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日銀総裁の講演から見た通貨や国債への信認の重要性

 日本銀行の白川方明総裁は5月28日開催された日本金融学会2011年度春季大会において、「通貨、国債、中央銀行 ―信認の相互依存性―」と題する講演を行った。ここでは、政府と中央銀行の関係、あるいは金融政策と財政政策との関係が論点となった。

 この中でまず、日本の現在の中央銀行通貨残高が122兆円であり、さらに中央銀行通貨に容易に引き換え可能な銀行預金の残高は1024兆円あることを指摘し、一方、国債でについては発行残高は865兆円に上っているとしている。

 ちなみにこの865兆円とは、財務省が発表した2010年度末の「国債及び借入金残高」のうち、普通国債(636兆円)と財投債(118兆円)に政府短期証券(111兆円)を加えた数字を示しているのではないかと思われる。

 総裁は中央銀行通貨、銀行預金、国債の債務者に関して以下のような説明をしている。  「債務者は、中央銀行通貨は中央銀行、銀行預金は民間銀行、国債は政府です。いずれも素材として価値を有している訳ではないにもかかわらず、価値あるものとして認められ、その機能を発揮しうるのは、究極的には、通貨や国債の保有者がその発行主体を信認しているからです。」

 さらにそれぞれの主体に対する信認について、「自らの努力だけでなく、他の主体に対する信認が確保されていることや、社会の構成員が信認の重要性をお互いに理解することによっても支えられているということ」の重要性を指摘している。

 何故、このような「当たり前のこと」を「金融の専門家」の前、しかも「学会」の場で、「日銀総裁」が話をしなければいけなかったのか。そこに大きな問題がありそうな気がする。

 民間金融機関の預金、あるいはより一般的に金融機関債務、への信認は、政府の信認にも大きく依存する。その、政府の信認は最終的には国民の意思によって支えられている。このため、政府の信認が低下すれば、保有国債の価値の下落、担保価値の下落に伴う資金調達能力の低下をはじめ、様々なルートを通じて、民間金融機関の信認にも影響すると、総裁は指摘する。

 そして、非常時における政府の各種の積極的施策が成功するかどうかは、中長期的な財政バランスの維持に関して政府への信認が維持されているかどうにかかっており、そうした国民の意思と無関係に、政府が「打ち出の小槌」のように財政政策を無限に展開できる訳ではない、と指摘している。

 これは今回の大震災という非常時に行う政府の財政政策について、日銀による国債引受を主張した与野党議員、さらにそれを助長したと思われるマスコミなどに向けた発言であるように思われる。今回の講演において、この総裁発言に小首をかしげた参加者がいたとは考えづらい(もちろん全くいなかったわけではなさそうでだか)。

 さらに総裁は、「国債は円滑に消化され、長期国債の金利も低位で安定的に推移しているため、財政悪化に伴う危険に警鐘を鳴らす議論は、時として狼少年のような扱いを受けることもあります」と指摘している。

 ちなみに、この狼少年という言葉は、日本の債務危機を煽る人たちばかりでなく、それによる国債暴落を決め込んで債券先物などで空売りを仕掛けた海外のヘッジファンドなどに向けられて使われることが多い。

 「どの国も無限に財政赤字を続けることが出来る訳ではありません。政府の支払い能力に対する信認は非連続的に変化しうるものです。ギリシャに始まった欧州のソブリン・リスク問題はこのことを端的に示しています。」

 ギリシャは突然に債務が悪化したわけではない。政府が債務の悪化を隠したことが発覚したことで信用を失い、それによりギリシャ国債の金利が跳ね上がり、さらにギリシャの資金調達を困難にさせたことが問題を深刻化させている。

 そして日本の長期国債金利は何故、低位で安定しているのかについては、低成長と低インフレに求められ、過去10年間の経済成長率と物価上昇率の合計、すなわち名目成長率と10年国債金利を比較すると、若干の乖離はあるが、大きな流れとしては、同様の動きとなっていることを総裁は指摘している。

 ただし、低成長と低インフレを指摘するだけでは、答えは完結しないとして、長期金利は予想経済成長率と予想物価上昇率だけで決まるのではなく、それらにかかる不確実性を補償するリスク・プレミアムが上乗せされる点を指摘している。

 それではなぜ日本の国債はリスク・プレミアムが上乗せされていないのか。その理由の第一に「わが国の財政状況は深刻ですが、最終的に財政バランスの改善に向けて取り組む意思と能力を有している筈であるとみられていることです。」としている。

