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日米の国債への信認と格付け

 4月27日に格付け会社S&Pは日本の格付けのアウトルックをネガティブに変更した。S&Pは4月18日には米国の格付け見通しを安定的からネガティブに引き下げている。

 何故、このようなタイミングでアウトルックを引き下げたのか。その理由としてS&Pは、東日本大震災と、それに起因する福島第1原発の事故の影響をふまえ、震災の復旧・復興費用は30兆円前後生じ、増税などの財源措置がとられない場合、GDPに対する財政赤字の比率が、2013年度までに従来予想を3.7%上回る水準に達すると予想するためとしている。

 政府は4月22日に東日本大震災の被災地の復旧対策を中心とする2011年度第1次補正予算案を閣議決定したが、これによる財政支出額は4兆0153億円となる。これだけで阪神大震災の復旧・復興のため編成した3度の補正予算の計3兆2298億円を上回るが、今後は第二次、第三次の補正予算が編成されることも予想されている。

 この民間格付け会社によるソブリンの勝手格付け(依頼されたものではない格付け)は、たしかに警告として受け止める必要はある。しかし、だからといって、これを受けて市場参加者が動揺する必要はない。日本の債務状況や震災による影響については格付け担当者同様、いやそれ以上に把握しているはずである。このため、今回も日本の債券市場への影響は皆無と言って良いような状況であった。

 米国債の格付けのアウトルックに対しては、27日の定例記者会見でバーナンキFRB議長は次のように発言している。

 「ある意味で、S&Pの米格付け見通し引き下げがわれわれに伝えることは何もない。新聞を読む人なら誰でも米国が非常に深刻な長期的財政問題を抱えていることは知っている。」

 バーナンキ議長のこの指摘は的を射ていると思う。本来であれば、民間格付け会社の格付変更などに一喜一憂すべきものではない。ただし、ギリシャなどのように一度信用を失い市場が動揺している際などは、格付け会社の動きに敏感になってしまうことも多い。それだけ市場参加者が自らの判断そのものに自信を持てなくなっているためでもあろう。

 米国債も日本国債もこのような格付けに関する報道には、今後も影響を受けることはないと思われる。ただし、これには両国の国債に対する市場の信認が維持されていることが大前提となる。このあたりは日本の国会議員なども十分に認識しておく必要がある。日銀による国債引受などにより国債への信認が失われれば、民間格付け会社の勝手格付けと言えども、それをきっかけに長期金利を急騰させるきっかけとなりうるためである。


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by nihonkokusai | 2011-04-29 10:53 | 国債 | Comments(0)

初のFRB議長による定例記者会見

 27日のFOMC後に、FRB議長による初めての定例記者会見が開催された。FOMCの声明発表は通常の午後2時15分ではなく午後0時半頃となり、そしてバーナンキFRB議長による会見は午後2時15分に変更された。ちなみに27日の米5年債の入札は、このFRB議長の定例記者会見の関係で、通常の午後1時ではなく午前11時半となった。

 金融政策は金融市場を通じて効果が発揮されるため、市場との対話が金融政策の効果を高める上では大変重要なものとなっている。FRBのバーナンキ議長も「市場の先行きの短期金利予想に最も直接的に働きかける手法は、トークである」と以前から発言していた。

 ところが日銀やECBが行なっている定例のトップによる記者会見については、「リアルタイムの透明性は非常に重要で価値があるものの、その一方で、当座の発言が誤解される恐れがあり、それにより望ましくない不必要な不透明性、金融市場における不必要な変動が起きかねない」(2月3日のバーナンキ議長の講演より)との理由などから、これまで行われてこなかった。しかし、バーナンキ議長本人による強い働きかけなどにより実現したものと思われる。

 今回の会見については、FOMCの終了予定時間だけでなく、国債入札の時間も変更されるなどかなり用意周到となっていることが伺える。WSJの記事では、「バーナンキ議長は自身の考えというよりも、FOMCでの決定の総括に力を入れるとともに、メンバーの一致した見方を優先する見込み」とある。そして、「記者団からの質問内容については事前には知らされない」そうである。

