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カテゴリ:国際情勢( 132 )

イタリアショックは回避か、市場の焦点は米利上げに

 12月4日のオーストリアの大統領選ではリベラル系・緑の党のベレン元党首が勝利した。これは5月の決選投票で開票作業の不備が明らかになったことでのやり直し選挙であったが、トランプ効果により、EU離脱派でもある極右・自由党候補のホーファ氏が勝利する可能性も指摘されていた。しかし、ひとまず極右の流れが欧州にも広まることは避けられた格好となった。

 そしてもうひとつ注目された同日のイタリアの憲法改正の是非を問う国民投票では、予想されていたように憲法改正が否決された、この結果を受けてレンツィ首相は辞任の意向を表明した。

 米大統領選挙でのトランプ氏の勝利によって、イタリアでもレンツィ政権の打倒を目指すポピュリストの運動は勢いを増しており、2017年の早い時期に総選挙実施となる可能性も指摘されていた。しかし、この総選挙については回避されるのではとの見方となっているようである。

 来年4月または5月にはフランスで大統領選挙が実施される。こちらも極右政党「国民戦線」のルペン党首が有力候補となっている。すでにオランド大統領は大統領選挙への立候補を断念する考えを表明している。ドイツも来年9月に総選挙を控えている。

 米大統領選挙の結果がひとつのきっかけとなり、欧米の長期金利やドルは上昇し、米国株式市場もダウ平均などが過去最高値を更新した。これはトランプ相場やトランプラリーと呼ばれたが、この政治の方の流れが欧州に波及するとなれば、市場はこれをリスク要因とみなすことになる。

 トランプラリーにより米長期金利は上昇し12月1日には2.45%に上昇した。しかし、欧州リスクが意識されて2日には2.38%に低下した。ドイツの長期金利も0.28%と1日の0.36%から低下し、英国の長期金利も1.38%と前日の1.49%から大きく低下した。イタリアの長期金利も2%を割り込み1.90%に低下した。このあたりはいわゆるリスク回避の動きとも見える。

 イタリアの政治空白の可能性によるイタリアの銀行への懸念もある。レンツィ首相が辞任するなると、資金調達を巡る懸念により、同国内の銀行に破綻のリスクが生じるとされる。

 外為市場ではユーロがドルや円に対して売られたが、ユーロドルは節目とされている1.05ドルを割り込むことはなく、市場はいまのところ比較的冷静となっている。イタリアのレンツィ首相の辞任はある程度想定されていたとみられ、問題はこれがイタリアの銀行にどのような影響を与えることになるのか。そしてイタリアでもポピュリストの運動は勢いを増すことになるのか、それがフランスなどに波及してユーロ崩壊のリスクが高まるのかが今後の焦点となる。

 ただし、オーストリアの大統領選でリベラル系のベレン元党首が勝利した背景には、極右の流れに対して国民が危機感を抱いているためとも指摘されており、この流れがユーロ圏で強まるのかどうかは疑問もある。あくまでリスク要因のひとつとして認識しておく必要がある。

 今回のイタリア首相の辞任によっていわゆるトランプラリーの流れが変わるとも思いづらい。レンツィ首相が現実に辞任を表明したことを受けての5日の欧州の株式市場は上昇しており、外為市場ではユーロも買い戻された。イタリアの国債も売られたが、ドイツや英国、米国の国債も下落していたことで、リスク回避の動きとはならなかったと言える。

 2日に発表された11月の米雇用統計で非農業雇用者数は17.8万人と予想を少し下回り、10月分は下方修正されたが、失業率は4.6%と0.3ポイント低下した。今後は市場の視線は欧州から12月13、14日のFOMCに移ってくることも予想されている。利上げはほぼ確実視されており、焦点は来年の利上げペースともなっている。今後、米長期金利はまだ上昇してくる可能性はある。ドル円についても115円という節目も意識されて押し戻された格好となっているが、ここでピークアウトしたようにも思えない。

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by nihonkokusai | 2016-12-06 09:58 | 国際情勢 | Comments(0)