 「有している筈」、「みられている」とのやや曖昧な表現がやや気になるが、まあそうであろう。

「第2は、金融政策が物価安定のもとでの持続的な成長の実現という目的に合わせて運営されていることについて、信認が維持されている」

 こちらは「運営されている」、「維持されている」との表現であり、ある意味、自画自賛みたいな面もあるが、まあこれも確かであろう。

 その上で、「この2つの点について信認が揺らぐと、リスク・プレミアムは上昇し、その結果、国債金利が上昇することも意味している」としている。

 「通貨や国債に対する信認は、その重要性を意識した国民の意思によって担保されています。そうした国民の意思は、政策当局による十分な説明と、それに基づく状況の正しい理解があって初めて成り立ちうるものです。」

 これについては、その重要性は国民は理解していると思うが、果たして状況の正しい理解が本当にあるのかは、やや疑わしい面もある。書店に行ってみても、その正しい理解を妨げるような本が売れているのは何故なのか(拙著が何故、売れていないのかを主張したいわけではないので、念の為)。

 そして、総裁は次のような傾向に関しても述べている。

「日本の現実に即して言うと、長期国債金利は長期間低位で安定的に推移してきたので、今後もこうした状態が続くだろうと考える傾向です。もうひとつは、一旦、何らかのきっかけで変化が起き始めた時に、過去に生じた大きな出来事の連想から急激な変化が起きてしまうだろうと考える傾向です。」

 この傾向は国民向けというよりも、金融市場関係者向けであるように思われる。信認が維持されないとみるや、我先に国債を売却することになるのは市場参加者となる。

 「財政赤字の拡大や日本銀行の独立性が尊重されていないと感じられる出来事が起こると、最終的に激しいインフレが生じるだろうと考える傾向が生まれます。」

 これもまたリフレ派と呼ばれる人たちに向けたメッセージのようにも伺える。デフレ脱却を最優先として、日銀の独立性をむしろ弱めるようなことが起きれば、「予想は非連続的に変化する」ことから、通貨や国債への信認が失われるリスクは大きくなる。

 さらに総裁は、「高橋財政期の日銀による国債引受け」などについても言及しているが、長くなってしまうため、それについては後日見てみたい。


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by nihonkokusai | 2011-05-31 08:22 | 日銀 | Comments(0)

プラスに浮上したCPIの今後の動向

 総務省が27日に発表した4月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、コアCPI)は前年比プラス0.6%となり、2008年12月以来2年4か月ぶりにプラス転換した。ただし、市場予想もプラス0.6%であり、これは想定されたとおりのものであった。

 3月のコアCPIは同年同月比でマイナス0.1%であったのが、何故プラスに転じたのかといえば、4月分からは公立高校授業料無料化の影響が剥落したためである。実際に授業料無償化の影響を除けば、上昇幅はゼロ程度となっていた。

 今後のCPIの動向について注意しなければいけないのが、消費者物価指数の基準年の変更による影響である。2005年から2010年への基準年の変更は、今年の夏に行われ、8月に発表される7月分からは2010年基準が公表される。

 一般に消費者物価指数の前年比は、基準年から先に進むほど実勢よりも強めに算出されやすく、こうした統計上の歪みは、基準改定の際に修正される傾向があると言われる。つまり、夏の基準改定で、消費者物価指数の前年比が下方に改定される可能性が高い。

 2006年8月の消費者物価指数の基準年の変更に結果的には0.4%から0.5%の下方修正が行われた。今回も同様の下方修正が予想され、その結果、他の大きな変動要因がなければ、ゼロに近いものの若干のプラスとなることが予想される。さらに10月からタバコの増税によるプラス寄与が剥落してさらに0.2%下方シフトするため、再びマイナスに陥ることも想定される。

 今後については日銀の展望レポートで次のような記述もある。

 「先行きの物価を巡る環境を展望すると、個別の財やサービス市場では、震災の影響による供給制約が、ボトルネック状況などにつながり、これが物価上昇圧力となる可能性はあるものの、マクロ的な需給バランスは、震災の影響により供給面での制約が厳しくなると同時に、需要も減退するとみられるため、その変動については、短期的には不確実性が高い」

 やや長い目でみれば、景気が緩やかな回復経路に復していくに従って、マクロ的な需給バランスは徐々に改善していくと考えられ、その結果、中長期的な予想物価上昇率は、安定的に推移すると想定しているようである。ただし、原油価格の動向など国際商品市況の動きには注意しておく必要もある。

 その結果、政策委員の大勢見通しは2011年度でプラス0.7%、2012年度でもプラス0.7%となっている。この見通しについては公立高校授業料無料化の影響は除いており、さらに現行の 2005年基準の指数をベースにしている点に注意したい。つまり、2010年基準で見れば、若干のプラスとの予想とみられる。

 このように消費者物価指数については、震災の影響、商品市況の影響などにより若干の変動はあるとみられるが、総じてゼロ近傍での推移となることが予想される。日銀による「中長期的な物価安定の理解」においては「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である。」としており、1%に届くにはかなりの時間を要することも予想され、現在の実質ゼロ金利政策は今年から来年にかけても継続されることが、これからも予想される。


