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カテゴリ:景気物価動向( 269 )

改善を示す日銀短観と株価の関係

 日銀が14日発表した12月の短観では、ベンチマークとなっている大企業製造業DIはプラス10となった。前回調査のプラス6から4ポイントの改善となった。改善は6四半期ぶりとなる。

 しかし、3か月先の業況判断DIは大企業製造業がプラス8と慎重な見方となった。事業計画の前提となる想定為替レートが大企業製造業で2016年度が104円90銭と前回の107円92銭よりも円高ドル安方向に修正されたことが影響した。

 大企業製造業DIは日経平均のトレンド変化と歩調を合わせることが多い。今回の6四半期ぶりの改善は日経平均のトレンド変化を裏付けるものとなるのではないかと考えられる。

 今回の短観の回答期間は11月14日~12月13日で、回答基準日は11月28日だった。つまり11月8日の米大統領選挙でのトランプ氏の勝利とその後のトランプ相場も確認したものではあった。しかし、為替についてはかなり慎重な見方をしている。すでに足元でドル円は117円台をつけるなどしており、3か月先については想定よりも改善してくる可能性がある。

 業況判断DIについては大企業ばかりでなく、中堅、中小企業も改善を示しており、非製造業を含む全体でも2ポイントの改善となった。

 ただし、2016年度の設備投資計画は大企業全産業(除くソフトウェア投資額)が前年度比5.5%増と9月調査の6.3%増から下方修正された。

 このあたりはやや気掛かりながらも、今後は円安なども背景に今後は想定以上の改善が見込まれる可能性がある。業種別では自動車や電気機械などが改善し、これらは為替の影響を受けやすい。原油価格の底打ちもあり、石油・石炭製品や非鉄金属が大幅に改善している点も注意したい。

 もちろんトランプ相場の継続性に疑問は残る面もあるが、企業のマインドも少なからず変化している兆しはある。今回の株高の背景は米国発のように見えるが、国内の実態経済も改善をみせており、それを背景にトランプ旋風によってさらに株価が押し上げられている、そのような解釈も可能なのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-12-15 09:47 | 景気物価動向 | Comments(0)

世界的なデフレ圧力の後退を予感させるトランプ氏の登場

 米大統領選挙でのトランプ氏の勝利は当初、金融市場では危機感を持って迎えられた。それが急速に期待感に変化したところが面白い。日経平均株価の日足チャートなどを確認するとわかるが、反発トレンドがいったんトランプ氏の登場で崩れかかっていたものが、再び上昇トレンドとなった。そもそも何かのきっかけで株高、ドル高の動きが生じやすい地合であったといえる。

 ドル円の上昇ピッチが速いこともあり、急激な円安が進行したかに思えるが、水準からすれば今年2月につけた120円台にすら戻っていない。今年初めからの中国など新興国の景気減速と原油価格の下落で、いわゆるリスク回避の動きが金融市場で急速に強まった。これを受けて日銀は1月に慌ててマイナス金利政策を講じることとなる。

 このリスク回避の動きは、英国のEU離脱という新たな要因を受けてからピークアウトすることになる。トランプ氏の勝利もそのリスク回避の動きを強めるとの観測もあったが、むしろリスクオフではなくリスクオン、つまりリスク回避の反動を加速させる要因となった。

 これは表面上はトランプ氏の経済政策などへの期待がある。しかし実際に大統領選挙の時の発言内容をすべて実行に移せるかは疑問である。それでも大きな変化が生じるであろうことも確かである。それを最も敏感に反映したのが米長期金利の上昇かもしれない。

 英国のEU離脱あたりまで、世界的なリスクとなる要因が次々と出てきたことや、原油価格の下落なども背景に、物価は上がりにくい状況が日米欧の先進国で継続していた。日本のデフレ病が欧米にも拡がったとの見方も出ていた。日欧の中央銀行が非伝統的な金融政策をこれでもかと続けていたことも、日米欧の長期金利を押さえつけた。

 ところがトランプ氏の登場はこういった世界的なデフレ圧力の後退を予感させることとなる。ここには原油価格の底打ち感などもあった。米国の雇用情勢をみてもかなり景気の改善が伺えるところに、日米欧の金融緩和もあってのいわゆる「高圧経済」と呼ばれるような環境となりつつある。

