです。このため1706年以降、銀貨が4回に渡り改鋳され、1711年の改鋳により銀貨の品位は20%と元禄銀貨の3分の1にまで引き下げられました。金貨については1710年以降、品位を84%に引き上げたものの量目を約2分の1にとどめ、純金含有量が元禄小判をさらに下回る宝永小判を発行したのです。

 これらの改鋳により幕府の財政は潤ったものの、これにより通貨の混乱とともに物価の急騰を招き、庶民の生活にも影響が出たのです。荻原重秀に関してはインフレを引き起こしたといった批判とともに、デフレ経済の脱却を成功させ元禄時代の好景気を迎えたとの見方もあり、評価は分かれています。また、荻原重秀は著作を残していませんが「貨幣は国家が造る所、瓦礫を以てこれに代えるといえども、まさに行うべし」と述べたとも伝えられています。藩札などの紙幣も発行されていたことで、貨幣の発行には信用の裏づけがあればたとえ瓦でも石でも良いとする、現在の管理通貨制度の本質を当時すでに見抜いていた人物でもあったと言われています。

新井白石による改鋳

 六代将軍となった徳川家宣は、新井白石からの建議を受け綱吉時代の財政金融政策を見直し事態の立て直しを図りました。これが「正徳の治」です。金銀貨の質を徳川家康が作らせた慶長と同様なものに戻し、これによって小判貨幣量を減少させるために金銀貨の品位・量目の引き上げを行いました。

 1714年に金貨の品位を慶長金貨 (84~87%)にまで引き上げる改鋳が行われ、元禄・宝永小判二両に相当する品位84%の正徳小判を発行しました。しかし、正徳小判の品位は慶長小判に劣るとの風評が立ち、翌年にはさらに品位を若干高める改鋳を行い、後期の慶長小判と同品位の享保小判(品位87%)を発行したのです。

 新井白石は長崎貿易についても統制令を出して貿易総額を規制し、また、銅の輸出にも歯止めをかけようとしました。加えてこれまでの必需品としての輸入商品であった綿布、生糸、砂糖などの国産化を推進しました。

 元禄文化に象徴される華美・贅沢な風潮を改め、幕府も徹底的な倹約に努めました。しかし、幕府による財政支出の減少や武士層の消費が大きく減退し、現在で言うところの公共投資と個人消費が減少しました。さらに金銀貨の流通量の減少傾向が強まり、物価は大きく下落し、日本経済は再び深刻なデフレ経済に陥ったのです。特に幕藩体制を支えていた米価の下落は農民や武士の生活に深刻な影響を及ぼしました。経済の安定のためには物価をコントロールする必要性があるものの、その難しさというものも荻原重秀と新井白石の政策の影響から伺えます。

将軍吉宗による改鋳

 宗家紀州徳川家から八代将軍に就任した徳川吉宗は、新井白石を解任するなど人事の一新を図りました。そして享保の改革を通じて、危機的状況にあった幕府財政の建て直しのため、倹約による財政緊縮を重視しデフレ政策を実施したのです。これにより物価はさらに下落し、特に米の価格下落が激しくなりました。このため、吉宗は米価対策を打ち出したものの、商人による米の買い上げなどの政策も功を奏さず、その結果、インフレ策として金銀貨の改鋳による通貨供給量の拡大を計ることとなったのです。

 ただし、改鋳に当たってこれまでのように出目といわれる改鋳による差益獲得の狙いはせず、新貨幣の流通を主眼に置いたのです。すなわち、元文小判の金の含有量は享保小判に比べて半分程度に引き下げられたのですが、新旧貨幣の交換に際しては旧小判1両=新小判1.65両というかたちで増歩交換を行ったのです。しかも新古金銀は1対1の等価通用としたことで、この結果新金貨に交換したほうが有利となり、新金貨との交換が急速に進み、貨幣流通量は改鋳前との比較において 約40%増大したのです。貨幣供給量の増加により物価は大きく上昇し、深刻なデフレ経済から脱却し適度のインフレ効果を生み出しました。


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by nihonkokusai | 2011-10-28 17:28 | 金融の歴史 | Comments(0)

