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「ブラード総裁による時間軸効果への見解」

米セントルイス地区連銀のブラード総裁(James Bullard)は、リサーチペーパーのなかで「米連邦公開市場委員会(FOMC)の(声明にある)長期間との文言は、米経済が日本のような結果(デフレ)に陥る確率を高めている可能性がある」とした。さらに「米国の量的緩和政策は、そのような結果を回避するうえで最善の措置」と指摘した。つまり、一段の米債買い入れを検討すべき、との見方を示した。

ブラード総裁は、FRBによる低金利を長期間維持する確約によって、企業や消費者のデフレ期待が若干高まる可能性があるが、長期間との文言の本来の狙いは「成長と生産を促進させ、それに伴いインフレを上昇させていくこと」と述べた。

ブラード総裁総裁は、米景気が緩やかに回復し、追加金融緩和の必要はないというのが最も起こり得るシナリオと引き続き考えている、としたが、FRBは予想外の衝撃が現実のものとなる事態に備え、追加措置の用意はすべき、と述べた(以上、ロイターより、http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-16508120100729)。

ブラード総裁は、欧州の債務危機を受けたFRBの政策対応に関する市場の見方を取り上げ、「長期間」という言葉のおかげで、金利の正常化はさらに遠のいたと受け止められ予想に反する効果をもたらしていると論じた。さらに、こうした時にインフレ期待を高める適当な手段として、量的緩和の拡大、すなわち長期国債の買い上げを指摘。量的緩和策は米英のほか日本でも採用されたが、日本では長期的な信頼感が生まれず失敗に終わったと述べた(ブルームバーグ)。

日本がデフレに陥った際の量的緩和政策について日銀の検証がある。日銀は「量的緩和政策から抽出された最も大きな緩和効果は、将来にわたる予想短期金利の経路に働きかけるチャネルを通じたものであった。」とし、「量的緩和政策が総じて緩和的な金融環境を作り出し、企業の回復をサポートしたとの見方が多い。」としている。(「量的緩和政策の効果:実証研究のサーベイ」より、http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06j14.htm)

そして、将来にわたってゼロ金利が継続されるという予想が金融市場の長めの金利や他の金融資産の利回りに影響を及ぼすことによって効果を生み出すメカニズムについて、実証分析結果から、短中期を中心にイールド・カーブを押し下げる効果(時間軸効果)は、明確に確認されたとしている。

量的緩和政策においては、日銀はその時間軸効果らよる影響が大きいとしているが、ブラード総裁は時間軸効果が恒常的な低水準の名目金利を促すことで、逆効果を生む可能性があるとの指摘である。

たしかに長期に渡りデフレが続く可能性を意識させれば、それはインフレ期待どころかデフレの長期化を意識させる可能性はある。これは中央銀行による金融政策の「アナウンスメント効果」によりどのような影響を及ぼすのかという大きな問題提議にも繋がる。アナウンスメント効果よりも、米国債の購入による直接的な量的緩和により、インフレ効果を高めるというのは、実践的ではある。

FOMCでの投票権のあるブラード総裁から、時間軸効果は諸刃の剣であったとの提言が出されたことは、日銀の量的緩和政策の効果をあらためて検証してみる必要もあるかもしれない。時間軸効果は果たして、インフレ期待を強めたのか、それともむしろデフレ期待を強めていたのか。
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by nihonkokusai | 2010-07-30 12:15 | 日銀 | Comments(0)

「長期金利はなぜ低位安定しているのか(その1)」

7月23日に発表された「平成22年度経済財政報告(経済白書)」より、日本の長期金利の低位安定の理由を探ってみたい。

白書では、日本の政府債務残高はG20諸国中、突出して大きく、債務残高は毎年の財政赤字の累積であり、過去からの赤字が積み上がって現在の債務残高ストック財政赤字の拡大は、債券市場における需給悪化を通じ、長期金利の上昇要因となり得ると指摘している。  