 そこに米国が積極的な財政政策を行うとの期待が加わり、インフレ圧力の強まり、さらにFRBの正常化が急がれる可能性が意識され、財政悪化懸念も加わっての米長期金利の上昇となった。これが日欧の長期金利にも刺激を与えた。

 このまま世界的なリスク回避の調整が起きるとなれば、異常とされる日米欧の金融政策にも当然変化が出てしかるべきである。つまり積極的な金融緩和によって支えられていた面が強かった新興国の株価や通貨がピークアウトすることとなる。トルコ・リラとインド・ルピーは対ドルでともに過去最安値を更新した。

 トランプ氏の登場は結果として金融市場にとっては良いニュースとして捉えられたが、事前に言われていたような米国の保護主義に傾斜する懸念は当然残る。これについてはあるエコノミストからこれもデフレ解消要因となりうるとの指摘があった。つまり、これまでの各国の努力が積み重ねてきたグローバル化の動きの流れが変わることとなる。グローバル化は関税障壁などを取り払うことである意味、デフレ要因となっていた。しかし、その動きが反対方向に向かうとなれば、それは結果としてデフレ解消要因ともなる。

 保護主義が台頭しているのは米国だけではない。世界的な流れでもある。欧州でも12月のイタリア国民投票や、来年のフランスやドイツの選挙の結果次第でそれが強まる可能性もある。

 個人的にはトランプ氏はあまり好きではないし、怖さも感じる。保護主義の流れは大戦前を思い起こさせる。それでも来年以降、世界の政治情勢が大きく変わってくることは避けられない。結果としては世界的なデフレ化からの脱却の流れになる可能性があり、それは少なからず日本にも影響してくることが予想されるのである。

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by nihonkokusai | 2016-11-26 09:42 | 景気物価動向 | Comments(0)

日本の物価を左右する原油価格の行方

 石油輸出国機構(OPEC)は30日の総会でリビアとナイジェリアを除く全加盟国が原油生産量を4.0~4.5%減らすアルジェリアの提案について協議する見通しとなっている。この総会で8年ぶりとなる減産合意が可能なのかが焦点となっている。

 いまのところ、協議ではイラン、イラク、インドネシアが難色を示していると指摘されている。実際に今月22日の専門家会合ではイランとイラクが減産に難色を示し、供給制限の詳細がまとまらなかった。

 ところが23日にイラクのアバディ首相は「イラクは価格安定のため減産する」と表明し、OPECの減産に参加する意向を示した。合意実行は難しいとされてきたが、合意の可能性も出てきた。

 主要産油国でもあるロシアのプーチン大統領は今月、凍結の準備は整っているとの認識を示したものの、増産凍結をどのように行うかについて決めかねているとの観測もある。

 このように30日に減産合意が可能なのかどうかは、依然として不透明である。しかし減産合意となれば、原油価格があらためて上昇してくる可能性がある。

 原油価格についてはWTI先物がいわゆるベンチマークとなっている。WTIは今年に入ってからの中国など新興国の経済成長の鈍化などを嫌気して、一時30ドル割れまで下落した。ここでいったん底打ちとなり、50ドル台を回復した。しかしここから上が重くなり、ここにきて50ドル近辺での推移が続いている。

 30日のOPEC総会で減産合意となればWTIはもみあいから脱し、トランプラリーとなっている金融市場の動きと相まって、60ドルあたりまで回復する可能性はある。合意とならずとも、米国経済成長の期待などから大きく下がることも考えづらい。50ドル近辺でのもみあいが継続すると予想される。

 いずれにしても原油価格の下落傾向は止まったとみて良いかと思われる。どこまで回復するのかは不透明ながら、これは原油価格の動向に影響を受けやすい日本の物価に対して下方圧力の後退を意味しよう。

 外為市場では円安が進行し輸入物価の上昇による物価への上昇鬱力も加わり、マイナスに落ち込んでいる日本の物価は(10月のコア全国消費者物価指数は前年比マイナス0.4%)今後次第にプラス圏に転じてくることが予想される。