次の焦点とみられるイタリアの動向

 欧州の首脳会議は長時間かけて難航しながらも包括戦略を合意するに至った。包括的な対策の3つの柱のうち、銀行のTier1基準を9%に引き上げることは早めに合意したが、EFSFの拡充策とギリシャ債務の民間負担についての取りまとめは難航した。最終的に民間保有のギリシャ国債のヘアカット率については、50%とすることで合意した。これによりギリシャの債務問題については、懸念が多少なり緩和されることが期待される。しかし、欧州の信用不安は収まるわけではなく、今後はイタリアの動向にも注意しておく必要がある。

 イタリアに対しては、ユーロ圏の他の加盟国から追加の財政再建策を求める圧力が高まっている。イタリアの経済規模はギリシャなどに比べて格段に大きく、もし仮にイタリアの債務問題が深刻化すれば、ギリシャの債務問題の比ではない。イタリアはドイツ、フランスに次ぐユーロ圏で第3位の経済規模となっており、世界の中でも第7位の規模である。公的債務は1.8兆億ユーロとなっている。

 イタリアのベルルスコーニ首相は、11月15日までに経済行動計画を提示することを確約し、2013年までに財政の均衡化を目指す一連の措置を提示した。ここには2026年までに年金の支給開始年齢を67歳に引き上げる方針が盛り込まれた。ただし、この年金制度改革をめぐっては、今年初めから女性の年金受給開始年齢について国内で連立を組む北部同盟と対立し、その北部連盟は経済改革の柱となる年金制度の改革で大きな譲歩をすることを拒んでおり、ベルルスコーニ首相は難しい立場に追い込まれている。一時は退任の噂すらあり、今回のEU首脳会議への出席も危ぶまれていたぐらいである。

 イタリアの10年国債の利回りは、今年6%台に乗せたあとECBによるイタリア国債の購入により5%以下まで低下したが、その後再び上昇基調となり、現在は6%近辺にある。このまま分岐点ともされる7%に向けて上昇する可能性もないとはいえない。

 イタリアについては、ここにきて財政が急激に悪化しているわけではなく、またプライマリーバランスは黒字転換するなど日本などに比べてむしろ財政は健全ともいえる。しかし、日本と同様に巨額債務を抱えていることで、今後3年で償還を迎える国債のため6000億ユーロ以上の資金を調達する必要があり、その際に長期金利が大きく上昇してしまうと、借換に支障をきたす可能性もある。長期金利の上昇抑制のためにも、財政健全化に向けた動きを進めることが重要ではあるが、経済は低迷しており、国内での政治問題も絡んで難しい状況にあることから、今後はイタリアが欧州の債務問題の焦点となる可能性もありうる。


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by nihonkokusai | 2011-10-28 09:53 | 国際情勢 | Comments(0)

牛熊ゼミナール金融の歴史第21回 江戸時代の金銀銅の海外流出

 1639年に幕府はポルトガル船の入港を禁止し、いわゆる鎖国に入ったのですが、これにより日本の貿易高は減るどころかむしろ増加しました。ライバルのポルトガルが日本市場から撤退し、これによりオランダは世界最初の株式会社である東インド会社を経由した日本との貿易で大きな収益をあげ、17世紀に欧州での繁栄を築き上げたのです。

 ポルトガルは日本の銀を介在してのアジアでの三角貿易を行っていましたが、オランダも同様に中国で購入した生糸などを日本に持ち込み、それを銀と交換したのです。これにより大量の生糸が日本に流入するとともに、大量の銀が海外に流出しました。またオランダはインドとの貿易に金を使っていたことで、オランダ経由で大量の金も流出していきました。

 幕府は金銀の流出を防ぐために、金や銀の輸出禁止などの政策を打ち出すものの、国内に生糸や砂糖などの輸入品への需要が強く国産品では対応できなかったことで、結局、その対価として金銀が用いられたことで解禁せざるを得なくなり、金銀は流出し続けたのです。

 日本の金銀の流出先としては、貨幣の材料として銀を必要としていた中国だけでなく、インドなどに流れ、また金貨についてはインドネシアのバタフィア(現在のジャカルタ)で日本の小判がそのまま流通しており、オランダ本国でもホーランド州の刻印の打たれた日本の金貨が使われていました。