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by nihonkokusai | 2011-05-30 11:25 | 景気物価動向 | Comments(0)

深刻化するギリシャの債務問題

 ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長は26日に、ルクセンブルクでの会議で、IMFがギリシャ向け支援供与を保留する可能性があると指摘した。IMFには向こう12か月間の借り換え保証が付与されない限り行動を起こせないとの規定があり、6月に予定されているEUとIMFによるギリシャ向けの総額120億ユーロの融資の前提条件が満たされていないとの認識を示した。

 ギリシャの国債価格の下落により、ギリシャが市場で独自で資金を調達できる可能性が低下している。もし、市場からの資金調達が難しくなればドイツなどからの追加支援を仰ぐことが予想されるが、そのドイツなどでは、ギリシャへの支援などに対して国民からの反発も大きくなっており、ギリシャが新たな緊縮財政策や民営化を進めない限りは、追加支援策には消極的な姿勢を示している。

 もしギリシャの資金調達が難しくなれば、IMFからの支援も受けられなくなり、その結果、ギリシャはデフォルトを回避できない可能性も強まることになる。

 EU、IMF、そしてECBの当局者は、ギリシャの赤字削減努力の進捗状況について来週評価をまとめることになっているが、それぞれの立場に微妙な違いも出始めている。

 5月17日にユーログループのユンケル議長は、ギリシャが債務を持続可能な水準に抑制できなければ、「リプロファイリング(債務の再構成)」が必要になるかもしれないと述べた。また、27日にはフランスのサルコジ大統領が、ギリシャの財政問題の解決に向け、債券保有者も責任を分担しなければならないとの考えを示し、ギリシャ債務再編の可能性を示唆した。

 これに対してECBのシュタルク理事は18日に、債務務再編であれ、ヘアカットであれ、債務を再編すればギリシャの直面している問題を解決できると考えるのは幻想だと述べている。また20日にはバイトマン・ドイツ連邦銀行総裁が、ギリシャが債務の償還期限を延長した場合、ギリシャの国債はECBのリファイナンスオペの担保として、不適格になる可能性があると発言した。

 さらにIMFは現在、ストロスカーン専務理事の逮捕とその後の辞任によりトップが不在である。これはIMFの意思決定にも影響を与える可能性がある。ストロスカーン専務理事が、昨年5月にほぼ独断に近い形でEU・IMF合同の救済スキームをまとめあげたとされており、加盟各国への根回しをしないまま欧州の救済策をまとめたことに対する批判もあった。

 EU、IMF、そしてECBはすでに一枚岩とも言えず、それぞれの事情を抱えたまま、ギリシャの債務問題に対処しなければならず、ギリシャの債務問題は深刻化せざるを得ない状況にある。

 ギリシャ当局者が25日に、追加の緊縮財政措置の唯一の代替手段はユーロ圏を離脱しドラクマを復活させることとの見方を示すなど、ギリシャのユーロ離脱の可能性もないとは言えないような状況にもある。ただし、これについてはギリシャにとってもあまりに失うものも大きいことで、実現の可能性は薄いとみている。

 このギリシャの債務問題に関するEU、IMF、そしてECBの三竦みの状態を見ても、いったん信用を失った国の債務問題の解決が非常に難しいことが明らかなった。しかも、それによりギリシャの国債金利が上昇することにより、より問題解決を難しくさせるという負のスパイラルに陥っている。

 国債への信用問題、そしてそれに大きく関わる国債金利の動向、このあたりのことは日本でも十分に注意すべきものである。一旦、日本国債の信用が喪失し、その結果、長期金利の急騰を招けば、巨額債務を抱えた日本では対処のしようはなくなる。


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by nihonkokusai | 2011-05-28 09:24 | 国債 | Comments(0)

長期金利1.1%の壁の背景

 日本の長期金利は5月2日に1.2%を割り込み、16日に1.105%まで低下した。しかし、その後は1.1%が目先の壁として立ち塞がり、その手前でもみ合うような状況が続いている。この1.1%という水準が壁となるような理由は見当たらないものの、ここからは積極的には買いにくい理由が存在しているためとみられる。

 今回の日本の長期金利低下の背景のひとつが、欧米での長期金利の低下である。4月あたりから欧米の長期金利は低下し、米10年債利回りは23日には一時3.1%割れとなる場面もあった。また、ドイツやイギリス、フランスなどの長期金利も同じように4月あたりから低下している。

 この日米欧の長期金利の背景のひとつは、日本の震災を受けて世界経済への影響がある。米国を見ると企業業績の回復などから景気に対する強気の見方が、日本の震災後は景気減速も懸念され、むしろ悪化した経済指標などの影響を受けやすくなった。

