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日米の財政悪化が今後の懸念材料になる可能性

 格付け会社のスタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は27日の日本時間での夕方に、日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けをAAからAA-への引き下げを発表した。アウトルックは安定的。外貨建て・自国通貨建ての短期ソブリン格付けはA-1+に据え置いた。

 S&Pは2007年4月に日本の長期ソブリン格付けと長期優先債券格付けをAA-からAAへ1ノッチ引き上げており、格付けそのものの変更はそれ以来となる。昨年1月に日本ソブリンのアウトルックをネガティブに変更しており、それから約1年経過した時点での格下げとなった。また、S&Pによる日本国債の格下げは2002年4月にAAからAA-に引下げて以来のものとなる。

 また、日本国債の格下げは2002年5月にムーディーズ・インベスターズ・サービスがAa3からAa2に引き下げて以来となるため、債券市場関係者の中には初めての格下げを見た人も多いと思われるが、市場への影響はその2002年と同様に一時的なものであった。

 その理由は言うまでもなく日本国債の95%が国内資金で消化されているため、国内投資家が格下げにより国債を売却することは考えづらいためである。また、格下げを理由にこれまで売りを仕掛けていた海外投資家もほぼ失敗に終わっており、日本国債の格付け変更による債券先物の仕掛け売りは経験上儲からないことが示されている。

 27日の格下げ発表のタイミングで、債券先物は当日15時の引け値から30銭程度、イブニング・セッションで下落していたものの、28日には何事もなかったかのように前日引け水準近くで寄り付き、その後は買い進まれて、27日の高値をあっさりと抜き去っている。

 格下げで日本国債は売られないという結果を今回も示したものの、今後は財政問題が債券市場の重しとなる可能性がある。ここにきて日本の債券市場は米国債券市場の影響を受けやすくなっていることから、日本だけでなく米国の財政悪化を材料視して動く可能がある。

 ムーディーズは27日に、米国の格付け見通しを今後2年以内にネガティブにする可能性が高まっているとの見解を示した。またIMFは財政再建に関して日米の取り組みの遅れを指摘した。さらに、ダボス会議に出席しているトリシェECB総裁は、欧州の財政問題への懸念に対して、米国や日本に比べればユーロ圏全体の財政赤字は、ましな水準だとのコメントもあった。

 今後は日米ともに財政再建に向けた動きを強めなければ、市場がそれを催促するような相場展開ともなりかねない。日本国債は財政悪化懸念という材料では売られないとタカをくくっていると、米債下落を通じて日本の財政も意識された売りが出ないとも限らない。相場は常に何かしらの材料を求めて動くが、その材料として日米の財政悪化が取り上げられる可能性がある。それを避けるためには、現政権による財政再建にむけた真剣な取り組みが求められよう。


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by nihonkokusai | 2011-01-31 07:39 | 債券市場 | Comments(2)

日銀の議事録に見る議決延期請求権の意味

 日銀は27日に金融政策決定会合議事録等(2000年7月~12月開催分)を発表した。この中で最も関心が高いとみられるのが、最初のゼロ金利政策を解除した2000年8月11日分の議事録であろう。

 ゼロ金利政策の解除そのものも、もちろん大きな注目点ではあろうが、私個人として注目したいのは、政府による議決延期請求権の行使である。それは、日銀法改正にあたってそれを取り入れる参考にしたブンデス・バンクですら行使されなかったものである。

 議決延期請求権とは、日銀法第19条第2項にある「金融調節事項を議事とする会議に出席した財務大臣又はその指名する財務省の職員及び経済財政政策担当大臣又はその指名する内閣府の職員は、当該会議において、金融調節事項に関する議案を提出し、又は当該会議で議事とされた金融調節事項についての委員会の議決を次回の金融調節事項を議事とする会議まで延期することを求めることができる。」というものである。

 そもそも何故このような、ある意味中途半端な権利を加えたのか疑問であった。これは日銀の議決をひっくり返せるものではなく、あくまで議決を遅らせるだけの権利である。これについては、今回の議事録を見ることにより謎は解けた。

