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カテゴリ:国際情勢( 132 )

サミットで配られたリーマン・ペーパーの怪

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 安倍首相はG7伊勢志摩サミット議長国会見において「私たちは,今そこにある「リスク」を,客観的に,正しく認識しなければならない。リスクの認識を共有しなければ,共に力を合わせて問題を解決することはできない。」と述べている(外務省のサイトより引用)。

 さらに「世界的に市場が動揺している。それはなぜか?最大のリスクは新興国経済に「陰り」が見え始めていることである。」、「その新興国経済が,この1年ほどで急速に減速している現実がある。」

 「原油をはじめ鉄などの素材、農産品も含めた商品価格が、1年余りで5割以上下落した。これはリーマンショック時の下落幅に匹敵し、資源国をはじめ農業や素材産業に依存している新興国の経済に大きな打撃を与えている。」

 「成長の糧である投資も減少している。昨年、新興国における投資の伸び率は、リーマンショックの時よりも低い水準にまで落ち込んだ。新興国への資金流入がマイナスとなったのもリーマンショック後、初めての出来事である。」

 このように安倍首相は現在の新興国の景気減速と2008年のリーマン・ショックを比較する数値が並ぶ資料を提示した上で、サミットで世界経済の「リスク」を強調した。

 その資料について、毎日新聞は6月1日の記事において、「作成は経済産業省出身の今井尚哉・首相政務秘書官と菅原郁郎・同省事務次官らの「経産省ライン」が主導したとされる。」と指摘している。外務省や財務省はどうやらこの資料については24日あたりまで知らされていなかったようである。

 またこの資料を見たG7首脳の間でも困惑は広がり、キャメロン英首相は「危機とまで言うのはいかがなものか」と反論したとか。

 リーマン・ペーパーで指摘したかったのは、まず2016年に入ってからの世界的な株価の下落や円高の進行があろう。原油価格の下落とその背景にあった中国などの景気減速懸念が、金融市場でリスク回避という動きに現れた。それを安倍首相は「世界的に市場が動揺している」と指摘した。

 確かに今年1月あたりは動揺が走ったものの一過性のものであった。特に原油価格はWTIでみると1月末から2月上旬にかけて一時30ドルを割り込んだが、その後50ドル台に戻している。ここ1年あまりで原油価格だけでなく商品価格が大きく落ち込んでいることは事実であるが、問題は価格の動向よりもその背景にあるものであろう。

 2008年に原油価格が急騰後に急落したのは、中国などの新興国バブルを背景とした原油先物など商品価格に投機的な動きがあったためである。それがリーマンの破綻などで金融危機が表面化し、一気に原油先物市場などで投げ(売り)が入り急落したのである。

 しかし、リーマン・ショックやその後の欧州の信用危機に対応するため、日米欧の中央銀行が積極的な金融緩和策を講じ、その結果、新興国の市場への資金流入は継続し、新興国経済バブルをもう少し延命させることとなった。

 しかし、FRBのテーパリングや利上げなどの正常化の動き見られるように、世界的な危機の後退が意識されるようになり、過剰流動性によって支えられていた新興国バブルがいよいよ崩壊し、それが今年1月の原油価格の下落に繋がったと言える。

 ただしこれは2008年のような世界的な金融危機とはまったく次元が異なるものである。正常化に向けた正常な調整と言っても良い。もし仮に中国バブルの崩壊が世界経済を揺るがすというのであれば、世界経済の中核を占める米国が追加利上げを模索することなどはできないはずである。

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by nihonkokusai | 2016-06-02 10:06 | 国際情勢 | Comments(0)

原油安で何故、株が売られたのか

 1月28日の日経新聞には「原油安、業績下支え」と題する記事が掲載されていた。原油安の恩恵が2015年4~12月期の企業業績にも表れ始めているそうである。また、レギュラーガソリンの店頭価格が1リットル100円を割り込む地域が広がっているとの記事もあった。これは個人にも当然ながら恩恵である。都心ではあまりクルマを利用する機会はないかもしれないが、地方では重要な足となっている。