さらに日本は債務残高が大きいだけでなく、返済能力も現時点では小さい点も指摘している。現在の歳入構造のままでは、こうした膨大な債務残高を返済する能力は乏しいといわざるを得ない。

マーケットが財政赤字のファイナンスに対して疑念を持つようになれば、それは財政リスクプレミアムとしてさらに長期金利を引き上げる要因になる。さらに財政収支の悪化が長期金利の上昇につながると、今度は長期金利の上昇が利払費の増加等を通じて、財政状況をさらに悪化させることにより、負の連鎖が生じることが財政悪化のリスクといえる。

ところが、日本は債務残高の規模が突出する一方、利払負担比率(歳入比)はG20諸国中カナダと並び、最も低く抑えられている。なぜ日本は財政状況が他国に比べて突出して悪 いにもかかわらず、長期金利の低位安定が継続しているのだろか。

その要因としては短期金利の低さとともに、経済成長率と物価上昇率が低いことが挙げられる。特にこの傾向は、90 年代と2000 年代において顕著に見られている。これはつまり、90年代のバブル崩壊による資産価格の下落を背景としたデフレが大きく影響したものとみられる。

短期金利の低さが、景気の弱さや物価上昇率の低さを反映した日銀の金融政策によるものであるとすれば、日本の長期金利の低さは景気の弱さと物価上昇率の低さでその多くが説明できるとしている。つまりはデフレが長期金利の大きな押し下げ要因となっていることを示している。

白書では80年代後半から90年代初めのバブルの生成と崩壊、そして、その後の調整の遅れが、日本の基調的な物価上昇率の低さに影響していると指摘している。さらに輸出寄与度の高さなどがさらに物価上昇率を抑えこむ要因となっているとの指摘もあることで、日本におけるデフレからの脱却は容易ではない。

先進各国では80年代から2000年代にかけて概ね長期金利の水準が低下しているが、その要因は異なっている。短期金利の低下は共通しているものの、経済成長率と物価上昇率の低下が主たる抑制要因になっているのは日本だけという指摘である。それだけ日本のデフレが深刻化し、資金が国債に向かいやすい構図となっていたものと思われる。

ただし、その一方で、近年の財政赤字の拡大が、他国に比して大きな長期金利の押上げ要因になっていることには注意する必要があるとの指摘もあった。これについては、個人的にはやや違和感がある。長期金利は2010年7月に入り、2003年8月以来の水準にまで低下しているのである。参院選による民主党の敗北もあり、今後の財政健全化についてはあまり進展がみられない中での、長期金利の低下である。ただし、2003年6月のように長期金利が1%を大きく下回るようなこともないのも確かである。日本の財政赤字拡大は長期金利の押上要因というよりも、下方硬直性の要因にはなっている可能性がある。
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by nihonkokusai | 2010-07-29 11:48 | 債券市場 | Comments(0)

「デフレからの脱却」

日銀の亀崎審議委員は講演で、現在、日本はデフレの状態にあるとし、その特有の問題点として、支出性向の高い債務者が、負債の実質価値の上昇により支出を抑制するため、景気悪化に繋がりやすい点と、名目金利がゼロ以下にならないという制約により、実質金利が経済の活動水準に見合う水準まで下がらなくなるという面があるとしている。

物価上昇率が低下傾向にあるのは世界の先進主要国・地域において共通の現象ながら、食料・エネルギーを除くベースでみてマイナスが続いているのは、日本だけであり、その主要な理由としては、需給ギャップのマイナス幅の大きさを指摘している。

バブル崩壊後の需給ギャップの大幅なマイナスが、デフレの要因との指摘は、白川総裁も何度となく発言しており、また、今年度の経済白書でも言及がある。

各経済主体のバランスシート調整が長引いて前向きの支出が出にくかったこと、特に金融機関の不良債権処理の遅れが金融仲介機能を弱め、新たな成長分野への資金供給が十分に 行われなかったことが国内需要の停滞に影響したと、亀崎委員は指摘した。