 もうひとつ、ギリシャの債務問題が再燃したことも、安全資産として米国債やドイツ連邦債が買われる要因となった。また、ギリシャなどの債務問題による欧州経済への影響なども危惧された面もある。

 しかし、日本の震災による景気への影響については一時の悲観的な見方が後退しつつある。予想以上のピッチでサプライチェーンが回復しており、自粛ムードで懸念された個人消費についても全般に落ち込みを見せる中、たとえば節電目的などによる白物家電の出荷額が大きく増加するなど意外にしっかりしている面もある。

 経済指標に目を向けても、4月28日に発表された3月の鉱工業生産指数は前月比15.3%のマイナスと調査開始以来、過去最大の下げ幅となったものの、生産予測指数では4月が前月比3.9%のプラス、5月も2.7%のプラスと大きく改善する見通しも示された。

 また、5月12日に発表された4月の景気ウォッチャー調査では景気の現状判断Diが28.3と前月比0.6ポイントの改善となり、2~3カ月先を見る先行き判断DIは38.4と、前月比11.8ポイントと大きく上昇となっていた。

 このように今後は景気に対してあまり悲観的に見ることにもリスクが出てきていることも確かであろう。すでに長期金利は1.1%近くまで低下していたことで、このあたりで少し様子を見てみたいとの投資家も多いのではないかと思われる。

 さらに中期債についても5年債利回りの0.4%がやはり心理的な壁となりつつある。4月に大量に売り越していた都銀であるが、例年のパターンからは翌月、つまりは5月には大量に購入するとの観測もある。しかし、4月の都銀による売りは期初の益出しを先行させたことだけではなく、震災の影響で貸し出しが改善されてきたことに加え、3月における東電への2兆円の緊急融資なども影響していたのではないかともみられている。このためこれまでのパターンのように5月に都銀が大きく買い越してくるのかどうか、いまのところ不透明である。 ただし、量は増やさずとも保有する債券の残存期間を延ばしてくるような可能性はある。

 東電に絡んでみれば、枝野官房長官発言をきっかけとしての東電債への影響もあり、これも債券市場には微妙に影響を与える懸念がある。また、震災復興のための二次補正が先送りされたといえども、いずれ国債が増発されることは確かである。さらに今年度の特例公債法案は政争の具にされ、成立の目処すら立たず、これが相場の撹乱要因になる懸念もある。

 このようにいくつかの懸念材料もあり、また、景気の先行きについてもあまり悲観的な見方も後退するなど、長期金利が1%を割り込んで低下するようなシナリオが描きにくくなっていることも確かであろう。もしかすると長期金利で1%程度までの低下はあるかもしれないが、そこからさらなる低下が見込めないとなれば、あまりリスクを犯したくはないところではなかろうか。それが日本の長期金利での1.1%が壁となっている理由ではないかと思われる。

 もしこの1.1%を抜けてさらに低下するのならば、それは国内要因よりも、米国の長期金利低下を促すような材料が出たときではないかと予想される。


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by nihonkokusai | 2011-05-27 08:21 | 債券市場 | Comments(0)

西村副総裁が独自議案を出した4月28日の決定会合議事要旨より

 5月25日に日銀は、4月28日に開催された金融政策決定会合の議事要旨を発表した。この会合では、西村副総裁が独自議案を出していたが、執行部の一人である副総裁が独自に議案を提出するのは極めて異例でもあった。このため議事要旨から、まずその理由を探ってみたい。これに関しては「先行きの金融政策運営に関する」議論の箇所に次のようにあった。

 「一人の委員が、資資産買入等の基金の増額を行うことが適当であるとの意見を述べた。この委員は、原子力発電所の事故が長期化し、津波の被害や電力供給能力の不足とともに複合的な問題となっていることから、企業や家計のマインドが更に悪化し、実体経済への悪影響が強まるリスクが高まっているため、資産買入等の基金を5兆円程度増額することが適当との意見を述べた。」

 この委員が西村副総裁であることは確かであろう。西村副総裁は福島原発事故の影響を重くみており、これに震災そのものの影響と電力不足の影響が合わさって今後のリスクの高まりから、追加緩和策を提案したものとみられる。続いて議事要旨には次のような記述があった。

 「別のある委員は、経済物価の見通しを踏まえると追加緩和の必要性は高まっているとの認識を示したうえで、現在は、以下の点を更に点検しながら、具体的な措置やタイミングを見極めていくことが重要であると述べた。すなわち、この委員は、検討の視点として、市場規模の制約等を踏まえたリスク性資産の買入余地、全体として効果を発揮している包括緩和における各措置の効果とその波及経路、非伝統的手段の持つ副作用、効果発現ラグを踏まえた効果的な政策実施時期などを指摘した。」