 バーナンキ議長はナショナル・プレスクラブでこれまで2回にわたり、報道陣の質問を受けているため、記者会見そのものの経験はある。しかし、今回はFOMCという金融政策を決定する会合に関する会見となることで、世間の注目度も高く雰囲気はやや異なるものとなったようである。実際の会見については、バーナンキ議長本人だけでなく質問する記者も緊張の色も隠せず、多少、固さも見える中、そつなくこなしたような印象だったようである。

 過去の日銀総裁の会見を見ると、総裁の個性の違いにより会見の状況もやや異なっていたかに思う。速水元総裁は日銀法の改正後に始められた総裁会見のスタイルを形作った総裁と言えるが、ある意味、頑な姿勢が垣間見えた。これに対して福井前総裁は柔軟な対応を示し、会見もそつなくこなされていた感じを受ける。そして、現在の白川総裁は一言で言えば、隙がない。ただし、その分、やや面白みに欠ける部分もあるかに思う。総裁会見に面白さは必要ないかもしれないが、その場を和ませる会見は聞き手にとってもやりやすいのではなかろうか。これはバーナンキ議長にも同様のことが言えそうである。


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by nihonkokusai | 2011-04-28 08:58 | 日銀 | Comments(0)

国債を買い支える国内資産の伸びも頭打ち

 日本国債はその95%が国内資金で賄われており、それが大きな強みになっていたが、すでに家計の金融資産が頭打ちになっていることにも注意が必要となる。これまでは国債残存額の増加に合わせるように家計の金融資産も増加していたが、その伸びはすでに鈍化している。

 たとえば、国債の買い手として大きな存在となっていたゆうちょ銀行とかんぽ生命の運用資産は2010年12月末で計289兆円弱と、2009年度末に比べ4.5兆円減少した。このうち国債の保有残高は約215兆円と、こちらは9兆円もの減少となっていた。運用資産に占める国債の割合は2009年度末の76%から74%余りに低下した。

 また、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2001年の発足以来、日本国債の最大の買い手だったが、年金受給者の大幅な増加により、保険料収入よりも給付が多くなり2009年度から積立金を取り崩している。取崩額は2009年度が約4兆円、2010年度が6~7兆円程度、そして2011年度は6.4兆円となる計画と4月24日の日経新聞が報じている。2010年度は国内債券などで約4兆円を現金化した。

 生命保険会社なども同様に今後、運用額が大きく増加することは考えづらい。ただし、大手銀行などが預金増とともに景気低迷による貸し出しの減少により、国債の増加分をカバーしてきている。しかし、今後も同様に銀行がカバーできるという保証があるわけではない。今回の震災がこのあたりの構図に影響を及ぼす可能性もある。

 いずれにしても国内資金で賄うにも限度があることは事実であり、その限界は2015年とか2020年あたりにやってくるとの見方も出ている。しかし、これについてはいろいろな前提条件も必要でかなり詳細な分析も必要となり、具体的にいつなのかは測定が難しい面がある。

 たとえば、銀行の貸出や生保や公的年金の外債投資分などを国債に回すとなれば、その分、余裕が生じるのも確かである。しかし、貸し出しを減少させれば当然、景気に悪影響が生じ、それは税収不足の要因にもなる。また、外債投資の抑制、もしくは保有する外債の売却については、1998年末の運用部ショックの経験から、米国政府あたりからの懸念が出て国債問題が国際問題に発展しかねない。

 原油も枯渇すると言われながらまだ潤沢に供給されているように、日本国債も大量に発行され続けていても、いまは安定的に消化されている。しかし、原油も国債を買い支えている国内資産もいつかは枯渇する。

 我々は枯渇後の世界観を漠然と持ちあわせてはいるが、それを具体的に描くことは難しい。代替エネルギーには今回の福島原発事故であらためてリスクの大きさが意識された原発を推進していくほかはないのか。そして、日本国債についてもリスクが大きい日銀引受にいずれ頼らざるを得なくなるのか。そうなる前に手は打つべきであろう。