その後も、それまでの長期に亘る国内需要の停滞が、この間に起こった日本社会の人口減少への転換とも相俟って、各経済主体の先行きの成長期待を押し下げたため、前向 きの支出は戻らないまま推移した。リーマン・ショックは、そうした状況に追い討ちをかけるように需要を大きく落ち込ませ現在に至る。

その一方、需要が停滞する中でも過剰な供給力があまり調整されなかったのは、様々な規制や保護政策などにより、需要の変化に合わなくなった様々な生産要素が残存したことにも、その一因があるとしている。

それではこのデフレからの脱却には何か必要なのか。亀崎委員は、需給ギャップを縮小させためには、需要を拡大しなければならず、安全・安心が求められる食料関連分野や、環境関連分野、少子高齢化に関連する分野など、様々な分野に潜在需要が眠っているとしている。

これはつまり、政府の「新成長戦略」を意識した発言と思われるが、潜在的な需要がわかっているならば、何も政府や日銀が動かずとも、すでにその掘り起こしに向けて営利企業たる民間が先に動いているはずである。政府や日銀は自ら掘り起こすのではなく、あらたに需要が創出される環境を整えることが先決ではなかろうか。

日銀は「成長基盤強化を支援するための資金供給」を行っている。これは民間経済主体が新たな需要の掘り起こしや生産性の向上を図っていく際に必要となる融資や投資について、金融機関が自主的に取り組んでいくことを支援するための施策と亀崎委員は発言した。

これは新規需要の掘り起こしにはフォローとなろうが、それが本当にデフレ解消に繋がるほどの効果をもたらすと言えるのであろうか。

亀崎委員は、日銀はプロアクティブに適切な政策を実施していかなければならないと発言したが、確かにリーマン・ショック後の経済ショックなどに対しては、積極的な政策を先んじて取ることで、市場に安心感を与えることは重要である。

しかし、現在の日本のデフレのように長期に渡り、経済を蝕んできたようなものに対しては、金融政策などでは限界があることも確かである。少子高齢化の問題ひとつとっても、これが金融政策で簡単に解決できるものではない。雇用の問題もしかり。

デフレの解消には、政府が少しでも将来の不安を取り除き、少しでも明るい展望を抱かせることも重要である。特に財政については決して健全な状態とは言えないだけに、財政の健全化に向けての強い姿勢を示す必要がある。その上で日本経済の活性化に向けて、規制緩和や必要な構造改革に手を打つ必要がある。それには何も金をかければ良いというものではない。民間の知恵が活かされ、新たな需要の掘り起こしの障害となるものを取り除くだけでも、効果はあるのではなかろうか。
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by nihonkokusai | 2010-07-28 18:46 | 日銀 | Comments(0)

「予算総枠の71兆円は努力目標なのか」

政府は26日に、予算編成に関する閣僚委員会を開き、2011年度予算の概算要求基準の原案をまとめた。成長戦略やマニフェスト(政権公約)関連の新規政策に重点配分する「特別枠」について「1兆円を相当程度超える額」で決着し、民主党が要望した2兆円規模から圧縮。また、各省庁の要求額は原則1割削減とする方針も決めた(ロイター)。

概算要求基準の原案のポイントは、予算総枠を71兆円にしたことと、社会保障費を除いて各省庁の予算を1律10%削減としたこと、1兆円超の特別枠を設け、その配分はコンテストで行うこと、などである。

この1兆円超の特別枠(元気な日本復活特別枠)とは、新たな政策効果の高い政策に重点配分をするためであり、配分については、外部の意見等も踏まえ、政策の優先順位付けを行なう政策コンテストを国民に開かれた形の公開手法で実施する。最終的には総理大臣の判断によって、この予算の配分を決めるとしている。