 西村副総裁とともに追加緩和の必要性を問う委員がもう一人いたのである。4月28日の会合後に西村副総裁の議案には賛成する委員が何人か出ていてもおかしくなかったとの話がマーケットでは伝わっていた。実際にこの議事要旨から少なくとも一人はいたことがわかる。ただし、実際の採決において、この委員は西村委員の議案には反対していたのである。

 この別のある委員の発言内容からは、タイミングの見極めが重要との認識が示されており、追加緩和の必要性は高まっているもののこの時点ではそのタイミングではないとの判断が働いたのであろう。

 また、経済情勢に関する議論において、次のようなやり取りも交わされていたことがわかった。

 「ある委員は、ヒアリング情報などを踏まえると、企業と家計のマインドが相乗的に悪化し、それに伴って需要が減退するリスクを感じると述べた。これに対し、何人かの委員は、生産や支出の落ち込みは、前回決定会合でも想定していたものであると指摘した。」

 このある委員が西村副総裁であるのか、それとも追加緩和の必要性を認識していた別のある委員であったのかは定かではないが、景気認識について委員の間で見方が分かれていたことが伺える。

 しかし、このあと5月20日の金融政策決定会合では、西村副総裁は追加緩和に関する議案は提出していない。「企業による生産再開に関するミクロ情報が増えている」との指摘が4月28日の議事要旨にあったが、サプライチェーンについても予想以上に回復しつつあり、「自粛ムードは修正されつつある」などマインドの悪化が加速している様子もないことが、それ以降に明らかになったことで、西村副総裁は5月20日の議案提出は行わなったのではないかと思われる。

 また、4月28日の会合では「中長期的な物価安定の理解」の点検も行われていたが、これについては次のような状況にあった。

 「何人かの委員は1%程度を中心として概ね上下1%の範囲内であるとの見解を示した。別の何人かの委員は1%程度を中心に概ね上下0. 5%の範囲内との認識を示し、このうち複数の委員は、中心は1%より幾分高めであると述べた。一人の委員は、0. 5%~2%で、中心は1%より幾分上の値との見方を示した。」

 昨年4月30日の決定会合の議事要旨を見ると、次のようになっていた。

 「多くの委員は1%程度を中心値として上下0 . 5 %ないし1%の範囲内であるとの見解を示した。一人の委員は、0 .5%~2%で、中心は1%より幾分上の値との見方を示した。一人の委員は、1%よりゼロ%に近いプラスを中心に考えているとした上で、中心値である1%を過度に強調するのは望ましくないのではないかと述べた。」

 昨年と比較すれば、タカ派が一人減り、ハト派が一人から複数に増加していたことがわかる。昨年のタカ派的なコメントは須田委員であったとみられ、その抜けた分の影響は事前に指摘されていたが、中心は1%より幾分上との認識を示すハト派的な委員が増加していた。

 その結果として「中長期的な物価安定の理解」は、昨年の「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている。」から、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である。」 と微妙に(「委員の大勢」の削除)変化していたのである。

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by nihonkokusai | 2011-05-26 09:54 | 国債 | Comments(0)

燻り続ける欧州の債務問題と日本への影響

 5月20日にバイトマン・ドイツ連邦銀行総裁は、ギリシャが債務の償還期限を延長した場合、ギリシャの国債はECBのリファイナンスオペの担保として、不適格になる可能性があると発言した。ちなみに4月末で退任したウェーバー総裁のあとを継いだバイトマン氏は42歳、史上最年少のドイツ連銀総裁となった。

 そして20日に格付会社フィッチはギリシャの格付けをB+に三段階引き下げた。フィッチは欧州連合が検討している自主的な債務再編でも、デフォルトと見なすと表明した。これらを受けて20日のギリシャ10年債の利回りは、16.59%となり過去最高水準に上昇した。

 さらに21日に格付会社S&Pは、イタリアの格付け見通しを、安定的からネガティブに引き下げた。これは政治的な行き詰まりの可能性が財政計画の遅れに繋がり、政府債務削減の可能性が低下との見方によるものである。

 また、22日に行われたスペインの地方選挙では、事前に予想されていたように野党第一党である民衆党が歴史的な勝利を収め、与党社会党は大敗した。これは、政府の財政緊縮策に対する国民の不満などが要因とみられ、今後のスペイン政府による緊縮財政措置の実施に懐疑的な見方も広まった。この選挙を前にスペインでは大規模なデモも発生していた。高い失業率、緊縮財政措置による公務員削減等により国民の不満が鬱積しており、一時のギリシャのデモを思い起こす。

 そしてフィッチは23日に、ベルギーの格付けの見通しをネガティブとし、予算均衡に関して政治的合意が得られず、赤字削減目標が達成できなかった場合には格付けを引き下げると警告した。

