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カテゴリ:国際情勢( 121 )

北朝鮮の地政学的リスクは後退したのか

4月25日に北朝鮮は朝鮮人民軍創建85年の節目を迎えた。このような節目に北朝鮮はミサイルを発射したり、核実験を行ってきたことで、緊張が高まっていた。特に今回は米国のトランプ大統領が、この北朝鮮に対して強く非難しており、米原子力空母カール・ヴィンソンを中心とした空母打撃部隊を朝鮮半島に向かわせている。23日にはカール・ヴィンソン空母打撃群と海上自衛隊がフィリピン海で日米共同巡航訓練を開始した。また、米海軍の巡航ミサイル原潜ミシガン(トマホーク巡航ミサイル搭載)も韓国に寄港した。

25日には核問題を巡る6か国協議の日米韓首席代表が都内で会合を開いたが、すでにトランプ大統領は24日に中国の習近平国家主席との電話協議を行い、トランプ大統領は安倍首相とも電話協議を行った。

北朝鮮は核実験を強行する姿勢を崩しておらず、もしこのタイミングで核実験やミサイルを発射するなどした場合に、状況次第では一触即発の事態も危惧される。ただし、いまのところは新たな朝鮮戦争を引き起こすようなことはないとみられている(今回は大規模攻撃訓練に止めた模様)。過去にも米国は北朝鮮への攻撃を計画したことがあったようだが、特に北朝鮮と韓国との陸上戦となれば多くの犠牲者が出ることが想定されるため、さすがにそこまで踏み込むことは現状は考えづらい。しかし、何かのきっかけで戦闘が始まるリスクは存在する。カール・ヴィンソンやミシガンの存在も抑止効果が目的ではあろうが、何かことが起きれば軍事行動に移れることになる。

北朝鮮の問題は北朝鮮そのものが厚いペールで覆われて動きが見づらく、米国側もカール・ヴィンソンなどの軍事行動が伴っていることで秘密のベールに覆われ、実際に何を意図して何をしようとしているのか見えない部分も多い。しかし、米国サイドは本格的な交戦を考慮しているというよりも、北朝鮮に自制を促すよう圧力を掛けているとみられる。

北朝鮮に対しては関係の深い中国やロシアに間を立ってもらうことも意識され、それが米中電話協議となったが、27日からは日ロ首脳会談がロシアで開催される。つまりこれに向けて安倍首相はロシアに向かう予定であり、今のところキャンセルされている様子もないため、これをみても日本政府は北朝鮮を巡って情勢がここ数日で大きく変化するとは見ていないのではなかろうか。

それでも北朝鮮を巡る地政学的リスクは当面、後退することはないであろう。ひとまずフランス大統領選挙では最悪の事態は回避され、欧米市場でもリスクオフの反動が起きている。しかし、アジアでは北朝鮮と米軍のにらみ合いが今後も続くとみられ、見えないリスクを意識せざるを得ない。



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by nihonkokusai | 2017-04-26 09:50 | 国際情勢 | Comments(0)

米国のトランプ大統領によるドルが強すぎ発言の真意とは?

米国のトランプ大統領は12日、ホワイトハウスでのウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで、「ドルが強くなり過ぎている。これは人々が私を信頼しているためで、私のせいでもある。だが、結果的には打撃となる」と指摘した。

トランプ大統領はまた中国は「為替操作国ではない」と言明し、今週財務省が公表する主要貿易相手国の為替報告書で、中国を為替操作国には認定しないと明らかにした。トランプ氏は選挙期間中、就任初日に中国を為替操作国に認定すると主張しており、この見解を180度転換した。これは北朝鮮への中国の関与を期待してのものともの見方もある。

トランプ大統領はFRBが低金利を維持するのが好ましいとの見解も示した。さらにイエレン議長については、尊敬していると指摘し、現行の任期を迎える2018年で「おしまいになる訳ではない」とし、続投に含みを残した。こちらも以前にトランプ大統領は、イエレン議長の再任はないと言い切っていただけに方針が変わったようである。