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by nihonkokusai | 2016-11-25 09:41 | 景気物価動向 | Comments(0)

消費増税と個人消費と物価

 日本のGDPの約6割を占める個人消費に関して日銀は新たに「消費活動指数」という指数を作成し公表を始めた。消費活動指数は、財とサービスに関する各種の販売・供給統計を基礎統計とし、月次のような短期的な消費活動を把握することが可能となり、速報性も有していると日銀は解説している。

 この日銀の消費活動指数は消費活動指数は基本的には、販売・供給統計である商業動態統計(財)や第三次産業活動指数(サービス)に含まれる個別の統計系列に加え一部の業界統計を統合して作成したそうである。名目値と実質値、旅行収支を調整したものと調整していないものなど複数の指数が存在しているが、ベンチマークとなっているのが「実質消費活動指数(旅行収支調整済)のようである。

 個人消費に関しては総務省統計局が行っている家計調査によるデータが毎月発表されているが、調査対象が限られることでそのデータでどこまで個人消費の動向を的確に示されるのか疑問が出ていた。このため日銀のこの新たなデータは個人消費の動向をみる上で参考になるものと期待される。

 ただし、日銀がなぜこのタイミングで新たな指数を発表したのか。これはなかなか物価目標が達成できないため、その理由を示すものと用意したのではないかとの見方もある。物価の新コアコア指数はまさにそのような指数に思えたが、その隠れた目的はさておいて、実際の消費活動指数とコアCPIの動向をグラフで重ね合わせて消費とそれによる物価への影響を見てみた。

 たしかに大きなトレンドとしては似通ったかたちにはなっている。特に2014年4月の消費増税を期に消費も物価も落ち込んでいることが読み取れる。ただし、これで消費増税によって物価の上昇が削がれたと結論づけることはできない。

 過去の動向をみると2008年に入ったあたりからコアCPIが大きく上昇したが、消費はこのあたりからむしろ落ち込んでいる。これはこのときの物価上昇が原油価格の大幅上昇によるもので、むしろこれが消費にブレーキを掛けていた可能性がある。

 さらに2011年3月に個人消費が大きく落ち込んでいた。これは東日本大震災による影響であろうが、コアCPIはそれにほとんど影響を受けていない。

 そして問題の2014年4月にかけての個人消費の急上昇後の急低下は、まさに消費増税前の駆け込み需要があったことを示すものと言える。それが物価にも影響を与えてコアCPIも2014年4月に前年比プラス1.5%から上昇幅を減少させることになったと言えなくもない。たしかに個人消費の低迷が直撃した部分はあろうが、個人消費そのものは大きく落ち込んだあとやや回復し、しかも水準そのものはコアCPIほどの落ち込みではない。

 コアCPIが2014年4月に向けて上昇していたのは、アベノミクスをきっかけとした急激な円安株高の影響、原油価格の高止まり、そこに消費増税に絡んだ駆け込み需要と、消費増税と円安で値上げしやすい環境となっていたことなどが要因ではなかろうか。このグラフを見る限り、コアCPIの上昇が止まったのは消費増税が主因とは言えない。参考までに、2013年4月から日銀は大量に国債を購入するになどの異次元緩和を続けているが、これが物価はさておき、個人消費にも何かしらの影響を及ぼしているようにも思えないのだが。

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by nihonkokusai | 2016-05-17 09:36 | 景気物価動向 | Comments(0)

物価の新コアコアもピークアウトする懸念

 日銀の黒田総裁は12月24日の日本経済団体連合会審議員会における講演で物価に関して次のように発言していた。

 「物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、1年を通じて概ねゼロ%程度で推移しました。もっとも、これは主としてエネルギー価格の下落によるものであり、物価の基調は着実に改善しています。生鮮食品に加えてエネルギーも除いた消費者物価をみると、2013年10月に前年比プラスに転じた後、25か月連続でプラスを続けており、直近ではプラス1.2%まで上昇しています。これほど持続的な物価上昇は、1990年代後半に日本経済がデフレに陥って以降、初めての経験です」(日銀サイトの講演要旨より)。