 原油安は石油関連業者の業績にはマイナスの影響が出ても、日本など原油の輸入に依存している国にとり、企業にとっても個人にとっても恩恵を被ることの方が多いはずである。ところがここにきての市場の動きを見てみると、原油価格の下落が日本を含めて株式市場の下落要因とされている。これはいったい何故なのであろうか。

 これは原油価格下落のそもそもの要因が影響している。昨年12月の人民元の切り下げにみられるように中国の景気が悪化しており、チャイナバブルの崩壊が鮮明になりつつある。昨年7月あたりからの原油先物の下落については当初、米国のシェールガスなどの影響による供給面が強調されていたが、実は新興国経済の悪化などによる需要面での後退による影響も重なっていた。

 少し遡ってみてみると、2002年あたりからの原油価格の大幅な上昇の背景に、中国などBRICsと呼ばれた新興国の経済成長があった。WTIは2002年当初に20ドル前後であったが、2008年7月11日に147.27ドルという史上最高値を記録した。ここまで上昇したのは新興国バブルを意識した動きが入っていた。

 それがリーマン・ショックなどにより、2009年12月19日に32.40ドルまで下落した。ここから再び原油先物は上昇基調となり、2011年には100ドル台を回復した。この原油先物の再上昇の背景にあったのが、リーマン・ショックや欧州の信用不安と称された世界的な金融経済危機に対する日米欧の中央銀行な過剰ともいえる金融緩和にあったとみられる。世界の資金は引き続き新興国などにも流れ、中国などの景気を下支えした。

 しかし、2014年7月あたりから原油価格が下落基調となった。これは原油の供給面による影響とともに、中国の成長などが減速しつつあったことが要因となった。さらにFRBがテーパリングを2014年10月に終了し利上げ、つまりは正常化の動きを模索したことで、資金の流れに変調が生じたことも要因となったのではなかろうか。

 中国など新興国ブームに加え、日米欧の中央銀行の金融緩和による過剰流動性相場により、新興国の通貨や株が買われるなどリスク資産に資金がシフトしていた。そのなかには2012年のアベノミクスの登場による日本株買いと円売りをセットにした動きも生じていた。

 原油価格の下落はこのような資金の流れに変化が生じたことを示している。さらに原油安は産油国経済も直撃することになる。ロシアやブラジルなどの新興国だけでなく、サウジアラビアなど中東の国々の経済や財政にも影響を与えることになり、これはオイルマネーの動きも変化させた可能性もある。

 原油安は中国やサウジアラビアなどの経済への懸念を強めさせることになり、さらに米利上げにより過剰流動性相場の終焉も意識されたことで、リスク回避の動きを強めさせ、それらが欧米の株式市場の売り要因となっていった。

 原油安とセットとなった欧米の株式市場の下落は東京市場を直撃し、アベノミクスをきっかけとした海外投資家などによる円売り株買いのポジションなどもリスク回避の動きで巻き戻されたのではなかろうか。その結果として東京株式市場は調整を余儀なくされたとの見方もできる。

 原油価格の下落はまもなく落ち着くものと予想しているが、新興国経済の悪化による影響は今後も残るとみられ。市場の動揺は当面続くものとみられる。これに対してECBや日銀が金融政策で対応できる部分はあまり大きくはないし手段も限られる。このため追加緩和に対する過剰な期待も禁物ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-01-29 09:37 | 国際情勢 | Comments(0)

世界的な金融市場の混乱の原因と今後

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       日経新聞と米エネルギー省のデータをもとに祝日等を調整して作成

 2016年に入ってから世界の金融市場は急速にリスク回避の動きを強めた。東京株式市場で日経平均は昨年末の19000円台から1月21日に一時16000円近くまで下落した。1月4日の大発会から25日までの15営業日のうち日経平均が前日比プラスとなったのは13日、19日、22日25日の4日だけとなった。

 この間に円高も進んでおり、ドル円は年初の120円台から116円近辺に下落した。外為市場では人民元とともに資源国を中心に新興国の通貨が下落した。新興国通貨のチャートをみると2015年7月あたりを目先のピークにしてダウントレンドを形成していたものが多い。これはWTIの下落がスタートした時期とも重なり、原油価格の下落に影響された面があるとともに、市場を取り巻く資金の流れが変化して原油とともに新興国通貨が下落したとも言える。