今回の金融に絡んだトランプ大統領の発言については、発言やツイートの内容が良く変わるトランプ大統領の発言とはいえ、注意する必要がある。

シリア空軍基地へのミサイル攻撃を巡り、トランプ米政権内の内紛が表面化している。トランプ氏の最側近だったバノン大統領上級顧問・首席戦略官がシリア攻撃に反対する一方、トランプ氏の娘婿クシュナー大統領上級顧問が実施を求めたとされる。トランプ氏の従来の過激路線を推進するバノン氏と、穏健路線を重視するクシュナー氏やコーン国家経済会議(NEC)委員長の対立が激化しているなか、シリア攻撃は「穏健派」の主張を取り入れたものとなった。トランプ大統領はバノン大統領上級顧問・首席戦略官を更迭するのではないかとの観測も出ている。

今回のトランプ大統領の発言も、このトランプ米政権内の過激派から穏健派への移行が影響している可能性がある。中国を為替操作国には認定しないとの発言などがそれを示している(バノン氏はいずれ中国との戦争は避けられないと主張している)。そして減税などのトランプ氏の掲げた政策が進まないなか、経済政策の必要性から、ドル高の是正や低金利の維持に向けた発言をトランプ大統領が行ってきた可能性がある。雇用の回復などに対してはイエレン議長が主導しているFRBの金融政策による効果も大きいとの認識もあるのか、イエレン議長の再任についても含みを持たせる発言を行った。こちらも穏健派の主張を取り入れた可能性がある。

FRBの正常化路線に関する発言はなかったようではあるが、正常化に向けたFRBの利上げはある程度容認しているものの、景気に悪影響を与えかねない程度までの利上げは望んではいないということであろうか。このあたりの舵取りはイエレン議長に任せても大丈夫という認識か。

ちなみにドルが買われていたのは、市場参加者がトランプ大統領を信任しているためとの見方にはかなり違和感がある(本人も半ばジョークのつもりで言ったのかもしれないが)。まったくないとは言えないものの、ドル高の背景としてはFRBが正常化を進める程度に雇用を中心に景気が回復し、物価もFRBの想定近くに上昇してきていることによる影響が大きい。FRBの利上げもあってドルが買われている側面がある。もちろんトランプ大統領の経済政策への期待やそれによる物価上昇も意識されたかもしれないが、それはここにきてかなり裏切られた格好となっている。


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by nihonkokusai | 2017-04-14 10:02 | 国際情勢 | Comments(0)

中東・アジアでの地政学的リスクの高まりに対して、市場の反応が鈍い理由

米国防総省は6日夜(日本時間7日午前)、米軍が巡航ミサイル「トマホーク」59発をシリアの同国軍施設に発射し、対シリア攻撃を開始したと発表した。

このシリア空軍基地へのミサイル攻撃を巡り、トランプ米政権内の内紛も表面化している。トランプ氏の最側近だったバノン大統領上級顧問・首席戦略官がシリア攻撃に反対する一方、トランプ氏の娘婿クシュナー大統領上級顧問が実施を求めたとされる。

トランプ氏の従来の過激路線を推進するバノン氏と、穏健路線を重視するクシュナー氏やコーン国家経済会議(NEC)委員長の対立が激化しているなか、今回のシリア攻撃は「穏健派」の主張を取り入れたものという、なんとも皮肉な結果となっている。

そしてティラーソン米国務長官は9日放送のABCテレビの番組で、シリアへのミサイル攻撃は北朝鮮への警告の意味が込められていたと強調し「他国への脅威となるなら、対抗措置を取るだろう」と述べた(日経新聞電子版)。

ただし、ティラーソン米国務長官は米国には北朝鮮の「レジーム・チェンジ(体制転換)」には関心がないとも述べている。

米海軍当局者は8日に原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群が、シンガポールから朝鮮半島に向け、同日出航したと明らかにした。空母打撃群は1隻の空母とそれを護衛する3隻のイージス艦、そして攻撃型原潜によって構成される。

7日から8日にかけての市場の反応を見る限り、米軍によるシリア攻撃による影響は限定的と言える。7日に発表された3月の米雇用統計で非農業雇用者数が前月比9.8万人増となり、市場予想を大幅に下回ったことに影響を受けて、ドルやダウ平均が下落した面があった。しかし、非農業雇用者数については悪天候が一時的に影響したとの見方があり、3月の失業率は4.5%と2007年5月以来、約10年ぶりの水準に低下したていたことで、さほど悪材料とはならず、7日のダウ平均は小幅安での引けとなった。

