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カテゴリ:国際情勢( 136 )

IMFトップとなるラガルド氏

 IMFは6月28日に次の専務理事にフランスのラガルド経済財政産業相が選出されたと発表した。女性がIMFのトップに就任するのは初めてとなる。

 次期専務理事候補としてはラガルド氏のほか、メキシコの中央銀行のカルステンス総裁が立候補していたが、ラガルド氏が欧州や新興国の中国に加え、最大の出資国の米国、それに次ぐ日本の支持を得て選出された。

 IMFは現在、ギリシャの債務危機に直面するなどしており、ラガルド氏は就任直後からその手腕が早速問われることになるが、これまでフランスの経済財政産業相としての実績からもその調整能力は高く評価されているようである。

 ラガルド氏は弁護士出身で、農業・漁業相などを経て2007年6月に経済財政相(財務相に相当)に就任したが、G8では初めての女性財務相でもある。ちなみに、日本で過去、女性が大蔵大臣もしくは財務相に就任した例はない。

 ラガルド氏はアメリカで働いた経験もあるようで、テレビ番組に出演した際にも完璧な英語でのやり取りをしたと伝えられている。また、30日の日経新聞ではその人柄について、女性政治家として成功しながらエリート臭がなく飾らない性格と伝えており、フランス国民に親しまれているそうである。

 財務相として2007年から4年間務めていたということはサブプライム・ショック、リーマン・ショック、ギリシャ・ショックなどで混乱した欧州の財政金融問題での舵取りに対して重要な働きをしてきたことになる。これに対し金融市場関係者の間からも、ラガルド氏に対する批判めいたコメントはあまりみられず、調整能力を中心としてのその手腕に対する評価は高いようである。

 今後、ラガルド氏はIMFのトップとしてEUやECBと協議を行いながらギリシャなどの債務問題について難しいかじ取りを行わなければならないが、欧州の債務問題を抱えたIMFのトップとしては適任ではないかと思われる。

 日本に関しては、この人事による直接的な影響はないように思われる。しかし、いずれIMFが日本の債務問題に関与してくる可能性がないとは言えない。ただし、日本の場合にはその債務残高が大きすぎてIMFでも対処できないとの見方もある。とにかくラガルド氏をトップとするIMFが日本に関与する前に、自らの債務問題を解消すべきであると思うが、どうも流れはその反対方向に向かっているようにも感じるのである。


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by nihonkokusai | 2011-07-01 08:34 | 国際情勢 | Comments(0)

2012年のIMFと世銀の年次総会は48年ぶりの日本開催に

 国際通貨基金(IMF)と世界銀行の理事会は、2012年の合同年次総会を来年10月に東京で開催すると発表した。日本での開催は東京オリンピックが開かれた1964年以来、実に48年ぶりの開催となるそうである。

 年次総会は通常、2年続けてワシントンDCのIMF及び世界銀行の本部で開催され、3年に一度加盟国で開催される。前回2009年はトルコのイスタンブールで開催され、約1万3千人が参加した。2006年はシンガポール、2003年はドバイ、そして2000年プラハで開催された。

 来年10月の開催予定地は予定ではエジプトであったが、エジプトが今回の政情不安を理由に先送りする意向を表明したため、日本が年次総会を東京に誘致する方針を表明し、それが理事会で承認された。

 IMFのサイトによると、国際通貨基金(IMF)と世界銀行グループの年次総会には毎年、中央銀行総裁、財務・開発大臣、民間企業の幹部、学会の専門家などが集まり、世界の経済の見通し、貧困撲滅、経済発展、そして援助の有効性など世界的な課題について話し合われるそうである。

 経済金融に絡む世界の要人達が一同に会することで注目度も高く、日本政府が東日本大震災からの復興をアピールする絶好の場となりそうである。

 IMFはストロスカーン専務理事が5月19日に辞任したが、その後任には、フランスのクリスティーヌ・ラガルド経済・財政・産業相が有力視されている。IMFは6月30日までに専務理事を選任する方針を示している。

 これに対して、向かい入れる日本のトップは果たして誰になっているのであろうか。また、合同年次総会が開催される来年10月までに福島原発問題を含めて、震災復興に向けてどの程度、進展が進むのであろうか。

 今回の震災や福島の原発事故により、日本の動向に対しては世界が注目している。この来年の年次総会に向けてIMF加盟187か国も、日本の動向に注視してこよう。

 そのような時、首相が退陣するとかしないとか、党内の主導権争いなどをしている場合ではないはずである。来年になり、年次総会は日本で開催すべきでなかったなどと思われないためにも、この時期の無意味な権力抗争は早期に止めて、復興に向けて全力を傾けるべきときではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2011-06-08 08:20 | 国際情勢 | Comments(0)