 議事録によると、政府はゼロ金利政策解除の議長案が示されたあと、一時休憩を取ることを求めた。約10分間としていた休憩時間は19分となったが、その間、政府関係者が最終判断を求めた相手が宮沢蔵相(当時)であったとみられる。会合が再開され、村田大蔵総括政務次官(当時)が正式に議決延期を請求した。

 このあと請求する理由などにおけるやり取りがあったが、その中で武富委員(当時)が、日銀法改正にあたって、議決延期請求権に関する鳥居委員会(中央銀行研究会)での議論の内容を紹介している。それによると「予期せぬ議案が出てきたときとか、非常に高度に専門的なテーマに関わる議案が出て、政府側において即座に評価しがたい場合は一旦持ち帰る」ことが想定されていたのである。そのあと日銀法改正にも関わった藤原副総裁(当時)も同様のケースを中心に議論していたことを明らかにした。

 そして、雨宮日銀企画室企画第一課長からは、これに関して金融制度調査会答申における該当部分の紹介とともに、国会での審議における政府委員からの説明として、武藤大蔵省総務審議官(当時、のちの日銀副総裁)の答弁を引用した。それには「新たに提案された議題についての政府の見解が必ずしも明らかでないという事態」が生じた際など、政府の中で検討するなど一定期間の検討が必要になるためとあった。

 つまり議決延期請求権とは日銀の議決に対して、それが予期せぬものであったりした際に、政府の見解がはっきりせず、一定期間議決を先延ばしして、あらためて政府の見解を明らかにさせるというものであった。日銀の議決に反対するために設けられたものではなかったのである。

 しかし、この際の政府からの代表者は宮沢蔵相の判断のもと、日銀のゼロ金利政策の解除に反対することで議決延期請求権を行使したのである。

 その後、ITバブルの崩壊などから日銀はゼロ金利政策を飛び越して量的緩和政策に突き進むことになる。日銀法改正後、日銀と政府との対立がはっきりと出たのがこの議決延期請求権の行使であったが、結果から見れば政府の見方が正しかったことになる。しかし、中央銀行の存在と政府との関係を考えれば、当初の意図とは異なるかたちで行われた議決延期請求権の行使は正しいものであったのであろうか。民主党の一部議員による日銀法改正の動きには賛成しがたいものの、もし今後改正が行われることがあれば、日銀法第19条第2項は削除すべきではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2011-01-28 11:01 | 日銀 | Comments(0)

格下げよりも影響ありそうな首相コメント

 日経QUICKニュースによると、菅首相は首相官邸で、S&Pが日本国債の格付けを引き下げたことについて問われた際に「いま始めて聞いた。ちょっとそういうことに疎いので、また改めてにさせてほしい」と述べたそうである。

 このニュースはツイッターなどで瞬く間に伝わったが、さすがにこのコメントはまずい。もちろん正直に反応したのかもしれないが、そこは一呼吸置いて、「それに関してはのちほどあらためてコメントしたい」と濁すべきであろう。それよりも、国債の格下げに関して首相への報告は、民間会社の格付けだからなかったのであろうか。

 さらに問題とされそうなのは、菅首相は財務相を経験していたことである。それにもかかわらず「ちょっと疎い」との発言は、財務相時代にいったい何をしていたのかと問われかねない。それでなくても政敵に晒されていると思われるだけに、このような細かな発言にも気を配らないと、隙を付かれる可能性がある。この発言が何かしら影響を与えなければ良いと思うが、とにかく発言には最新の、ではなく細心の注意が必要であろう。


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今回の日本国債の格下げについてもコメントいたします。
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by nihonkokusai | 2011-01-27 19:22 | 国債 | Comments(0)

S&Pによる日本国債の格下げの影響

 格付け会社のスタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は27日の日本時間での夕方に、日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けをAAからAA-に引き下げた。アウトルックは安定的。外貨建て・自国通貨建ての短期ソブリン格付けはA-1+に据え置いた。