 ギリシャの債務問題が、アイルランド、ポルトガルに飛び火し、それがスペインやイタリア、ベルギーまで懸念が広がりつつある。いまのところイタリアやベルギーの財政については、それほど懸念する必要はないと思われるが、今後のユーロ圏での財政問題を見る上で最も影響が大きいとみられるのが、スペインの動向である。経済規模が大きいスペインの債務に対する不安が強まると、欧州諸国に対する信用不安がバージョンアップされる懸念があり注意が必要である。

 今回の欧州債務危機の再燃は、欧州連合がギリシャ問題などに対して抜本的な解決策が見いだせなかった上に、ECBとの意見の相違などが生じたことも挙げられる。さらに、ストロスカーン氏がIMF専務理事を辞任したことで、今後の欧州の債務問題解決に向けて不透明感が強まったことも間接的な要因として挙げられよう。

 ギリシャやスペインなどは債務問題を解決するために、財政再建を積極的に行なっているものの、それに対して国民の理解が得られているとは思えない。今回のスペインの選挙結果を見ても、国民からの不満の声の方が強まっている。

 この欧州の債務問題は対岸の火事ではない。規模としてはこれら欧州諸国をはるかに超える規模の債務を抱えた日本も、いずれ同様の問題が発生する恐れがある。そのための対策として、消費税の引き上げ等も議論はされているが、財政再建に向けた本格的な動きは今のところない。

 日本でも財政再建に向けては、社会保障費の削減などとともに増税などにより、国民にある程度の犠牲を強いることが必要となる。もし半ば強制的に財政再建が進められれば、ギリシャやスペインのようにそれに対する反対運動が活発化する可能性もありうる。

 一部には日本の財政はまったく問題はなく、積極的にもっと国債を発行しデフレ脱却を優先し税収を増加させれば日本経済は回復するという、根拠なき楽観論を唱える人もいる。これまで日本国債が安泰であったのは、それに対する需要が存在していたためであり、その元になっている家計の金融資産は残念ながら無限には存在していない。言うまでもなく、日銀による国債引受などは論外である。

 また、国債を増発させて財政政策を行えば税収増が本当に望めるのか。もちろん一時的な税収増では意味がなく、財政再建を進められるほどの景気の改善とそれによる恒久的な税収増を望める手段があるというのか。

 このような楽観論に惑わされることなく、日本の財政問題に対して真摯に受け止め、半強制的で反感を招くような財政再建ではなく、国民の声に答える格好での財政再建を進めなければ、ギリシャやスペインで起きていることが、いずれ日本でも起きる可能性がありうる。


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by nihonkokusai | 2011-05-25 08:28 | 国債 | Comments(0)

西村副総裁、議案を提出せず

 5月20日の日銀金融政策決定会合では、「次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を前回と同様に、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促すことを全員一致で決定した。

 前回4月28日の金融政策決定会合では、西村副総裁より、資産買入等の基金を5兆円程度増額し、45兆円程度とする議案が提出され、反対多数(1対8)で否決されたが、今回、西村副総裁からは同様の議案は出されなかった。

 28日の会合で西村副総裁が議案を提出した理由について白川総裁は次のように述べていた。「震災等の影響が長期化し、企業や消費者マインドの悪化を通じて実体経済への悪影響が強まることを防ぐ観点から資産買入等の基金を5兆円程度増額する議案が提出されました。」

 議案を出した理由は、総裁などよりもやや悲観的に震災への実体経済の影響を見ていたためとみられるが、4月28日から今回の会合までの間に特に情勢が大きく変わったとは思えない。

 その間発表された経済指標をみると、例えば、5月12日に発表された4月の景気ウォッチャー調査では景気の現状判断Diが28.3と前月比0.6ポイントの改善となり、2~3カ月先を見る先行き判断DIは38.4と、前月比11.8ポイントと大きく上昇となっていた。また、16日に発表された3月機械受注統計では、船舶・電力を除いた民需の受注額は前月比プラスの2.9%と予想外のプラスとなった。

 しかし、19日に発表された1~3月期実質GDPは前期比マイナス0.9%、年率でマイナス3.7%と事前予想も大きく下回った。4-6月期についても大きく落ち込む可能性があるなど、福島原発の問題も絡んで震災等の影響が長期化し、企業や消費者マインドの悪化を通じて実体経済への悪影響が強まる懸念が、この短い間に後退したとは思えない。

 前回、西村副総裁は議案は出したものの、金融政策を現状維持とする議長案には反対していなかった。すでに利下げ余地がないところに反対する必要はない、との見方もあろうが、資産買入れ基金の増額を求めるならば議長案に反対してもおかしくはなかったはずである。

 何故、4月28日の決定会合で西村副総裁は議案を出したのか。そして、5月20日の決定会合では何故、それを引っ込めたのか。その本当の意味を知るには本人に聞くか10年後の議事録を確認する他ないのかもしれないが、5月25日に発表される金融政策決定会合(4月28日開催分)議事要旨である程度のことがわかるかもしれない。