 25日に発表された11月の消費者物価指数は指標となっている生鮮食品を除く総合で前年同月比プラス0.1%と5か月ぶりのプラスとなった。日銀の物価目標となっている総合ではプラス0.3%、食料及びエネルギーを除く総合ではプラス0.9%、さらに日銀が算出している生鮮食品及びエネルギーを除く総合ではプラス1.2%となった。

 日銀が発表している「消費者物価の基調的な変動」のなかの生鮮食品及びエネルギーを除く総合の2000年以降のグラフをみると、確かに2013年10月に前年比プラスに転じた後に上昇を続けている。それではその上昇が継続されている理由は何であるのか。黒田総裁としては、2013年4月の日銀による量的・質的緩和の決定から半年程度の時間をおいて効果が浸透し、結果に結びついているという見方をしているのかもしれない。

 しかし、日銀の示すグラフをみるとすでにトレンドとしては2010年から上向きとなり、それがプラスに転じたのがたまたま2013年10月であったようにもみえる。今回のプラス浮上の前にプラスに転じた2007年末から2008年の状況を確認してみると、2007年2月に日銀は利上げを決定しており、仮に金融政策が物価に働きかけると仮定すると、金融引き締めにより物価がプラスに転じたように映る。

 2007年末から2008年にかけての物価上昇の最大の要因は原油高にあったはずである。2007年8月にはパリバショックも発生しており、金融市場はかなり不安定となっていたが、中国などの新興国経済の高成長を材料に原油価格が一本調子で上昇していた。これがエネルギー関連だけでなく、全体の物価を押し上げた格好となっていた。その原油価格が急落し、リーマン・ショックに代表される世界的な金融経済危機が相まって、物価が大きく落ち込むことになる。その後の欧州の信用不安もあったが、2010年頃に物価は底打ちした格好となったのである。

 物価が日銀の金融政策で動くわけではないのは上記の例からも明らかではなかろうか。日本の物価に関しては予想物価とかではなく、原油価格や為替による直接的な影響が大きいように上記グラフからも思える。そうなると原油価格はすでにWTIで30ドル台に下落しており、円安トレンドも変化しつつあるなか、黒田総裁の「消費者物価の基調的な変動」を示すという生鮮食品及びエネルギーを除く総合についても、そろそろピークアウトする可能性があるのではなかろうか。もしそうなると、異次元緩和で物価を動かそうとした試みが成功したわけではないことを改めて示すことになりはしまいか。

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by nihonkokusai | 2015-12-29 09:50 | 景気物価動向 | Comments(0)

原油下落の背景と今後の動き

 12月7日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は大幅続落となり、WTIは先週末比2.32ドル安の37.65ドルで取引を終えた。引け値ベースでは2009年2月以来の安値となった。8日には一時36ドル台に下落した。また、ロンドンの北海ブレント原油先物は8日に2009年以来で初めて40ドル割れとなった。

 WTIはザラ場ベースでみると、2009年12月19日に32.40ドルまで下落していた。2009年にかけて大きく下落した原油価格の動きは、2008年7月11日に147.27ドルという史上最高値を記録した反動と言えた。OPECの生産調整や、中国の経済成長を背景にした需要増等によって、2007年あたりから原油価格は大きく上昇を続けていた。欧米の中央銀行による資金供給も手伝い、原油先物には投機的な動きが発生していた。いわば原油先物でプチバブルが発生していたものの、それが現実を見据えて弾け、その結果がWTIの147ドル台から32ドル台への急落となった。

 今回の原油下落の背景には、米国でのシェールオイル生産拡大で対米輸出が減っていることなどがあり、原油は世界的に供給過剰となっていたことがあった。12月4日に開かれた石油輸出国機構(OPEC)総会では、日量約3150万バレルの現行生産量を維持する意向を明らかにした。このため供給過剰の状態が当面続くという見方が広がり、売り圧力が強まった。サウジアラビアなどは市場占有率の確保を優先し、高い生産量が維持されている。イランが核開発問題の最終合意を受けて生産量の拡大を目指しており、こちらも供給過剰要因ともなりうる。先物にはこのヘッジ売りに加え、投機的な売り圧力も加わっているとみられる。