 ただし、日経平均やダウ平均のチャートをみるとこれらのダウントレンドは前述のように今年に入ってから形成されている。ドル円については昨年11月から12月にかけて目先の天井が形成され、12月10日あたりからダウントレンドが形成されている。

 チャートをみると原油価格とともに新興国通貨の下落は、昨年7月あたりからスタートしていた。原油価格の下落については供給面の方に焦点があたっていたが、それよりも新興国経済の減速にともなう需要面の後退が影響していたと言えるのではなかろうか。

 もちろんここで忘れていけないのが米国の利上げである。FRBのテーパリングは2014年10月に終了した。その後FRBは時間を掛けて利上げのタイミングを探り、2015年12月に利上げを決定した。ECBや日銀は大量の国債買入を継続してはいるが、FRBの正常化に向けた動きは過剰流動性に依存しすぎていたともいえる世界の金融市場の流れを変化させ、それがリスク回避の動きとなり、新興国の通貨を下落させ、原油価格を下落させたと言える。

 これには中国の景気減速などが顕著となったことも大きく影響し、8月11日の人民元の切り下げ以降、リスク回避の動きに拍車を掛けた。ここに米利上げも重なり、2016年に入っての日米欧の株式指数の急落に繋がったと言える。

 年初からの急速な日米欧の株式指数などの下落は21日あたりでいった止まった格好になった。そのきっかけのひとつが原油先物の反発で、中心限月移行のタイミングで21日に新たに期近となった3月限が30ドル台を回復し、ここからリスク回避の動きの反動が起きた。また、21日にはECB理事会が開催され、ドラギ総裁は会見で次回会合での金融政策の見直しの可能性に言及したことも反動のきっかけとなった。ここに日銀の追加緩和期待も加わって日経平均は21日の16000円近辺から25日に17000円台を回復した。果たしてここで目先の底を打ったと言えるのであろうか。

 たしかに原油先物はWTIが30ドルを割り込んできたことで目先の達成感は出ている。東京株式市場の動きをみても今回の反発はヘッジファンドなどのショートカバーが原動力と思われる。その意味ではひと相場終わった感はある。しかし、テクニカル的な買い戻しであった可能性も高い。25日には原油先物は大きく下落し、WTIは新しい限月で30ドルを割り込んできた。今度は日米欧の中央銀行の金融政策の動向を見て、あらためてトレンドが形成されるのではいかと思われる。

 FRBの年内利上げについては4回は難しいとの見方も出ており、念1回か2回ではないかと予想されている。少なくとも1月のFOMCでの利上げはないと思われる。イエレン議長の議会証言などを確認し、今後のFRBの利上げに対する認識が変化しているのかが注目されよう。利上げに対して慎重な見方となれば、これはリスクオンの動きを強める可能性がある。ただし、注意すべきは日銀とECBである。追加緩和への期待感は強まろうがその手段は限られており、仮に追加緩和を決定したとしてもそれを市場ではネガティブに捉える懸念がある。リスク回避の動きを強めさせることもありうるため注意したい。

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by nihonkokusai | 2016-01-26 09:54 | 国際情勢 | Comments(0)

原油価格下落による日本への影響

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 12日のニューヨーク原油市場でWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)先物は12年ぶりに心理的な節目となっていた1バレル当たり30ドルを割り込んだ。

 WTIの30ドルという水準はあくまでひとつの目安であったが、それはリーマン・ショック後につけた32.40ドルが直近の安値となっていたためと思われる。WTIは2008年7月11日に147.27ドルという史上最高値を記録したあと急落し、2009年12月19日に32.40ドルまで下落していた。

 WTIが2001年あたりの20ドル近辺から2008年7月に140ドル台に上昇した要因は、OPECの生産調整もあったが、中国など新興国の経済成長を背景にした急激な需要増があった。そこに投機的な買いが原油先物に入ったためとみられる。ところが2009年のリーマン・ショックをきっかけに世界的な金融経済危機の発生もあり、WTIは急落し、そのときつけたのが32.40ドルであった。