 S&Pのサイトによると、今回の格下げは、日本の政府債務比率がさらに悪化するとのS&Pの見方を反映し、日本の財政赤字が今後数年にわたって高止まりし、それに伴い財政の柔軟性がさらに低下するとの予想に基づくもののようである。

 さらにS&Pは次のようにもコメントしている。「日本の債務比率は既に格付け先ソブリンの中で最も高いレンジにあるが、さらに、S&Pが世界的な景気後退以前に予想していた水準を上回る水準まで上昇し、2020年代半ばまで下降に転じないとみている。なかでも、一般政府財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は2010年度の概算値である9.1%から、2013年度には8.0%へと若干の低下にとどまると予想している。中期的には、大規模な財政再建策が実施されない限り、2020年より前に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の均衡は達成できないと予測している。」

 S&Pは2007年4月に日本の長期ソブリン格付けと長期優先債券格付けをAA-からAAへ1ノッチ引き上げており、格付けそのものの変更はそれ以来となる。昨年1月に日本ソブリンのアウトルックをネガティブに変更しており、それから約1年経過した時点での格下げとなった。また、S&Pによる日本国債の格下げは2002年4月にAAからAA-に引下げて以来のものとなる。

 これまでの海外格付け会社による日本国債の格付け変更に関しては、日本の債券市場に対する影響はほとんどなかったと言っても良い。その95%が国内資金で消化されている日本国債は、国内投資家がこの格下げにより国債を売却することは考えづらいためである。また、格下げを理由にこれまで売りを仕掛けていた海外投資家もほぼ失敗に終わっており、日本国債の格付け変更による債券先物の売りは儲からないというのがわかったのか、そういった動きもあまり見えなくなっている。

 実際に27日の債券先物のイブニング・セッションでは、発表があった瞬間は売られていたが、先物でわずかに20銭程度の売りでしかなかった。むしろ、外為市場での影響の方が大きかったぐらいである。

 ただし、今回も果たして格下げによる日本国債への売りは「狼少年」となるのか。実は今回の格下げはかなりボディーブローのように効いてくる可能性がある。2011年度予算案を基に2014年度までの歳出と歳入の見通しを推計した「後年度影響試算」の内容を見ても、新規国債の発行額は50兆円規模で続く可能性が高い。国内投資家もこのあたりのリスクをかなり意識し始めているはずである。特に国内資金であとどの程度賄えるのかといったところを。

 また、財政悪化に関しては米国も同様であり、ここにきて米国債券市場の影響を受けやすくなっている日本の債券市場が、日米の財政悪化を材料視して動く可能性もありうる。そうなれば投資家のみならず業者もある程度、保有国債の価格変動リスクを減らすような動きをしてくることも考えられる。今後の債券市場の動きには十分な注意も必要になろう。


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by nihonkokusai | 2011-01-27 18:39 | Comments(0)

50兆円規模の新規国債発行は続けられるのか

 26日付の日経新聞によると、2011年度予算案を基に2014年度までの歳出と歳入の見通しを推計した「後年度影響試算」の内容が明らかとなった。財務省のサイトにはまだ内容がアップされていないため、この日経の記事を元に内容を確認してみたい。

 名目成長率を1%台半ばを前提にすると、社会保障、地方交付税、公共事業などの政策的経費は2011年度が70.9兆円、2012年度72.0兆円、2013年度72.8兆円、2014年度73.8兆円となる。

 歳出には国債費(国債の償還費と利払い費)もあるが、仮に長期金利が2%に抑えられていたとしても国債発行残高が膨らみ続ける関係で、国債費は2011年度が21.5兆円、2012年度22.9兆円、2013年度25.1兆円、2014年度27.1兆円に増加し続ける試算となる。仮に長期金利が現在の欧米先進国並の3%程度に上昇すると、2014年度の国債費は4.2兆円増加の31.3兆円に膨らむ。

 つまり歳出合計では、2011年度92.4兆円、2012年度94.9兆円、2013年度97.9兆円、そして2014年度は100.9兆円と100兆円を越す試算となっている。