ユーロリスク再燃の可能性

 イタリア政府は憲法改正の是非を問う国民投票を12月4日に実施する。憲法の改正案は上院議会の議員定数の削減や権限の縮小など首相の権限の強化につながる内容となっている。レンツィ首相は憲法改正はイタリア政治に必要な安定をもたらすと主張、否決された場合には辞任する意向を表明している。

 世論調査では、改正反対派が優勢となっている上に、米国大統領選挙でのトランプ氏の勝利によってレンツィ首相を取り巻く環境に変化も生じた。イタリアでもレンツィ政権の打倒を目指すポピュリストの運動は勢いを増しつつあり、12月4日の国民投票では憲法改正が否決され、レンツィ首相が辞任するのではないかとの観測が強まった。2017年の早い時期に総選挙実施となる可能性も指摘されている。

 これを受けて今年8月に1%近くまで低下したイタリアの長期金利は一時2%台に乗せてきた(2日は買い戻しの動きが出て大きく買い戻されて2%割れとなった)。イタリアの政治空白の可能性によるイタリアの銀行への懸念も出ていた。レンツィ首相が辞任するような事態となると、資金調達を巡る懸念により、同国内の銀行に破綻のリスクが生じるとされる。

 12月4日にはオーストリアでも大統領選挙が行われる。これは5月の決選投票で開票作業の不備が明らかになったことでのやり直し選挙となる。極右・自由党候補のホーファ国民議会第三議長とリベラル系の前緑の党党首、ファンデアベレン氏の対決となる。最近の世論調査では両候補の支持が伯仲しているようだが、トランプ効果により、EU離脱派でもあるホーファ氏が勝利する可能性もある。

 来年4月または5月にはフランスで大統領選挙が実施される。こちらも極右政党「国民戦線」のルペン党首が有力候補となっている。現職のオランド大統領の支持率は各世論調査で最低を記録し、すでにオランド大統領は大統領選挙への立候補を断念する考えを表明している。トランプ効果の追い風もあり、フランスでも極右政党の党首が大統領となる可能性がある。ドイツも来年9月に総選挙を控えている。

 すでにイギリスは国民投票でEU離脱を決定した。米国ではトランプ氏が予想を覆して勝利し、この流れで行くとイタリアでも国民投票の結果を受けてレンツィ首相が辞任しかねない。フランスでも極右候補が大統領選を制する可能性が出てきており、オランダでも極右候補が台頭している。

 イタリアの銀行の動向も気になるところではあるが、この流れはあらためてユーロシステムの崩壊の可能性を意味する。ギリシャショックの際はかろうじてユーロ崩壊は免れたものの、今後再びユーロリスクを意識せざるを得なくなる懸念がある。

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by nihonkokusai | 2016-12-03 11:07 | 国際情勢 | Comments(0)

OPECの減産最終合意でトランプ相場は継続

 30日のOPEC総会では、減産を巡り利害の対立を抱えるサウジアラビアとイランが土壇場で歩み寄り、9月末のアルジェリアの臨時総会で合意した内容に基づき減産で一致した(日経新聞)。

 サウジ、イラン、イラクの意見が噛み合わず、特に全加盟国に減産協力を求めるサウジと減産の適用除外を求めるイランが対立していた。このため30日の総会での減産合意は難しいとの観測から原油先物は売られていた。WTI先物は45ドル近辺まで下げた。

 総会直前の30日朝には加盟国の閣僚らによる非公式会合が開かれたことで、合意は難しいとの観測がむしろ強まっていたが、それだけ減産に向けてサウジを中心に何とか減産合意に持っていきたいとの意識が強かったようである。

 イランへの譲歩に難色を示してきたサウジの態度の軟化が、加盟国を8年ぶりの減産での合意に導いた格好となった(日経新聞)。

 これを受けて原油価格は急上昇、指標となっているWTI先物は30日から12月1日にかけて買い進まれて50ドルの大台を回復した。トランプラリーの原動力となっている米長期金利も上昇しも米長期金利は2.4%台に乗せてきた。これは原油価格の上昇による物価上昇という要因だけでなく、ADP全国雇用者数が予想を上回るなど経済指標も影響した。12月13、14日に開かれるFOMCでの利上げ観測がさらに強まった格好となった(すでに100%以上の利上げ予想ではあるが)。