 2009年12月に32ドル台に下落したWTIは再び上昇トレンドに入る。この背景には中国などの経済成長が続いていた面があった。さらに日米欧の中央銀行による積極的に資金供給もあり、原油先物が買われていた側面もあった。

 しかし、そのWTIの上昇も2011年5月には112.8ドルに上昇したところでピークアウトした。2014年7月ぐらいまでは100ドル台をつける場面もあり、高値圏で推移していた。しかし、2014年7月以降に再び一方的な下落を続け、2015年3月17日に43ドル39セントに下落した。ここからいったん買い戻されて60ドル台を回復したものの、そこから再び下落し30ドル割れとなったのである。

 この原油下落の背景には、米国でのシェールオイル生産拡大で対米輸出が減っていることなどもあり、原油が世界的に供給過剰となっていた側面があった。ここに中国の経済減速が材料視された。中国による実質的な元切り下げなどを受けて、中国経済の悪化による需要の減少が意識されたのである。つまり需要と供給の両面から原油価格は下落圧力が加わった格好となった。

 WTIの30ドル割れは、中国を初めとする新興国の経済成長がピークアウトしたことを象徴するような出来事ともいえる。ここを下回るとチャート上からは20ドルあたりが見えてくる。

 この原油先物がどこまで下がるのかも重要かもしれないが、この低価格がこのまま継続してしまうのかどうかの見極めも重要となる。原油はまもなく枯渇すると騒がれた時期もあったが、それにとって変わるようなシェールオイルも現れた。原油価格の下落はサウジアラビアなどの産油国の経済や財政に大きな影響を与えかねず、中東情勢をさらに不安定化させることも予想させる。ロシアは原油安で8000億円超の歳出削減の方針を明らかにした。

 オイルマネーが金融市場から資金を引きあげてくることも予想され、それが東京株式市場の下落傾向のひとつの要因とも言われている。原油の輸入依存度の高い日本にとって経済そのものには当然ながらプラス要因である。ただし、新興国経済の悪化によるマイナスへの影響も想定される。さらに原油価格の動向は物価にも影響を与えることになり、日銀の物価目標達成を困難にさせかねない。この原油価格の動向は市場にも経済にも、日銀の金融政策にも大きな影響を与えることに対して注意も必要となろう。

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by nihonkokusai | 2016-01-14 09:31 | 国際情勢 | Comments(0)

中国のサーキットブレーカーが株式市場のブレーカーに

 2016年は株式市場や外為市場にとって波乱の幕開けとなった。サウジアラビアとイランとの国交断絶や北朝鮮による水爆実験とされる核実験による地政学的リスクも材料視されたが、それ以上に人民元安や原油安が波乱材料となった。

 中国の人民元の引き下げによる株価の急落は昨年8月にも経験しているが、今回は中国の「サーキットブレーカー」制度の導入が市場を混乱に陥れた格好になってしまった。サーキットブレーカーそのものは日本の債券先物市場などでも導入されているシステムであり、特に目新しいものではない。しかし、現在の中国の株式市場には適さなかったようである。ちなみにサーキットブレーカー制度とは、一定の値幅で動いた際にアイロンが過熱を防ぐために自動的に電源を切るように、売買を一時中断する仕組みである。

 中国のサーキットブレーカー制度は、CSI300指数が5%下落したことでサーキットブレーカーが発動されて、中国のすべての株価指数および株価指数先物は15分間、取引が停止される。再開後に7%下落すると、その日の取引は停止される仕組みとなっている。

 1月4日に早速、サーキットブレーカーが稼働し、再開後に7%下落して当日の取引が停止された。年末にむけての米国株式市場の下落もあったが、12月のFRBの利上げによる世界的な資金の流れに変化が現れ、さらに中国経済の減速傾向も顕著となった。これらを受けて年初から中国株が下落し、サーキットブレーカーが稼働したことでさらに不安感を募らせた。