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by nihonkokusai | 2011-04-27 08:18 | 国債 | Comments(0)

OECDの提言にみる震災の影響を加味した日本の債務問題

 経済協力開発機構(OECD)は4月21日に日本経済の財政状況や経済見通しを分析した2011年版の「対日経済審査報告書」を公表した。これについて消費税20%の引き上げへの提言がマスコミで注目されたが、何故にこの提言が出されたのか、その要因についてOECDの報告書を元に見てみたい。

「OECD対日審査報告書 2011年版」 http://www.oecd.org/dataoecd/6/5/47651437.pdf

 1993年以来、18年連続して財政赤字が続いているが、その要因として、OECDは長期にわたる低い経済成長と減税による歳入抑制をあげている。ただし、並外れた水準の債務による影響は極めて低い長期金利により軽減されているとしている。

 その上で、「しかしながら、日本は、長期金利上昇のリスクを低減させるとともに、持続可能な財政の道筋に戻るための長期にわたるコストを低下させるため、財政健全化に向けた取組みを加速することが必要になるであろう。」としている。

 国債への信認維持のためには、持続可能性(サスティナビリティ)が最も重視される。すでに公的債務残高はグロスで200%(GDP比)、ネットで115%程度と OECD地域の中で最も高くなっている。この数値そのものが日本の財政破綻等を意味するものではないが、債務そのものが巨額となっている点には注意しなければならない。

 このため政府は、2010年6月に財政運営戦略を発表し、この中で国及び地方政府の基礎的財政収支赤字を 2010年度6.4%(GDP比)から 2015年度に3.2%に半減させ、遅くとも2020 年度までに黒字化することを目標とする目標を設定した。このために、国の一般会計歳出(債務償還費と利払費を除く)は、2011年度から 2013年度にかけて、2010年度当初予算の水準を超えないこととされ、この目標は2011年度予算案の中に取り入れられた。

「財政運営戦略」 http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2010/100622_zaiseiunei-kakugikettei.pdf

 しかし、3月11日の東日本大震災の影響による歳出増により、すでにこれは2011年度から守られない可能性が生じている。これほどの未曾有の災害は当然ながら予期できるものではないため致し方のない面はある。ただし、これまでの日本の財政再建への動きは、1997年の金融危機や2008年のリーマン・ショックなどの影響で前進するどころか後退しており、それが政府債務を加速度的に増加させた要因になっている。これは、そもそも財政再建に向けた取り組みが中途半端であり、外的ショックに弱い日本の財務体質にこそ大きな問題があると私は見ている。

 OECDではその被害の規模を考慮する場合、地震と津波による被害を受けた地域における復興に向けた支出について、1995年の阪神・淡路大震災後、国による復興に向けた支出が、GDP比1%以上(6 年間にわたって)に達したことを指摘している。歳出の組み換えや、日本の人々の連帯感に訴えかけ、歳入の短期的な増加により復興に向けた支出を賄うことが重要であるとしながら、中期にわたり財政健全化は優先事項であり続けると指摘しているが、巨額の負債を抱え込んでしまっている以上、それは優先事項というよりも必要不可欠なものとなる。

 そのためには消費税増税を含む歳入改革とともに、大胆な社会福祉改革を中心とした歳出見直しが重要となる。それには国民の理解が必要である。震災復興のための増税ならば理解を求めやすいといったような意識ではなく、もっと長期的なスタンスで債務問題を考えなければいけない。震災復興による歳出増により、さらに日本の財政悪化が加速される恐れがあることで、日本国債が国内資金で賄えなくなるという最悪の状況を回避させるべく、財政再建に向けた具体的なシナリオを構築化する必要がある。それにはこれまで諸外国で行ってきた財政再建もモデルになろう。専門家を交えた具体的な対応策を講じる必要がある。