ここで注意すべきは、政府は自主的な削減上積みを促すために、1割を超えて削減を上積みした閣僚に対しては、削減上積みの3倍まで「特別枠」予算を追加要望することを認めるとの点である(24日付日経新聞)。

追加要望がどれだけ認められるかによるが、これでは実質的な削減にはなりえない。それ以前に、一律10%カットそのものに閣内からすでに異論が出るなど、削減自体の実行力にも疑問が生じる。

そもそも71兆円の枠内で、新規国債発行の発行額を44.3兆円に留めるとなれば、2兆円の特別枠そのものの財源をねん出することも困難となる。社会保障関係費と地方交付税交付金を除く基礎的財政収支対象経費は25兆円弱であり、その10%を仮に削減できたとして、2兆円を超える財源が生まれるが、社会保障関係費の自然増1.3兆円を除くと残りは1兆円程度にしかならない。

以上の点から見る限り、歳出削減そのものの現実性に疑問が残る。具体的な歳出削減についての議論はこれから本格化するとみられるが、予算総枠の71兆円という数字が、あくまで努力目標に過ぎなくなる可能性も現時点では強い。それはすなわち2011年度の新規国債の増額圧力に繋がりかねない。
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by nihonkokusai | 2010-07-27 12:50 | 国債 | Comments(0)

「長期金利の2%という防波堤が決壊したら」

ここ10年以上も長期金利の2%が防波堤のような役割存在となっています。しかし、それが決壊し、長期金利が「悪い金利上昇」により2%を超えて大きく跳ね上がったとき時には、真の意味での国債需給への危機が訪れたというシグナルになります。つまり、これは国債への信認が失われはじめたつつあるということになるのです。

もしも、堤防が決壊し国債への信認が失われたされたとき時には、その経済に与える影響はギリシャ国債の比ではありません。日本の財政悪化の顕在化が抑えられていたのは、これまでの超低金利に支えられていた側面があり、その前提が崩れることで状況は一変します。

まず、日本国債がそのほとんどを国内資金で賄っていることが裏目に出る可能性があります。つまり日本の長期金利が2%を大きく超えてくるということは、国債価格の急落を意味します。国債を保有している銀行や、生損保、年金などが大きな含み損を抱えることとなります。

国債の信認失墜は、当然、日本の通貨である同様の信用力となっている円の価値も失墜させるでしょう。急激な円売りとともに、こちらは海外投資家の保有のも大きい日本株も、当然ながら暴落することが予想されます。

また、長期金利の上昇により、国債の利払い負担が増加することになり、これがさらなる財政悪化要因になります。

ある程度の長期金利の上昇により、米国債やドイツ連邦債などと比較して利回りの上から遜色がなくなれば、海外投資家からの日本国債への買いが入る可能性があります。しかし、格付け会社による日本国債のジャンク級にまで大幅に格下げするなど日本国債への信認は失墜も予想されることで、海外投資家による買い支えもあまり期待できません。

日本国債の消化が困難になるとなれば、これまでの海外の事例からみてIMFの管理下に置おかれる可能性が高いとみられます。しかし、あまりの巨額の債務残高のためで、IMFでも対応しきれなくなるという前代未聞の事例になる可能性もあります。

最後の手段として日銀による日本国債の直接引き受けが実施されることが想定されます。しかし、これはあくまで禁じ手です。一時的にはデフレが解消されるなどの効果もあるでしょうが、財政規律そのものが無視されるかたちとなり、それによるハイパーインフレをいずれ引き起こす可能性が高くなります。そして、戦後のように日本経済そのものがリセットされて初めて、日本の財政問題が解決するとなれば、その負担は国民自身にのしかかって来ることは必然なのです。

このような最悪の事態を発生させる前に、日本国債の信認を継続させ維持し、今後も国債の消化が順調に行われるようにしなければなりません。そのためには、政府は財政規律を守る姿勢を強化し、打ち立てた財政再建に向けた目標を達成させるするための努力が必要となります。
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by nihonkokusai | 2010-07-26 18:11 | 国債 | Comments(4)