 歳入における税収は2011年度40.9兆円、2012年度41.5兆円、2013年度42.3兆円、2014年度43.1兆円との試算であるが、名目成長率が想定から1%上回った場合には2014年度の税収は1.4兆円のプラス、2%上回った場合には2.9兆円のプラスとなる。これは想定を2%上回ったとしても、試算上は3兆円程度しか増加しないということでもある。

 歳入にはその他税収もあり、これは日経新聞の表には掲載されていないが、逆算すると2011年度7.2兆円、2012年度3.9兆円、2013年度3.8兆円、2014年度3.6兆円となる。埋蔵金もかなり掘り尽くされており、税外収入に多くは望めない。

 上記の前提による新規国債の発行額予想は、2011年度44.3兆円、2.12年度49.5兆円、2013年度51.8兆円、2014年度54.2兆円となり50兆円規模の新規国債発行額が続く予想となっている。また、もし政策的な経費を政府方針通りに70.9兆円以下に抑えても、2012年度の国債発行は48.4兆円、2013年度49.8兆円となる。

 つまり多少景気が回復したとしても、それによる税収増の伸びは数兆円規模であり、それは景気回復とともに、もし長期金利が1%程度上昇してしまえば、あっさりと相殺されてしまう数字である。

 思い切った歳出削減や消費税増税なども必要であることは明らかながら、それによっても国債発行額を大きく減額するのが厳しい状況であることに変わりはない。毎年度50兆円規模の新規国債が果たしてどの程度継続は可能なのか。

 たとえば銀行などの貸出や、生保や年金など保有する株式や外債投資など国債以外に振り向けられた運用資金は確かに存在する。それを国債に振り向けることも可能性としてはある。

 しかし現実問題としてはそれらには無理がある。そもそも銀行の貸出を引き上げてしまうと日本の経済そのものが成り立たなくなる。もちろん保有する株式の売却も株価の下落を招きかねない。また、日本からの外債投資、その多くは米国債と見られるが、それを引き上げることは米国がかなり危惧することも確かである。1998年末の運用部ショックと呼ばれた日本国債の急落の際の米国からの圧力などを見てもそれは明らかである。

 国の資産売却という可能性もあるが、それにより毎年度数十兆の資金を得ることは無理があるとともに、埋蔵金と同様に一度売却してしまうとそれっきりである。

 いずれにせよ国内資金で毎年50兆円もの新規国債を買い入れるにはさすがに限度があり、その限度に接近しつつあることも確かであろう。もちろん新規国債の50兆円程度がすべてが民間資金でカバーされるのではなく、国債の償還金や日銀による国債買入等も加味して考えなくてはいけない、それでも国債の安定消化をこの先何年間も継続させることはやはり難しいものとなるのではなかろうか。政府がかなり思い切った財政再建に向けた努力を行わなければ、国内資金で国債が賄えなくなる日がやってくるであろうことは確かである。


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by nihonkokusai | 2011-01-27 08:48 | 国債 | Comments(0)

FRBの国債買入に対する歴史の教訓

 米国では1930年代の大不況下に米連邦準備理事会(FRB)は大幅な金融緩和に踏み切った。これを受けて、TBの金利は1938年からの3年間にわたってゼロ%近辺で推移した。この1930年代の不況対策に加え、1941年に第二次世界大戦に参戦したことで、米国の国債発行額は大きく膨らんだ。1945年の国債残高はGNPの1.2倍に達したのである。

 そして米政府は連銀を通じて国債を買い支える価格支持策(ペッギング・オペレーション)を採ってきた。この結果、1946年に連銀は市場性国債残高の11.5%を保有していたのである。

 また、カネ余りにより米銀の余剰資金も膨れ上がり、この余剰資金を振り向けたのは国債であった。結果としてFRBは長期金利の跳ね上がりを防ぐことができ、大不況と戦争という危機を乗り切ったこととなる。