 外為市場でドルは上昇し、特にドル円は一時114円台後半まで上昇した。ドル高ではあるが、ユーロ円も121円台をつけるなど円安の動きともなっていた。

 ただし、30日から1日にかけての米国株式市場はアマゾン・ドット・コムやフェイスブック、グーグルの持ち株会社アルファベットといった代表的なネット関連株が大幅安となったことで、ナスダックは下落した。銀行株や石油関連株の上昇で12月1日のダウ平均は上昇し、過去最高値を更新した。

 これはトランプ次期大統領が、米国を代表する大手企業であるアップル、グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、マイクロソフトなどに対して、米国の雇用面、海外投資などに絡んで改善を求めることが予想され、対立色を強めるのではとの観測が背景にある。

 つまりトランプラリーという相場のなかでは、これらハイテク企業の株は売られやすくなり、規制緩和などの観測による銀行株などが買われた格好となった。

 新政権が現実にどのような政策を行うのかはまだはっかりしていない。ここにきてやっと財務長官や商務長官の人事が発表されたが、この人事からもTPPは反対するであろう程度しか読み取れない。

 それでも期待感を背景に2012年末のアベノミクス相場のような展開があらためて再開した。チャートを見る限り、ドル円は115円をいずれ突破して120円あたりまでの上昇もありうるか。日経平均は昨年12月以来の2万円が目処となる。そして米国の長期金利は2014年はじめにつけた3%もいずれ意識される可能性がある。

 原油価格の上昇や円安は物価上昇要因となる。これに株高も組み合わされば、日銀にとっては願ってもない動きとなろう(決してこれは日銀の金融緩和によるものではないが)。しかし、米長期金利の上昇が今後続き、原油高などによる物価の上昇観測が強まれば、日本の国債の利回りも当然、上昇圧力を強めることも予想される。それをどのように日銀はコントロールするのか、というよりもコントロールできるのか、このあたりも今後の焦点となる。

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by nihonkokusai | 2016-12-02 09:38 | 国際情勢 | Comments(0)

トランプ氏勝利で流れが変わった金融市場を振り返る

 11月8日の米大統領選挙の結果、事前の予想を覆してトランプ氏が勝利した。大統領選挙の開票が行われていた時間に開いていた東京市場では、トランプ氏の優勢が伝えられると、日経平均は一時1000円以上も下げ16000円に迫った。しかし、10日の日経平均は1000円を超す上昇となって昨日の下げ分を埋めた。それどころか、そこからじりじりと上昇し、18000円台を回復した。

 この背景にあったのがドル高円安であり、ドル高の要因となったのが米長期金利の上昇となった。米長期金利の上昇の背景には、インフレへの懸念や米国の財政赤字の拡大懸念があった。さらにそこは12月のFOMCでの利上げ観測も強まりもあった。

 このような背景ではあったが、米国株式市場は利上げ観測や財政悪化などを理由に売られるどころかむしろ買い進まれた。11月21日の米国株式市場ではダウ平均、ナスダック、S&P500種株価指数の3指数そろって過去最高値を更新している。

 つまりトランプショックとも呼ばれた市場の動揺は一時的であり、むしろ金融市場ではトランプ氏の政策への期待感が強まったことになる。トランプ氏は既存概念を打ち破り、新たな政策への期待感が強まった。保護主義などへの懸念はあるものの、法人税減税などの財政政策や規制緩和への期待感が強まった。

 米国経済を見ても雇用面などがしっかりしており、FRBは歩みは遅いながらも正常化を進めてきた。すでにリーマン・ショックやギリシャ・ショックと呼ばれた世界的な危機は過去のものとなりつつある。日米欧の大胆な金融緩和も限界が見えてきたというよりも、その必要性が後退してきた。時代は危機対応から正常化への過程が、このトランプ氏の登場により、より明確になってきた。

 この金融市場の現象が一時的なものであるのかどうかは不透明ながら、少なくともドル円でいえば、今年初めのリスク回避の動きが始まる前の水準である120円近辺に戻ってもおかしくはない。日経平均は2万円という大きな節目も意識される。