 金銀の流出制限のため幕府は1685年に貞享例を施行し貿易額そのものを規制しました。また、元禄の改鋳などにより金銀の質を低下させたことから、貿易の支払いに対しては、金銀に変わり、次第に俵物と呼ばれる加工食品とともに銅が使われるようになったのです。


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by nihonkokusai | 2011-10-27 18:47 | 金融の歴史 | Comments(0)

日銀は追加緩和を決定、資産買入れ等の基金を5兆円増額

 本日の金融政策決定会合において日銀は予想されていたように追加緩和を決定した。資産買入れ等の基金を50兆円程度から55兆円程度に5兆円程度増額することを8対1の賛成多数で決定した。この増額分は長期国債が対象となる。反対したのは宮尾委員で、宮尾委員は資産買入れ等の基金を10兆円程度増額し60兆円にすることを主張した。

 増額にあたっては、国債の残存期間を2年以下から5年以下に延ばす案も出ているとの観測もあったが、それは見送られた。日銀はこの基金とは別に、年間21.6兆円の長期国債の買い入れを行なっている。これには日銀券ルールという自主ルールが設けられているが、この基金による買い入れ及び国庫短期証券はこのルールには縛られていない。

 追加緩和の理由として日銀は、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するにはなお時間を要すると予想され、国際金融資本市場や海外経済の影響で、経済・物価の見通しがさらに下振れするリスクにも注意が必要のためとしているが、これは文面にはないが円高対応のためと見ざるを得ない。

 意外感があったのは宮尾委員の反対であり、しかも追加緩和そのものに反対したのではなく、基金の増額が5兆円では足りないとして10兆円の増額を主張した。そろそろ全員一致ではまずいと思ったので反対してみた、わけではないと思うが、とりあえず反対票が出たことは委員会制度の透明性を高める上でも好感されよう。

 9月14日の函館における宮尾委員の講演の中では、「製品・部品を輸出しているわが国の企業にとっては、円高の影響を輸出先の国の物価上昇で緩和することができないために、相当厳しい競争を強いられることになります。」といった発言があるなど、かなり円高による悪影響について述べていた。また、デフレ予想の長期化なども懸念するなどしており、今後は今回の反対票もあり、ハト派としてイメージされてくるものと思われる。

 今回の追加緩和については、すでにその予想が報じられており、直接的な影響は限られよう。白川総裁を信頼していると安住財務相は今朝発言していたが、その安住財務相は本来、介入と日銀の追加緩和のセットが効果的のはずが、介入そのものは対外的な配慮なのかはわからないが、いまのところ控えている(14時半現在)。このため、追加緩和効果はそれほどは大きくはないと思われされ、実際に市場への影響も限定的なものとなっているようである。


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by nihonkokusai | 2011-10-27 14:09 | 日銀 | Comments(0)

日銀の追加緩和の可能性

 10月26日付けの日経新聞は、「日銀、追加緩和検討へ」と報じた。これは欧州の債務不安やFRBによる追加緩和観測により、円が1ドル75円73銭と最高値を更新したことが背景にある。27日のロンドン市場でも一時75円71銭という最高値を更新した。

 米国では、ここにきてFRBのタルーロ理事がMBSの購入再開を示唆し、イエレン副議長、そしてニューヨーク連銀ダドリー総裁もQE3について前向きな発言を行なってきており、FRBの追加緩和観測が出てきた。米国では住宅市場の低迷が続いており、その梃入れ策のひとつとして、FRBによるMBSの購入再開が有力な候補となりつつある。イエレン副議長、タルーロ理事、そしてダドリー総裁はFRBの執行部の一員であることで、場合によると、11月1日から2日にかけて開催されるFOMCで追加緩和が決定される可能性も出てきた。

 日銀の白川総裁は、10月21日の講演で、世界経済が全体として減速し、しかも円高圧力が強まりやすいもとでは、日本経済の先行きについて、下振れリスクを意識する必要があることを指摘している。

 円相場が対ドルで75円台をつけ史上最高値を更新したことを受け、安住財務相は円売り介入の準備を財務省に指示したと伝えられた。また、日銀に対しては、適時適切な対応を取ってくれると期待していると述べたと伝わっている。

 日銀が今度動くとすれば、急激な円高が進行した際にともみられていた。しかもFRBによる追加緩和期待もあるとなれば、27日の金融政策決定会合で日銀が追加緩和を決定する可能性はありうる。ちなみに、今回の決定会合は当初から1日だけの予定である。