そもそもこの雇用統計が注目されている理由は、米国の景気動向をみる指標であるとともに、FRBの金融政策に大きく影響するためである。そのFRBの金融政策を巡っては、ニューヨーク連銀のダドリー総裁が興味深い発言をしていた。3月31日にダドリー総裁は、バランスシート縮小を開始すれば利上げを休止する可能性があるとしたが、ダドリー総裁は7日、この休止というのは既に非常に短い意味があり、短い休止を強調したのである。かなり苦しい言い訳にも聞こえるが、要するにバランスシート縮小開始は、利上げをそこで止めるわけではないということであった。このダドリー総裁の修正発言もあり、7日の米国債はリスク回避で買われるのではなく、むしろ売られていたのである。

7日のドイツや英国の国債は、リスク回避の動きもあって買われていたのに対し、米国債はリスク回避よりもダドリー総裁発言に大きく影響を受けていた。現状、市場の感応度が地政学的リスクよりも、FRBの金融政策の方に対しての方が大きいことが伺える。

米軍によるシリア攻撃に関してはロシアの反応が最大の注目点となっていた。ロシア政府は、米国によるシリア空軍基地へのミサイル攻撃について厳しく批判したものの、ティラーソン米国務長官のロシア訪問は予定通り進める見通しとなっている。ロシアが強攻策に出るようなことはなさそうであり、その意味で地政学的リスクがさらに高まる様子はいまのところみられない。このあたりも市場がさほど神経質とはなっていない要因とみられる。

リスクとしては北朝鮮の方がむしろ高い可能性はある。米軍による第1空母打撃群の朝鮮半島の派遣が、北朝鮮への抑止効果となるのか、反対に北朝鮮がさらに過激な行動に出るのか。このあたりは米中首脳会談の最中にシリア攻撃を行っていたことも影響してこよう。

つまりこちらは中国の出方がポイントとなる。これについても、米中首脳会談で何らかの協議が行われた可能性は当然ありうる。突発的なことが発生したとしても、中国は静観している可能性もある。ただし、その突発的なことが起きた際には、地理的にも近い東京市場には大きな影響が出ることが想定される。中朝国境付近に中国軍が15万人展開を始めたという情報がツイッターなどで飛び交っているようだが、北朝鮮で何らかの動きが起きた際にはリスク回避の動きから、一時的にせよ円高進行、株式市場の急落に加え、再び国債が買われることで長期金利が低下することもありうるか。


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by nihonkokusai | 2017-04-11 09:01 | 国際情勢 | Comments(0)

中東・アジアでの地政学的リスクの高まりに対して、市場の反応が鈍い理由

米国防総省は6日夜(日本時間7日午前)、米軍が巡航ミサイル「トマホーク」59発をシリアの同国軍施設に発射し、対シリア攻撃を開始したと発表した。

このシリア空軍基地へのミサイル攻撃を巡り、トランプ米政権内の内紛も表面化している。トランプ氏の最側近だったバノン大統領上級顧問・首席戦略官がシリア攻撃に反対する一方、トランプ氏の娘婿クシュナー大統領上級顧問が実施を求めたとされる。

トランプ氏の従来の過激路線を推進するバノン氏と、穏健路線を重視するクシュナー氏やコーン国家経済会議(NEC)委員長の対立が激化しているなか、今回のシリア攻撃は「穏健派」の主張を取り入れたものという、なんとも皮肉な結果となっている。

そしてティラーソン米国務長官は9日放送のABCテレビの番組で、シリアへのミサイル攻撃は北朝鮮への警告の意味が込められていたと強調し「他国への脅威となるなら、対抗措置を取るだろう」と述べた(日経新聞電子版)。

ただし、ティラーソン米国務長官は米国には北朝鮮の「レジーム・チェンジ(体制転換)」には関心がないとも述べている。

米海軍当局者は8日に原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群が、シンガポールから朝鮮半島に向け、同日出航したと明らかにした。空母打撃群は1隻の空母とそれを護衛する3隻のイージス艦、そして攻撃型原潜によって構成される。