 米国ではFRBが利上げに向けた準備を進めているが、雇用は改善していても景気そのものは緩やかな回復基調となっている。ECBは4日の理事会で追加緩和を決定したぐらいに景気への懸念も強い。日本では8日に発表された7~9月期の実質GDP改定値は速報のマイナスからプラスに上方修正されたが、年率換算では1.0%増と低迷している。さらに中国の景気減速が顕著になっており、これによる原油需要の後退も大きく影響している。原油価格の下落そのものが資源国経済に対して打撃要因となる。資源国通貨は対ドルで軒並み下落しており、ノルウェークローネは2002年4月以来の安値をつけ、カナダドルも2004年6月以来の水準となった。

 原油価格の下落は物価の上昇抑制要因ともなり、世界的なディスインフレ傾向を強める可能性がある。日銀は原油価格の下落による影響を排除して、生鮮食品とエネルギーを除くベースでみた消費者物価指数も示しているが、エネルギーを除いても原油価格下落による間接的な影響は無視できない。そもそも日銀の物価目標は総合指数であり、原油価格のさらなる下落は物価目標達成を困難にしかねない。

 原油価格の下落がどこまで、いつまで続くのかを予想することも難しいが、原油価格が上がりにくい状況となっていることは確かである。WTIのチャートからみると30ドルあたりまで下落してもおかしくはない。この基調が変化するためには、予想以上の景気回復などの環境変化が必要になってくるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-12-09 09:41 | 景気物価動向 | Comments(0)

GDP改定値は甘利担当相の予想も上回る

 12月8日の朝方に発表された7~9月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.0%増となった。11月16日に公表した速報値の前期比0.2%減、年率0.8%減から上方修正された。1日に発表された法人企業統計で企業の設備投資が大幅増になり、これがかなり影響したとみられる。その設備投資は速報の1.3%減から0.6%増と上方修正された。

甘利明経済再生担当相は12月6日のNHKの番組で、7~9月期の実質国内総生産(GDP)改定値が前期比年率で0.8%減だった速報値から上方修正されるとの認識を示した。「改定値はたぶんゼロ(%)になると思う」と述べていた。その甘利担当相の発言した数値をも上回った格好になった。

経済統計を所管する閣僚が公表前に具体的な内容を示唆するのは極めて異例である。内閣府はGDP統計について所管する閣僚にも発表当日の朝まで伝えないと説明してきたはずであった。これに関して甘利担当相は7日の経済財政諮問会議後の会見で「民間調査機関の見通しでは、改定値がゼロくらいになると発表されている」とし、NHKでの発言はあくまで民間の調査結果を踏まえた発言だと強調していた。

GDPの結果を見る限り、どうやら甘利担当相は数字を知らされていたわけではなく、たしかに民間予測の中央値であったところの前期比横ばいとの数字を示したものと思われる。知っていればプラスとの認識を示していたであろう。それでも「改定値はたぶんゼロ(%)になると思う」との発言は漏洩の可能性を想像させることで、もう少し発言は慎重にすべきであったと思われる。

GDP同様に市場動向に影響を与える日銀短観なども日銀総裁が内容を知るのは発表当日の朝とされている。これがいまは常識となっていて、担当大臣がその数値を知るはずもないとの前提での発言であったのかもしれない。しかし、担当大臣が自信を持ってゼロになると発言すると、もしや知っていたのかと疑われてもおかしくはない。

現在、このように市場に影響を与えうる経済指標の管理が徹底されているのは、過去に日銀短観の漏洩問題があったためである。日銀短観の漏洩問題は大蔵省や日銀の不祥事が相次いだタイミングでもあっただけに問題視され、それを機会に経済統計などの数字に関する情報管理が徹底された。

安倍政権にとってはアベノミクスと呼ばれた経済政策が高い支持率を維持する源となっており、三本の矢から今度は名目GDP600兆円という目標を打ち出した。その矢先に7~9月期の実質GDPが2期連続のマイナスとなってしまい、欧米ではリセッションとも捉えかねない状況下、かなり神経質になっていたことも確かであろう。首相官邸もGDP改定値の数字に対してかなり関心を抱いていたとも考えられ、それが今回の甘利担当相のテレビでの発言の背景になっていた可能性がある。