 ただし、このシナリオには日本国債の信認を揺るがす日銀による国債引受論のようなものは極力排除する必要があるのは言うまでもない。国債への信認が崩れ、長期金利が急上昇してしまえば、改革そのものが極めて困難になりかねない。

 消費税20%が適切であるのかどうかはさておき、これもひとつの提言として受け止める必要がある。これまで財政構造改革に向けて動こうとするたびにブレーキがかかってしまっていたことを踏まえ、具体的・現実的な財政再建策とそれに伴う景気の落ち込みをある程度抑えるような難しい政策について、知恵を出し合うことが重要である。残された時間はそれほど多くはない上に、その時間は今回の震災の影響で多少ながら短くなってしまうことも確かなのである。


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by nihonkokusai | 2011-04-26 08:45 | 国債 | Comments(0)

第1次補正予算等に絡んだ国債増発について

 政府は4月22日に東日本大震災の被災地の復旧対策を中心とする2011年度第1次補正予算案を閣議決定した。財政支出額は4兆0153億円となる。これだけで阪神大震災の復旧・復興のため編成した3度の補正予算の計3兆2298億円を上回る。今回の補正のための財源には、基礎年金の国庫負担割合(2分の1)を維持するための2兆4897億円を流用するほか、民主党のマニフェスト施策を含む歳出見直しなどで確保する。

 また、日本政策金融公庫の危機対応融資や中小企業向け融資の拡充のため、2011年度当初の財政投融資計画(14兆9059億円)に4兆3220億円を追加し19兆2279億円とするそうである。22日に開催された国債市場特別参加者会合(PD懇)でも、冒頭の財務省の説明で「危機対応融資等の財政投融資の追加を検討しており、その半分を財投債の増発で、残りを財投FBの発行で調達することが検討されている」(議事要旨より)とあった。今回の財投に絡む対応により、財投債が2兆円と財政融資資金証券が2.3兆円追加発行される見込みである。

 以上の第一次補正予算等によるカレンダーベースでの市中消化における国債の増発はない。建設国債1.22兆円増、特例国債1.22兆円減という組み換えも行われるようであるが、今年度の新規財源債(建設国債と特例国債の合計)そのものは44.3兆円として変化はない。また、借換債の111.3兆円も変わらずとなるが、財投債は当初の14兆円から16兆円になる。このため今年度の国債発行総額は財投債の増額が2兆円加わり、当初の169.6兆円から171.6兆円に増額される。

 この財投債の増発については消化方式別発行額のうち「前倒債発行減額による調整分」で対応するようである。

 これに関しては21日のPD懇で、「22年度の前倒債の発行額は、年度当初は8.1兆円を見込んでいたところ、財投債の不用の発生(7.1兆円)や第Ⅱ非価格競争入札での発行額が予定を上回ったこと(2.8兆円)などの一方、個人向け国債等の販売が下回ったこと(1.2兆円)などにより8.8兆円増え、16.9兆円となった。」「本年度当初計画では前倒債を6.4兆円取り崩すこととしていたが、これに先ほど説明した財投債の若干の増発分を増額することを検討している」との説明があった。

 つまり昨年度は発行が予定されていた財投債15.5兆円のうち7.1兆円分の発行が見送られたことなどもあり、今年度の国債発行額に加わる6兆3893億円を除き、結果として10兆5301億円もの発行余力を保持している。この分から2兆円の財投債の増発分を、この前倒債の取り崩しにより調整することになる。

 ただし、今後は二次補正の編成も視野に入る。これによる国債増発も想定されるが、市中発行増額をできるだけ抑制するためのさらなる前倒債の取崩しによる対応について、財務省から以下のような説明があった。

 「更に取り崩すに当たっては、24年度の発行計画への影響も含めて検討する必要がある。仮に前倒債の残額全てを今後の補正予算の財源に充てると、24年度発行計画においては前倒債の発行減額による調整分を活用することができなくなり、大幅な市中増発の要因となることに留意が必要である。」

