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カテゴリ:国際情勢( 116 )

パリバ・ショックの再来はあるのか

 米国では1990年代に移民の増加による人口の増加に加え、低所得層に対する住宅金融制度が整備され、返済方法についての規制緩和が行われたことなどから、低所得者層にも住宅ブームが波及した。また低金利に加え、持ち家比率の高まりなどが住宅価格の高騰を招いた。住宅価格の値上がり分を担保による貸し出し(ホーム・エクイティ・ローン)が伸び、住宅価格の値上分がり分の消費が可能となり、消費を底上げした。

 さらに低所得者向けの住宅ローン(サブプライム・ローン) は、そのリスクを減らすために証券化され、金融理論で構築された価格と格付会社による高格付けを得て債務担保証券(CDO)といった新たな金融商品に組成された。欧州や産油国だけでなく、中国や台湾といったアジア勢、そして日本からなどから大量の資金が米国に流入するなどの金余りブームも加わり、このような金融化商品へのニーズは高まり、サブプライム・ローンが組み込まれた証券化商品は、世界各国の金融機関やファンドに売却された。

 2006年半ばに、それまで高騰を続けていた米国の住宅価格が下落に転じ、一部の住宅ローンが担保割れとなるなど住宅バブルが崩壊し、信用力の低い個人向けの住宅資金貸し付けであるサブプライム・ローンで焦げ付きが増加した。

 サブプライム・ローン問題による最初の危機は欧州で発生した。2007年8月9日にドイツ連邦銀行は、IKB産業銀行がサププライムでの投資に伴う損失発生に対しての救済策を協議するため、緊急会合を開催した。さらに同日、フランスの銀行最大手BNPパリバは傘下ファンドの償還停止を発表し、次はどこかとの連想も加わり、欧州銀行向け資金の出し手が急速に限られてしまい、これはパリバ・ショックとも呼ばれた。サブプライム問題は米国の大手金融機関を直撃し、これがリーマン・ショックに繋がり、世界的な金融危機を招くことになる。

 先週、投資会社サード・アベニュー・マネジメント傘下のジャンク社債ファンドは投資家からの解約受付を停止すると発表した。米国のミューチュアル・ファンドの破綻規模としては、2008年のプライマリー・リザーブ・ファンド以降で最大となる。さらにヘッジファンドも、ディストレスト債を専門に手掛けるストーン・ライオン・キャピタル・パートナーズが11日に解約請求の受け付けを停止した。解約が殺到しているライオンアイ・キャピタルも12月末に閉鎖する予定だとみられている(ロイター)。

 11日のリスクオフーは原油先物の下落が要因であったとみられるが、サード・アベニューやヘッジファンドの解約受付停止のニュースがパリバショックが連想させ、市場の不安感を強めたことも大きな要因となっていた。

 今回の原油価格の下落などを背景としたジャンク債などによる影響が、パリバ・ショックのような事態を引き起こすのか。市場規模がさほど大きくないこともあるが、サブプライム・ローン問題のように大手金融機関の破綻に繋がるような事態も考えづらい。たしかにこれがひとつのきっかけとなり、大きな危機に発展する懸念はないとは言えない。パリバ・ショックのときも、その後の展開は予想できなかったことも確かである。しかし、リーマン・ショックなどを経ていることで、大手金融機関も対応を進めていたはずであり、いまのところは同様の危機を繰り返すことも考えづらい。さらに原油価格下落による新興国発の危機に関しても、中国、ロシア、ブラジルなどは潤沢な外貨準備を抱えており、こちらも1998年のような危機が訪れることも想定しづらいのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-12-16 09:06 | 国際情勢 | Comments(0)

原油安などによる市場の動揺

 12月15、16日のFOMCでは利上げを決定する可能性が非常に高くなっており、金融市場はそれを織り込みに来ている、はずだがその動きは必ずしも9年ぶりの利上げ、7年ぶりのゼロ金利解除に備えた動きのようにはなっていない。