 第二次大戦後、今度はインフレ懸念の台頭により、FRBは国債価格を維持する政策の副作用に直面することになった。インフレリスクを防ぐために、1951年に財務省とFRBは「アコード」を取り交わし、国債価格維持を撤廃したのである。これによりFRBの判断で金融政策が行えるようになり、中央銀行による金融調節が重要性を増すこととなった。財務省は金融政策に依存することなく、債券市場に向き合っての国債管理政策を採用することになった。

 上記のコメントは私が2005年8月にブログに書いたものである。この米国の状況と2005年当時の日本の状況が似ていたためである。その後、リーマン・ショックなどによる世界的な金融危機を迎え、それに対処するためFRBは国債購入を増加させた。これによりFRBによる国債保有比率は当時の水準を大きく上回ることとなった。

 当時の状況に似た環境は日本だけでなく、結局、米国も同じ道を辿ることとなった。それならば、その後の結果も同様なものとなるのであろうか。日本はさておき、米国では確かにインフレ懸念も強まりつあり、それにより長短金利差が拡大してきた。景気についても予想されていた以上に回復基調を強めている。

 一方で米国も日本同様のデフレに落ち込むとの見方も強いが、それもあくまでひとつの可能性に過ぎない。日本のデフレは経済状況ばかりでなく社会構造を含めてその要因があるとみられ、それをそのまま米国の状況に当てはめることもできないはずである。

 このため、今後の米国の経済状況次第では、インフレリスクが出てこないとも限らない。さすがに出口を探る動きは早過ぎるかもしれないが、FRBが日本の状況ではなく過去の自国の状況を振り返り、6月末以降の国債買入に関して議論を深めてくる可能性もありそうである。


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by nihonkokusai | 2011-01-26 08:34 | 国債 | Comments(0)

日銀は金融政策、そして景気判断もほぼ据え置き

 本日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策は全員一致で現状維持が決められた。景気については「緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる」との前回(12月21日)の表現を据え置いた。前回21日の表明文に比較し、個人消費に関して今回は「住宅投資は持ち直しに転じつつある」との表現が加わった。また、輸出に関しては前回の「横ばい圏内で推移している」から今回は「やや弱含みとなっている」に修正された。物価面に関する記述などはそのまま。

 先行きについては前回の「わが国経済は、景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続いた後、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、緩やかな回復経路に復していくとみられる。」から、今回は「わが国経済は、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で再び高まっていくと考えられることなどから、景気改善テンポの鈍化した状況から徐々に脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。」と微妙な修正が加えられた。若干の上方修正かとの印象。

 リスク要因に関しては前回の「米欧経済の先行きを巡って、なお不確実性の強い状況が続くもとで、景気の下振れリスクにも注意が必要である。」との部分が今回は「米国経済に対する懸念は一頃に比べて後退しているものの、米欧経済の先行きや国際金融市場の動向を巡る不確実性がある」に変化している。物価面については変更はない。

 足元景気については、日銀の門間調査統計局長が日本経済について「輸出は1~3月期に明るい方向に進む。冬のボーナスの増加や株価の回復があり、消費も悲観的に見る必要はない。日本経済は今年前半に踊り場から緩やかな回復局面に移行する」と発言していた。

 また、政府も1月の月例経済報告における景気の基調判断について、「足踏み状態にあるが、一部に持ち直しに向けた動きがみられる」とし、12月の「このところ足踏み状態にある」から上方修正していた。このため今回はやや上方修正させるかとみていたが、思いのほか日銀の景気判断については慎重となっていたようである。

 展望レポートについては、2010年度の成長率が過去の実績値の改訂の影響もあって上振れし、物価については2011年度が国際商品市況高の影響などから、やや上振れるとしている。


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by nihonkokusai | 2011-01-25 13:24 | 日銀 | Comments(0)