 このように、さらなる前倒し債の取り崩しについては限度があるとみられ、二次補正についてはある程度の市中消化分に関わる国債増発は避けられないものとみられる。もちろんこれは二次補正の規模などが明らかにならないと、国債増発額がいくらになるのかはわからないところではあるのだが。


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by nihonkokusai | 2011-04-23 10:21 | 国債 | Comments(0)

日銀による景気や物価の見通し

 日銀は4月28日に公表する「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で2011年度の実質国内総生産(GDP)成長率を1月に発表した中間レビューにおける前年度比プラス1.6%から大幅に下方修正する見通しと伝えられている。

 日銀は4月と10月の年2回、「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を作成して足元とともに先行き2年ほどの経済、物価の見通しを公表している。また7月と1月には中間レビューを行っている。

 GDP予想の下方修正は、当然ながら1月には予測しえなかった3月11日の東日本大震災の影響によるもので、サプライチェーンの寸断や電力供給不足に伴う生産低下などが要因である。IMFが先日発表した世界の経済見通しでは、2011年の日本の経済成長率を0.2%ポイント引き下げて1.4%にしているが、日銀は0%台半ばに下方修正する見通しと22日の毎日新聞は報じている。

 ただし、IMFは震災の影響は2~3か月で収まり、その後は年後半にかけて持ち直しとの予想となっているようだが、やはり日銀も来年度にかけて景気は緩やかに回復していくという予測とみられる。14日の白川総裁の講演でも「第3四半期以降、GDP成長率は再びプラスに転じるという見方が民間エコノミストの多数説となっています」と民間の予想を引き合いに出しているが、日銀の予測もそれと大きな隔たりはないのではなかろうか。

 また、消費者物価指数(除く生鮮食品)については、原油価格など国際商品市況の高騰を反映し、1月の中間レビュー時の前年度比プラス0.3%の見通しをさらに引き上げる可能性があるとも報じられた。4月分からは公立高校授業料無料化の影響が剥落して0.5%程度上方にシフトするため、それによるプラス効果が存在しているが、さらに商品市況の上昇を加味しての上方修正される可能性がある。

 ちなみに今年8月には消費者物価指数の基準改定が予定されている。7月に発表される6月分までは2005年基準であるが、8月に発表される7月分からは2010年基準が公表され、5年前の例に倣えば0.4%程度の下方シフトが起きる。しかし、この改定の影響を加味しても2011年度末までにプラス基調が確認できるとの見通しが日銀内にはあるとも伝わっている。

 また、4月には「中長期的な物価安定の理解」についての点検も行われる。昨年4月30日に開催された決定会合の議事要旨には、これについて以下のような議論があったことが記載されている。

「多くの委員は1%程度を中心値として上下0.5%ないし1%の範囲内であるとの見解を示した。一人の委員は0.5%~2%で、中心は1%より幾分上の値との見方を示した。一人の委員は、1%よりゼロ%に近いプラスを中心に考えているとした上で、中心値である1%を過度に強調するのは望ましくないのではないかと述べた」

 ゼロ%に近いプラスを中心に考えているとしたのは、3月末で退任した須田委員ともみられることで、その影響も若干ありそうだが、1%程度を中心値として上下0.5%ないし1%の範囲内との大方の見方には変化はないとみられる。

 いずれにせよ、東日本大震災を受けての今後の景気や物価に関する日銀の見方が28日にはっきりするわけであり、その内容に注目したい。


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by nihonkokusai | 2011-04-22 08:28 | 日銀 | Comments(0)

原発事故の賠償金支払いのための基金に交付国債を交付か

 NHKの報道などによると、福島の原発事故の賠償金支払いのため、国が賠償原資として数兆円規模の公的資金を用意し、このため必要に応じて現金にできる、交付国債を交付すると伝えられた。

 これは本来であれば東京電力が支払う必要があるものだが、損害額は数兆円規模とみられ東電だけでは負担しきれない。このため、政府は東京電力に資金支援を行う基金のような組織を新たに設立し、この組織の財務面の基盤を整えるため、政府は交付国債と呼ばれる、必要に応じて現金にできる国債を交付する。