 単純に考えれば、米債や米株は下落し、ドルは円やユーロに対して上昇することになる。しかし、イエレン議長はかなり時間を掛けて、久しぶりとなる利上げを市場に織り込ませてきた。テーパリングの開始決定時もそうであったが、特に米債の動揺は抑えられていた。もちろん米債が落ち着いている背景には、物価が低迷していることも要因であろうが、それ以上にFRBの市場との対話がうまくいったように思われる。

 市場との対話という面ではECBや日銀はかなり苦慮していると思われるが、それについてはさておき、それではここにきての米国や日本の株式市場の調整は何が要因となっているのか。もちろん米利上げ観測がその要因のひとつにはなっていようが、それだけではない。

 その要因のひとつに原油価格の下落がある。WTIは40ドル割れとなっており、いずれ30ドル近くに下落する可能性がある。このため、株式市場では石油関連株を中心に下落しているが、本来であれば原油価格の下げは日本などでは景気にはプラス要因となろう。しかし、米国株と同じように東京株式市場も下落しているのは、原油価格そのものの下落によるものというよりも、オイルマネーなどが株式市場から資金を引き揚げているためとの見方もできよう。もちろんチャートを意識したテクニカルな動きも入っていようが、先物の仕掛け的な動きばかりではなさそうである。

 中国の景気減速に加えて原油価格の下落により、資源国経済への影響も深刻化しつつある。ここに米利上げも絡まり、ヘッジファンドなどの資金が新興国への株式から米国などに環流するような動きも出てきているのではなかろうか。これは総じてリスク回避的な動きとなる。このため、それが米債の下支え要因となっている可能性もある。また、円債もここにきてTDBの金利のマイナス幅が拡大してるのも、それが背景のひとつになっている可能性がある。

 外為市場ではドルが円やユーロに対して下落した。上記の説明からでは安全資産として、ドルが上昇してもおかしくはないが、かなり米利上げが織り込まれていたところに、ECBに対する過剰な追加緩和への期待の反動も出たのではないかと思われる。追加緩和手段に限りがあるECBや日銀に対する過剰な期待は今後、後退することも予想される。米利上げ以降は、次第に焦点が、中央銀行の金融政策への度合いを低めてくる可能性がある。米利上げでドル円は130円を目指すといった予想もあるようだが、むしろ円高となる可能性も意識しておく必要もあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-12-11 09:16 | 国際情勢 | Comments(0)

パリ同時テロで何が変わるのか

 フランスのパリで11月13日夜、武装したグループによる同時テロ事件が発生した。先進国の大都市でのテロ事件であったことで、これは世界に衝撃を与えた。かなり念密に練られた計画であったようで、13日の金曜日を狙ったというより、11月15、16日にトルコのアンタルヤで開催されたG20のタイミングを狙ったと思われる。実際にトルコでの計画もあったようである。

 しかし、G20のタイミングを狙ったことで、むしろシリアのアサド政権を巡って対立していた米国とロシアの関係が、これをきっかけに変化する兆しもある。G20では非公式に米国のオバマ大統領とロシアのプーチン大統領が顔を付き合わせて話し合う姿が強く印象に残った。これはひとつのパフォーマンスであったかもしれないが、アサド政権への対応はさておき、対ISという姿勢でG20が結束を固めたとみるべきかと思われる。

 今回のパリのテロはISがかなり焦りを感じているためとの見方もあり、今後はフランスや米国、ロシアを中心としたISへの攻撃が焦点となる可能性がある。今後はフランスがイニシアチブを取ってくる可能性はあるが、やはり米ロの動向を注意すべきかと思われる。

 今回のテロにより、世界経済そのものへの影響は限られるとみられ、実際に金融市場もそれほど大きな動揺は見せなかった。2001年9月11日の米国における同時多発テロの際には、米国の金融システムの中心地が大きな被害を受けたことで金融市場にも衝撃が走ったが、今回は、今回は金融システムへの影響はほとんどなく、市場への影響は限られた。

 ひとつ注意すべきと思われるのが、原油価格の動向か。中東の地政学的リスクが意識され、今後も荒い値動きが続く可能性がある。ただし、中国を中心とした新興国の景気減速により、原油の需要後退はこれからも続くとみられ、原油先物は波乱含みながら下値を模索する展開が予想される。