こう着感を強める日米の債券市場

 日米の債券市場は昨年の11月上旬あたりから12月の中旬にかけて下落基調となっていたが、12月中旬以降は比較的狭いレンジ内での方向感に乏しい展開が続いている。

 11月からの日米の債券相場の下落は、それぞれ包括緩和とQE2という日米の中央銀行による追加緩和策が決定されたことで、それに対しての期待感により買い進まれた反動による下落という面が強かった。特に米国ではQE2による副作用としての将来へのインフレ懸念なども材料視されたことで、特に長い期間の国債への売り圧力が強まった。

 さらに米国での景気回復への期待も出てきたことも債券相場の下落要因となった。米国で発表される経済指標についても、景気回復を示すものも多くなり、市場もそれを好感し米国株式市場はじり高傾向となっている。

 ただし、このような日米の債券市場の下落も12月中旬あたりでブレーキがかかった。米10年債利回りでは12月16日につけた3.56%、そして日本の10年債利回りでは12月15日と16日につけた1.295%が直近で最も高い利回りとなり、その後は米10年債で3.3%、日本の10年債で1.2%を挟んでのレンジ内相場が続いている。

 それぞれの動きがたまたま一致しているというのではなく、日本の債券市場が米国の債券市場による影響を受けやすく、その結果似たような動きとなっているとも言える。

 それではこの日米の債券相場がこのレンジ相場を抜け出すとするならば、何が要因となるのか。これまでの動きを見る限り、今のところはFRBそして日銀の動向が焦点となりそうである。特にFRBが今年6月末までの6000億ドル相当の国債買入をストップさせるのか。それともその後も継続するのか。そのあたりの動向が注目点となる。

 その意味では今週開催されるFOMCの動向も注意が必要となる。今回はQE2の変更等はないと予想されるが、6月に向けてFRBがどのような姿勢なのか、声明文などの内容を確認する必要がある。また、今回から投票権を持つフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁とダラス連銀のフィッシャー総裁などの反対票の行方も注目されよう。

 日銀は引き続きこのFOMCの動向をかなり注視しているとみられるが、FOMCに動きがない限りは政策変更の可能性は薄く、今回も現状維持となろう。日銀も景気については踊り場から緩やかな回復局面に移行することを確認してくる可能性がある。ただし、展望レポートの中間レビューを含めて、景気認識の変化による債券相場への影響は限定的とみられる。

 それでは債券相場に影響を及ぼす可能性のあるFRBと日銀の政策変更はどのタイミングで、どちらの方向に向けて行われるのか。いまのところはその大きなキーとなるとみられる為替動向が比較的落ち着いていることで、早期の変更の可能性は薄い。また、欧州でのソブリンリスクも気になるところだが、一時に比べると危機感は後退してきている。もちろん油断は禁物ではあるが。

 あらたな材料が飛び出さない限りは、FRBも日銀もあえて今後の金融政策の方向性を示さず、景気や物価動向もさらに為替動向を見ながら次の一手を探って行くものと思われる。そうなればFRBはあえて相場にインパクトを与えることを避けるためにも、6月以降も国債の買入を継続してくる可能性が強いと予想される。もちろん市場に影響がないとみればFRBは国債買入を休止してくることもありうるが、米国債券市場はFRBの買入により下支えられている側面もあり、やめるにやめられないという日銀の国債買入と同様の事態に陥ってきている可能性もあろう。

 このような状況下にあり、当面の間、日米の債券相場はレンジ内での動きが続くことが予想される。しかし、相場である以上、新たな材料が出てきて相場の動きが急激に変わることも十分にありうるため、相場の動向に注意しておく必要もある。


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by nihonkokusai | 2011-01-25 08:44 | 債券市場 | Comments(0)

12月の債券市場における投資家の動き

 20日に証券業協会が発表した12月の公社債投資家別売買高(短期証券除く)によると、都市銀行が差引で2兆1848億円の買い越しとなった。同時に発表された12月の国債投資家別売買を見ると、都市銀行は中期債を2兆9491億円買い越しており、長期債と超長期債はそれぞれ売り越しとなっていることで、中期債主体の買いであったことが伺える。ただし、短期国債については2兆1234億円の売り越しとなっていた。