 追加緩和の内容については、26日の日経新聞によると、50兆円の資産買い入れ基金の規模を5兆円程度積み増すことや、基金増額に伴い買い入れる国債の残存期間を2年以下から5年以下に延ばす案も出ているそうである。基金の増額とともに買い入れる国債の期間を5年以下まで延長すれば、今後、復興債の発行とともに2年国債と5年国債が増額されることで、市場も好材料と見なし26日の債券市場は買い進まれた。

 欧州の首脳会議の動向や、本日の市場動向など次第ではあるが、日銀が追加緩和に動く可能性はありうる。安住財務相は介入を匂わすような発言をしているが、現在の円高は急激な進行というよりも、円が最高値水準にとどまり時折高値をトライするような状況にあり、また、これまでの介入における海外からの批判などから、なかなか介入には踏み込みにくく、その分、日銀の追加緩和への期待も強いものがあるのではなかろうか。実際に今朝、安住財務相は白川総裁を信頼している、とのコメントもあった。


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by nihonkokusai | 2011-10-27 09:53 | Comments(0)

牛熊ゼミナール金融の歴史第20回 日本における紙幣の誕生

 日本における現存する最古の紙幣は、1610年に伊勢の山田において、支払いを約束する預り証の形式をとって発行された山田羽書(はがき)です。伊勢神宮に仕える有力商人が、高い信用力と宗教的権威を背景に、釣銭などの煩わしさを少なくするために発行された紙幣であり、額面金額も銀1匁以下の小額となっていました。形や文様が統一されたことで、不特定多数の人々に交換手段として利用が可能なように作られており「紙幣」として利用されたのです。

 ちなみに、世界で最古の紙幣は10世紀に中国四川省で送金手形を利用する際に発行された証明書(預り証)ですが、日本はこれに次いで世界で二番目に古く紙幣を発行していたことになります。

 その後、私札は伊勢国、大和国、摂津国など近畿地方を中心に、有力商人がその「信用力」を元に発行し、室町時代末期から江戸時代初期にかけて約60年の間、流通しました。こうした私札に目をつけた各藩が発行したのが「藩札」と呼ばれる紙幣です。藩札の最初は1630年に始まった備後の福山版のものと言われていますが現物は残っておらず。現存するものとしては1661年の福井藩の札が最古のものとなっています。私札も藩札も江戸時代後期まで、ほとんど銀立の額面で発行されていますが、これは西日本では銀が経済の主流であったことが要因です。

 紙幣については乱脈な発行によるインフレへの懸念とともに、偽札の問題が生じます。世界で最初に紙幣を発行した中国では、偽札防止のため細かな文字や文様などを組み合わせ簡単には真似のできない工夫がされていましたが、日本の藩札も同様に色刷りや透かしなどが実用化されていました。1856年に浜松藩が出した銀札にはオランダ語を入れるなどの工夫も行っていたのです。


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by nihonkokusai | 2011-10-26 19:07 | 金融の歴史 | Comments(0)

個人向け復興債の発行について

 財務省は震災の復興費を確保するため発行される復興債の総額11兆5500億円のうち、1兆5000億円を個人向けとするそうである。報道によると関連法案の成立後、12月からの販売開始を予定しており、これ以降、今年度中に発行される個人向け国債は復興債となる。

 すでに個人向け国債については3年固定利付き、5年固定利付き、10年変動利付きのものが発行されているが、それは12月からこのままの条件で個人向けの復興債として発行されることになる。復興債を購入した個人には、もれなく安住財務相名で感謝状を出すそうである。

 個人向け復興債としては、新たな商品の発行も検討されているようである。これについては、償還期間や金利設定などは現時点では未定のようである。ただし、新たな個人向け国債は利率を引き下げることも検討と日経新聞が伝えていた。個人投資家は個人向け国債の有利性や安全性はある程度理解しているものの、それでも利率が低いと購入は手控えてきた経緯がある。