専務理事人事で揺れるIMFとは何か

 性的暴行容疑で逮捕・訴追されている国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事が5月19日に辞任した。これにより次の専務理事が誰が就任するのか注目されている。

 候補者としては、フランスのクリスティーヌ・ラガルド経済・財政・産業相(法的問題が浮上?)、ECB総裁の有力候補でもあったアクセル・ウェーバー前ドイツ連銀総裁(キャメロン首相が難色?)、そして新興国からはトルコのケマル・デルビシュ元経済財務担当相、グリアOECD事務総長(メキシコ)などの名前が上がっている。

 これまでIMFのトップである専務理事は慣例的に欧州から選出されてきたが、今回、中国から専務理事は透明・公平に選出すべきとの意見が出るなど、ここにきて存在感の増している新興国からは全ての加盟国から候補者を選ぶべきとの意見も出ている。

 それでは何故、IMFの専務理事の人事が重要なのか。あらためてIMFとは何であるのかを確認してみたい。

 世界恐慌の苦い経験を繰り返さないために、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズとアメリカ財務次官補のハリー・ホワイトがそれぞれ草案を出した。ケインズ案は、世界の中央銀行的性格を持つ機関を設立し、加盟国が勘定を開き各国間の決済はその相互振替によって行ない、不足の場合は当座貸越で処理するという形を考えていた。これに対しホワイトは各国からの資金の拠出により基金が必要資金を貸し付けるという案を出したのである。

 この両案についての討議がくり返されたが、すでに世界経済はアメリカに大きく依存するようになっており、いずれの国も戦後の復興についてはアメリカの協力にあおがざるを得なかったことなどからアメリカ案に近いところで妥協された。

 こうしてホワイト案を骨子として修正を受けて出来上ったのが、国際通貨基金協定と国際復興開発銀行協定で、総称としてブレトン・ウッズ協定またはIMF協定と呼ばれた。

 1947年にIMF協定が発効され、ワシントンに為替相場と通貨の安定を目的とした国際通貨基金(IMF)が国際連合の専門機関として設立された。

 IMFと同様にブレトン・ウッズ協定によって、ワシントンに本拠を置く国際復興開発銀行(世界銀行)も設立された。1946年に業務が開始され、1947年からは国連の専門機関となった。

 IMFの執行機関は理事会であり、24名の理事により構成されている。理事会の議長と国際通貨基金の代表を務めるのが専務理事(managing director)である。そしてIMFの専務理事には欧州出身者、世界銀行の総裁には米国出身者が選出されるのが暗黙の了解になっている。現在の世銀総裁は元アメリカ合衆国国務副長官であったロバート・ゼーリック氏である。

 IMFの目的は協定第1条に規定されているが、加盟国が通貨に関して協力し、為替相場の安定を促進することにより国際金融秩序を維持し、また為替制限を撤廃することによって世界貿易の拡大をはかり、もって経済成長を促進させるということである。

 IMFは、国際収支危機を未然に防ぐための加盟国のマクロ・為替政策に関するサーベイランス(監視)、加盟国の国際収支調整及び経済構造調整のための融資、財政金融制度の整備や統計作成のための技術支援等を行なっている。

 これまでのIMFの活動としては1997年のアジア危機において、韓国政府がIMFに200億ドルの緊急支援を要請し、これにより韓国はIMFの管理下に入った。IMFはこの際に史上最大規模となる210億ドルの融資の実施を決定した。

 また、最近では欧州での信用不安に対してIMFは欧州連合とともにギリシャやアイルランド、ポルトガルの救済に取り組んでおり、今回の専務理事人事については、かなり神経質にならざるを得ない面もある。欧州諸国としてはこれまでの慣習通りに、欧州から専務理事を出したいところであろう。


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by nihonkokusai | 2011-05-23 08:22 | 国際情勢 | Comments(0)

「通貨安競争にブレーキがかかるのか」

22日から韓国の慶州で開く20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、通貨安競争回避に向けてフレームワークと呼ばれる政策協調の枠組みを検討すると伝えられている。このG20を前にして早速動きが出てきている。