 今後は再び欧米の中央銀行の金融政策の行方が焦点になると思われるが、今回のテロを受けて、たとえばFRBが12月の利上げを躊躇することは考えづらい。また、ECBにとっては、テロによってもしリスク回避の動きが強まれば、それを口実にして12月3日の理事会での追加緩和という手段もあったかもしれない。しかし、現実には12月のECBの追加緩和はドイツなどの反対もあり、かなり厳しいのではないかとみている。

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by nihonkokusai | 2015-11-23 11:34 | 国際情勢 | Comments(0)

パリ同時テロの金融市場への影響

 フランスのパリで13日夜、武装したグループによる同時テロ事件が発生した。これによる金融市場への影響も危惧されたが、株価等を含めてその影響は限定的となった。これにはいくつか理由が存在すると思われる。

 2001年9月11日の米国における同時多発テロの際には、米国の金融システムの中心地が大きな被害を受けた。このためニューヨーク証券取引所の取引は中止となり、再開されたのは17日となった。ニューヨーク証券取引所が予定外で連日の休場となったのは、第二次世界大戦の勝利を祝った1945年8月15~16日以来。崩壊した世界貿易センターには数多くの金融機関のオフィースがあったことで、金融システムは一時機能不全に陥った。しかし、米国の金融機関のバックアップシステムが完備していたことや、FRBなどによる懸命の対応により、米国債の取引は13日に再開された。

 今回のテロはフランスのパリではあったが、金融に絡んだ施設等が影響を受けたわけではなかった。このため2001年9月の米国における同時多発テロの際のような影響が金融市場に発生することは考えづらかった。

 日本におけるテロとも言える1995年3月20日の日本での地下鉄サリン事件の際には、東京証券取引所に近い茅場町も被害を受けたが、この日の取引所での取引は行われていた。

 何かしらの要因による金融市場への影響を考える際には、金融システムそのものへの影響の程度を考慮する必要がある。日本においては、日銀ネットが稼働しているかどうか、そして東証などの取引所の取引が可能であるかどうかが、あたりが目安となる。

 2011年3月11日金曜日に発生した東日本大震災の際も、日銀ネットへの影響はなく、金融システムは機能していた。このため政府の判断により14日の月曜日は平常通りに取引所は開かれ、金融取引も滞りなく行われた。

 今回のパリ同時テロの影響が金融市場において限定的であったのは、トルコでのG20が予定通りに開催されたことも大きかったように思われる。トルコも狙われていたとの観測があるが、G20が無事に開催され、ここでテロに対して各国首脳が非難声明を出して連帯を強めたことも、市場におけるリスクの後退要因になったのではないかと予想される。

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by nihonkokusai | 2015-11-18 09:28 | 国際情勢 | Comments(0)

ダドリー総裁発言は軌道修正なのか

 8月26日の米国株式市場でダウ平均は619ドルもの反発となった。この上げ幅は6年10か月ぶりで、過去3番目の大きさになるそうである。この反発のきっかけは、前日の上海株や東京株式市場の上昇、中国が利下げに続いて大量の資金供給を行ったこと、さらには7月の米耐久財受注額が市場予想を上回ったことなどが要因とされた。しかし、引けにかけての戻りは、ニューヨーク連銀のダドリー総裁の発言をきっかけとした買い戻しが大きく影響したとみられる。

 今回の世界的な株安連鎖のきっかけは中国にあったかもしれないが、それよりFRBやイングランド銀行などが出口に向かい始めたことが大きな要因とみている。すでにFRBはテーパリングを終了させた。次は出口政策、つまり利上げとなることで、市場も過剰流動性相場が永久に続くわけではないことを意識しはじめたとみられる。FRBの今後のスタンスに対して市場がより敏感になってきたといえるのではなかろうか。

 FRBも今回の米国株を含めた世界的な株価の調整には注意を払っていたはずであり、直接的な手段は打たずとも、市場の動揺を抑えるための口先介入、市場との対話を図る必要があった。ちょうど8月27日から29日にかけて、市場参加者が注目しているカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)が開催されるため、ここでFRB関係者から何かしら市場を沈静化させるべきコメントが出てくると予想されていた。