 震災や原発事故の影響について日銀の政策委員がすべて共通した意見を持っていることは信じがたい。この状況下、楽観的なシナリオを描いて利上げを主張する委員はさすがにいないと思うが、ある程度景気に対してリスクシナリオを描いている政策委員が存在していてもおかしくはないはずである。

 市場では西村副総裁が議案を出さなかったこと対して、ほとんど反応はしなかった。また、これにより日銀の追加緩和観測が後退との見方も出ていない。しかし、西村副総裁にはもう少し粘りも見せて欲しかったように思う。そうであれば市場参加者も4月28日の西村副総裁の行動に対し、透明性を高めるためにも反対意見は重要であるとして理解を示していたはずである。


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by nihonkokusai | 2011-05-24 08:16 | 日銀 | Comments(0)

専務理事人事で揺れるIMFとは何か

 性的暴行容疑で逮捕・訴追されている国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事が5月19日に辞任した。これにより次の専務理事が誰が就任するのか注目されている。

 候補者としては、フランスのクリスティーヌ・ラガルド経済・財政・産業相(法的問題が浮上?)、ECB総裁の有力候補でもあったアクセル・ウェーバー前ドイツ連銀総裁(キャメロン首相が難色?)、そして新興国からはトルコのケマル・デルビシュ元経済財務担当相、グリアOECD事務総長(メキシコ)などの名前が上がっている。

 これまでIMFのトップである専務理事は慣例的に欧州から選出されてきたが、今回、中国から専務理事は透明・公平に選出すべきとの意見が出るなど、ここにきて存在感の増している新興国からは全ての加盟国から候補者を選ぶべきとの意見も出ている。

 それでは何故、IMFの専務理事の人事が重要なのか。あらためてIMFとは何であるのかを確認してみたい。

 世界恐慌の苦い経験を繰り返さないために、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズとアメリカ財務次官補のハリー・ホワイトがそれぞれ草案を出した。ケインズ案は、世界の中央銀行的性格を持つ機関を設立し、加盟国が勘定を開き各国間の決済はその相互振替によって行ない、不足の場合は当座貸越で処理するという形を考えていた。これに対しホワイトは各国からの資金の拠出により基金が必要資金を貸し付けるという案を出したのである。

 この両案についての討議がくり返されたが、すでに世界経済はアメリカに大きく依存するようになっており、いずれの国も戦後の復興についてはアメリカの協力にあおがざるを得なかったことなどからアメリカ案に近いところで妥協された。

 こうしてホワイト案を骨子として修正を受けて出来上ったのが、国際通貨基金協定と国際復興開発銀行協定で、総称としてブレトン・ウッズ協定またはIMF協定と呼ばれた。

 1947年にIMF協定が発効され、ワシントンに為替相場と通貨の安定を目的とした国際通貨基金(IMF)が国際連合の専門機関として設立された。

 IMFと同様にブレトン・ウッズ協定によって、ワシントンに本拠を置く国際復興開発銀行(世界銀行)も設立された。1946年に業務が開始され、1947年からは国連の専門機関となった。

 IMFの執行機関は理事会であり、24名の理事により構成されている。理事会の議長と国際通貨基金の代表を務めるのが専務理事(managing director)である。そしてIMFの専務理事には欧州出身者、世界銀行の総裁には米国出身者が選出されるのが暗黙の了解になっている。現在の世銀総裁は元アメリカ合衆国国務副長官であったロバート・ゼーリック氏である。

 IMFの目的は協定第1条に規定されているが、加盟国が通貨に関して協力し、為替相場の安定を促進することにより国際金融秩序を維持し、また為替制限を撤廃することによって世界貿易の拡大をはかり、もって経済成長を促進させるということである。

 IMFは、国際収支危機を未然に防ぐための加盟国のマクロ・為替政策に関するサーベイランス(監視)、加盟国の国際収支調整及び経済構造調整のための融資、財政金融制度の整備や統計作成のための技術支援等を行なっている。

 これまでのIMFの活動としては1997年のアジア危機において、韓国政府がIMFに200億ドルの緊急支援を要請し、これにより韓国はIMFの管理下に入った。IMFはこの際に史上最大規模となる210億ドルの融資の実施を決定した。

 また、最近では欧州での信用不安に対してIMFは欧州連合とともにギリシャやアイルランド、ポルトガルの救済に取り組んでおり、今回の専務理事人事については、かなり神経質にならざるを得ない面もある。欧州諸国としてはこれまでの慣習通りに、欧州から専務理事を出したいところであろう。


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by nihonkokusai | 2011-05-23 08:22 | 国際情勢 | Comments(0)