ガイトナー米財務長官は18日にカリフォルニア州の講演で、米国は強いドルへの信認を維持するとし、通貨切り下げ競争に加わることはないと表明した。米国では11月のFOMCでの量的緩和策の拡大(QE2)観測が強まり、FRB関係者の講演内容などが注目されていたが、久しぶりに財務長官の発言が市場にインパクトを与えた。FRBの追加緩和もドル安政策の一貫とも捉えられることで、ガイトナー発言はG20を控えて、いまさらながらではあるが、米国が通貨安政策へ傾倒していないという姿勢を示したものと思われる。

そして、昨日、中国人民銀行は2007年12月以来となる利上げを実施した。8月の中国CPIが前年同月比で3.5%の上昇となるなどインフレ懸念をその理由としている。しかし、18日の講演でガイトナー財務長官は、中国の人民元は大幅に過小評価されているとして一段の切り上げ努力を求めていたが、G20を前にして利上げを行うことで米国からの人民元問題に対処したようにも取れる。

そしてユーロについても通貨安修正のような動きが見えた。ドイツ連銀のウェーバー総裁はECBによる国債購入は効果がないとして恒久的停止に向け段階的に縮小をと措置廃止を公然と要求したのである。こに対しトリシェECB総裁は「それは理事会の多数派の意見ではない」として突っぱねたそうである(10月20日付日経新聞)。

タカ派中のタカ派ともみられているウェーバー総裁は8月に、ECBの緊急融資措置を解除する時期を決定するのは、年末越えの流動性確保で市中銀行を支援した後の来年1~3月にすべきと発言した。これは金融緩和策の長期化を示唆したと受け止められ、これによりユーロ安が進行した経緯があった。あのウェーバー総裁までもユーロ安政策に加担かともみられていたが、どうやらここにきて本来のタカ派の姿勢に軌道修正することで、通貨安政策への避難を逸らしてきた可能性がある。ちなみにウェーバー総裁は次期ECB総裁の有力候補である。

こういった一連の動きの中、白川日銀総裁は朝日新聞の単独インタビューで景気が悪化した場合は基金増額は有力な選択肢と述べ、追加の量的緩和に踏み切る考えを示唆した。G20を前にして各国がそれとなく通貨安政策回避の動きを示しているにもかかわらず、円高回避を意識しての追加緩和への姿勢を見せてしまったことは、少しタイミングが悪かったように思われる。ただし、各国の通貨安政策により最も被害を被ったのが日本でもありそれを考えれば致し方ないことかもしれない。また、昨日にFRBの複数の当局者も追加緩和、つまりQE2が近いことを示唆するなどしており、白川総裁だけを責めるわけにはいかないか。

いずれにせよ、今回のG20の動向には今後の為替の動き予測する意味でも、一段の注意が必要となりそうである。
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by nihonkokusai | 2010-10-20 11:14 | 国際情勢 | Comments(0)

「現代のバーチャル通貨戦争」

近隣窮乏化政策とは、自国の為替レートを切下げることにより、輸出を増やすことにより景気回復を図ろうとするもの。1930年代の世界恐慌期において、世界の列強は意図的に為替相場を切り下げることによる近隣窮乏化政策を行なったものの、所詮はゼロ・サム・ゲームであることにより、他国の報復を招き第2次世界大戦を引き起こす契機となったとも言われている。

リーマン・ショックという大きな金融経済の打撃を受けたものの、欧米諸国は金融緩和とともに大規模な財政出動によって大恐慌の再来は免れたものの、景気回復はままならず、欧米では意図したかどうかはさておき、現代の近隣窮乏化政策を取り始めているとも言える。

サブプライム問題やリーマンショックの本拠地であった米国のドルが売られたものの、実はその打撃を一番受けたのが欧州であったことに加え、ギリシャの財政問題などにより今度はユーロ安が進行し、ドイツなどはこのユーロ安の恩恵を大きく蒙った。

しかし、これに対して米国はFRBを中心に景気悪化を意識する発言を繰り返し、さらにデフレを懸念するようなレポートなどを出したり、結果としては量的緩和拡大ではないものの追加緩和策としてアナウンスメント効果を意識した政策を行ったことで、結果としてドルを下落するよう仕掛けてきたようにも思える。

これに対して、実際にはリーマン・ショックによる経済への打撃を最も被ったはずの日本では、特に為替に対しての戦略は取らず、日銀も景気に対しては回復基調との認識を維持した上で、金融政策については現状維持とし、その結果として日米金利差の縮小から、円高が進行するといった構図になっている。