 円安株高の流れは日銀にとっては願ってもないものとなろう。ただし、米長期金利が今後さらに上昇するとなると、日本の債券市場を取り巻く状況が変わってくる。日銀は9月の金融政策決定会合でイールドカーブコントロールとオーバーシュート型型コミットメントを打ち出した。しかし、これにあまりに縛られすぎると日本でも先行きの金利上昇期待が強まっても、日銀に金利が無理矢理押さえつけられる懸念がある。そもそも日銀が本当に金利を抑えられるのかという疑問も残る。トランプ氏の登場をきっかけに様変わりした金融市場を取り巻く環境変化に日銀がどう対応するのかも興味深い。

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by nihonkokusai | 2016-11-28 18:43 | 国際情勢 | Comments(0)

トランプ氏の勝利で金融市場が乱高下した理由

 米大統領選挙は、予想外のトランプ氏の勝利で世界中が驚いた。金融市場もまれに見る値動きをしていたことからも驚きが尋常でなかったことが伺える。ちょうど米大統領選挙の開票状況が伝わる時間帯に開いていた9日の東京市場では、予想外のトランプ氏のリードを受けて、一時1000円以上の下落となった。外為市場でもドル円は105円台から一時101円台に下落した。

 ところがドル円は101円台をつけたあとじりじりと切り返し、9日の米国市場では105円台後半まで上昇した。この円安と米株高もあり、10日の東京株式市場は寄り付きから買い戻しの動きを強め、前日の下げ分を取り戻した格好となった。

 9日の米国債券市場では、長い期間の債券が大きく下落した。米10年債利回りは心理的な壁とされていた2%を上回ってきた。10日に米10年債利回りは2.15%に上昇した。

 これらの値動きの背景にはいったい何があったのか。今回、市場ではブラックスワンやテールリスクが存在していることをあらためて示したものともいえる。黒い白鳥などいないと思われていたがそれは現実には存在した。通常想定出来ない確率のリスクがテールリスクとされる。つまりあり得ないと思われていたことが現実に起きてしまうリスクが今回発生したとの認識である。

 6月に実施された英国の国民投票で、予想外のEU離脱を選択したことで市場が動揺したことも記憶に新しい。このときも予想外の出来事でリスクオフと呼ばれる株安、通貨安、国債高が起きた。しかし、それが長続きすることはなく市場は次第に平静を取り戻した。

 今回のトランプショックについても、一時的にリスクオフの動きは起きても、いずれ新たな政策(善し悪しはさておき)に対する期待感が市場で出てくることも考えられ、強いアメリカを主張して国民の期待感を強ませることで、金融市場も期待を寄せる可能性はあると見ていた。しかし、これほど速く反応することまでは想定できなかった。

 英国の国民投票結果と今回のトランプ氏の勝利に関して共通してるのは、事前の大方の予想が外れたことである。この予想を背景に、市場では英国はEUから離脱しない、過激な発言を繰り返したトランプ氏は当選しないとの楽観的な見通しが形成されてしまった。それが裏切られたショックがマーケットを揺るがした。ここにはどうして正確な予想ができなかったのかという問題も存在する。

 マーケットが過剰反応し、その後の反動を含め値動きを荒くさせて背景には、アルゴと呼ばれるコンピューターが市場の動向を判断して売買するシステムや、HFTと呼ばれる超高速処理を利用して自動売買するシステムなどの存在もあったであろう。9日の先物などデリバティブ市場の売買高が記録的な多さとなっていたことからもこれは伺える。

 英国のEU離脱による欧州を主体とした金融経済への影響、トランプ大統領誕生による米国の金融経済への影響について、当初は悲観的な見通しが強まり、リスクオフの動きが強まった。しかし、英国のEU離脱は時間を掛けて行われることもあり、またポンド安によって英国景気や物価にプラスに働いた面もあって市場は認識を変えた。トランプ氏に関しては、勝利宣言を行った演説はそれほど過激なものではなかったことをきっかけに、むしろ期待感も出てきたことにより、リスクオフの反動が起きた。

 百年に一度とされる危機が、リーマン・ショック、ギリシャ・ショックというかたちで立て続けに起きて、まさに金融市場で大きなテールリスクが発生してしまった。この後遺症も残っているため、金融市場においてはつい過敏に動いてしまうことも念頭に置いておくことも必要なのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-11-11 09:53 | 国際情勢 | Comments(0)