 また、12月の公社債投資家別売買高(短期証券除く)では、信託銀行と農林系金融機関がそれぞれ7352億円、8308億円の買い越しとなっていたが、こちらは国債投資家別売買でみると、それぞれ超長期債を5601億円、4037億円買い越しており、超長期債主体に買いを入れたものと思われる。農林系金融機関は長期債も2915億円買い越しとなっていた。

 生損保については公社債投資家別売買高(短期証券除く)では1兆920億円の買い越しとなり、こちらは国債では超長期債を1兆871億円買い越していた。

 海外投資家は差引で1771億円の売り越しとなっていたが、国債をみると長期債を7251億円売り越して中期債を4714億円買い越していた。

 12月の債券相場は中旬に向けて大きく売られ、10年債利回りは12月15日に1.295%をつけたが、その後買い戻されている。都市銀行や海外投資家は相場下落時において、保有する債券の期間を短期化したことが伺える。また、生保や年金、農林系金融機関は超長期債などを主体に押し目買いスタンスで望んだものとみられる。

 12月のそれぞれの投資家の動きは、それぞれの投資家が教科書通りのスタンスで臨んだことが伺える。本来、都市銀行は中期ゾーン主体の大口買い手であり、生保や年金などは超長期債を主体に購入している。もちろん入れ替え等もあり、月毎にスタンスは変わるものの、12月についてはそれぞれの投資家の典型的な動きを見せていたことになる。

 それでは20日に実施された20年国債の入札についても、こういった投資家の動向が反映されていたものであったのであろうか。市場推定による落札状況によると、8500億円程度が不明玉となっていた。外資系証券会社が大量落札したとの観測もあるが、その背景には大手投資家がいた可能性が高い。このあたり来月発表される1月の公社債投資家別売買高である程度明らかになると思われる。


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by nihonkokusai | 2011-01-22 10:17 | 債券市場 | Comments(0)

意外に先行き景気に強気な日銀

 昨日、日経など主催の景気討論会において、日本銀行の門間一夫調査統計局長は、日本経済について「輸出は1~3月期に明るい方向に進む。冬のボーナスの増加や株価の回復があり、消費も悲観的に見る必要はない。日本経済は今年前半に踊り場から緩やかな回復局面に移行する」と発言した(20日付日経新聞朝刊より)。

 門間一夫調査統計局長の講演をこれまで何度か拝聴させていただいたことがあるが、歯切れよく適格に日本経済の動向を各種データに基づいてお話されていた。また、たいへん気さくな方との印象を持っている。もちろん立場上、日本で最も注目される現場のエコノミストである。

 その門間調統局長の今回のコメントは、意外に景気の先行きについて強気の姿勢であることを示していた。これにはデータの裏付けもあってのものと思われる。このため、来週24~25日に開催される日銀の金融政策決定会合では、日本の景気が踊り場から緩やかな回復局面に移行することを確認してくる可能性がある。

 日銀の白川総裁も17日の支店長会議の挨拶において、足元景気については「わが国の景気は、緩やかに回復しつつあるものの、改善の動きに一服感がみられる」としていたものの、先行きについては「景気改善テンポの鈍化した状況がしばらく続いた後、世界経済の成長率が、新興国・資源国に牽引される形で高まっていくもとで、緩やかな回復経路に復していくとみられる」としていた。

 ただし、この日銀総裁の先行き回復の見通しは、かなり先の話ではないかとの印象を個人的に持っていたのだが、門間調統局長は「今年前半」にも回復するシナリオを描いていたようである。

 日本景気の先行きについては欧州諸国での債務問題や、ここにきての新興国を中心としたインフレ懸念など不透明要素も多いものの、あまり悲観的に見る必要はないのかもしれない。株価の堅調さなどもそれを示しているとみられる。

 24~25日に開催される日銀の金融政策決定会合では、10月の展望リポートについての中間レビューが行われるが、その際に今年度のGDPや来年度のGDP予測をどのように修正してくるのかにも注目したい。


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by nihonkokusai | 2011-01-21 08:25 | 日銀 | Comments(0)
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