 ところが、27日までは待っていられなかったようで、FRBの重鎮のひとりであるニューヨーク連銀のダドリー総裁が26日の質疑応答で、「現時点での私の考えでは、9月のFOMCで正常化のプロセス開始を決定する論拠は数週間前に比べやや弱くなっているようだ」と語ったのである。

 ここにきての相場変動で大きな懸念材料ともなっていた9月のFRBの利上げ観測に対し、その可能性がさほど高くはないことを示唆し、目先の不安材料を取り除こうとしたとみられる。この背景には政府からの意向もあった可能性があるが、それを察しての発言ともみられる。

 イエレン議長はどのタイミングで正常化、つまり利上げに踏み切ると予定していたのかは推測の域は出ないが、あくまで年内との示唆だけであり、9月の利上げの可能性をこのタイミングで消し去ったとしてもあまり問題ではない。このダドリー総裁の発言で年内利上げの可能性そのものが後退したわけではない。

 2013年5月のバーナンキ・ショックのような動きが今回株式市場で出たともいえる。あのときに12月のテーパリング開始は市場の同様を与えずに成功したこともあり、今回もその成功体験を生かすつもりではなかろうか。

 このあたり、8月27日から29日にかけてのジャクソンホールでのフィッシャーFRB副議長などの発言から探ってみたい。念のためイエレン議長は、2013年のジャクソンホールにバーナンキ議長が欠席したと同様に、今回は異例の欠席となっている。

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by nihonkokusai | 2015-08-28 09:59 | 国際情勢 | Comments(0)

中国だけではない米株の調整要因

 今回の中国経済の減速などが要因とされる世界的な株価の調整は一時的なものとなるのであろうか。2012年11月あたりからスタートしたダウ平均や日経平均、さらにはドル円の上昇相場を振り返りながら確認してみたい。

 2012年11月からの日本株やドル円の上昇はアベノミクスによるものとの見方がある。たしかにその側面があったことは否定しないが、あくまでそれはきっかけのひとつにすぎない。もし安倍総裁の発言がダウ平均まで動かしていたとしたら別であるが、ダウ平均の動きを含め、これは欧州の信用不安の後退によるリスク回避の巻き戻しの動きといえた。

 そのダウ平均や日経平均、ドル円の上昇トレンドが崩れたのが、2013年5月のバーナンキ・ショックと呼ばれたものによる。2013年5月22日にバーナンキFRB議長は上下両院合同経済委員会の証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘した。つまりテーパリングを示唆した。

 2013年5月22日の日経平均の引けは15600円台であったが、そこから下落基調となり6月13日には12400円台に下落した。この間のドル円は102円台後半から93円台に下落していた。

 このバーナンキ・ショックはFRBのテーパリングの開始観測がきっかけとなっていた。このため米長期金利も上昇し、5月23日に2%台に乗せたあと9月に3%近辺に上昇していた。ただし、ダウ平均の調整は6月末あたりで終了し、再び上昇基調に戻っていた。

 ところが日経平均とドル円はここでいったんピークアウトしていた。急激な円高調整と株の買い戻しがバーナンキ・ショックをきっかけに収束したとみることもできる。しかし、ダウ平均の上昇は止まらなかった。このダウ平均の動きは日銀が利上げを開始したにも関わらず高値を更新し続けた1989年の日経平均と似たところがあった。ダウ平均も高値を更新してきたのである。

 日経平均とドル円が再び息を吹き返したのが、2014年10月となる。日銀による量的・質的緩和の拡大、つまり異次元緩和第二弾により、再び日本株買いと円売りが同時に起きていた。ここにはGPIFや日銀などの株買いも意識されていたこともあったとみられ、日経平均は最近まで上昇圧力を強めた格好になった。

 ところがダウ平均をみると18000ドル台ですでにピークアウトしていた。むしろダウントレンドになっていたところに、今回のショックが発生した格好となった。これは中国がきっかけであったのかもしれないが、タイムラグをともなっての過剰流動性相場の終焉を意味していた可能性もある。つまり、1990年以降の日本株の調整、いわゆるバブル崩壊時の状況にも似たところがある。