インドで高額紙幣が突然無効に、日本でもあり得るのか

 インドのモディ首相は8日夜のテレビ演説で、高額紙幣の1000ルピー(約1600円)札と500ルピー(約800円)札を演説の約4時間後から無効にすると突然発表した。手元にあるこれら2種類の紙幣については10日以降、銀行などで新たに発行する2000ルピー札や新しいデザインの500ルピー札に交換するよう指示した。

 モディ首相はこの理由について、パキスタンを本拠地とし、インド国内でテロ行為を行っている過激派グループが、紙幣を大量に偽造し活動資金に充てているためとした。また市民の間でも、脱税目的の現金決済が行われていると説明したようである。

 インドでは現金取引が主流であり、新札との交換期間が来月30日までとされたことや、1度に交換できる金額にも制限があるため、首都ニューデリーでは、急いで小額紙幣に交換しようという人たちがATMに殺到しているそうである(以上、NHK、朝日新聞、時事通信の記事より)

 国民の混乱を招いてもこのような策を講じるほかはなかったものとみられるが、その理由というのが偽造紙幣を駆逐するためというのも興味深い。

 日本では偽造紙幣が大量に出回るような事件はここにきてあまり聞かない。カラーコピーによる偽札を使うような事件はあったが、精巧な偽造紙幣が出回ったという記事は見たことがない。それだけ現在の日本の紙幣に使われる印刷技術が高度であるということでもある。このため偽造紙幣のためにインドのような事態が発生することは考えづらい。

 ちなみに日本で紙幣として遣われているのは日本銀行券であり、日銀が発行している。日銀券の製造は独立行政法人国立印刷局が担当しているが、製造された紙幣は日銀がその費用を支払って引取る。

 お札の表面に赤い印章があるが、これは「日銀総裁」の印章で、「総裁之印」と篆書という字体で書かれている。日銀券というお札は安心して使えるように日銀総裁がその価値を保証している格好となっている。

 紙幣は簡単に偽造されないように印刷は精巧なものの、本来はただの紙にしか過ぎない。しかし、この紙に印刷された金額の価値を与え紙幣が円滑に使われるようにするための管理をしているのが日本の中央銀行である日本銀行といえる。

 銀行などの金融機関は個人や企業への支払いに必要な分を用意するため、日銀の当座預金から引出すことによって日銀券を日銀の窓口から受取り、これによって日銀券が世の中に送り出され、お札の発行となる。

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by nihonkokusai | 2016-11-10 09:51 | 国際情勢 | Comments(0)

クリントン対トランプ決戦、金融市場はどう動くのか

 注目の米大統領選挙の開票が始まった。午後にも勝敗が明らかになる。米大統領選挙はメイン州とネブラスカ州を除いて、一般投票で最も多く票を集めた候補者が、その州の選挙人をすべて獲得するという「勝者総取り」という形式となる。このため単純に支持率だけで勝敗が予測できるわけではない。しかし、ここにきてクリントン氏が再び優位に立っているようだが、結果を見るまではわからない。

 まもなく大統領選挙というタイミングで突然再燃したクリントン氏のメール問題は、FBIがクリントン氏の私用メール問題で訴追を求めない方針を示したことで一応の決着となった。これにはFBI内の反クリントン派が絡んでいるとか、早期解決には現オバマ政権の意向が働いたとの観測があったが、大統領選挙に絡んでのものであったことは確かではなかろうか。

 接戦となっていた大統領選挙は終盤になってクリントン氏に落ち着きそうだとの見方が強まった。ところがクリントン氏のメール問題が再燃したことで、トランプ氏の支持率とクリントン氏の支持率が拮抗した。金融市場では政治経験がなく政策の不透明感が強いトランプ氏の追い上げに警戒感を抱き、米国株式市場は下落し、外為市場ではドルも下落した。それに対して安全資産とされる米国債は買い進まれた。これが「リスクオフ」と呼ばれる動きであった。しかし、メール問題の早期解決により、米国市場では今度は「リスクオフ」の反動、つまり「リスクオン」の動きが起きていた。