この円高に対し、政府・日銀はやっと対策に乗り出そうとしている。しかし、その手段は財政出動の伴なう経済対策や追加の金融緩和、さらに為替介入などがピックアップされている。

しかし、欧米では特に実弾での対策を仕掛けているのではなく、市場を意識しての心理戦を仕掛けているように思われる。それならば、日本でも無理に実弾を使わずに、心理戦で対抗手段を講じたらどうであろう。

対ドルについては米国経済以上に日本経済が悲観的であるようにアピールし、先行きの景気見通しについても市場参加者には悲観的なイメージを植えつける。ただし、マスコミなどによる景気回復のための実弾要求に対しては、財政悪化を理由に身動きがとれないことをことさらアピールすることで、財政悪化による円安をも誘導させる。

日銀はバーチャルな金融緩和策には過去に実例がある。つまり再び量的緩和政策を導入し、リザーブ・ターゲットを行ない段階的に日銀の当座預金残高を引き上げることで、追加緩和策をアピールする。うまくすれば日銀総裁の写真がタイムの表紙を飾れる。

量的緩和による経済実態への効果の有無などさておき、それで市場が円安で反応するのならば間接的には効果はありうる。そして国債買入増額も求められようが、それには慎重姿勢をとりながらも、将来いずれかのタイミングで財政悪化により日銀への国債買入増額が求められることになるとして、今のうちに日銀券ルールという社内ルールも取り外した上で、増額を実施しておくことも。ただし、これは将来のインフレを招き兼ねないとしての警告も忘れないように。円安にするならば何でも使えるものは使う必要がある。

為替介入については辞めたほうが良い。単独介入では効果はないことに加え、ヘッジファンドの標的にされる懸念もある。ただし、レートチェックなどは適時行ない、いつでも出撃てきる体制にあることを市場に浸透させておくことも重要である。

以上はあくまで私の妄想の範囲内のものであり、実行しろと提言するものではもちろんない。しかし、市場心理を意識して政策を取ることは今後も重要であり、そのあたりFRBなどはうまくやっているように思えることも確かである。
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by nihonkokusai | 2010-08-18 12:30 | 国際情勢 | Comments(0)

「為替介入の仕組」

ここにきての円高対応策として、為替介入の可能性が指摘されている。8月12日の東京市場ではレートチェックも実施されたとみられ、介入の可能性も否定できない。現実には欧米でも自国通貨安を意識していることで、協調介入は考えにくい面もある。今回はこの為替介入とはそもそも何であるのかを再確認してみたい。

外国為替市場における介入は「外国為替平衡操作」と言われるが、この言葉にはあまり馴染みがない。「外国為替平衡操作」とは、中央銀行や財務省等の通貨当局が、外国為替相場に影響を与えることを目的に、外国為替市場で通貨間の売買を行うことで、日本においては円相場の安定を実現するために、「財務大臣の権限」において実施されるとある。要するに介入である。日銀は、財務大臣の代理人として、財務大臣の指示に基づいて為替介入の実務を遂行している。日銀による為替介入という表現が良く使われるが、指示は財務大臣から出されている。

政府はこの為替介入資金を調達するために、外国為替資金証券(FB)を発行している。この外国為替資金証券は無制限な発行を防ぐため、毎年度の予算で発行残高の上限が規定されている。例えば、2003年度発行限度額は当初予算総則で決められた79兆円から100兆円に拡大した。更に2004年度予算案では発行限度額を140兆円に増額している。また、当時の臨時措置として、政府と日本銀行は、外国為替市場での円売り介入に使用する円資金が不足する場合に、政府が外貨準備で保有している米国債券を日本銀行に売却して必要とする円資金を調達することができる契約を結んだ。

参考までにこの外貨準備とは、通貨当局が為替介入に使用する資金であるほか、通貨危機などによって、他国に対して外貨建債務の返済などが困難になった場合に使用する準備資産である。その内訳は、大きく分けて、外貨証券、外貨預金、IMFリザーブポジション、SDR、金となっている。 財務省(外国為替資金特別会計)と日本銀行が外貨準備を保有しているが、日銀は、国際金融協力の実施などに備えて、外貨準備のうち、金と外貨資産の一部を保有しているにすぎない(金額で数兆円?)。
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by nihonkokusai | 2010-08-17 11:04 | 国際情勢 | Comments(1)

「ECBによる国債買入策に対する不胎化政策」

 9日に欧州中央銀行(ECB)は国債の流通市場に介入することを発表し、5月10日からドイツやフランス、イタリアの中銀などが、国債買入を実施した。1999年のユーロ発足以来、欧州の中央銀行が国債の買入を実施するのは初めてとなる。