以前には日銀の金融政策決定会合の内容が事前に漏れたこともあった。いまの日銀はその点に関しては情報漏洩を防ぐことに徹底しているようだが、これが本来の情報管理のように思われる。これを機会にいまの経済指標などの情報管理がどのように徹底されているのかを明らかにすることも必要ではないかと思う。

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by nihonkokusai | 2015-12-08 09:50 | 景気物価動向 | Comments(0)

雇用は回復するも物価は上がらず

 11月27日に発表された10月の消費者物価指数は、指標となっている生鮮食料品を除く総合(コア)で前年同月比マイナス0.1%となった。日銀の物価目標となっている総合指数では前年比プラス0.3%となった(9月は前年比ゼロ%)。ただし、食料及びエネルギーを除く総合では前年比0.7%と9月の0.9%から低下した。

 電気代などの下落幅が縮小したことなどから総合の上昇幅が拡大し、食料品などの価格が上昇したが、ガソリン価格の下落などにより相殺された格好に。11月の東京都区部の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が前年同月と同水準となり、6月以来、5か月ぶりにマイナス圏を脱した。

 10月の完全失業率(季節調整値)は3.1%となり、前月比0.3ポイントの改善となった。0.3%の低下は2011年9月以来の大幅なものとなるようで、3.1%の水準は1995年7月以来の低水準となるとか。また、10月の有効求人倍率は前月比横ばいの1.24倍となっていた。

 10月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり28万2401円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比2.4%の減少となった。前年同月を下回るのは2か月連続となる。

 米国と同様に日本も雇用の改善は進んでいるようであるが、それが賃金には反映されず、個人消費は抑えられ、原油価格の下落も手伝い物価も低迷している状況にある。

 日銀は今回から毎月の全国消費者物価指数の公表後に、除く生鮮食品・エネルギーなどの試算結果を定期的にホームページ上で公表した。14時に日銀が発表した10月総合(除く生鮮食品・エネルギー)は前年比プラス1.2%となった。やや無理矢理感のある数字ではあるものの、それでも2.0%には届いていない。念のため確認すると、日銀の目標とする物価指数はあくまで消費者物価指数の総合指数であり、前年比プラス0.3%である。

 たしかに物価を多様な側面から見る必要があり、帰属家賃の影響など含めて消費者物価のクセのようなものも考慮する必要がある。しかし、日銀がすべきことは異次元緩和から2年以上経過し、大量に国債を買えば物価が上がるとの理由説明の方にあるのではなかろうか。

 消費増税による悪影響、原油価格下落による影響は確かにあったであろうが、そのような要因を含めた上でレジームチェンジは可能という前提があったはず。さらに物価は上がらずとも企業業績が回復し、雇用も回復していることで、これは異次元緩和を主体としたアベノミクスの恩恵との都合の良い解釈も一部にある。しかし、異次元緩和によるデフレマインドの払拭がなされずに、雇用が回復しているというのは物価とは別の要因も働いているのではなかろうか。円安などの影響はあったろうが、海外要因などの影響も大きかったはずである。現在の日本経済の状況についても、もう少し冷静な分析も必要なのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-11-29 10:24 | 景気物価動向 | Comments(1)

びっくりポンの米雇用統計

 11月6日に発表された10月の米雇用統計で、非農業雇用者数は前月比27.1万人増と前月比の伸びとしては2014年12月以降で最大となり、予想の18万人程度を大きく上回った。失業率は5%と前月から0.1ポイント低下し、2008年4月以来の低い水準となった。平均時給は前月比0.4%増、前年比では2.5%増と2009年7月以来の大幅な伸びとなっていた。

 これは予想以上に強い数字となり、市場はまさに「びっくりポン」となった。「びっくりポン」とは今年の流行語大賞にノミネートされるであろう朝の連続ドラマ「あさが来た」の「あさ」の口癖である。

 単月の数字でもって金融政策が決定されるわけではない。しかし、市場では12月のFOMCでの利上げについては半信半疑といった状態であったところに、この強い数値を見せられて、「データ次第」とのイエレン議長の利上げに向けた条件もこれでクリアーしたとの認識を強めたようである。