 上記の動きからもわかるように金融市場は政治経験がなく過激な主張を繰り返すトランプ氏への警戒を強めている。クリントン氏に期待しているというよりもトランプ氏よりはまし、との認識であろう。

 このまま順当にクリントン氏が大統領選挙で勝利したとして、金融市場はいったんは好感しよう。しかしその状態は一時的なものに止まることも考えられる。たとえば2012年に安倍首相が登場してアベノミクスと呼ばれた現象のようなことが起きるようなことは考えづらい。市場の注目は政治よりもFRBの金融政策に移ってくるのではなかろうか。

 クリントン氏が大統領となるのは来年であり、今年12月のFOMCに何らかの圧力を掛けるようなことは考えづらい。むしろそういうタイミングでもあり、FRBは淡々と市場予想の盛り上がりを背景として、利上げを決定してくる可能性がある。ただし、その後に再利上げができるかどうかは経済物価動向次第とも言えるため予測は難しい。思った以上に物価がしっかりしており、再利上げの可能性はないとはいえない。また膨らんだFRBのバランスシートをどうするのかも次の課題となる。このあたりについては、ブレイナード氏も候補のひとりとされるクリントン政権下の財務長官の人事も影響してくるかもしれない。いずれにしてもクリントン氏となれば市場の地合が現在から大きく変わることは考えづらい。

 もしもトランプ氏がクリントン氏を破ったらどうなるのか。「もしトラ」とも呼ばれているようだが、そうなると市場でも先行き不透明感が強まり、いったんリスクオフの動きが再燃してくる可能性がある。つまり株が売られ、ドルが売られて円高が進むことに。それでもまったく新たな政策(善し悪しはさておき)に対する期待感が市場で出てくることも考えられる。強いアメリカを主張して国民の期待感を強ませることで、金融市場も期待を寄せる可能性はある。しかし、本当に米国経済はそれで良くなるのかどうかは不透明となり、FRBとしてもいったん利上げは先送りして様子を見ることも予想される。トランプ氏本人の政治家としての技量が未知数である以上は、トランプ大統領を支える閣僚人事の行方も注目されよう。またFRBのイエレン議長は再任しないとトランプ氏は主張していただけに、それが本当ならばいずれ次期FRB議長人事も注目材料となる。

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by nihonkokusai | 2016-11-09 09:50 | 国際情勢 | Comments(0)

多様なリスクと日米欧の金融政策の行方

 14日にフランスのニースでトラックが群衆に突っ込むという痛ましい事件が発生したが、これはテロであったようである。そして、日本時間の16日の未明にトルコでクーデターが発生した。当初は情報が錯綜したが、市民が立ち上がりテロは未然に防がれた。

 6月23日の英国の国民投票によりEUからの離脱が決まったことによる金融市場や世界経済への影響も懸念され、これを受けての日米欧の政府の対応とともに中央銀行の金融政策への影響も市場では意識された。

 7月14日のイングランド銀行のMPCでは、一部に利下げ期待があったが現状維持となった。発表された議事要旨によると、ほとんどの金融政策委員は新しい経済予測をまとめる8月の金融政策委員会で、新たな金融緩和策を議論することを支持するとなっていた。つまり、利下げは8月のMPCで検討されるということになる。だかといって必ずしも8月のMPCで利下げが決定されるということではない。ロンドンの株式市場の代表的な指数であるFTSE100指数はすでに昨年8月あたりまでの水準に切り返している。8月の英国利下げを織り込んでとの見方もできなくはないものの、むしろ米国の株式市場でダウ平均が過去最高値を更新していることなどが影響しているとみられる。

 今週21日のECBの政策理事会でも、英国EU離脱による金融市場への影響は一過性のものであったことや、懸念されていたイタリアの銀行問題についても市場を脅かすような状況に陥る懸念は後退しており、追加緩和は議論はされてもそれが決定されることはないと思われる。

 株価指数が連日の高値更新となっている米国に関しても、英国のEU離脱による金融経済への影響、フランスのテロやトルコのクーデター未遂事件による地政学的リスクも意識されたが、比較的その影響は限定的となっていた。米株式市場では、これらよりもソフトバンクによる英ARM買収のニュースやポケモンGOの人気に影響を受けるなど、地合は明らかに改善されている。