7日から8日にかけての市場の反応を見る限り、米軍によるシリア攻撃による影響は限定的と言える。7日に発表された3月の米雇用統計で非農業雇用者数が前月比9.8万人増となり、市場予想を大幅に下回ったことに影響を受けて、ドルやダウ平均が下落した面があった。しかし、非農業雇用者数については悪天候が一時的に影響したとの見方があり、3月の失業率は4.5%と2007年5月以来、約10年ぶりの水準に低下したていたことで、さほど悪材料とはならず、7日のダウ平均は小幅安での引けとなった。

そもそもこの雇用統計が注目されている理由は、米国の景気動向をみる指標であるとともに、FRBの金融政策に大きく影響するためである。そのFRBの金融政策を巡っては、ニューヨーク連銀のダドリー総裁が興味深い発言をしていた。3月31日にダドリー総裁は、バランスシート縮小を開始すれば利上げを休止する可能性があるとしたが、ダドリー総裁は7日、この休止というのは既に非常に短い意味があり、短い休止を強調したのである。かなり苦しい言い訳にも聞こえるが、要するにバランスシート縮小開始は、利上げをそこで止めるわけではないということであった。このダドリー総裁の修正発言もあり、7日の米国債はリスク回避で買われるのではなく、むしろ売られていたのである。

7日のドイツや英国の国債は、リスク回避の動きもあって買われていたのに対し、米国債はリスク回避よりもダドリー総裁発言に大きく影響を受けていた。現状、市場の感応度が地政学的リスクよりも、FRBの金融政策の方に対しての方が大きいことが伺える。

米軍によるシリア攻撃に関してはロシアの反応が最大の注目点となっていた。ロシア政府は、米国によるシリア空軍基地へのミサイル攻撃について厳しく批判したものの、ティラーソン米国務長官のロシア訪問は予定通り進める見通しとなっている。ロシアが強攻策に出るようなことはなさそうであり、その意味で地政学的リスクがさらに高まる様子はいまのところみられない。このあたりも市場がさほど神経質とはなっていない要因とみられる。

リスクとしては北朝鮮の方がむしろ高い可能性はある。米軍による第1空母打撃群の朝鮮半島の派遣が、北朝鮮への抑止効果となるのか、反対に北朝鮮がさらに過激な行動に出るのか。このあたりは米中首脳会談の最中にシリア攻撃を行っていたことも影響してこよう。

つまりこちらは中国の出方がポイントとなる。これについても、米中首脳会談で何らかの協議が行われた可能性は当然ありうる。突発的なことが発生したとしても、中国は静観している可能性もある。ただし、その突発的なことが起きた際には、地理的にも近い東京市場には大きな影響が出ることが想定される。中朝国境付近に中国軍が15万人展開を始めたという情報がツイッターなどで飛び交っているようだが、北朝鮮で何らかの動きが起きた際にはリスク回避の動きから、一時的にせよ円高進行、株式市場の急落に加え、再び国債が買われることで長期金利が低下することもありうるか。


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by nihonkokusai | 2017-04-11 09:01 | 国際情勢 | Comments(0)

マーケットの新たなリスク要因、米・中・北朝鮮に英・露

米国のトランプ大統領は3月24日に「オバマケア見直し法案」の下院本会議での採決を見送り、同法案を撤回した。また、トランプ大統領が指名した連邦最高裁判事候補者の上院における承認を巡り不透明感も強まっている。さらに複数の州がトランプ政権の省エネ規制適用見合わせを違法として法的措置も辞さない構えを表明するなど、トランプ氏には逆風が吹いており、ロシアとの疑惑などもあり、トランプ政権の政策運営能力を疑問視する声も出始めている。

これに対してトランプ大統領は外交面で北朝鮮に対する強硬姿勢を示すことで、国民の目を背けさせているとの見方もある。トランプ大統領は北朝鮮の核・ミサイル開発を巡り、中国が協力しなければ単独行動も辞さない構えを示した。4月6、7日に南部フロリダ州の別荘で開催されるトランプ氏と習近平・中国国家主席の首脳会談を控え、警戒感が強まっている。中国としては北朝鮮問題は取り扱いの難しい問題であるが、米国の単独行動を許すとも思えず、米中首脳会談での北朝鮮問題をどのように取り扱うか、通商・為替政策を含めて注意する必要がある。米中首脳会談を睨んでか、北朝鮮は5日に弾道ミサイルを発射するという挑発行為に出た