 今回の米国株をみても経済実態以上に買い進まれていたとの見方もできるのではなかろうか。たしかに米国は雇用等の回復はあったが、株価指数が過去最高値を更新するほど経済実態が良くなったわけではない。過剰流動性相場が演出された結果となれば、テーパリングが終了してから7か月程度のタイムラグを置いての大きなトレンド変化が始まったとの見方も可能ではなかろうか。現実に今回のダウ平均の調整幅は2012年11月以降でみると、最も大きなものとなっている。これにより大きな上昇トレンドは終了し、今後はあらたなトレンドを形成してくる可能性も高いのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-08-27 09:49 | 国際情勢 | Comments(0)

どこまで下がるか原油先物

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 13日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は反落し、WTIで9月限は前日比1.07ドル安の42.23ドルで取引を終えた。一時は42ドルを下回り、41.91ドルを付けた。

 WTIは2009年12月19日に32.40ドルまで下落していたが、このときは2008年7月11日に147.27ドルという史上最高値を記録した反動とも言えた。

 2008年といえば、すでにサブプライムローン問題が起きており、2008年3月に欧米での信用収縮への懸念が強まりからFRB、ECB、そしてイングランド銀行にスイス中銀、カナダ中銀は各国の短期金融市場で資金供給を拡大するとの緊急声明を発表した。

 OPECの生産調整や、中国の経済成長を背景にした需要増等によって原油価格は上昇を続けていたが、欧米の中央銀行による資金供給も手伝い、原油先物には投機的な動きが発生していた。そうでなければすでに金融危機が発生し、景気が減速していたにも関わらず、原油価格が急速に上昇していた説明が付かない。いわば原油先物でプチバブルが発生していたものの、それが現実を見据えて弾け、その結果がWTIの147ドル台から32ドル台への下落となった。

 しかし、これも売られ過ぎとみられ、OPECが大幅な協調減産に踏み切ったことや、中国を中心とした新興国の需要はさほど後退していなかったこともあり、それから原油価格は再び上昇した。2011年5月には112.8ドルにまで上昇。そこでいったんピークアウトしたものの、2014年7月ぐらいまでは100ドル台をつける場面もあり、高値圏で推移していた。

 異変が起きたのが2014年7月以降であり、再び一方的な下落を続け、2015年3月17日に43ドル39セントに下落した。ここからいったん買い戻されて60ドル台を回復する。このあたりは日銀のシナリオ通りとなったが、そこから再び下落し41ドル台となったのである。

 この原油下落の背景には、米国でのシェールオイル生産拡大で対米輸出が減っていることなどもあり、原油は世界的に供給過剰となっていたことがあった。ここに中国の経済減速があらためて材料視された。今回の中国による実質的な元切り下げを受けて、中国経済の悪化による需要の減少があらためて意識された。

 WTIが40ドルを割り込むのも時間の問題ともなってきた。これは原油を輸入に頼る日本経済にとっては恩恵となろうが、資源国には打撃となる。物価の上昇抑制要因ともなり、世界的なディスインフレ傾向がさらに強まる可能性があり、これは日銀の物価目標達成をさらに困難にしかねない。

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by nihonkokusai | 2015-08-17 09:34 | 国際情勢 | Comments(0)

人民元切り下げの理由と影響

 中国の中央銀行である中国人民銀行は、8月11日に人民元の取り引きの目安として定めている為替レートのドルに対する基準値を1ドル6.2298人民元と定め、10日の1ドル6.1162人民元から1.8%あまり切り下げたと発表した。さらに12日には人民元の対ドル基準値を1ドル6.3306元とし、1.6%あまり引き下げた。

 中国人民銀行はこれまで銀行が毎朝提示するレートをもとに基準値を設定していたとされるが、これまで基準値の設定方法は公表されていなかった。11日からは基準値を前日の市場の終値を重視するとして切り下げた格好となった。  人民元の為替レートは中国人民銀行が取り引きの目安として日ごとに基準値を定め、その値から上下2%以内に変動を抑えることにしている。このため、12日に人民元が一時、前日終値、つまり基準値から1.98%程度下落したタイミングで元買い介入が入ったようである。