 NHKの報道によると、東京電力はこの組織に対して優先株の配当を行うとともに、資金の返済を進める。東京電力に一度に賠償金を支払わせると電力の供給事業に支障が出かねないため、公的資金などの活用で支援する。ただし、東京電力が、電力供給事業で得られる収入から時間をかけて返済できるため、最終的には国の財政負担は招かないとしている。

 交付国債とは、戦没者などの遺族や強制引揚げを余儀なくされた引揚者などに対して、弔慰金、給付金などの金銭の支給に代えて交付されたが、その後、1997年の金融危機に際し、金融システム安定化策として30兆円の財政資金を用意された際に、その財源として交付国債10兆円と政府保証枠20兆円で賄われた。

 預金保険機構に交付される国債の発行等に関する省令によると、この国債の名称は、預金保険機構特例業務基金国庫債券とされ、償還の手続として「政府は、機構から国債の償還の請求を受けた場合において、当該請求に係る金額の償還を行うときは、その償還を行う金額を日本銀行における機構の勘定に払い込むものとする。」とある。

 また、一部の償還の請求を受けた場合の措置として「政府は、機構から国債について、その額面金額又は登録金額の一部につき償還の請求を受け、当該請求に係る金額の償還を行った場合には、国債証券にあっては、当該国債証券と引換えに、当該額面金額から当該償還金額を控除した金額を額面金額とする国債証券を機構に交付するものとし、登録国債にあっては、当該登録金額から当該償還金額を減額するものとする。」とある。

 交付国債とは、債券の発行による発行収入金を伴わず、出資金の払込、弔慰金の支払及び損失補償金等、国が金銭の給付に代えて交付するために発行する債券のことである。このため、債券の発行による発行収入金が発生しない。原則として利子が付けられず、必要に応じて現金化できるが、譲渡は禁じられているものである。

 つまり、今回で言えば政府はこの「基金のような組織」に対して現金を渡すのではなく、国債を交付する。この組織は現金が必要となった時点で保有する国債を償還し現金化するのである。政府は支払いを要求された時点ではじめて予算措置を行い、それに応ずるかたちとなる。


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by nihonkokusai | 2011-04-21 08:32 | 国債 | Comments(0)

米国債は格付け見通し引き下げよりも欧州問題を注視

 米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは、米国債の格付け見通しを安定的からネガティブに引き下げた。これは米国の財政赤字の縮小や連邦債務の削減に関して中長期的に合意できないリスクを意識したものとみられる。大手のしかも米国の格付け会社が自国の国債の見通しを引き下げることは初めてとなる。ネガティブに引き下げとの意味についてS&Pは、今後2年以内に3分の1の確率で格下げの可能性があるとしている。

 オバマ政権は13日に、歳出削減と増税を通じて12年以内に累積赤字を4兆ドル削減すると表明したばかり。しかし、この思い切った債務削減策については、米議会も日本同様にねじれ国会となっており、与野党での財政再建への方法のくい違いなども弊害となってくる可能性がある。米国の連邦政府の債務上限引き上げ問題については、いまだ議会の争点ともなっている。

 S&Pによる米国格付け見通しの引下げを受けて、18日の米国市場で米債は長期債主体に売られたものの、それは一時的なものであった。日本国債も、これまで格下げなどが発表されても、それによる売りは一時的であった。これは日本国債はその95%が国内資金で賄われており、国内投資家が売らなければ下げも一時的なものになるためであるとともに、国債への信認が失われなければ、格付け等の変更による影響は限定的であったためである。

 米国債についてもある程度、格付け見通し引き下げは想定されていたものとみられ、それにより直ちに米国債への信認が低下するわけではない。むしろ信認低下が意識された欧州諸国の動向の方が影響を与えた格好となった。米債はギリシャなどの欧州の債務問題などが意識されて切り返したのである。  欧州ではギリシャのデフォルトは避けられないとの観測も強まりつつある。ギリシャ政府当局者は18日に債務再編のための協議を行っていないと表明したものの、ギリシャの2年債利回りは20%へと大きく上昇した。