 1月7日の10時15分に中国人民銀行は、人民元の基準値を1ドル6.5646元と2011年3月以来の元安水準で設定した。通貨安による中国からの資金流出が意識され、通貨安そのものが中国経済の悪化を示すことにもなり、これが不安視された。10時30分にスタートした中国株式市場は売りが先行し、再びサーキットブレーカーが稼働し、再開後に前日比7%まで下落して、取引開始からわずか30分後に当日の取引が停止されてしまったのである。つまり売りたくても売れない状況が形成されてしまったことで、さらに不安感を募らせるという悪循環を招くことになった。

 このため中国証券監督管理委員会(証監会)は7日に、導入したばかりの株式サーキットブレーカー制度をいったん停止することにした。素早い対応といえるが、停止するほかはなかったのではなかろうか。さらに8日に中国人民銀行は人民元の基準値を1ドル6.5636元と切り上げた。

 これらの措置を受け、サーキットブレーカーと人民元の下落による売り圧力はいったん後退し、テクニカル的というか人為的にリスクを後退させた格好となった。しかし、中国の経済そのものがこれで回復するわけではない。

 7日には中国人民銀行が12月末時点の中国の外貨準備高も発表しており、それは3兆3300億ドルと前月末時点と比べて1079億ドル減少した。減少幅は過去最大となった。中国の外貨準備高には水増し疑惑もあるようだが、いずれにしても中国人民銀行が人民元相場を支えるためドルを売却していることは確かであり、それだけ人民元への売り圧力が強まっている。この流れは簡単には止められないものと思われる。

 7日に原油先物市場では、WTI先物が32.10ドルまで下落し、リーマン・ショック後につけた32.40ドルを下回った。大きな節目を割り込んだことで、30ドル割れも見えてきた。サウジアラビアとイランとの国交断絶など、中東における地政学的リスクが強まっているものの、原油先物の買い戻し圧力はそれほど強くはなく、中国など新興国の需要の後退と供給過剰が相まっての原油価格の下落傾向はまだ続く可能性が高い。

 人民元や原油価格の売り圧力の強さは、新興国や資源国の経済成長が、日米欧の中央銀行による過度な金融緩和によって嵩上げされたことで、その分が剥がれ落ちつつあることを示している。それが日米欧の株式市場などにも跳ね返ってしまっている。1月8日に発表された12月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比29.2万人増と予想を大きく上回った。しかし、これによる米国株式市場の上昇は一時的なものとなり、ダウ平均は続落となり167ドル安となった。この背景には中国への不安などがあった。日経平均も年初から5日続落という戦後初の事態となった。このように年初から大荒れの金融市場ではあるが、いまのところリーマン・ショックのような事態を招くようなことは考えづらいと思われる。

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by nihonkokusai | 2016-01-09 10:58 | 国際情勢 | Comments(0)

チャイナショックと中東情勢の混沌の原因

 2016年は年明け早々に金融市場は世界的に波乱含みの展開となった。いくつかの要因が重なったことがその理由ではあるが、その要因の根底にあるものを探ってみたい。

 1月4日の東京株式市場は売りが先行した。これは昨年30日から31日にかけて米国株式市場が下落したことに加え、サウジアラビアとイランとの国交断絶により、地政学的リスクが意識された。

 米国株式市場は12月のFOMCでの利上げを織り込んではいたものの、その影響がここにきてじわりじわりと効いてきた可能性がある。

 さらにサウジアラビアとイランとの国交断絶により、中東情勢が不透明となり、市場心理を悪化させた。スンニ派とシーア派の抗争ではあるが、ここに原油安の影響が絡んできている。原油安によるサウジアラビアの財政悪化に対する国民の不満も強まっていることで、そこにサウジ王家内の攻防も絡んで強硬手段に訴えた可能性がある。

 東京株式市場は寄り付き後、いったん下げ幅を縮小させていた。ところが、発表された中国の12月の製造業PMIが予想を下回ったことをきっかけに、中国の株式市場が急落。これを受けて東京株式市場は再び下げ幅を拡大させて日経平均は600円以上の下落となったのである。

 上海、深セン両証券取引所、および中国金融先物取引所では、主要株価指数が大きく動いた際に取引を停止する「サーキットブレーカー」制度を今年から導入した。それが早速機能した格好となり、まるで初日にテストを行ったような格好となった。