 基準値の新たな設定方法では、従来よりも市場の実勢が反映される度合いが高まるとの見方があるが、基準値の設定では今後も当局が大きな権限を握るとの見方もある。

 中国政府はこれまで内需拡大や人民元の国際化に向け、強い人民元を目指してきたとされる。中国政府は人民元の国際化を目指し、IMFが設定している特別引き出し権(SDR)の構成通貨に人民元を採用するように要請していた。米利上げ観測などからドルが上昇していたこともあり、人民元も割高となっていた。ところが通貨高による弊害も含め、ここにきて中国経済の減速傾向とともに、物価下落によるデフレ懸念により、中国当局は方針を変更せざるを得なかったと思われる。

 今回の事実上の人民元切り下げの目的は、通貨安による輸出企業へのてこ入れと物価の上昇とみられる。7月の中国の輸出は前年同月比8.3%減と大きく落ち込んだ。中国の卸売物価指数(PPI)は5.4%の下落となり、2009年以来の低水準となっていた。昨秋から相次いで利下げするなど金融緩和を実施しているが、その効果は限られている。このためより効果の高い通貨安政策を取らざるを得なくなったものと思われる。

 中国経済の減速傾向なども要因として原油価格が再び下落基調となっている。11日のWTIは引け値ベースで2009年3月以来の安値となり、一時42ドル台まで売り込まれた。40ドル割れもあるのではとの見方も出ているが、この原油安も中国の物価下落の要因となっている。

 ECBの量的緩和の目的は通貨安であった。日銀も表立っては表明していないが、二度にわたる異次元緩和の目的も結果として通貨安にあった可能性が高い。異次元緩和以降の一時的な物価の回復も円安による影響が大きく、そこに株高が加わってアベノミクスが形成された。

 今回の中国人民銀行による事実上の人民元切り下げについて、金融市場はこれを景気てこ入れとして好材料と捉えてもおかしくはなかった。しかし、市場は反対にリスク回避の動きをみせ、欧米の株式市場は下落し、質への逃避として米国やドイツ、英国などの国債は買われた。為替市場でも質への逃避としてドルやユーロが買われたが、今回は地理的に近いことも要因となったのか円は買われず、ドルやユーロに対して一時下落していた。

 ギリシャと国際債権団が支援協議で合意したこともあり、ギリシャのリスクは後退した。今度はそれに変わって中国がリスク要因として浮上してきた。そのことを示したものが今回の事実上の人民元切り下げであると市場では認識されたものと思われる。

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by nihonkokusai | 2015-08-13 09:48 | 国際情勢 | Comments(0)

ギリシャよりも原油下落に注意

 銀行での預金の引き出し制限など資本規制が導入されたことに伴って、6月26日から取引が停止されていたギリシャの株式市場が8月3日に再開した。5週間ぶりの再開となったが、その間にギリシャはぎりぎりのところでデフォルトやユーロ離脱を回避した。アテネ株価総合指数は一時、取り引きが停止される前の6月26日の終値に対し、22%余り下落した。資本規制の導入による影響を受けた大手銀行の株式には売り注文が殺到し、いずれもストップ安となったようである。指数の引け値は16.2%安と、過去最大の下落幅を記録した。

 ギリシャの株式市場の混乱はまだ続くものとみられるが、これにより欧州全体に再び金融不安が拡がることは考えづらい。今回の下落は5週間も動くに動けなかった投資家のリスク回避のためのポジション調整等が入ったとみられ、ある程度売られると落ち着きを取り戻してくると予想される。

 ギリシャにとって最悪の事態は回避された。むろん債権団の要求する緊縮策はギリシャ国内の経済にも影響を与えよう。総選挙の可能性も指摘されるが、ギリシャ国民は緊縮策は嫌だが、ユーロ離脱はもっと嫌だという選択をチプラス首相に委ねた格好であり、危機の火種は残っても再び燃え拡がる可能性は後退しつつある。

 それよりも注意すべきは、ここにきての原油価格の下落である。原油価格下落による世界的なデフレ圧力の強まりや、石油関連会社の業績への懸念も無視はできないが、日本などではむしろ恩恵になりうる。それよりも原油を含めての商品市況の低迷の背景にあるものに注意すべきである。