3月29日、英国のメイ首相はEU基本条約(リスボン条約)50条を発動し、EUに対して離脱を正式に通知したが、さっそく問題が生じている。イベリア半島南端にある英領ジブラルタルを巡っての問題である。スペイン継承戦争後、1713年のユトレヒト条約でジブラルタルは英国の領土となったが、ジブラルタルでは周辺のスペイン人住民約1万人が働いており、毎日境界を通って通勤しているとされる。スペインのダスティス外相は、英領ジブラルタルについて、英国がEUを離脱した後も「境界を閉じるつもりはない」と表明したが、いずれこれが火種になるのではとの懸念も出ている。

そして4月3日にロシア第2の都市であるサンクトペテルブルクの地下鉄で爆発が発生し、多くの死傷者が出た。この日はプーチン大統領がベラルーシのルカシェンコ大統領との会談のためにサンクトペテルブルクに滞在中だったそうだが、ロシア連邦捜査委員会はテロの疑いがあるとして刑事捜査を開始したとされる。

4月3日の欧米市場では、米国やドイツ、英国の国債が買い進まれた。つまり長期金利が低下したわけだが、この動きはリスク回避の動きのようにも見えた。3月の米国の自動車販売台数が予想を下回り、米国で長く続いた販売好調局面が勢いを失いつつある可能性も意識されたようだが、地政学的リスク等を含めたリスクに市場が再び敏感になりつつあるのかもしれない。


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by nihonkokusai | 2017-04-05 09:06 | 国際情勢 | Comments(0)

ポピュリズムの流れは加速せず、ユーロのリスクは後退か

15日のオランダの議会下院の選挙では、ルッテ首相が率いる中道右派の与党「自由民主党」が8議席減らすものの32議席を獲得し、第1党の座を維持することが確実になったようである。ウィルダース氏が率いる極右政党の「自由党」は、7議席増やして19議席を獲得する見通しで、当初予想されていた倍増には至らない模様である(NHKニュースより)。

英国は昨年6月23日に行われた国民投票でEU離脱を選択した。このブレグジットが「大衆迎合主義」と訳されるポピュリズムの流れと言えるのかはさておき、自国優先主義、アンチグローバルという流れのひとつの象徴的な出来事と言えた。

昨年11月8日に投票が行われた米大統領選挙でのトランプ氏の勝利がその流れを加速させることとなる。トランプ氏はアメリカ第一主義、反イスラムを掲げ、中東とアフリカの6か国の人の入国を制限する大統領令を出している。この大統領令については、3月16日にハワイ州にある連邦地方裁判所が全米で執行の停止を命じる仮処分の決定を出した。

自国優先主義は欧州では反EUとなり、反イスラムは反移民ともなり、これらを極右政党が掲げ、ポピュリズムと呼ばれた。この流れがユーロ圏にどれだけ及ぶのかが、今回のオランダの総選挙の焦点ともなった。ポピュリズムの流れが加速するようなことになると今後のフランス大統領選挙やドイツ連邦議会選挙にも影響を及ぼす可能性があった。

市場ではポピュリズムの流れが加速することで、ユーロというシステムがいずれ維持できなくなるのではとの懸念を抱き、これがリスク要因となった。ところがオランダ総選挙の結果を見る限り、ポピュリズムの流れはあるものの、政権をひっくり返しEU離脱の可能性を探るといった展開にまで発展するような勢いではなかった。オランダの場合は、仮に極右政党の「自由党」が第一党となっても連立を組む相手がおらず、ウィルダース氏が首相になることはないとの見方が強かったことも確かではあるが。

今回のオランダの選挙の結果を受けて、フランスのエロー外相は、「極右台頭の流れを止めたオランダの人たちを祝福する」とツイートしたそうである(NHK)。

フランスの大統領選挙ではウィルダース氏と同様にユーロ圏離脱などを掲げている極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首の動向が注目されている。オランダ総選挙の結果がルペン氏を勢いづかせることは、どうやらなさそうである。英国の国民投票や米国大統領選挙で見られたような、事前の予想が覆されるといったことも今回のオランダの選挙では起きなかった。リスクは完全になくなったわけではないが、ポピュリズムの勢いが懸念されたほどのものではないとなれば、ユーロに対する警戒は後退しよう。これはECBにとっては金融政策の前向きの姿勢を修正しやすくなるものと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-03-17 09:18 | 国際情勢 | Comments(0)