 ただし、世界経済そのものについては低迷が続くとの見方が強い。中国経済についてもバブルは崩壊し、クラッシュまでは起きていないが、低迷が続くことは確かであろう。アジア、欧州、中東、ロシアなどいろいろとリスク要因となりそうなものは潜在しているが、世界の経済や金融は以前に比べれば比較的安定しているように見える。

 日米欧の中銀のなかで真っ先に正常化に向けた踏み出した米国であるが、6月の利上げは見送ったとは言え、利上げに向けた姿勢には変化はないとみられる。英国のEU離脱懸念を理由に6月に利上げを見送ったことで7月についても様子を見て、9月のFOMCで利上げを検討するのではないかと予想される。

 そして日銀であるが、日銀の金融政策は建前上、為替や株を見て検討されるわけではない。しかし、それをかなり意識していることも確かであろう。ここにきて一時ドル円が99円台をつけた円高は調整されつつあり、株価は回復してきている。長期金利は比較的低位で安定しており、ここからさらにマイナス金利を引き下げても効果は限定的となろう。そうであれば無理をする必要はない。物価目標は遠い、だからといって追加緩和を決定すべき環境にあるわけではない。

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by nihonkokusai | 2016-07-20 09:58 | 国際情勢 | Comments(0)

リーマン・ショックと英国ショックの違い

 6月23日の英国の国民投票によりEUからの離脱が決まった。開票時間に市場が開いていた東京市場では、日経平均が1000円以上も下落し、ドル円は一時99円台まで下落するなど、ややパニック的な動きとなった。24日の欧米市場でもリスク回避の動きが強まり、ダウ平均は610ドル安となるなどしたが、肝心のロンドン株式市場はいったん急落したものの、英国の通貨ポンドも急落したことで輸出株などが買われて、こちらは下げ幅を縮小させた。ただし、27日のロンドン株式市場は続落となっていた。

 2008年9月15日にリーマン・ブラザーズが破綻し、大規模金融機関が破綻したことで金融市場は極度の不安に陥り、これはリーマン・ショックと呼ばれた。巨大金融機関の破綻がもたらす影響を懸念した米政府は金融機関を破綻させない方針に転じ、FRBは9月16日に米国の大手保険会社AIGに対して緊急融資を行うことを表明した。しかし、緊急経済安定化法案が9月29日に下院で否決され、これは金融市場に再び大きなショックを与えることとなり、29日のダウ平均株価は終値で777ドル安と史上最大の下げ幅を記録した。

 英国のEU離脱について、事前の世論調査ではかなり拮抗していた。ただし、2014年におけるスコットランド独立の有無を決める住民投票においても結果として反対派が勝利していたことで、これも踏まえ今回の国民投票も離脱は回避されるとの楽観的な見通しが多かった。このため、開票途中で離脱派の優位が伝えられたことで、市場はパニック的な様相を強めたのである。しかし、英国の国民投票結果により、金融市場に直接何かしらの影響があったわけではない。必死で作り上げたEUという組織の崩壊の兆しに歴史の変化を感じ、先行きの不透明感を強め、急激なリスク回避の動きが起きたものと思われる。

 これに対してリーマン・ブラザーズの破綻は金融市場において直接的な影響を与えることになった。大手金融機関の破綻が金融システムそのものの危機となったのである。例えば日本でもリーマン・ブラザーズ証券の破綻の際に、「正確な財務状況が確認されるまで既往契約に基づく決済を停止する」旨が発表され、約定済みの国債取引が一切履行されないという非常事態が発生したのである。

 今回の英国のEUからの離脱により、ロンドンに拠点を置く金融機関などに何らかの影響は出たとしても、金融システムを揺るがすほどのものになるとは思えない。また、英国国民投票で予想外の結果が出たことで、米国の大統領選挙でも予想外というか、なってほしくない候補が大統領になってしまうかも、との懸念も出たようだが、これも選挙結果をみるまでは当然わからない。

 英国のEU離脱により世界経済にも影響が出るのではとの懸念もある。伊勢志摩サミットの首脳宣言でも「成長に向けたさらなる深刻なリスク」と明記されていた。ところが肝心の英国の株式市場をみると懸念などより、24日はポンド安による輸出企業への恩恵が意識されて、下げ幅を大きく縮小させていたのである。むしろ急激な円高も加わっての日本経済への影響の方が大きいのではないかとも思われるぐらいであった。