 ちなみに債務再編(リストラクチャリング)とは、借り手が借金の返済や発行した債券の償還が難しくなった際に、貸し手と交渉し返済可能な内容に見直してもらうことであり、その方法には、支払い期限の繰り延べ(リスケジューリング)や、元利の一部の返済を免除するヘアカットなどがある。

 週末に実施されたフィンランドの議会選挙では、納税者がユーロ圏の救済措置への資金提供に反対する中、反EUの政党が票を延ばして第3党となるなどユーロ懐疑派が躍進した。ギリシャやポルトガルへの救済のための資金提供などを巡って、加盟国内での反EUの声も強まりつつある。これはユーロシステムそのものを揺るがす可能性も秘めており、通貨であるユーロそのものの信認低下に繋がりかねない状況となりつつある。


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by nihonkokusai | 2011-04-20 08:26 | 国債 | Comments(0)

信用・信認の重要さ

 米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは、米国債の格付け見通しを安定的からネガティブに引き下げたが、これによる米債への影響は一時的であり、むしろ欧州の債務問題などが意識されて切り返している。これは米国債への信認そのものが失われなければ、格付けに関する市場への影響は限定的であったためともみられる。

 欧州の債務問題についてはギリシャが債務再編を検討すべきとの意見が出てきており、ギリシャはユーロ圏諸国に対しすべての債務の返済繰り延べを検討するよう要請したとの観測も出て(ギリシャ政府当局者は否定)ギリシャ国債は大きく下落しているが、そもそも、なぜギリシャの債務が問題視されたのか、記憶されているだろうか。

 ギリシャは2009年10月に政権交代が行われたが、パパンドレウ新政権に変わったことにより前政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。そして、2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。ギリシャ危機が生じたのは、その債務そのものの大きさよりも、政府がそれを隠蔽していたことにより政府への信認が失墜したことが大きかったと言える。しかし、市場はギリシャの財政問題をクローズアップしたことにより、同様に債務状態が悪化しているポルトガルやスペインなどにも飛び火したのである。

 たしかにギリシャの政務状態は健全とは言い難い。しかし、ギリシャ・ショックそのものは財政赤字の隠蔽によりギリシャへの信用が低下し、それに格付け会社の格下げが追い打ちをかけた格好であった。

 信用が失われ、同様にショックを引き起こした事例は事欠かない。日本の歴史を辿っても、1927年3月14日に当時の片岡蔵相が「東京渡辺銀行が破綻した」との発言、いや実際には破綻はまぬがれていたことで失言と言えるが、これによりいわゆる金融恐慌が引き起こされた。

 それとこれは小さな事例ではあるが、天皇陛下御在位六十年記念硬貨が発行された際にも、通貨への信用が問題視された。この10万円金貨は発行枚数が1000万枚と巨額であった。また、1枚あたり20グラムの金を使用していたが当時の金価格が2000円前後であり、金そのものの価値は額面の半分以下であり、それが政府への財源を潤した。しかし、その後の偽造事件もあって、金貨保有者は銀行に日銀券と引換に走ったのである。実は私もその一人であった。額面10万円の価値は保証はされていたが、その信用度がやや失われた事例であろう。ただし、ここにきて金価格が4000円台に上昇しており、もしグラム5000円を超えると、今度はプレミアムが付く可能性も出てきた。

 ここで10万円金貨の例を持ってきたのは、これは政府紙幣の発行に近い事例でもあるためである。もし政府紙幣が発行されると、日銀券よりも当然利便性は低下するため、政府紙幣は日銀券に変える動きが強まることが予想される。このため、それよりも政府紙幣を日銀に引受させれば良いとの意見もある。しかし、そもそも財政悪化により発行された政府紙幣に対する信用が維持されることは考えづらい。それを日銀が保有するというだけで、日銀券そのものの信用が失われる。