 失業率からみるとほぼ完全雇用に近い状態のなか、雇用者数の増加だけでなく、平均時給も伸びている状態で、いわゆる「スラック」も減少しつつある。現在の足元の物価は低迷しているが、この雇用統計の数値からはいずれ、物価も上昇してくるであろうとの見方もできる。

 果たして本当に雇用の回復が物価上昇に結びつくのか、それ以前にQEと呼ばれた量的緩和によって雇用が改善したのか、それにしては物価は上がってきていないが、それはどのように解釈すべきなのか。このあたりの謎はさておき、デュアル・マンデートについて、片方だけでもクリアーすればそれで良しということで、FRBは正常化に向けて舵を取りつつある。

 今回の雇用統計の数字が予想を多少下回っても、12月の利上げの可能性がそれほど後退することはないと個人的にはみていたが、これだけ良い数値となると市場は完全に利上げを織り込みに行く。

 6日の米国株式市場が売られたあとに上昇したのは、利上げの悪影響よりも、雇用の回復が示す景気の堅調さの方が意識されたためと思われる。ただし、米国債券市場では、利回り水準からみて利上げをそれほど織り込んでいなかったため、売り込まれている。米10年債利回りはテーパリングを意識した際につけた3.0%がひとつの目安になろう。外為市場ではドルが買い進まれ、ドル円は123円台に上昇した。こちらは黒田ラインとされる125円を試すかもしれないが、日米政府ともに急激な円安は望んでおらず、ここからは慎重な動きになると予想される。

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by nihonkokusai | 2015-11-10 09:20 | 景気物価動向 | Comments(0)

原油価格の下落を生かす工夫も

 原油価格の推移を見る際の指標として使われるのがWTIである。これは債券の動きをみるのに都合が良い債券先物と同様に、流動性の高さなどから原油価格の上げ下げを見る指標として都合が良いため、指標として使われている。

 WTIとは「West Texas Intermediate」の略称で、アメリカ合衆国南部のテキサス州とニューメキシコ州を中心に産出される原油の総称であり、硫黄分が少なくガソリンを多く取り出せる高品質な原油であり、そのWTIの先物がニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されている。

 WTIが上場したのが1983年であり、すでに1973年と1978年の二度のオイルショック後となる。上場後は30ドル近辺での推移であったのが、1985年のプラザ合意前後に原油価格の大幅な低下が進み、WTIは20ドルを大きく割り込む。しかし、その後切り返し、1987年のイランイラク戦争時に40ドル近辺をつけることがあったが、2000年あたりまで20ドル近辺での動きが続いた。

 その様相が変化したのが、2004年あたりからである。2008年7月11日に最高値147.27ドルを記録した。この原油価格上昇の要因は、中国などを中心とした新興国の需要増加であることは確かである。ただし、2008年の140ドル台はややバブルの様相を示し投機的な動きもあったとみられる。その後、リーマン・ショックもあり40ドル近辺にまで低下した。

 しかし、欧州の信用不安による日米欧の金融緩和などもあり、これも新興国経済には下支えとなったとみられ、2011年あたりからWTIは再び100ドル台を回復した。ところが、2014年7月あたりから原油価格は急落する。2015年8月には40ドルを割り込む場面があった。現在も43ドル近辺となっており、再び40ドルを割り込むとの見方も出ている。

 今回の原油先物の下落の影響としては、米国のシェールオイル増産も当然絡んではいようが、WTIの32年間のチャートをみると、2004年あたりからの大相場が終焉しつつあるようにしかみえない。そうであれば、中国を中心とした新興国経済の急成長の反動、つまりその落ち込みが顕著になったことが影響しているといえる。

 日本もそうであったように高度成長は永遠に続くものではない。中国も高成長から安定成長の時代を迎えつつあると思われる。これにより、原油価格のバブルも終焉した。これはオイルマネーなどにも影響を与えているとみられ、株安の一因ともされている。

 WTIのチャートからみると、もしバブル前の原点に戻るとすれば、1バレル30ドルあたりまで下落してもおかしくはない。これは物価に対しては上昇抑制要因となる。しかし、原油価格の下落そのものは日本経済にとっては決してマイナスではない。エネルギー価格の下落をうまく生かす政策も必要になってくるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-10-29 09:41 | 景気物価動向 | Comments(0)
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