 この国債買入は、金融政策の一環としての資金供給手段としている日銀の国債買入とは目的が異なり、国債市場の安定化そのものが目的となっており、極めて異例であった。トリシェ総裁は債券購入については圧倒的多数が支持したとして、反対者がいたことを認めた。ECB理事会の票決の内容を公表すること自体も極めて異例のことであった。

 欧州中央銀行(ECB)は今回のユーロ圏での国債購入額が165億ユーロになったことを明らかにした。市場ではもう少し大きな規模の国債を買入たのではないかと予想していたようだが、165億ユーロは日本円で約1.8兆円となり、日銀による毎月の国債買入規模と同規模となる。

 今回のECBによる国債の買入目的は、日銀のように市場への資金供給が目的ではなく、あくまで市場機能の正常化が目的であった。そこで、金融政策への影響を避けるために、国債買入で放出した資金を回収する手段を講じる。

 5月18日に同額の資金を吸収するため、1週間物定期預金の入札を実施する。これはいわば国債買入策に対する不胎化政策とも言える。1週間物定期預金の金利は最高で1%、ターム物預金はユーロシステム内のオペの担保として使用できる。

 ECBは国債買入とともに同額規模の資金吸収により、インフレ懸念が台頭することを押さえ込もうとしたものとみられる。これには筋金入りのインフレファイターと言われるウェーバードイツ連銀の総裁の意向などが強く働いた可能性もありそうである。

 日欧米の中央銀行による国債買入の目的はそれぞれ異なる。日銀による国債買入は資金供給手段のひとつである。イングランド銀行の国債買入の目的は、中期的なインフレ率目標を達成するためにマネーと信用の供給量の拡大を通じて名目支出を拡大させることとしている。FRBについては、国債買入は信用緩和政策の一環と位置付け、モーゲージ金利の低位安定を期待したエージェンシーMBSの購入等を補完することが目的としている(2009年5月の水野前日銀審議委員の講演より一部引用)。
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by nihonkokusai | 2010-05-18 14:44 | 国際情勢 | Comments(0)

「欧州発の危機対応」

 ギリシャなど欧米諸国の財政不安にともなう市場の動揺に対し、いろいろな対応策が講じられる。

 欧州連合(EU)は10日に過去最大規模となる最大7500億ユーロ規模のユーロ圏支援基金と、証券買い取りプログラムを公表した。ユーロ圏向け融資の枠組みでは、ユーロ圏諸国政府が計4400億ユーロの資金を提供可能とし、EU予算からさらに600億ユーロを拠出、これに加えて、国際通貨基金(IMF)が最大2500億ユーロを拠出するとか(ブルームバーグ)」

 また、レーン欧州委員は、欧州中央銀行(ECB)が国債の流通市場に介入することを決定したと伝えた(ロイター)。これは政府や民間企業発行の債券をECBが購入する市場介入措置とみられ、ギリシャやポルトガルなどの国債も対象になると予想される。

 そして、欧州の米ドル短期金融市場における緊張が再び高まっている状況を受け、カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度、スイス銀行は、時限的な米ドル・スワップ取極の再締結を公表するとし、日銀も同様の措置の導入に向けて速やかに検討を行うこととし、11時から臨時の金融政策決定会合が開催された。臨時の決定会合では、政策金利は全員一致で現状維持としたが、米FRBと米ドルスワップ協定の再締結、そしてドル資金供給オペの再開を決定した。白川総裁はBIS会議でスイスに出張中のため、山口副総裁が14時から記者会見する。

 また、本日日銀は2営業日連続で2兆円の即日資金供給オペを通知した。結局、落札金額は5945億円と今回も札割れとなったが、日銀も欧州発の信用不安の連鎖を断ち切るべく、早め早めに対応している姿勢を示した。

 ギリシャの財政懸念がポルトガルやスペインにも波及に、外為市場ではユーロが大きく売られ、株式市場も下落した。ギリシャやポルトガル、スペインの国債の利回りも上昇し、ロンドンでの銀行間での取引金利、つまりLIBORの3か月物ドル金利や3か月物のユーロ金利が上昇するなどそれぞれの国の国債を抱える銀行への影響なども、懸念されていた。