 英国のEU離脱により、たとえば英国の信用が大きく低下し、英国債が売られるようなことも考えづらく、英国債は買い進まれていた。27日にS&Pは英国の最上位トリプルA格付けを2段階引き下げ、AAとしたがこれにより英国債への影響も限定的ではなかろうか。このあたり2010年のギリシャ・ショックとも異なるところである。金融システムへの直接的な打撃、もしくは国の信認の急低下といった事態は金融市場を直撃し、世界的な金融経済リスクを生じさせる。しかし、今回の英国のEU離脱については、その懸念が全くないわけではないものの、ショックの質が異なるように思われるのである。

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by nihonkokusai | 2016-06-28 10:09 | 国際情勢 | Comments(0)

英国のEU離脱問題(ブレグジット)とは何か

 英国でのEU離脱か残留かを問う国民投票を控え市場が揺れに揺れている。このEU離脱問題はブレグジット(Brexit)と呼ばれる。BrexitとはBritain(英国)とExit(退出する)を組み合わせた造語であるが、元はグレグジット(Grexit)と呼ばれたギリシャのユーロ圏離脱を意味する造語にあるのではなかろうか。こちらもGreece(ギリシャ)とExit(退出する)を組み合わせた造語であった。

 英国は1973年にヒース政権下でEEC加盟を決定したものの、1975年にEECからの離脱をめぐって国民投票を実施しており、この際にはEEC側が妥協案を提示したこともあり残留が決まった。1992年にジョージ・ソロスがイングランド銀行相手にポンド売りを仕掛け、結局、イングランド銀行は買い支えることができず、英国はERM(欧州為替相場メカニズム)を脱退した。このため2008年にリスボン条約を批准したことで英国は欧州連合(EU)には加盟しているが、ユーロ圏には属していない。

 今回はこの欧州連合(EU)からの離脱を巡っての国民投票が実施される。なぜ離脱を望む声が出ているのかといえば、国家統一を目指すような欧州連合(EU)に縛られたくないことや、EU法による過度な規制が中小企業の経営を圧迫しているとの議論があり、EU法上は難民受け入れを拒否できないなどとの理由が挙げられている。

 これに対して残留派はシティというグローバルな金融市場を抱えていることでのEUに属する利点があり、離脱すると安全保障上の脅威が及びかねず、他のEU加盟国との関係が悪化する懸念を指摘している。また、中長期的に英国経済にはマイナスとなる懸念なども強調している。

 この英国のEU離脱問題に対しては、5月の伊勢志摩サミットの首脳宣言でも「成長に向けたさらなる深刻なリスク」と明記されているなどとして懸念されていた。しかし、市場ではリスク要因ではあるが、EU離脱は避けられるであろうとの楽観的な見方が支配していた。ところが、ここにきて英国での世論調査で離脱派が残留派を上回るといった事態が出てきたことで、金融市場は急速にリスク回避姿勢を強めることになったのである。

 英国のEU離脱がすぐに世界経済に何かしらの影響を与えるものではないが、先行きの不透明感が増すことになる。英国の国内問題に止まらず、EUというシステムそのものが崩壊する懸念も生じよう。市場ではすでに英国の通貨であるポンドが売られ、安全資産として英国債は買い進まれ、英国の10年債利回りも過去最低を更新した。リスク回避の動きからドイツの10年債利回りが初めてマイナスとなった。

 23日の国民投票の結果をみるまでは金融市場は不安定な動きをすると予想される。またもし23日の国民投票で離脱派が過半数を占めた場合には金融市場がさらに動揺する懸念もある。その前に開かれるFOMCや日銀の決定会合では金融政策は現状維持とするのではないかと予想される。市場が不安定なところに、新たら不安定要因をここで投じることは避けたいところではなかろうか。ただし、イングランド銀行がすでに臨時の資金供給を実施するなどしており、23日の国民投票の結果次第ではECBなども対応を迫られる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2016-06-15 10:00 | 国際情勢 | Comments(0)
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