「続、注目の2011年度の国債発行額」

民主党は22日に、平成23年度予算案の概算要求基準に関する提言をまとめ、玄葉光一郎政調会長が菅直人首相に提出した。この民主党提言案には、歳出の大枠は71兆円とするものの、経済成長につながる分野に重点配分する2兆円規模の「特別枠」新設を盛り込んだ。

提言はこの2兆円の使途について、デフレ脱却や雇用拡大などにつながる分野に配分し、その配分方法は各省が出してきた政策を「公開コンテスト」にかけ、首相が最終決定するとのこと(産経新聞)。この考え方については、至極ごもっともで国の予算はできるだけデフレ解消などのために有効活用してもらいたい。ただし、それはあくまで財政に余裕があればという前提である。

提言では社会保障費の自然増分約1.3兆円の要求も認め、地方交付税については22年度予算と同水準の17.5兆円を確保すると明記した。つまり、総枠は71兆円に抑えるとしながら、社会保障費の自然増分約1.3兆円に加え、さらに2兆円の特別枠が今年度に比べて増加する。結局、3.3兆円の増加分は、2010年度で23兆円規模となっている政策的経費から絞り込む必要がある。

特別枠予算の財源を捻出するにあたっては、社会保障費などを除いた政策的経費を原則一律1割程度削減するよう指示する方針のようだが、各省庁からの反対意見も出てくると予想され、これは容易ではない。しかし、政策的経費を絞り込まない限りは、歳出の大枠を71兆円以下にすることは困難である。

提言では、国債発行額は10年度の発行額を上回らないよう全力をあげるとしてはいるが、そもそも国債費を除く一般会計の歳出総額の抑制すら難しい状況になっており、税収外収入での埋蔵金頼りの姿勢は現実には難しくなりつつあり、どこまで国債発行額抑制に「全力をあげる」ことができるのかたいへん疑問である。

消費税の引き上げがすでにトーンダウンしている現政権であるが、財政再建の掛け声も次第にトーンダウンしてくる可能性がある。ここにきて、さらにダウンしてきている長期金利はこの政府の動きを完全に無視続けて良いものであろうか。
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by nihonkokusai | 2010-07-23 16:28 | 国債 | Comments(0)

「政府・市場を意識したバーナンキ発言」

バーナンキ議長は21日の上院銀行委員会での証言で、「経済見通しが依然異例なほど不透明であることも認識している」と発言した。さらに「物価安定を念頭に置きつつ、米国の潜在生産力のフル稼働状態への回復を後押しするため、引き続き必要に応じて一段の措置を講じる用意がある」と述べた。

質疑応答では、追加の緩和策としてどのような措置があるのかとの質問に対して、モーゲージ債償還益の再投資、債券の追加買い入れ、過剰準備に付与する金利の引き下げなどを選択肢として挙げた。さらに経済情勢を踏まえると異例の低金利を「長期間」維持することが正当化されるとの見通しを示した。(ロイター)。

バーナンキ議長のこの発言を受けて、21日の米国債券市場では長い金利主体に低下圧力がかかった。追加緩和の可能性に触れたことに加え、時間軸を意識した発言があったことで、10年債利回りは一時2.86%近辺まで低下し、2年債利回りも過去最低水準の0.556%に低下した。10年債利回りの低下幅が大きかったことにより、2年と10年債利回り格差は一時230bpと2009年9月以来の水準にまで縮小した。

バーナンキ議長はデフレについては、懸念要因になるとは思わないと述べたものの、抑制されたインフレが続くと予想していると述べていた。今回はデフレ圧力を意識しての時間軸効果を意識した発言と言うよりも、雇用の回復の遅れや消費者マインドの低下などが意識された上で、不透明という言葉を使ったものとみられる。