 腐ったみかんが入っているだけで、すべてのみかんの信用度が落ちる。これは2007年のサブプライムローンを組み込んだ証券化商品が、その後のリーマン・ショックなど世界的な金融危機を招いた発端となったことからも明らかなものである。だからこそ、日銀は保有する資産を国債を中心になるべく安全な資産にしようとしている。確かに一部リスク資産の買入れも行ってはいるが、これは市場における日銀の信用度を低下させるほどのものではなかった。しかし、財政規律を失うことになる政府紙幣、もしくは日銀による国債の直接引き受けは、政府、さらに日銀への市場における信用を低下されることは確かである。その結果がどうなるのかは、ギリシャ国債の例などを出すまでもなく明らかなものであろう。


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by nihonkokusai | 2011-04-19 09:02 | 国債 | Comments(0)

ニューヨークでの白川日銀総裁講演より

 G20・G7出席のため訪米した日本銀行の白川総裁は、14日にニューヨークで講演し、その講演内容が日銀のサイトにアップされた。震災後、海外での日銀総裁の発言でもあり、その内容については特に海外の関心は高かったのではないかと思われる。

 白川総裁は震災発生時、14日から開催予定の金融政策決定会合に向けて、スタッフによる報告を聞いている最中であった。巨大地震発生を受け、予ねてより用意していた非常時の手順に従い、白川総裁を本部長とする災害対策本部を地震発生から14分後に立ち上げたそうである。

 日銀はまず決済システムと金融市場の安定確保に務め、日本の資金決済と国債決済の根幹を成す決済システムである日銀ネットが正常に稼働していることなどを確認したとみられる。仮に日銀ネットに支障をきたすことがあれば、電力供給が立たれるのと同様、もしくはそれ以上の混乱が引き起これる懸念がある。それだけ日銀ネットは重要なインフラでもある。

 震災による日本経済への影響について総裁は、短期的には供給能力への打撃から、生産を中心に経済活動に大きな影響が及ぶことは必至との認識である。震災の被害が大きかった4県のGDPのシェアは約6%に過ぎないものの、地震の規模の大きさに津波の影響、それによる原発事故もあり、またサプライチェーンを通じた影響、発電設備が大きく毀損したことによる影響などがその要因となる。

 ただし、ボトルネックとなった部品や素材については最優先で復旧が進められており、また、道路や工場、住宅をはじめ、毀損した資本ストック(推定毀損額の対GDP比率は約 3~5%)を復元するための需要も出てくることから、第3四半期以降、GDP成長率は再びプラスに転じるという見方が民間エコノミストの多数説となっていると総裁は指摘している。ここでなぜ、ある意味日本最高のシンクタンクであるはずの日銀の予測を示さず民間の予測を出したのであろうか。まだ正式に公表できる予測が出ていないということなのであろうか、

 そして復興に向けた課題とする中で、復興に必要な資金のファイナンスに関し日本は経常収支の黒字、すなわち、貯蓄超過状態が長く続いており、マクロ的にみてファイナンスが難しいという状況ではないと説明している。外貨の資金繰り能力という点でも、日本は対外純資産が2.9 兆ドルという世界最大の債権国である点も強調し、民間金融機関は、復興の資金需要の増加に十分応えられる状況にあるとしている。さらに国債の発行市場をみても、地震発生後も入札発行は順調に行われており、長期金利も諸外国に比べ低位で安定的に推移しているとしている。

 かなり回りくどい説明になっているようだが、結局、主張したかったのは、このあとの発言にある「この非常に安定的な国債市場を損なう理由はどこにもない。日銀が直接引き受ければ、円に対する信頼感も弱める恐れがある」との考え方であるとみられる。

 震災後の日銀の動きを見る限り、積極的な資金供給や追加緩和などにより、金融市場の安定化をはかり、それが結局、震災後の国債発行をスムーズにさせた一因ともなった。こと日銀に関しては、今回の震災により、その信認はむしろ高まったかとのような印象である。


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by nihonkokusai | 2011-04-16 10:54 | 日銀 | Comments(0)
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