4月の公社債投資家別売買高より

 日本証券業界は20日に4月の公社債投資家別売買高を発表した。これによると4月は都市銀行が3兆6749億円の売り越しとなった半面、外国人投資家が1兆7009億円の買い越し、地方銀行が1兆6752億円の買い越し、生損保が1兆1592億円の買い越しとなっていたことが明らかになった。

 4月の債券相場を振り返ると4月上旬に10年債利回りが1.3%台をつけるなどやや売られていた。しかし、米国債券相場が8日あたりから上昇基調となり、加えて現物債は超長期主体に買いが入りはじめたことで、日本でも債券相場は次第にじり高基調となった。4月末の10年債利回りは1.2%近辺まで低下した。

 20年債利回りも4月上旬に2.1%台をつけていたものの、4月22日に2%を割込む場面もあった。4月20日あたりからは引け際に超長期債などが買い進まれるような状況が続いていたが、これは引け値を意識した投資家の買いが入ったのではないかとみられた。

 4月の国債の投資家別売買高を見てみると、都市銀行は3兆704億円が中期債の売り越しとなっていた。また、長期債も3587億円の売り越し、超長期債も3416億円の売り越しとなっていた。震災の影響で貸し出しが改善されてきたことに加え、期初の益出しを先行させたものとみられる。

 それに対して外国人投資家は中期債を2兆1362億円買い越しとなり、国庫短期証券を11兆8892億円買い越していた。4月7日にECBは利上げし、FRBについても出口が意識されるなどしているのに対し、日銀は追加緩和の可能性も指摘されるなど日本と欧米の金融政策のスタンスの違いによるものに加え、欧州の信用不安による逃避的な資金が日本に入っていた可能性がある。

 地方銀行は長期債を8148億円、中期債5356億円のそれぞれ買い越しとなっていた。また、生損保は超長期債を1兆3053億円を買い越している。これを見る限り、引け際の超長期債への買いは生保による可能性が高そうである。

 都銀による中期債主体の売りに対して、外国人投資家や地銀が買い向かい、超長期については生保を主体とした買いが入ったことで、債券の相場全体を持ち上げた構図となっていた。


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by nihonkokusai | 2011-05-22 07:23 | 国債 | Comments(0)

FRBによる出口に向けた工程表

 5月18日に4月26日から27日にかけて開催されたFOMCの議事要旨(Minutes)が発表された。メディアによっては議事録としているところも多いが、会合の約3週間後に発表されるものは日銀が会合の約1か月後に発表する議事要旨に内容が近い。日銀は10年後に精細な内容が記された議事録を発表するが、米国も議事中のジョークまでも含めた議事録(Transcript)を5年後に公表しているため、ここでは5月18日に発表されたものは議事要旨としたい。

 今回のFOMCの議事要旨で特に注目されたのは、いわゆる正常化に向けた出口政策に関するものであった。FRBは2011年6月末まで国債買入れを行うが、それは予定通りに6月末で終了する。その後についても、MBSなどの償還金の再投資を継続し、6月終了時の金融緩和的な規模は維持されることをバーナンキFRB議長は会見で明らかにしている。

 今回の議事要旨にも何人かのメンバーからはインフレリスクの高まりを懸念する声もあったように、いずれ正常化に向けた行動を取ることも想定しておく必要もあるとみられ、それに向けた意見交換があったようである。

 その順序としては、最初に住宅ローン担保証券(MBS)の償還金再投資を停止する。そして、利上げを実施して現在の実質的なゼロ金利政策を解除し、その後買い入れた証券を売却するほうが良いとの意見である。

 これらはあくまでそのような環境が整った場合の話であり、すぐに行動に移るというわけではない。しかし、その手順を話し合いすることができるような状況に米国の経済状況がなりつつあることも確かであろう。

 今回、FOMCで示された手順は、市場への影響を考えれば妥当なものであろう。償還金再投資の停止により、膨らんだFRBの資産規模を少しずつ落とす方向を示す。さらに、経済や物価動向を見ながら、実質的なゼロ金利政策を解除する。これについては日銀のように明確な時間軸は設定させていないことにも注意したい。

 そして、問題となるのはFRBが保有する国債やMBSの売却になるのではないかと思われる。日銀は量的緩和政策などにより国債の買入れ規模を膨らませてきたが、その規模の縮小すら行ったことはない。これは日銀の資金供給に国債買入れがこの規模で必要だからというためというよりも、債券市場に対する影響の大きさが背景にあると考えられる。

 米国での国債需給にFRBの買入れが大きく組み込まれている中にあり、果たしてFRBは買い入れた国債などの売却は本当に可能であるのか。市場需給に大きな影響を与えることなく売却ができるとなれば、これは日銀にとっても大きな参考事例になると思われる。


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by nihonkokusai | 2011-05-20 08:23 | 日銀 | Comments(0)
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