 CSI300指数が5%下落したことでサーキットブレーカーが発動され、中国のすべての株価指数および株価指数先物が15分間取引を停止。再開後に7%下落したため、その日の取引は停止された。

 はじめてのサーキットブレーカー制度の適用により、市場がさらに動揺した面もあるかもしれないが、今回の中国の株式市場の下落の背景には中国経済の低迷がある。世界経済の牽引役となっていた中国など新興国の急速な経済成長がピークアウトし、それが株価の下落に繋がり、また原油価格の下落要因のひとつとなっていた。

 米国の利上げによって、金融市場での資金の流れに変化も出てきた。新興国から米国への資金の環流現象が起きていることも、今回のチャイナリスクの背景にあると考えられる。米国の利上げの背景には、米国経済の回復もあるが、それとともに異常な金融緩和の状態から正常な状態に戻すことも目的であった。過剰な金融緩和で世界経済を支えるような環境からの変化も今回の市場の動揺の背景にあることが考えられる。

 新興国の経済成長のピークアウト、それも絡んだ原油安、さらに米国の利上げに象徴される金融政策の異常な状況からの離脱が、今回の金融市場の混乱の背景にあると考えられるのである。

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by nihonkokusai | 2016-01-06 08:56 | 国際情勢 | Comments(0)

パリバ・ショックの再来はあるのか

 米国では1990年代に移民の増加による人口の増加に加え、低所得層に対する住宅金融制度が整備され、返済方法についての規制緩和が行われたことなどから、低所得者層にも住宅ブームが波及した。また低金利に加え、持ち家比率の高まりなどが住宅価格の高騰を招いた。住宅価格の値上がり分を担保による貸し出し(ホーム・エクイティ・ローン)が伸び、住宅価格の値上分がり分の消費が可能となり、消費を底上げした。

 さらに低所得者向けの住宅ローン(サブプライム・ローン) は、そのリスクを減らすために証券化され、金融理論で構築された価格と格付会社による高格付けを得て債務担保証券(CDO)といった新たな金融商品に組成された。欧州や産油国だけでなく、中国や台湾といったアジア勢、そして日本からなどから大量の資金が米国に流入するなどの金余りブームも加わり、このような金融化商品へのニーズは高まり、サブプライム・ローンが組み込まれた証券化商品は、世界各国の金融機関やファンドに売却された。

 2006年半ばに、それまで高騰を続けていた米国の住宅価格が下落に転じ、一部の住宅ローンが担保割れとなるなど住宅バブルが崩壊し、信用力の低い個人向けの住宅資金貸し付けであるサブプライム・ローンで焦げ付きが増加した。

 サブプライム・ローン問題による最初の危機は欧州で発生した。2007年8月9日にドイツ連邦銀行は、IKB産業銀行がサププライムでの投資に伴う損失発生に対しての救済策を協議するため、緊急会合を開催した。さらに同日、フランスの銀行最大手BNPパリバは傘下ファンドの償還停止を発表し、次はどこかとの連想も加わり、欧州銀行向け資金の出し手が急速に限られてしまい、これはパリバ・ショックとも呼ばれた。サブプライム問題は米国の大手金融機関を直撃し、これがリーマン・ショックに繋がり、世界的な金融危機を招くことになる。

 先週、投資会社サード・アベニュー・マネジメント傘下のジャンク社債ファンドは投資家からの解約受付を停止すると発表した。米国のミューチュアル・ファンドの破綻規模としては、2008年のプライマリー・リザーブ・ファンド以降で最大となる。さらにヘッジファンドも、ディストレスト債を専門に手掛けるストーン・ライオン・キャピタル・パートナーズが11日に解約請求の受け付けを停止した。解約が殺到しているライオンアイ・キャピタルも12月末に閉鎖する予定だとみられている(ロイター)。

 11日のリスクオフーは原油先物の下落が要因であったとみられるが、サード・アベニューやヘッジファンドの解約受付停止のニュースがパリバショックが連想させ、市場の不安感を強めたことも大きな要因となっていた。