オランダ総選挙、決定会合、FOMC、G20等々、今週のイベントの注目点

今週は14~15日にFOMC、15日にはオランダの下院議員選挙が予定され、米政府債務の法定上限の適用は停止期限を迎える。15~16日に日銀金融政策決定会合とイングランド銀行のMPCが開催される。16日にトランプ大統領が2018会計年度の予算教書を議会に提出する。17日からはドイツで主要20か国財務相・中央銀行総裁会議が開催される。14日に予定されていた米独首脳会談は雪の影響で17日に延期された。英国のメイ首相は今週中にもEU離脱通告を行う予定とされている。

14日~15日にFOMCでの注目は利上げの有無ではなくなっている。10日に発表された2月の雇用統計も利上げを後押しするものとなり、利上げ決定は確実視されている。むしろ利上げ見送りの方がサプライズとなろう。今回のFOMCでは会合後に議長会見が予定されている。公表文の内容とドットチャート、イエレン議長の会見内容などから、年内あと何回の利上げがあるのかを市場は探りにくると思われる。

15日のオランダ総選挙については、最新の世論調査で反移民や反EUを唱えるウィルダース党首率いる自由党(PVV)が支持率を急速に低下させており、ルッテ首相率いる自由民主党と拮抗していると伝えられている。仮にPVVが第1党になっても、ウィルダース党首が首相になる可能性は、連立を組む相手が見当たらないため、低いこともあり、結果次第ではあるものの波乱要因とはならないかもしれない。ただし、PVVが勢いづくようなことになると来月からのフランス大統領選挙の行方に影響を与える可能性はある。

15日に米政府債務の法定上限の適用は停止されている期限が来ることで、米議会は新たな債務上限の設定か、期限の延長を承認する必要がある。ムニューシン財務長官は議会に対し連邦債務の上限を「可能な限り早期に」引き上げるよう要請している。

15~16日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策は現状維持となろう。コアCPIがプラスに転じたこともあり、物価の見通しの表現に変化が出てくるかもしれない。黒田総裁の会見ではマイナス金利の弊害、長期金利の目標の想定レンジ等に関しての質問が出てくることも予想される。

15~16日のイングランド銀行のMPCについては、注目度が低いようであるが、FRBに続いて、EU離脱の影響正常化に向けて舵を取る可能性が高いとみられ、こちらの動向も注意が必要か。

16日にトランプ大統領が2018会計年度の予算教書を議会に提出する。すでにトランプ大統領は国防費を増加させる一方、非国防費を削減する方針を示している。財政運営を巡って与党・共和党内の意見が分裂する可能性も指摘されており、こちらの動向も注意したい。

17日からはドイツで主要20か国財務相・中央銀行総裁会議(G20)が開催される。声明の草案で、これまで盛り込まれてきた保護主義や競争的な通貨切り下げに「断固として反対する」との文言が削除されていると伝えられた。トランプ政権の誕生で議長国ドイツが「合意ライン」を模索しているとの見方も浮上しているようである。

その米国のトランプ大統領とドイツのメルケル首相が17日に会談を行う。会談では、難民・移民の受け入れの問題や対ロシア政策などが主な議題になる見通しと伝えられている。表立っての対立の姿勢を見せず、大人の対応を行うものと予想されるが、世界への影響力が大きな二人の初会談だけに、こちらも注意して見ておく必要がある。

英国のメイ首相は今週中にもEU離脱通告を行う予定とされている。EU側は英国の離脱通告を受けて、英国を除く加盟27か国による首脳会議を招集する予定となっている。また、スコットランド自治政府のスタージョン首相は13日、英国からのスコットランド独立の是非を問う新たな住民投票の実施を目指す方針を明らかにした。英国のEU離脱決定の影響が今後、どのような影響をもたらすのかも注意しておく必要があろう。


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by nihonkokusai | 2017-03-15 09:41 | 国際情勢 | Comments(0)

トランプ大統領に必要だったのは信用力だったのか

3月1日に米国のトランプ大統領は就任後初めて議会上下両院の合同会議で今後1年間の施政方針を示す演説を行った。市場ではどのような内容の経済政策が打ち出されるのかを見極めようとしていたのかと思っていたがどうやらそうではなかったようである。