 これら一連の対応策が発表され、10日の外為市場ではユーロ円が一時120円台を回復し、東京株式市場も米株は下げていたものの、寄り付きから下げ渋りの展開となった。

 とりあえずセーフティーネットが構築され、これにより多少なり不安心理が後退する可能性がある。実際にはギリシャの財政再建の行方が焦点となるが、国民が納得した財政再建が可能となるのかどうか。市場の動揺を完全に押さえ込むには時間もかかりそうである。
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by nihonkokusai | 2010-05-10 13:12 | 国際情勢 | Comments(0)

「2003年との比較」

 2003年5月に預金保険法102条に基づき金融機関への特別融資という形式で「りそな銀行」に約2兆円を資本注入することとなった。りそな銀行に対する資本注入によって、政府は大手銀行は潰さないといった意識が市場で強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607.88円がバブル崩壊後の安値に、その後上昇基調を強めた。

 ダウ平均は2007年10月11日に14279.96ドルの高値を付けてから、サププライム問題の深刻化や2008年秋のリーマン・ショックを受けて、2009年3月9日の取引時間中に6440.08ドルの直近安値を付けるまで54.9%下落した。しかし、その後、各国中銀による積極的な政策により金融システム不安は徐々に落ち着きを見せ、また米国や中国などを中心に政府も積極的な財政政策を行なってきたことから、景気の減速ペースも緩やかなものとなってきた。トピックス的な出来事としては、6月1日のGMの破綻があった。

 2003年の日本では、りそな銀行救済決定前に日経平均が底打ちし、2009年ではGMの破綻前にダウ平均が底打ちしていた点など、2003年の東京株式市場の回復と2009年の米国での株式市場の回復には似通った動きとなっている。

 2003年の日本経済は、米国や中国などの経済成長などを背景に徐々に回復し始めた。11月には足利銀行の経営破綻が明るみにでて、やはり金融再生プログラムに手順に従って国有化されたが、株式市場はこれらは悪材料としては捉えず、むしろ不透明感が払拭されてきたことなどからこれ以上の金融危機は回避されるとの見方が強まり、次第に日本における金融不安は解消に向かっていった。

 2009年も今後、欧米での金融機関の経営破綻が出てこないとも限らないが、2003年の日本における足利銀行の経営破綻時のように、これ以上の金融危機は回避されるとの見方が強まる可能性の方が高い。

 2003年以降、一連の資本注入ともに景気回復も手伝って、銀行の不良債権処理は加速し、2004年の三菱UFJフィナンシャルグループの誕生により不良債権問題は終結したといわれる。2005年3月期に大手銀行の不良債権比率は2002年3月期比で半減し、資本注入を受けた金融機関は相次いで公的資金を返済したのである。

 欧米の金融機関における不良資産問題も、今後徐々に解決に向かい、多少期間も必要と思われるが、いずれ今回の金融危機が収束してくるものと思われる。その時期等の見極めには2003年の日本の状況がひとつの参考となるのではなかろうか。
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by nihonkokusai | 2009-07-29 10:49 | 国際情勢 | Comments(0)

「金融の歴史」

現在の金融システムは突如として構築されたわけではなく、かなり時間をかけて形作られてきている。なかでも金融システムの中にあり、中心的な役割を担っている「お金」は、紀元前1000年以上も前から使われている。

「お金」はある物と交換手段、物の価値尺度、価値の保存という役割そのものは太古から変わってはいないものの、現在では電子マネーが普及するなど存在自体はかなり変化している。さらにお金を融通し合う「金融」というシステムは、歴史とともに進化してきており、その進化の過程で「恐慌」が何度も繰り返されてきた。

人は歴史に学ぶ必要はあるものの、似たような恐慌は繰り返されており、それを防ぐことはできないと言うのが過去の歴史からわかる。金融そのものの進化により、金融を取り巻く環境に変化があることや、恐慌を招く要因ともなる投機の動きなどはそれが起きている際にはブレーキをかけることがたいへん難しいということも防げない理由かと思う。

その恐慌による危機をどう乗り切ったら良いのかは、過去の歴史に学ぶことは重要である。2007年からの金融危機に際しても、日本のバブル崩壊後の状況などを各国の政策担当者はかなり研究を進めてきました。それでも的確な処方箋を見出し、それを実行に移すことは並々ならぬ努力も必要とされる。

金融は私たちにとり大変身近なものであり、金融危機により経済への影響も大きく、私たちの生活に大きく関わっているにも関わらず、金融そのものの知識はまだそれほど広まっていないことも確かであり、そのために金融の歴史を探るということも必要ではないかと思う。
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by nihonkokusai | 2009-02-09 09:53 | 国際情勢 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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