ただし、今回のバーナンキ議長の議会証言では、景気刺激策からの出口戦略に関する部分がその多くを占めていた。出口戦略の選択肢としては、米国債の償還資金を短めの債券に再投資することや、住宅ローン担保証券(MBS)の売却、銀行がFRBに預けた1兆ドルの支払準備に対する金利の引き上げなどを挙げていた。

あくまで軸足は景気回復を念頭に置いているものの、景気の先行きには不透明要素も強いことで、追加緩和の可能性も選択肢に置いておくことを示し、議長による慎重な対応姿勢は市場に一定の安心感を与えようとしたものと思われる。さらに、時間軸を意識した発言で米国債券市場は予想以上の反応を示したものとみられる。

スペース配分をみれば出口戦略を意識しているのは明らかながら、政府やマーケットも配慮しての追加緩和や時間軸を意識した発言とも捉えられる。半身の姿勢にいることで、フレキシブルな対応も可能であることを示したのであろう。それはつまり、突発的なことがない限り、当分の間は金融政策については様子見姿勢を継続するとも捉えられよう。
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by nihonkokusai | 2010-07-22 11:39 | 景気物価動向 | Comments(0)

「6月の公社債投資家別売買高」

日本証券業界が発表した6月の公社債投資家別売買高によると、短期証券を除く売買高で、都市銀行は2兆8546億円もの買い越しとなった。続いて信用金庫の1兆6972億円の買い越し、生損保8814億円の買い越しと続いた。海外投資家も1871億円の買い越しとなった。ただし、信託銀行は3740億円の売り越しに。

このうち国債の投資家別売買高をみると、都市銀行は短期債を2兆62億円の売り越したのに対し、中期債を2兆7031億円、長期債を4346億円買い越しとなっている。この場合の、中期、長期の区別はあくまで発行時のものであり、実際に購入した残存期間とマッチしない可能性はあるものの、短期債から中長期債に資金をシフトしたことは確かである。また、超長期債については1811億円の売り越しとなっていた。メガバンクが超長期も大量に購入かとの観測も一部にあったが実際には、生保が7494億円、信託銀行が2361億円、さらに農林系金融機関が2288億円ほど超長期債を買い越していた。

また、信用金庫は中期債9595億円、長期債2769億円、そして超長期債も1872億円とまんべんなく買い越しとなっていた。地方企業などからの資金需要が乏しくなり、運用資金を国債に振り向けざるを得なくなり、超長期債を含めて買い圧力を強めていることが伺えた。
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by nihonkokusai | 2010-07-21 19:06 | 債券市場 | Comments(0)

「注目の2011年度の国債発行額」

政府は本日の閣議で2011年度予算の概算要求基準(シーリング)の骨子をまとめる。国債費を除く一般会計の歳出総額は今年度並みの71兆円とし、その範囲内で歳出を組み替える方針を示す方向と伝えられている。

民主党政権は首相直属の国家戦略室を設置し、ここで予算の基本方針「財政運営戦略」などを策定してきた。しかし、国家戦略室の機能強化を目指した法案が参院選の民主党敗北により成立が困難になり、実質的に国家戦略室の機能が縮小される。

2011年度予算の概算要求基準策定には、国家戦略室の代わりに仙谷由人官房長官や玄葉光一郎民主党政調会長の二人を関与させ政治主導の形とするとしているが、実質的には財務省が主導するのではとの見方も強まりつつある。

その2011年度の予算編成における最大の注目点が、菅首相が繰り返し述べていた新規国債の発行額を2010年度(44.3兆円)以下に抑制できるかどうかである。野田佳彦財務相は新規国債発行額を今年度当初の44.3兆円以下に抑制する「精神」は変わらないと述べたそうだが、現実にはかなり厳しい数字であることに変わりはない。

財務省の「後年度影響試算」では、もしマニフェストの新規の実行を凍結しても、社会保障費の自然増(約1兆円)などで、2011年度予算は2010年度比で1.6兆円多い93.9兆円に膨らむ見込みだが、これを政府は今年度並の92兆円規模の想定としているため、かなりの削り込みが必要となる