 今回の原油価格の下落などを背景としたジャンク債などによる影響が、パリバ・ショックのような事態を引き起こすのか。市場規模がさほど大きくないこともあるが、サブプライム・ローン問題のように大手金融機関の破綻に繋がるような事態も考えづらい。たしかにこれがひとつのきっかけとなり、大きな危機に発展する懸念はないとは言えない。パリバ・ショックのときも、その後の展開は予想できなかったことも確かである。しかし、リーマン・ショックなどを経ていることで、大手金融機関も対応を進めていたはずであり、いまのところは同様の危機を繰り返すことも考えづらい。さらに原油価格下落による新興国発の危機に関しても、中国、ロシア、ブラジルなどは潤沢な外貨準備を抱えており、こちらも1998年のような危機が訪れることも想定しづらいのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-12-16 09:06 | 国際情勢 | Comments(0)

原油安などによる市場の動揺

 12月15、16日のFOMCでは利上げを決定する可能性が非常に高くなっており、金融市場はそれを織り込みに来ている、はずだがその動きは必ずしも9年ぶりの利上げ、7年ぶりのゼロ金利解除に備えた動きのようにはなっていない。

 単純に考えれば、米債や米株は下落し、ドルは円やユーロに対して上昇することになる。しかし、イエレン議長はかなり時間を掛けて、久しぶりとなる利上げを市場に織り込ませてきた。テーパリングの開始決定時もそうであったが、特に米債の動揺は抑えられていた。もちろん米債が落ち着いている背景には、物価が低迷していることも要因であろうが、それ以上にFRBの市場との対話がうまくいったように思われる。

 市場との対話という面ではECBや日銀はかなり苦慮していると思われるが、それについてはさておき、それではここにきての米国や日本の株式市場の調整は何が要因となっているのか。もちろん米利上げ観測がその要因のひとつにはなっていようが、それだけではない。

 その要因のひとつに原油価格の下落がある。WTIは40ドル割れとなっており、いずれ30ドル近くに下落する可能性がある。このため、株式市場では石油関連株を中心に下落しているが、本来であれば原油価格の下げは日本などでは景気にはプラス要因となろう。しかし、米国株と同じように東京株式市場も下落しているのは、原油価格そのものの下落によるものというよりも、オイルマネーなどが株式市場から資金を引き揚げているためとの見方もできよう。もちろんチャートを意識したテクニカルな動きも入っていようが、先物の仕掛け的な動きばかりではなさそうである。

 中国の景気減速に加えて原油価格の下落により、資源国経済への影響も深刻化しつつある。ここに米利上げも絡まり、ヘッジファンドなどの資金が新興国への株式から米国などに環流するような動きも出てきているのではなかろうか。これは総じてリスク回避的な動きとなる。このため、それが米債の下支え要因となっている可能性もある。また、円債もここにきてTDBの金利のマイナス幅が拡大してるのも、それが背景のひとつになっている可能性がある。

 外為市場ではドルが円やユーロに対して下落した。上記の説明からでは安全資産として、ドルが上昇してもおかしくはないが、かなり米利上げが織り込まれていたところに、ECBに対する過剰な追加緩和への期待の反動も出たのではないかと思われる。追加緩和手段に限りがあるECBや日銀に対する過剰な期待は今後、後退することも予想される。米利上げ以降は、次第に焦点が、中央銀行の金融政策への度合いを低めてくる可能性がある。米利上げでドル円は130円を目指すといった予想もあるようだが、むしろ円高となる可能性も意識しておく必要もあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-12-11 09:16 | 国際情勢 | Comments(0)

パリ同時テロで何が変わるのか

 フランスのパリで11月13日夜、武装したグループによる同時テロ事件が発生した。先進国の大都市でのテロ事件であったことで、これは世界に衝撃を与えた。かなり念密に練られた計画であったようで、13日の金曜日を狙ったというより、11月15、16日にトルコのアンタルヤで開催されたG20のタイミングを狙ったと思われる。実際にトルコでの計画もあったようである。