この演説でトランプ大統領は、外交・安全保障について、「戦争を防ぎ、もし必要ならば戦い勝利するために十分な装備が必要だ。国防費の大幅な増額を求める」と述べていた(NHK)。

また、30年ぶりとなる「歴史的な税制改革」や「1兆ドルのインフラ投資」への協力を議会に訴えた。ただし政権発足から1か月たっても政策の細部を詰める体制が整わず、具体策はいまだみえていない(日経新聞電子版)。

市場が期待した具体的な減税等の具体策は示されなかった、にも関わらずこの日の米国株式市場でダウ平均は303ドルも上昇し、21000ドル台に初めて乗せてきた。ナスダックも78ポイントの上昇となり、S&P500種株価指数も上げて、三指数ともに過去最高値を更新した。ドルも上昇しドル円は114円台に乗せてきた。

米株の上昇の背景としては、3月のFOMCでの利上げ観測の強まりによる米金利の上昇もあった。利上げに伴う利ざや改善の期待から大手銀行の株が買われたのである。米金利の上昇によりドルが買われた側面もある。

しかし、それ以上に影響したとされるのが、トランプ大統領の演説となった。その演説の内容というより、大統領の演説ながら「大統領らしい」演説となっていたことが好感されたようである。過激な発言やツイートを繰り返していたトランプ大統領がちゃんとした演説ができるではないかと、米国大統領がどうやら信用力をこれで取り戻したらしい。期待されていたのは政策ではなく、大統領らしさ、冷静さであったようである。

トランプ政権では上院での閣僚承認も遅れており、各省の次官など政治任用ポストもほとんどが空席のままとなっている。今回の議会の演説はこうした人事の遅れを少しでも取り戻すために、両院議員に理解を求める意図があったのかもしれない。少しでもトランプ大統領への懸念を払拭させることが演説の目的であったとすれば、市場の動きを見る限り奏功したといえる。ひとまずトランプ大統領に必要だったのは信用力であったようである。

トランプ大統領が経済政策を急がずとも、米国景気は緩やかなペースで拡大している(ベージュブック)。FRBも3月のFOMCでの利上げに向けて体制を整えつつあるぐらいに、足元の景気や物価は好調さを持続しているともいえる。これもトランプ大統領にとってはフォローとなっていよう。



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by nihonkokusai | 2017-03-03 09:21 | 国際情勢 | Comments(0)

3月のオランダの総選挙の行方にも注意

 4月23日と5月7日に実施されるフランス大統領選挙の行方が注目されているが、そのフランスの大統領選挙の行方も左右しかねないのが3月15日に実施されるオランダの総選挙となる。


 昨年の米国大統領選のトランプ氏勝利の余勢を駆って、オランダでは移民受け入れ反対や反欧州連合(EU)を掲げている右翼・自由党(PVV)が勢いづいている。


 へールト・ウィルダース氏が率いる右翼・自由党(PVV)は現在、下院(定数150)で第5位の12議席を持つが、最新世論調査によれば30議席前後を獲得し、第1党になると予想されている。


 PVVが第1党になっても、ウィルダース氏が首相になる可能性はいまのところ低い。PVVが実際に30議席以上を獲得したとしても半数以上(76議席)には満たない。このため連立政権が必要となるが、PVVを追う自由民主党やキリスト教民主勢力、労働党、グリーン・レフトといった既成政党は、PVVと連立政権を組むことはないと表明している。


 これに対しウィルダース党首はインタビューで、「PVVが有権者の支持を得て本当に大きな躍進を遂げる場合」、彼らは自分と協力せざるを得ないだろうと発言していた(ブルームバーグ)。


 しかし、ウィルダース党首の極端な反移民などに対する過激な発言等もあって、連立を組んでも良いとする党が現れる可能性は少ない。ただし、PVVの勝ち方次第では、全くないとも言い切れないのかもしれない。


 そのウィルダース党首は総選挙で勝った際に特別立法を行い、勧告的な意味合いを持つ国民投票を実施するとも発言していた。その国民投票はオランダのEUからの離脱を問うものである。連立政権が組めない際にはそれは可能ではないものの、この発言も完全には無視できるものではない。


 現実にはウィルダース氏が率いるPVVが第一党となっても連立政権は組めず、オランダの政局が混沌とし、それが不安定要素となる可能性がある。また、ウィルダース氏が率いるPVVが総選挙で躍進を見せると、今度はフランスの大統領選挙でウィルダース氏と同様にユーロ圏離脱などを掲げているルペン氏が勢いづく可能性もあり、いまのところこちらの方が市場では懸念されているように思われる。