また、国債発行を除いた税収と税収外収入については2011年度は、税収が38.7兆円、その他収入が3.9兆円と2010年度比5.4兆円減の42.6兆円となるとの試算となっている。特にその他収入については、すでに埋蔵金に頼るには限度があることで、大幅な減額となる見込みである。

ちなみに税収について、財務省が29日発表した2009年度の国の一般会計決算概要によると国税収入は38兆7330億円となり、第2次補正予算での見積もりの36兆8610億円を約1.9兆円上回った。この上振れにより1.5兆円分の国債発行を取りやめることとなり、その分のバッファーはできることとなる。

それでも、2011年度の国債発行額を今年度以下に抑えるのはかなり難しい。参院選での民主党の敗北により、消費税引き上げよりも地方を意識してのバラマキ型の予算となる可能性も出てきている。

いまのところ債券市場では、財政リスク・プレミアムは完全に無視された格好となり、長期金利は1.1%割れともなっている。しかし、2011年度の国債発行額が結局、50兆円規模に膨らむようなこととなり、先行きについても財政再建の動きが頓挫するようなことが予測されるようなことになれば、それはいずれ国債への信用力に影響してくるはずである。
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by nihonkokusai | 2010-07-20 15:50 | 国債 | Comments(0)

「日本の長期金利の低下はいつまで続くのか」

日本の長期金利は7月1日に1.055%に低下した。その後は高値警戒感もあり、利益確定売りが入り1.1%台に乗せたが1.2%には届かずに、再び1.1%を割込む展開となった。

日銀は4月に発表した展望レポートの中間レビューで010年度の実質GDP成長率見通しを4月の+1.8%から+2.6%に引き上げた。政府も6月22日に2010年度の実質GDP成長率見通しをプラス2.6%と昨年末時点から1.2ポイント上方修正しており、政府・日銀ともに足元の景気認識についてはしっかりとの認識である。

また、11日の参院選で、与党は参院の過半数維持に必要な議席数121議席を割り込んだ。これにより政府による財政再建の行方に不透明感が強まった。参院選の結果を見て、日銀への政府からの圧力が増加するとの見方があるものの、日銀がすぐに追加緩和に動くとは思えない。

このように国内要因から見る限り、日本の長期金利に低下圧力が加わることは考えづらい。それにも関わらず長期金利が1%近辺で低位安定しているということは、別の理由が存在していよう。

そのひとつが、米国での景気減速懸念による長期金利の低下である。ここにきての米経済指標には景気の減速を示すものが出てきている。また、FRBが経済見通しをやや下方修正し、さらに米国でのデフレ観測も強まりつつある。このため米10年債利回りは3%を割り込み、2年債利回りは過去最低水準まで低下している。この米国での長期金利低下が日本の長期金利の低下を促す要因のひとつとなった。

また、米景気減速観測により、米株が下落し、円高ドル安が進行したことで、東京株式市場が下落基調となっていることも、日本の長期金利低下圧力となっている。

それとともに、今回の日本の長期金利低下には、銀行などによる長期債や超長期債への買い圧力が大きく影響している。貸出が伸びず余剰資金を抱えた銀行などは、より高い利回りを求めて長期債から超長期債への購入を増加してきている。参院選などのイベントを控えて買い控えていたことも考えられ、予想以上に買い余力があったともみられる。

ただし、過去に2003年6月のように債券相場の急落も経験してきていることで、買いのスタンスも慎重になっている。その分、堅調相場が続く要因ともなっている。

この日本の長期金利低下が、どの程度まで、さらにいつまで継続するのか。いまのところ反転の兆しはない。ただし、米国市場など外部要因に影響をうけている以上は、米長期金利の動向が大きなポイントとなりそうである。
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by nihonkokusai | 2010-07-20 10:07 | 債券市場 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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