 個人向け国債は、今年夏のものから10年変動タイプの適用利率の算式が、これまでの「基準金利-0.80%」から、「基準金利×0.66」に変更された。このため10年変動タイプのものの販売額が7月、10月とそれぞれ2千億円台と伸びた。固定利付債との合計の販売額でも7月は4501億円と一昨年の7月以来の規模となるなど販売額は回復している。しかし、5年固定利付きは回復したといっても今年10月の発行分は1100億円で、ピーク時の2007年7月の1兆5964億円に比べて10分の1以下となっている。この原因は明らかであり、当時の利率が1.5%であったのに対し、今年10月発行分は0.32%しかなかったためである。

 震災直後であったならば、何らかのかたちで復興復旧を支援したいとの意識は非常に強かったと思う。しかし、これから個人向けの復興債を購入することで、復興を支援するという意識が高まるであろうか。歴史を見ると、たとえば郵便貯金などが明治以来、国家が危機にある時にその復興の支えとなる財源として使われてきた経緯があった。しかし、個人向け国債については国家のために購入するという意識よりも、安全性の高い金融商品として個人は購入してきたと思われる。

 そして、個人向け復興債については、震災復興のためという国民意識に訴えかけるのであれば、それとともに金融商品としての何らかの優位性を高めたほうが効果的ではなかろうか。たとえば、震災の影響を受けた被災地の子供たちの教育資金のため購入する際には利子が非課税になるなどの措置を講ずることはできないであろうか。米国の個人向け国債である貯蓄国債には教育資金に使う場合には利子が非課税になるという制度があったはずである。制度変更には時間も必要とされるため、なかなか難しい面もあろうが、ぜひこのようなことも検討してほしいと思う。


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by nihonkokusai | 2011-10-26 08:31 | 国債 | Comments(0)

牛熊ゼミナール金融の歴史第20回 江戸時代の三貨制度

 天下統一を果たした徳川家康は全国支配を確固なものにするため、963年に皇朝十二銭の発行が停止されて以来となる中央政府による貨幣を鋳造し、貨幣の統一に着手しました。最初に発行されたのが金貨と銀貨です。金貨は大判、小判、一分金、銀貨は丁銀と豆板銀です。

 金貨の単位は両、分、朱となり一両の四分の一が1分、一分の四分の一が1朱です。十両の重さのある大判という大型の金貨は、主に恩賞用・献上用に特別に作られたもので、通貨として流通しませんでした。大判といえば豊臣秀吉が作らせた天正大判が有名ですが、こちらは165グラムもある世界最大の金貨です。

 大判に対して文字通り通貨として作られたのが、小判と一分金です。時代劇に登場する小判には一両という刻印が刻まれていますが、本物の小判にも一両という刻印が打たれ、現在の1万円や100円と記されている貨幣と同様の「計数貨幣」として通用したのです。ただし、大判の「両」については重量単位となっています。

 流通する金貨が計数貨幣であったのに対し、銀貨は、匁(もんめ=3.75g)という重さの単位で価値を示す「秤量貨幣」であり、まったく性質の違う貨幣となっていました。江戸時代初期の銀貨である丁銀・豆板銀は秤で計って使っていたのです。

 徳川家康は貨幣の統一に際し、当初は金貨を主体に流通させようとしたのですが、西日本では中国との貿易などに際し銀が決済手段として長らく利用されており、いわゆる銀遣いがすでに支配的となっていたため、幕府としても追認せざるをえなかった面があります。この反面、東日本では金が決済手段として用いられていたことで「東の金遣い、西の銀遣い」とも呼ばれました。このため、大坂の銀と江戸の金の交換で「相場」が生じ、時期などにより相場が変化する変動相場となっていました。

 金貨や銀貨に35年ほど遅れて1636年(寛永13年)に「寛永通宝」と呼ばれる銅銭が発行されました。銅銭は庶民の生活に主に使われる補助貨幣といった位置づけとなっており、銅銭の発行は後回しとなったのです。

 このように江戸時代の貨幣体系は三貨制と呼ばれ、金貨、銀貨、銭貨が基本通貨として機能し、特に江戸においては金銀銭貨という三貨すべてが価値基準および交換手段に用いられていたのです。三貨制は世界の金融の歴史においても独特の形式であったと言えます。ただし、供給面での制約もあって、三貨が全国に普及するには時間もかかり、広く交換手段として利用されるようになったのは1660年代になってからです。


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by nihonkokusai | 2011-10-25 18:09 | 金融の歴史 | Comments(0)
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