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by nihonkokusai | 2017-02-23 09:49 | 国際情勢 | Comments(0)

市場を動揺させかねないフランス大統領選挙の行方はここに注意

ここにきてフランスの大統領選挙を巡る思惑で、欧米の金融市場でリスク回避の動きが出たり、フランス国債が売られるなどしている。今後、東京市場を含めて世界の金融市場に影響を与える可能性のある今年のフランスの大統領選挙についてあらためて確認しておきたい。

フランス第5共和政の第10回大統領選挙は2017年4月23日(日)と5月7日(日)に実施される。第1回投票の前日に18歳以上で、民事上・政治上の権利を享有する、すべてのフランス国籍者が投票できる。つまりフランス国民による直接投票によって大統領が決まる。

選挙日程が2回予定されているのは、第1回目の投票で全体の過半数の票を取った候補が出ない際に、投票率の上位2名によって決選投票が行われるためである。1965年以降、第1回投票で大統領に決まった候補者はなく、今回もこれまでの世論調査などからも決選投票は不可避とみられている。

今回の大統領選挙が最も注目されているのが、極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首である。ルペン党首はユーロ圏離脱や欧州連合(EU)離脱の国民投票実施を掲げている。英国のEU離脱や米国でのトランプ大統領の登場の流れがフランスでも強まるとなれば、このルペン党首が勢いづくことになる。

Ifopの最新の世論調査によると支持率トップはルペン氏の26%、これをマクロン、フィヨン両氏が約18.5%で並んで追っており、4位はアモン氏の14%、5位メランション氏11.5%となっている(ブルームバーグ)。

このようにルペン党首が支持率トップではあるが、もし決選投票となれば反ルペン派が勢いを増して、ルペン党首の大統領の就任はないとの見立てとなっている。その見立てがやや怪しくなってきたため、ここにきて市場が揺れている。

与党・社会党など左派陣営のブノワ・アモン氏と共産主義の支持を集める急進左派のジャン・ルク・メランション氏が、協力の可能性をめぐり協議していることを明らかになった。左派系2人が手を組めば決選投票に進む可能性も出てくる。マクロン氏と共和党など中道・右派陣営の統一候補フィヨン元首相が第1回投票で敗北するのではないかとの観測が出ていた。ところがその後、左派候補2人が目指した共闘の取り組みは決裂したと伝えられている。

現職のオランド大統領は国民からの支持率が極めて低く、これまでのパターンからは通常、2期目を目指すところ早々に再選を諦めており、オランド大統領の代わりとして出馬したのがブノワ・アモン氏である。

そして左派からは中道・無党派のマクロン前経済相が出馬を予定している。フランス大統領に最も近いとされていたのがこのマクロン前経済相である。

右派統一候補のフィヨン氏は最大野党・共和党に属しサルコジ政権で首相を務めた人物である。

左派の2人が組まない限り、5月7日の決選投票に進むのはルペン氏、マクロン氏、フィヨン氏のうちの2人、いまの勢いであればルペン氏とどちらかということになる。

オピニオンウェイの調査によると、もし決選投票がマクロン対ルペンとなった際は58%対42%でマクロン氏、もしフィヨン対ルペンとなった場合には56%対44%となると見込まれているそうである(ロイター)。

ちなみに2002年の大統領選挙の際には1回目の投票で現職のシラク大統領に次いで、極右政党・国民戦線(FN)のジャンマリ・ルペン党首(マリーヌ・ルペン氏の父親)が2位で決選投票に進んでいた。決選投票では1回目の選挙で敗れた左派の社会党候補の支持者も、ルペン氏を当選させないために、ライバルであった保守系政党のシラク氏支持に回り、シラク氏が大差で勝利していたということもあった。

市場ではルペン氏が大統領選挙で勝つことはないだろうとの予想が大勢を占めているようだが、この予想が米国大統領選挙の際のように覆されることとなれば、フランスのユーロ離脱の可能性まで出てくることとなり、市場には大きなインパクトを与えることになる。


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by nihonkokusai | 2017-02-22 09:32 | 国際情勢 | Comments(0)
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