 しかし、G20のタイミングを狙ったことで、むしろシリアのアサド政権を巡って対立していた米国とロシアの関係が、これをきっかけに変化する兆しもある。G20では非公式に米国のオバマ大統領とロシアのプーチン大統領が顔を付き合わせて話し合う姿が強く印象に残った。これはひとつのパフォーマンスであったかもしれないが、アサド政権への対応はさておき、対ISという姿勢でG20が結束を固めたとみるべきかと思われる。

 今回のパリのテロはISがかなり焦りを感じているためとの見方もあり、今後はフランスや米国、ロシアを中心としたISへの攻撃が焦点となる可能性がある。今後はフランスがイニシアチブを取ってくる可能性はあるが、やはり米ロの動向を注意すべきかと思われる。

 今回のテロにより、世界経済そのものへの影響は限られるとみられ、実際に金融市場もそれほど大きな動揺は見せなかった。2001年9月11日の米国における同時多発テロの際には、米国の金融システムの中心地が大きな被害を受けたことで金融市場にも衝撃が走ったが、今回は、今回は金融システムへの影響はほとんどなく、市場への影響は限られた。

 ひとつ注意すべきと思われるのが、原油価格の動向か。中東の地政学的リスクが意識され、今後も荒い値動きが続く可能性がある。ただし、中国を中心とした新興国の景気減速により、原油の需要後退はこれからも続くとみられ、原油先物は波乱含みながら下値を模索する展開が予想される。

 今後は再び欧米の中央銀行の金融政策の行方が焦点になると思われるが、今回のテロを受けて、たとえばFRBが12月の利上げを躊躇することは考えづらい。また、ECBにとっては、テロによってもしリスク回避の動きが強まれば、それを口実にして12月3日の理事会での追加緩和という手段もあったかもしれない。しかし、現実には12月のECBの追加緩和はドイツなどの反対もあり、かなり厳しいのではないかとみている。

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by nihonkokusai | 2015-11-23 11:34 | 国際情勢 | Comments(0)

パリ同時テロの金融市場への影響

 フランスのパリで13日夜、武装したグループによる同時テロ事件が発生した。これによる金融市場への影響も危惧されたが、株価等を含めてその影響は限定的となった。これにはいくつか理由が存在すると思われる。

 2001年9月11日の米国における同時多発テロの際には、米国の金融システムの中心地が大きな被害を受けた。このためニューヨーク証券取引所の取引は中止となり、再開されたのは17日となった。ニューヨーク証券取引所が予定外で連日の休場となったのは、第二次世界大戦の勝利を祝った1945年8月15~16日以来。崩壊した世界貿易センターには数多くの金融機関のオフィースがあったことで、金融システムは一時機能不全に陥った。しかし、米国の金融機関のバックアップシステムが完備していたことや、FRBなどによる懸命の対応により、米国債の取引は13日に再開された。

 今回のテロはフランスのパリではあったが、金融に絡んだ施設等が影響を受けたわけではなかった。このため2001年9月の米国における同時多発テロの際のような影響が金融市場に発生することは考えづらかった。

 日本におけるテロとも言える1995年3月20日の日本での地下鉄サリン事件の際には、東京証券取引所に近い茅場町も被害を受けたが、この日の取引所での取引は行われていた。

 何かしらの要因による金融市場への影響を考える際には、金融システムそのものへの影響の程度を考慮する必要がある。日本においては、日銀ネットが稼働しているかどうか、そして東証などの取引所の取引が可能であるかどうかが、あたりが目安となる。

 2011年3月11日金曜日に発生した東日本大震災の際も、日銀ネットへの影響はなく、金融システムは機能していた。このため政府の判断により14日の月曜日は平常通りに取引所は開かれ、金融取引も滞りなく行われた。

 今回のパリ同時テロの影響が金融市場において限定的であったのは、トルコでのG20が予定通りに開催されたことも大きかったように思われる。トルコも狙われていたとの観測があるが、G20が無事に開催され、ここでテロに対して各国首脳が非難声明を出して連帯を強めたことも、市場におけるリスクの後退要因になったのではないかと予想される。

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by nihonkokusai | 2015-11-18 09:28 | 国際情勢 | Comments(0)
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