 その背景のひとつに中国経済の減速懸念がある。すでに中国株が大きく調整し、政府が買い支え策を講じざるを得なくなっている。いつかはやってくるとされた中国バブルの崩壊リスクも感じさせる動きとなっている。貴金属の先物の下落などがそれを示唆していた。それが原油や中国の株式市場の調整にも繋がり、資源国とされる国々にも影響し、資源国通貨も調整局面となっている。

 BRICsと呼ばれた国々(ブラジル、ロシア、インド、中国)を代表する新興国経済の減速が、新たなリスクを生む可能性がある。中国経済は以前ほどの影響力はなくなってはいるが、世界経済全体にも影響を及ぼしかねない。FRBの年内利上げは、よほどのショックがなければ実施されるとみているが、世界的なリスク回避のための日米欧の中央銀行の異次元の緩和政策も方向転換を迎えつつある。この資金の流れの変化も新興国市場には悪影響となる。原油価格の下落とその背景にあるものに今後は注意を向ける必要があろう。

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by nihonkokusai | 2015-08-05 09:44 | 国際情勢 | Comments(0)

金や原油の先物が下落した理由

 ここにきて商品市況の下げが注目材料となりつつある。金先物は7月23日夜の時間外取引で約5年5か月ぶりの安値を付けた。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)COMEX部門の金先物は一時1オンス1072.30ドルと、中心限月としては2010年2月以来の安値をつけた。金先物のチャートをみると下げがきつくなっており、なっている。2009年以来の1オンス1000ドル割れとなる可能性も出てきた。

金の先物よりも早く銅の先物も下落基調となっていたが、銅先物の下落は中国の経済成長にブレーキが掛かっていたことが要因とされる。日本でも一時、電線やマンホールの蓋が盗まれるといった事件が発生していたが、それだけ工業用の金属には需要があった。しかし、その需要がかなり後退しつつあることが銅の先物から伺える。

これに対して金は工業向けの需要とともに、装飾品としての需要があり、中東やインド、そして中国からのいわゆる爆買いが、一時のブームを作っていた。しかし、中国を中心とした新興国の景気減速で、そのような買いも鈍ってきたものと思われる。ただし、金については一般的な価格表示はドル建てあることにも注意が必要となる。つまり、FRBの利上げ観測等により、ドルが上昇して金価格を下支えしていたが、それ以上に価格そのものの下落圧力が強まっているということにもなる。

ここにきて原油先物の下げもきつくなっている。代表的なWTI先物は40ドル台前半から一時60ドル台に回復していたが、再び下落し50ドル割れとなっている。原油価格の下落も中国などの経済減速が影響している。原油先物の上昇を日銀は見込んでいたが、このままでいくと見込み違いとなる可能性も。そのためエネルギーを除く新コアコア指数を持ってきたのかもしれないが、原油価格の下落は物価の上昇抑制要因となる。

貴金属や原油価格の下落は、BRICsと呼ばれる新興国の経済にも深刻な影響を与えかねない。外為市場ではブラジル・レアルとカナダ・ドルは約10年ぶり安値を付け、豪・ドルも6年ぶりの安値をつけるなど資源国通貨が売られている。

7月15日にはカナダ中央銀項が今年二度目の利下げを実施した。これは原油安などによる国内経済や物価への影響を意識したものと思われる。オーストラリアもすでに今年は2度の利下げを実施したが、追加利下げが引き続き検討課題だとスティーブンス総裁はコメントした。

原油価格の下落は中東と、シェールの米国の体力勝負ともなりつつあり、日本などの原油輸入国にとっては恩恵となるが、産油国の経済には当然ながら悪影響となる。

中国を中心とした新興国経済の落ち込みが顕著になりつつある。ギリシャ問題がとりあえず後退し、次の材料を模索している最中にあり、FRBやイングランド銀行の利上げの前に、この商品市況の下落に象徴される新興国経済動向があらためて材料視される可能性が出てきた。

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by nihonkokusai | 2015-07-28 09:41 | 国際情勢 | Comments(0)
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